JP4387955B2 - 磁気抵抗効果素子 - Google Patents

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Description

本発明は、磁気抵抗効果素子(以下、「MR素子」と略す)およびこれを用いた磁気デバイスに関するものである。本発明のMR素子は、特に、磁気ディスク、光磁気ディスク、磁気テープ等の媒体から情報を読み出す磁気記録再生用ヘッド、自動車等に用いられる磁気センサー、磁気抵抗効果型メモリー装置(磁気ランダム・アクセス・メモリー;以下、「MRAM」と略す)等に適している。
少なくとも2つの磁性層と少なくとも1つの非磁性層とを交互に積層した構造を有する多層膜からは大きな磁気抵抗効果を得ることができ、この効果は、巨大磁気抵抗(GMR)効果と呼ばれている。この多層膜では、非磁性層は、磁性層の間に配置される(例えば、磁性層/非磁性層/磁性層/非磁性層・・・)。磁気抵抗効果は、磁性層間の磁化方向の相対的な相違に応じて電気抵抗が変化する現象である。
GMR素子では、非磁性層に、Cu、Au等の導電性材料が用いられる。一般に、電流は多層膜の膜面に平行に流す(CIP−GMR:Current In Plane−GMR)。これに対し、電流を膜面に垂直な方向に流すGMR素子は、CPP−GMR(Current Perpendicular to the Plane−GMR)と呼ばれている。CPP−GMR素子は、CIP−GMR素子と比較して磁気抵抗変化率(MR比)は大きいが抵抗値が小さい。
GMR素子の1種であるスピンバルブ型素子は、大きな動作磁界を必要としない。この素子は、非磁性層を狭持する自由磁性層(自由層)と固定磁性層(固定層)とを含んでいる。この素子では、自由磁性層の磁化回転に応じて生じる両磁性層の磁化方向が為す相対的な角度の変化が利用される。スピンバルブ型GMR素子としては、例えば、反強磁性材料であるFe−Mnを磁化回転抑制層として、Ni−Fe/Cu/Ni−Fe多層膜に積層した素子がある。この素子は、動作磁界が小さく、直線性にも優れているが、MR比が小さい。磁性層にCoFe強磁性材料を、反強磁性層にPtMn、IrMn反強磁性材料をそれぞれ用いることによって、MR比を向上させたまた別のスピンバルブ型GMR素子も報告されている。
さらに高いMR比を得るために、非磁性層に絶縁性材料を用いた素子も提案されている。この素子を流れる電流は、絶縁層を確率的に透過するトンネル電流である。TMR素子と呼ばれるこの素子では、絶縁層を狭持する磁性層のスピン分極率が高いほど、大きなMR比が期待される。これに従うと、磁性層としては、Fe、Co−Fe合金、Ni−Fe合金等の磁性金属、ハーフメタリック強磁性体等が適している。(特許文献1〜3参照)
国際公開第00/074154号パンフレット 特開平11−266043号公報 特開2000−132961号公報
今後、磁気ヘッドやMRAMデバイスの高密度化に伴ってMR素子の微細化が進行すると、MR素子にはさらに大きなMR比が求められることになる。
MR素子がデバイスにおいて大きなMR比を発揮するためには、熱処理による特性の劣化を抑制する必要もある。磁気ヘッドの製造工程は、通常、250℃〜300℃程度の熱処理を伴う。また例えば、TMR素子をCMOS上に作製してMRAMデバイスとして用いる研究が進んでいる。このようなCMOSプロセスでは400℃〜450℃程度の高温の熱処理が不可避となる。熱処理によるMR素子の劣化の理由は、現時点では必ずしも明確ではないが、磁性層と非磁性層との界面への原子の拡散が影響している可能性がある。
使用されるデバイスによっては、使用温度にも配慮する必要がある。ハードディスクドライブ装置(HDD)に搭載する場合、MR素子には、HDDの動作環境温度(150℃程度)における熱安定性も要求される。
上述したように、大きな磁気抵抗変化率(MR比)を示す素子、特に熱処理後も高いMR比を示すMR素子は、実用上極めて重要である。しかし、従来のMR素子では、上記要求に十分に応えられない。
そこで、本発明では、磁性元素Mと非磁性元素Xとを含む強磁性材料M−Xを用いることとした。本発明のMR素子は、少なくとも2つの磁性層と、上記2つの磁性層の間に配置された少なくとも1つの非磁性層とを含む多層膜を含んでいる。また、上記少なくとも2つの磁性層における磁化方向の相対角度に応じて抵抗値が変化する。また、上記磁性層の少なくとも1つが、式M100-aa、具体的には式M100-a(X1 b3 daにより示される強磁性材料M−Xからなり、前記磁性層が自由磁性層と固定磁性層とを含み、前記自由磁性層の磁化が、前記固定磁性層の磁化に比べて、外部磁界によって相対的に回転しやすく、前記自由磁性層が、前記強磁性材料M−Xを含む。
ここで、Mは、Fe、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種の元素であり、X 1 はPtであり、X 3 はOである。
また、a、b、およびdは、それぞれ、以下の式を満たす数値である。
0.05≦a≦60、0<b≦60、0<d≦12、a=b+d
なお、本明細書において組成を示すために用いる数値は、すべて原子%(at%)に基づく。また、課題を解決するための他の手段については、本願の請求項2〜16に示した通りである。
本発明のMR素子からは、大きなMR比を得ることができる。これは、次のような理由が考えられる:非磁性元素Xの添加によって磁性原子の磁気モーメントの大きさが変化し、その結果、スピン分極率が増大する、など。この効果をさらに顕著とするためには、aは、0.05〜50の範囲が好ましく、1〜40の範囲がさらに好ましい。
本発明のMR素子は、耐熱性にも優れている。この理由は、現在のところ必ずしも明確ではないが、次のように考えられる:非磁性元素Xの添加によって磁性層/非磁性層界面における原子拡散の影響が緩和される、よって、同界面が安定化する、など。耐熱性に優れているため、本発明のMR素子は、各種デバイスヘの応用に適している。
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
非磁性元素Xは、X1 3つに分類し、その種類に応じて設定した適切な範囲内で用いることとした。
非磁性元素X1は、外殻電子数(d電子数)がFe以上である白金Ptである。特に、白金族元素は、磁性元素Mに添加すると顕著な磁性を示す性質があり、他の元素を用いた場合と比べてスピン分極率が大きくなる。このため、高いMR比を得る上で有利である。また、白金族元素は、原子直径が大きく化学的にも安定であるため、MR素子の接合構造のデバイスプロセス安定性、つまり高い耐熱性を実現する上でも有用である。
非磁性元素X3は、である。を磁性元素Mに添加すると、材料を微結晶化したり、アモルファス化できる。を添加すると、結晶構造の変化によってMR比が高くなり、接合構造が安定化する。
1 、X3がともに含まれていると(b>0、d>0)、高MR比でかつ耐熱性に優れたMR素子を、再現性よく安定して得ることができる。
本発明のMR素子は、スピンバルブ型の素子であってもよい。スピンバルブ型の素子は、磁性層として自由磁性層と固定磁性層とを含んでおり、自由磁性層の磁化は、外部磁界により、固定磁性層の磁化よりも相対的に回転しやすい。この場合、上記強磁性材料は、固定磁性層および自由磁性層の少なくとも一方に含まれていればよい。自由磁性層が強磁性材料M−Xを含む場合、自由磁性層におけるシフト磁界低減などの軟磁気特性の向上、および熱処理による軟磁気特性の劣化の抑制を図りやすい。固定磁性層が強磁性材料M−Xを含む場合、MR特性の耐熱性が向上する。
強磁性材料M−Xにより、また、自由磁性層の軟磁気特性を向上させることもできる。具体的には、自由磁性層のシフト磁界の絶対値を20Oe以下、特に10Oe以下にまで抑制できる。
ここで、シフト磁界は、以下の式により定義される。
Hint=(H1+H2)/2
ここで、H1、H2は(ただし、H1≧H2)、磁化−磁界曲線において、磁化が0となる点で示される2つの磁界である。上記曲線は、固定磁性層が磁化反転しない磁界の範囲において自由磁性層を磁化反転させた場合における磁界と磁化との関係を示している。図26(a)に示すように、シフト磁界Hintは、磁化−磁界曲線(M−H曲線、磁化曲線)のシフト量を示す指標である。同様に、図26(b)に示すように、シフト磁界Hintは、M−H曲線と対応する磁気抵抗曲線から、MR比が半分になる2つの磁界H1、H2から求めることもできる。以下、シフト磁界は、その絶対値により表示する。
本発明のMR素子は、固定磁性層の磁化回転を抑制する反強磁性層をさらに含んでいてもよい。反強磁性層には、各種反強磁性体を用いればよい。
強磁性材料M−Xを含む磁性層は、単層膜であっても多層膜であってもよい。磁性層が磁性膜を含む多層膜である場合は、少なくとも1つの磁性膜を強磁性材料M−Xからなる膜とするとよい。特に、非磁性層に接する磁性膜を強磁性材料M−Xからなる磁性膜とすると、耐熱性が大きく向上する。
磁性層は、非磁性膜と、この非磁性膜を挟持する一対の磁性膜とを含む多層膜、特に、非磁性膜と、この非磁性膜を介して反強磁性結合または静磁結合した一対の磁性膜とを含む多層膜であってもよい。磁性層は、磁性元素Mからなる層の一部にのみ非磁性元素Xを添加した層、例えば、M/M−Xとして表示される多層膜であってもよい。また、自由磁性層は、M−Xからなる磁性膜と、この膜よりも軟磁気特性に優れる軟磁性膜とを含み、上記軟磁性膜と上記M−Xからなる磁性膜とを積層した多層膜であってもよい。自由磁性層の磁化がより回転しやすくなるからである。磁性層は、非磁性層または非磁性膜との界面に形成される界面磁性膜を含んでいてもよい。界面磁性膜によって、高MR化が期待できる。界面磁性膜としては、例えば、Fe34、CrO2などからなる膜厚0.5〜2nm程度の範囲の膜が挙げられる。
