JP4038075B2 - ストリッパブルペイントの乾燥炉 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、工場内において車体外表面の塗膜を保護するストリッパブルペイントを乾燥させるための車体保護用のストリッパブルペイントの乾燥炉(以下、単に「乾燥炉」ともいう。)に関し、詳しくは、ストリッパブルペイントを塗布する塗布ステーションに換気設備が不要であり、エネルギ効率にも優れた乾燥炉に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車の工場から製品が出荷されるときには、販売店までの輸送等の際に車体に傷がつかないように、容易に剥がすことが可能な保護膜を車体の表面に付けている。この保護膜は、片面に粘着剤がついたフィルムや、ビニル樹脂、アセチルセルロース等からなる剥離可能な塗料(ストリッパブルペイント)を乾燥させたものが利用される。
前記保護膜として、ストリッパブルペイントを利用する場合、その塗布工程及び乾燥工程において、ストリッパブルペイント内に含まれる有機溶剤が蒸発する。水溶性のストリッパブルペイントを使用する場合でも、わずかながら有機溶剤が蒸発する。この蒸気は、工場内の作業環境上、工場内から排出する必要がある。
【0003】
前記ストリッパブルペイントの塗布工程を行う塗布ステーション及び乾燥工程を行う乾燥炉を工場に導入するにあたっては、乾燥炉の熱源すなわち燃料が必要になり、また、前記溶剤の蒸気を換気するシステムが必要になる。一方で、これらの燃料費、設備費を最小限にすることも望まれる。すなわち、工場自体に換気の設備を追加することなく、また、新たな燃料費を必要としないように設備を導入することが要望されている。
【0004】
ところで、前記したようなストリッパブルペイントの塗布・乾燥工程に類する技術としては、次のようなものが知られている。
実開平3−22569号公報では、炉内熱風の流出を防止する技術について開示されている。これは、乾燥炉の入口及び出口に絶えず一個以上のワークを存在させるのに必要な長さを有し、かつワークと略相似形状の横断面形状を有するトンネルが設けられ、このトンネルの炉内側に循環熱風を炉中央に向けて吹き出させる吸気ダクトが設けられている。すなわち、ワークで炉の蓋をすると同時に、炉中央に向けて吹き出させる熱風で開口部付近に負圧を発生させ、炉内の正圧と釣り合わせることで炉内の熱風が炉外に流出しないようにしたものである。さらにこの出願の先行技術として、炉の中央部を高くした山形の炉にして、熱風が炉外に流出しないようにする方式、及び炉の出入口にエアカーテンを設ける方式についても記載されている。
【0005】
また、特公昭58−3191号公報には、高温の乾燥路から排出される排熱を直接又はインシネレータを介して低温の乾燥路へ供給する技術が開示されている。
【0006】
また、特公昭58−43676号公報には、一個の乾燥炉から排出した溶剤蒸気及び熱分解成分をインシネレータで燃焼し、この一部を循環路に供給できるようにした技術が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記した公報のうち実開平3−22569号公報の構成では、トンネル内に絶えずワークが存在しており、また、乾燥炉内と乾燥炉外の気圧を釣り合わせていることからも炉内と炉外の空気の流通が無い。したがって、この構成を単にストリッパブルペイントの乾燥炉に適用した場合には、乾燥炉の前工程(塗布工程)の換気を行うのに、別途換気設備を導入する必要がある。
【0008】
また、特公昭58−3191号公報では、排熱を再利用しているものの、別途燃料は必要となっている。
【0009】
さらに、特公昭58−43676号公報では、乾燥炉から排出された溶剤蒸気及び熱分解成分をインシネレータで燃焼して、熱源としているが、ストリッパブルペイントの場合、熱源として十分な量の溶剤蒸気を得ることはできず、この構成をそのままストリッパブルペイントの乾燥炉に適用することはできない。
【0010】
