JP4037084B2 - 中空品成形法によって組立てるためのブロワファン分割体 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、中空品成形法と称される工程によって、合成樹脂製のブロワファンを形成するための分割体であって、より詳細には、円形基板部と、中心に空気取入口が形成されたドーナツ状の蓋部と、の間に、放射状の送風通路Pが形成された合成樹脂製ブロワファンを、前記中空品成形法によって形成するための分割体に関する。
【従来技術】
従来から、例えば、パワーブロワや薬剤散布機などの作業機において、気流を生成するための送風機が使用されている。該送風機は、例えば、空冷式2サイクル内燃機関によって回転駆動されるブロワファンを有する。該ブロワファンはいずれも、ほぼ同様な構造を有し、円形基板部と、中心に空気取入口が形成されたドーナツ状の蓋部と、の間に放射状に延びる羽根部によって、互いに隣接する前記羽根部の間に放射状の送風通路が形成されている。
従来の典型的なブロワファンの前記蓋部は、前記羽根部の一部分の壁厚を厚く形成されたボスに対して、ビス止めやリベット止めで固定されている。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
前記ブロワファンの送風性能は、前記羽根部で形成される送風通路の形状によって大きく左右される。従来のやり方では、前記羽根部に前記ボスを形成しなければならならず、設計上、著しい制約となる。また、ビス止め等の二次工程が必要であり、製造に手間と時間を要する。
ところで、従来から、例えば、「日経メディカル」(2000年5月号第122頁乃至第127頁)、特公平2−38377号公報、および、特開平11−138584号公報に記載されているような中空品成形法が知られている。前記文献に記載されている中空品成形法について簡単に説明すると、まず、互いに接合すべき二つの分割体を、溶融合成樹脂で金型を用いて一次成形する。引き続き、前記分割体を離型させずにそのまま前記金型を移動させて、前記分割体を互いに突き合わせ、前記分割体がまだ熱い状態で、前記分割体の突合わせ周縁部に形成された空間に溶融合成樹脂を射出充填して二次成形する。これによって、前記分割体の前記突合わせ周縁部が、前記溶融合成樹脂の熱で溶けることによって、また、前記溶融合成樹脂自体によって、互いに一体的に溶着される。なお、本明細書において、「中空品成形法」の用語は、上記の方法を意味するものとする。
【0003】
該中空品成形法には、例えば、成形において使用する金型の運動方向によって、DSI(Die Slide Injection)とDRI(Die Rotating Injection)の、二つの方法がある。DSIは、一次成形品を成形した後に、該一次成形品をキャビティ内に残したまま金型を開き、前記一次成形品金型をスライド(直線運動)させて、二つの分割体を互いに突き合わせ、前記二次成形工程によって互いに溶着する。また、DRIは、二つの分割体をキャビティ内に残した状態で金型を回転させ、二つの分割体を互いに突き合わせ、接合面の間に形成された空間に前記溶融合成樹脂を射出注入し、互いに溶着する。本明細書において、「中空品成形法」の用語は、このような金型の運動方向にかかわらず、前記の方法を意味するものとする。
本発明は、ブロワファンの組立てを、前記中空品成形法によって行うことを可能とするブロワファン分割体を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、円形基板部および中心に空気取入口が形成されたドーナツ状の蓋部の間に放射状に延びる羽根部によって、互いに隣接する前記羽根部の間に放射状の送風通路が形成された合成樹脂製ブロワファンを、中空品成形法によって組立てるためのブロワファン分割体であって、前記円形基板部と前記羽根部とを有する第一分割体と、前記蓋部を構成する第二分割体と、を有し、該第二分割体には、組立状態において前記第一分割体と対向する面に、前記羽根部の縁部に沿って放射状に延びる溝部が形成されており、該溝部は、前記縁部によって閉じられて溶融合成樹脂を流すための流路が画成され、更に、前記第二分割体には、注入すべき溶融合成樹脂の流れ方向に対して、前記流路の上流端部に連通する、溶融合成樹脂を注入するための注入口と、前記流路の下流端部に連通するガス抜き用孔が設けられている、ことを特徴とする分割体によって達成することができる。
