JP4037786B2 - 画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえば複写機などの電子写真方式の画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方式の画像形成装置は、複写機だけでなく、近年需要の伸びの著しいコンピュータ等の出力手段であるプリンターなどにも広く利用されるに至っている。電子写真方式の画像形成装置では、装置に備わる電子写真感光体の感光層を、帯電器によって一様に帯電させ、画像情報に対応するたとえばレーザ光などによって露光し、露光によって形成される静電潜像に対してトナーと呼ばれる微粒子状の現像剤を現像器から供給してトナー画像を形成する。
【0003】
電子写真感光体の表面に現像剤の成分であるトナーが付着することによって形成されたトナー画像は、転写手段によって記録紙などの転写材に転写されるけれども、電子写真感光体表面のトナーがすべて記録紙に転写して移行されるのではなく、一部が電子写真感光体表面に残留する。このような電子写真感光体表面の残留トナーは、形成される画像の品質に悪影響を及ぼすので、クリーニング装置によって除去される。
【0004】
このような電子写真方式の画像形成装置は、近年、モノクロにとどまらずカラー出力手段としても利用されるに至っており、形成される画像の高品質化への要求が一段と高まっている。画像の高品質化の手段としては、画像形成の各工程を対象に数多くの提案がなされているけれども、静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像工程において用いられる現像剤の成分であるトナーおよびキャリアの小粒径化が、代表的な手段として挙げられる。
【0005】
現像剤成分であるトナーおよびキャリアを小粒径化することによって、現像手段における磁気ブラシを緻密化し、画像の階調性や細線の再現性、黒ベタ部の濃度均一性を向上して高品質化することができる。また小型化、画像形成処理速度の高速化が進められている画像形成装置では、現像剤に与えられるストレスが、キャリアの軽量化に伴って軽減されるので、耐久性の面においても、キャリアの小粒径化が有利であると考えられる。
【0006】
しかしながら、トナーは小粒径化されることによって、鏡像力やファンデルワールス力などに起因してトナー粒子の電子写真感光体に対する付着力が増大し、転写材へ転写されにくくなり、転写効率が低下するという問題がある。そこで、小粒径化されたトナー粒子をさらに球形化し、トナー粒子の電子写真感光体表面に対する接触面積を小さくしてその付着力を抑制することによって、転写効率を向上させ、高画質化との両立が図られている。トナー粒子の球形化は、転写効率を向上させるので、単位複写枚数当りのトナー消費量を低減し、また装置内に生じる転写残トナーの量を低減するので、低コストかつ省エネルギーの観点において有利な画像形成を可能にする。
【0007】
またトナー粒子の電荷は、粒子の突起部に集中する傾向があるので、トナー粒子を球形化して平均円形度を高くするほど、トナー粒子の電荷の不均一が解消されて帯電性が安定する。このことによって、トナー粒子間の帯電性の差が減少し、トナー全体の帯電量分布が均一化されるので、高画質が実現される。さらに球形化されたトナー粒子は、突起部が少ないので、トナー粒子と電子写真感光体表面とが摺擦される場合における摩擦が少なく、電子写真感光体表面の膜削れが抑制されるという利点もある。
【0008】
しかしながら、トナー粒子の小粒径化は、トナー画像を転写材に転写させた後、電子写真感光体表面の残留トナーを除去するクリーニング工程において、いわゆるクリーニング不良の問題を生じさせる。ここで、クリーニング不良とは、転写工程で電子写真感光体から転写材に転写されずに、電子写真感光体表面に残った残留トナーが、クリーニング工程ですべて除去されずに一部がさらに残留し、以降のサイクルの画像形成プロセスに影響を与える現象である。より具体的には、画像上における電子写真感光体の回転方向へのトナー漏れすじの発生や白地かぶりの発生する現象をいう。
【0009】
またトナー粒子は、元々電子写真感光体表面に対して大きい付着エネルギを有するので、トナー粒子が球形化されて平均円形度が高まるのに伴って、電子写真感光体表面をクリーニングブレードでクリーニングする際、クリーニングブレードで掻取ることができないでクリーニングブレードのエッジと電子写真感光体表面との間を通り抜け易くなり、一層クリーニング性が低下するという問題がある。
【0010】
トナー粒子の小粒径化に伴う電子写真感光体のクリーニング性低下の現象は、トナー粒子径と電子写真感光体の表面性状とが関係する相互付着力が作用因子として考えられる。したがって、小粒径化したトナー粒子を用いる場合における電子写真感光体のクリーニング性を向上するためには、電子写真感光体自体の表面性状に着目したクリーニング性の制御が必要不可欠である。
【0011】
電子写真感光体のクリーニングとは、電子写真感光体表面と、付着している残留トナーとの間の付着力を超える力を、残留トナーに作用させて電子写真感光体の表面から除去することである。したがって、電子写真感光体表面の濡れ性が低いほどクリーニングし易いということができる。電子写真感光体表面の濡れ性すなわち付着力は、表面自由エネルギー(表面張力と同義)を指標として表すことができる。表面自由エネルギー(γ)とは、物質を構成する分子間に作用する力である分子間力が最表面において起こす現象である。
【0012】
電子写真感光体の表面にトナーが固着、融着して転写材に転写されずに残留したトナーが、帯電からクリーニングに至る工程を繰返し経ているうち、電子写真感光体の表面に被膜状に広がる現象は、濡れ性のうち「付着濡れ」に相当する。
【0013】
図5は、付着濡れの状態を例示する側面図である。図5に示す付着濡れにおいて、濡れ性と表面自由エネルギー(γ)との関係は、Youngの式(1)によって表される。
γ1=γ2・cosθ+γ12 …(1)
ここで、γ1:物質1表面の表面自由エネルギー
γ2:物質2表面の表面自由エネルギー
γ12:物質1と物質2との界面自由エネルギー
θ:物質1に対する物質2の接触角
【0014】
式(1)より、物質1に対する物質2の濡れ性の低減、すなわちθを大きくして濡れにくくすることは、電子写真感光体と異物との濡れ仕事に関連する界面自由エネルギーγ12を大きくし、各表面自由エネルギーγ1およびγ2を小さくすることによって達成される。
【0015】
式(1)において、電子写真感光体の表面へのトナーの付着を考える場合、物質1を電子写真感光体、物質2をトナーとすればよい。したがって、実際の電子写真感光体をクリーニングする場合、電子写真感光体の表面自由エネルギーγ1を制御することにより、式(1)右辺の濡れ性すなわち電子写真感光体に対するトナーの付着状態を制御することができる。
【0016】
そこで電子写真感光体の表面状態を規定する従来技術には、純水との接触角を用いるものがある(たとえば、特許文献1参照)。しかしながら、固体と液体との濡れに関しては、前述の図5に示すようにその接触角θを測定することができるけれども、電子写真感光体とトナーとのように、固体と固体との場合には、接触角θを測定することができない。したがって前述の従来技術は、電子写真感光体表面と純水との間における濡れ性については適用できるけれども、トナーの固体に対する濡れ性およびクリーニング性との関係については充分に説明することができない。
【0017】
次に固体同士の間における濡れ性は、固体と固体との間の界面自由エネルギーによって表すことができる。固体と固体との間の界面自由エネルギーについては、非極性な分子間力について述べたForkes理論を、さらに極性、または水素結合性の分子間力による成分まで拡張できるとされている(非特許文献1参照)。この拡張Forkes理論によれば、各物質の表面自由エネルギーは2〜3成分で求められる。前述の電子写真感光体表面に対するトナーに該当する付着濡れの場合における表面自由エネルギーについては、3成分で求めることができる。
【0018】
以下固体物質間における表面自由エネルギーについて説明する。拡張Forkes理論では、式(2)に示す表面自由エネルギーの加算則が成立つものと仮定する。
γ=γd+γp+γh …(2)
ここで、γd:双極子成分(極性による濡れ)
γp:分散成分(非極性の濡れ)
γh:水素結合成分(水素結合による濡れ)
【0019】
式(2)の加算則をForkes理論に適用すると、ともに固体である物質1と物質2との間の界面自由エネルギーγ12は、式(3)のように求められる。
ここで、γ1:物質1の表面自由エネルギー
γ2:物質2の表面自由エネルギー
γ1 d,γ2 d:物質1,物質2の双極子成分