このような従来技術のもと、本発明は、塗布ステーションにおいて別途換気設備を導入する必要が無く、乾燥工程における燃料費も不要な車体保護用のストリッパブルペイントの乾燥炉を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記した課題を解決するため、本発明の請求項1では、車体外表面の塗膜を保護するストリッパブルペイントを塗布する塗布ステーションの出口に連結された乾燥室と、この乾燥室内を高温雰囲気にする加熱装置とを備えたストリッパブルペイントの乾燥炉であって、前記乾燥室内の気圧を低下させる排気手段を設けて、前記乾燥室の入口から前記塗布ステーションの空気を吸入して排気するように構成し、前記乾燥室は、前記加熱装置により高温の空気が流されてストリッパブルペイントを乾燥する加熱乾燥部と、前記加熱乾燥部の入口及び出口に、空気を吸い込むことにより前記加熱乾燥部と外部の空気とが混じることを防止する前記排気手段としてのエアシール部とを備え、前記加熱乾燥部に単位時間当たりに供給される高温の空気の量に対し、前記排気手段で単位時間当たりに吸い込む空気の量を多くすることにより、前記乾燥室内の気圧を前記塗布ステーションの気圧より低くなるよう構成したことを特徴とした。
【0012】
このような乾燥炉によれば、乾燥室内の気圧が排気手段により低下し、前工程である塗布ステーションの空気が乾燥室の入口から吸入される。その結果、塗布ステーションに別途換気設備を導入する必要が無く、設備費を削減できる。なお、塗布ステーションは工場の建物内でストリッパブルペイントの塗布を行う作業場である。また、排気手段は複数あっても構わない。
【0014】
この構成は、乾燥室内の気圧の制御機構をより具体化し、また、乾燥炉のエネルギ効率の向上を図ったものである。すなわち、この乾燥炉によれば、ストリッパブルペイントを乾燥する加熱乾燥部の入口及び出口に、空気を吸入する排気手段としてのエアシール部を設けることで、乾燥室内の空気と乾燥室外の空気が混じることが無く、乾燥炉のエネルギ効率の向上を図ることができる。また、加熱乾燥部に単位時間当たりに供給される高温の空気の量に比べ、排気手段で単位時間当たりに吸い込む空気の量が多いため、乾燥室全体で見た気圧が乾燥室の外部よりも低い気圧となる。その結果、塗装工程の空気を乾燥室すなわち乾燥炉に吸入することができる。なお、排気手段は、エアシール部だけであっても良いし、エアシール部以外の他の排気設備をさらに備えることもできる。
【0015】
なお、加熱乾燥部に単位時間当たりに供給される空気の量とは、加熱乾燥部の系に供給される空気の量の意味であり、加熱乾燥部で空気が循環している場合には、循環している空気の量は含まず、循環経路に外部から供給される空気の量を意味する。また、排気手段は、エアシール部だけであっても良いし、別途の排気手段を備えることもできる。また、入口及び出口は、ワークである車体がパレットやコンベヤ上に乗って、乾燥炉に搬入される入口及び搬出される出口のことである。
【0016】
さらに、請求項2記載の発明によれば、請求項1記載のストリッパブルペイントの乾燥炉において、前記加熱乾燥部は、高温の空気を循環する循環経路を備え、必要量の高温の空気をこの循環経路に供給することにより前記加熱乾燥部を所定の温度に制御するよう構成したことを特徴とした。
【0017】
このように、高温の空気を循環する循環経路を備えることにより、温度変化が小さくなり、温度が低くなったときに必要量の高温の空気を導入するという簡単な制御で加熱乾燥部の温度を所定の温度に制御することが可能となる。
【0018】
また、請求項3記載の発明によれば、請求項1又は請求項2記載の発明において、前記高温の空気は、車体の塗装工程の乾燥炉の排気を利用したことを特徴とした。
【0019】
自動車の工場には、車体の塗装工程があるので、この塗装の乾燥炉の排気を利用することで、新たにストリッパブルペイントの乾燥炉のために燃料を供給する必要がなくなる。なお、車体の塗装工程の乾燥炉というのは、例えば、下塗り、シーリング、中塗り、上塗り(ベースコート塗料、クリアー塗料を含む)のそれぞれの乾燥・焼付け工程で使用する乾燥炉のことである。
【0020】
また、請求項4記載の発明によれば、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のストリッパブルペイントにおいて、前記加熱乾燥部に副排気手段を設け、この副排気手段を利用して前記乾燥室内の気圧を制御するよう構成したことを特徴とした。
