JP3834399B2 - 換気扇及び換気扇用ファンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は換気扇用および換気扇用ファンの製造方法に関する。さらに詳しくは、換気扇用ファンの構造を改善し奥行き寸法を薄くした換気扇とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図6及び図7は、従来の換気扇の構造を説明するための図である。図6は排気型の換気扇の側面図、図7は給気型の換気扇の側面図である。
図6において、排気型の換気扇10は、内部から外部に気流を生じさせる例えばプラスチックなどの樹脂製のファン20と、このファン20のボス部20bの中央の孔20eに軸30aが挿入され、軸30aの端部がナット33により螺合されたファンモータ30と、このファンモータ30のフランジ30fを固定させる基台35とファン20の外周面を被うカバー40とを備えている。
【0003】
ファン20は、羽根部20aと、円筒状のボス部20bとからなり、このボス部20bには、中央に穿設された孔20eと、凹状の溝20cとを有し、この凹状の溝20cにファンモータ30のケース30bの前方端部が遊挿されている。
【0004】
一方、図7において、外部から内部に風を吸い込む給気型の換気扇50の場合は、排気型の換気扇10と同一のファン20等の部品を用い、ファン20のみがファンモータ30に対して排気型の換気扇10と反対に付けられており、ファンモータ30のケース30bの前方端とファン20のボス部20bとが対向している。
【0005】
次に、上記換気扇の製造方法を図6及び図7によって説明する。予め、ファン20の金型を製作し、この金型に射出成形機により溶融した樹脂を流し込み、金型を開放してファン20を成形する。このファン20を排気型の換気扇10の場合には、図6に示すようにファンモータ30の前方端部のケース30bをファン20の凹状の溝20cに遊挿し、ファンモータ30の軸30aをファン20の孔20eに挿入し、軸30aの端部をナット33に螺合して組立られる。
【0006】
一方、給気型の換気扇50の場合は、同様にして製造したファン20を図7に示すように排気型とはファン20のみがファンモータ30に対して反対に付けてファンモータ30のケース30bの前方端とファン20のボス部20bとが対向し、ファンモータ30の軸30aをファン20の孔20eに挿入し、軸30aの端部をナット33に螺合して組立られる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように構成された給気型の換気扇50は、ファンモータ30のケース30bの前方端部とファン20のボス部20bとがオーバハングできないため、換気扇50の奥行が厚くなり大型化するという問題点があった。
【0008】
また、単に排気型、給気型の換気扇10,50それぞれ専用のファンを用いることも考えられるが、射出成形機の金型に排気型、給気型それぞれ専用のものを用いなければならず、煩雑でコストが高くなるという問題点があった。
【0009】
一方、全く同一の金属製のファンで、強度があるためボス部を薄くして排気型と給気型の換気扇を兼用して、上記オーバハングがなくても換気扇の奥行が薄くできるものがあった。しかし、金属製のファンでは、軽量化および低コスト化が困難であるという問題点があった。
【0010】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、排気型・給気型のいずれでも、奥行きを薄くした換気扇を提供することを目的とする。また、奥行きの薄い換気扇を実現するために、同一の金型の射出成型機で排気用・給気用のファンを製造できるようにした換気扇用ファンの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明の換気扇は、 排気型の第1のファンと給気型の第2のファンとをファンモータに対して交換して結合できる換気扇であって、
上記第1のファンと上記第2のファンとは、それぞれボス部とこのボス部と一体化された羽根部とからなり、上記ボス部の外側形状ならびに上記羽根部の翼座標が互いに実質的に同一であって、かつ
上記第1のファンのボス部には風下側に上記ファンモータに対向する凹状の溝が形成され、上記第2のファンのボス部には風上側に上記ファンモータに対向する凹状の溝が形成されていることを特徴とするものである。
また、この発明の換気扇は、上記第1のファンの溝が上記第2のファンの溝より深く形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、この発明の換気扇は、上記第1又は第2のファンの上記凹状の溝に上記ファンモーターのケース部が遊挿され、上記第1又は第2のファンの中心が上記ファンモーターの軸に対して固定されるようにしたことを特徴とするものである。
【0013】
また、この発明の換気扇は、上記第1又は第2のファンが樹脂により一体成形されていることを特徴とするものである。
【0014】