【0005】
本発明にかかる前記分割体は、以下のようにして成形され、また、接合される。まず、金型によって、前記第一分割体と前記第二分割体を溶融合成樹脂によって一次成形する。引き続き、前記第一分割体および前記第二分割体を前記金型の中に残した状態で、前記金型を移動させ、前記第二分割体の前記羽根部と前記第一分割体の前記溝部とを対向整列させ、互いに当接させる。これによって、前記溝部が前記羽根部によって閉じられ、前記溶融合成樹脂の流路が中に画成される。なお、この状態において、前記流路下流端部のガス抜き用孔は、前記金型に形成された大気に開放するガス抜き用孔と連通している。
この状態で溶融合成樹脂を、前記注入口から充填する。前記溶融合成樹脂は、前記流路の中を下流側に向かって流れる。前記流路内の空気は、前記溶融合成樹脂に押し出され前記両ガス抜き用孔を介して大気側へ押し出される。前記溶融合成樹脂は、前記流路内で、前記溝部の内壁面、および、前記羽根部の前記縁部の壁面に接触し、前記溶融合成樹脂の熱によって、これらの壁面が溶ける。前記両分割体の合成樹脂が溶ける際に発生したガスも、前記ガス抜き用孔から大気に放出される。前記流路を完全に充填することができる量の前記溶融合成樹脂を注入して、射出注入を終える。引き続き、前記ブロワファンを前記金型から外す。作業者は、更に、前記ガス抜き用孔から前記溶融樹脂が、少なくとも僅かに流出しているかを確認し、前記流路全体が前記溶融樹脂で充填されたか否かの目視確認を行ってもよい。
【0006】
本発明にかかる分割体によれば、射出成形工程によって、前記ブロワファンを一体形成することができ、製造工程が簡素化される。また、前記中空品成形法によって、前記羽根部の前記縁部を前記第一分割体に対して溶着接合するので、従来の構造のように、前記羽根部近傍に、ドーナツ状蓋部取り付け用のボス部などを設ける必要がなく、前記送風通路の設計上の制約が著しく少なくなり、前記ブロワファンの性能の観点から、ブロワファンの構造を自由に設計することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明にかかる中空品成形法によって組立てるためのブロワファン分割体の実施の形態について説明する。
本実施形態にかかるブロワファン分割体3,4は、例えば、除草剤や肥料等を散布するための薬剤散布機や、枯れ葉等を吹き飛ばすためのパワーブロワ等に設けられた送風機に使用するブロワファン2を成形するのに使用される。該ブロワファン2は、一般的に、円形基板部6および中心に空気取入口5が形成されたドーナツ状の蓋部の間に放射状に延びる羽根部8によって、互いに隣接する前記羽根部8の間に、放射状の送風通路Pが形成されている。
【0008】
図1は、ブロワファンを構成する、本一実施の形態にかかる第一分割体の正面図であり、また、図2は、第一分割体の断面図である。
図1および図2を参照して、本実施形態にかかる第一分割体3の構成を説明する。該第一分割体3は、組立て状態において、前記ブロワファン2を回転駆動する駆動部(図示せず)側に配置される円形基板部6と、複数の羽根部8とを有する。前記円形基板部6と前記羽根部8とは、合成樹脂によって互いに一体的に成形されている。前記円形基板部6の中心には、前記駆動部のシャフトを挿通するためのハブ部10が、また、該ハブ部10の周りには、ビスによって送風機本体に対して取付けるための取付け孔12が形成されている。図1を見て分かるように、前記羽根部8は、前記円形基板部6の上面6aに放射状に延びており、前記羽根部8のそれぞれは、実質的に均一な厚さtを有している。