本発明のMR素子は、GMR素子として用いてもよく、TMR素子として用いてもよい。非磁性層は、GMR素子の場合には導電性材料から構成され、TMR素子の場合には絶縁性材料から構成される。導電性材料としては、Cu、Ag、Au、CrおよびRuからなる少なくとも1種を含む材料が好適である。絶縁性材料としては、Alの酸化物、窒化物および酸窒化物から選ばれる少なくとも1種を含む材料が好適である。
膜面に垂直に電流を流す場合には(TMR素子、CPP−GMR素子)、磁性層/非磁性層の多層膜を挟持するように、さらに一対の電極層を配置するとよい。
磁性元素Mとしては、式Fe1-p-qCopNiqで示される元素を用いてもよい。したがって、上記強磁性材料は、組成式[Fe1-p-qCopNiq100-a[X1 b2 c3 daと示すこともできる。ここで、p、qは、0≦p≦1、0≦q≦1、p+q≦1の範囲で調整される。
Mが3成分系である場合(0<p<1、0<q<1、p+q<1)、pおよびqは、それぞれ、0<p<1、0<q≦0.9(好ましくは0<q≦0.65)の範囲が好適である。MがFeとNiの2成分系である場合(p=0、0<q<1;Fe1-qNiq)、qは、0<q≦0.95の範囲が好適である。MがFeとCoとの2成分系である場合(q=0、0<p<1;Fe1-pCop)、pは、0<p≦0.95の範囲が好適である。
Ptは、高いMR比と優れた耐熱性を両立できる元素であるから、XとしてPtを含ませることが好ましい。XとしてPtを用いる場合は、aを0.05〜50の範囲とするとよい。この場合、Mが式Fe1-qNiqで示されるときには、qを0<q≦0.9の範囲内に、Mが式Fe1-pCopで示されるときには、pを0<p≦0.9の範囲内にそれぞれ制限するとよい。
磁性材料M−Xは、厚み方向に組成勾配を有していても構わない。組成勾配の詳細について特に限定はない。元素M(X)の比率は、厚み方向に単調に増加または減少してもよく、周期的に変化していてもよい。
強磁性材料M−Xは、Mからなる材料が常温常圧下で優先的にとる結晶構造(最も安定な結晶構造)とは異なる結晶構造を有していてもよい。このような場合、スピン分極率が大きくなって大きいMR比が得られることがある。なお、強磁性材料M−Xの上記異なる結晶構造として、fcc(面心立方格子)およびbcc(体心立方格子)から選ばれる少なくとも1種が含まれていることが好ましい。
Feは、bcc構造をとりやすい。Feにfcc構造をとりやすい元素X(例えば、Pt、Pd、Rh、Ir、Cu、Au、Ag)を加えていくと、例えば、fcc構造を含むFe−Pt材料が得られる。また、fcc構造をとるNi−Fe合金に、bcc構造をとりやすい元素X(例えば、Cr、Nb、Mo、Ta、W、Eu)を加えると、例えば、bcc構造を含むNi−Fe−Cr材料が得られる。また、hcp構造をとりやすいCoにfcc構造をとりやすいPdを加えると、fcc構造を含むCo−Pd材料が得られる。
強磁性材料M−Xは、2以上の結晶の混晶であってもよい。混晶は、例えば、fcc、fct(面心正方格子)、bcc、bct(体心正方格子)およびhcp(六方最密格子)から選ばれる少なくとも2つを含む混晶であってもよい。fctおよびbctは、それぞれfccおよびbcc構造の結晶軸の一辺が他の二辺と異なる結晶構造である。ただし、強磁性材料M−Xは、さらに面心斜方格子および体心斜方格子を加えた結晶系から選ばれる少なくとも2つを含む混晶であってもよい。斜方格子は、三辺とも異なる斜方晶系である。また、元素Xの添加により、強磁性材料は、例えば、fccとbcc、fccとhcpの相境界領域の構造を有していてもよい。
結晶構造の変化によってスピン分極率が大きくなる理由は明確ではない。インバー合金において指摘されているように、磁性スピン、電子構造、結晶構造間の関係が影響を及ぼしていると考えられる。
強磁性材料M−Xは、アモルファスであってもよいが、結晶質であることが好ましい。例えば、平均結晶粒径が10nm以下の柱状晶であってもよい。ここで、平均結晶粒径は、円柱状等の結晶粒を体積が等しい球に換算したときの当該球の直径を粒径とみなして評価する。
以下、本発明の磁気抵抗効果素子およびこの素子を用いたデバイス(磁気抵抗効果型ヘッド、MRAM)の構成例を、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明のMR素子の一例を示す断面図である。この素子では、非磁性層2を介して積層された2つの磁性層1、3が異なる磁化反転磁界(保磁力)を有する。保磁力が相対的に大きい磁性層1が固定磁性層、保磁力が相対的に大きい磁性層3が自由磁性層である。この素子では、磁性層1、3の少なくとも一部が上記強磁性材料M−Xであればよい。この素子からは、Fe、Co、Niまたはこれらの合金からなる磁性層を用いた従来のMR素子よりも、大きいMR比と改善された耐熱性とを得ることができる。
強磁性材料M−Xによる高MR化の理由は、さらに詳しくは以下に挙げる複数の効果によるものと考えられる。第1は、磁性元素Mのフェルミ面の状態密度が非磁性元素Xによって変化して、フェルミ面近傍でのスピン分極率が大きくなる効果である。第2は、非磁性元素Xにより磁性元素Mを構成する磁性原子の原子間距離や電子配置の変化が起こり、バンド構造が変化してスピン分極率が大きくなる効果である。第3は、非磁性層と磁性層との界面での接合が上記材料により原子レベルで良好になって、磁気抵抗に寄与しない散乱が減少する効果である。
強磁性材料M−Xによる耐熱性向上の理由は、上述のとおり現時点では必ずしも明確ではない。しかし、上記強磁性材料による以下の効果が寄与していると考えられる:反強磁性層等から拡散する原子のトラップ、磁性層/非磁性層界面に生じる熱応力の緩和など。
上述の効果に加えて、強磁性材料M−Xによって、反磁界の低減およびシフト磁界の抑制の効果も得ることができる。この材料を含む磁性層は、従来の元素Mからなる磁性層よりも飽和磁化が低いため、反磁界が小さくなる。反磁界が小さいと、特に微細に加工された素子(例えば素子面積50μm2以下、より好ましくは10μm2以下)における磁化反転磁界(即ち、スイッチング磁界)の低減に効果がある。低いスイッチング磁界は、MRAMなどのデバイスにおける消費電力の抑制に有利である。
強磁性材料M−Xによって、いわゆるシフト磁界を低減することも可能である。シフト磁界(Hint)は、非磁性層2を介して積層された磁性層1および3の間で、磁極の局部
的な強磁性的結合(オレンジピールカップリング)により発生し、この局部的な強磁性的結合は界面の凸凹により誘発される。自由磁性層または固体磁性層に上記強磁性材料を用いると、従来の元素Mからなる磁性層を用いた場合よりも、磁極が弱まり、かつ界面が平滑化するため、結果としてシフト磁界を抑制できる。
反磁界の低減とシフト磁界の抑制とによる軟磁気特性の向上のためには、非磁性元素の原子比率aを5〜60の範囲とするとよい。原子比率aは、反磁界を低減するという観点からは15〜60の範囲が特によく、シフト磁界を抑制するという観点からは10〜60の範囲が有利である。
磁性層および非磁性層の積層数に特に限定はない。例えば、図1の構成にさらに非磁性層および磁性層を交互に積層してもよい。積層数を増やした場合も、強磁性材料を、少なくとも1層の磁性層の一部に使用すれば、特性改善の効果が得られる。
非磁性層2には、素子に応じて導電性または絶縁性の材料を用いるとよい。GMR素子の非磁性層に用いる導電性材料としては、Cu、Au、Ag、Ru、Crおよびこれらの合金から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。TMR素子の非磁性層(トンネル絶縁層)に用いる絶縁性材料としては、絶縁体または半導体であれば特に制限はない。Mg、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Crを含むIIa族〜VIa族、La、Ceを含むランタノイド、Zn、B、Al、Ga、Siを含むIIb族〜IVb族から選ばれる少なくとも1種の元素と、F、O、C、N、Bから選ばれる少なくとも1種の元素との化合物が好適である。特に、Alの酸化物、窒化物または酸窒化物は、他の材料に比べて絶縁特性に優れ、
薄膜化が可能であり再現性にも優れている。
磁性層の磁化反転磁界を増大するために、磁性層に、反強磁性層をさらに積層してもよい。図2に示した素子では、反強磁性層8が固定磁性層1に接して設けられている。反強磁性層との交換バイアス磁界により、固定磁性層は一方向異方性を示し、その反転磁界が大きくなる。こうして磁性層の磁化の平行/反平行の違いが明瞭になって安定した出力を得ることが可能となる。
反強磁性層としては、Pt−Mn、Pd−Pt−Mn、Fe−Mn、Ir−Mn、Ni−MnなどのMn系反強磁性体(Mn含有反強磁性体)が好ましい。反強磁性層の下地層として、Ta、Nb、Hf、Zr、Cr、Pt、Cu、Pdなどを用いてもよい。反強磁性層の結晶配向性を高めるためにNi−FeやNi−Fe−Crなどを下地層として配置してもよい。
図3に示したように、固定磁性層1を多層膜として、非磁性層2側から順に、第1磁性膜11および第2磁性膜12を配置してもよい。この素子では、第2磁性膜12と反強磁性層8との間の交換バイアス磁界と、第2磁性膜12と第1磁性膜11との間の強磁性的結合とにより、固定磁性層1全体に一方向異方性が付与される。第1磁性膜11が強磁性材料M−Xを含む場合、第2磁性膜12は、特に限定されず、例えば、Fe−Co−Ni合金を用いることができる。
図4に示したように、固定磁性層1を、非磁性層2側から見て、第1磁性膜11、第2磁性膜13、非磁性膜14、第3磁性膜15をこの順に積層した多層膜としてもよい。非磁性膜14の膜厚を適当な膜厚とすると、磁性膜13、15の間には反強磁性的な交換結合が発生する。第2、第3磁性膜13、15として、CoFe等の飽和磁化の大きな硬質磁性材料を用いることにより、固定磁性層1の磁化反転磁界は大きくなる。このように磁性膜が非磁性膜を介して反強磁性交換結合している多層膜は、積層フェリと呼ばれる。積層フェリにおける非磁性膜14は、Cr、Cu、Ag、Au、Ru、Ir、Re、Osならびにこれらの合金および酸化物から選ばれる少なくとも1種が好適である。また、非磁性膜14の膜厚は0.2〜1.2nmが好ましい。
