JP4039656B2 - 交換結合素子及び交換結合素子の製造方法 - Google Patents

交換結合素子及び交換結合素子の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、交換結合素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ハードディスクドライブの再生ヘッドとして用いられるスピンバルブ型磁気抵抗素子は一般に、反強磁性層/磁化固定層/非磁性層/磁化自由層の積層構造からなることが知られている。磁化固定層は、反強磁性層と反磁性的に交換結合してその磁化方向が一方向に固定されている。この反強磁性層/磁化固定層の構成からなるものは一般に交換結合素子と呼ばれている。また磁化自由層は、例えば記録媒体等の外部磁界によりその磁化方向が自由に変動するものである。磁化方向が一方向に固定された磁化固定層に対して、この磁化自由層の磁化方向が変動することにより、巨大磁気抵抗効果(GMR効果)が発現し、外部磁界の変化を抵抗の変化として捉えることが可能になっている。従って磁化固定層は、外部磁界の作用によってもその磁化方向が変動しないことが要求され、そのために反強磁性層との間の一方向異方性定数Jkが高いことが求められる。
【0003】
一方、最近では、電源を切った状態でもデータが保存されるいわゆる不揮発メモリの需要が増大しており、この不揮発メモリの1種として磁気式メモリが提案されている。この磁気式メモリは、記憶素子としてトンネル型磁気抵抗素子の利用が検討されている。トンネル型磁気抵抗素子は、反強磁性層/磁化固定層/絶縁層/磁化自由層の積層構造からなるもので、このトンネル型磁気抵抗素子においても、反強磁性層/磁化固定層の構成からなる上記の交換結合素子が備えられている。交換結合素子の一方向異方性定数Jkが小さいと、磁化固定層の磁化方向が外部磁界等により変動しやすくなって、記録素子(トンネル型磁気抵抗素子)に保持された記録情報が失われるおそれがあるので、磁気式メモリに対する信頼性を向上させるためにも、交換結合素子における一方向異方性定数Jkの向上が求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
交換結合素子の一方向異方性定数Jk(以下Jkと表記)は、単位面積当たりに作用する交換結合のエネルギーであり、Jk=Ms・dF・Hexで表される。ここでMsは磁化固定層の磁化であり、dFは磁化固定層の膜厚であり、Hexは交換結合磁界である。このJkを大きくするために、従来から反強磁性層の探索が行われており、これまでにMn-Pt合金、Mn-Ni合金、Mn-Ir合金等の反強磁性材料が見い出されてきた。しかし、例えばMn-Pt合金で得られるJkは0.32erg/cm2程度であり、Mn-Ni合金で得られるJkは0.32erg/cm2程度であり、Mn-Ir合金で得られるJkは0.38erg/cm2程度であり、この程度のJkではスピンバルブ型磁気抵抗素子やトンネル型磁気抵抗素子への適用は不十分であり、さらなるJkの向上が望まれている。また、上記Jkの増大とともにMR比の増大をも図ることが望まれている。
【0005】
現状では、磁化固定層として非磁性層を2つの強磁性層で挟んだ積層フェリ磁性層を採用し、磁化固定層自体の磁気モーメントを小さくして外部磁界の影響を少なくし、Jkを補うような対策がとられている。しかし、この積層フェリ磁性層からなる磁化固定層は、強磁性層単層からなる磁化固定層よりも膜厚が増大するため、スピンバルブ型磁気抵抗素子あるいはトンネル型磁気抵抗素子の薄膜化が困難になるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高い一方向異方性定数Jkを有し、かつMR比の増大をも図った交換結合素子及びその製造方法を提供するとともに、この交換結合素子を備えたスピンバルブ型磁気抵抗素子、トンネル型磁気抵抗素子、磁気ヘッド及び並びに磁気式メモリを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。本発明の交換結合素子は、基体上に反強磁性層が積層されるとともに、該反強磁性層と交換結合して磁化方向が固定される磁化固定層が前記反強磁性層上に積層されてなり、かつ前記磁化固定層は、強磁性層/非磁性層/強磁性層の3層構造を含む積層フェリ磁性層としてなり、さらに前記積層フェリ磁性層における強磁性層はCoFe合金(組成式CoxFe100-x)からなり、前記反強磁性層は、MnIr合金(組成式MnyIr100-y)またはMnPt合金(組成式MnzPt100-z)からなる交換結合素子において、前記積層フェリ磁性層における強磁性層の合金組成比は、前記反強磁性層に隣接する側(隣接側)と非隣接側とで異ならせるものとし、隣接側強磁性層は、Co成分xが原子%で、42≦x≦83の範囲からなり、非隣接側強磁性層 Co 成分は、原子%で75〜90とすることを特徴とする(請求項1)。
【0008】
係る交換結合素子においては、磁化固定層が上記のように構成され、また強磁性層および反強磁性層が前記組成の合金から形成されることにより、一方向異方性定数Jkを従来よりも高くすることが可能になる。
【0009】
また、積層フェリ磁性層における強磁性層の合金組成比を、反強磁性層に隣接する側(隣接側)と非隣接側とで異なるものとし、隣接側強磁性層により一方向異方性定数の増大を図り、非隣接側強磁性層によりMR比の増大を図ることにより、一方向異方性定数の増大と、MR比の増大とを同時に達成できる交換結合素子の提供が可能となる。
【0010】
係る交換結合素子によれば、磁化固定層または反強磁性層に隣接する強磁性層が上記組成の合金から形成されることにより、一方向異方性定数Jkを従来よりも高くすることが可能になる。具体的には、Jkを0.4erg/cm2以上にすることが可能になる。
【0011】
一方向異方性定数を増大させる磁性材料と、MR比を増大させる磁性材料とは必ずしも一致せず、上記発明のように、積層フェリ磁性層における強磁性層の合金組成を、反強磁性層に隣接する側(隣接側)と非隣接側とで異なるものとすることにより、一方向異方性定数の増大と、MR比の増大とを同時に達成できる交換結合素子の提供が可能となる。
【0012】
更に本発明の交換結合素子は、先に記載の交換結合素子であり、前記反強磁性層は、MnIr合金におけるMn成分のyが原子%で21.5≦y≦28.5の範囲からなることを特徴とする(請求項)。あるいは前記反強磁性層は、MnPt合金におけるMn成分のzが原子%で53≦z≦57の範囲からなることを特徴とする(請求項)。
【0013】
係る交換結合素子によれば、反強磁性層を上記の組成の合金で形成することにより、反強磁性層と磁化固定層との間の一方向異方性定数Jkを高めることができ、磁化固定層の磁化方向を強固に固定することが可能になる。
【0014】
また本発明の交換結合素子は、先に記載の交換結合素子であり、前記反強磁性層Mn-Irの厚さが4nm以上19nm以下の範囲であることを特徴とする(請求項)。更に本発明の交換結合素子は、先に記載の交換結合素子であり、前記反強磁性層Mn-Irの厚さが5nm以上10nm以下の範囲であることを特徴とする(請求項)。更にまた本発明の交換結合素子は、先に記載の交換結合素子であり、前記反強磁性層Mn−Ptの厚さが16nm以上28nm以下の範囲であることを特徴とする(請求項)。
【0015】
