JP4133545B2 - 電子写真感光体およびそれを備える画像形成装置 - Google Patents

電子写真感光体およびそれを備える画像形成装置 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえば複写機などの電子写真方式の画像形成装置に用いられる電子写真感光体およびそれを備える画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方式の画像形成装置は、複写機だけでなく、近年需要の伸びの著しいコンピュータ等の出力手段であるプリンターなどにも広く利用されるに至っている。電子写真方式の画像形成装置では、装置に備わる電子写真感光体の感光層を、帯電器によって一様に帯電させ、画像情報に対応するたとえばレーザ光などによって露光し、露光によって形成される静電潜像に対してトナーと呼ばれる微粒子状の現像剤を現像器から供給してトナー画像を形成する。形成されたトナー画像は、転写手段によって記録紙などの転写材に転写されるけれども、電子写真感光体表面のトナーがすべて記録紙に転写して移行されるのではなく、一部が電子写真感光体表面に残留する。また現像時に電子写真感光体と接触する記録紙の紙粉が、電子写真感光体に付着したまま残留することもある。
【0003】
このような電子写真感光体表面の残留トナーおよび付着紙粉は、形成される画像の品質に悪影響を及ぼすので、一般的にクリーニング装置によって除去される。近年、クリーニング装置は、電子写真感光体の表面に接するようにように設けられるクリーニングブレードを有し、電子写真感光体の回転に伴ってその表面をクリーニングブレードが擦過することによって、電子写真感光体表面の残留物を除去するものが主流となっている。
【0004】
クリーニング装置による電子写真感光体のクリーニングに際し、クリーニングブレードが電子写真感光体の表面を擦過するとき、電子写真感光体の表面に残留したトナーや紙粉などの異物が、クリーニングブレードと電子写真感光体との間で、電子写真感光体の表面を機械的に研磨することになるので、電子写真感光体の表面が磨耗する。したがって、電子写真感光体は、その使用寿命を長くするために、機械的研磨に耐えうる耐磨耗性が必要とされる。電子写真感光体の耐磨耗性を評価する指標として用いられる特性の1つに硬さがある。
【0005】
電子写真感光体を硬さで規定する従来技術に、電子写真感光体の円筒状基体として用いるベース樹脂にビッカース硬さ15以上の樹脂を用いるものがある(特許文献1参照)。しかしながら特許文献1に開示される技術は、円筒状基体の硬さを規定することによって、基体成形後の脱型時やその後の工程に供する際のハンドリング時に、基体の外周面が傷付くことを防止し、これによって感光層の塗工性が確保され、良好な感光層が形成されて印字性能を向上できるというものである。したがって、特許文献1には、電子写真感光体の表面をクリーニングする際の耐磨耗性向上に係る技術は開示されていない。
【0006】
またもう1つの従来技術に、電子写真感光体の感光層の層厚と、電子写真感光体の表面に接触するように供給される転写紙の電子写真感光体に対する法線速度との関係において、感光層のビッカース硬さを規定するものがある(特許文献2参照)。しかしながら、特許文献2に開示される技術のように、単に電子写真感光体の硬さを規定するだけでは、耐磨耗寿命を向上することはできるけれども、電子写真感光体の表面に対する紙粉や残留トナー付着の問題が解決されないので、クリーニング不良が発生し、クリーニング不良に起因して記録紙に転写された画像に黒すじや白地かぶりが発生するという問題がある。
【0007】
クリーニング不良の現象は、トナー粒子の性状と電子写真感光体の表面性状とが関係する相互付着力が作用因子として考えられる。したがって、電子写真感光体のクリーニング性を向上するためには、電子写真感光体自体の表面性状に着目したクリーニング性の制御が必要不可欠である。
【0008】
電子写真感光体のクリーニングとは、電子写真感光体表面と、付着している残留トナーとの間の付着力を超える力を、残留トナーに作用させて電子写真感光体の表面から除去することである。したがって、電子写真感光体表面の濡れ性が低いほどクリーニングし易いということができる。電子写真感光体表面の濡れ性すなわち付着力は、表面自由エネルギー(表面張力と同義)を指標として表すことができる。表面自由エネルギー(γ)とは、物質を構成する分子間に作用する力である分子間力が最表面において起こす現象である。
【0009】
電子写真感光体の表面にトナーが固着、融着して転写材に転写されずに残留したトナーが、帯電からクリーニングに至る工程を繰返し経ているうち、電子写真感光体の表面に被膜状に広がる現象は、濡れ性のうち「付着濡れ」に相当する。
【0010】
図4は、付着濡れの状態を例示する側面図である。図4に示す付着濡れにおいて、濡れ性と表面自由エネルギー(γ)との関係は、Youngの式(1)によって表される。
γ=γ・cosθ+γ12 …(1)
ここで、γ:物質1表面の表面自由エネルギー
γ:物質2表面の表面自由エネルギー
γ12:物質1と物質2との界面自由エネルギー
θ:物質1に対する物質2の接触角
【0011】
式(1)より、物質1に対する物質2の濡れ性の低減、すなわちθを大きくして濡れにくくすることは、電子写真感光体と異物との濡れ仕事に関連する界面自由エネルギーγ12を大きくし、各表面自由エネルギーγおよびγを小さくすることによって達成される。
【0012】
式(1)において、電子写真感光体の表面へのトナーの付着を考える場合、物質1を電子写真感光体、物質2をトナーとすればよい。したがって、実際の電子写真感光体をクリーニングする場合、電子写真感光体の表面自由エネルギーγを制御することにより、式(1)右辺の濡れ性すなわち電子写真感光体に対するトナーの付着状態を制御することができる。
【0013】
そこで電子写真感光体の表面状態を規定する従来技術には、純水との接触角を用いるものがある(たとえば、特許文献3参照)。しかしながら、固体と液体との濡れに関しては、前述の図4に示すようにその接触角θを測定することができるけれども、電子写真感光体とトナーとのように、固体と固体との場合には、接触角θを測定することができない。したがって前述の従来技術は、電子写真感光体表面と純水との間における濡れ性については適用できるけれども、トナーの固体に対する濡れ性およびクリーニング性との関係については充分に説明することができない。