【0009】
図2は、図1に示すII−II線に沿った、第一分割体の断面図である。
図2を見て分かるように、前記円形基板部6の前記上面6aは、前記ハブ部10から半径方向外方に向かって斜め下方に傾斜している。また、前記羽根部8は、半径方向内側部分に前記ハブ部10に隣接して設けられた、高さの低い気流偏向部分8aと、該気流偏向部分8aの半径方向外方に一体的に連設された、高さの高い通路形成部分8bとを有する。後に詳述するように、蓋部を構成する第二分割体4が取付けられた状態において、前記気流偏向部分8aは、前記第二分割体4の中心に設けられた空気取入口5から流入した空気の向きを半径方向外方に差し向ける。また、前記第二分割体4と前記羽根部8の前記通路形成部分8bとによって、放射状に延びる送風通路Pが形成される。ドーナツ状の前記第二分割体4の幅Wは、前記羽根部8の前記通路形成部分8bの長さ寸法と等しく、組立て状態において、前記通路形成部分8bの全体を覆って、前記送風通路Pを形成する。
【0010】
該送風通路Pは、気流の速度を速くするため、半径方向外側部分の出口面積が、前記空気取入口5の近傍の入口面積よりも小さくなければならない。図1を見て分かるように、前記通路形成部分8bは、前記円形基板部6の半径方向外方に向けて放射状に延びており、互いに隣接する前記通路形成部分8bの間の距離は、半径方向内側における距離d1よりも、半径方向外側における距離d2の方が広くなっている。図2に示すように、前記羽根部8の前記通路形成部分8bの上縁は、半径方向外方に向かって、前記円形基板部6の前記上面6aの前記傾斜角度より大きい角度で傾斜し、高さがh1からh2に低くなっている。これによって、前記第二分割体4を組立てた状態において、前記出口面積が前記入口面積よりも小さくなる。
【0011】
図3は、第二分割体の正面図であり、また、図4は、第二分割体の背面図である。更に、図5は、図4に示す背面図の部分拡大図である。
図1に示す前記第一分割体3の上に、図3および図4に示す、前記蓋部を構成する第二分割体4が取付けられる。該第二分割体4は、前記第一分割体3と等しい外径Dを有しており、中心に前記空気取入口5が形成されており、全体的にドーナツ形状をなしている。前記第二分割体4は、前記第一分割体3と同じ合成樹脂によって成形されている。
【0012】
図4を見て分かるように、前記第二分割体4の背面、すなわち、組立て状態において前記第一分割体3と対向する内面4aには、前記羽根部8の前記通路形成部8bの縁部8eに沿って放射状延びる溝部14が形成されている。前記溝部14の拡大図である図5を参照すると、前記溝部14の半径方向内方の一端部には、後に詳述するが、前記第一分割体3と前記第二分割体4とを一体的に連結するため、溶融合成樹脂を注入するための円形の注入口16が形成されている。なお、前記溶融合成樹脂は、前記第一分割体3と前記第二分割体4の素材と同じ合成樹脂である。また、前記溝部14の半径方向外方の他端部には、前記溝部14の中に注入された前記溶融合成樹脂が、前記第一分割体3と前記第二分割体4とに一体的に溶着したかを確認するための、溶着状態確認用窓18が形成されている。すなわち、前記溶融合成樹脂の温度が十分高ければ、該溶融合成樹脂によって、前記羽根部8の前記縁部8eと前記溝部14とで溶融合成樹脂の流路Fを画成している、前記第一分割体3と前記第二分割体4の壁面が溶け、前記第一分割体3と前記第二分割体4とが互いに確りと溶着される。前記溶着状態確認用窓18にも前記溶融合成樹脂が充填され一体的に溶着されていれば、前記流路F内も一体的に溶着されたことを、外見で推認することができる。より正確に目視確認できるように、前記溶着状態確認用窓18は、前記流路Fの長手方向に沿って細長い楕円形に形成されている。また、該溶着状態確認用窓18の半径方向下流端部は、後に詳述するように、図示しない成形用金型に形成されたガス抜き用孔20に連通するガス抜き用孔としても使用される。図3を見て分かるように、前記注入口16および前記溶着状態確認用窓18は、前記第二分割体4の表面4dまで貫通している。