係る交換結合素子によれば、反強磁性層の厚さが上記の範囲であるので、反強磁性層と磁化固定層との間の一方向異方性定数Jkを高めることができ、磁化固定層の磁化方向を強固に固定することが可能になる。具体的には、反強磁性層Mn-Irの厚さを4nm以上19nm以下の範囲とすることにより、Jkを0.4erg/cm2以上にすることが可能になる。また、反強磁性層Mn-Irの厚さを5nm以上10nm以下の範囲とすることにより、Jkを0.5erg/cm2以上にすることが可能になる。更に、反強磁性層Mn−Ptの厚さを16nm以上28nm以下の範囲とすることにより、Jkが0.4erg/cm2を超えるものとすることが可能になる。
【0016】
次に本発明のスピンバルブ型磁気抵抗素子は、先のいずれかに記載の交換結合素子を具備してなることを特徴とする(請求項)。
【0017】
また本発明の磁気ヘッドは、上記のスピンバルブ型磁気抵抗素子を具備してなることを特徴とする(請求項)。上記の磁気ヘッドの具体例として、上記の交換結合素子の強磁性層上に非磁性電導層と別の強磁性層を積層してスピンバルブ型磁気抵抗素子を形成し、このスピンバルブ型磁気抵抗素子を一対の絶縁膜で挟み、更にこれらのスピンバルブ型磁気抵抗素子及び絶縁膜をシールド層で挟んだものを例示できる。
【0018】
次に、本発明のトンネル型磁気抵抗素子は、先のいずれかに記載の交換結合素子を具備してなることを特徴とする(請求項)。
【0019】
また本発明の磁気式メモリは、上記のトンネル型磁気抵抗素子を具備してなることを特徴とする(請求項10)。上記の磁気式メモリの具体例として、例えば、スイッチング素子としてのトランジスタに上記のトンネル型磁気抵抗素子を接続してメモリセルを構成し、このメモリセルに対してワード線及びビット線を配設したものを例示できる。
【0020】
また本発明の磁気ヘッドは、上記のトンネル型磁気抵抗素子を具備してなることを特徴とする(請求項11)。上記の磁気ヘッドの具体例として、上記の交換結合素子の強磁性層上に絶縁膜と別の強磁性層を積層してトンネル型磁気抵抗素子を形成し、このトンネル型磁気抵抗素子を一対の絶縁膜で挟み、更にこれらのトンネル型磁気抵抗素子及び絶縁膜をシールド層で挟んだものを例示できる。
【0021】
次に本発明の交換結合素子の製造方法は、前記請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の交換結合素子の製造方法であって、少なくとも初期圧力を10-9Torr以下とした状態で、基体上に反強磁性層と磁化固定層を順次積層して形成することを特徴とする(請求項12)。
【0022】
係る交換結合素子の製造方法によれば、少なくとも初期圧力を10-9Torr以下とした状態で、基体上に反強磁性層と、上記組成の合金を含む磁化固定層を順次積層することにより、反強磁性層及び磁化固定層中の不純物を極力低減し、更に上記組成の磁化固定層を積層することにより、一方向異方性定数Jkが従来よりも高い交換結合素子を得ることが可能になる。
【0023】
また本発明の交換結合素子の製造方法は、先に記載の交換結合素子の製造方法であって、前記反強磁性層を成膜した後であって磁化固定層を成膜する前に、前記反強磁性層を熱処理することを特徴とする(請求項13)。
【0024】
また本発明の交換結合素子の製造方法は、先に記載の交換結合素子の製造方法であって、前記反強磁性層を赤外光照射により加熱して熱処理することを特徴とする(請求項14)。係る交換結合素子の製造方法によれば、反強磁性層に赤外光を照射して熱処理することにより、一方向異方性定数Jkがより優れた交換結合素子の製造が可能になる。
【0025】
また、少なくとも前記反強磁性層の成膜から前記熱処理終了までの間を、10-9Torr以下の圧力とした状態で行うことが好ましい(請求項15)。係る交換結合素子の製造方法によれば、一方向異方性定数Jkがより優れた交換結合素子の製造が可能になる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。尚、本明細書において、圧力をTorrの単位で表記するが、これをSI単位であるPa(パスカル)に変換する場合には、1Torr=133Paにより換算すればよい。また、膜厚をÅの単位で表記する場合があるが、これをSI単位であるnm(ナノメートル)に変換する場合には、1Å=0.1nmにより換算すればよい。更に磁界をOe(エルステッド)の単位で表記する場合があるが、これをSI単位であるA/m(アンペア毎メートル)に変換する場合には、1 Oe=79.58A/mにより換算すればよい。
【0027】
[第1の実施形態:交換結合素子]図1には、本発明の第1の実施形態である交換結合素子1を示す。なお、第1の実施形態は、請求項1に関わる磁化固定層が積層フェリ磁性層を備えるものではなく、単層の強磁性層を備える形態であるが、説明の便宜上、まず、この形態について述べ、後述する第2の実施形態において、積層フェリ磁性層を備えるものについて述べる。図1に示す交換結合素子1は、Siからなる基体2上に積層された下地層3と、反強磁性層4と、反強磁性層4上に形成された磁化固定層5と、Cuからなる反応防止層6と、Taからなる保護層7とから構成されている。
【0028】
反強磁性層4は、反強磁性を示す合金からなるもので、磁化固定層5と交換結合して磁化固定層5の磁化方向を一方向に固定する。この反強磁性層4は、初期圧力を10-9Torr以下とした状態で、スパッタリング法、蒸着法、あるいはその他の薄膜形成手段によって形成されたものであり、反強磁性層4内部に混入する不純物濃度が少なくなっている。これにより、反強磁性層4の結晶構造が乱れることがなく、磁化固定層5との間に生じる一方向異方性定数Jk(以下Jkと表記する)を増大させることができる。尚、反強磁性層4は初期圧力が10-6Torr以下の状態で形成されたものであっても良い。この場合、層内部への不純物の混入量が若干増大し、これにより最適な合金組成の範囲が若干狭くなるが、それでも十分なJkを発現させることができる。
【0029】
反強磁性層4は、組成式MnyIr100-yで表され、組成比を示すyが原子%で21.5≦y≦28.5の範囲である合金からなるものである。反強磁性層4の組成比を示すyは、21.5原子%以上28.5原子%以下の範囲が好ましく、24原子%以上26原子%以下の範囲がより好ましい。組成比yが21.5原子%未満または28.5原子%を超える範囲では、Jkが低下してしまうので好ましくない。あるいは反強磁性層4は、組成式MnzPt100-zで表され、組成比を示すzが原子%で53≦z≦57の範囲である合金からなるものである。反強磁性層4の組成比を示すzは、53原子%以上57原子%以下の範囲が好ましい。組成比zが53原子%未満または57原子%を超える範囲では、Jkが低下してしまうので好ましくない。反強磁性層4は特に、MnyIr100-y合金からなることがJkをより向上できる点で好ましい。
【0030】
また反強磁性層4は、磁化固定層5の積層前に初期真空度が10-9Torr以下、好ましくは10-10Torr以下の真空雰囲気中で熱処理されたものが好ましい。反強磁性層4が初期真空度10-9Torr以下の高真空中で熱処理されると、反強磁性層4の表面の酸化や表面への気体状の不純物の吸着を防止しつつ熱処理がなされ、反強磁性層4の表面の原子配列等が変化し、反強磁性層4の表面が改質される。この改質された表面に磁化固定層5を積層した場合、反強磁性層4と磁化固定層5との間の交換結合磁界が増強され、より高いJkを発現させることができ、磁化固定層5の磁化方向を強固に固定することが可能になる。
【0031】