【0014】
固体同士の間における濡れ性は、固体と固体との間の界面自由エネルギーによって表すことができる。固体と固体との間の界面自由エネルギーについては、非極性な分子間力について述べたForkes理論を、さらに極性、または水素結合性の分子間力による成分まで拡張できるとされている(非特許文献1参照)。この拡張Forkes理論によれば、各物質の表面自由エネルギーは2〜3成分で求められる。前述の電子写真感光体表面に対するトナーに該当する付着濡れの場合における表面自由エネルギーについては、3成分で求めることができる。
【0015】
以下固体物質間における表面自由エネルギーについて説明する。拡張Forkes理論では、式(2)に示す表面自由エネルギーの加算則が成立つものと仮定する。
γ=γ+γ+γ …(2)
ここで、γ:双極子成分(極性による濡れ)
γ:分散成分(非極性の濡れ)
γ:水素結合成分(水素結合による濡れ)
【0016】
式(2)の加算則をForkes理論に適用すると、ともに固体である物質1と物質2との間の界面自由エネルギーγ12は、式(3)のように求められる。
Figure 0004133545
ここで、γ:物質1の表面自由エネルギー
γ:物質2の表面自由エネルギー
γ ,γ :物質1,物質2の双極子成分
γ ,γ :物質1,物質2の分散成分
γ ,γ :物質1,物質2の水素結合成分
【0017】
被測定対象の固体物質における前述の式(2)に示す各成分の表面自由エネルギー(γ,γ,γ)は、各成分の表面自由エネルギーが既知である試薬を使用し、その試薬との付着性を測定することによって算出できる。したがって、物質1および物質2のそれぞれについて、各成分の表面自由エネルギーを求め、さらに各成分の表面自由エネルギーから式(3)によって物質1と物質2との界面自由エネルギーを求めることができる。
【0018】
このようにして求められる固体と固体との間の界面自由エネルギーの考え方に基づいて、光導電層がアモルファスSi系で構成される電子写真感光体の表面自由エネルギー(γ)を35〜65mN/mまたは35〜55mN/mに規定することによって、電子写真感光体のクリーニング性と耐久性とを改善することが、従来技術として開示されている(たとえば、特許文献4,5参照)。
【0019】
また光導電層が有機感光材料で構成される電子写真感光体についても、表面自由エネルギーを35乃至65mN/mの範囲に規定することによって、電子写真感光体表面のクリーニング性を向上し、長寿命化の実現されることが、従来技術として開示されている(特許文献6参照)。
【0020】
しかしながら、本発明者らの調査によれば、従来技術に開示される範囲である35〜65mN/mの表面自由エネルギー(γ)を有する電子写真感光体を用いて、たとえば記録紙に対して実際に画像形成する実写性能試験を行ったところ、電子写真感光体表面において、紙粉などの異物との接触によると思われる傷の発生が確認された。またその傷に起因するクリーニング不良によって、記録紙に転写した画像上に黒すじが発生することを確認した。
【0021】
さらに、特許文献6に開示される従来技術においては、電子写真感光体の耐久にともなう表面自由エネルギーの変化量(Δγ)を規定しているけれども、電子写真感光体の初期特性たとえば表面自由エネルギー(γ)を規定することによっては変化量Δγを定められないこと、また画像形成する際の環境や転写材の材質などの諸条件に依存して変動量Δγが変化することを考慮すると、実際の電子写真感光体の設計において、変動量Δγは不確定な要素を多分に含み設計基準として適さないという問題がある。
【0022】
【特許文献1】
特開2001−249474号公報
【特許文献2】
特開平4−9066号公報
【特許文献3】
特開昭60−22131号公報
【非特許文献1】
北崎寧昭、畑敏雄外;「Forkes式の拡張と高分子固体の表面張力の評価」、日本接着協会誌、日本接着協会、1972年、Vol.8、No.3、p.131−141
【特許文献4】
特開2002−131957号公報
【特許文献5】
特開2002−229234号公報
【特許文献6】
特開平11−311875号公報
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、有機感光材料から成る感光層の硬さおよび表面自由エネルギーの範囲を規定することによって、クリーニング性および耐久性に優れ、長時間の使用に際しても高品質な画像を形成することのできる電子写真感光体およびそれを備える画像形成装置を提供することである。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明は、導電性支持体と導電性支持体上に設けられる有機感光材料から成る感光層とを備える電子写真感光体において、
前記感光層は、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とが積層されて構成され、
前記電荷輸送層は、複数の樹脂成分を含んで構成され、
前記電荷輸送層に含まれる電荷輸送物質は、下記構造式(I)
【化2】
Figure 0004133545
で表されるエナミン系化合物であり、
電荷輸送層に含まれる前記複数の樹脂成分の組成比を制御することによって、感光層の硬さが、ビッカース硬さで20以上35以下であり、かつ感光層の表面の表面自由エネルギー(γ)が、28mN/m以上35mN/m以下に調整されることを特徴とする電子写真感光体である。
【0025】
本発明に従えば、電子写真感光体は、感光層の硬さがビッカース硬さで20以上、35以下であり、感光層表面の表面自由エネルギーが、28mN/m以上、35mN/m以下になるように設定される。ここで言うビッカース硬さは、日本工業規格(JIS)Z2244に規定されるものである。電子写真感光体における感光層の硬さを、ビッカース硬さで20以上の範囲に設定することによって、電子写真感光体の感光層は充分な機械的強度を有するようになるので、クリーニング工程における機械的磨耗に対して充分な耐久寿命を発現させることができる。また、電子写真感光体における感光層の硬さを、ビッカース硬さで35以下の範囲に設定することによって、電子写真感光体の感光層は、充分な機械的強度を有するだけでなく、脆さの弊害が発現するのを防止することができる。