【0021】
このようにエアシール部の他に副排気手段を設けることで、エアシール部は、乾燥炉内と乾燥炉外の空気が混じることを防止する機能に最適になるように調整でき、一方、乾燥炉内の気圧の制御は、副排気手段のみで行うことができ、乾燥炉内の気圧が制御しやすくなる。なお、エアシール部と副排気手段の両方の排気速度を制御する構成としても構わない。
【0022】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
参照する図において、図1は、塗装工程から続くストリッパブルペイントの塗布・乾燥工程の工場内のレイアウトを示す図であり、図2は、ストリッパブルペイントの塗布・乾燥工程を示す斜視図である。
図1及び図2に示すように、塗装工程から出てきた車体Bは、表面のゴミ等を取り除くポリシング工程を通過した後、門戸状のストリッパブルペイント塗布ロボット2を通過するときに、ノズルから液体状のストリッパブルペイントが塗布される。次に、車体Bに線状に塗布されたストリッパブルペイントを、作業者がローラを使用して薄く塗り広げる。このストリッパブルペイント塗布ロボット2から、ストリッパブルペイントを塗り広げる工程の作業場が塗布ステーション20である。次に、車体Bは、乾燥炉1内へ搬送され、約90℃で3〜4分加熱乾燥された後、乾燥炉1内の最後に位置する車体冷却部11で冷却される。乾燥炉1から搬出された車体Bは、組立工程へと払い出される。
【0023】
この乾燥炉1へは、図2に示すように、車体Bの塗装工程の一つである中塗り乾燥炉3からの約200℃の排熱が必要量供給されている。なお、中塗り乾燥炉3からの排熱は一部外部に排出されている。また、乾燥炉1へ導入する高温の空気は、中塗り乾燥炉3に限らず、下塗り、シーリング、上塗り、ベースコート塗装、クリアー塗装等、他の塗装工程の乾燥炉の排熱を利用しても良い。
これらの排熱の温度は、例えば、上塗り乾燥炉インシネレータ排気温度が190〜200℃、中塗り乾燥炉インシネレータ排気温度が200〜260℃、シーラー乾燥炉排気温度が150〜155℃、電着乾燥炉排気温度が150〜175℃である。ストリッパブルペイントの乾燥に必要な温度は、その種類、及びどのくらい短い時間で乾燥させたいかにもよるが、90℃前後あれば十分であるので、前記各排熱を利用することができる。
【0024】
次に、本実施形態の乾燥炉1の詳細について図3を参照しながら説明する。
図3は、一実施形態に係る乾燥炉の構成を模式的に示した図である。
図3に示すように、乾燥炉1は、塗布ステーション20の出口に連結され、主たる構成として、乾燥室10、加熱乾燥部15、加熱乾燥部15の入口及び出口にそれぞれ設けられたエアシール(エアシール部)12,13、エアシール13の出口に連結された車体冷却部11を備えている。
【0025】
乾燥室10は、塗布ステーション20の出口に連結された一室で、図示はしないが、その床部に車体Bを搬送する搬送手段が設けられている。
【0026】
加熱乾燥部15は、高温の空気が循環して流れる循環経路50により高温の空気が流されている。ここでの高温とは、前記したように90℃である。また、加熱乾燥部15には、温度センサ37、及び圧力センサ38が備えられ、常に温度と気圧が測定されて、制御装置30に温度と気圧の信号が送られている。
前記循環経路50の途中には、ファン51が設けられ、循環経路50内の空気が、加熱乾燥部15に開口する温風供給口52から加熱乾燥部15内へ送り込まれる。そして、加熱乾燥部15に開口した温風吸入口53から加熱乾燥部15内の空気を吸入し、フィルタ54を通過した後、前記ファン51に戻るように構成されている。循環経路50には、フィルタ54の上流及びファン51の下流に温度センサ55,55が設けられ、温度センサ55,55が制御装置30に測定した温度を送信している。なお、この循環経路50及び中塗り乾燥炉3からの高温排気の経路が加熱装置に相当する。
【0027】