また反強磁性層にMn−Irを選択した時、反強磁性層4の膜厚は、4nm以上19nm以下の範囲が好ましく、5nm以上10nm以下の範囲がより好ましい。膜厚が4nm未満あるいは19nmを超えた範囲では、Jkが低下してしまうので好ましくない。また反強磁性層をMn−Ptとし、該反強磁性層4の膜厚を、16nm以上28nm以下の範囲としても良い。具体的には、磁化固定層5の合金組成を最適化するとともに反強磁性層4にMn−Irを選択して、該反強磁性層4の厚さを4nm以上19nm以下の範囲とした場合はJkを0.4erg/cm2以上にでき、また該反強磁性層4の厚さを5nm以上10nm以下の範囲とした場合はJkを0.5erg/cm2以上にできる。また、反強磁性層4にMn−Ptを選択し、該反強磁性層4の厚さを16nm以上28nm以下の範囲とした場合にJkが0.4erg/cm2を超えるものとすることができる。
【0032】
次に磁化固定層5は、強磁性を示す合金からなるもので、図1中矢印で示すように、反強磁性層4と交換結合して磁化方向が一方向に固定されている。この磁化固定層5は、反強磁性層と同様に初期圧力を10-9Torr以下とした状態で、スパッタリング法、蒸着法、あるいはその他の薄膜形成手段によって形成されたものであり、磁化固定層5内部に混入する不純物濃度が少なくなっている。これにより、磁化固定層5の結晶構造が乱れることがなく、反強磁性層4との間に生じるJkを増大させることができる。尚、磁化固定層5は初期圧力が10-6Torr以下の状態で形成されたものであっても良い。この場合、層内部への不純物の混入量が若干増大し、これにより最適な合金組成の範囲が若干狭くなるが、それでも十分なJkを発現させることができる。
【0033】
また磁化固定層5は、その少なくとも一部または全部が、組成式CoxFe100-xで表され、組成比を示すxが原子%で42≦x≦83の範囲である合金から構成されている。即ち、磁化固定層5の全部を上記組成の合金としても良く、磁化固定層5を合金組成の異なる複数の強磁性膜の積層体とし、少なくとも反強磁性層4に接する部分を上記組成の合金としても良い。組成比xが42原子%未満あるいは83原子%を越えると、Jkが低下してしまうので好ましくない。尚、磁化固定層4が10-6Torr以下の初期圧力下で形成されたものである場合は、上記合金の組成比xを54原子%以上75原子%以下に範囲にすることが好ましい。尚、磁化固定層5の厚さは連続膜が形成できる限り薄いことが望ましいが、例えば1.5nm〜4.0nmとすることができる。
【0034】
次に下地層3は、例えばSiO2膜3a、Ta膜3b、Ni-Fe合金膜3c及びCu膜3dを順次積層したものが好ましい。この下地層3を形成することにより、反強磁性層4の結晶配向を制御することが可能になる。Ta膜3bの膜厚は2〜5nmの範囲が好ましく、Ni-Fe合金膜3cの膜厚は1〜5nmの範囲が好ましく、Cu膜3dの膜厚は0〜5nmの範囲が好ましい。なおTa膜3bとNiFe合金膜3cとはその界面において界面反応層を形成することにより反強磁性層4の結晶配向の制御性を向上させることができるので、少なくともTa膜3bは2nm以上、Ni-Fe合金膜3cの膜厚は1nm以上あることが好ましい。また用途に応じて電気抵抗の低いCu膜3dは省略することが可能である。また、全ての膜、Ta膜3b、Ni-Fe合金膜3c、Cu膜3dは、上部の交換結合素子部における表面粗さを低下させること、素子の集積度を向上させることから、すべて5nm以下の膜厚とすることが好ましい。
【0035】
保護層7は例えば膜厚が2nmのTaからなる膜である。また反応防止層6は磁化固定層5と保護層7との界面反応を抑止する目的で用いられ、厚さ1nm程度を形成すればよい。また反応防止層6は省略しても良い。
【0036】
係る交換結合素子1によれば、反強磁性層4及び磁化固定層5が上記組成の合金からそれぞれ形成されるので、一方向異方性定数Jkを従来より高くすることができる。具体的には、Jkを少なくとも0.4erg/cm2以上にすることが可能になる。
【0037】
[第2の実施形態:交換結合素子]次に本発明の第2の実施形態である交換結合素子を図面を参照して説明する。図2には、第2の実施形態の交換結合素子11を示す。尚、この交換結合素子11の構成要素のうち、第1の実施形態の交換結合素子1の構成要素と同一の構成要素には同一符号を付してその説明を省略する。
【0038】
この交換結合素子11は、Siからなる基体2上に積層された下地層3と、反強磁性層4と、反強磁性層4上に形成された磁化固定層15と、Cuからなる非磁性導電層6と、Taからなる保護層7とから構成されている。基体2、下地層3、反強磁性層4、反応防止層6及び保護層7は、第1の実施形態で説明した下地層、反強磁性層、反応防止層及び保護層と同一であるので説明を省略する。
【0039】
この交換結合素子11の磁化固定層15は、2つの強磁性層15a、15bと、これらの強磁性層15a、15bの間に挟まれた非磁性層15cとが積層されてなる積層フェリ磁性層である。この磁化固定層15においては、2つの強磁性層15a、15bが非磁性層15cを介して反強磁性的に結合しており、全体としてフェリ磁性状態になっている。即ち、反強磁性層4に隣接する強磁性層15aの磁化方向が反強磁性層4との交換結合により図中右向き(図中矢印の方向)に固定され、この強磁性層15aにもう一方の強磁性層15bが反強磁性的に結合してその磁化方向が図中左方向(図示矢印方向)に固定されている。このように2つの強磁性層15a、15bの磁化方向が反対向きなので、磁化固定層15全体の磁気モーメントが減少し、これにより外部磁界の影響が小さくなって磁化固定層15の磁化方向が強固に固定される。
【0040】
また、この磁化固定層15は、初期圧力を10-9Torr以下とした状態で、スパッタリング法、蒸着法、あるいはその他の薄膜形成手段によって形成されたものであり、磁化固定層15内部に混入する不純物濃度が少なくなっている。これにより、磁化固定層15を構成する強磁性層15a、15bの結晶構造が乱れることがなく、反強磁性層4との間に生じるJkを増大させることができる。尚、磁化固定層15は初期圧力が10-6Torr以下の状態で形成されたものであっても良い。この場合、層内部への不純物の混入量が若干増大し、これにより最適な合金組成の範囲が若干狭くなるが、それでも十分なJkを発現させることができる。
【0041】
また磁化固定層15のうち反強磁性層4に隣接する強磁性層15aは、その少なくとも一部または全部が、組成式CoxFe100-xで表され、組成比を示すxが原子%で42≦x≦83の範囲である合金からなることが好ましい。即ち、強磁性層15aの全部を上記組成の合金としても良く、強磁性層15aを合金組成の異なる複数の強磁性膜の積層体とし、少なくとも反強磁性層4に接する部分を上記組成の合金としても良い。
【0042】
組成比xが42原子%未満あるいは83原子%を越えると、Jkが低下してしまうので好ましくない。尚、磁化固定層4が10-6Torr以下の初期圧力下で形成されたものである場合は、上記合金の組成比xを54原子%以上75原子%以下に範囲にすることが好ましい。
【0043】
強磁性層15aおよび15bの膜厚は例えば1〜3nmの範囲がよい。更に非磁性層15cは例えばRuからなり、その膜厚は例えば0.2〜1.0nmの範囲が好ましく、0.6〜0.9nmの範囲がより好ましい。該膜厚は上記範囲0.2〜1.0nmおいて上下の強磁性層15a、15bの磁化方向を反強磁性的に強固に結合させることが可能である。さらに該範囲中においてもより薄いほうがより強固に結合できる。しかし、一方膜厚制御の安定性から6nm以上の膜厚が望ましく、実用的な観点からは0.6〜0.9nmがより好ましい。
【0044】
尚、磁化固定層15の構成は上述した構成に限られるものではなく、3または4以上の強磁性層と、2または3以上の非磁性層とが交互に積層されてなる多層構造の積層フェリ磁性層であっても良い。
【0045】
係る交換結合素子11によれば、反強磁性層4及び磁化固定層15の一部が上記組成の合金からそれぞれ形成されるので、一方向異方性定数Jkをより高くすることができ、更に磁化固定層15が積層フェリ磁性層であるので磁化固定層15の磁化方向を強固に固定することが可能になる。