【0026】
さらに、ここで言う電子写真感光体の感光層の表面自由エネルギーは、前述したForkesの拡張理論により算出導き出したものである。電子写真感光体の感光層の表面自由エネルギーは、電子写真感光体の表面に対するたとえばトナーや紙粉などの濡れ性すなわち付着力の指標である。表面自由エネルギーを前記好適な範囲に設定することによって、特にトナーに対しては現像に必要な程度の付着力を発現するにも関らず過度の付着力を抑制し、また紙粉等の異物に対する付着力を抑制することができるので、電子写真感光体表面から過剰のトナーや異物が除去され易くなる。このようにして、現像性能を低下させることなく、クリーニング性能を向上させることが可能になる。
【0027】
したがって、表面は充分な硬さを有して耐磨耗性に優れ、かつ表面に異物が付着しにくくまた表面から異物を離脱させ易いクリーニング性能に優れる電子写真感光体が実現される。このような電子写真感光体は、耐久寿命が長く、長期間安定して形成画像に品質低下を生じさせることがない。
【0029】
また、電子写真感光体の感光層は、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とが積層されて構成される。このように感光層を複数層が積層されるタイプにすることによって、各層を構成する材料およびその組合せの自由度が増すので、電子写真感光体表面の表面自由エネルギー値を所望の範囲に設定することが容易になる。
また、電荷輸送層に含まれる複数の樹脂成分の組成比を制御することによって、電子写真感光体表面のビッカース硬さおよび表面自由エネルギー値を調整するので、ビッカース硬さおよび表面自由エネルギー値を所望の範囲に設定することが容易になる。
また、電荷輸送層が含む電荷輸送物質が、特定構造を有するエナミン系化合物なので、電子写真感光体表面のビッカース硬さおよび表面自由エネルギー値を所望の範囲に設定することが容易になる。
【0030】
また本発明は、前記電子写真感光体を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0031】
本発明に従えば、画像形成装置には、クリーニング性能および耐磨耗性に優れ、耐久寿命の長い電子写真感光体が備えられる。したがって、長期間に亘り安定して画質低下のない画像形成が可能であり、かつメンテナンス頻度の少ない画像形成装置が提供される。
【0032】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施の一形態である電子写真感光体1の構成を簡略化して示す部分断面図である。電子写真感光体1(以後、感光体と略称する)は、導電性素材からなる導電性支持体3と、導電性支持体3上に積層される下引層4と、下引層4上に積層される層であって電荷発生物質を含む電荷発生層5と、電荷発生層5の上にさらに積層される層であって電荷輸送物質を含む電荷輸送層6とを含む。電荷発生層5と電荷輸送層6とは、感光層7を構成する。
【0033】
導電性支持体3は、円筒形状を有し、(a)アルミニウム、ステンレス鋼、銅、ニッケルなどの金属材料、(b)ポリエステルフィルム、フェノール樹脂パイプ、紙管などの絶縁性物質の表面にアルミニウム、銅、パラジウム、酸化錫、酸化インジウムなどの導電性層を設けたものが好適に用いられ、その体積抵抗が1010Ω・cm以下の導電性を有するものが好ましい。導電性支持体3には、前述の体積抵抗を調整する目的で表面に酸化処理が施されてもよい。導電性支持体3は、感光体1の電極としての役割を果たすとともに他の各層4,5,6の支持部材としても機能する。なお導電性支持体3の形状は、円筒形に限定されることなく、板状、フイルム状およびベルト状のいずれであってもよい。
【0034】
下引層4は、たとえば、ポリアミド、ポリウレタン、セルロース、ニトロセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アルミニウム陽極酸化被膜、ゼラチン、でんぷん、カゼイン、N−メトキシメチル化ナイロンなどによって形成される。また酸化チタン、酸化錫、酸化アルミニウムなどの粒子を下引層4中に分散させてもよい。下引層4の膜厚は、約0.1〜10μmに形成される。この下引層4は、導電性支持体3と感光層7との接着層としての役割を果たすとともに、導電性支持体3から電荷が感光層7へ流込むのを抑制するバリア層としても機能する。このように下引層4は感光体1の帯電特性を維持するように作用するので、感光体1の寿命を延ばすことができる。
【0035】
電荷発生層5は、公知の電荷発生物質を含んで構成することができる。電荷発生物質には、可視光を吸収してフリー電荷を発生するものであれば、無機顔料、有機顔料および有機染料のいずれをも用いることができる。無機顔料としては、セレンおよびその合金、ヒ素−セレン、硫化カドミウム、酸化亜鉛、アモルファスシリコン、その他の無機光導電体が挙げられる。有機顔料としては、フタロシアニン系化合物、アゾ系化合物、キナクリドン系化合物、多環キノン系化合物、ペリレン系化合物などが挙げられる。有機染料としては、チアピリリウム塩、スクアリリウム塩などが挙げられる。前述の電荷発生物質の中でもフタロシアニン系化合物が好適に用いられ、特にチタニルフタロシアニン化合物を用いることが最適であり、良好な感度特性、帯電特性および再現性が得られる。
【0036】
前述の列挙した顔料および染料の他に、電荷発生層5には、化学増感剤または光学増感剤を添加してもよい。化学増感剤として、電子受容性物質、たとえば、テトラシアノエチレン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタンなどのシアノ化合物、アントラキノン、p−ベンゾキノンなどのキノン類、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノンなどのニトロ化合物が挙げられる。光学増感剤として、キサンテン系色素、チアジン色素、トリフェニルメタン系色素などの色素が挙げられる。
【0037】