前記温風吸入口53とフィルタ54の間の経路には、中塗り乾燥炉3からの空気が供給される排熱供給管57が接続されている。中塗り乾燥炉3から排出された空気は、ファン58により送風され、一部が排熱供給管57を通って循環経路50へ、残りが排気管59を通って、外部へ放出されている。なお、ファン58の上流には、中塗り乾燥炉3から排出されてきた排気の温度を測定する温度センサ56が設けられ、温度センサ56で測定した温度は、制御装置30に送信されている。また、排熱供給管57の途中には、空気の流量を絞る可変バルブ32が設けられている。この可変バルブ32は、制御装置30により制御されている。
【0028】
エアシール12は、加熱乾燥部15の入口に連続して設けられた一室で、乾燥炉1の入口に相当する。エアシール12では、ファン41により送風されるエアシール排気系40が可変バルブ33を介して接続されており、壁部から、設定された速度で空気が吸入されるようになっている。この可変バルブ33は、制御装置30に制御される。このように壁部から空気を吸入して外部に排出することにより、隣接する塗布ステーション20及び加熱乾燥部15の両方から空気を吸い込み、これにより塗布ステーション20の空気と加熱乾燥部15の空気が混じり合うことを防止して、加熱乾燥部15の温度低下を防止している。また、エアシール12は、塗布ステーション20の空気を吸い込むことにより、塗布ステーション20で発生した溶剤の蒸気を吸い込んで、換気を行っている。なお、エアシール排気系40に、溶剤の蒸気を除去するためのフィルタを設けてもよい。
【0029】
エアシール13は、加熱乾燥部15の出口に連続して設けられた一室で、エアシール12と同様に、エアシール排気系40が可変バルブ34を介して壁部に接続されて、その壁部から、設定された速度で空気が吸入されるようになっている。なお、可変バルブ34は、制御装置30に制御される。このように壁部から空気を吸入して外部に排出することにより、エアシール13に隣接する車体冷却部11の空気と加熱乾燥部15の空気が混じり合うのを防止している。
【0030】
本実施形態では、前記エアシール12及びエアシール13からの排気量は、合わせて120m3/minに設定する
【0031】
車体冷却部11は、加熱乾燥部15で加熱、乾燥された車体Bを冷やす装置である。車体冷却部11には、外気を送り込んで車体Bを冷却する冷却機60が接続されている。そして、車体冷却部11の出口は、乾燥炉1の出口に相当し、次の組立工程へと連結されている。
前記冷却機60は、車体冷却部11に空気を送り込む送風ファン61と、送風ファン61の上流に設けられたエアクリーナ64と、送風ファン61から送られた空気を車体冷却部11内で車体Bに向け吹きつける送風口62と、車体冷却部11から空気を吸い込む吸入口63と、吸入口63から空気を吸い込んで、外部に排出する排気ファン65とを備えている。ここで、送風口62で車両冷却部11に送り込む単位時間当たりの空気量と、吸入口63から排出される単位時間当たりの空気量は、同じに設定されている。
前記冷却機60の空気供給側の経路と排気側の経路には、それぞれ制御装置30で制御される可変バルブ66,67が設けられている。
【0032】
前記加熱乾燥部15の出口付近、すなわち加熱乾燥部15のエアシール13側には、副排気手段としての排気経路70が接続されている。排気経路70は、インバータにより回転が制御される排気ファン71により駆動され、前記加熱乾燥部15内の空気を外部に放出している。また、排気経路70には、可変バルブ31が設けられている。この排気ファン71は、可変バルブ31とともに制御装置30により制御されることで、排気経路70の単位時間当たりの排気量が制御される。なお、この排気経路70に、溶剤の蒸気を除去するためのフィルタを設けることもできる。
【0033】
制御装置30は、前記温度センサ37から送られてきた加熱乾燥部15内の温度に応じ、目標の温度、すなわち90℃になるように可変バルブ32を制御する。つまり、温度センサ37から送られてきた温度が90℃より低い場合には、可変バルブ32を開く側に制御し、90℃より高い場合には、可変バルブ32を閉じる側に制御する。この際、制御装置30は、温度センサ37だけでなく、適宜他の温度センサ55,55,56で測定した温度も参照して、可変バルブ32の制御量を決定する。
また、温度の制御のために可変バルブ32だけでなく、可変バルブ33,34を制御することもできる。
【0034】