【0046】
[第3の実施形態:交換結合素子の製造方法]次に、図1に示した交換結合素子1を例とし、この交換結合素子1の製造方法を説明する。図3に、本発明の交換結合素子の製造に用いて好適な成膜装置の平面模式図を示す。この成膜装置21は、メタル膜形成室22と、スパッタ膜形成室23と、熱処理室24と、搬送室25と、ガス流量制御ユニット26と、真空計27とを主体として構成されている。メタル膜形成室22はゲートバルブ22aを介して搬送室25に連結され、またスパッタ膜形成室23はゲートバルブ23aを介して搬送室25に連結され、更に熱処理室24はゲートバルブ24aを介して搬送室25に連結されている。
【0047】
また、搬送室25は3組の搬送ローダ28,29,30が取り付けられており、これらの搬送ローダ28,29,30は搬送室25内に収納された成膜対象物を、メタル膜形成室22、スパッタ膜形成室23及び熱処理室24にそれぞれ搬送できるように構成されている。また、メタル膜形成室22、スパッタ膜形成室23及び熱処理室24にはそれぞれ、ガス流量制御ユニット26と真空計27とが接続されており、各室内の圧力及び雰囲気ガスの種類を調整できるようになっている。
【0048】
メタル膜形成室22には、成膜用のターゲット22b…が複数個備えられており、また搬送室25から搬送された成膜対象物を移動させる試料ステージ22cが備えられている。ターゲット22b…はメタル成膜室内22の天井内側に取り付けられ、また試料ステージ22cはメタル成膜室内22の床面に移動自在に取り付けられている。各ターゲットは、例えば高純度のTa、Cu、Ni-Fe合金、Co-Fe合金、及びMn−Ir合金により形成されている。
【0049】
次に交換結合素子1の製造方法を説明する。まず、Siからなる基体2を搬送室内に設置し、この基体2を搬送ローダ30によって熱処理室30に搬送する。熱処理室30では、酸素雰囲気中で加熱処理することにより、基体2の表面に下地層3の一部であるSiO2膜3aを形成する。次に搬送ローダ30により基体2を搬送室25に戻す。
【0050】
メタル膜形成室22内は、図示しない排気ポンプにより予め10-6以下もしくは10-9Torr以下の初期圧力まで減圧された状態になっている。そして、搬送室25内をメタル形成室22内とほぼ同程度あるいは若干の低真空度とした上でゲートバルブ22aを解放し、搬送ローダ28によって基体2をメタル膜形成室22の試料ステージ22cに搬送する。次に高純度アルゴンガスを導入してメタル膜形成室22内の圧力を0.6〜3mTorrとし、基体2の温度を室温に保った状態で、試料ステージ22cを駆動して基体2をTaターゲット22b下に移動させる。そして、DCマグネトロンスパッタ法を用い、一方向に磁界を印加しつつ、先に形成されたSiO2膜3a上に、下地層3の一部であるTa膜3bを成膜する。
【0051】
次にTa膜3bの形成と同様な方法で、Ni-Fe膜3c及びCu膜3dを順次形成して下地層3を形成する。次に下地層3の形成と同様な方法で、下地層3上に反強磁性層4を形成する。反強磁性層4の膜厚は4nm以上19nm以下の範囲が好ましく、この膜厚は成膜速度を一定とし、成膜時間を制御することで調整する。また反強磁性層4の組成は、ターゲットの合金組成を調整することにより、MnyIr100-y(組成比yは原子%で21.5≦y≦28.5の範囲)あるいはMnzPt100-z(組成比zは原子%で53≦y≦58の範囲)なる組成にできる。
【0052】
次に、下地層3及び反強磁性層4の形成と同様な方法で、磁化固定層5を形成する。係る磁化固定層5は、組成範囲がある特定の範囲にある場合に、優れたJkを発現する。即ち、磁化固定層5の組成を、CoxFe100-xなる組成(組成比を示すxが原子%で42≦x≦83の範囲)とすることが好ましい。また組成比xを54原子%以上75原子%以下の範囲としてもよい。また磁化固定層5の膜厚は反強磁性層4の場合と同様に、成膜速度を一定とし、成膜時間を制御することで調整する。
【0053】
そして更に、磁化固定層5上に、Cuからなる反応防止層6及びTaからなる保護層7を順次積層する。
【0054】
次に、各層3、4…を積層した基体2を、搬送ローダ28及び30を用いて、搬送室25経由で熱処理室24に搬送し、熱処理室24内の初期圧力を10-6Torr以下〜10-9Torr以下まで減圧した状態で熱処理を行う。熱処理は、反強磁性層4がMnIr合金の場合は熱処理温度250〜350℃、熱処理時間30〜100分の範囲とし、反強磁性層4がMnPt合金の場合は熱処理温度200〜300℃、熱処理時間100〜300分の範囲として、メタル膜形成室22において成膜時に印加した磁界方向と同方向に100Oe以上の磁界を印加しつつ、基体2を熱処理室24内に内蔵されたヒータ等で加熱する。この熱処理により、反強磁性層4と磁化固定層5との界面で交換結合磁界が発現し、磁化固定層5の磁化方向が一方向に固定される。このようにして、図1に示す交換結合素子1が得られる。なお、上記熱処理はTaからなる保護層7を成膜後、メタル膜形成室22より搬送室25に搬送したのち、本成膜装置21より各層3、4…を積層した基体2を取り出し、別途装置により真空雰囲気下で磁界中熱処理を施しでも良い。その際の真空度、磁界強度、熱処理条件については上記熱処理室24内での条件と共通するので省略する。
【0055】
また、上記の交換結合素子1の製造方法において、反強磁性層4の成膜直後であって磁化固定層5の形成前に別途熱処理を行っても良い。反強磁性層4の形成後であって磁化固定層5の形成前に、真空雰囲気を保持したまま熱処理室24へ搬送し、その後メタル形成室22に再度搬送し、続いて磁化固定層5、反応防止層6、保護層7を成膜する。本熱処理を行うことで、交換結合素子1のJkをより高めることができる。尚、この場合の熱処理は、ヒータ加熱による熱処理のみならず、赤外光照射による熱処理でもよい。
【0056】
赤外光照射時の反強磁性層4の熱処理温度は、例えば赤外光源への通電量により調節される。また赤外光照射時の初期圧力は、10-9Torr以下、好ましくは10-10Torr以下とするのが好ましい。初期圧力が10-9Torrより低下すると、雰囲気中に残留した酸素、水等が反強磁性層4の表面に吸着し、場合によっては反強磁性層4の表面が酸化されたり変質されてしまい、Jkを低下させてしまうので好ましくない。このように、上記の高真空中で反強磁性層4を熱処理することにより、反強磁性層4の表面の酸化や表面への気体原子の吸着を防止することができ、表面の原子配列等を変化させて反強磁性層4の表面状態を改善することができ、この表面に磁化固定層5を積層すれば、反強磁性層4と磁化固定層5との間で交換結合磁界を発現させ、高いJkを発現させることができる。
【0057】
また、磁化固定層を、2以上の強磁性層と1以上の非磁性層とが交互に積層されてなる積層フェリ磁性層とし、強磁性層のうち反強磁性層に隣接する強磁性層をCoxFe100-xなる組成(組成比を示すxが原子%で42≦x≦83の範囲)の合金で形成することにより、図2に示す交換結合素子11を形成しても良い。
【0058】
[第4の実施形態:スピンバルブ型磁気抵抗素子]次に本発明の第4の実施形態であるスピンバルブ型磁気抵抗素子を図面を参照して説明する。図4には、本発明の第4の実施形態であるスピンバルブ型磁気抵抗素子40を示す。このスピンバルブ型磁気抵抗素子40は、基体2上に、下地層3と、反強磁性層4と、磁化固定層5と、非磁性導電層46と、別の強磁性層47と、保護層48とが順次積層されて構成されている。このスピンバルブ型磁気抵抗素子40においては、反強磁性層4及び固定磁化層5の積層体が交換結合素子41を構成する。尚、上記の基体2、下地層3、反強磁性層4及び磁化固定層5の詳細な構成は、第の実施形態にて説明した基体2、反強磁性層4及び磁化固定層15の構成、材質、膜厚等と同様であり、その説明を省略する。