【0013】
図5を参照すると、前記第二分割体4の、前記第一分割体3と対向する前記内面4aには、組立状態において前記羽根部8の前記縁部8fを切れ目なく取囲む長楕円形の堰部22が、前記内面4aから突出して形成されている。図2を再び参照して分かるように、前記羽根部8の前記縁部8fの両端角部には、それぞれ、切欠き8cが形成されており、該二つの切欠き8cの間に、前記堰部22の中に挿入される挿入部8dが形成されている。後述するように、前記流路Fの中に前記溶融合成樹脂を射出注入するとき、注入圧によって洩れが生じないように、前記挿入部8dは前記堰部22の中に緊密に受け入れられる。すなわち、前記堰部22の内側形状は、前記挿入部8dと実質的に相補的な形状となっており、互いに嵌合する。前記溝部14の幅w1および長さ寸法L1は、前記羽根部8の前記通路形成部分8bの厚さtおよび長さ寸法L2より、それぞれ、若干小さくなっており、図5に示すように、前記堰部22の内側には、該堰部22と前記溝部14との間に、前記縁部8fの前記切欠き8cと係合して、ストッパとして作用する段部24が形成されている。
なお、図3に示す如く、前記第二分割体4の表面4d側には、成形性を高めるとともに、重量軽減用の肉盗み部22aが、前記堰部22に対応せしめて、配設されている。
【0014】
図6は、第一分割体3と第二分割体4とを組立てた状態における、直径方向における断面図であり、また、図7は、図6に示すVII-VII線に沿った横断面図である。
図6および図7を見て分かるように、前記挿入部8dを前記堰部22の中に挿入すると、前記縁部8fの上端面8eが前記段部24に当接し、前記溝部14が前記縁部8fの前記上端面8eによって閉じられて、中に前記溶融合成樹脂を流すための前記流路Fが画成される。前記溶融合成樹脂は、前記第二分割体4に形成された前記注入口16から注入され、離型後に、前記溶着状態確認用窓18によって、合成樹脂の充填が視認されたら、前記流路F全体が前記溶融合成樹脂で満たされたことになり、冷却したとき、前記第一分割体3と前記第二分割体4とが互いに一体的に溶着接合される。
【0015】
このように、前記溝部14の中に注入した前記溶融合成樹脂によって、前記第一分割体3と前記第二分割体4とを互いに一体的に溶着接合するので、最大限の構造上の強度を得るため、前記溝部14は、前記羽根部8の前記通路形成部8bの前記縁部8fに沿って、できるだけ長い寸法にわたって設けられていることが望ましい。すなわち、前記堰部22を、前記第二分割体4の実質的に外側縁部4bから内側縁部4cまで、前記第二分割体4の実質的に幅Wの全体にわたって設け、その内側に前記段部24を残して、前記溝部14を長手方向に実質的に全体にわたって設けるのが望ましい。また、前記羽根部8の前記挿入部8dは、前記堰部22の内側長さ寸法と同じ長さを有するように、前記切欠き8cが設けられて形成される。また、前記挿入部8dの上縁角部は、僅かに湾曲しており、したがって、前記挿入部8dが前記堰部22の中に挿入され前記段部24と当接した状態において、前記挿入部8dと前記段部24および前記堰部22との壁面との間に微小隙間が形成されるようになっている。
【0016】
本実施形態にかかるブロワファン2の分割体は、以下のようにして形成され、更に、組立てられてブロワファン2が形成される。
