JP4036980B2 - Dmdtbパーオキシヘキサンの製造方法及び組成物 - Google Patents

Dmdtbパーオキシヘキサンの製造方法及び組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は低臭気2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(以下場合によりDMDTBパーオキシヘキサンと言う)、それを用いる高分子化合物用改質剤もしくは改質方法、並びに該低臭気DMDTBパーオキシヘキサンによって改質された高分子化合物の改質体に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機過酸化物を使用したゴムや熱可塑性プラスチック等の高分子化合物の改質(架橋・減成・変性等)は工業的に広く行われている技術である。
例えばポリエチレンやエチレン・酢酸ビニル共重合体のような熱可塑性プラスチックやエチレン・プロピレン・ジエンゴムやブタジエン・アクリロニトリル共重合体といったエラストマーは、有機過酸化物を適量添加して加熱処理を行うことにより架橋を行うことができ、その耐熱性や機械的性質を改善することが可能である。
【0003】
また、ポリプロピレン、ポリプロピレン−α−オレフィン共重合体等の崩壊性プラスチックは有機過酸化物による加熱処理で、ポリマー主鎖が切断され分子量調整が可能であることから、これらポリマーを成形加工する際の流動性改良の目的で、有機過酸化物による減成処理が可能であり、この減成処理は工業的に有用な方法である。さらには有機過酸化物はポリオレフィン樹脂に無水マレイン酸等の不飽和酸をグラフトさせることにより、接着性の発現、異種ポリマーとの相溶性改良等のポリマーを変性する目的でも工業的に利用されている。
【0004】
一般にゴムや熱可塑性プラスチックの改質に利用される有機過酸化物としては、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、t−ブチルクミルパーオキサイドのようなジアルキルパーオキサイド類、1,1−ジーt−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4−ジ−tーブチルパーオキシバレリックアシッド−n−ブチルエステル、のようなパーオキシケタール類のほか、ベンゾイルパーオキサイドに代表されるジアシルパーオキサイド類等が挙げられる。これら有機過酸化物は常温で液体または固体の形状であるが、通常、安全性やポリマーとの均一混合性を考慮して、液体、固体を問わず不活性無機充填剤やポリマーで希釈した配合物の形で使用されている場合が多い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ゴムや熱可塑性プラスチック等の高分子化合物を有機過酸化物を用いて架橋、減成及び変性等の改質処理を行う場合、使用する有機過酸化物の臭気が作業環境を汚染するばかりか、改質されたポリマーにもその臭気が残存するため、最終製品の価値を落とすことが多い。
【0006】
有機過酸化物またはその配合物を用いてゴムの架橋を行う場合、架橋する前工程で事前に、ゴムと有機過酸化物をオープンロールやバンバリーミキサー等の混練り機で均一混合されるが、この際、使用する有機過酸化物から発散される臭気が周囲を汚染するため、作業環境上好ましいものとは言えない。またその後、加熱プレスや押出機等によって架橋されたゴムにも有機過酸化物から発散する臭気が作業環境を汚染したり、架橋ゴムにも取り込まれてしまうため、永く製品から特異な臭気が発せられ、商品価値を低下させる結果にもなっている。
【0007】
ポリプロピレンやポリプロピレン−α−オレフィン共重合体等の崩壊性ポリマーを減成処理する場合は、これらポリマーと有機過酸化物をホッパーから混練り押出機に投入し、押出機中で加熱処理することによって目的とする減成されたポリマーが得られる。この際やはり、有機過酸化物からもたらされる臭気により作業環境が汚染されたり、減成されたポリマーをも汚染する場合がある。
ポリオレフィン樹脂を変性しようとする場合も同様に有機過酸化物が使用されるが、この場合も、架橋、減成の場合とまったく同様な問題を抱えている。
【0008】
通常、有機過酸化物によってもたらされる臭気は有機過酸化物自体の分解物等によるものであり、上記のような従来の有機過酸化物用いる限り、避けられないものと考えられていた。