【0059】
非磁性導電層46は例えば膜厚が2〜2.5nmのCuからなる層であり、磁化固定層5と別の強磁性層47の間に位置してこれらの層5、47の磁化方向に依存した電子のスピン依存伝導を生じさせる。また強磁性層47は例えば膜厚が1〜5nmのNi-Fe合金またはCo-Fe合金またはCoまたはそれらの積層膜からなる層であり、非磁性導電層46に隣接している。このスピンバルブ型磁気抵抗素子40においては、強磁性層47が磁化自由層を構成する。この強磁性層47の磁化方向は、例えばバイアス磁界等によって例えば磁化固定層の磁化方向の直交方向(図の手前方向)に揃えられている。また保護層48は、例えば膜厚が2nmのTaからなる膜である。強磁性層47と保護層48との界面反応を嫌う場合は、両層間に厚さ1nm程度の反応防止層としてのCu膜を挿入しても良い。
【0060】
このスピンバルブ型磁気抵抗素子40に外部磁界が印加されると、磁化自由層である強磁性層47の磁化方向が外部磁界の影響により変動し、磁化固定層5との間で磁化方向の変動が生じて電子のスピン依存伝導性が変化して抵抗変化が生じ、この抵抗変化を検知することで外部磁界の変動を検知できる。なお、磁化固定層5の磁化方向は反強磁性層4との交換結合により強固に固定されているので、外部磁界が印加されてもその磁化方向が変動することがない。
【0061】
上記のスピンバルブ型磁気抵抗素子40によれば、Jkが高い本発明に係る交換結合素子41を備えているので、外部磁界によって磁化固定層5の磁化方向が変動することがなく、高い磁気抵抗変化率(MR比)を発現することができる。更に、上記の強磁性層47と保護層48との間に、電子を弾性散乱させる金属酸化物からなる鏡面反射層を形成しても良い。鏡面反射層を形成した場合には、MR比を更に向上させることができる。
【0062】
また、上記のスピンバルブ型磁気抵抗素子40によれば、反強磁性層4の層厚を19nm以下にできるので、スピンバルブ型磁気抵抗素子40の全厚を低減することができ、ギャップ長を短縮して高記録密度化に対応させることができる。
【0063】
また、上記のスピンバルブ型磁気抵抗素子40の磁化固定層5を、強磁性層と非磁性層の積層体からなる積層フェリ磁性層としても良い。この積層フェリ磁性層たる磁化固定層の具体的な構成は、例えば第2の実施形態で説明した磁化固定層15の構成を例示できる。尚、積層フェリ磁性層たる磁化固定層において非磁性導電層46に接する層は強磁性層になるが、この強磁性層はCo90Fe10なる組成の合金とすることが好ましい。係る強磁性層を上記の組成の合金とすることにより、スピン依存散乱が大きくなり磁気抵抗効果をより大きくすることができる。
【0064】
係る積層フェリ磁性層からなる磁化固定層を備えたスピンバルブ型磁気抵抗素子であれば、磁化固定層の磁化方向をより強固に固定することができ、外部磁界の影響を排除してMR比をより高くすることができる。
【0065】
[第5の実施形態:磁気ヘッド]図5には、本発明の第5の実施形態であるGMR型再生ヘッド及びこの再生ヘッドと誘導型記録ヘッドを組み合わせた記録再生分離型磁気ヘッドを示し、図6には、GMR型再生ヘッドの要部を示す。図5及び図6において、符号800は本発明に係るスピンバルブ型磁気抵抗素子、801は本発明に係る交換結合素子、803は下地層、804は反強磁性層、805は固定磁化層として機能する強磁性層、806は非磁性導電層、807は磁化自由層として機能する強磁性層、808はMR電極、809はハード膜、811はGMR型再生ヘッド、812は記録ヘッドの下部磁極(824)を兼ねるGMR型再生ヘッド811の上部シールド層、813、814は非磁性絶縁膜、815はGMR型再生ヘッド811の下部シールド、821は記録ヘッド、822は記録ヘッド821の上部ポール、823は導電体からなるコイル、824はGMR型再生ヘッド811の上部シールド(812)を兼ねる記録ヘッドの下部磁極である。
【0066】
尚、スピンバルブ型磁気抵抗素子800の下地層803、反強磁性層804、強磁性層(磁化固定層)805、非磁性導電層806及び強磁性層(磁化自由層)807の詳細な構成は、第4の実施形態で説明したスピンバルブ型磁気抵抗素子40の下地層3、反強磁性層4、強磁性層(磁化固定層)5、非磁性導電層46及び強磁性層(磁化自由層)47の構成とほぼ同一である。
【0067】
本発明に係る交換結合素子801を含むスピンバルブ型磁気抵抗素子800を上部シールド層812と下部シールド層815で挟んだ部分が再生ヘッドとして機能し、薄膜Cuからなるコイル823を上部磁極822と下部磁極824で挟んだ部分が記録ヘッドとして機能する。この記録再生分離型磁気ヘッドは、GMR型再生ヘッド811の上部シールド層812が、記録ヘッド821の下部磁極824を兼ねる構成とした場合であるが、上部シールド層と下部磁極に別材料を用いて別構成としたり、あるいは両者の間に他の構成物を配置しても本発明の作用、効果は失われるものではない。
【0068】
このGMR型再生ヘッド811によれば、Jkが高い本発明に係る交換結合素子801を備えているので、記録磁界等の外部磁界によって磁化固定層805の磁化方向が変動することがなく、高い磁気抵抗変化率(MR比)を発現することができる。
【0069】
[第6の実施形態:トンネル型磁気抵抗素子]次に本発明の第6の実施形態であるトンネル型磁気抵抗素子を図面を参照して説明する。図7には、本発明の第6の実施形態であるトンネル型磁気抵抗素子50を示す。このトンネル型磁気抵抗素子50は、基体2上に、下地層3と、反強磁性層4と、磁化固定層5と、絶縁層56と、別の強磁性層57と、保護層58とが順次積層されて構成されている。このトンネル型磁気抵抗素子50においては、反強磁性層4及び固定磁化層5の積層体が交換結合素子51を構成する。尚、上記の基体2、下地層3、反強磁性層4及び磁化固定層5の詳細な構成は、第2の実施形態にて説明した基体2、反強磁性層4及び磁化固定層15の構成、材質、膜厚等と同様であり、その説明を省略する。尚、下地層3には、例えばSiO2膜3aとTa膜3bとの間に、別のTa膜とCu膜を追加しても良い。SiO2膜上に成膜するTa膜はここにおいてはこのTa膜に続けて形成されるCu膜とSiO2膜との密着性の向上を目的に用いられ、5nm程度の膜厚でよい。さらにこのTaに続けて形成されるCu膜は膜のシート抵抗を低減することを目的に用いられ、例えば20〜500nmと、用途に応じて決定すればよい。なお、該Cu膜は電気抵抗を下げることが目的であり、Cu以外にAl、あるいはその合金、その他の低抵抗材料を用いても良い。
【0070】
絶縁層56は例えば膜厚が0.5〜3.0nmのAl2O3等の非磁性絶縁体からなる層であり、磁化固定層5と別の強磁性層47の間に位置してこれらの層5、47の磁化方向に依存したトンネル電流を流す。また強磁性層57は例えば膜厚が1〜5nmのNi-Fe合金またはCo-Fe合金またはCoまたはそれらの積層膜からなる層であり、絶縁層56に隣接している。トンネル型磁気抵抗素子50においては、強磁性層57が磁化自由層を構成する。強磁性層57は下部強磁性層57a及び上部強磁性層57bからなる2層構造で構成されている。下部強磁性層57aは例えば、Co75Fe25の組成からなるもので、この下部強磁性層57aを絶縁層56に隣接して配すればTMR効果を増大させる効果がある。更に上部強磁性層57bは例えばNi-Fe合金膜が挙げられる。この上部強磁性層57bを積層することにより、強磁性層57の磁化反転が容易となり、低磁界での動作が可能となる。下部強磁性層57bは例えば2〜5nm、上部強磁性層57aは例えば10〜50nmの膜厚にできる。また保護膜58は、例えば膜厚が2nmのTaからなる膜である。また、強磁性層57上層であって、保護層58の下層に、Cu層を配置してよい。これにより絶縁層より上の上部電極層のシート抵抗を低減でき、TMR素子の安定動作に効果的である。なお、該Cu層は電気抵抗を下げることが目的であり、Cu以外にAl、あるいはその合金、その他の低抵抗材料を用いても良い。