次に、この発明の換気扇ファンの製造方法は、
雄型と雌型とから成る金型を用い、ボス部とこのボス部に一体化された羽根部とからなるファンを樹脂の射出成形により成形する換気扇用ファンの製造方法において、
上記雄型または雌型に上記ボス部の風下側に凹状の溝を形成するための第1の挿入部材を挿入して射出成形することにより第1のファンを成形し、
上記雄型または上記雌型に上記ボス部の風上側に凹状の溝を形成するための第2の挿入部材を挿入して射出成形することにより第2のファンを成形することを特徴とするものである。
【0015】
また、この発明の換気扇ファンの製造方法は、上記第1のファンを成形する金型と、上記第2のファンを成形する金型とを共通に用いることを特徴とするものである。
【0017】
また、この発明の換気扇ファンの製造方法は、上記ボス部に形成される上記凹状の溝を、上記第1又は上記第2のファンが結合されるファンモーターのケース部が遊挿されるように形成することを特徴とするものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。なお、図中、同一の符号は同一又は相当の部分をしめす。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による排気型のファン、図2は図1のファンを用いた排気型の換気扇の側面図、図3はこの発明の実施の形態1による給気型のファン、図4は図3のファンを用いた給気型の換気扇の側面図である。図1〜図4に基づいてこの発明の実施の形態1について説明する。
【0019】
図1において、プラスチックなどによる樹脂製の第1のファン100は、羽根部100aと、円筒状のボス部100bとからなる。このボス部100bには、中央に孔100eが穿設され、その一側に、すなわち風下側に、凹状の溝100cが形成されている。
【0020】
図2において、排気型の換気扇200は、内部から外部に気流を生じさせる第1のファン100と、このファン100に結合されてファン100を回転させるファンモータ30と、このファンモータ30を固定させる基台35と、ファン100の外周面を被うカバー40とを備えている。
【0021】
ファンモータ30は、フランジ30fを介して基台35に固定されている。
また、ファンモータの軸30aが、ボス部100bの中央の孔100eに挿入され、軸30aの端部がナット33により螺合され、軸30aとファン100とが固定されている。
また、ファンモータ30のケース30bの前方端部は、ボス部100bの凹状の溝100cに遊挿されている。
【0022】
一方、図3において、プラスチックなどによる樹脂製の第2のファン150は、羽根部150aと、円筒状のボス部150bとからなる。このボス部150bには、中央に孔150eが穿設され、その一側に、すなわち風上側に、凹状の溝150cが形成されている。
【0023】
また、図4において、外部から内部に風を吸い込む給気型の換気扇300は、排気型の換気扇200とファン150の形状が異なるが、他は図2と同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0024】
ここで、図1の排気用ファン100と図3の給気用ファン150とを比較する。それぞれの羽根部100a,150aを基準として考えると、先ず羽根部100a,150aの形状は同一である。つぎに、排気用ファン100では凹状の溝100cが風下側にあり、給気用ファン150では凹状の溝150cが風上側にある点が相違するが、ボス部100b,150bの外側形状は同一で対称的である。また、排気用ファン100では凹状の溝100cが相対的に深く形成され、給気用ファン150では凹状の溝150cが相対的にやや浅く形成されている。
【0025】
このことを言い換えると、図1の排気用ファン100と図3の給気用ファン150とは、羽根部100a,150aの翼座標、ならびに、ボス部100b,150bの長さ,外形は同一であるが、凹状の溝100c,150cの形状が異なっている。
【0026】
次に、図2の排気用換気扇200と図4の給気用換気扇300とを比較すると、ファンモータ30のケース30bの前方端部とファン100,150のボス部100b,150bとのオーバハング量が、図3の排気用換気扇200の方がやや大きく、両方のオーバハング量は異なっている。この違いは、羽根部150aと基台35との距離を確保する必要にもとづくものである。
【0027】
以上説明したこの実施の形態の換気扇用ファンを用いた排気用及び給気用換気扇によれば、ファンのボス部の凹状の溝とファンモータのケース部とがオーバハングするように形成されている。すなわち、ファンの凹状の溝にファンモーターのケース部が遊挿されるように形成されている。したがって、排気用・給気用いずれの場合においても、奥行寸法を薄くした換気扇を得ることができる。
また、ファンモータの軸に、排気型の第1のファンと、給気型の第2のファンとを交換して取り付けできることができるので、換気扇の兼用あるいは転用を容易に行うことができる。
【0028】
実施の形態2.