そのため、ゴムや熱可塑性プラスチックを有機過酸化物を用いて改質した場合、有機過酸化物からもたらされる臭気を、改質されたポリマーから取り除くため、場合によっては、改質ポリマーをさらに加熱処理すること等も行われている。しかしながら、工程が増えるためコスト的に有利な方法とはいえない。また、この問題を改善する目的で有機過酸化物の添加量を低減させた場合には、期待通り通常の添加量で得られた製品に比べて臭気は低減されるが、充分な物性が得られないため実用的な解決方法とはなっていない。
そのため、臭気を発したり、改質体に臭気を付与したりしない有機過酸化物の開発が強く求められている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる問題を解決するために種々の過酸化物につき、鋭意研究した結果、ゴムや熱可塑性プラスチックの改質剤等として工業的に広く使用されている下記構造式(1)
【0010】
【化1】
Figure 0004036980
【0011】
で示される有機過酸化物である2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(DMDTBパーオキシヘキサン)の場合、意外にも臭気の原因は該有機過酸化物自体の分解物ではなく、不純物として含有される下記構造式(2)
【0012】
【化2】
Figure 0004036980
【0013】
で示される環状化合物の2,2,5,5−テトラメチルテトラヒドロフラン及び下記構造式(3)
【0014】
【化3】
Figure 0004036980
【0015】
で表される3,3,6,6−テトラメチル−1,2−ジオキソシクロヘキサンが臭気の原因物質であること見出した。そして更に検討の結果、これらの化合物は市販のDMDTBパーオキシヘキサンの全体に対して、通常両者の総量で4重量%前後含有されており、これらを総量で有機過酸化物全体に対して2重量%以下程度、好ましくは1.7重量%以下、より好ましくは1.5重量%以下、更に好ましくは1.2重量%以下、特に好ましくは1重量%以下程度まで低減することにより、この有機過酸化物自体の臭気を改良できると共にポリマーの臭気も改良でき、かつゴム及び熱可塑性プラスチックスの改質において、その物性を落とすこともないこと、従って、製造コストを増加させることなく、臭気の無い高品質の改質ポリマーを得ることができることが判明した。
【0016】
本発明はこれらの知見に基づいてなされたもので、下記の1〜5に関するものである。
(1)2,5−ジメチル−2,5−ジヒドロキシへキサンと過酸化水素水を硫酸存在下で反応させて得られた2,5−ジメチル−2,5−ジヒドロパーオキシヘキサンを用いて合成された、副生環状化合物2,2,5,5−テトラメチルテトラヒドロフラン及び3,3,6,6−テトラメチル−1,2−ジオキソシクロヘキサンを含む2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(以下DMDTBパーオキシヘキサンという)を液温が45℃を越えない温度において減圧蒸留することにより、上記環状化合物の総量を1.0重量%以下まで低減した低臭気DMDTBパーオキシヘキサンの製造方法
(2)上記環状化合物の総量が1.0重量%以下で、かつ3,3,6,6−テトラメチル−1,2−ジオキソシクロヘキサンの含量が0.6%以下である上記(1)に記載の低臭気DMDTBパーオキシヘキサンの製造方法
(3)2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(以下DMDTBパーオキシヘキサンと言う)が98重量%以上で、2,2,5,5−テトラメチルテトラヒドロフラン及び3,3,6,6−テトラメチル−1,2−ジオキソシクロヘキサンの総量が1.0重量%以下であり、かつ、3,3,6,6−テトラメチル−1,2−ジオキソシクロヘキサンの含量が0.6重量%以下である低臭気DMDTBパーオキシヘキサンを有効成分とするゴム又は熱可塑性プラスチック用の改質剤。
(4)上記(3)に記載の改質剤で改質されたゴム又は熱可塑性プラスチックの改質体。
(5)2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(以下DMDTBパーオキシヘキサンと言う)が98重量%以上で、2,2,5,5−テトラメチルテトラヒドロフラン及び3,3,6,6−テトラメチル−1,2−ジオキソシクロヘキサンの総量が1.0重量%以下であり、かつ、3,3,6,6−テトラメチル−1,2−ジオキソシクロヘキサンの含量が0.6重量%以下であることを特徴とする低臭気DMDTBパーオキシヘキサン組成物