本実施形態にかかるブロワファン分割体は、前記DSIによって成形される。成形用金型は、図示しないが、固定型と、可動型と、前記固定型と前記可動型との間に挟まれて配置されたスライド型と、を有する。該スライド型は、前記固定型の面に密着した状態を保ちながら、シリンダによって下方位置と上方位置との間でスライド可能に設けられている。また、前記可動型は、開閉装置によって前後移動可能に設けられている。前記可動型と前記スライド型の対向面には、前記可動型の上部の面に前記第一分割体3の雌型が、一方、前記スライド型の上部の面には第一分割体3の雄型が形成され、また、前記可動型の下部の面に前記第二分割体4の雄型が、一方、前記スライド型の下部の面には前記第二分割体4の雌型が形成されている。
【0017】
前記下方位置において前記スライド型を前記可動型と合わせ、前記第一分割体3および前記第二分割体4を一次成形する。引き続き、前記可動型を前記スライド型から遠ざかる後方向に移動させ、前記第一分割体3および前記第二分割体4を型内に残したまま、前記スライド型を前記シリンダによって前記上方位置に移動させて、前記第二分割体4を前記第一分割体3と整列させる。次に、前記可動型を前記スライド型に向かって前方向に移動させ、前記第一分割体3と前記第二分割体4とを当接させる。それによって、前記羽根部8の前記縁部8fが前記堰部22の中に挿入され、前記縁部8fの前記上端面8eが前記段部24に当接して、前記溝部14が閉じられ、前記溶融合成樹脂流路Fが中に画成される。なお、この状態において、前記溶着状態確認用窓18は、前記流路Fの中を流れる前記溶融合成樹脂の流れ方向に対して最も下流部分を残して、前記金型で覆われている。すなわち、前記金型のキャビティには、前記第二分割体4のドーナツ状の形状が形成されており、前記溶着状態確認用窓18の最も下流部分に対応する位置に、大気に開放した金型ガス抜き用孔となる通気孔20が形成され、前記溶着状態確認用窓18の前記下流端部が、前記通気孔20と連通するガス抜き用孔として作用する。
【0018】
かかる状態において、前記流路Fに連通する前記注入口16の中に、射出機によってゲートを介して、前記第一分割体3および前記第二分割体4を形成している合成樹脂と同じ溶融合成樹脂を射出注入する。前記流路Fが、前記溶融合成樹脂によって前記注入口16が設けられた上流側から充填される。前記溶融合成樹脂は、前記流路Fの中を下流側に向かって前記溶着状態確認用窓18の設けられた下流端まで流れる。この際、前記溶融合成樹脂は、前記羽根部8の湾曲した前記縁部8fの面と、前記段部24および前記堰部22との間に形成された前記微小隙間にも流入する。前記流路F内の空気は、前記溶融合成樹脂によって前記ガス抜き用通気孔20を介して大気へ押し出される。前記溶融合成樹脂は、前記流路Fを画成する壁面と接触し、その熱によって、これらの壁面が溶ける。合成樹脂が溶ける際に発生したガスも、前記ガス抜き用通気孔20から大気に放出される。
前記流路Fを完全に充填することができる所定量の前記溶融合成樹脂、すなわち、前記流路Fの全体および、前記溶着状態確認用窓18を充填し、更に、前記ガス抜き用通気孔20から僅かに流出する量の前記溶融合成樹脂を注入して、前記射出注入を終える。
【0019】
引き続き、一体化された前記ブロワファン2を前記金型から外す。作業者は、前記第一分割体3と前記第二分割体4とが、互いに確りと溶着されたか否かの目視確認を行う。目視によって、以下の二点を確認する。
第一点として、前記溶着状態確認用窓18が前記溶融樹脂で満たされ、かつ、前記溶着状態確認用窓18の周壁部と一体的に溶着されて、前記溶着状態確認用窓18が前記第二分割体4の前記表面14dと一体的な平面を形成しているか否かを確認する。良好に溶着されていれば、前記溶融合成樹脂は、前記第二分割体4の前記表面4dと一体的に融合して、前記溶着状態確認用窓18はほとんど見えない。もしも、何らかの理由で、前記第一分割体3と前記第二分割体4の一部を適度に溶かすことができない低温度の前記溶融合成樹脂が注入されてしまった場合には、前記溶着状態確認用窓18の中に流入した前記溶融合成樹脂は、前記溶着状態確認用窓18の周壁面と一体化せず、前記溶着状態確認用窓18の縁部を、はっきりと目視することができる。