電荷発生層5は、前述の電荷発生物質をバインダ樹脂とともに、適当な溶媒中に分散させ、下引層4上に積層し、乾燥または硬化させて成膜する。バインダ樹脂としては、具体的に、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン、ポリアクリレートなどが挙げられる。溶媒としては、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、エチルセロソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロルベンゼン、エチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。
【0038】
なお溶媒は、前述のものに限定されることなく、アルコール系、ケトン系、アミド系、エステル系、エーテル系、炭化水素系、塩素化炭化水素系、芳香族系のうちから選択されるいずれかの溶媒系を、単独または混合して用いてもよい。ただし、電荷発生物質の粉砕およびミリング時の結晶転移に基づく感度低下、およびポットライフによる特性低下を考慮した場合、無機や有機顔料において結晶転移を起こしにくいシクロヘキサノン、1,2−ジメトキシエタン、メチルエチルケトン、テトラヒドロキノンのいずれかを用いることが好ましい。
【0039】
電荷発生層5の形成には、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法などの気相堆積法や塗布方法などを適用することができる。塗布方法を用いる場合、電荷発生物質をボールミル、サンドグラインダ、ペイントシェイカ、超音波分散機などによって粉砕して溶剤に分散し、必要に応じてバインダ樹脂を加えた塗布液を、公知の塗布法によって下引層4上に塗布する。下引層4の形成される導電性支持体3が円筒状の場合、塗布法にはスプレイ法、垂直型リング法、浸漬塗布法などを用いることができる。電荷発生層5の膜厚は、約0.05〜5μmであることが好ましく、より好ましくは約0.1〜1μmである。
【0040】
なお下引層4の形成されている導電性支持体3の形状がシートの場合、塗布法にはアプリケータ、バーコータ、キャスティング、スピンコートなどを用いることができる。
【0041】
電荷輸送層6は、公知の電荷輸送物質と結着樹脂とを含んで構成することができる。電荷発生層5に含まれる電荷発生物質で発生した電荷を受け入れ、これを輸送する能力を有するものであればよい。電荷輸送物質としては、たとえばポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−g−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、ピラゾリン誘導体、フェニルヒドラゾン類、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルアミン系化合物、テトラフェニルジアミン系化合物、スチルベン系化合物、3−メチル−2−ベンゾチアゾリン環を有するアジン化合物等の電子供与性物質が挙げられる。
【0042】
電荷輸送層6を構成する結着樹脂としては、電荷輸送物質と相溶性を有するものであればよく、たとえば、ポリカーボネートおよび共重合ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリケトン、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂およびポリスルホン樹脂、それらの共重合樹脂などが挙げられる。これらの樹脂を単独または2種以上混合して用いてもよい。前述の結着樹脂の中でもポリスチレン、ポリカーボネートおよび共重合ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルなどの樹脂は、1013Ω以上の体積抵抗率を有し、成膜性や電位特性などにも優れている。
【0043】
またこれらの材料を溶解させる溶剤は、メタノールやエタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンやシクロヘキサノンなどのケトン類、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンやジオキソランなどのエーテル類、クロロホルム、ジクロロメタンやジクロロエタンなどの脂肪族ハロゲン化炭化水素、ベンゼン、クロロベンゼンやトルエンなどの芳香族類などを用いることができる。
【0044】
電荷輸送層6を形成するための電荷輸送層用塗布液は、結着樹脂溶液中へ電荷輸送物質を溶解して調製される。電荷輸送層6に占める電荷輸送物質の割合は、30〜80重量%の範囲が好ましい。電荷発生層5上への電荷輸送層6の形成は、前述の下引層4上に電荷発生層5を形成したのと同様にして行われる。電荷輸送層6の膜厚は、10〜50μmが好ましく、より好ましくは15〜40μmである。
【0045】
また、電荷輸送層6には、1種以上の電子受容性物質や色素を含有させることによって、感度の向上を図り繰返し使用時の残留電位の上昇や疲労などを抑えるようにしてもよい。電子受容性物質としては、たとえば無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、4−クロルナフタル酸無水物などの酸無水物、テトラシアノエチレン、テレフタルマロンジニトリルなどのシアノ化合物、4−ニトロベンズアルデヒドなどのアルデヒド類、アントラキノン、1−ニトロアントラキノンなどのアントラキノン類、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノンなどの多環または複素環ニトロ化合物が挙げられ、これらを化学増感剤として用いることができる。
【0046】
色素としては、たとえば、キサンテン系色素、チアジン色素、トリフェニルメタン色素、キノリン系顔料、銅フタロシアニンなどの有機光導電性化合物が挙げられ、これらを光学増感剤として用いることができる。
【0047】
さらに、電荷輸送層6には、公知の可塑剤を含有させることによって、成形性、可撓性および機械的強度を向上させるようにしてもよい。可塑剤としては、二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、フタル酸エステル、塩素化パラフィン、エポキシ型可塑剤などが挙げられる。また、感光層7には、必要に応じてポリシロキサンなどのゆず肌防止のためのレベリング剤、耐久性向上のためフェノール系化合物、ハイドロキノン系化合物、トコフェロール系化合物、アミン系化合物などの酸化防止剤、紫外線吸収剤などを含有してもよい。