以上のように、少なくとも2つの磁性膜が少なくとも1つの非磁性膜を介して積層され、非磁性膜を介して対向する磁性膜の磁化方向が零磁界で反平行に向いている多層膜を用いると、素子が微細化された場合の反磁界を小さくできるため、磁界応答性が良好になる。
図4に示した多層膜(積層フェリ)13、14、15に代えて、高保磁力磁性膜を用いてもよい。高保磁力磁性膜としては、Co−Pt、Co−Cr−Pt、Co−Ta−Pt、Co−Sm、Fe−Tb等、保磁力が100Oe以上(約7.96kA/m以上)の材料が好ましい。
図5に示した積層フェリ固定層を用いたスピンバルブ型素子では、図4に示した固定磁性層1に反強磁性層8が積層されている。この素子では、反強磁性層を単独で含む素子よりも高バイアス磁界化できる。
なお、磁性膜13、15は、反強磁性結合ではなく、静磁結合していてもよい。静磁結合させる場合、非磁性膜14は、非磁性体であれば制限されないが、通常、2nm以上(好ましくは3nm以下)の膜厚を必要とする。
図6、図7に示した素子は、自由磁性層3の両側に固定磁性層1、5が配置されたデュアルスピンバルブ構造を有する。図6の素子では、固定磁性層1、5の磁化方向を固定するために、反強磁性層8a、8bが用いられている。図7の素子では、固定磁性層1、5が、それぞれ、反強磁性層側に積層フェリ固定層13(53)、14(54)、15(55)を含んでいる。非磁性層2、4が導電性材料からなるGMR素子がデュアルスピンバルブ構造を有すると、電子が磁気的散乱を受ける磁性層/非磁性層界面が増加するため、より大きなMR比が得られる。非磁性層2、4がトンネル絶縁層からなるTMR素子がデュアルスピンバルブ構造を有すると、MR比はそれほど変わらないが、2つの障壁を有するため、バイアス電圧依存性が向上する。
図8に示したように、自由磁性層3に、絶縁材料からなる非磁性層9をさらに積層してもよい。非磁性層9を配置すると、CIP−GMR素子では、電子が非磁性層により反射されて高MR化が可能となる。CPP−GMR素子またはTMR素子では、素子内を流れる電子にフェルミ準位よりも高エネルギーのものが含まれるため、高出力化が可能になり、バイアス電圧依存性が改善される。非磁性層9としては、例えばAlの酸化物、窒化物、酸窒化物、Mg酸化物、Si酸化物、Ta酸化物を用いればよい。
図9に示したように、自由磁性層3を多層膜としてもよい。この場合、非磁性層2側に強磁性材料M−Xからなる磁性膜31を配置するとよい。この磁性膜31に軟磁性膜32を積層すると、自由磁性層の磁化反転磁界を低減できる。軟磁性膜32としては、例えばNi−Co−Fe合金を用いることができる。この合金の組成としては、NisCotFeuにより表示して、0.6≦s≦0.9、0≦t≦0.4、0≦u≦0.3のNiリッチの軟磁性膜、または、0≦s≦0.4、0.2≦t≦0.95、0≦u≦0.5のCoリッチの軟磁性膜が適している。
自由磁性層の一部として、NiFe等の飽和磁化の小さな軟磁性材料を用いた積層フェリ自由層を用いてもよい。図6および図7に例示したデュアルスピンバルブ型素子においても、自由磁性層3に積層フェリ自由層を含ませてもよい。例えば、自由磁性層3を2層に分割し、その間に、磁性膜A/非磁性膜B/磁性膜C/非磁性膜D/磁性膜Eからなる積層フェリ自由層を介在させればよい。積層フェリの構成は、これに限らない。例えば、磁性膜Cと、分割した自由磁性層とが反強磁性交換結合する場合は、磁性膜A、Eを省略してもよい。
上述したMR素子において、磁性層1、3、5の少なくとも一部に強磁性材料M−Xを含ませれば、MR特性を改善できる。磁性層をさらに多層化する場合、M−Xを含まない磁性層部分には、例えば、従来通り、Fe、CoおよびNiから選ばれる少なくとも一種の金属を用いればよい。
MR素子を構成する各薄膜の形成方法としては、各種スパッタリング法、MBE、イオンプレーティング法を適用できる。スパッタリング法としては、パルスレーザデポジション(PLD)、イオンビームデポジション(IBD)、クラスターイオンビーム、RF、DC、ECR、ヘリコン、誘導結合プラズマ(ICP)、対向ターゲット等が挙げられる。これらPVD法に代えて、CVD法、メッキ法、ゾルゲル法等を適用してもよい。以下、スパッタリング法を例にとって、強磁性材料M−Xの作製方法を説明する。この材料は、例えば、磁性元素Mについての所望組成からの組成ずれを考慮して組成を決定した合金ターゲット上に、非磁性元素Xのペレットを配置して成膜することにより作製できる。磁性元素Mのターゲットと非磁性元素Xのターゲットとを同時または交互にスパッタしてもよい。非磁性元素Xの一部をガス状態で装置内に導入して反応性スパッタリングを行っても構わない。成膜条件(スパッタリングガス種、ガス圧、投入電力等)に依存する所望組成からの組成ずれを考慮して組成を決定した合金ターゲットを用いて強磁性材料M−Xを作製してもよい。
非磁性層としてトンネル層を作製するためには、例えばMg、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Crを含むIIa族〜VIa族元素、La、Ceを含むランタノイド、Zn、B、Al、Ga、Siを含むIIb族〜IVb族元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含む合金または化合物の薄膜前駆体を作製し、F、O、C、NおよびBから選ばれる少なくとも1種の元素を、分子、イオン、ラジカル等として含む雰囲気中において温度、時間を制御しながら、上記前駆体と上記元素とを反応(例えば、酸化、窒化等)させればよい。薄膜前駆体として、F、O、C、NおよびBから選ばれるいずれかの元素を、化学量論比未満で含む不定比化合物を作製し、この化合物を、それが含む元素の分子、イオン、ラジカル等を含む適当な雰囲気中適当な温度と時間とで保持して、その元素をさらに反応させてもよい。
例えば、スパッタリング法を用いてトンネル絶縁層としてAl23膜を作製する場合には、AlまたはAlOx(x≦1.5)を、ArまたはAr+O2雰囲気中で成膜し、これをO2またはO2+不活性ガス中で酸化する工程を繰り返すとよい。なお、プラズマやラジカルの作製には、ECR放電、グロー放電、RF放電、ヘリコン、ICP等を用いればよい。
膜面垂直方向に電流を流すMR素子を含むデバイスを作製するには、イオンミリング、RIE、FIB等の物理的または化学的エッチング法、微細パターン形成のためのステッパー、EB法等を用いたフォトリソグラフィー技術を組み合わせて微細加工を行えばよい。図10に示した素子では、基板21上に、下部電極22、MR素子23、上部電極24がこの順に積層され、電極間の素子周囲には層間絶縁膜25が配置されている。この素子では、上部電極24と下部電極22とに挟まれたMR素子23に電流を流して電圧を読みとる。膜面に垂直方向に電流を流すMR素子には、この方向について素子を挟持する一対の電極をさらに配置するとよい。素子に含まれる電極等の表面を平坦化するためには、CMPや、クラスターイオンビームエッチングを用いてもよい。
電極22、24の材料としては、Pt、Au、Cu、Ru、Al等の低抵抗金属が適している。層間絶縁膜25としては、Al23、SiO2等絶縁性に優れた材料が適している。
本発明のMR素子を用いた磁気抵抗効果型ヘッドの一例を図11に示す。この磁気抵抗効果型ヘッドは、磁性体からなる2つの磁気シールド(上部シールド35および下部シールド31)を含み、検知すべき磁界以外の磁界のMR素子への導入を制限している。この2つの磁気シールドの再生ギャップ長内に、MR素子部33とこの素子を挟む電極32、34とが配置されている。このヘッドを用いた磁気情報の記録は、以下のように行われる:巻線部37に電流を流し、記録用磁極38と上部シールド35との間の記録ギャップからの漏洩磁界によって信号を記録媒体に書き込む。記録ギャップの部分には絶縁膜36が形成され、ギャップ長は絶縁膜の膜厚に相当している。再生は、記録媒体からの信号磁界を再生ギャップ(シールドギャップ)間に設けられたMR素子により読みとることにより行われる。
この磁気ヘッドのMR素子部33に、TMR素子またはCPP−GMR素子を用いる場合は、上下のシールドが素子上下の電極を兼ねる構造として電極を省き、再生ヘッドを狭ギャップ化してもよい。CIP−GMR素子を用いる場合は、上下の電極が上下のシールドとそれぞれ絶縁される。
図12に示すように、磁性体からなる磁束ガイド(ヨーク)を有する磁気ヘッドに本発明のMR素子を適用してもよい。この磁気抵抗効果型ヘッドでは、ヨーク41a、41bにより検知すべき磁界をMR素子部43に導入する。ヨークは磁気シールドを兼ね、MR素子43下方の下部ヨーク41bは下部リードを兼ねている。信号磁界検出のための電流は、上部リード44と下部ヨーク(下部リード)41bとの間を流れる。MR素子の自由層全体またはその一部は、ヨークと兼用してもよい。この磁気ヘッドは、TMR素子またはCPP−GMR素子を用いることを前提としている。しかし、MR素子とヨーク部との間に絶縁等を施して、膜面方向に電流を流すCIP−GMR素子を用いてもよい。
これらの磁気ヘッドを、HDD等の磁気記録装置に適用してもよい。HDDは、例えば、図13に示すように、磁気ヘッド71、磁気ヘッドを支持するアーム72、アームおよびティスクの駆動部73、信号処理部74、ならびに磁気ヘッドにより信号を記録/再生する磁気記録媒体(磁気ディスク)75を備えている。
本発明のMR素子をメモリー素子として用いたMRAMの一例を図14に示す。MR素子61は、ビット(センス)線62とワード線63との交点にマトリクス状に配置される。ビット線およびワード線は、Cu、Al等からなる。ビット線は情報読み出し用導体線に相当し、一方、ワード線は情報記録用導体線に相当する。これらの線に信号電流を流した時に発生する合成磁界により、素子に信号が記録される。信号は、on状態となったラインが交差する位置に配置された素子(図14では素子61a)に記録される(2電流一致方式)。
