JP4039892B2 - セラミックグリーンシート - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、無機粉末と樹脂とを含むスラリーを成形したセラミックグリーンシートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報通信用の配線基板として、特に、電気信号の伝送損失を低減させるために、AgやCu等の低融点金属とともに焼成でき、加工精度の優れたセラミックグリーンシートおよびこれを用いたセラミック基板が求められている。
【0003】
一般的に、前記セラミックグリーンシートの成形材料として、アルミナ粉末と、ポリビニルブチラール樹脂やアクリル樹脂とを混合したスラリーを用い、ドクターブレード法により薄膜のグリーンシートを成形する方法が知られている。
また、前記セラミックグリーンシートの加工性を向上させるためには、特開平4−249565公報、及び特開平10−182241公報に記載されたものが知られている。
【0004】
特開平4−249565公報は、セラミック粉体100重量部に、メタクリル酸イソブチルとカルボシル基含有モノマーとの共重合体及び芳香族炭化水素系用剤を所定量含有し、粘度が100〜300ポイズとしたセラミックグリーンシート成形用組成物であり、非酸化性雰囲気での焼成において脱脂が容易で、かつ機械的強度が高いセラミックグリーンシートを精度よく成形することを目的とするものである。
【0005】
特開平10−182241公報は、アルカリ金属酸化物を多量に含むガラスを用いたガラスセラミック粉末に対して、官能基としてのカルボシキル基の代わりに、環状エーテル、直鎖エーテル、長鎖―OH、−OHのうちの少なくとも1種を有するアクリル系樹脂を有機バインダーとして用いたセラミック基板用グリーンシートの製造方法であり、ガラス中のアルカリ金属成分のアクリル系樹脂との反応性を抑制し、セラミックスラリーの分散性を損なうことなく、歩留まりの高いセラミックグリーンシートを得ることを目的とするものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特開平10−182241公報や特開平4−249565公報に記載されたセラミックグリーンシートの構成によれば、セラミックグリーンシートの密度を向上させるためにカルボシキル基や水酸基を含有させているが、セラミック粉末としてSiやBを多く含むホウ珪酸ガラスを用いた場合には、十分に分散されたセラミックスラリーを得ることができなかった。このため、これより形成されるセラミックグリーンシートには、ガラス粉末が十分に分散されておらず、セラミックグリーンシートの密度が不足し、このセラミックグリーンシートの切断、孔あけ、積層等の加工性が不十分であるという問題点があった。
【0007】
更に、前記従来のセラミックグリーンシートを焼成してセラミック基板を製作すると、このセラミックグリーンシートの焼結による収縮率のバラツキが大きく高い精度を有するセラミック基板を得ることが困難であった。
【0008】
本発明は、前記従来の問題点を解決するものであり、ガラス粉末をセラミックグリーンシート内に十分に分散させて、密度が高く加工性の優れたセラミックグリーンシートを得ることを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
(1)かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、Si元素及びB元素を含有した無機粉末と、N元素を含有した樹脂とを含むセラミックグリーンシートにおいて、前記無機粉末は、Si元素及びB元素を、それぞれSiO2及びB2O3として含有したガラス粉末を少なくとも含むとともに、前記ガラス粉末は、SiO2とB2O3との合計量が70mol%以上であり、且つ、前記樹脂は、N元素を含む官能基がジメチルアミノ基であるアクリル樹脂であることを特徴とするセラミックグリーンシートである。
【0010】
このため、請求項1に記載のセラミックグリーンシートによれば、ガラス粉末がセラミックグリーンシート内に十分に分散されて、密度が高く加工性に優れているという作用効果が得られる。
Si元素及びB元素を含有した無機粉末と、N元素を含有した樹脂とを含むセラミックグリーンシートの密度が高くなる理由は、以下のごとく推定される。
【0011】