【0048】
前述のように構成される感光体1の感光層7の硬さは、JIS−Z2244に規定されるビッカース硬さ(測定荷重30mN)で20以上、35以下になるように制御設定され、かつ感光層7表面の表面自由エネルギー(γ)は、拡張Forkes理論によって算出される値が、28mN/m以上、35mN/m以下になるように制御設定される。
【0049】
ビッカース硬さが20未満では、感光体1表面の残留物を除去するために圧接されるクリーニングブレードによる擦過、およびクリーニングブレードと感光体1表面の残留物とによる機械的研磨によって感光層7が著しく磨耗し、感光体1の寿命が極端に短くなる。したがって、ビッカース硬さで20以上とした。また、感光層7のビッカース硬さが、35を超えると、脆さの弊害が現れることにる。
【0050】
また表面自由エネルギーが35mN/mを超えると、トナーや紙粉などの感光体表面に対する付着力が増大するのでクリーニング性が悪化する。表面自由エネルギーが28mN/m未満になると、トナーと感光体1表面との付着力が低下するので、装置内へのトナー飛散および感光体1上のトナー画像部以外の部分に付着した微粉トナーの記録紙への移行により画像かぶりが発生する。したがって、表面自由エネルギーは、28〜35mN/mが好適である。
【0051】
感光層7のビッカース硬さの前述範囲への制御設定は、感光層7に含まれる結着樹脂に硬さの高い樹脂を用いたり、より高分子の樹脂を用いることによって実現できる。また感光層7の結着樹脂を架橋することによっても実現できる。
【0052】
また感光層7の表面自由エネルギーの前述範囲への制御設定は、以下のようにして行われる。比較的低い表面自由エネルギー値を有する、たとえばポリテトラフルオロエチレン(略称PTFE)を代表とするフッ素系材料、ポリシロキサン系材料などを、感光層7に導入し、その含有量を調整することによって実現できる。また感光層7に含まれる電荷発生物質、電荷輸送物質および結着樹脂の種類、これらの組成比を変化させることによっても実現できる。また感光層7を形成する際の乾燥温度を調整することによっても実現できる。
このとき、電荷輸送物質としては、下記構造式(I)で表されるエナミン系化合物を用いる。
【化3】
Figure 0004133545
【0053】
このようにして制御設定される感光体1表面の表面自由エネルギーは、前述のように表面自由エネルギーの双極子成分、分散成分および水素結合成分が既知である試薬を使用し、その試薬との付着性を測定することによって求められる。具体的には、試薬に純水、ヨウ化メチレン、α−ブロモナフタレンを使用し、接触角計CA−X(商品名;協和界面株式会社製)を用いて、感光体2表面に対する接触角を測定し、測定結果に基づき表面自由エネルギー解析ソフトEG−11(商品名;協和界面株式会社製)を用いて各成分の表面自由エネルギーを算出することができる。なお試薬は、前述の純水、ヨウ化メチレン、α−ブロモナフタレンに限定されるものではなく、双極子成分、分散成分、水素結合成分が適宜な組合せの試薬を用いてもよい。また測定方法も、前述の方法に限定されるものではなく、たとえばウィルヘルミ法(つり板法)やドゥ・ヌイ法などが用いられてもよい。
【0054】
以下感光体1における静電潜像形成動作について簡単に説明する。感光体1に形成される感光層7は、帯電器などでたとえば負に一様に帯電され、帯電された状態で電荷発生層5に吸収波長を有する光が照射されると、電荷発生層5中に電子および正孔の電荷が発生する。正孔は、電荷輸送層6に含まれる電荷輸送材料によって感光体1表面に移動されて表面の負電荷を中和し、電荷発生層5中の電子は、正電荷が誘起された導電性支持体3の側に移動し、正電荷を中和する。このように、感光層7には、露光された部位の帯電量と露光されなかった部位の帯電量とに差異が生じて静電潜像が形成される。
【0055】
図2は、本発明の実施の第2の形態である感光体8の構成を簡略化して示す部分断面図である。本実施の形態の感光体8は、実施の第1形態の感光体1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。感光体8において注目すべきは、導電性支持体3上に単層からなる感光層9が形成されることである。
【0056】
感光層9は、実施の第1形態の感光体1に用いるのと同様の電荷発生物質、電荷輸送物質、結着樹脂などを用いて形成される。結着樹脂中に電荷発生物質および電荷輸送物質を分散したり、電荷輸送物質を含む結着樹脂中に電荷発生物質を顔料粒子の形で分散させたりして調製した感光層用塗布液を用い、実施の第1形態の感光体1における電荷発生層5を形成するのと同様の方法によって単層の感光層が導電性支持体3上に形成される。本実施の形態の単層型感光体8は、オゾン発生が少ない正帯電型画像形成装置用の感光体として好適であり、また塗布されるべき感光層9が一層のみであるので、製造原価および歩留が電荷発生層および電荷輸送層の積層して構成される積層型に比べて優れている。
【0057】
図3は、本発明の他の実施の形態である画像形成装置2の構成を簡略化して示す配置側面図である。画像形成装置2は、実施の第1形態の感光体1を備えることを特徴とする。なお、本発明の画像形成装置は、実施の第2形態の感光体8を備える構成であってもよい。
【0058】
図3を参照して感光体1を備える画像形成装置2の構成および画像形成動作について説明する。本実施の形態として例示する画像形成装置2は、デジタル複写機2である。
【0059】
デジタル複写機2は、大略スキャナ部11と、レーザ記録部12とを含む構成である。スキャナ部11は、透明ガラスからなる原稿載置台13と、原稿載置台13上へ自動的に原稿を供給搬送するための両面対応自動原稿送り装置(RADF)14と、原稿載置台13上に載置された原稿の画像を走査して読取るための原稿画像読取りユニットであるスキャナユニット15とを含む。このスキャナ部11にて読取られた原稿画像は、画像データとして画像データ入力部へと送られ、画像データに対して所定の画像処理が施される。RADF14は、RADF14に備わる原稿トレイ上に複数枚の原稿を一度にセットし、セットされた原稿を1枚ずつ自動的に原稿載置台13上へ給送する装置である。