【0020】
また、第二点として、前記金型ガス抜き用通気孔20へ前記溶融合成樹脂が、僅かにでも流出しているかを確認する。前記ガス抜き用通気孔20は、前記流路Fの最も下流側に位置しているので、僅かでも前記合成樹脂が流出している場合には、前記流路Fの全体が、前記溶融合成樹脂で充填されていることになる。前記溶融合成樹脂の注入量は、前記流路Fの全体を充填するに充分な量であるように予め制御されている。しかし、何らかの理由で、前記溶融合成樹脂の注入量が充分でなく、前記ガス抜き用通気孔20への前記溶融合成樹脂の流出が確認できない場合には、前記流路Fの一部だけしか充填されていない可能性が高く、前記羽根部8の接合不良により、必要な構造上の強度を得られない。
前記検査において不合格である前記ブロワファン2は排除する。
【0021】
本実施形態においては、組立状態において前記羽根部8の前記縁部8fを取囲む堰部22が形成されているので、前記溶融合成樹脂が、注入圧によって前記流路Fの外に漏れ出るのが防止される。また、前記羽根部8の前記縁部8fを前記堰部22に挿入することによって、前記第二分割体4を前記第一分割体3に対して容易に位置決めすることができる。
また、本実施形態においては、前記堰部22の内側に形成された前記段部24が、前記羽根部8の前記縁部8fを挿入する際のストッパの役割を果し、これによって、所定の深さを有する前記流路Fが確保される。また、該流路F内に注入された前記溶融合成樹脂が、前記堰部22の内側で、前記縁部8fと前記段部24との間の前記微小隙間にも流入するので、固化したときの接合強度を一層増すことができる。また、前記堰部22によって前記溶融合成樹脂の洩れが防止され、また、前記微小隙間にも前記溶融樹脂が流入し、充填されるので、前記羽根部8の前記挿入部8dの形状の成形寸法精度は、さほど高くなくてもよく、コスト面で有利となる。
【0022】
更に、本実施形態においては、前記堰部22は、ドーナツ状の前記第二分割体4の半径方向における幅Wの全体にわたって延びており、前記溝部14は、前記堰部22内の実質的に全体に延びているので、前記羽根部8の前記縁部8fと前記溶融合成樹脂との接触面積を増やすことができ、それによって溶着強度を一層増すことができる。
更に、本実施形態によれば、前記羽根部8は、前記ドーナツ状の前記第二分割体4の半径方向における幅Wの全体に延びており、前記羽根部8の前記縁部8fの両端に前記切欠き8cが形成されて、前記堰部22の中に挿入される幅狭部が形成されている。しがたって、前記羽根部8の長さを最大限とすることができ、前記ブロワファン2の能力を最大化することができる。
更に、本実施形態によれば、前記溶着状態確認用窓18が設けられているので、良好に溶着されているかどうかの目視確認をすることができる。また、前記溶着状態確認用窓18は、前記溝部14の長手方向に長い長孔であるので、目視確認が一層容易となる。
【0023】
更に、本実施形態においては、前記羽根部8は、前記回転駆動部側によって駆動される前記円形基板部6と一体的に成形されているので、前記回転駆動部によって与えられる力に対する必要強度を確保することができる。一方、大きな外力の加わらない前記蓋部と、前記羽根部8との間を溶着するようにしているので、前記ブロワファン2の全体としての必要な強度を得ることができる。
更に、本実施形態においては、前記第二分割体4側にガス抜き用通気孔を別途形成することなく、前記溶着状態確認用窓18の下流端部を利用してガス抜き用孔としても利用しているので、前記第二分割体4の成形金型を簡素化できる。
【0024】
図8および図9は、図1乃至図7に示す前記実施形態の変形例を示し、そのうち、図8は、図7と同様な横断面図であり、また、図9は、図1に示す第一分割体の一部を示す部分拡大図である。