図5は、この発明の実施の形態2による換気扇用ファンの製造方法を説明するための図である。この実施の形態では、実施の形態1で説明した換気扇用ファンの製造方法について説明する。また、このファンを用いた換気扇の組み立て方法について説明する。
図5を参照して、予め、図1及び図3に示したような製造しようとするファン100,150の羽根部100a,150aの翼座標、ならびにボス部100b,150bの長さ及び外形に対応した雄型401と雌型403とからなる金型405を製作する。また、この雄型401または雌型403に入れるための、ボス部100b,150bの凹状の溝100c,150cに対応する二つの挿入部材としての入れ駒501,503を製作する。
【0029】
まず、排気型のファン100を製造する場合、雄型401または雌型403に入れ駒501を挿入し、金型405を閉じる。プラスチック原料601が貯蔵されている射出成形機600のホッパ602からシリンダー603内に原料が入り、ヒータ605により加熱されると同時に、スクリュー607の回転により生じるせん断発熱で樹脂601を溶融し、ドライブモータ610の駆動によりスクリュー607を前進させ、ノズル612から溶融した樹脂611を金型405に射出する。その後、雄型401と雌型403とを開放して成形された排気型のファン100を取り出す。
【0030】
このファン100を、図2に示すようにファンモータ30の前方端部のケース30bをファン100の凹状の溝100cに遊挿し、ファンモータ30の軸30aをファン100の孔100eに挿入し、軸30aの端部をナット33に螺合して換気扇200が組立られる。
【0031】
次に、給気型のファン150を製造する場合、雄型401または雌型403に入れ駒503を挿入し、金型405を閉じ、上記と同様にして給気型のファン150を製造する。
このファン150を、図4に示すようにファンモータ30の前方端部のケース30bをファン150の凹状の溝150cに遊挿し、ファンモータ30の軸30aをファン150の孔150eに挿入し、軸30aの端部をナット33に螺合して、換気扇300が組立られる。
【0032】
入れ駒501は、排気型のファン100の凹状の溝100cを形成するもので、成形するファン100のボス部100bの風下側の端面に溝100cが開口する位置に挿入する。
また、入れ駒501は、給気型のファン150の凹状の溝150cを形成するもので、成形するファン150のボス部150bの風上側の端面に溝150cが開口するように挿入する。
排気型のファン100の凹状の溝100cの方が、給気型のファン150の凹状の溝150cより深く形成するので、入れ駒501の方が入れ駒503より厚みを大きくしてある。
【0033】
以上説明したように、この実施の形態の製造方法によれば、同一の金型を用いて、この金型に挿入する入れ駒を代えることにより、ボス部の異なる側に凹状の溝が形成されたファンを製造することができる。また、入れ駒の形状を選択することにより、凹部の溝の形状を適宜選択することができる。
また、排気型のファンと給気型のファンとを、共通した金型で射出成形することができる。
また、ボス部の凹部の溝の形状が変わるだけで、ボス部の外側形状および羽根部の形状が同一のファンを成形できるので、給排気の2つのファンの送風能力をほぼ一致させることができる。
【0034】
【発明の効果】
この発明は、以上のように構成されているので、次のような効果を奏する。
本願発明によれば、ファンモータのケース部に対向して凹部あるいは凹状の溝が形成された排気用および給気用のファンを用い、ファンモータへの取り付けを交換できるので、奥行きの薄い排気用および給気用の換気扇を得ることができる効果がある。
また、凹状の溝にファンモーターのケース部が遊挿されるようにして、奥行きの薄い換気扇を得ることができる。
【0035】