一般に、疎水性を有する樹脂中に親水性を有する無機粉末を分散させるためには、カルボキシル基のような親水性基を含有させると効果があることは知られているが、これら親水性基を含有させても、Si及びB元素を含有した無機粉末においては不十分であった。
【0012】
即ち、Si元素及びB元素を多く含む無機粉末の表面には、SiOHやBOHなどの電子受容性(酸性)サイトが存在するため、前記カルボキシル基のような電子受容性(酸性)の官能基とは互いに反発しあって、十分な分散効果が得られないものと考えられる。
【0013】
そこで、本発明によれば、N元素を含有した樹脂を用いることにより、樹脂に電子供与性(塩基性)を付加し、Si元素及びB元素を含有した無機粉末の分散性を向上させることができ、セラミックグリーンシートの密度が高くなるものと考えられる。
【0015】
前記N元素を含有する樹脂とは、無機粉末をグリーンシートに成形する際にバインダー(結合剤)となる樹脂であり、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とのいずれでもよいが、特に、熱可塑性樹脂は、加工性に優れるとともに、再生が可能であるため好ましい。
【0017】
前記N元素を含有する樹脂中に存在するN元素の含有量は、樹脂の質量を100質量部としたとき、0.01質量部以上(通常1質量部以下)であることが望ましい。0.01質量部より少ないと、Si元素及びB元素を含有する無機粉末を分散させる効果が得られないからである。N元素の含有量は、たとえば窒素分析装置による公知の方法で測定できる。
【0018】
セラミックグリーンシートには、Si及びB元素を含有する無機粉末とともに、Si元素及びB元素を含有しない無機粉末(例えば、アルミナ、マグネシア、スピネル、ガーナイト等)が含まれていてもよい。
また、セラミックグリーンシートには、N元素を含有する樹脂とともに、N元素を含有しない樹脂や、可塑剤、添加剤等が含まれていても良い。
【0019】
特に、本発明では、無機粉末は、Si元素及びB元素を、それぞれSiO2及びB2O3として含有したガラス粉末を少なくとも含むとともに、そのガラス粉末は、SiO2とB2O3との合計量が70mol%以上である。
つまり、本発明では、SiO2とB2O3との合計量が70mol%以上であるので、ガラス粉末の表面に、SiOHやBOHなどの電子受容性サイトが多い為、電子供与性のあるN元素を含有する樹脂によって高い分散効果が得られる。これにより、分散性が良好で加工性の優れたセラミックグリーンシートを得ることができる。
また、本発明では、前記樹脂は、N元素を含む官能基を有するアクリル樹脂であり、そのN元素を含む官能基がジメチルアミノ基であるので、後述する表1に示す様に、高い生密度のセラミックグリーンが得られる。
(2)請求項2の発明では、前記樹脂は、更に、カルボキシル基または水酸基を有するアクリル樹脂であることを特徴とする。
本発明では、樹脂は、更に、カルボキシル基または水酸基を有するアクリル樹脂である。
(3)請求項3の発明では、ガラス粉末は、SiO2とB2O3との合計量が80mol%以上であることを特徴とする。
本発明は、ガラス粉末のより好ましい量を例示したものである。
【0020】
(4)請求項4の発明では、無機粉末は、その表面電位が負であることを特徴とする。
つまり、表面電位が負である無機粉末は、表面に電子受容性サイトが多い為、電子供与性のあるN元素を含有する樹脂によって高い分散効果が得られる。これにより、分散性が良好で加工性の優れたセラミックグリーンシートを得ることができる。
【0021】
(5)請求項5の発明では、樹脂の主鎖が、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートであることを特徴とする。
【0022】
本発明では、樹脂の主骨格として、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートを用いるので、分解性に優れており好ましい。
【0024】
(6)請求項6の発明では、セラミックグリーンシートの生密度が1.81g/cm 3 以上であることを特徴とする。
本発明のセラミックグリーンシートは、高い生密度を有する。
【0025】