図8および図9を参照しつつ、前記実施形態の変形例について説明する。前記実施形態と異なる部分について説明し、同様な部分については前記実施形態と同じ符号で示し、説明は省略する。
【0025】
図8および図9に示す変形例においては、前記羽根部8の前記縁部8fの前記第二分割体4と対向する前記上端面8e、または、前記堰部22の中に挿入される挿入部8dの前記上端面8eには、前記羽根部8の長手方向に延び、且つ、前記流路Fの中に突出する突条8gが設けられている点で、図1乃至図7に示す実施形態と異なる。図9に示すように、前記凸条8gは、前記上端面8eの実質的に長手方向全体にわたって延びている。また、図8を見て分かるように、前記変形例においては、前記上端面8eの実質的に長手方向全体にわたって延びる二つの前記凸条8g、8gが設けられている。
本変形例に示すブロワファン2の形成は、図1乃至図7に示す前記実施形態と同様にして行う。
前記凸条8gは、前記流路F内における露出面積を増大る。すなわち、前記流路F内に注入された前記溶融合成樹脂と接触する面積が増大し、前記合成樹脂が硬化した際、該合成樹脂と、前記第二分割体4と前記第一分割体3の前記羽根部8の前記上端面8eとの結合強度が増大する。
【0026】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
本実施形態においては、前記溶融合成樹脂は、前記第一分割体3および前記第二分割体4を形成しているものと同じ合成樹脂を使用しているが、これらは同種類である必要はなく、前記第一分割体3および前記第二分割体4を形成している合成樹脂と、互いに確りと溶着される合成樹脂であれば、いかなる種類のものであってもよい。
また、本実施形態においては、前記溝部14の周りに前記堰部22が設けられており、前記溶融合成樹脂の洩れを防止する点で、また、前記第二分割体4を前記第一分割体3に対して容易に位置決めすることができる点で好ましいが、前記堰部22は必須ではなく、前記羽根部8の前記縁部8fによって前記溝部14が密封され、それによって前記流路Fが形成されれば、特に設けられていなくてもよい。例えば、前記羽根部8の前記縁部8fの前記上端面8eに、前記溝部14内に嵌合し、かつ、前記溝部14の深さよりも高さの低い凸条部が形成され、該凸条部を前記流路Fの中に嵌合させて、前記溝部14を閉じ、前記流路Fを形成するようにしてもよい。
【0027】
更に、本実施形態においては、前記溶着状態確認用窓18の一部をガス抜き用通気孔として利用しているが、該ガス抜き用通気孔は、前記溶着状態確認用窓18と独立して設けられていてもよい。この場合、前記ガス抜き用通気孔は、前記流路Fの下流端に連通して設けられていることが必要であるが、前記溶着状態確認用窓18は、前記流路Fに沿ったいかなる位置に設けられていてもよい。
更に、本実施形態における前記注入口16と前記ガス抜き用通気孔側の位置は逆であってもよい。すなわち、前記注入口16が前記第二分割体4の半径方向外方位置に、一方、前記ガス抜き用通気孔側が半径方向内方位置に位置していてもよい。
【0028】
更に、本実施形態においては、前記溶着状態確認用窓18が設けられていて、溶着状態の確認をする上で好ましいが、該溶着状態確認用窓18は必須ではない。この場合、前記金型ガス抜き用通気孔20が、前記流路Fの下流端に設けられていればよい。
更に、前記変形例における前記凸条8gは、前記流路F内への露出面積が増大する、いかなる横断面形状および長手方向寸法を有していてもよく、一本あるいは三本以上の前記凸状8gが設けられていても良く、また、前記上端面8eの長手方向全体にわたって延びている必要はない。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、ブロワファンの組立てを中空品成形法によって行うことを可能にするブロワファン分割体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ブロワファンを構成する、本実施の形態形態にかかる第一分割体の正面図である。