γ1 p,γ2 p:物質1,物質2の分散成分
γ1 h,γ2 h:物質1,物質2の水素結合成分
【0020】
被測定対象の固体物質における前述の式(2)に示す各成分の表面自由エネルギー(γd,γp,γh)は、各成分の表面自由エネルギーが既知である試薬を使用し、その試薬との付着性を測定することによって算出できる。したがって、物質1および物質2のそれぞれについて、各成分の表面自由エネルギーを求め、さらに各成分の表面自由エネルギーから式(3)によって物質1と物質2との界面自由エネルギーを求めることができる。
【0021】
このようにして求められる固体と固体と間の界面自由エネルギーの考え方に基づいて、光導電層が有機感光材料で構成される電子写真感光体の表面自由エネルギー(γ)を35〜65mN/mの範囲に規定することによって、電子写真感光体のクリーニング性を向上し、長寿命化の実現されることが、従来技術として開示されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0022】
しかしながら、本発明者らの調査によれば、従来技術に開示される範囲である35〜65mN/mの表面自由エネルギー(γ)を有する電子写真感光体を用いて、たとえば記録紙に対して実際に画像形成する実写性能試験を行ったところ、電子写真感光体表面において、紙粉などの異物との接触によると思われる傷の発生が確認された。またその傷に起因するクリーニング不良によって、記録紙に転写した画像上に黒スジが発生することを確認した。
【0023】
従来技術においては、さらに電子写真感光体の耐久にともなう表面自由エネルギーの変化量(Δγ)を規定しているけれども、電子写真感光体の初期特性たとえば表面自由エネルギー(γ)を規定することによっては変化量Δγを定められないこと、また画像形成する際の環境や転写材の材質などの諸条件に依存して変動量Δγが変化することを考慮すると、実際の電子写真感光体の設計において、変動量Δγは不確定な要素を多分に含み設計基準として適さないという問題がある。
【0024】
またトナー粒子の球形化による高画質化を提案する従来技術には、結着樹脂および磁性体を含有する磁性トナー粒子の表面に無機微粉および導電性粉末とを有する磁性トナーにおいて、磁性トナーの平均円形度を0.970以上に規定することによって、磁性トナー1個1個の帯電を均一にし、かぶりの非常に少ない良好な画像を得るというものがある(特許文献3参照)。しかしながら、特許文献3には、トナー粒子の平均円形度を高めるのに伴って、残留トナーがクリーニングブレードのエッジと電子写真感光体表面との間を擦りぬけ易くなり、クリーニング不良が発生するという問題を解決する技術は開示されていない。
【0025】
【特許文献1】
特開昭60−22131号公報
【非特許文献1】
北崎寧昭、畑敏雄外;「Forkes式の拡張と高分子固体の表面張力の評価」、日本接着協会誌、日本接着協会、1972年、Vol.8、No.3、p.131−141
【特許文献2】
特開平11−311875号公報
【特許文献3】
特開平2001−235899号公報
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、トナーの平均円形度および電子写真感光体表面の表面自由エネルギーの範囲を規定することによって、転写効率および電子写真感光体のクリーニング性に優れるとともに、高品質および高解像度の画像を形成することのできる画像形成装置を提供することである。
【0027】
【課題を解決するための手段】
本発明は、画像情報に対応する光によって露光されて静電潜像の形成される感光層を有する電子写真感光体と、電子写真感光体の感光層の表面に現像剤に含まれるトナーを供給することによって静電潜像を現像しトナー画像を形成する現像手段と、前記トナー画像を記録媒体である転写材に転写する転写手段と、トナー画像の転写材への転写後に電子写真感光体の表面に残留する残留トナーを除去するクリーニング手段とを備える画像形成装置であって、
前記現像剤に含まれるトナーの平均円形度が、0.95以上であり、
前記感光層に、所定の電荷輸送物質およびポリカーボネート樹脂を所定の含有比率で含有させるとともに、塗布後に所定の乾燥温度で乾燥させることにより、前記電子写真感光体の感光層表面の表面自由エネルギー(γ)が、20mN/m以上、35mN/m以下であることを特徴とする画像形成装置である。
また本発明の画像形成装置は、前記感光層に、フッ素系材料を所定の含有比率で含有させることを特徴とする。
【0028】
また本発明は、前記電子写真感光体の感光層表面の表面自由エネルギー(γ)が、28mN/m以上、35mN/m以下であることを特徴とする。
【0029】
本発明に従えば、現像剤に含まれるトナーの平均円形度が、0.95以上であり、前記感光層に、所定の電荷輸送物質およびポリカーボネート樹脂を所定の含有比率で含有させるとともに、塗布後に所定の乾燥温度で乾燥させる、もしくは、さらにフッ素系材料を所定の含有比率で含有させることにより、電子写真感光体表面の表面エネルギーが、20mN/m以上、35mN/m以下、好ましくは28mN/m以上、35mN/m以下になるように設定される。ここで言う電子写真感光体の表面自由エネルギーは、前述したForkesの拡張理論により算出導き出したものである。この電子写真感光体表面の表面自由エネルギーは、電子写真感光体の表面に対するトナーの付着力の指標である。
【0030】
小径のトナー粒子は、画像の高品質化および高解像度化を指向して球形化され、その平均円形度が高まるのに伴って、帯電均一性が向上する。トナーの平均円形度が0.95以上に設定されることによって、帯電均一性の向上による高品質および高解像度の画像形成が実現される。一般的にトナー粒子の平均円形度を高めると、クリーニングブレードにより電子写真感光体表面から残留トナーを掻取ることが難しくなるけれども、電子写真感光体の表面自由エネルギーを前記好適な範囲に設定することによって、トナー粒子に対して現像に必要な程度の付着力を発現するにも関らず過度の付着力を抑制することができるので、クリーニングブレードによる残留トナーの掻取りを容易にし、良好なクリーニング性を発現することができる。また電子写真感光体の表面自由エネルギーを前記好適な範囲に設定することによって、電子写真感光体表面から転写材へのトナーの移行比率である転写効率を向上することができるので、残留トナーの発生量そのものを抑制することが可能になる。
【0031】
このように現像性能を低下させることなく、転写効率を向上して残留トナーの発生量を抑制するとともに、残留トナーが発生した場合であっても、クリーニングブレードによる残留トナーの掻取りを容易にし、良好なクリーニング性能を発現させることができるので、平均円形度の高い球状のトナー粒子を用いるにも関らず転写効率とクリーニング性に優れ、長期間安定して高品質および高解像度の画像を形成することのできる画像形成装置が実現される。
【0032】
また本発明は、前記電子写真感光体の感光層が、有機光導電体系材料を含んで構成されることを特徴とする。
【0033】
本発明に従えば、電子写真感光体の感光層が、有機光導電体系材料を含んで構成される。このことによって、電子写真感光体の材料設計が、容易になり、かつ低コストおよび高効率生産が実現される。
【0034】
また本発明は、前記電子写真感光体の感光層は、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とが積層されて構成されることを特徴とする。
【0035】
本発明に従えば、電子写真感光体の感光層は、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とが積層されて構成される。このように感光層を複数層が積層されるタイプにすることによって、各層を構成する材料およびその組合せの自由度が増すので、電子写真感光体表面の表面自由エネルギー値を所望の範囲に設定することが容易になる。
【0036】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施の一形態である画像形成装置1の構成を簡略化して示す配置側面図であり、図2は図1に示す画像形成装置1に備わる電子写真感光体2の構成を簡略化して示す部分断面図である。
【0037】
まず本発明における画像形成装置1の主要な構成部材である電子写真感光体2(以後、感光体と略称する)について説明する。感光体2は、導電性素材からなる導電性支持体3と、導電性支持体3上に積層される下引層4と、下引層4上に積層される層であって電荷発生物質を含む電荷発生層5と、電荷発生層5の上にさらに積層される層であって電荷輸送物質を含む電荷輸送層6とを含む。電荷発生層5と電荷輸送層6とは、感光層7を構成する。