(7)請求項7の発明は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載のセラミックグリーンシートの樹脂は、アミン価が0.5〜20mgKOH/gであることを特徴とする。
このため、請求項7に記載のセラミックグリーンシートによれば、無機粉末の分散効果が良好であり、焼成工程で樹脂の分解性の優れているという作用効果が得られる。
【0026】
前記アミン価は、0.5mgKOH/gより小さいと十分な分散性が得られず、20mgKOH/gを越えると焼成工程における樹脂の分解性を損なうので、0.5〜20mgKOH/gでの範囲が好ましい。
【0027】
なお、無機粉末と樹脂との分散性が優れ、密度の高い、上述したセラミックグリーンシートを焼成することにより、局部的な歪や反り、変形、クラックなどの機械的損傷が少なく、誘電率などの電気特性のバラツキが少ないセラミック基板を得ることができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下に、実施の形態を用いて請求項1〜請求項7に記載の発明について説明する。
(実施の形態1)
尚、下記表1に示す実施例A〜Gのうち、官能基にジメチルアミノ基を用いる実施例A、E、F、Gが本発明の範囲であり、実施例B、C、Dは参考例である。
「セラミックグリーンシートの作製」
まず、SiO2が66.0mol%、B2O3が23.5mol%、Al2O3が5.5mol%CaOが5.0mol%の組成を有する平均粒径2.5μmのガラス粉末を準備した。
【0029】
次いで、前記ガラス粉末50質量部と、平均粒径3μmのアルミナフィラー50質量部の割合で混合してガラスとアルミナの混合粉末を作製した。
次いで、この混合粉末100質量部に対して(表1)の官能基を有しポリイソブチルメタクリレートを主骨格とするアクリル樹脂20質量部をバインダーとして混合し、更に、可塑剤としてフタル酸ジブチル10質量部、溶剤として適量のトルエン・MEK混合溶媒とを加えて攪拌しスラリー作製した。
【0030】
【表1】
【0031】
(表1)に示すように、実施例A〜Gの官能基を有するアクリル樹脂を用いてスラリーを作製するとともに、本発明の効果と比較するために比較例A〜Eの官能基を有するアクリル樹脂を作製した。
実施例A〜Cは、N元素を含有する官能基として、ジメチルアミノ基、アミド基、ジメチルアミド基のいずれかひとつ有する樹脂を用いたものである。これら官能基は塩基性官能基であり、官能基量はアミン価として表している。
【0032】
実施例Dは、N元素を含有する官能基として、ニトリル基を有するアクリル樹脂を用いたが、ニトリル基は塩基性が低くアミン価の測定が困難なためアミン価の記載を省いている。
実施例E〜Gは、N元素を含有する官能基であるジメチルアミノ基と、酸性のカルボキシル基とを有するアクリル樹脂を用いたものであり、N元素を含有する官能基量はアミン価として表し、カルボキシル基の含有量を酸価として表している。
【0033】
比較例A、Bは、N元素を含有せず、酸性の官能基であるカルボキシル基を有するアクリル樹脂を用いたものである。
比較例C、Dは、N元素を含有せず、水酸基を有するアクリル樹脂を用いたものである。水酸基の含有量は水酸価として表した。
【0034】
比較例Eは、N元素を含有せずエポキシ基を官能基として用いたアクリル樹脂である。
次いで、前記実施例と比較例のスラリーを用いてドクターブレード法によりフィルム上に塗布して乾燥させて厚さ250μmのセラミックグリーンシートを成形し、このセラミックグリーンシートを60mm×50mmの長方形に裁断してセラミックグリーンシート片を作製した。
【0035】
次いで、セラミックグリーンシート片の生密度(見かけ密度)をアルキメデス法により測定し、その測定結果を(表1)に表した。
(表1)に示すように、実施例A〜Gは、セラミックグリーンシートの生密度が1.60〜1.98g/cm3の範囲(特に実施例A、E、F、Gは1.81g/cm 3 以上)であり、生密度が高くて、切断、孔あけ、積層等の加工性に優れたセラミックグリーンシ−トを得ることができた。
【0036】
一方、比較例A〜Eは、セラミックグリーンシートの生密度が1.42〜1.51g/cm3の範囲であり、実施例A〜Gと較べて生密度が低く、切断、孔あけ、積層等の加工性に劣ることが判る。