また、本願の他の発明によれば、雄型と雌型とから成る金型を共通に用い、ボス部に異なる凹状の溝を形成するために、金型に、異なる形状の挿入部材を挿入して射出成形するだけで、排気型のファンと給気型のファンとを成形することができる。金型を共通に用いることができるので、製法に煩雑さがなく、コスト的にも有利となる。
また、ボス部に凹状の溝を有する排気型のファンと給気型のファンとが得られ、この溝にファンモータのケース部を遊挿するように成形できるので、奥行きの薄い換気扇を組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1による排気型ファンの側面図である。
【図2】 この発明の実施の形態1による排気型換気扇の側面図である。
【図3】 この発明の実施の形態1による給気型ファンの側面図である。
【図4】 この発明の実施の形態1による給気型換気扇の側面図である。
【図5】 この発明の実施の形態2による、換気扇のファンを製造する射出成形機の断面図であ
る。
【図6】 従来の排気型換気扇の側面図である。
【図7】 従来の給気型換気扇の側面図である。
【図面の簡単な説明】
30 ファンモータ、30a 軸、30b ケース部、100 排気型のファン、100a 羽根部、100b ボス部、100c 凹状の溝、100e 孔、150 給気型のファン、150a 羽根部、150b ボス部、150c 凹状の溝、150e 孔、200 排気型換気扇、300 給気型換気扇、401 雄型、403 雌型、405 金型、501 第1の挿入部材(第1の入り駒)、503 第2の挿入部材(第2の入り駒)。
Claims (7)
- 排気型の第1のファンと給気型の第2のファンとをファンモータに対して交換して結合できる換気扇であって、
上記第1のファンと上記第2のファンとは、それぞれボス部とこのボス部と一体化された羽根部とからなり、上記ボス部の外側形状ならびに上記羽根部の翼座標が互いに実質的に同一であって、かつ
上記第1のファンのボス部には風下側に上記ファンモータに対向する凹状の溝が形成され、上記第2のファンのボス部には風上側に上記ファンモータに対向する凹状の溝が形成されていることを特徴とする換気扇。 - 上記第1のファンの溝が上記第2のファンの溝より深く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の換気扇。
- 上記第1又は第2のファンの上記凹状の溝に上記ファンモーターのケース部が遊挿され、上記第1又は第2のファンの中心が上記ファンモーターの軸に対して固定されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の換気扇。
- 上記第1又は第2のファンが樹脂により一体成形されていることを特徴とする請求項1または2に記載の換気扇。
- 雄型と雌型とから成る金型を用い、ボス部とこのボス部に一体化された羽根部とからなるファンを樹脂の射出成形により成形する換気扇用ファンの製造方法において、
上記雄型または雌型に上記ボス部の風下側に凹状の溝を形成するための第1の挿入部材を挿入して射出成形することにより第1のファンを成形し、
上記雄型または上記雌型に上記ボス部の風上側に凹状の溝を形成するための第2の挿入部材を挿入して射出成形することにより第2のファンを成形することを特徴とする換気扇用ファンの製造方法。 - 上記第1のファン成形する金型と、上記第2のファンを成形する金型とを共通に用いることを特徴とする請求項5に記載の換気扇用ファンの製造方法。
- 上記ボス部に形成される上記凹状の溝を、上記第1又は上記第2のファンが結合されるファンモーターのケース部が遊挿されるように形成することを特徴とする請求項5又は6に記載の換気扇用ファンの製造方法。
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