【0038】
導電性支持体3は、円筒形状を有し、(a)アルミニウム、ステンレス鋼、銅、ニッケルなどの金属材料、(b)ポリエステルフィルム、フェノール樹脂パイプ、紙管などの絶縁性物質の表面にアルミニウム、銅、パラジウム、酸化錫、酸化インジウムなどの導電性層を設けたものが好適に用いられ、その体積抵抗が1010Ω・cm以下の導電性を有するものが好ましい。導電性支持体3には、前述の体積抵抗を調整する目的で表面に酸化処理が施されてもよい。導電性支持体3は、感光体2の電極としての役割を果たすとともに他の各層4,5,6の支持部材としても機能する。なお導電性支持体3の形状は、円筒形に限定されることなく、板状、フイルム状およびベルト状のいずれであってもよい。
【0039】
下引層4は、たとえば、ポリアミド、ポリウレタン、セルロース、ニトロセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アルミニウム陽極酸化被膜、ゼラチン、でんぷん、カゼイン、N-メトキシメチル化ナイロンなどによって形成される。また酸化チタン、酸化錫、酸化アルミニウムなどの粒子を下引層4中に分散させてもよい。下引層4の膜厚は、約0.1〜10μmに形成される。この下引層4は、導電性支持体3と感光層7との接着層としての役割を果たすとともに、導電性支持体3から電荷が感光層7へ流込むのを抑制するバリア層としても機能する。このように下引層4は感光体2の帯電特性を維持するように作用するので、感光体2の寿命を延ばすことができる。
【0040】
電荷発生層5は、公知の電荷発生物質を含んで構成することができる。電荷発生物質には、可視光を吸収してフリー電荷を発生するものであれば、無機顔料、有機顔料および有機染料のいずれをも用いることができる。無機顔料としては、セレンおよびその合金、ヒ素-セレン、硫化カドミウム、酸化亜鉛、アモルファスシリコン、その他の無機光導電体が挙げられる。有機顔料としては、フタロシアニン系化合物、アゾ系化合物、キナクリドン系化合物、多環キノン系化合物、ペリレン系化合物などが挙げられる。有機染料としては、チアピリリウム塩、スクアリリウム塩などが挙げられる。前述の電荷発生物質の中でもフタロシアニン系化合物が好適に用いられ、特にチタニルフタロシアニン化合物を用いることが最適であり、良好な感度特性、帯電特性および再現性が得られる。
【0041】
前述の列挙した顔料および染料の他に、電荷発生層5には、化学増感剤または光学増感剤を添加してもよい。化学増感剤として、電子受容性物質、たとえば、テトラシアノエチレン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタンなどのシアノ化合物、アントラキノン、p−ベンゾキノンなどのキノン類、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノンなどのニトロ化合物が挙げられる。光学増感剤として、キサンテン系色素、チアジン色素、トリフェニルメタン系色素などの色素が挙げられる。
【0042】
電荷発生層5は、前述の電荷発生物質をバインダ樹脂とともに、適当な溶媒中に分散させ、下引層4上に積層し、乾燥または硬化させて成膜する。バインダ樹脂としては、具体的に、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン、ポリアクリレートなどが挙げられる。溶媒としては、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、エチルセロソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロルベンゼン、エチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。
【0043】
なお溶媒は、前述のものに限定されることなく、アルコール系、ケトン系、アミド系、エステル系、エーテル系、炭化水素系、塩素化炭化水素系、芳香族系のうちから選択されるいずれかの溶媒系を、単独または混合して用いてもよい。ただし、電荷発生物質の粉砕およびミリング時の結晶転移に基づく感度低下、およびポットライフによる特性低下を考慮した場合、無機や有機顔料において結晶転移を起こしにくいシクロヘキサノン、1,2−ジメトキシエタン、メチルエチルケトン、テトラヒドロキノンのいずれかを用いることが好ましい。
【0044】
電荷発生層5の形成には、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法などの気相堆積法や塗布方法などを適用することができる。塗布方法を用いる場合、電荷発生物質をボールミル、サンドグラインダ、ペイントシェイカ、超音波分散機などによって粉砕して溶剤に分散し、必要に応じてバインダ樹脂を加えた塗布液を、公知の塗布法によって下引層4上に塗布する。下引層4の形成される導電性支持体3が円筒状の場合、塗布法にはスプレイ法、垂直型リング法、浸漬塗布法などを用いることができる。電荷発生層5の膜厚は、約0.05〜5μmであることが好ましく、より好ましくは約0.1〜1μmである。
【0045】
なお下引層4の形成されている導電性支持体3の形状がシートの場合、塗布法にはアプリケータ、バーコータ、キャスティング、スピンコートなどを用いることができる。
【0046】
電荷輸送層6は、公知の電荷輸送物質と結着樹脂とを含んで構成することができる。電荷発生層5に含まれる電荷発生物質で発生した電荷を受け入れ、これを輸送する能力を有するものであればよい。電荷輸送物質としては、たとえばポリ-N-ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ-g-カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9-(p-ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1-ビス(4-ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、ピラゾリン誘導体、フェニルヒドラゾン類、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルアミン系化合物、テトラフェニルジアミン系化合物、スチルベン系化合物、3-メチル-2-ベンゾチアゾリン環を有するアジン化合物等の電子供与性物質が挙げられる。
【0047】
電荷輸送層6を構成する結着樹脂は、少なくともポリカーボネートまたは共重合ポリカーボネートを含む。またその他にも、電荷輸送物質と相溶性を有するものが含まれていてもよく、たとえば、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリケトン、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂およびポリスルホン樹脂、それらの共重合樹脂などが挙げられる。これらの樹脂を単独または2種以上混合して用いてもよい。前述の結着樹脂の中でもポリスチレン、ポリカーボネートおよび共重合ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルなどの樹脂は、1013Ω以上の体積抵抗率を有し、成膜性や電位特性などにも優れている。
【0048】
またこれらの材料を溶解させる溶剤は、メタノールやエタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンやシクロヘキサノンなどのケトン類、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンやジオキソランなどのエーテル類、クロロホルム、ジクロロメタンやジクロロエタンなどの脂肪族ハロゲン化炭化水素、ベンゼン、クロロベンゼンやトルエンなどの芳香族類などを用いることができる。
【0049】
電荷輸送層6を形成するための電荷輸送層用塗布液は、結着樹脂溶液中へ電荷輸送物質を溶解して調製される。電荷輸送層6に占める電荷輸送物質の割合は、30〜80重量%の範囲が好ましい。電荷発生層5上への電荷輸送層6の形成は、前述の下引層4上に電荷発生層5を形成したのと同様にして行われる。電荷輸送層6の膜厚は、10〜50μmが好ましく、より好ましくは15〜40μmである。
【0050】