【0071】
このトンネル型磁気抵抗素子50の磁化自由層たる強磁性層57に外部磁界が印加されると、その磁化方向が外部磁界の影響により変動し、磁化固定層5との間で磁化方向の変動が生じ、これにより絶縁層57を介して磁化固定層5及び磁化自由層57間を流れるトンネル電流量が変動し、これによりトンネル型磁気抵抗素子50の抵抗変化が生じる。なお、磁化固定層5の磁化方向は反強磁性層4との交換結合により強固に固定されているので、外部磁界が印加されてもその磁化方向が変動することがない。
【0072】
上記のトンネル型磁気抵抗素子50によれば、Jkが高い本発明に係る交換結合素子51を備えているので、外部磁界によって磁化固定層5の磁化方向が変動することがなく、高い磁気抵抗変化率(MR比)を発現することができる。
【0073】
また、上記のトンネル型磁気抵抗素子50によれば、反強磁性層4の層厚を19nm以下にできるので、トンネル型磁気抵抗素子50の全厚を低減することができ、トンネル型磁気抵抗素子50の集積度を向上することができる。
【0074】
また、上記のトンネル型磁気抵抗素子50の磁化固定層5を、強磁性層と非磁性層の積層体からなる積層フェリ磁性層としても良い。この積層フェリ磁性層たる磁化固定層の具体的な構成は、例えば第2の実施形態で説明した磁化固定層15の構成を例示できる。尚、積層フェリ磁性層たる磁化固定層において絶縁層56に接する層は強磁性層になるが、この強磁性層はCo75Fe25なる組成の合金とすることが好ましい。係る強磁性層を上記の組成の合金とすることにより、分極率が大きくなってトンネル型磁気抵抗効果をより増大することができる。
【0075】
係る積層フェリ磁性層からなる磁化固定層を備えたトンネル型磁気抵抗素子であれば、磁化固定層の磁化方向をより強固に固定することができ、外部磁界の影響を排除してMR比をより高くすることができる。
【0076】
尚、上記のトンネル型磁気抵抗素子50を、図5に示すスピンバルブ型磁気抵抗素子801に置き換えてTMR型再生ヘッドを構成しても良い。このTMR再生ヘッドによれば、Jkが高い本発明に係る交換結合素子を備えているので、記録磁界等の外部磁界によって磁化固定層の磁化方向が変動することがなく、高い磁気抵抗変化率(MR比)を発現することができる。
【0077】
[第7の実施形態:磁気式メモリ]次に本発明の第7の実施形態である磁気式メモリを図面を参照して説明する。図8は磁気式メモリの要部であるメモリセルの断面図である。このメモリセルは、セル選択用の素子であるMOSFET901と、ワード線902と、ビット線903と、トンネル型磁気抵抗素子904とから構成されている。ワード線902はMOSFET901に接続されている。またビット線903はトンネル型磁気抵抗素子904に接続され、更にトンネル型磁気抵抗素子904は接続配線905を介してMOSFET901に接続されている。データの読み込み時においては、MOSFET901によりメモリセルを選択し、ワード線902からMOSFET901を介してトンネル型磁気抵抗素子904に電流を流す。トンネル型磁気抵抗素子904の磁化固定層及び強磁性層のそれぞれの磁化方向によって電気抵抗が異なることを利用して、記録されたデータを読み取ることができる。また書き込み時においてはビット線903およびワード線902とに電流を流し、ビット線903に流れる電流が形成する磁界と、ワード線902に流れる電流が形成する磁界と、の合成磁界によってトンネル型磁気抵抗素子の強磁性層のみを磁化反転させる。反強磁性層によりピン止めされた磁化固定層は磁化反転せず、強磁性層の磁化のみ反転させることができるために、上記の平行、反平行状態を意図して形成することが可能であり、これによりメモリの記憶及び消去が行える。
【0078】
係る磁気式メモリによれば、上記の交換結合素子からなるトンネル型磁気抵抗素子を備えているので、磁化固定層の磁化が上記合成磁界によって反転することがなく、信頼性の高いメモリを構成することができる。
【0079】
【実施例】
(実験例1:磁化固定層の最適組成の調査) 図1に示す構成の交換結合素子を製造して磁化固定層の最適組成の調査を行った。まず、基体として、Si単結晶の基板を用意した。この基板を熱処理して表面にSiO2膜を形成した。そしてこの基板を硫酸過酸化水素混合液(硫酸:過酸化水素=4:1)に浸し、更に基板を希フッ酸水溶液(HF:水=1:100)に浸し、更に超純水で濯ぐことにより、基板の表面をエッチングした。
【0080】
エッチング処理済みの基板を図3に示す成膜装置に投入し、メタル膜形成室内の初期圧力を10-9Torr以下(UCプロセス)若しくは10-6Torr以下(ノーマルプロセス)とした後、高純度アルゴンガスを導入して圧力を1〜3mTorrとした状態で、スパッタリング法による成膜処理を行い、図1に示すような構成の交換結合素子を製造した。スパッタリングに用いたターゲット種類及びスパッタリング条件を、表1および表2に示す。
【0081】
【表1】
Figure 0004039656
【0082】
【表2】
Figure 0004039656
【0083】
得られた交換結合素子の具体的な構成は、Si基板/SiO2膜(50)/Ta膜(5)/Ni-Fe膜(2)/Cu膜(5)/反強磁性層(7.5)/磁化固定層(4)/Cu膜(4)/Ta膜(2)、なる構成であった。なお、かっこ書きは各層の膜厚を示す。単位はnmである。また、反強磁性層はMn73.8Ir26.2なる組成の合金とMn46Pt54なる組成の合金の2種類であり、磁化固定層はCoxFe100-x(x=0,35,50,60,70,80,90原子%)なる組成の合金である。
【0084】
次に、得られた交換結合素子に対して1kOe(79.58kA/m)の磁場中で熱処理を行い、反強磁性層と磁化固定層との間で交換結合磁界を発現させて磁化固定層の磁化方向を一方向に固定した。尚、熱処理は、反強磁性層がMn-Irの場合、5×10-6Torr以下の真空中で、200℃/分の昇温速度で300℃まで加熱して30分間保持した後に200℃/分の降温速度で室温まで冷却する条件で行い、反強磁性層がMnPtの場合は250℃まで加熱して200分間保持した後に200℃/分の降温速度で室温まで冷却する条件で行った。
【0085】
また、一部の交換結合素子については、反強磁性層を形成した後であって磁化固定層の形成前に、反強磁性層表面に赤外光を照射することにより反強磁性層を熱処理した。この時の熱処理条件は、圧力を10-9Torr以下とし、熱処理温度を180℃とし、熱処理時間を20分とした。このようにして、本発明に係る交換結合素子を製造した。
【0086】
得られた交換結合素子について、磁化曲線を振動試料型磁力計にて測定し、磁化固定層の飽和磁化Ms及び交換結合磁界Hexを求めた。更にこのMs及びHexから、一方向異方性定数JkをJk=MsHexdFの式により算出した。なおdFは磁化固定層の膜厚(4nm)である。
【0087】
図9に、反強磁性層としてMn73.8Ir26.2合金を用いた交換結合素子のJkと磁化固定層の組成との関係を示し、図10には、反強磁性層としてMn46Pt54合金を用いた交換結合素子のJkと磁化固定層の組成との関係を示す。尚、図10でMn73.8Ir26.2合金を用いた交換結合素子のJk(白丸プロット)を示しているが、これは 図9示す白丸プロットの交換結合素子と同じものである。