図15〜図17を参照してMRAMの動作についてさらに詳細に説明する。これらの図には、書き込み動作および読み込み動作の基本例が示されている。ここでは、図1に示したMR素子61(固定磁性層1、非磁性層2、自由磁性層3を含む素子)を用いている。ただし、用い得る素子がこの素子に限定されるわけではない。図15(a)および図15(b)に示したMRAMでは、素子の磁化状態を個別に読みとるために、素子ごとに、FET等のスイッチング素子64が設けられている。このMRAMは、CMOS基板上への作製に適している。図16(a)および図16(b)に示したMRAMでは、素子ごとに、非線形素子または整流素子65が配置されている。非線形素子としては、バリスタ、トンネル素子、または上記3端子素子を用いてもよい。このMRAMは、ダイオードの成膜プロセス等を増やすだけで、安価なガラス基板上にも作製できる。図17(a)および図17(b)に示したMRAMでは、スイッチング素子、整流素子等を用いず、ワード線とビット線との交点に素子61が配置されている。このMRAMでは、読み出し時に複数の素子に電流が流れることになる。従って、読み出しの精度を確保するためには、素子数を10000以下に制限することが好ましい。
図15〜図17では、ビット線62が、素子に電流を流して抵抗変化を読みとるセンス線としても用いられている。しかし、ビット電流による誤動作や素子破壊を防ぐため、センス線とビット線とを別に配置してもよい。この場合、ビット線は、素子と電気的に絶縁され、且つ、センス線と平行となるように配置するとよい。なお、書き込みにおける消費電力抑制の観点から、ワード線、ビット線とメモリセル(素子)との間隔は、500nm程度以下とするとよい。
熱酸化膜付Si基板(3インチφ)上に多元マグネトロンスパッタリング法を用いて、各実施例の欄に記載の構成の素子を作製し、MR特性を調べた。
参考例1)
熱酸化膜付Si基板/Ta(3)/Cu(50)/Ta(3)/Pt−Mn(20)/Co−Fe(1)/強磁性材料M−X(2)/Al−O(1.0)/Co−Fe(3)/Ta(15)
ここで、カッコ内の数値は膜厚を示す(単位:nm、以下、同様にして膜厚を表示する)。Al−Oの膜厚の値は、酸化処理前のAlの設計膜厚値(合計値)を示している(Al−N、Al−N−Oにおける窒化、酸窒化処理を含め、以下において同様)。Al−Oは、Alを0.3〜0.7nmの膜厚で成膜した後、酸素含有雰囲気中(200Torr(約0.267MPa)、1min)において酸化を繰り返して作製した。
基板上のTa(3)/Cu(50)は下部電極であり、Pt−Mnに隣接するTa(3)は下地層である。Ta(15)はMR膜の保護層であり、Ta(15)の一部は上部電極ともなる。Pt−Mnは反強磁性層に相当する。各膜を、図10に示したようにメサ型に微細加工し、さらに上部電極としてCu(50)/Ta(3)を形成した。引き続き、280℃、5kOe磁場中で3時間熱処理し、PtMnに一方向異方性を付与した。サンプルの素子面積は1.5μm×2.5μmとした。
このMR素子は、図3に準ずる構成を有するスピンバルブ型TMR素子であり、固定磁性層1の一部に強磁性材料M−Xが用いられている。このMR素子に、最高5kOeの磁界を印加して直流4端子法によりMR特性を調べた。MR比は次式により求めた。
MR比={(Rmax−Rmin)/Rmin}×100(%)
ここで、Rmaxは最大抵抗値、Rminは最小抵抗値である(以降においても同様である)。
MR比は、トンネル絶縁層の材料、作製法及び膜厚によって変化する。また、素子を構成する膜の材料やその膜厚、素子の加工プロセス等にも影響を受ける。従って、MR素子の特性は、強磁性材料M−X中の磁性元素Mのみを含む材料を用いた以外は同様にして作製した従来の素子の特性を基準として評価することとする。これは、以降の実施例においても同様である。表1に測定結果を示す。
Figure 0004387955
表1では、従来例、比較例以外の素子を参考例とする(以降においても同様である。実施例については表中に明記しない)。表1に示すように、参考例の素子からは、従来例a01よりも大きいMR比を得ることができた。いくつかの素子からは、50%以上と極めて大きなMR比が得られた。MR比の増大は、Feに非磁性元素を添加することによりスピン分極率が大きくなったことによると考えられる。
ここで、*印を付した素子は、非磁性元素Xの添加量がやや多いため、MR比の増加率は大きくない。大きなMR比を得るためには、Pt、Pd、Rh、Ir(X1)では50at%、Re(X2)では30at%、N(X3)では20at%に添加量を制限するとよい。
さらに、素子の加工プロセス後の3インチウエハ内において、トンネル接合抵抗のバラツキを従来例と参考例の素子全てについて調べた。従来例の接合抵抗のバラツキは約18%であった。一方、参考例の接合抵抗のバラツキは全て5%以内に収まった。バラツキが小さくなることによって、デバイス量産上の効果が大きくなる。
参考例2)
熱酸化膜付Si基板/Ta(3)/Cu(50)/Ta(3)/Pt−Mn(20)/Co−Fe(3)/Ru(0.9)/Co−Fe(1)/強磁性材料M−X(2)/Al−O(1.0)/強磁性材料M−X(2)/Ni−Fe(5)/Ta(15)
Al−Oの成膜法は、参考例1と同様とした。さらに、参考例1と同様にメサ型に加工し、上部電極としてCu(50)/Ta(3)を形成した。引き続き、素子を280℃、5kOe磁場中で3時間熱処理してPt−Mnに一方向異方性を付与した。サンプルの素子面積は2μm×3μmとした。
このMR素子は、図5に準ずる構成を有する積層フェリ固定層スピンバルブ型TMR素子であり、固定磁性層1および自由磁性層3の一部に強磁性材料M−Xが用いられている。自由磁性層3はNi−Fe軟磁性層を含んでいる。この素子のMR比を、参考例1と同様にして調べた。表2に結果を示す。
Figure 0004387955
表2に示したように、強磁性材料M−Xを用いた参考例の素子からは、Al−Oの両側に配置された材料の組成が同じであっても異なっていても、従来例と比較して大きなMR比が得られた。なお、*印を付した参考例b08、b12の素子では、X(Pt)の含有量がやや多いために、MR比の増大は大きくない。しかし、従来例b01では自由磁性層の磁化反転磁界(保磁力)が約35Oeであった。これに対して参考例b08、b12の保磁力は約10Oeであった。磁気ヘッドや磁気メモリーでは、自由磁性層の磁化反転磁界は小さいほうが有利である。このように、強磁性材料M−Xは、自由磁性層の軟磁気特性を向上させ、デバイス感度の向上等に寄与することができる。
従来例b01と参考例全てについて、再度280℃で10時間熱処理を行い、その後でMR特性を調べた。従来例b01と参考例のMR比は再熱処理する前と比較してほとんど変化がなかった。トンネル接合抵抗を再熱処理前と比較したところ、従来例b01では20%以上変化していたのに対して、参考例全てにおける変化は5%以内であった。熱履歴に対する高い安定性は、汎用性を高め、素子設計を容易にする。
参考例3)
熱酸化膜付Si基板/Ta(3)/Cu(50)/Ta(3)/強磁性材料M−X(5)/Al−O(0.8)/Co(3)/Ir−Mn(15)/Ta(20)
Al−Oは、Alを0.8nmの膜厚で成膜した後、ICP酸化法を適用して作製した。Ir−Mnは反強磁性層に相当する。さらに、それぞれの膜を参考例1と同様にメサ型に加工し、上部電極としてCu(50)/Ta(3)を形成した。引き続き、素子を250℃、5kOe磁場中で2時間熱処理してIr−Mnに一方向異方性を付与した。サンプルの素子面積は3μm×3μmとした。
このMR素子は、上下反転させた図2に準ずる構成を有するスピンバルブ型TMR素子であり、自由磁性層3に強磁性材料M−Xが用いられている。この素子のMR比を、参考例1と同様にして調べた。表3に結果を示す。
Figure 0004387955
表3に示したように、MとしてFe−Ni合金を用いた場合であっても、強磁性材料M−Xを含む参考例の素子からは、従来例と比較して大きなMR比が得られた。表3中で*印を付した参考例c08では、MR比の増大が顕著には見られなかった。
参考例4)
熱酸化膜付Si基板/Ta(3)/Cu(50)/Ta(3)/Ni−Fe−Cr(4)/Pt−Mn(25)/強磁性材料M−X(2.5)/Al−O(0.7)/Co−Fe(2)/Ni−Fe(3)/Ta(20)
Al−Oの成膜法は、参考例1と同様とした。Ta(3)/Ni−Fe−Cr(4)は、Pt−Mnの結晶配向性を制御するための下地層である。それぞれの膜は、参考例1と同様にメサ型に加工し、上部電極としてCu(50)/Ta(3)を形成した。引き続き、素子を280℃、5kOe磁場中で5時間熱処理してPt−Mnに一方向異方性を付与した。サンプルの素子面積は1.5μm×3μmとした。
このMR素子は、図2に準ずる構成を有するスピンバルブ型TMR素子であり、固定磁性層1に強磁性材料M−Xが用いられている。この素子のMR比を、参考例1と同様にして調べた。表4に結果を示す。
Figure 0004387955
表4に示したように、MとしてFe−Co合金を用いた場合であっても、強磁性材料M−Xを含む参考例の素子からは、従来例と比較して大きなMR比が得られた。なお、表4中で*印を付した参考例d07では、MR比の増大が顕著には見られなかった。
参考例5)
熱酸化膜付Si基板/Ta(3)/Cu(50)/Ta(3)/Co−Sm(80)/Co−Fe(3)/Al−O(1.1)/強磁性材料M−X(5)/Ta(20)
Al−Oは、Alを0.3〜0.7nmの膜厚で成膜した後、ICP酸化法を適用して作製した。Co−Smは高保磁力層に相当する。それぞれの膜は、参考例1と同様にメサ型に加工し、上部電極としてCu(50)/Ta(3)を形成した。引き続き、素子を150℃、500Oeの磁場中で1時間熱処理してCo−Smに結晶磁気異方性を付与した。サンプルの素子面積は4μm×5μmとした。