また、電荷輸送層6には、1種以上の電子受容性物質や色素を含有させることによって、感度の向上を図り繰返し使用時の残留電位の上昇や疲労などを抑えるようにしてもよい。電子受容性物質としては、たとえば無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、4−クロルナフタル酸無水物などの酸無水物、テトラシアノエチレン、テレフタルマロンジニトリルなどのシアノ化合物、4−ニトロベンズアルデヒドなどのアルデヒド類、アントラキノン、1−ニトロアントラキノンなどのアントラキノン類、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノンなどの多環または複素環ニトロ化合物が挙げられ、これらを化学増感剤として用いることができる。
【0051】
色素としては、たとえば、キサンテン系色素、チアジン色素、トリフェニルメタン色素、キノリン系顔料、銅フタロシアニンなどの有機光導電性化合物が挙げられ、これらを光学増感剤として用いることができる。
【0052】
さらに、電荷輸送層6には、公知の可塑剤を含有させることによって、成形性、可撓性および機械的強度を向上させるようにしてもよい。可塑剤としては、二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、フタル酸エステル、塩素化パラフィン、エポキシ型可塑剤などが挙げられる。また、感光層7には、必要に応じてポリシロキサンなどのゆず肌防止のためのレベリング剤、耐久性向上のためフェノール系化合物、ハイドロキノン系化合物、トコフェロール系化合物、アミン系化合物などの酸化防止剤、紫外線吸収剤などを含有してもよい。
【0053】
前述のように構成される感光体2の表面、すなわち感光層7表面の表面自由エネルギー(γ)は、拡張Forkes理論によって算出される値が、20mN/m以上、35mN/m以下、好ましくは28mN/m以上、35mN/m以下になるように制御設定される。
【0054】
表面自由エネルギーが35mN/mを超えると、トナーの感光体表面に対する付着力が増大するのでクリーニング性が悪化する。表面自由エネルギーが20mN/m未満になると、トナーと感光体2表面との付着力が低下するので、装置内へのトナー飛散および感光体2上のトナー画像部以外の部分に付着した微粉トナーの記録紙への移行により画像かぶりが発生する。したがって、表面自由エネルギーは、20〜35mN/mが好適である。
【0055】
感光体2表面の表面自由エネルギーの前述範囲への制御設定は、以下のようにして行われる。比較的低い表面自由エネルギー値を有する、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を代表とするフッ素系材料やポリシロキサン系材料などを、感光層7に導入し、その含有量を調整することによって実現できる。また感光層7に含まれる電荷発生物質、電荷輸送物質および結着樹脂であるポリカーボネート樹脂の種類、これらの組成比を変化させることによっても実現できる。また感光層7を形成する際の乾燥温度を調整することによっても実現できる。
【0056】
このようにして制御設定される感光体2表面の表面自由エネルギーは、前述のように表面自由エネルギーの双極子成分、分散成分および水素結合成分が既知である試薬を使用し、その試薬との付着性を測定することによって求められる。具体的には、試薬に純水、ヨウ化メチレン、α−ブロモナフタレンを使用し、接触角計CA−X(商品名;協和界面株式会社製)を用いて、感光体2表面に対する接触角を測定し、測定結果に基づき表面自由エネルギー解析ソフトEG−11(商品名;協和界面株式会社製)を用いて各成分の表面自由エネルギーを算出することができる。なお試薬は、前述の純水、ヨウ化メチレン、α−ブロモナフタレンに限定されるものではなく、双極子成分、分散成分、水素結合成分が適宜な組合せの試薬を用いてもよい。また測定方法も、前述の方法に限定されるものではなく、たとえばウィルヘルミ法(つり板法)やドゥ・ヌイ法などが用いられてもよい。
【0057】
以下感光体2における静電潜像形成動作について簡単に説明する。感光体2に形成される感光層7は、帯電器などでたとえば負に一様に帯電され、帯電された状態で電荷発生層5に吸収波長を有する光が照射されると、電荷発生層5中に電子および正孔の電荷が発生する。正孔は、電荷輸送層6に含まれる電荷輸送材料によって感光体2表面に移動されて表面の負電荷を中和し、電荷発生層5中の電子は、正電荷が誘起された導電性支持体3の側に移動し、正電荷を中和する。このように、感光層7には、露光された部位の帯電量と露光されなかった部位の帯電量とに差異が生じて静電潜像が形成される。
【0058】
次に図1に戻り、前述の感光体2を備える画像形成装置1の構成および画像形成動作について説明する。本実施の形態として例示する画像形成装置1は、デジタル複写機1である。
【0059】
デジタル複写機1は、大略スキャナ部11と、レーザー記録部12とを含む構成である。スキャナ部11は、透明ガラスからなる原稿載置台13と、原稿載置台13上へ自動的に原稿を供給搬送するための両面対応自動原稿送り装置(RADF)14と、原稿載置台13上に載置された原稿の画像を走査して読取るための原稿画像読取りユニットであるスキャナユニット15とを含む。このスキャナ部11にて読取られた原稿画像は、画像データとして画像データ入力部へと送られ、画像データに対して所定の画像処理が施される。RADF14には、RADF14に備わる原稿トレイ上に複数枚の原稿を一度にセットしておき、セットされた原稿を1枚ずつ自動的に原稿載置台13上へ給送する装置である。またRADF14は、オペレーターの選択に応じて原稿の片面または両面をスキャナユニット15に読取らせるように、片面原稿のための搬送経路、両面原稿のための搬送経路、搬送経路切り換え手段、各部を通過する原稿の状態を把握し管理するセンサー群、制御部などを含んで構成される。
【0060】
スキャナユニット15は、原稿面上を露光するランプリフレクターアセンブリ16と、原稿からの反射光像を光電変換素子(略称CCD)23に導くために原稿からの反射光を反射する第1反射ミラー17を搭載する第1走査ユニット18と、第1反射ミラー17からの反射光像をCCD23に導くための第2および第3反射ミラー19,20を搭載する第2走査ユニット21と、原稿からの反射光像を前述の各反射ミラー17,19,20を介して電気的画像信号に変換するCCD23上に結像させるための光学レンズ22と、前記CCD23とを含む構成である。
【0061】
スキャナ部11は、RADF14とスキャナユニット15との関連動作によって、原稿載置台13上に読取るべき原稿を順次給送載置させるとともに、原稿載置台13の下面に沿ってスキャナユニット15を移動させて原稿画像を読取るように構成される。第1走査ユニット18は、原稿載置台13に沿って原稿画像の読取り方向(図1では紙面に向って左から右)に一定速度Vで走査され、また第2走査ユニット21は、その速度Vに対して2分の1(V/2)の速度で同一方向に平行に走査される。この第1および第2走査ユニット18,21の動作によって、原稿載置台13上に載置された原稿画像を1ライン毎に順次CCD23へ結像させて画像を読取ることができる。
【0062】
原稿画像をスキャナユニット15で読取って得られた画像データは、画像処理部へ送られ、各種画像処理が施された後、画像処理部のメモリに一旦記憶され、出力指示に応じてメモリ内の画像を読出してレーザー記録部12に転送して記録媒体である記録紙上に画像を形成させる。
【0063】
レーザー記録部12は、記録紙の搬送系33と、レーザー書込みユニット26と、画像を形成するための電子写真プロセス部27とを備える。レーザー書込みユニット26は、前述のスキャナユニット15にて読取られてメモリに記憶された後にメモリから読出される画像データ、または外部の装置から転送される画像データに応じてレーザー光を出射する半導体レーザー光源と、レーザー光を等角速度偏向するポリゴンミラーと、等角速度で偏向されたレーザー光が電子写真プロセス部27に備えられる感光体2上で等角速度で偏向されるように補正するf−θレンズなどを含む。
【0064】
電子写真プロセス部27は、前述の感光体2の周囲に帯電器28、現像手段である現像器29、転写手段である転写器30、クリーニング手段であるクリーニング器31が、矢符32で示す感光体2の回転方向の上流側から下流側に向ってこの順番に備えられる。前述のように感光体2は、帯電器28によって一様に帯電され、帯電された状態でレーザ書込みユニット26から出射される原稿画像データに対応するレーザー光によって露光される。露光されることによって感光体2表面に形成される静電潜像は、現像器29から供給されるトナーによって現像され、可視像であるトナー画像となる。感光体2表面に形成されたトナー画像は、後述する搬送系33によって供給される記録紙上に転写器30によって転写される。転写器30には、コロナ放電方式または転写ローラ方式のいずれが用いられてもよい。
【0065】