【0088】
図9に示すように、10-9Torr以下の初期圧力で成膜した交換結合素子では、磁化固定層の組成比を示すxが42〜83原子%の範囲でJkが0.4erg/cm2を越えていることがわかる。特に、組成比xが50〜70原子%の範囲でJkが0.45erg/cm2を越えていることがわかる。一方、10-6Torr以下の初期圧力で成膜した交換結合素子でも、組成比xが54〜75原子%の範囲でJkが0.4erg/cm2を越えていることがわかる。また図10に示すように、Mn46Pt54合金からなる反強磁性層の場合、組成比xが60〜70原子%の範囲でJkが0.4erg/cm2を越えていることがわかる。
【0089】
このように、磁化固定層の組成を最適化することにより、10-6Torr以下の初期圧力で成膜した交換結合素子のみならず、10-9Torr以下の初期圧力で成膜した交換結合素子でも、Jkが0.4erg/cm2を越えることがわかる。
【0090】
また図9に示すように、反強磁性層に赤外光照射して熱処理した場合は、膜時の初期圧力の高低に関わらず、Jkが向上していることがわかる。特に、10-6Torr以下の初期圧力で成膜するとともに赤外光照射で熱処理した交換結合素子は、Jkが0.64erg/cm2に達していることがわかる。このように赤外光照射による熱処理を行った場合は、Jkが大幅に向上することがわかる。
【0091】
(実験例2:反強磁性層の最適組成の調査)成膜時の初期圧力を10-9Torr以下としたこと以外は実験例1の場合と同様にして、基体上に反強磁性層等を積層して交換結合素子を製造した。得られた交換結合素子の具体的な構成は、Si基板/SiO2膜(50)/Ta膜(5)/Ni-Fe膜(2)/Cu膜(5)/反強磁性層(7.5〜20)/磁化固定層(4)/Cu膜(4)/Ta膜(2)、なる構成であった。なお、かっこ書きは各層の膜厚を示す。単位はnmである。また、反強磁性層は厚さ7.5nmのMnyIr100-y(y=21,24,25.3,26.2,28.1,30,30.6原子%)なる組成の合金、または厚さ20nmのMnzPt100-z(z=48,50.5,51,52,53,54.5,56,59原子%)なる組成の合金であり、磁化固定層はCo70Fe30なる組成の合金である。
【0092】
次に、得られた交換結合素子に対して、1kOe(79.58kA/m)の磁場中で熱処理を行い、反強磁性層と磁化固定層との間で交換結合磁界を発現させて磁化固定層の磁化方向を一方向に固定した。尚、熱処理は、反強磁性層がMn-Irの場合、5×10-6Torr以下の真空中で、200℃/分の昇温速度で300℃まで加熱して30分間保持した後に200℃/分の降温速度で室温まで冷却する条件で行い、反強磁性層がMnPtの場合は250℃まで加熱して200分間保持した後に200℃/分の降温速度で室温まで冷却する条件で行った。このようにして、本発明に係る交換結合素子を製造した。
【0093】
得られた交換結合素子について、実験例1と同様にしてJkを測定した。図11に、交換結合素子のJkと反強磁性層の組成(MnyIr100-y)との関係を示し、図12に、交換結合素子のJkと反強磁性層の組成(MnzPt100-z)との関係を示す。図11に示すように、反強磁性層(MnyIr100-y)の組成比を示すyが21.5〜28.5原子%の範囲でJkが0.4erg/cm2を越えることがわかる。特に、組成比yが24〜26原子%の範囲でJkが0.5erg/cm2を越えることがわかる。また図12に示すように、反強磁性層(MnzPt100-z)の組成比を示すzが53〜57原子%の範囲でJkが0.4erg/cm2を越えることがわかる。このように、反強磁性層の組成を最適化することにより、10-9Torr以下の初期圧力で成膜した交換結合素子においてJkが0.4erg/cm2を越えることがわかる。
【0094】
(実験例3:反強磁性層の最適膜厚の調査)成膜時の初期圧力を10-9Torr以下としたこと以外は実験例1の場合と同様にして、基体上に反強磁性層等を積層して交換結合素子を製造した。得られた交換結合素子の具体的な構成は、Si基板/SiO2膜(50)/Ta膜(5)/Ni-Fe膜(2)/Cu膜(5)/反強磁性層(2.5〜20)/磁化固定層(4)/Cu膜(4)/Ta膜(2)、なる構成であった。なお、かっこ書きは各層の膜厚を示す。単位はnmである。また、反強磁性層は、膜厚が2.5〜20nmのMn73.8Ir26.2なる組成の合金であり、磁化固定層は、Co62Fe38なる組成及びCo90Fe10なる組成の2種類の合金である。
【0095】
次に、得られた交換結合素子に対して、1kOe(79.58kA/m)の磁場中で熱処理を行い、反強磁性層と磁化固定層との間で交換結合磁界を発現させて磁化固定層の磁化方向を一方向に固定した。尚、熱処理は、反強磁性層がMn-Irの場合、5×10-6Torr以下の真空中で、200℃/分の昇温速度で300℃まで加熱して30分間保持した後に200℃/分の降温速度で室温まで冷却する条件で行い、反強磁性層がMnPtの場合は250℃まで加熱して200分間保持した後に200℃/分の降温速度で室温まで冷却する条件で行った。このようにして、本発明に係る交換結合素子を製造した。
【0096】
得られた交換結合素子について、実験例1と同様にしてJkを測定した。図13に、Co62Fe38なる組成の磁化固定層を備えた交換結合素子のJkと反強磁性層の膜厚との関係を示し、図14には、Co90Fe10なる組成の磁化固定層を備えた交換結合素子のJkと反強磁性層の膜厚との関係を示す。
【0097】
図13から明らかなように、反強磁性層の膜厚が4〜19.5nmの範囲でJkが0.4erg/cm2を越えることがわかる。特に反強磁性層の膜厚が5〜10nmの範囲でJkが0.5erg/cm2を越えることがわかる。一方、図14に示すように、磁化固定層がCo90Fe10なる組成の合金の場合は、膜厚が5nmのときにJkが0.2erg/cm2に達するに過ぎず、磁化固定層の組成が最適な組成範囲から外れた場合にはJkの向上が全く見られないことがわかる。
【0098】
また、上記の反強磁性層を厚さ〜40nmのMn46Pt54合金とし、磁化固定層をCo62Fe38なる組成としたこと以外は上記と同様にして交換結合素子を製造した。図15に、この交換結合素子のJkと反強磁性層の膜厚との関係を示す。図15に示すように、Mn46Pt54合金からなる反強磁性層の場合は、反強磁性層の膜厚が16〜28nmの範囲でJkが0.4erg/cm2を越えることがわかる。
【0099】
以上の実験の結果から、磁化固定層の組成をCoxFe100-x(x=42〜83原子%)とし、反強磁性層の組成をMnyIr100-y(y=21.5〜28.5原子%)とし、反強磁性層の膜厚を4〜19nmとし、成膜時の初期圧力を10-9Torr以下とすることで、Jkが0.4erg/cm2を越えることがわかる。また、磁化固定層の組成をCoxFe100-x(x=50〜70原子%)とし、反強磁性層の組成をMnyIr100-y(y=24〜26原子%)とし、反強磁性層の膜厚を5〜10nmとし、成膜時の初期圧力を10-9Torr以下とすることで、Jkが0.5erg/cm2を越えることがわかる。更に、磁化固定層の組成をCo60Fe40とし、反強磁性層の組成をMnyIr100 -y(y=24〜26原子%)とし、反強磁性層の膜厚を5〜10nmとし、成膜時の初期圧力を10-9Torr以下とし、反強磁性層の形成後に赤外光照射して熱処理することで、Jkが0.6erg/cm2に達することがわかる。
【0100】
