JP4037478B2 - 導電性除電シート及びそれを用いた服飾品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性除電シート及びそれを用いた服飾品に関し、特に人体、衣服及びその他各種物体より帯電した静電気を自己放電により減衰又は除去させることに適用できる導電性除電シート及びそれを用いた服飾品に関する。
【0002】
【従来の技術】
物体間の摩擦、液体の流れ、粉体の流れなどや微小粒子がイオンを吸着することにより、絶縁体に静的な電荷が生じる。例えば、人間の歩行により、衣服、床面に敷設したカーペット、床タイル等から人体や衣服に静電気が帯電する。特に最近は、合成繊維の使用比率が高く、又繊維に合成樹脂等で表面加工が施されており益々帯電し易くなっている。このため、電撃ショック、埃の付着、放電発火の危険性等各種トラブルが発生する。
【0003】
これら繊維製品の静電気防止対策としては、例えば銅を含むパイル糸とアルミニウムを含むパイル糸とが、放電性繊維シートに打ち込まれている抗菌性制電繊維シート(特開平6−248562号)、各種合成樹脂に有機系の帯電防止剤を練り込み紡糸した繊維を用いるもの(特開平2−207492号、特開平2−68898号)等が提案されている。
【0004】
しかしながら、前記の抗菌性制電繊維シートには、そのパイル糸に銅とアルミニウムをコートした各繊維、又は銅線とアルミニウム線入りの各繊維の使用が記載されているが、銅やアルミニウムをコートした繊維からなるシートは、人の通行の多い廊下や自動車ではその消耗が激しく銅やアルミニウムの表面コートの剥離や摩耗により導電性が低下しやすく、又前記銅やアルミニウムのコート繊維、銅線やアルミニウム線入りの繊維では、人間の皮膚に対する刺激が強く人体と接触するシートや服飾品には不適である。一方、前記の合成樹脂に有機系の帯電紡糸剤を練り込んだ繊維からなるものは、絶縁性が高く湿度が低下すると帯電しやすく、又水洗いやドライクリーニング等の洗濯において帯電防止剤が溶出して静電防止効果が減少するという問題がある。
【0005】
さらに、近年電子機器の発展にともない電子機器を操作することにより静電気が発生するために、各種の静電気防止策が行われているが、こられについても必ずしも十分とはいえない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題点を解消し、人体、衣服及び各種物体に帯電した静電気を自己放電により減衰又は除去することを持続することができる導電性除電シート及びそれを用いた服飾品を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討の結果、極細導電性単繊維を含む起毛糸及び基布糸とからなる起毛が直毛線である導電性シートが、風合がよく長期間にわたり静電気の帯電防止を行うことができることを見出し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち、本発明の導電性除電シートは、繊維径が1〜30μmの導電性単繊維と天然繊維及び/又は合成繊維とからなる導電性の起毛糸が、繊維径が1〜30μmの導電性単繊維と天然繊維及び/又は合成繊維とからなる導電性の基布糸を編んだ基布に、固定され直毛線に起毛しているものである。
【0009】
又、本発明の服飾品は、前記導電性除電シートを用いてなるものである。
【0010】
【本発の実施の形態】
本発明を以下詳細に説明する。
【0011】
本発明における導電性単繊維(導電性モノフィラメント、以下導電性繊維ともいう)としては、各種金属又は炭素繊維等があげられるが、これらの中では銅、ステンレス、アルミニウム、炭素繊維等が電気抵抗が低く、又生産性のうえから好ましい。その繊維径は1〜30μm、好ましくは、10〜30μmであるが、特にステンレス繊維では10〜15μmのものが好ましい。繊維径が1μm未満では、繊維がへたり易く起毛の腰が弱く、一方30μmを超えると静電荷による気体分子のイオン化が迅速に行われなくなるとともに、特に服飾品用として人間の皮膚との接触で刺激が強くなるために適さない。
【0012】
なお、炭素繊維の使用では、シートが摩耗により黒くなることがあるので予め繊維の表面処理をしておくことが好ましい。
【0013】
又、天然繊維としては、羊毛、綿糸等があげられる。又、合成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリアミド等の単繊維からなるものが好ましい。これら合成繊維の繊維径は、5〜20μm程度のものが好ましい。
【0014】
本発明における除電シートの起毛を形成する起毛糸は、前記の導電性繊維と、天然繊維及び/又は合成繊維とで直毛線の繊維束からなるものである。この起毛糸を繊維束とすることにより、起毛をブラシの様に直毛線にすることができる。又、起毛糸は、一繊維束の太さに対して導電性繊維同志が接触している必要はないが、互いに接近して存ることが静電気の減衰又は除去のうえから好ましい。