感光体2表面に形成される静電潜像に現像剤に含まれるトナーを供給して現像する現像器29は、ケーシング29aと、ケーシング29aに回転自在に支持される攪拌ローラ29bおよび現像ローラ29cと、ケーシング29a内に収容される現像剤50とを含む構成である。攪拌ローラ29bは、ケーシング29a内に収容される現像剤50を攪拌するとともに現像ローラ29cへと搬送する。現像ローラ29cは、攪拌ローラ29bによって搬送されてきた現像剤50に含まれるトナーを感光体2表面の静電潜像に供給する。
【0066】
記録紙の搬送系33は、画像形成を行う電子写真プロセス部27の特に転写器30の配置される転写位置へ記録紙を搬送する搬送部34と、搬送部34へ記録紙を送込むための第1〜第3カセット給紙装置35,36,37と、所望の寸法の記録紙を適宜給紙するための手差給紙装置38と、感光体2から記録紙に転写された画像、特にトナー画像を定着する定着器39と、トナー画像定着後の記録紙の裏面(トナー画像の形成された表面の反対側の面)に、さらに画像を形成するために記録紙を再供給するための再供給経路40とを含む。この搬送系33の搬送経路上には、多数の搬送ローラ41が設けられ、記録紙は搬送ローラ41によって搬送系33内の所定の位置に搬送される。
【0067】
定着器39によってトナー画像を定着処理された記録紙は、裏面に画像形成するべく再供給経路40に送給されるか、または排紙ローラ42によって後処理装置43へ給送される。再供給経路40に給送された記録紙には、前述の動作が繰返し実行されて裏面に画像形成される。後処理装置43に給送された記録紙は、後処理が施された後、後処理工程に応じて定められる排紙先である第1または第2排紙カセット44,45のいずれかに排紙されて、デジタル複写機1における一連の画像形成動作が終了する。
【0068】
次に本発明の画像形成装置1が有する特徴であり、画像形成装置であるデジタル複写機1の現像器29に備えられる現像剤50の成分であるトナーについて説明する。トナーは、結着樹脂、着色剤、ワックス、帯電制御剤、必要に応じてその他の添加剤をヘンシェルミキサー、スーパーミキサーなどの混合機により充分混合し、得られた混合物を二軸混練機によって溶融混練して混練物を作製し、混練物をジェット式粉砕機にて粉砕後、分級することによって作製される。さらに、該トナーには、無機微粒子が添加され、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサーなどの混合機により付着、均一分散される。
【0069】
トナーに用いられる結着樹脂としては、スチレン‐アクリル系共重合体、アクリル系重合体、ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、樹脂の化学構造設計における自由度の高いポリエステル樹脂が好適に用いられる。
【0070】
トナーに用いられる外添剤としては、たとえば、シリカ微粉体、アルミナ微粉体、酸化チタン微粉体、酸化ジルコニウム微粉体、酸化マグネシウム微粉体、酸化亜鉛などの金属酸化物の微粉体、また窒化ホウ素微粉体、窒化アルミニウム微粉体、窒化炭素微粉体のような窒化物の微粉体、さらにチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウムなどが挙げられる。なお外添剤には、特に平均一次粒子径0.001〜0.2μmの無機微粉体を用いるのが好ましい。
【0071】
また外添剤には、トナーの流動性を高めるばかりでなく、トナーの帯電性を阻害しないことも必要とされる。したがって、無機微粉体は表面疎水化処理されていることがさらに好ましく、表面疎水化処理によって流動性の付与と帯電の安定化を同時に満足することが可能となる。すなわち外添剤に表面疎水化処理を施すことによって、帯電量を左右する因子である水分の影響を除外し、高湿下および低湿下での帯電量の格差を低減することができるので、環境特性を向上させることが可能になるとともに、製造工程中に疎水化処理を入れることによって一次粒子の凝集が防止され、トナーに均一な帯電付与をすることが可能になる。
【0072】
疎水化処理剤は、表面改質の目的、たとえば帯電特性のコントロール、さらには高湿下での帯電の安定化および反応性に応じて適宜選択される。疎水化処理剤としては、たとえばアルキルアルコキシシラン、シロキサン、シラン、シリコーンオイルなどのシラン系有機化合物が挙げられ、反応処理温度にて、それ自体が熱分解しないものが良い。好ましくは、カップリング剤などの揮発性を有し、疎水性基および反応性に富む結合基の両方を有する下記一般式(4)で示されるアルキルアルコキシランが用いられる。
RmSiYn …(4)
[式中、Rはアルコキシ基を示し、mは1〜3の整数を示し、Yはアルキル基、ビニル基、グリシドキシ基、メタクリル基のごとき炭化水素基を示し、nは1〜3の整数を示す]
【0073】
前記一般式で示されるアルキルアルコキシランとしては、たとえばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシランなどを挙げることができる。
【0074】
より好ましくは、式CaH2 a+ 1−Si−(OCbH2 b+ 1)3[式中、aは4〜12の整数を示し、bは1〜3の整数を示す]で示されるアルキルアルコキシシラン化合物が用いられる。ここで一般式におけるaが4未満であると、処理は容易になるけれども良好な疎水性が得られにくい。また、aが12を超えると疎水性は充分であるけれども、微粉体同士の合一が多くなり流動性付与能が低下する傾向を示す。また、bが3を超えると反応性が低下して良好な疎水化が得られにくい。したがって、aが4〜12、好ましくは4〜8、bが1〜3、好ましくは1〜2とした。
【0075】
外添剤の疎水化処理に際し、疎水化処理剤の配合量は、外添剤であるシリカ微粉体100重量部に対して、1〜50重量部、好ましくは3〜45重量部とするのがよく、疎水化度を30〜90%、好ましくは40〜80%とするのがよい。
【0076】
トナーには、必要に応じて離型剤が含有されてもよい。離型剤としては、それ自体公知の任意の離型剤、たとえば脂肪族系樹脂、脂肪族系金属塩、高級脂肪酸類、脂肪酸エステル類もしくはその部分ケン化物類等の脂肪族系化合物が挙げられる。具体的には、たとえば低分子量ポリプロピレン、高分子量ポリエチレン、パラフィンワックス、炭素数4以上のオレフィン単体からなる低分子量オレフィン重合体、シリコーンオイル、各種ワックス等を使用することができる。
【0077】
本発明のトナーの着色剤には、公知のカーボンブラックを使用することができる。たとえば米国キャボット社製リーガル(REGAL)400R,500R,660R、コロンビヤン・カーボン日本(株)製ラベン(RAVEN)H20,ラベン16,ラベン14,ラベン430,ラベン450,ラベン500、西独デグサ社製プリンテクス(Printex)200,プリンテクスA,スペシャルブラック4,プリンテクスGなどが挙げられる。なお着色剤のカーボンブラックは、これらに限定されるものではなく、他のものが用いられてもよい。また、これらのカーボンブラックを、単独でまたは2種以上を種々の組成に組合わせて用いることができる。
【0078】
本発明に用いられるトナーは、粉砕法によって製造することも可能である。しかしながら、粉砕法によって得られるトナー粒子は、一般的に不定形になる傾向があるので、本発明に用いられるトナーの特徴である平均円形度が0.95以上という物性を得るためには機械的・熱的または他の処理を行うことが好ましい。トナーの平均円形度を0.95以上にするための処理方法としては、トナーの帯電特性、転写特性およびその他の画像特性、さらに生産性の面を考慮にいれると、機械的衝撃力による処理を加える方法を用いることが好ましい。
【0079】
機械的衝撃力を加える処理方法としては、たとえば川崎重工社製のクリプトロンシステムやターボ工業社製のターボミルのような機械衝撃式粉砕機、ホソカワミクロン社製のメカノフュージョンシステムのようなトナーを遠心力によってケーシングの内側に押し付けてトナーに圧縮力および摩擦力などの機械的衝撃力を加える方法などが挙げられる。この機械的衝撃力による処理時間を変化させることによって、トナーの平均円形度を調整することができる。
【0080】
また平均円形度が0.95以上のトナーを、重合法によって製造してもよい。重合法としては、ビニル系単量体などを含有するトナー形成用組成物を水中に懸濁させる方法が挙げられる。この場合、懸濁液におけるトナー形成用組成物の濃度が、1〜50重量%になるようにし、懸濁粒子のサイズは1〜30μmになるよう調節した。
【0081】