このMR素子は、図1に準ずる構成を有する保磁力差型TMR素子であり、自由磁性層3に強磁性材料M−Xが用いられている。この素子のMR比を、参考例1と同様にして調べた。表5に結果を示す。なお、表5には、自由磁性層3にMのみからなる強磁性材料を用いた素子のMR比(MR(M))に対する上記素子のMR比(MR(M−X))の比率を併せて示す。
Figure 0004387955
表5に示したように、MとしてFe−Co−Ni3元合金を用いた場合であっても、強磁性材料M−Xを含む参考例の素子からは、従来例と比較して大きなMR比が得られた。特に、Niの組成比(q)を0.65以下とすると、MR比が大きくなった。
(実施例
熱酸化膜付Si基板/Ta(3)/Cu(50)/Ta(3)/Ni−Fe(3)/Pt−Mn(20)/Co−Fe(3)/Ru(0.9)/Co−Fe(3)/Al−N(1.0)/強磁性材料M−X(5)/Ta(20)
Al−Nは、Alを1.0nmの膜厚で成膜した後、ICP窒化法を適用して作製した。ICP窒化法は、窒素含有雰囲気中で行った。Ta(3)/Ni−Fe(3)はPt−Mnの下地層である。それぞれの膜は、参考例1と同様にメサ型に加工し、上部電極としてCu(50)/Ta(3)を形成した。引き続き、素子を280℃、10kOeの磁場中で3時間熱処理してPt−Mnに一方向異方性を付与した。サンプルの素子面積は2μm×4μmとした。
このMR素子は、積層フェリ固定層スピンバルブ型TMR素子であり、Co−Fe(3)/Ru(0.9)/Co−Fe(3)が固定磁性層となっている。強磁性材料M−Xは、自由磁性層3に用いられている。この素子のMR比を、参考例1と同様にして調べた。表6に結果を示す。
Figure 0004387955
表6に示すように、Xとして2種の非磁性元素を用いた場合であっても、従来例と比較して大きなMR比が得られた。なお、表6中で*印を付した実施例f10ではMR比の増大が顕著ではなかった。Reは20%以下の範囲で添加することが好ましい。
(参考例
熱酸化膜付Si基板/Ta(3)/Cu(50)/Ta(3)/Ni−Fe−Cr(4)/Pt−Mn(20)/Co−Fe(3)/Ru(0.9)/Co−Fe(1.5)/強磁性材料M−X(1.5)/Al−O(0.8)/強磁性材料M−X(1)/Ni−Fe(5)/Ta(15)
Al−Oの成膜法は、参考例1と同様とした。それぞれの膜は、参考例1と同様にメサ型に加工し、上部電極としてCu(50)/Ta(3)を形成した。引き続き、素子を実施例1と同様の条件で熱処理してPt−Mnに一方向異方性を付与した。サンプルの素子面積は2μm×3μmとした。
このMR素子は、図5に準じた構成を有する積層フェリ固定層スピンバルブ型TMR素子であり、固定磁性層1および自由磁性層3の一部に強磁性材料M−Xが用いられている。両磁性層で強磁性材料M−Xの組成は同一とした。自由磁性層3はこの層の磁化回転をより容易にするためにNi−Fe軟磁性層を含んでいる。この素子のMR比を、参考例1と同様にして調べた。表7に結果を示す。
Figure 0004387955
表7に示すように、Xとして3種の非磁性元素(X1、X2、X3)を用いた場合であっても、従来例と比較して大きなMR比が得られた。しかし、Al(X2)が30%、O(X3)が20%、Pt、AlおよびOの合計(X)が60%を越えると、MR比はむしろ小さくなった。
参考例7
熱酸化膜付Si基板/Ta(3)/Cu(50)/Ta(3)/Ni−Fe(3)/Ir−Mn(15)/Co−Fe(1)/強磁性材料M−X(2)/Al−O(1.0)/Ni−Fe(4)/Ru(0.8)/Ni−Fe(3)/Ta(20)
Al−Oは、Alを0.4nmの膜厚で成膜し、これを酸素含有雰囲気中(200Torr、1min)で酸化し、さらにAlを0.6nmの膜厚で成膜し、ICP酸化法により酸化して作製した。それぞれの膜は、参考例1と同様にメサ型に加工し、上部電極としてCu(50)/Ta(3)を形成した。引き続き、素子を260℃、5kOeの磁場中で3時間熱処理してIr−Mnに一方向異方性を付与した。サンプルの素子面積は2.5μm×4μmとした。
このMR素子は、図3に準じた構成を有するスピンバルブ型TMR素子であり、固定磁性層1の一部に強磁性材料M−Xが用いられている。自由磁性層3には、積層フェリ自由層(Ni−Fe(4)/Ru(0.8)/Ni−Fe(3))が用いられている。このMR素子のMR比を、参考例1と同様にして調べた。表8に結果を示す。表8には、積層フェリ自由層の保磁力(Hc)と零磁界からのシフト磁界(Hint)とを併せて示す。自由
磁性層の磁化反転磁界をH1、H2(H1>H2)とすると、保磁力(Hc)はHc=(H1−H2)/2、シフト磁界(Hint)はHint=(H1+H2)/2と表される。
Figure 0004387955
表8に示したように、強磁性材料M−Xによって、従来例と比較して大きなMR比が得られるとともに、積層フェリ自由層の保磁力(Hc)および零磁界からのシフト磁界(Hint)を大幅に低減できた。上記強磁性材料を用いると、30%以上のMR比と、25Oe以下のHcおよび10Oe以下のHintとを有する素子が得られた。このように、強磁性材料M−Xは、軟磁気特性の向上にも有効である。Hintが小さいと、磁気ヘッドの場合は再生出力の対称性が改善され、磁気メモリーの場合は書き込み用の電流磁界の対称性が改善される。従って、素子設計が容易となり、消費電力もまた低減できる。HcおよびHintの低減は、強磁性材料M−XとAl−Oトンネル層との接合界面が原子レベルで良好になって、自由磁性層の軟磁気特性が向上したためと考えられる。
参考例8
熱酸化膜付Si基板/Ta(3)/Cu(50)/Ta(3)/強磁性材料M−X(5)/Al−O(1.0)/Co(3)/Ru(0.7)/Co(3)/Ir−Mn(20)/Ta(25)
Al−Oは、参考例1と同様にして作製した。それぞれの膜は、参考例1と同様にメサ型に加工し、上部電極としてCu(50)/Ta(3)を形成した。引き続き、素子を280℃、10kOeの磁場中で3時間熱処理してIr−Mnに一方向異方性を付与した。サンプルの素子面積は2.5μm×4μmとした。
このMR素子は、積層フェリ固定層スピンバルブ型TMR素子であり、自由磁性層3に強磁性材料M−Xが用いられている。
ここでは、組成勾配を有する強磁性材料M−Xを含む素子も作製した。具体的には、以下の3通りの方法により強磁性材料M−Xを形成した。
作成法(1):磁性元素Mと非磁性元素Xとを、両元素の成膜レートを一定に保ちながら同時スパッタする。
作成法(2):磁性元素Mと非磁性元素Xとを、両元素の成膜レートを時間とともに変化させながら同時スパッタする。
作成法(3):磁性元素Mと非磁性元素Xとを交互スパッタする。
ただし、いずれの方法によっても、強磁性材料M−Xの組成は、全膜厚の範囲では同一(Fe85Pt15)となるように調整した。この素子のMR比を、参考例1と同様にして調べた。表9に結果を示す。
Figure 0004387955
オージェ電子分光法(AES)および二次イオン質量分析法(SIMS)とに基づく元素分析を行ったところ、参考例i03〜i05では、強磁性材料Fe−Ptが膜厚方向に成膜レートの比に応じた組成勾配を有することが確認された。参考例i06の自由磁性層は、膜厚方向について、周期的に変化していた。表9より、強磁性材料M−Xは、膜内において均一でなくても、MR比を増大できることがわかる。
参考例9
熱酸化膜付Si基板/Ta(3)/Cu(50)/Ta(3)/Pt−Mn(20)/Co−Fe(3)/Ru(0.7)/Co−Fe(2)/強磁性材料M−X(a)(1)/Al−O(0.7)/強磁性材料M−X(b)(1)/Ni−Fe(6)/Ta(25)
Al−Oは、Alを0.7nmの膜厚で成膜した後、ICP酸化法を適用して作製した。それぞれの膜は、参考例1と同様にメサ型に加工し、上部電極としてCu(50)/Ta(3)を形成した。引き続き、素子を280℃、10kOeの磁場中で3時間熱処理してPt−Mnに一方向異方性を付与した。サンプルの素子面積は2.5μm×3.5μmとした。
このMR素子は、図5に準じた構成を有する積層フェリ固定層スピンバルブ型TMR素子であり、固定磁性層1の一部に強磁性材料M−X(a)が、自由磁性層3の一部に強磁性材料M−X(b)が用いられている。自由磁性層はNi−Fe軟磁性層を含んでいる。この素子のMR比を、参考例1と同様にして調べた。表10に結果を示す。
Figure 0004387955
表10に示したように、非磁性層を介して対向する磁性層に含まれるMやXが異なっていても、強磁性材料M−Xを用いると大きなMR比を得ることができた。
参考例10
熱酸化膜付Si基板/Ta(3)/Cu(50)/Ta(3)/強磁性材料M−X(5)/Al−O(0.7)/Co−Fe(3)/Ru(0.8)/Co−Fe(3)/Pt−Mn(20)/Ta(25)
Al−Oは、参考例1と同様にして作製した。それぞれの膜は、参考例1と同様にメサ型に加工し、上部電極としてCu(50)/Ta(3)を形成した。引き続き、素子を280℃、10kOeの磁場中で3時間熱処理してPt−Mnに一方向異方性を付与した。サンプルの素子面積は3μm×4μmとした。
このMR素子は、積層フェリ固定層スピンバルブ型TMR素子であり、自由磁性層3に強磁性材料M−Xが用いられている。この素子のMR比を、参考例1と同様にして調べた。さらに、MR素子の自由磁性層について、X線回折法および高分解能透過型電子顕微鏡を用いて結晶構造を調べた。結果を表11に示す。
Figure 0004387955
従来例k01のFeはbcc構造であった一方、参考例k02〜k05では自由磁性層がbcc以外の結晶構造を有していた。fccを含む参考例k02〜k03で高いMR比が得られた。同じく、従来例k06のFe−Niはfcc構造であった一方、参考例k07、k08では自由磁性層がfcc以外の結晶構造を有していた。bccを含む参考例k07で高いMR比が得られた。参考例k03、k08は微結晶を含んでおり、その平均結晶粒径は10nm以下であった。これらの結果は、結晶構造の変化とスピン分極率の変化との相関を示していると考えられる。なお、ここでは、平均結晶粒径が10nm以下である場合に、その結晶構造を微結晶と判断することとする。