【図2】図1に示すII−II線に沿った、第一分割体の断面図である。
【図3】第二分割体の正面図である。
【図4】第二分割体の背面図である。
【図5】図4に示す背面図のV−V部分拡大図である。
【図6】第一分割体と第二分割体とを組立てた状態における、直径方向における断面図である。
【図7】図6に示すVII-VII線に沿った横断面図である。
【図8】図1乃至図7に示す前記実施形態の変形例を示す、図7と同様な横断面図である。
【図9】図1乃至図7に示す前記実施形態の変形例を示し、図1に示す第一分割体の一部を示す部分拡大図である。
【符号の説明】
2 ブロワファン
3 ブロワファン第一分割体
4 ブロワファン第二分割体
4a 内面
5 空気取入口
6 円形基板部
8 羽根部
8f 縁部
8g凸条
14 溝部
16 注入口
18 溶着状態確認用窓(ガス抜き用孔)
20 ガス抜き用孔
22 堰部
24 段部
F 流路
P 送風通路
W 第二分割体の幅
Claims (6)
- 円形基板部(6)および中心に空気取入口(5)が形成されたドーナツ状の蓋部の間に放射状に延びる羽根部(8)によって、互いに隣接する前記羽根部(8)の間に放射状の送風通路(P)が形成された合成樹脂製ブロワファン(2)を、中空品成形法によって組立てるためのブロワファン分割体(3,4)であって、
前記円形基板部(6)と前記羽根部(8)とを有する第一分割体(3)と、前記蓋部を構成する第二分割体(4)と、を有し、該第二分割体(4)には、組立状態において前記第一分割体(3)と対向する面に、前記羽根部(8)の縁部(8f)に沿って放射状に延びる溝部(14)が形成されており、該溝部(14)は、前記縁部(8f)によって閉じられて溶融合成樹脂を流すための流路(F)が画成され、更に、前記第二分割体(4)には、注入すべき溶融合成樹脂の流れ方向に対して、前記流路(F)の上流端部に連通する、溶融合成樹脂を注入するための注入口(16)と、前記流路(F)の下流端部に連通するガス抜き用孔(18,20)が設けられている、ことを特徴とするブロワファン分割体。 - 前記第二分割体(4)の前記第一分割体(3)と対向する内面(4a)には、組立状態において前記羽根部(8)の前記縁部(8f)を取囲む、前記内面(4a)から突出した堰部(22)が形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のブロワファン分割体。
- 前記堰部(22)の内側には、前記堰部(22)と前記溝部(14)との間に、前記縁部(8f)の一部分と係合する段部(24)が形成されている、ことを特徴とする請求項2に記載のブロワファン分割体。
- 前記堰部(22)は、ドーナツ状の前記第二分割体(4)の半径方向における幅(W)の全体に延びており、前記溝部(14)は、前記堰部(22)内の実質的に全体にわたって延びている、ことを特徴とする請求項3に記載のブロワファン分割体。
- 前記第二分割体(4)には、前記第一分割体(3)との組立て状態において前記流路(F)に連通する、溶融合成樹脂が前記溝部(14)の下流端部まで注入されたことを目視確認するための溶着状態確認用窓(18)が形成されている、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のブロワファン分割体。
- 前記縁部(8f)の前記第二分割体(4)と対向する上端面(8e)には、前記羽根部(8)の長手方向に延び、且つ、前記流路(F)の中に突出する突条(8g)が設けられている、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のブロワファン分割体。
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