トナー形成用組成物の懸濁状態を安定化させるために、分散安定剤を添加してもよい。分散安定剤としては、媒体中に可溶の高分子、たとえばポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリ(ハイドロオキシステアリン酸−g−メタクリル酸メチル−CO−メタクリル酸)共重合体や非イオン性もしくはイオン性界面活性剤またはリン酸カルシウムなどの無機粉末などが挙げられる。分散安定剤は、トナー形成用組成物全量に対して0.1〜10重量%を加えることが好ましい。
【0082】
トナー形成用組成物中におけるラジカル重合開始剤の量は、単量体に対して、0.3〜30重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。重合に際しては、反応系を窒素ガスで満たし、懸濁液中におけるトナー形成用組成物の懸濁状態を維持しつつ、40〜100℃の環境温度下で攪拌し重合を行う。反応後の重合生成物である生成粒子を、濾過し、水または適当な溶剤で精製し、乾燥して、トナーを作製する。
【0083】
機械的衝撃力による処理を加える方法や重合法によって作製されるトナーには、粒子の流動性を向上させるために、流動性改良剤(表面処理剤)を外添することが好ましい。流動性改良剤としては、たとえばカーボンブラック、疎水性非晶質シリカ、疎水性微粉アルミナ、微細酸化チタン、微細球状樹脂などが挙げられる。本実施の形態では、流動性改良剤を外添しトナー粒子に付着させることによって、現像に用いるトナーとする。流動性改良剤は、トナー全量に対して0.1〜3.0重量%を添加するのがよい。
【0084】
本明細書におけるトナー粒子の円形度(ai)は、下記式(5)によって定義される。式(5)に定義されるような円形度(ai)は、たとえば東亜医用電子製フロー式粒子像分析装置「FPIA−2000」を用いることによって測定される。またm個のトナー粒子について測定した各円形度(ai)の総和を求め、総和をトナー粒子数mで除算する式(6)によって得られる算術平均値を平均円形度(a)と定義する。
【0085】
【数1】
【0086】
【数2】
【0087】
さらに、円形度を0.40から1.00まで0.01毎に61分割し、測定した各トナー粒子の円形度(ai)を、各分割範囲にそれぞれ割振ることによって得られる円形度(ai)の頻度分布において、頻度値が最大となる円形度をモード円形度(am)と定義する。
【0088】
なお、本実施の形態で用いる前記測定装置「FPIA−2000」では、各トナー粒子の円形度(ai)を算出後、得られた各トナー粒子の円形度(ai)を、前述の円形度0.40〜1.00を61分割した各分割範囲に分けて頻度を求め、各分割範囲の中心値と頻度とを用いて平均円形度の算出を行うという簡易算出法を用いている。この簡易算出法で算出される平均円形度の値と、前述の式(6)で与えられる平均円形度(a)の値との誤差は、非常に小さく実質的に無視出来る程度のものなので、本実施の形態では、簡易算出法による平均円形度を、前記式(6)で定義される平均円形度(a)として取扱う。このように本実施の形態では、算出時間の短縮化などの観点から簡易算出法を用いているけれども、このような簡易算出法を用いることは本発明の主旨を逸脱するものではない。
【0089】
平均円形度(ai)およびモード円形度(am)の具体的な測定方法は、以下のとおりである。界面活性剤を約0.1mg溶解している水10mLに、現像剤5mgを分散させて分散液を調製し、周波数20kHz、出力50Wの超音波を分散液に5分間照射し、分散液中のトナー粒子濃度を5000〜20000個/μLとして、前記装置「FPIA−2000」により円形度(ai)の測定を行い、平均円形度(a)およびモード円形度(am)を求めた。
【0090】
トナーは、その平均円形度が0.95以上に設定されるので、帯電均一性が向上し、高品質および高解像度の画像を形成することができる。また現像時にはトナーが付着し、転写時およびクリーニング時にはトナーが離脱する対象である感光体2の表面自由エネルギー(γ)は、20〜35mN/mという好適な範囲に設定されているので、トナーに対して現像に必要な程度の付着力を発現するにも関らず過度の付着力が抑制される。このことによって、感光体2表面に形成されたトナー画像を転写材に転写する際の転写効率を向上して残留トナーの発生量を抑制し、クリーニングする際のクリーニングブレードによる残留トナーの掻取りを容易にして良好なクリーニング性を発現することができる。
【0091】
このように、トナーの平均円形度および感光体2表面の表面自由エネルギー(γ)を好適な範囲に規定することによって、平均円形度の高い球状のトナー粒子を用いるにも関らず転写効率とクリーニング性とに優れ、長期間安定して高品質および高解像度の画像を形成することのできる画像形成装置が実現される。
【0092】
図3は、本発明の実施の第2の形態である画像形成装置に備わる感光体53の構成を簡略化して示す部分断面図である。本実施の形態の画像形成装置に備わる感光体53は、実施の第1形態の画像形成装置1に備わる感光体2に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。感光体53において注目すべきは、導電性支持体3上に単層からなる感光層54が形成されることである。
【0093】
感光層54は、実施の第1形態の感光体2に用いるのと同様の電荷発生物質、電荷輸送物質、結着樹脂などを用いて形成される。結着樹脂中に電荷発生物質および電荷輸送物質を分散したり、電荷輸送物質を含む結着樹脂中に電荷発生物質を顔料粒子の形で分散させたりして調製した感光層用塗布液を用い、実施の第1形態の感光体2における電荷発生層5を形成するのと同様の方法によって単層の感光層が導電性支持体3上に形成される。本実施の形態の単層型感光体53は、オゾン発生が少ない正帯電型画像形成装置用の感光体として好適であり、また塗布されるべき感光層54が一層のみであるので、製造原価および歩留が電荷発生層および電荷輸送層の積層して構成される積層型に比べて優れている。
【0094】
(実施例)
以下本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0095】
まず、直径:30mm、長さ:326.3mmのアルミニウム製導電性支持体上に種々の条件にて感光層を形成し、実施例および比較例として準備した感光体について説明する。
【0096】
(実施例のS1〜S6感光体)
(S1感光体);酸化チタン(TTO55A:石原産業社製)7重量部および共重合ナイロン(CM8000:東レ社製)13重量部を、メチルアルコール159重量部と1,3−ジオキソラン106重量部との混合溶剤に加え、ペイントシェーカーにて8時間分散処理して下引層用塗布液を調整した。この塗布液を塗布槽に満たし、導電性支持体を浸漬後引上げ、自然乾燥して層厚1μmの下引層を形成した。
【0097】
オキソチタニルフタロシアニン3重量部とブチラール樹脂(BL−1:積水化学社製)2重量部とを、メチルエチルケトン245重量部に混合し、ペイントシェーカーにて分散して電荷発生層用塗布液を調整した。この塗布液を、下引層の場合と同様の浸漬塗布法にて前述の下引層上に塗布し、 自然乾燥して層厚0.4μmの電荷発生層を形成した。
【0098】
電荷輸送物質として下記構造式(I)で示されるスチリル系化合物5重量部、ポリカーボネート樹脂(Vylon290:東洋紡株式会社製)2.75重量部、同じくポリカーボネート樹脂(G400:出光興産株式会社製)5.25重量部、スミライザーBHT(住友化学株式会社製)0.05重量部を混合し、テトラヒドロフラン47重量部を溶剤として電荷輸送層用塗布液を調整した。この塗布液を、浸漬塗布法にて前述の電荷発生層上に塗布し、110℃で1時間乾燥して層厚28μmの電荷輸送層を形成した。このようにしてS1感光体を作製した。
【0099】
【化1】
【0100】
(S2感光体);S1感光体と同様にして下引層および電荷発生層を形成した。次いで電荷輸送物質として下記構造式(II)で示されるブタジエン系化合物を5重量部、4種類のポリカーボネート樹脂、J500(出光興産株式会社製)2.4重量部、G400(出光興産株式会社製)1.6重量部、GH503(出光興産株式会社製)1.6重量部、TS2020(帝人化成株式会社製)2.4重量部、さらにスミライザーBHT(住友化学株式会社製)0.25重量部を混合し、テトラヒドロフラン49重量部を溶剤として電荷輸送層用塗布液を調整した。この塗布液を、浸漬塗布法にて電荷発生層上に塗布し、130℃で1時間乾燥して層厚28μmの電荷輸送層を形成した。このようにしてS2感光体を作製した。
【0101】
【化2】
【0102】
(S3感光体);電荷輸送層おいて、バインダー樹脂を、GH503(出光興産株式会社製)4重量部、TS2020(帝人化成株式会社製)4重量部とした以外は、S2感光体と同様にしてS3感光体を作製した。
【0103】