参考例11
・従来例101:
熱酸化膜付Si基板/Ta(3)/Cu(50)/Ta(3)/Pt−Mn(20)/Co−Fe(3)/Ru(0.8)/Co−Fe(3)/Al−O(1.0)/Ni−Fe(3)/Al−O(1.0)/Co−Fe(3)/Ru(0.8)/Co−Fe(3)/Pt−Mn(20)/Ta(15)
・参考例102:
熱酸化膜付Si基板/Ta(3)/Cu(50)/Ta(3)/Pt−Mn(20)/Co−Fe(3)/Ru(0.8)/Co−Fe(1)/Fe−Pt(2)/Al−O(1.0)/Fe−Pt(3)/Al−O(1.0)/Fe−Pt(2)/Co−Fe(1)/Ru(0.8)/Co−Fe(3)/Pt−Mn(20)/Ta(15)
Al−Oは、参考例1と同様にして作製した。それぞれの膜は、参考例1と同様にメサ型に加工し、上部電極としてCu(50)/Ta(3)を形成した。引き続き、素子を280℃、10kOe磁場中で3時間熱処理してPt−Mnに一方向異方性を付与した。サンプルの素子面積は2μm×3μmである。
この素子は、図7で示したようなデュアルスピンバルブ型TMR(2重トンネル接合TMR膜)である。参考例102では、固定磁性層の一部と自由磁性層に強磁性材料M−X(FePt)を用いている。FePtの組成はFe85Pt15である。
この素子のMR特性のバイアス依存性を参考例1と同様にして調べた。表12に、MR比が半減するバイアス電圧(Vh)を示す。トンネル接合が1つである素子(参考例b04と従来例b01;参考例2参照)についても同様にバイアス電圧(Vh)を測定した。結果を表12に示す。
Figure 0004387955
表12に示すように、2重トンネル接合であっても(参考例102と従来例101)、1重トンネル接合であっても(参考例b04と従来例b01)、強磁性材料M−Xを用いると、バイアス電圧(Vh)が大幅に向上した。従って、本発明のMR素子は、大容量で
高速のMRAMを実現するには優位性を有する。
参考例12
熱酸化膜付Si基板/Ta(3)/Cu(50)/Ta(3)/Ni−Fe−Cr(4)/Pt−Mn(20)/Co−Fe(3)/Ru(0.8)/Co−Fe(1)/強磁性材料M−X(3)/Cu(3)/強磁性材料M−X(1)/Ni−Fe(3)/Ta(15)
それぞれの膜を参考例1と同様にメサ型に加工し、上部電極としてCu(50)/Ta(3)を形成した。引き続き、素子を280℃、5kOeの磁場中で5時間熱処理してPt−Mnに一方向異方性を付与した。サンプルの素子面積は0.5μm×0.5μmとした。
このMR素子は、図5に準ずる積層フェリ固定層スピンバルブ型の構成を有し、非磁性層に導電性材料であるCuを用いた、いわゆるCPP−GMR素子である。固定磁性層1および自由磁性層3の一部に強磁性材料M−Xが用いられている。Ni−Fe軟磁性層が自由磁性層3に含まれている。この素子のMR特性を、参考例1と同様にして調べた。
表13に素子の抵抗変化量(△R)を示す。同時に素子面積を1μm2としたときの抵抗変化量も示す。
Figure 0004387955
表13に示したように、CPP−GMR素子においても、強磁性材料M−Xを用いると、抵抗変化量が増大して出力が向上した。これは、Fe−PtとCu層との間のスピン依存散乱確率が増大したことと、Fe−Ptの抵抗が相対的に大きいことが関連していると考えられる。
参考例13
参考例m02、m06および従来例m04のCPP−GMR膜を用いて図11に示した構造を有するシールド型磁気抵抗効果ヘッドを作製した。基板(図11で図示略)としてAl23−TiC基板を用い、記録用磁極38と磁気シールド31、35にはNi0.8Fe0.2メッキ合金を用い、絶縁膜36にはAl23を用い、電極32、34にはAuを用いた。
軟磁性層を積層した自由磁性層(強磁性材料M−X(1)/Ni−Fe(3))の磁化容易方向が検知すべき信号磁界の方向と垂直になり、反強磁性層を付加した固定磁性層(Pt−Mn(20)/Co−Fe(3)/Ru(0.8)/Co−Fe(4)/強磁性材料M−X(2))の磁化容易軸の方向が検知すべき信号磁化の方向と平行になるように、磁性膜に異方性を付与した。具体的には、MR素子を作製した後、5kOeの磁界中280℃で熱処理して固定磁性層の磁化容易方向を規定し、さらに、100Oeの磁界中200℃で固定磁性層の磁化容易軸方向と直交する方向に磁界を印加しながら熱処理を行って自由磁性層の磁化容易軸を規定した。
CPP−GMR素子の再生部のトラック幅は0.1μm、MR高さも0.1μmとした。これらのヘッドに、センス電流として直流電流を流し、50Oeの交流信号磁界を印加してヘッドの出力を評価した。従来例m04からは出力が得られなかったが、参考例m02、m06からは15mV/μm以上の出力が得られた。なお、市販のGMRヘッド(通常のCIP−GMRヘッド)からは1.3mV/μmの出力が得られた。このように、参考例のGMR膜を用いた磁気ヘッドからは、従来のヘッドと比較して大きな出力が得られた。この磁気ヘッドを用いて図13に示したような構成のHDDを作製すれば、100Gbit/in2以上の面記録密度を達成できる。
(参考例14
参考例1および2で作製した参考例a06、b04および従来例a01、b01のTMR膜を用いて図12に示したヨーク型構造の磁気抵抗効果ヘッドを作製した。上部シールド41a及び下部シールド41bにはNi0.8Fe0.2メッキ合金を用いた。この例では、下部シールドのNi−FeをCMP研磨した後、TMR膜は上記参考例とは逆に形成した。具体的には、Co−Fe膜(a06、a01の試料の場合)およびNi−Fe膜(b04、b01の試料の場合)から成膜し、最後にPt−Mn膜を成膜して、この上に電極膜(Au)を形成した。再生ヘッド部の素子サイズは0.3μm×0.3μmとした。作製したヘッドに、センス電流として直流電流を流し、約50Oeの交流信号磁界を印加してヘッドの出力を評価した。結果を表14に示す。参考例a06、b04のヘッド出力はそれぞれ従来例a01、b01のヘッド出力と相対比較した結果である。
Figure 0004387955
表14に示したように、参考例のTMR膜を用いた磁気ヘッドからは、従来のヘッドと比較して大きな出力が得られた。
(参考例1
CMOS基板上に、図15に示したような基本構成のメモリー素子で集積メモリーを作製した。素子配列は、16×16素子のメモリーを1ブロックとして合計8ブロックとした。ここで、メモリ素子には、参考例1で作製した参考例a07と従来例a01のTMR素子を用いた。各サンプルの素子断面積は0.2μm×0.3μmとした。また、各ブロックの1素子は、配線抵抗、素子最低抵抗、FET抵抗をキャンセルするためのダミー素子とした。ワード線およびビット線等はCuを用いた。
ワード線とビット線とからの合成磁界により、8つのブロックの8素子において、それぞれ自由磁性層(この場合はCo−Fe(3)膜)の磁化反転を同時に行い、8ビットずつの信号を記録した。次に、CMOSで作製されたFETのゲートをそれぞれのブロックにつき1素子ずつONし、センス電流を流した。このとき、各ブロック内でのビット線、素子、及びFETに発生する電圧と、ダミー電圧をコンパレータにより比較し、それぞれの素子の出力電圧から、同時に8ビットの情報を読みとった。参考例のTMR素子を用いた磁気メモリーの出力は、比較例のTMR素子を用いた場合の約2倍であった。
以下の参考例16〜18では、強磁性材料M−Xを用いたMR素子の耐熱性について、さらに詳しく調べた。
参考例16
熱酸化膜付Si基板/Ta(3)/Cu(50)/Ta(3)/Ni−Fe−Cr(4)/Pt−Mn(20)/Co−Fe(3)/Ru(0.9)/Co−Fe(1)/強磁性材料M−X(2)/Al−O(1.0)/強磁性材料M−X(2)/Ni−Fe(5)/Ta(15)
Al−Oは、参考例1と同様にして作製した。それぞれの膜は、参考例1と同様にしてメサ型に微細加工し、上部電極としてCu(50)/Ta(3)を形成した。引き続いて、素子を280℃、5kOe磁場中で5時間熱処理してPt−Mnに一方向異方性を付与した。サンプルの素子面積は1μm×1.5μmとした。
このMR素子は、図5に準ずる構成を有する積層フェリ固定層スピンバルブ型TMR素子で、固定磁性層1および自由磁性層3の一部に強磁性材料M−Xを用いている。自由磁性層3はNi−Fe軟磁性層を含んでいる。強磁性材料M−Xの組成は、ともに以下のとおりとした。比較のため、強磁性材料M−Xに代えてFe、Fe−Coを含む素子も作製した。
Figure 0004387955
このスピンバルブ型TMR素子の耐熱性を調べるために、450℃まで磁界を印加することなく真空熱処理(1×10-6Torr以下)を実施した。温度プロファイルは、以下のとおりとした。まず、室温から目標の熱処理温度まで2時間かけて昇温させ、目標の熱処理温度を1.5時間維持し、約5時間かけて室温まで降温した。熱処理の後、この素子のMR特性を参考例1と同様にして調べた。
図18に、熱処理温度に対する規格化MR比(MR(T)/MR(280℃))を示した。ここで、MR(T)は、熱処理温度をT℃とした熱処理後のMR比であり、MR(280℃)は、Pt−Mnに一方向異方性を付与するために280℃、5時間、5kOeで行う熱処理後におけるMR比である。図19に、強磁性材料M−XとしてFe−Ptを用いた上記素子(n03)における、Pt含有量に対する規格化MR比を示す。図19において、Ptの最小の添加量は0.05at%である。
図18に示したように、従来例では熱処理温度の上昇とともにMR比は急激に減少した。これに対して、参考例では優れた熱的安定性が得られた。図19により、Pt含有量が60%を超えると、熱的安定性が急激に失われることがわかる。図19に示したように、微量であってもPtの添加は、特に高温での熱処理に対する安定性を向上させる。Pt含有量(X1)は、0.05%以上、さらには1%以上、特に5%以上が好ましい。Ptの含有量を1〜60at%の範囲とすると、450℃までの熱処理でMR比の低下が20%以下に押さえられた。
参考例17