【0015】
又、前記起毛糸は、一繊維束の太さに対して前記導電性繊維の割合が10〜40%が好ましく、より好ましくは10〜30%である。導電性繊維の割合が10%未満では、導電性が不十分であり帯電した静電気の静電荷によって気体分子を迅速にイオン化して帯電を自己放電により減衰又は除去することが不十分となる。一方、40%を超えると導電性においては問題ないが、極細の導電性繊維と、天然繊維及び/又は合成繊維とで密に起毛し、起毛がへたらないように、かつ、導電性繊維の摩耗による損失を防止し、さらには服飾品における風合や生産性を考慮するならば前記の上限値が好ましい。なお、起毛糸は、その目的により導電性繊維に対して、天然繊維又は合成繊維を単独又は適宜混合して用いることができる。
【0016】
又、前記起毛糸から形成される起毛は、ブラシの様に直毛線で密に起毛していることが好ましく、特に導電性繊維は、極細であるか繊維の先端が針状化していることが前記静電気を自己放電により減衰又は除去を効率的に行ううえから好ましい。
【0017】
本発明における基布を形成する基布糸は、前記の導電性繊維と、天然繊維及び/又は合成繊維との繊維束又は撚糸からなるものである。この基布糸は、一繊維束の太さに対して、前記導電性繊維の割合が10〜20%が好ましく、より好ましくは10〜15%である。導電性繊維の割合が10%未満では、基布と起毛との導電性繊維間で行われる帯電した静電気の静電荷による気体分子をイオン化し蓄積した静電気を自己放電又は除去することが不十分となる。一方、20%を超えると導電性においては問題ないが、起毛糸との間での電位差が小さくなり、静電気の迅速な自己放電による減衰又は除去と生産性を考慮すると前記上限が好ましい。従って、基布糸の導電性繊維の含有量は、前記の範囲内で起毛糸中の導電性繊維の含有量より少ないことが、基布と起毛との間の電位差が大となり起毛からの静電気の自己放電による減衰又は除去が迅速となるために好ましい。なお、基布糸の天然繊維又は合成繊維には短繊維を併用してもよい。又、前記の起毛糸及び基布糸は、その用途により染色をしたものを使用してもよい。
【0018】
次に、本発明の導電性除電シート及びそれを用いた服飾品を図面に従って詳細に説明する。図面に示したものは、本発明の導電性除電シートとその繊維構成の模式図及びその服飾品への使用例を示すものである。図1は、前記導電性の起毛糸1からなる起毛3と、その間に前記基布糸2が往復して起毛糸1を固定してシートを成形している一部分を示す模式図である。なお、この起毛糸と基布糸の具体的な編みは、メリヤス編機で編み、その後起毛になる部分を刃物で切り直毛線とすることができる。図2は、前記の方式で連続に編みこみした基布4と起毛3とで形成される導電性除電シートである。このような編みこみ固定により、起毛と基布との導電性繊維の両面から空気中に静電気を効率的に自己放電により減衰又は除去できる。
【0019】
図3及び図4は、本発明の導電性除電シートの服飾品としての使用例を示すもので、図3は、ブレスレットで、起毛3と基布4とからなるシートを芯のゴムに巻き縫製して着脱を容易にし、静電気防止が必要なときに腕に着用するようにしたものである。又、図4は、衣服のポイントとして本発明の導電性除電シートを、衣服の袖ポイント5及び胸ポイント6に夫々縫製加工した例である。
【0020】
又、その他の使用例としては、市販の導電性粘着剤を本発明の導電性除電シートの基布に塗布した後に金属箔、例えば銅、ステンレス、アルミニウム等の金属箔を貼り、さらに市販の導電性粘着剤を塗布し、テレビのCRTの縁、ドアのノブ等に貼り帯電した物体より静電気を除去するとともに埃等の付着防止をすることに使用してもよい。
【0021】
以上、本発明の導電性除電シートは、極細の導電性繊維を含む基布糸を編んだ基布と極細の導電性繊維を含む極細の起毛糸に蓄積した静電気の静電荷によって気体分子のイオン化を迅速に行い空気及び空気中の水蒸気に自己放電を行って蓄積した静電気を減衰又は除去を行う。又、導電性除電シートを用いた服飾品は、それを着用することにより各場所で容易に帯電防止ができる。
【0022】
【実施例】
本発明を以下の具体的な実施例によりさらに詳細に説明する。
【0023】
実施例1
繊維径が30μmの銅極細単繊維10本と、ポリエステル単繊維を綿糸番手相当10番手となるように束ねた一繊維束の太さに対する銅繊維が30%である起毛糸と、前記銅極細繊維2本と、ナイロン単繊維を綿糸番手相当30番手になるように束ねた一繊維束の太さに対する銅繊維が15%の基布糸とをメリヤス編機で編み、その後起毛となる部分を刃物で切り直毛線に起毛して導電性除電シートを得た。
【0024】