(S4感光体);S1感光体と同様にして下引層および電荷発生層を形成した。次いで電荷輸送物質として前記構造式(II)で示されるブタジエン系化合物を3.5重量部、下記構造式(III)で示されるスチリル系化合物を1.5重量部、4種類のポリカーボネート樹脂、J500(出光興産株式会社製)2.2重量部、G400(出光興産株式会社製)2.2重量部、GH503(出光興産株式会社製)1.8重量部、TS2020(帝人化成株式会社製)1.8重量部、さらにスミライザーBHT(住友化学株式会社製)1.5重量部を混合し、テトラヒドロフラン55重量部を溶剤として電荷輸送層用塗布液を調整した。この塗布液を、浸漬塗布法にて電荷発生層上に塗布し、120℃で1時間乾燥して層厚28μmの電荷輸送層を形成した。このようにしてS4感光体を作製した。
【0104】
【化3】
【0105】
(S5,S6感光体);S1感光体と同様にして下引層および電荷発生層を形成した。次いで、電荷輸送層形成に際し、ポリカーボネート樹脂の一部に代えて、表面自由エネルギー(γ)の低い樹脂であるPTFEを用いた以外は、S2感光体と同様にして塗布液を調整した。この塗布液を、浸漬塗布法にて電荷発生層上に塗布し、120℃で1時間乾燥して層厚28μmの電荷輸送層を形成した。なお電荷輸送層形成用の塗布液中に占めるPTFEの含有比率は、S6感光体の方がS5感光体よりも大きくなるようにして、S6感光体のγが、S5感光体のγよりも小さくなるようにそれぞれ作製した。
【0106】
(比較例のR1〜R4感光体)
(R1感光体);S1感光体と同様にして下引層および電荷発生層を形成した。次いで電荷輸送物質として前記構造式(II)で示されるブタジエン系化合物を5重量部、3種類のポリカーボネート樹脂、G400(出光興産株式会社製)2.4重量部、TS2020(帝人化成株式会社製)4重量部、Vylon290(東洋紡株式会社製)1.6重量部、さらにスミライザーBHT(住友化学株式会社製)0.25重量部を混合し、テトラヒドロフラン49重量部を溶剤として電荷輸送層用塗布液を調整した。この塗布液を、浸漬塗布法にて電荷発生層上に塗布し、130℃で1時間乾燥して層厚28μmの電荷輸送層を形成した。このようにしてR1感光体を作製した。
【0107】
(R2感光体);R1感光体と同様にして下引層および電荷発生層を形成した。次いで、電荷輸送物質として前記構造式(II)で示されるブタジエン系化合物を5重量部、2種類のポリカーボネート樹脂、J500(出光興産株式会社製)4.4重量部、TS2020(帝人化成株式会社製)3.6重量部、さらにスミライザーBHT(住友化学株式会社製)0.25重量部を混合し、テトラヒドロフラン49重量部を溶剤として電荷輸送層用塗布液を調整した。この塗布液を、浸漬塗布法にて電荷発生層上に塗布し、120℃で1時間乾燥して層厚28μmの電荷輸送層を形成した。このようにしてR2感光体を作製した。
【0108】
(R3感光体);電荷輸送層形成に際し、ポリカーボネート樹脂として、J500(出光興産株式会社製)4.4重量部を、G400(出光興産株式会社製)に置換えた以外は、R2感光体と同様にしてR3感光体を作製した。
【0109】
(R4感光体);R1感光体と同様にして下引層および電荷発生層を形成した。次いで、電荷輸送層形成に際し、ポリカーボネート樹脂の一部に代えて、γの低い樹脂であるPTFEを用いた以外は、R1感光体と同様にして塗布液を調整した。この塗布液を、浸漬塗布法にて電荷発生層上に塗布し、120℃で1時間乾燥して層厚28μmの電荷輸送層を形成した。このようにして、R4感光体を作製した。
【0110】
以上のように、S1〜S6感光体およびR1〜R4感光体の作製において、電荷輸送層用塗布液に含まれる樹脂の種類および含有比率を変化させるとともに、塗布後の乾燥温度を変化させることによって、感光体表面の表面自由エネルギー(γ)が所望の値になるように調整した。これらの感光体表面のγは、接触角測定機CA−X(協和界面株式会社製)および解析ソフトEG−11(協和界面株式会社製)によって求めた。
【0111】
次に、実施例および比較例として準備したトナーについて説明する。
(実施例のT1〜T3トナー)
(T1トナー);ポリエステル系樹脂100重量部に対し、ワックスとしてポリエチレン(クラリアントジャパン社製:PE130)1.0重量部、ポリプロピレン(三井化学社製:NP−505)1.5重量部、帯電制御剤(保土ケ谷化学工業社製:S−34)を1重量部、マグネタイト(関東電化社製:KBC−100)を1.5重量部、着色剤としてカーボンブラック(キャボット社製:330R)を5重量部加え、スーパーミキサー(川田社製:V−20)で充分混合し、得られた混合物を二軸混練機(池貝鉄工社製:PCM−30)によって溶融混練した。この混練物をジェット式粉砕機(日本ニューマチック工業社製:IDS−2)にて粉砕後分級し、体積平均粒径で7.0μmのトナーを得た。機械的処理により球形化処理を行い、フロー式粒子像分析装置(東亜医用電子製:FPIA−2000)によってトナーの平均円形度を測定したところ0.95であった。次に、シリカ微粒子(日本アエロジル社製:R972)を0.3重量部、マグネタイト(チタン工業社製:粒径=0.13μm)を0.3重量部外添した。このようにしてT1トナーを作製した。
【0112】
(T2トナー);T1トナーと同様にジェット式粉砕機により体積平均粒径で7.0μmのトナーを得た。機械的および熱的処理によりトナーの球形化を行い、T1トナーと同様にして平均円形度を測定したところ0.96であった。またT1トナーと同様の外添処理を行いT2トナーを作製した。
【0113】
(T3トナー);重合性単量体 スチレン90重量部に対して、ブチルアクリレー10重量部、着色剤としてカーボンブラック5重量部、定着性向上剤としてポリプロピレン5重量部の単量体組成物をサンドグラインダーにより充分に混和均一化し、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.8重量部を添加した。
【0114】
【表1】
【0115】
表1に示す(A)、(B)、(C)を混合し、下記式(7)に示す反応により、難水溶性無機化合物[Ca3(PO4)2]を含む水性媒体を調整した。
2Na3 PO4 +3CaCl2→Ca3(PO4 )2+6NaCl…(7)
【0116】
単量体組成物を水性媒体に投入し、ホモミキサー(特殊機化製)を用い、10000rpmで30min間攪拌分散して懸濁液を作製した。次いで、窒素雰囲気中70℃の環境下において、200〜300rpmで7時間攪拌して重合を行った。重合処理後、室温まで冷却し、塩酸水溶液により難水溶性無機化合物〔Ca3 (PO4 )2 〕を溶解除去し、さらに精製して体積平均粒径で6μmの懸濁重合トナーを得た。このようにしてT3トナーを作製した。T3トナーの平均円形度をT1トナーと同様にして測定したところ0.98であった。
【0117】
(比較例のV1,V2トナー)
(V1,V2トナー);T1トナーと同様にジェット式粉砕機により体積平均粒径で7.0μmのトナーを得た。機械的処理の処理時間を調整することによって、平均円形度が0.94のV1トナー、および平均円形度が0.945のV2トナーを得た。またT1と同様の外添処理を行いV1,V2トナーを作製した。なお平均円形度の測定はT1トナーと同様にして行った。
【0118】
S1〜S6感光体およびR1〜R4感光体ならびにT1〜T3トナーおよびV1,V2トナーを、試験用に改造したデジタル複写機AR−450(シャープ株式会社製)に搭載することによって、クリーニング性および転写効率の評価試験を行った。次に、各性能の評価方法について説明する。
【0119】
[クリーニング性]
前述のデジタル複写機AR−450に備わるクリーニング器のクリーニングブレードが、感光体に当接する当接圧力、いわゆるクリーニングブレード圧を初期線圧で21gf/cm(2.06×10−1N/cm)に調整した。温度:25℃、相対湿度:50%の常温/常湿(N/N:Normal Temperature/Normal Humidity)環境中で、前記複写機を用いて、シャープ株式会社製文字テストチャートを、記録紙SF−4AM3(シャープ株式会社製)10万枚に形成した。
【0120】
画像形成前(0k)、25,000(25k)枚、50,000(50k)枚および100,000(100k)枚の各段階において、形成された画像を目視することによって、黒白2色の境界部の鮮明度、感光体回転方向へのトナー漏れによる黒すじの有無を試験し、さらに後述の測定器によってかぶり量Wkを求めて、クリーニング性を評価した。形成画像のかぶり量Wkは、日本電色工業株式会社製Z−Σ90 COLOR MEASURING SYSTEMを用いて反射濃度を測定して求めた。まず画像形成前の記録紙の反射平均濃度Wrを測定した。次にその記録紙に対して画像形成し、画像形成後、記録紙の白地部分各所の反射濃度を測定した。最もかぶりの多いと判断された部分、すなわち白地部でありながら濃度の最も濃い部分の反射濃度Wsと、前記Wrとから以下の式{100×(Wr−Ws)/Wr}で求められるWkをかぶり量と定義した。