熱酸化膜付Si基板/Ta(3)/Cu(50)/Ta(3)/Pt−Mn(20)/固定磁性層/Al−N−O(1.0)/Ni−Fe(5)/Ta(15)
Al−N−Oは、Alを1.0nmの膜厚で成膜後、酸素および窒素を含有する雰囲気中でICP酸窒化法を適用して作製した。上記の膜を作製した後、素子を260℃、5kOe磁場中で5時間熱処理してPt−Mnに一方向異方性を付与した。さらに、それぞれの膜を参考例1と同様にして膜をメサ型に微細加工し、上部電極としてCu(50)/Ta(3)を形成した。サンプルの素子面積は0.5μm×0.2μmとした。
このMR素子は、図2に準ずる構成を有する積層フェリ固定層スピンバルブTMR素子である。表16に示すように、固定磁性層1として、強磁性材料M−X/非磁性層/強磁性材料M−Xからなる積層フェリ固定層、または単層もしくは2層の固定磁性層を用いた。
Figure 0004387955
引き続き、作製した素子を450℃まで磁界中熱処理を行った。その後、参考例1と同様の方法により、MR特性を調べた。図20および図21に結果を示す。
図20に示したように、積層フェリ固定層を構成する一対の磁性膜の少なくとも1つに強磁性材料M−Xを用いると、素子の熱的安定性が向上した。特に、少なくともトンネル絶縁層側の磁性膜に、上記強磁性材料を用いた場合(p02、p04〜p06)に熱的安定性が大きく向上した。さらに、積層フェリ固定層の非磁性層(Ru)の界面にCo合金(界面磁性層)を挿入してRuを介した磁性層の反強磁性交換結合を強めた素子p06からも、優れた熱的安定性が得られた。
図21に示したように、固定磁性層として2層構成の磁性層を用い、その1層に強磁性材料M−Xを用いた場合にも、熱的安定性が向上した。
参考例18
熱酸化膜付Si基板/Ta(3)/Cu(50)/Ta(3)/自由磁性層/Al−O(0.8)/Co−Fe(2.5)/Ru(0.8)/Co−Fe(2.5)/Pt−Mn(15)/Ta(15)
Al−Oは、参考例1と同様にして作製した。上記膜を作製した後、素子を280℃、5kOeの磁場中で3時間熱処理してPt−Mnに一方向異方性を付与した。さらに、それぞれの膜を参考例1と同様にして各膜をメサ型に微細加工し、上部電極としてCu(50)/Ta(3)を形成した。サンプルの素子面積は0.1μm×0.2μmとした。ここでは、自由磁性層として、表17q01〜q08に示した単層膜または多層膜を用いた。この素子の磁気抵抗を室温で測定し、そのときの自由磁性層の保磁力(Hc)を調べた。表17に併せて結果を示す。
Figure 0004387955
引き続き、作製した素子を400℃まで磁界中熱処理を行った。その後、参考例1と同様の方法により、MR特性を調べた。図22に結果を示す。
このように、自由磁性層に強磁性材料M−X(FeNiPt)を用いた素子は自由磁性層の軟磁気特性とMR比とが大幅に改善されることが確認できた。
参考例19
熱酸化膜付Si基板上に多元マグネトロンスパッタリングを用いて以下のサンプルを作製し、MR特性および耐熱性を調べた。
熱酸化膜付Si基板/Ta(3)/Cu(50)/Ta(3)/自由磁性層(4)/Al−O(0.8)/固定磁性層/Ir−Mn(20)/Ta(15)
Al−Oは、参考例1と同様にして作製した。それぞれの膜は、参考例1と同様にして各膜をメサ型に微細加工し、上部電極としてCu(50)/Ta(3)を形成した。引き続き、素子を280℃、5kOeの磁場中で5時間熱処理してIr−Mnに一方向異方性を付与した。サンプルの素子面積は0.5μm×1μmとした。このMR素子は、図2に準ずるTMR素子の構成を有する。ここでは、強磁性材料M−Xを含む種々の異なる固定磁性層についてMR素子を作製し、耐熱性を調べた。表18において、r01、r05の自由磁性層にはFe0.8Ni0.2を、他の試料の自由磁性層には[Fe0.8Ni0.270Pt30を用いた。耐熱性を調べるために、素子を5kOeの磁界中で真空熱処理し、目的の各温度に5時間保持した。その後、室温で磁気抵抗を測定した。図23にMR比の熱処理温度依存性を示す。
Figure 0004387955
参考例20
熱酸化膜付Si基板上に多元マグネトロンスパッタリングを用いて以下のサンプルを作製し、MR特性および耐熱性を調べた。
熱酸化膜付Si基板/Ta(3)/Cu(50)/Ta(3)/Cr(4)/積層フェリ固定層/Al−N(1.0)/Co−Fe(1)/Ni−Fe(3)/Ta(15)
ここでは、Al−Nの膜厚(1.0)は、窒化処理前のAlの設計膜厚の合計値を示す。Al−Nは、ICP窒化法により作製した。それぞれの膜を、参考例1と同様にして各膜をメサ型に微細加工し、上部電極としてCu(50)/Ta(3)を形成した。サンプルの素子面積は2μm×4μmとした。このMR素子は、固定磁性層が表19に示す積層フェリであり、自由磁性層がCo−Fe/Ni−Feの2層膜となっている。MR素子を室温から450℃までの無磁界中の熱処理を実施し、MR比の耐熱性を調べた。磁気抵抗測定は、各熱処理後に室温で最大500Oeの磁界を印加して行った。図24に、熱処理前のMR比に対する熱処理後のMR比の熱処理温度依存性を示す。
Figure 0004387955
参考例20
熱酸化膜付Si基板上に多元マグネトロンスパッタリングを用いて以下のサンプルを作製し、MR特性および耐熱性を調べた。
熱酸化膜付Si基板/Ta(3)/Cu(50)/Ta(3)/Ni−Fe−Co(4)/Pt−Mn(15)/Co−Fe(2)/固定磁性層1/Al−O(1.0)/自由磁性層/Al−O(1.0)/固定磁性層2/Co−Fe(2)/Pt−Mn(15)/Ta(15)
Al−Oの成膜法は参考例1と同様とした。上記膜を作製した後、素子を280℃、5kOe磁場中で3時間熱処理し、Pt−Mnに一方向異方性を付与した。さらに、それぞれの膜を参考例1と同様にメサ型に加工し、上部電極として、Ta(5)/Pt(10)/Cu(50)/Ta(3)を形成した。サンプルの素子面積は、0.5μm×0.3μmとした。
この素子は、図6で示したデュアルスピンバルブ型TMR素子である。上記膜構成において、固定磁性層1、2および自由磁性層に用いた磁性膜を表20に示す。
Figure 0004387955
メサ型のTMR素子を作製した後、5kOeの磁界中熱処理を280℃〜400℃まで各温度で1時間行った。熱処理後、室温で磁気抵抗およびI−V特性を測定した。図25に各熱処理温度におけるMR比を示す。表20には、400℃熱処理後において1Vのバイアス電圧を素子に印加したときの出力を示す。図25に示したように、デュアルスピンバルブ型TMR素子においても、強磁性材料M−Xを用いた場合にMR特性の安定性が向上できた。さらに、400℃の熱処理後においても高出力を維持できる素子を提供できた。
本発明は、その意図および本質的な特徴から逸脱しない限り、他の実施形態に適用しうる。この明細書に開示されている実施形態は、あらゆる点で説明的なものであってこれに限定されない。本発明の範囲は、上記説明ではなく添付したクレームによって示されており、クレームと均等な意味および範囲にあるすべての変更はそれに含まれる。
本発明によれば、従来の素子と比較して、大きなMR比を実現し、耐熱性に優れるMR素子を提供できる。本発明のMR素子を用いれば、磁気抵抗効果型磁気ヘッド、この磁気抵抗効果型磁気ヘッドを含む磁気記録装置、高密度磁気メモリー(MRAM)等の磁気デバイスの特性を改善することも可能となる。
本発明の磁気抵抗効果素子の一例を示す断面図である。 本発明の磁気抵抗効果素子の別の一例を示す断面図である。 本発明の磁気抵抗効果素子のまた別の一例を示す断面図である。 本発明の磁気抵抗効果素子のさらに別の一例を示す断面図である。 本発明の磁気抵抗効果素子のまたさらに別の一例を示す断面図である。 本発明の磁気抵抗効果素子の上記とはまた別の一例を示す断面図である。 固定磁性層を複数含む、本発明の磁気抵抗効果素子の一例を示す断面図である。 固定磁性層を複数含む、本発明の磁気抵抗効果素子の別の一例を示す断面図である。 非磁性層をさらに積層した本発明の磁気抵抗効果素子の一例を示す断面図である。 電極をさらに配置した本発明の磁気抵抗効果素子の一例を示す断面図である。 本発明のシールド型磁気抵抗効果型磁気ヘッドの一例を示す図である。 本発明のヨーク型磁気抵抗効果型磁気ヘッドの一例を示す図である。 本発明の磁気記録装置の一例を示す図である。 本発明の磁気メモリー装置の一例を示す図である。 図15(a)および図15(b)は、本発明の磁気メモリー装置の書き込み動作と読み出し動作の一基本例を示す図である。 図16(a)および図16(b)は、本発明の磁気メモリー装置の書き込み動作と読み出し動作の別の基本例を示す図である。 図17(a)および図17(b)は、本発明の磁気メモリー装置の書き込み動作と読み出し動作のまた別の基本例を示す図である。 参考例16により測定した、熱処理温度と規格化MR比との関係を示す図である。 参考例16により測定した、Pt含有量と規格化MR比との関係を示す図である。 参考例17により測定した、熱処理温度とMR比との関係を示す図である。 別の参考例17により測定した、熱処理温度とMR比との関係を示す図である。 参考例18により測定した、熱処理温度とMR比との関係を示す図である。 参考例19により測定した、熱処理温度とMR比との関係を示す図である。 参考例20により測定した、熱処理温度とMR比との関係を示す図である。 参考例21により測定した、熱処理温度とMR比との関係を示す図である。 図26(a)および図26(b)は、シフト磁界を説明するための図である。

Claims (16)

  1. 少なくとも2つの磁性層と、前記2つの磁性層の間に配置された少なくとも1つの非磁性層とを含む多層膜を含み、
    前記少なくとも2つの磁性層における磁化方向の相対角度に応じて抵抗値が変化する磁気抵抗効果素子であって、
    前記磁性層の少なくとも1つが、式M100-aaにより示される強磁性材料M−Xからなり、
    前記磁性層が自由磁性層と固定磁性層とを含み、