また、実施例A、Bは、実施例Cと夫々比較すると、特に実施例A、Bで生密度が高い。ジメチルアミノ基、アミド基は、ジメチルアミド基より塩基性の強いことが知られており、これら塩基性の強い官能基から成るアクリル樹脂を用いることにより一層生密度が高くなり、加工性に優れたセラミックグリーンシ−トを得ることができることが判る。
【0037】
また、本発明の実施例EとGは、実施例Aと比較すると生密度が高く、N元素を含有する官能基であるジメチルアミノ基とともに酸性のカルボキシル基とから成るアクリル樹脂を用いると一層生密度が高くなり、加工性に優れたセラミックグリーンシ−トを得ることができることが判る。
【0038】
(実施の形態2)
次いで、前記実施の形態1の実施例Fと比較例Aにより作製したセラミックグリーンシートを用いて、このセラミックグリーンシートの表面に銅ペーストを印刷して乾燥して導体層を印刷したグリーンシートを作製した。
【0039】
次いで、導体層を印刷したグリーンシートを4枚重ねて熱圧着して積層体を作製し、この積層体を水蒸気と窒素ガスの混合雰囲気を調製した炉内に曝し、850℃の温度下で脱脂した後に、1000℃の温度下で2時間放置して焼成を行ってセラミック基板を作製した。
【0040】
次に、得られたセラミック基板の外観を検査した結果、本発明の実施例Fを用いたものは寸法精度に優れ変形や外形寸法のばらつきがなく、寸法精度に優れており、誘電率などの電気特性にもばらつきが少ないセラミック基板が得られた。一方、比較例Aを用いたものは、変形が大きく、外観寸法のばらつきが大きいセラミック基板になった。また、誘電率などの電気特性にもばらつきが見られた。
【0041】
前記の構成を有する本発明のセラミックグリーンシートの作用効果を、以下に記載する。
本発明の実施の形態によるセラミックグリーンシートは、無機粉末がセラミックグリーンシート内に十分に分散されて、密度が高く加工性に優れている。
【0042】
また、本発明の実施の形態によるセラミックグリーンシートは、ガラス粉末など、分散が困難な粉末がセラミックスラリー中に含有していても、生密度が高く加工性の良いものが得られる。
また、本発明の実施の形態によるセラミックグリーンシートによれば、このセラミックグリーンシートを焼成するとカーボンの残留が少なく、且つ、反りや歪、変形、クラック等が少ない配線基板が得られる。
【0043】
また、前記セラミック基板は、無機粉末が十分に分散されてばらつきが少ないので、誘電率などの電気特性が優れている。
尚、前記セラミック基板としては、セラミックグリーンシートと導体層とを交互にそれぞれ4層積層して焼成したものとしたが、4層に限定されるものでなく、1層または4層以外の複数層であってもかまわない。
【0044】
また、前記セラミック基板では、銅を用いて導体層を形成したが、本発明のセラミックグリーンシートとともに焼成できる他の金属を用いても良い。
Claims (7)
- Si元素及びB元素を含有した無機粉末と、N元素を含有した樹脂とを含むセラミックグリーンシートにおいて、
前記無機粉末は、Si元素及びB元素を、それぞれSiO2及びB2O3として含有したガラス粉末を少なくとも含むとともに、前記ガラス粉末は、SiO2とB2O3との合計量が70mol%以上であり、
且つ、前記樹脂は、N元素を含む官能基がジメチルアミノ基であるアクリル樹脂であることを特徴とするセラミックグリーンシート。 - 前記樹脂は、更に、カルボキシル基または水酸基を有するアクリル樹脂であることを特徴とした請求項1に記載のセラミックグリーンシート。
- 前記ガラス粉末は、SiO2とB2O3との合計量が80mol%以上であることを特徴とした請求項1または請求項2に記載のセラミックグリーンシート。
- 前記無機粉末は、その表面電位が負であることを特徴とした請求項1〜請求項3のいずれかに記載のセラミックグリーンシート。
- 前記樹脂の主鎖が、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートであることを特徴とした請求項1〜請求項4のいずれかに記載のセラミックグリーンシート。
- 前記セラミックグリーンシートの生密度が1.81g/cm3以上であることを特徴とした請求項1〜請求項5のいずれかに記載のセラミックグリーンシート。
- 前記樹脂は、アミン価が0.5〜20mgKOH/gであることを特徴とした請求項1〜請求項6のいずれかに記載のセラミックグリーンシート。
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