また、制御装置30は、前記圧力センサ38から送られてきた加熱乾燥部15内の気圧に応じ、目標の気圧になるように排気ファン71の出力及び可変バルブ31を制御する。本実施の形態では、塗装ステーション20の気圧(大気圧)に対し、乾燥炉1(加熱乾燥部15)内の気圧を低くすることにより、塗装ステーション20の空気を乾燥炉1内に吸入されるように、加熱乾燥部15内の気圧が大気圧より若干低くなるように排気ファン71の出力及び可変バルブ31を制御する。
【0035】
なお、加熱乾燥部15内の圧力は、一般的に時間的な変化が少ないので、排気経路70の試運転をすることにより、排気ファン71の出力をある一定値に設定したり、各送風ファンの能力を適宜選択したりすることで圧力センサ38、制御装置30を使用することなく加熱乾燥部15内の圧力を制御することもできる。
【0036】
以上のような構成の乾燥炉1は、次のように作用する。
[乾燥炉始動時]
乾燥炉1の始動時は、常温となっているため、可変バルブ32を開いて、中塗り乾燥炉3からの200℃程度の排熱を循環経路50を介して加熱乾燥部15に送る。排気経路70の排気量を120m3/minになるように排気ファン71をインバータ制御し、エアシール12,13と合わせた排気量が240m3/minになるようにする。一方、排熱供給管57から循環経路50(加熱乾燥部15)に送る空気量をこの240m3/minより小さくなるように可変バルブ32の開度を制御装置30で制御する。これにより、乾燥炉1内は、負圧となり、入口の開口部より塗布ステーション20の空気を吸入し、換気することになる。もっとも、乾燥炉1の始動時は、ストリッパブルペイントの塗布は行っていないため、乾燥炉1から高温の空気が漏れない程度の負圧にすれば十分である。
【0037】
[通常稼動時]
加熱乾燥部15の温度が90℃に近づいてきたならば、排気経路70からの排気量を少なくするように可変バルブ31が制御され、排気ファン71がインバータ制御される。また、中塗り乾燥炉3からの排熱の供給も可変バルブ32を絞ることにより少なくする。この際、エアシール12,13及び排気経路70で乾燥炉1から排出する空気量よりも、排熱供給管57から乾燥炉1に供給する空気量の方が小さくなるようにすることで、乾燥炉1内を負圧に維持する。
【0038】
加熱乾燥部15の温度が90℃に安定したならば、塗布ステーション20でストリッパブルペイントの塗布を開始する。前記したように、乾燥炉1の内部は、負圧になるように制御されているため、乾燥炉1の入口から、塗布ステーション20で発生した異臭(有機溶剤が気化したときに発生する臭い)を吸引する。吸引された空気は、その多くがエアシール12から外部に排出され、その一部が車体Bと一緒に乾燥炉1内に入りこむ。そのため、乾燥炉1内の温度が低下する。この温度低下は、温度センサ37等により検出され、その温度に応じて制御装置30が可変バルブ32を制御して中塗り乾燥炉3からの排熱供給量を増やす。排熱供給量が増えたならば、同時に乾燥炉1内の気圧も変化するので、制御装置30は、可変バルブ31の絞り量及び排気ファン71の出力を制御して、乾燥炉1内の気圧が塗布ステーション20に対して負圧になるようにする。
【0039】
以上のように、本実施形態のストリッパブルペイントの乾燥炉1では、乾燥炉1内を塗布ステーション20に対し常に負圧になるよう構成されているので、塗布ステーションで発生した悪臭を吸入することができる。その結果、塗布ステーション20に新たに換気設備を設ける必要がない。また、乾燥炉1でストリッパブルペイントを加熱乾燥する熱源として、塗装工程の一つである中塗り乾燥炉3の排熱を利用しているので、新たな燃料を必要とせず、燃料費も不要となる。
また、エアシール12,13により、外部の空気が加熱乾燥部15に入り込まないので、加熱乾燥部15の温度低下が少なく、エネルギ効率も高い。
さらに、エアシール12,13とは別に加熱乾燥部15の排気をする排気経路70を設け、この排気経路70の単位時間当たりの排気量を制御することで乾燥炉1内の気圧を制御するようにしたので、乾燥炉1内の気圧制御が容易である。また、加熱乾燥部15には、高温の空気を循環する循環経路50を設け、加熱乾燥部15の温度低下に応じて必要量の新たな高温の空気を送るようにしたので、加熱乾燥部15の温度が安定しやすく、その結果、制御しやすい。