【0060】
スキャナユニット15は、原稿面上を露光するランプリフレクターアセンブリ16と、原稿からの反射光像を光電変換素子(略称CCD)23に導くために原稿からの反射光を反射する第1反射ミラー17を搭載する第1走査ユニット18と、第1反射ミラー17からの反射光像をCCD23に導くための第2および第3反射ミラー19,20を搭載する第2走査ユニット21と、原稿からの反射光像を前述の各反射ミラー17,19,20を介して電気的画像信号に変換するCCD23上に結像させるための光学レンズ22と、前記CCD23とを含む構成である。
【0061】
スキャナ部11は、RADF14とスキャナユニット15との関連動作によって、原稿載置台13上に読取るべき原稿を順次給送載置させるとともに、原稿載置台13の下面に沿ってスキャナユニット15を移動させて原稿画像を読取るように構成される。第1走査ユニット18は、原稿載置台13に沿って原稿画像の読取り方向(図3では紙面に向って右から左)に一定速度Vで走査され、また第2走査ユニット21は、その速度Vに対して2分の1(V/2)の速度で同一方向に平行に走査される。この第1および第2走査ユニット18,21の動作によって、原稿載置台13上に載置された原稿画像を1ライン毎に順次CCD23へ結像させて画像を読取ることができる。
【0062】
原稿画像をスキャナユニット15で読取って得られた画像データは、各種画像処理が施された後、メモリに一旦記憶され、出力指示に応じてメモリ内の画像を読出してレーザ記録部12に転送して記録媒体である記録紙上に画像を形成させる。
【0063】
レーザ記録部12は、記録紙の搬送系33と、レーザ書込みユニット26と、画像を形成するための電子写真プロセス部27とを備える。レーザ書込みユニット26は、前述のスキャナユニット15にて読取られてメモリに記憶された後にメモリから読出される画像データ、または外部の装置から転送される画像データに応じてレーザ光を出射する半導体レーザ光源と、レーザ光を等角速度偏向するポリゴンミラーと、等角速度で偏向されたレーザ光が電子写真プロセス部27に備えられる感光体1上で等角速度で偏向されるように補正するf−θレンズなどを含む。
【0064】
電子写真プロセス部27は、前述の感光体1の周囲に帯電器28、現像器29、転写器30、クリーニング器31が、矢符32で示す感光体1の回転方向の上流側から下流側に向ってこの順番に備えられる。前述のように感光体1は、帯電器28によって一様に帯電され、帯電された状態でレーザ書込みユニット26から出射される原稿画像データに対応するレーザ光によって露光される。露光されることによって感光体1表面に形成される静電潜像は、現像器29から供給されるトナーによって現像され、可視像であるトナー画像となる。感光体1表面に形成されたトナー画像は、後述する搬送系33によって供給される記録紙上に転写器30によって転写される。
【0065】
このとき、感光体1表面の表面自由エネルギーが、好適な範囲に設定されているので、トナー画像を形成するトナーは、感光体1表面から記録紙上へ容易に移行転写されて残留トナーが発生しにくく、また転写時に接触する記録紙の紙粉なども感光体1表面に付着しにくい。したがって、転写後の感光体1表面を清掃するために設けられるクリーニング器31のクリーニングブレード31aの研磨能力を弱く設定することができ、またクリーニングブレード31aの感光体1表面に対する当接圧力も小さく設定することができる。また、感光体1表面にトナーや異物の付着が無く、常に清浄な状態に保たれるので、画質の良好な画像を長期間安定して形成することが可能になる。さらに、感光体1の感光層7はビッカース硬さが好適な範囲に設定されているので、クリーニングブレード31aによる擦過およびクリーニングブレード31aと残留物との機械的研磨による磨耗が抑えられるので、感光体1の寿命が延長される。
【0066】
記録紙の搬送系33は、記録紙Pを収容するカセット34と、カセット34内の記録紙Pを1枚ずつ分離送給する給紙ユニット35と、給紙ユニット35によってカセット34から送給される記録紙Pを搬送系33内の所定の位置に搬送する複数の搬送ローラ36とを備える。前述の転写器30の記録紙P搬送方向下流側には定着器37が設けられる。
【0067】
転写器30によってトナー画像が転写された記録紙は、搬送系33によって定着器37へと搬送され、定着器37によってトナー画像が定着処理される。トナー画像が定着処理された記録紙は、搬送ローラ36によって排紙カセット38に排紙されて、デジタル複写機2における一連の画像形成動作が終了する。
【0068】
このデジタル複写機2には、前述のようにトナーが過度に付着することなく、また異物が付着しにくく、クリーニング器31によって容易にクリーニングすることのできるクリーニング性に優れる感光体1が備えられるので、長期間に亘り安定して画質低下のない画像形成が可能であり、かつ感光体1の寿命が長くクリーニング器31も簡易なものですむことから低コストでメンテナンス頻度の少ない装置の提供が実現される。
【0069】
(実施例)
以下本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0070】
まず、直径:30mm、長さ:326.3mmのアルミニウム製導電性支持体上に種々の条件にて感光層を形成し、実施例および比較例として準備した感光体について説明する。なお実施例中では、ビッカース硬さをHV、表面自由エネルギーをγと略記する。
【0071】
(S1〜S3感光体)
(S1感光体)
酸化チタン(TTO55A:石原産業社製)7重量部および共重合ナイロン(CM8000:東レ社製)13重量部を、メチルアルコール159重量部と1,3−ジオキソラン106重量部との混合溶剤に加え、ペイントシェーカにて8時間分散処理して下引層用塗布液を調整した。この塗布液を塗布槽に満たし、導電性支持体を浸漬後引上げ、自然乾燥して層厚1μmの下引層を形成した。
【0072】
オキソチタニルフタロシアニン3重量部とブチラール樹脂(BL−1:積水化学社製)2重量部とを、メチルエチルケトン245重量部に混合し、ペイントシェーカにて分散して電荷発生層用塗布液を調整した。この塗布液を、下引層の場合と同様の浸漬塗布法にて前述の下引層上に塗布し、 自然乾燥して層厚0.4μmの電荷発生層を形成した。