    前記自由磁性層の磁化が、前記固定磁性層の磁化に比べて、外部磁界によって相対的に回転しやすく、
    前記自由磁性層が、前記強磁性材料M−Xを含む、磁気抵抗効果素子。
    ただし、Mは、Fe、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種の元素であり、
    Xは、式X1 b3 dにより示され、
    1はPtであり、
    3はOであり、
    a、b、およびdは、それぞれ、以下の式を満たす数値である。
    0.05≦a≦60
    0<b≦60
    0<d≦12
    a=b+d
  2. 少なくとも2つの磁性層と、前記2つの磁性層の間に配置された少なくとも1つの非磁性層とを含む多層膜を含み、
    前記少なくとも2つの磁性層における磁化方向の相対角度に応じて抵抗値が変化する磁気抵抗効果素子であって、
    前記磁性層の少なくとも1つが、式M100-aaにより示される強磁性材料M−Xからなり、
    前記磁性層が自由磁性層と固定磁性層とを含み、
    前記自由磁性層の磁化が、前記固定磁性層の磁化に比べて、外部磁界によって相対的に回転しやすく、
    前記固定磁性層の磁化回転を抑制する反強磁性層をさらに含む、磁気抵抗効果素子。
    ただし、Mは、Fe、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種の元素であり、
    Xは、式X1 b3 dにより示され、
    1はPtであり、
    3はOであり、
    a、b、およびdは、それぞれ、以下の式を満たす数値である。
    0.05≦a≦60
    0<b≦60
    0<d≦12
    a=b+d
  3. 前記強磁性材料M−Xを含む前記磁性層が多層膜であり、前記多層膜に含まれる少なくとも1つの磁性膜が前記強磁性材料M−Xを含む請求項2に記載の磁気抵抗効果素子。
  4. 前記強磁性材料M−Xを含む前記磁性膜が、前記非磁性層に接している請求項3に記載の磁気抵抗効果素子。
  5. 少なくとも2つの磁性層と、前記2つの磁性層の間に配置された少なくとも1つの非磁性層とを含む多層膜を含み、
    前記少なくとも2つの磁性層における磁化方向の相対角度に応じて抵抗値が変化する磁気抵抗効果素子であって、
    前記磁性層の少なくとも1つが、式M100-aaにより示される強磁性材料M−Xからなり、
    前記強磁性材料M−Xを含む前記磁性層が、非磁性膜と、前記非磁性膜を挟持する一対の磁性膜とを含む、磁気抵抗効果素子。
    ただし、Mは、Fe、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種の元素であり、
    Xは、式X1 b3 dにより示され、
    1はPtであり、
    3はOであり、
    a、b、およびdは、それぞれ、以下の式を満たす数値である。
    0.05≦a≦60
    0<b≦60
    0<d≦12
    a=b+d
  6. 少なくとも2つの磁性層と、前記2つの磁性層の間に配置された少なくとも1つの非磁性層とを含む多層膜を含み、
    前記少なくとも2つの磁性層における磁化方向の相対角度に応じて抵抗値が変化する磁気抵抗効果素子であって、
    前記磁性層の少なくとも1つが、式M100-aaにより示される強磁性材料M−Xからなり、
    前記強磁性材料M−Xが、厚さ方向に組成勾配を有する、磁気抵抗効果素子。
    ただし、Mは、Fe、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種の元素であり、
    Xは、式X1 b3 dにより示され、
    1はPtであり、
    3はOであり、
    a、b、およびdは、それぞれ、以下の式を満たす数値である。
    0.05≦a≦60
    0<b≦60
    0<d≦12
    a=b+d
  7. 少なくとも2つの磁性層と、前記2つの磁性層の間に配置された少なくとも1つの非磁性層とを含む多層膜を含み、
    前記少なくとも2つの磁性層における磁化方向の相対角度に応じて抵抗値が変化する磁気抵抗効果素子であって、
    前記磁性層の少なくとも1つが、式M100-aaにより示される強磁性材料M−Xからなり、
    前記強磁性材料M−Xが、Mからなる材料が常温常圧下で優先的にとる結晶構造とは異なる結晶構造を有する、磁気抵抗効果素子。
    ただし、Mは、Fe、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種の元素であり、
    Xは、式X1 b3 dにより示され、
    1はPtであり、
    3はOであり、
    a、b、およびdは、それぞれ、以下の式を満たす数値である。
    0.05≦a≦60
    0<b≦60
    0<d≦12
    a=b+d
  8. 前記強磁性材料M−Xの前記結晶構造が、fccおよびbccから選ばれる少なくとも一方を含む請求項7に記載の磁気抵抗効果素子。
  9. 少なくとも2つの磁性層と、前記2つの磁性層の間に配置された少なくとも1つの非磁性層とを含む多層膜を含み、
    前記少なくとも2つの磁性層における磁化方向の相対角度に応じて抵抗値が変化する磁気抵抗効果素子であって、
    前記磁性層の少なくとも1つが、式M100-aaにより示される強磁性材料M−Xからなり、
    前記強磁性材料M−Xが、少なくとも2つの結晶構造を含む混晶からなる、磁気抵抗効果素子。
    ただし、Mは、Fe、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種の元素であり、
    Xは、式X1 b3 dにより示され、
    1はPtであり、
    3はOであり、
    a、b、およびdは、それぞれ、以下の式を満たす数値である。
    0.05≦a≦60
    0<b≦60
    0<d≦12
    a=b+d
  10. 前記混晶が、fcc、fct、bcc、bctおよびhcpから選ばれる少なくとも2つを含む混晶である請求項9に記載の磁気抵抗効果素子。
  11. 少なくとも2つの磁性層と、前記2つの磁性層の間に配置された少なくとも1つの非磁性層とを含む多層膜を含み、
    前記少なくとも2つの磁性層における磁化方向の相対角度に応じて抵抗値が変化する磁気抵抗効果素子であって、
    前記磁性層の少なくとも1つが、式M100-aaにより示される強磁性材料M−Xからなり、
    前記強磁性材料M−Xが、結晶質である、磁気抵抗効果素子。
    ただし、Mは、Fe、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種の元素であり、
    Xは、式X1 b3 dにより示され、
    1はPtであり、
    3はOであり、
    a、b、およびdは、それぞれ、以下の式を満たす数値である。
    0.05≦a≦60
    0<b≦60
    0<d≦12
    a=b+d
  12. 前記強磁性材料M−Xが、平均結晶粒径が10nm以下の柱状晶からなる請求項11に記載の磁気抵抗効果素子。
  13. 少なくとも2つの磁性層と、前記2つの磁性層の間に配置された少なくとも1つの非磁性層とを含む多層膜を含み、
    前記少なくとも2つの磁性層における磁化方向の相対角度に応じて抵抗値が変化する磁気抵抗効果素子であって、
    前記磁性層の少なくとも1つが、式M100-aaにより示される強磁性材料M−Xからなる、磁気抵抗効果素子。
    ただし、Mが、式Fe1-p-qCopNiqにより示され、
    Xは、式X1 b3 dにより示され、
    1はPtであり、
    3はOであり、
    a、b、およびdは、それぞれ、以下の式を満たす数値であり、
    0.05≦a≦60
    0<b≦60
    0<d≦12
    a=b+d
    pおよびqは、それぞれ、以下の式を満たす数値である。
    0<p<1
    0<q≦0.9
    p+q<1
  14. qが、0<q≦0.65を満たす数値である請求項13に記載の磁気抵抗効果素子。
  15. 少なくとも2つの磁性層と、前記2つの磁性層の間に配置された少なくとも1つの非磁性層とを含む多層膜を含み、
    前記少なくとも2つの磁性層における磁化方向の相対角度に応じて抵抗値が変化する磁気抵抗効果素子であって、
    前記磁性層の少なくとも1つが、式M100-aaにより示される強磁性材料M−Xからなる、磁気抵抗効果素子。
    ただし、Mが、式Fe1-qNiqにより示され、
    Xは、式X1 b3 dにより示され、
    1はPtであり、
    3はOであり、
    Xは、式X1bX3dにより示され、
    a、b、およびdは、それぞれ、以下の式を満たす数値であり、
    0.05≦a≦60
    0<b≦60
    0<d≦12
    a=b+d
    qは、以下の式を満たす数値である。
    0<q≦0.9
  16. 少なくとも2つの磁性層と、前記2つの磁性層の間に配置された少なくとも1つの非磁性層とを含む多層膜を含み、
    前記少なくとも2つの磁性層における磁化方向の相対角度に応じて抵抗値が変化する磁気抵抗効果素子であって、
    前記磁性層の少なくとも1つが、式M100-aaにより示される強磁性材料M−Xからなる磁気抵抗効果素子。
    ただし、Mが、式Fe1-pCopにより示され、
    Xは、式X1 b3 dにより示され、
    1はPtであり、
    3はOであり、
    a、b、およびdは、それぞれ、以下の式を満たす数値であり、
    0.05≦a≦60
    0<b≦60
    0<d≦12
    a=b+d
    pは、以下の式を満たす数値である。
    0<p≦0.9
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