【0121】
クリーニング性の評価基準は以下のようである。
◎:非常に良好。鮮明度良く黒すじ無し。かぶり量Wkが3%未満。
○:良好。鮮明度良く黒すじ無し。かぶり量Wkが3%以上5%未満。
△:実用上問題無し。鮮明度実使用上問題のないレベルであり黒すじの長さが2.0mm以下かつ5個以下。かぶり量Wkが5%以上10%未満。
×:実用不可。鮮明度実使用上問題あり。黒すじの上記△の範囲を超えるもの。かぶり量Wkが10%以上。
【0122】
[転写効率]
γが本発明範囲内の28.3mN/mを有するS1感光体をデジタル複写機AR−450に搭載し、トナーの収納容器であるトナーホッパーに、T1〜T3トナーおよびV1,V2トナーをそれぞれ800g充填し、各トナーについて現像率が5%のチャートにてエージングを行った。エージングを行う画像形成条件は、マクベス濃度計RD914(マクベス社製)にて、転写紙上の画像濃度が1.3になるように、各トナーに対して設定を行った。トナーホッパー内のトナーがすべて消費されるまでに複写することのできた記録紙の枚数を計数した。複写できた枚数の多いほど転写効率が優れていると評価した。
【0123】
[評価結果]
クリーニング性評価結果を表2および表3に合わせて示す。なお表2および表3に示す評価試験結果において、各評価試験を行った各段階の画像形成枚数(0k,25k,50k,100k)を、その段階において実用上不適になる現象が発生した場合には、耐久寿命枚数と言っても良いことから、耐久枚数として表記した。
【0124】
表面自由エネルギー(γ)が本発明範囲内にある実施例S1〜S6の感光体は、トナーの平均円形度が本発明範囲内にあるT1、T3のトナーとの組合せにおいて、クリーニング性がすべて良好(○)以上の評価結果であった。特にγが、28〜35mN/mの範囲内にある実施例のS1〜S5感光体では、非常に良好(◎)なクリーニング性が得られた。
【0125】
一方、γが本発明範囲よりも小さい比較例のR4感光体においては、地肌かぶりの増加と記録紙裏面汚れの画像不良が発生し、画像枚数が25k枚の段階で、実用不可(×)であった。これは、トナーの感光体への付着力の減少に伴い転写効率が向上したこと、および付着力の減少に伴い装置内トナー飛散が加速されたものと考えられる。またγが本発明範囲よりも大きい比較例のR1〜R3感光体では、γの大きくなるのに伴って、トナーや紙粉などがクリーニングブレードに引掛ることに起因してクリーニング性が低下したと考えられる。
【0126】
【表2】
【0127】
【表3】
【0128】
転写効率の評価結果を表4に示す。また図4は、トナーの平均円形度と転写効率との関係を示す図である。表4および図4に示すように、感光体のγが本発明範囲内である場合、平均円形度が0.95以上においては転写効率が向上し、平均円形度が高くなるほど、その傾向がより明確に現れた。このことから、一定の現像率の原稿を複写するとき、トナーの平均円形度を0.95以上にすることによって、トナー消費の少ない画像形成が可能であることを明らかにした。
【0129】
【表4】
【0130】
【発明の効果】
本発明によれば、現像剤に含まれるトナーの平均円形度が、0.95以上であり、前記感光層に、所定の電荷輸送物質およびポリカーボネート樹脂を所定の含有比率で含有させるとともに、塗布後に所定の乾燥温度で乾燥させる、もしくは、さらにフッ素系材料を所定の含有比率で含有させることにより、電子写真感光体表面の表面エネルギーが、20mN/m以上、35mN/m以下、好ましくは28mN/m以上、35mN/m以下になるように設定される。
【0131】
小径のトナー粒子は、画像の高品質化および高解像度化を指向して球形化され、その平均円形度が高まるのに伴って、帯電均一性が向上する。トナーの平均円形度が0.95以上に設定されることによって、帯電均一性の向上による高品質および高解像度の画像形成が実現される。一般的にトナー粒子の平均円形度を高めると、クリーニングブレードにより電子写真感光体表面から残留トナーを掻取ることが難しくなるけれども、電子写真感光体の表面自由エネルギーを前記好適な範囲に設定することによって、トナー粒子に対して現像に必要な程度の付着力を発現するにも関らず過度の付着力を抑制することができるので、クリーニングブレードによる残留トナーの掻取りを容易にし、良好なクリーニング性を発現することができる。また電子写真感光体の表面自由エネルギーを前記好適な範囲に設定することによって、電子写真感光体表面から転写材へのトナーの移行比率である転写効率を向上することができるので、残留トナーの発生量そのものを抑制することが可能になる。
【0132】
このように現像性能を低下させることなく、転写効率を向上して残留トナーの発生量を抑制するとともに、残留トナーが発生した場合であっても、クリーニングブレードによる残留トナーの掻取りを容易にし、良好なクリーニング性能を発現させることができるので、平均円形度の高い球状のトナー粒子を用いるにも関らず転写効率とクリーニング性に優れ、長期間安定して高品質および高解像度の画像を形成することのできる画像形成装置が実現される。
【0133】
また本発明によれば、電子写真感光体の感光層が、有機光導電体系材料を含んで構成される。このことによって、電子写真感光体の材料設計が、容易になり、かつ低コストおよび高効率生産が実現される。
【0134】
また本発明によれば、電子写真感光体の感光層は、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とが積層されて構成される。このように感光層を複数層が積層されるタイプにすることによって、各層を構成する材料およびその組合せの自由度が増すので、電子写真感光体表面の表面自由エネルギー値を所望の範囲に設定することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態である画像形成装置1の構成を簡略化して示す配置側面図である。
【図2】図1に示す画像形成装置1に備わる電子写真感光体2の構成を簡略化して示す部分断面図である。
【図3】本発明の実施の第2の形態である画像形成装置に備わる感光体53の構成を簡略化して示す部分断面図である。
【図4】トナーの平均円形度と転写効率との関係を示す図である。
【図5】付着濡れの状態を例示する側面図である。
【符号の説明】
1 画像形成装置
2,53 電子写真感光体
3 導電性支持体
4 下引層
5 電荷発生層
6 電荷輸送層
7,54 感光層
Claims (5)
- 画像情報に対応する光によって露光されて静電潜像の形成される感光層を有する電子写真感光体と、電子写真感光体の感光層の表面に現像剤に含まれるトナーを供給することによって静電潜像を現像しトナー画像を形成する現像手段と、前記トナー画像を記録媒体である転写材に転写する転写手段と、トナー画像の転写材への転写後に電子写真感光体の表面に残留する残留トナーを除去するクリーニング手段とを備える画像形成装置であって、
前記現像剤に含まれるトナーの平均円形度が、0.95以上であり、
前記感光層に、所定の電荷輸送物質およびポリカーボネート樹脂を所定の含有比率で含有させるとともに、塗布後に所定の乾燥温度で乾燥させることにより、前記電子写真感光体の感光層表面の表面自由エネルギー(γ)が、20mN/m以上、35mN/m以下であることを特徴とする画像形成装置。 - 前記感光層に、フッ素系材料を所定の含有比率で含有させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
- 前記電子写真感光体の感光層表面の表面自由エネルギー(γ)が、28mN/m以上、35mN/m以下であることを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
- 前記電子写真感光体の感光層が、
有機光導電体系材料を含んで構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置。 - 前記電子写真感光体の感光層は、
電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とが積層されて構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の画像形成装置。
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