【0073】
電荷輸送物質として下記構造式(I)で示されるエナミン系化合物5重量部、ポリカーボネート樹脂(G400:出光興産株式会社製)5重量部、同じくポカーボネート樹脂(GH503:出光興産株式会社製)5重量部、スミライザーBHT(住友化学株式会社製)0.05重量部を混合し、テトラヒドロフラン47重量部を溶剤として電荷輸送層用塗布液を調整した。この塗布液を、浸漬塗布法にて前述の電荷発生層上に塗布し、130℃で1時間乾燥して層厚28μmの電荷輸送層を形成した。このようにしてS1感光体を作製した。
【0074】
【化4】
Figure 0004133545
【0075】
(S2感光体)
S1感光体と同様にして下引層および電荷発生層を形成した。次いで電荷輸送物質として下記構造式(II)で示されるブタジエン系化合物を5重量部、4種類のポリカーボネート樹脂、J500(出光興産株式会社製)2.4重量部、G400(出光興産株式会社製)1.6重量部、GH503(出光興産株式会社製)1.6重量部、TS2020(帝人化成株式会社製)2.4重量部、さらにスミライザーBHT(住友化学株式会社製)0.25重量部を混合し、テトラヒドロフラン49重量部を溶剤として電荷輸送層用塗布液を調整した。この塗布液を、浸漬塗布法にて電荷発生層上に塗布し、130℃で1時間乾燥して層厚28μmの電荷輸送層を形成した。このようにしてS2感光体を作製した。
【0076】
【化5】
Figure 0004133545
【0077】
(S3感光体)
S1感光体と同様にして下引層および電荷発生層を形成した。次いで電荷輸送物質として前記構造式(II)で示されるブタジエン系化合物を3.5重量部、下記構造式(III)で示されるスチリル系化合物を1.5重量部、4種類のポリカーボネート樹脂、J500(出光興産株式会社製)2.2重量部、G400(出光興産株式会社製)2.2重量部、GH503(出光興産株式会社製)1.8重量部、TS2020(帝人化成株式会社製)1.8重量部、さらにスミライザーBHT(住友化学株式会社製)1.5重量部を混合し、テトラヒドロフラン55重量部を溶剤として電荷輸送層用塗布液を調整した。この塗布液を、浸漬塗布法にて電荷発生層上に塗布し、120℃で1時間乾燥して層厚28μmの電荷輸送層を形成した。このようにしてS3感光体を作製した。
【0078】
【化6】
Figure 0004133545
【0079】
(R1〜R3感光体)
(R1感光体)
S1感光体と同様にして下引層および電荷発生層を形成した。次いで、電荷輸送層形成に際し、ポリカーボネート樹脂の一部に代えて、γの低い樹脂であるPTFEを用いた以外は、S1感光体と同様にして塗布液を調整した。この塗布液を、浸漬塗布法にて電荷発生層上に塗布し、120℃で1時間乾燥して層厚28μmの電荷輸送層を形成した。このようにしてR1感光体を作製した。
【0080】
(R2感光体)
S1感光体と同様にして下引層および電荷発生層を形成した。次いで電荷輸送物質として前記構造式(II)で示されるブタジエン系化合物を5重量部、3種類のポリカーボネート樹脂、G400(出光興産株式会社製)2.4重量部、TS2020(帝人化成株式会社製)4重量部、Vylon290(東洋紡株式会社製)1.6重量部、さらにスミライザーBHT(住友化学株式会社製)0.25重量部を混合し、テトラヒドロフラン49重量部を溶剤として電荷輸送層用塗布液を調整した。この塗布液を、浸漬塗布法にて電荷発生層上に塗布し、130℃で1時間乾燥して層厚28μmの電荷輸送層を形成した。このようにしてR2感光体を作製した。
【0081】
(R3感光体)
S1感光体と同様にして下引層および電荷発生層を形成した。次いで、電荷輸送層形成に際し、ポリカーボネート樹脂に、G400(出光興産株式会社製)8重量部を用いた以外は、R2感光体と同様にして塗布液を調整した。この塗布液を、浸漬塗布法にて電荷発生層上に塗布し、130℃で1時間乾燥して層厚28μmの電荷輸送層を形成した。このようにしてR3感光体を作製した。
【0082】
以上のように、S1〜S3感光体およびR1〜R3感光体の作製において、電荷輸送層用塗布液に含まれる樹脂の種類および含有比率を変化させるとともに、塗布後の乾燥温度を変化させることによって、感光体表面のHVおよびγが所望の値になるように調整した。これらの感光体表面のHVは、微小硬度測定器H1000C(H.FISCHER社製)および解析ソフトWIN−HCU(H.FISCHER社製)によって求め、感光体表面のγは、接触角測定機CA−X(協和界面株式会社製)および解析ソフトEG−11(協和界面株式会社製)によって求めた。
【0083】
1〜S3感光体およびR1〜R3感光体を、試験用に改造したデジタル複写機AR−450(シャープ株式会社製)に搭載することによって、画像品質および耐磨耗性の評価試験を行った。次に、評価方法について説明する。
【0084】
[画像品質]
前述のデジタル複写機AR−450に備わるクリーニング器のクリーニングブレードが、感光体に当接する当接圧力、いわゆるクリーニングブレード圧を初期線圧で21gf/cm(2.06×10−1N/cm)に調整した。温度:25℃、相対湿度:50%の常温/常湿(N/N:Normal Temperature/Normal Humidity)環境中で、前記複写機を用いて、記録紙上に白べた画像および黒べた画像を形成した。得られた白べた画像および黒べた画像を目視観察し、画像品質を評価した。次いで前記条件下において、所定パターンの画像を記録紙10万枚に形成した後、記録紙上に白べた画像および黒べた画像を形成した。得られた白べた画像および黒べた画像を目視観察して、10万枚の画像形成後における画像品質を評価した。
【0085】
画像品質の評価基準は以下のようである。
○:良好。白べた画像へのかぶり、黒すじの発生および黒べた画像の画像濃度低下なし。
×:不良。白べた画像に多数のかぶり、黒すじ発生または黒べた画像の画像濃度が著しく低下。
【0086】
[耐磨耗性]
感光体作製時における感光層の膜厚d0と、前述の画像品質評価試験において記録紙10万枚に画像形成した後に装置から取出した感光体の膜厚d1とをそれぞれ測定し、両測定値の差である膜べり量Δd(=d0−d1)を求めた。膜べり量Δdが小さい程、耐磨耗性が優れると評価した。なお膜厚は、膜厚計MCPD2000(大塚電子株式会社製)によって測定した。