【0040】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前記実施の形態には限定されず、適宜変更して実施することが可能である。例えば、排気経路70を設けなくとも、エアシール12,13だけで乾燥炉1内から排気を行ってもよい。この場合でも、エアシール12,13から単位時間当たりに排気する空気量を、排熱供給管57から単位時間当たりに供給する空気量より多くすることで、乾燥炉1内を塗布ステーション20より低い気圧(負圧)に保ち、塗布ステーション20の悪臭を乾燥炉1内に吸入することができる。また、排気経路70を設ける場合でも、排気経路70で単位時間当たりに排気する空気量を一定にして、エアシール12,13から単位時間当たりに排気する空気量を制御することもできる。
【0041】
【発明の効果】
以上詳述したとおり、本発明によれば、以下のような顕著な効果を奏する。
請求項1記載の発明によれば、乾燥炉の前工程である塗布ステーションの空気が乾燥室の入口から吸入されるので、塗布ステーションに別途換気設備を導入する必要が無く、設備費を削減できる。
【0042】
また、乾燥室内の空気と乾燥室外の空気が混じることが無く、乾燥炉のエネルギ効率の向上を図ることができる。また、塗装ステーションの空気を乾燥炉に吸入することができるので、別途塗布ステーションに換気設備を導入する必要が無く、設備費を削減できる。
【0043】
さらに、請求項2記載の発明によれば、高温の空気を循環する循環経路を備えることにより、温度変化が小さくなり、加熱乾燥部の温度が安定し、温度制御がしやすくなる。
【0044】
また、請求項3記載の発明によれば、新たにストリッパブルペイントの乾燥炉のために燃料を使用する必要がなく、燃料費を抑えることができる。
【0045】
また、請求項4記載の発明によれば、乾燥炉内の気圧が制御しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ストリッパブルペイントの塗布・乾燥工程の工場内のレイアウトを示す図である。
【図2】ストリッパブルペイントの塗布・乾燥工程を示す斜視図である。
【図3】一実施形態に係る乾燥炉の構成を模式的に示した図である。
【符号の説明】
1 乾燥炉
3 中塗り乾燥炉
10 乾燥室
12,13 エアシール部
15 加熱乾燥部
20 塗布ステーション
50 循環経路
70 排気経路(副排気手段)
B 車体
Claims (4)
- 車体外表面の塗膜を保護するストリッパブルペイントを塗布する塗布ステーションの出口に連結された乾燥室と、この乾燥室内を高温雰囲気にする加熱装置とを備えたストリッパブルペイントの乾燥炉であって、
前記乾燥室内の気圧を低下させる排気手段を設けて、前記乾燥室の入口から前記塗布ステーションの空気を吸入して排気するように構成し、
前記乾燥室は、前記加熱装置により高温の空気が流されてストリッパブルペイントを乾燥する加熱乾燥部と、前記加熱乾燥部の入口及び出口に、空気を吸い込むことにより前記加熱乾燥部と外部の空気とが混じることを防止する前記排気手段としてのエアシール部とを備え、前記加熱乾燥部に単位時間当たりに供給される高温の空気の量に対し、前記排気手段で単位時間当たりに吸い込む空気の量を多くすることにより、前記乾燥室内の気圧を前記塗布ステーションの気圧より低くなるよう構成したことを特徴とするストリッパブルペイントの乾燥炉。 - 前記加熱乾燥部は、高温の空気を循環する循環経路を備え、必要量の高温の空気をこの循環経路に供給することにより前記加熱乾燥部を所定の温度に制御するよう構成したことを特徴とする請求項1記載のストリッパブルペイントの乾燥炉。
- 前記高温の空気は、車体の塗装工程の乾燥炉の排気を利用したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のストリッパブルペイントの乾燥炉。
- 前記加熱乾燥部に副排気手段を設け、この副排気手段を利用して前記乾燥室内の気圧を制御するよう構成したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のストリッパブルペイントの乾燥炉。
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