更にまた、磁化固定層の組成をCoxFe100-x(x=42〜83原子%)とし、反強磁性層の組成をMnzPt100-z(z=53〜56原子%)とし、反強磁性層の膜厚を16〜28nmとし、成膜時の初期圧力を10-9Torr以下とすることで、Jkが0.4erg/cm2を越えることがわかる。
【0101】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明の交換結合素子には、磁化固定層の少なくとも一部または全部に、組成式CoxFe100-xで表され、組成比を示すxが原子%で42≦x≦83の範囲である合金が含まれるので、一方向異方性定数Jkを従来よりも高くすることができる。
【0102】
また本発明の交換結合素子においては、磁化固定層が、強磁性層/非磁性層/強磁性層の3層構造を含む積層フェリ磁性層としてなり、さらに、反強磁性層に隣接する強磁性層の組成がCoxFe100-x(42≦x≦83)の合金からなるので、強磁性層が上記組成の合金から形成されることにより一方向異方性定数Jkをより高くできるとともに、磁化固定層が積層フェリ磁性層であるため磁化固定層の磁化方向を強固に固定することができる。さらにまた、前記積層フェリ磁性層における強磁性層の合金組成を、反強磁性層に隣接する側(隣接側)と非隣接側とで異なるものとし、隣接側強磁性層は、 Co 成分xが原子%で、42≦x≦83の範囲からなり、非隣接側強磁性層の Co 成分は、原子%で75〜90とすることにより、一方向異方性定数の増大と、MR比の増大とを同時に達成できる交換結合素子の提供が可能となる。
【0103】
また本発明のスピンバルブ型磁気抵抗素子によれば、本発明に係る交換結合素子を備えているので、外部磁界によって磁化固定層の磁化方向が変動することがなく、高い磁気抵抗変化率(MR比)を発現することができる。更に本発明のトンネル型磁気抵抗素子によれば、本発明に係る交換結合素子を備えているので、外部磁界によって磁化固定層の磁化方向が変動することがなく、高い磁気抵抗変化率(MR比)を発現することができる。
【0104】
そして、本発明の交換結合素子の製造方法によれば、少なくとも初期圧力を10-9Torr以下とした状態で、反強磁性層と上記組成の合金を含む磁化固定層を順次積層するので、反強磁性層及び磁化固定層中の不純物が極力低減され、一方向異方性定数Jkが従来よりも高い交換結合素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】 本発明の第1の実施形態である交換結合素子の模式図である。
【図2】 本発明の第2の実施形態である交換結合素子の模式図である。
【図3】 本発明の交換結合素子の製造に用いて好適な成膜装置の平面模式図である。
【図4】 第4の実施形態であるスピンバルブ型磁気抵抗素子の模式図である。
【図5】 本発明の第5の実施形態であるGMR型再生ヘッドを備えた記録再生分離型磁気ヘッドを示す模式図である。
【図6】 GMR型再生ヘッドの要部を示す模式図である。
【図7】 本発明の第6の実施形態であるトンネル型磁気抵抗素子を示す模式図である。
【図8】 本発明の第7の実施形態である磁気式メモリの要部を示す断面模式図である。
【図9】 交換結合素子のJkと磁化固定層の組成との関係を示すグラフである。
【図10】 交換結合素子のJkと磁化固定層の組成との関係を示すグラフである。
【図11】 交換結合素子のJkと反強磁性層の組成との関係を示すグラフである。
【図12】 交換結合素子のJkと反強磁性層の組成との関係を示すグラフである。
【図13】 交換結合素子のJkと反強磁性層の膜厚との関係を示すグラフである。
【図14】 交換結合素子のJkと反強磁性層の膜厚との関係を示すグラフである。
【図15】 交換結合素子のJkと反強磁性層の膜厚との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0106】
1、11、41、51 交換結合素子
2 基体
3 下地層
4 反強磁性層
5、15 磁化固定層
15a 強磁性層(反強磁性層に隣接する強磁性層)
15b 強磁性層
15c 非磁性層
40、800 スピンバルブ型磁気抵抗素子
50 トンネル型磁気抵抗素子
811 GMR型再生ヘッド(磁気ヘッド)

Claims (15)

  1. 基体上に反強磁性層が積層されるとともに、該反強磁性層と交換結合して磁化方向が固定される磁化固定層が前記反強磁性層上に積層されてなり、かつ前記磁化固定層は、強磁性層/非磁性層/強磁性層の3層構造を含む積層フェリ磁性層としてなり、さらに前記積層フェリ磁性層における強磁性層はCoFe合金(組成式CoxFe100-x)からなり、前記反強磁性層は、MnIr合金(組成式MnyIr100-y)またはMnPt合金(組成式MnzPt100-z)からなる交換結合素子において、
    前記積層フェリ磁性層における強磁性層の合金組成比は、前記反強磁性層に隣接する側(隣接側)と非隣接側とで異ならせるものとし、
    隣接側強磁性層は、Co成分xが原子%で、42≦x≦83の範囲からなり、非隣接側強磁性層 Co 成分は、原子%で75〜90とすることを特徴とする交換結合素子。
  2. 前記反強磁性層は、MnIr合金におけるMn成分のyが原子%で21.5≦y≦28.5の範囲からなることを特徴とする請求項1に記載の交換結合素子。
  3. 前記反強磁性層は、MnPt合金におけるMn成分のzが原子%で53≦z≦57の範囲からなることを特徴とする請求項1に記載の交換結合素子。
  4. 前記反強磁性層の厚さが4nm以上19nm以下の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の交換結合素子。
  5. 前記反強磁性層の厚さが5nm以上10nm以下の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の交換結合素子。
  6. 前記反強磁性層の厚さが16nm以上28nm以下の範囲であることを特徴とする請求項に記載の交換結合素子。
  7. 請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の交換結合素子を具備してなることを特徴とするスピンバルブ型磁気抵抗素子。
  8. 請求項に記載のスピンバルブ型磁気抵抗素子を具備してなることを特徴とする磁気ヘッド。
  9. 請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の交換結合素子を具備してなることを特徴とするトンネル型磁気抵抗素子。
  10. 請求項に記載のトンネル型磁気抵抗素子を具備してなることを特徴とする磁気式メモリ。
  11. 請求項に記載のトンネル型磁気抵抗素子を具備してなることを特徴とする磁気ヘッド。
  12. 請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の交換結合素子の製造方法であって、少なくとも初期圧力を10-9Torr以下とした状態で、基体上に反強磁性層と磁化固定層を順次積層して形成することを特徴とする交換結合素子の製造方法。
  13. 前記反強磁性層を成膜した後であって磁化固定層を成膜する前に、前記反強磁性層を熱処理することを特徴とする請求項12に記載の交換結合素子の製造方法。
  14. 前記反強磁性層を赤外光照射により加熱して熱処理することを特徴とする請求項13に記載の交換結合素子の製造方法。
  15. 少なくとも前記反強磁性層の成膜から前記熱処理終了までの間を、10-9Torr以下の圧力とした状態で行うことを特徴とする請求項13または14に記載の交換結合素子の製造方法。
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