【0087】
[評価結果]
評価結果を表1に合わせて示す。HVが本発明範囲内の20以上であるけれども、γが本発明範囲外の28未満であるR1感光体は、膜減り量Δdが小さいけれども、10万枚の画像形成後における白ベた画像へのかぶりの発生が見られ、画像品質不良であった。またこのときの画像形成装置内のトナー飛散による汚れがひどく、これがかぶりの発生に影響したものと推察される。
【0088】
HVが本発明範囲内の20以上であるけれども、γが本発明範囲外の35超えであるR2感光体は、HVが高いので膜べり量Δdが小さいけれども、10万枚の画像形成後の白ベた画像に多数の黒すじが発生し、画像品質不良であった。感光体表面のγすなわち付着力が大きいので、残留トナーのクリーニング不良によるトナーのフィルミングなどが発生したものである。
【0089】
γが本発明範囲内の28〜35mN/mであるけれども、HVが本発明範囲外の20未満であるR3感光体は、感光層のHVが低いので膜減り量Δdが極端に大きい。また10万枚の画像形成後の白ベた画像へのかぶり発生、黒ベた画像に若干の濃度低下が見られた。
【0090】
一方、HVが本発明範囲内の20以上であり、かつγが本発明範囲内の28〜35mN/mであるS1〜S3感光体は、膜減り量Δdが比較的小さく、初期から10万枚の画像形成後まで、良好な品質の画像を得ることが出来た。
【0091】
【表1】
Figure 0004133545
【0092】
【発明の効果】
本発明によれば、電子写真感光体は、有機感光材料から成る感光層の硬さがビッカース硬さで20以上、35以下であり、感光層表面の表面自由エネルギーが、28mN/m以上、35mN/m以下になるように設定される。電子写真感光体における感光層の硬さを、ビッカース硬さで20以上の範囲に設定することによって、電子写真感光体の感光層は充分な機械的強度を有するようになるので、クリーニング工程における機械的磨耗に対して充分な耐久寿命を発現させることができる。また、電子写真感光体における感光層の硬さを、ビッカース硬さで35以下の範囲に設定することによって、電子写真感光体の感光層は、充分な機械的強度を有するだけでなく、脆さの弊害が発現するのを防止することができる。
【0093】
電子写真感光体の感光層の表面自由エネルギーを前記好適な範囲に設定することによって、特にトナーに対しては現像に必要な程度の付着力を発現するにも関らず過度の付着力を抑制し、また紙粉等の異物に対する付着力を抑制することができるので、電子写真感光体表面から過剰のトナーや異物が除去され易くなる。このようにして、現像性能を低下させることなく、クリーニング性能を向上させることが可能になる。
【0094】
したがって、表面は充分な硬さを有して耐磨耗性に優れ、かつ表面に異物が付着しにくくまた表面から異物を離脱させ易いクリーニング性能に優れる電子写真感光体が実現される。このような電子写真感光体は、耐久寿命が長く、長期間安定して形成画像に品質低下を生じさせることがない。
【0095】
また、電子写真感光体の感光層は、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とが積層されて構成される。このように感光層を複数層が積層されるタイプにすることによって、各層を構成する材料およびその組合せの自由度が増すので、電子写真感光体表面の表面自由エネルギー値を所望の範囲に設定することが容易になる。
また、電荷輸送層に含まれる複数の樹脂成分の組成比を制御することによって、電子写真感光体表面のビッカース硬さおよび表面自由エネルギー値を調整するので、ビッカース硬さおよび表面自由エネルギー値を所望の範囲に設定することが容易になる。
また、電荷輸送層が含む電荷輸送物質が、特定構造を有するエナミン系化合物なので、電子写真感光体表面のビッカース硬さおよび表面自由エネルギー値を所望の範囲に設定することが容易になる。
【0096】
また本発明によれば、画像形成装置には、クリーニング性能および耐磨耗性に優れ、耐久寿命の長い電子写真感光体が備えられる。したがって、長期間に亘り安定して画質低下のない画像形成が可能であり、かつメンテナンス頻度の少ない画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態である電子写真感光体1の構成を簡略化して示す部分断面図である。
【図2】本発明の実施の第2の形態である感光体8の構成を簡略化して示す部分断面図である。
【図3】本発明の他の実施の形態である画像形成装置2の構成を簡略化して示す配置側面図である。
【図4】付着濡れの状態を例示する側面図である。
【符号の説明】
1,8 感光体
2 画像形成装置
3 導電性支持体
4 下引層
5 電荷発生層
6 電荷輸送層
7,9 感光層
11 スキャナ部
12 レーザ記録部
13 原稿載置台
14 RADF
15 スキャナユニット
18 第1走査ユニット
21 第2走査ユニット
22 光学レンズ
23 CCD
26 レーザ書込みユニット
27 電子写真プロセス部
28 帯電器
29 現像器
30 転写器
31 クリーニング器
33 搬送系
34 カセット
35 給紙ユニット
37 定着器
38 排紙カセット

Claims (2)

  1. 導電性支持体と導電性支持体上に設けられる有機感光材料から成る感光層とを備える電子写真感光体において、
    前記感光層は、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とが積層されて構成され、
    前記電荷輸送層は、複数の樹脂成分を含んで構成され、
    前記電荷輸送層に含まれる電荷輸送物質は、下記構造式(I)
    Figure 0004133545
    で表されるエナミン系化合物であり、
    電荷輸送層に含まれる前記複数の樹脂成分の組成比を制御することによって、感光層の硬さが、ビッカース硬さで20以上35以下であり、かつ感光層の表面の表面自由エネルギー(γ)が、28mN/m以上35mN/m以下に調整されることを特徴とする電子写真感光体。
  2. 請求項1に記載の電子写真感光体を備えることを特徴とする画像形成装置
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