比較のために、前記銅繊維を含まない同番手の起毛糸と基布糸と、繊維径が100μmの銅繊維を含む同番手の起毛糸と基布糸とから同様にして起毛シート及び導電性シートを得た。
【0025】
得られた導電性除電シートと、比較のための起毛シート及び導電性シートにつきそれぞれをゴム芯に巻き縫製加工して図3に示すようなブレスレットとした。各ブレスレットを人体に着用し、温度25℃、相対湿度25%の室内でアクリル繊維と毛の混紡(アクリル繊維/毛=3/7)製カーペット上を、70m/分の速度で1分間及び5分間歩行し、それぞれについて人体の帯電圧を測定した。導電性除電シートからなるブレスレット着用では、1分間後の帯電圧は3.5kvで、5分間後は3.4kvであった。又、着用時に皮膚への刺激もなく風合も良好であった。又、銅繊維を含まない起毛シートからなるものは、1分間後の帯電圧は7.5kvで、5分間後の帯電圧は12.0kvであった。又、繊維径が100μmの銅繊維を含むものは、1分間後の帯電圧は4.5kvで、5分間後の帯電圧は4.0kvであり、更に着用時に皮膚に刺激があり長期間の着用には不適てあった。
【0026】
実施例2
実施例1で得られた本発明の導電性除電シートに、市販の導電性粘着剤(金属繊維又は金属粉を使用した粘着剤)を塗布し乾燥したものを幅20mm×長さ200mmに切り、テレビのCRTの縁の四角に貼り付け静電気の除去を行った。この結果、前記導電性除電シートを貼り付け前の帯電圧は4.0〜4.5kvであったが、四角に貼り付け後の帯電圧は、ほぼ0kv近くになり通常の帯電圧計では測定できない値に低下した。
【0027】
上記のように本発明の導電性除電シートを用いたものは、放電現象に起因する人体への電撃ショックを解消することのできる4.0kvを下回る帯電圧を実現することができる。又、極細の導電性繊維が用いられているために風合も良好である。
【0028】
【発明の効果】
以上、本発明の導電性除電シート及びそれを用いた服飾品は、人体、衣服及び各種物体から帯電した静電気を空気中に効率よく自己放電を持続して行うことができるので、人体に放電による電撃を防止し、又埃等の集まりを防止して汚れを防ぐことができる。
【0029】
従って、本発明の導電性除電シート及び服飾品は、各種用途に使用できるが、特に自動車の座席、椅子等のカバー、衣服の裏地、衣服のポイント、ブレスレット、その他のアクセサリー等の服飾品、テレビのCRTの縁、電子機器等の電気機器、ドアのノブ、窓枠その他の家具等、その他腕時計の金属バンド、金属ケース等人体に直接に接触するものに好適であるが、その他自動車、床等のカーペットにも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の起毛糸と基布糸の編みこみを示す模式図である。
【図2】本発明の導電性除電シートの斜視図である。
【図3】本発明の導電性除電シートをブレスレットとした模式図である。
【図4】本発明の導電性除電シートを衣服のポイントとして縫製加工した模式図である。
【符号の説明】
1・・・起毛糸
2・・・基布糸
3・・・起毛
4・・・基布
5・・・衣服の袖ポイント
6・・・衣服の胸ポイント
Claims (6)
- 繊維径が10〜30μmの導電性単繊維と天然繊維及び/又は合成繊維との繊維束からなる導電性の起毛糸であって、前記導電性単繊維の割合が、一繊維束の太さに対して10〜40%である起毛糸が、繊維径が10〜30μmの導電性単繊維と天然繊維及び/又は合成繊維との繊維束からなる導電性の基布糸であって、前記導電性単繊維の割合が一繊維束の太さに対して10〜20%である基布糸を編んだ基布に、固定され直毛線に起毛してなる導電性除電シートであって、前記基布糸の前記導電性単繊維の含有量が、前記起毛糸の前記導電性単繊維の含有量に比較して少なくしたことを特徴とする導電性除電シート。
- 前記導電性単繊維が、銅、ステンレス、アルミニウム又は炭素繊維の一種又は二種以上である請求項1に記載の導電性除電シート。
- 前記起毛糸の前記導電性単繊維の割合が一繊維束の太さに対して10〜30%であり、前記基布糸の前記導電性単繊維の割合が一繊維束の太さに対して10〜15%である請求項1又は2に記載の導電性除電シート。
- 前記起毛糸に含有される前記導電性単繊維の先端の形状が針状である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の導電性除電シート。
- 前記固定が、起毛糸を基布とともに編みこみによるものである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の導電性除電シート。
- 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の導電性除電シートを用いてなる服飾品。
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