【0017】
本発明の低臭気DMDTBパーオキシヘキサンは従来のDMDTBパーオキシヘキサンと全く同様に高分子化合物の架橋、変成、減成などの改質に有効である。
なお、本発明において高分子の改質もしくは改質剤などの用語は、高分子の架橋、減成又は変性など高分子化合物の性質を変化させることもしくは変化させるための薬剤を全て含む意味で使用される。
本発明の改質剤により改質可能な高分子化合物(ゴム及び熱可塑性プラスチック等)としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、天然ゴム、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、エチレン−プロピレン共重合体、EPDM、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エステル、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、多硫化ゴム、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。
【0018】
本発明における2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(DMDTBパーオキシヘキサン)は常温液体の有機過酸化物であり、そのままの形状でも高分子の改質剤として使用可能であるが、必要に応じて無機、有機、液状もしくは固体状の不活性担体との混合物の形で、高分子の改質剤として使用することもできる。例えば脂肪族炭化水素系溶剤や可塑剤等に希釈した液状品として、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリマーに吸着させたパウダーまたはペレット品として、シリカ、炭酸カルシウム、クレー、タルク等の無機不活性充填剤に吸着させたパウダーまたはペースト品として、エチレン−プロピレン共重合体、EPDM(エチレンプロピレンジエンの三元重合体)、シリコーンゴム、エチレンー酢酸ビニル共重合体等のゴムまたは熱可塑性エラストマーに均一混合した板状またはペレット状のマスターバッチとしても使用可能である。 また、これら液状希釈剤、不活性充填剤やゴムまたは熱可塑性エラストマーを2種類以上組み合わせて、それらにDMDTBパーオキシヘキサンを吸着もしくは混合して得られた配合物として使用することも可能である。
【0019】
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(DMDTBパーオキシヘキサン)に含有される環状化合物である2,2,5,5−テトラメチルテトラヒドロフラン及び3,3,6,6−テトラメチル−1,2−ジオキソシクロヘキサンはDMDTBパーオキシヘキサンを合成する際に副生される。
すなわち2,5−ジメチル−2,5−ジヒドロキシヘキサンと過酸化水素水を硫酸存在化で反応させ2,5−ジメチル−2,5−ジヒドロパーオキシヘキサンを合成する際に、原料の2,5−ジメチル−2,5−ジヒドロキシヘキサンの分子内環化脱水反応により2,2,5,5−テトラメチルテトラヒドロフランが、反応中間体である2,5−ジメチル−2−ヒドロキシ−5−ヒドロパーオキシヘキサンの分子内環化脱水反応で3,3,6,6−テトラメチル−1,2−ジオキソシクロヘキサンが生成する。
【0020】
通常得られた過酸化物が不安定であることから、その十分な精製は困難であり、従来法で、合成後抽出及び水洗して得られるDMDTBパーオキシヘキサン中には、本発明者らの分析によれば、これらの環状化合物が4重量%前後含有されている。通常、この環状化合物を4重量%前後含有したものが工業的純品として市販されている。この環状化合物はガスクロマトグラフィーにより定量的に分析可能である。
【0021】
本発明者らの検討によれば、従来法で得られるDMDTBパーオキシヘキサン中に含まれるこれら環状化合物は、このDMDTBパーオキシヘキサン液を、液の温度が45度を越えない程度において、減圧下で蒸留すると、選択的に流出し、これらの環状化合物を含まないかもしくは減量した高純度のDMDTBパーオキシヘキサンを得ることが可能であること、DMDTBパーオキシヘキサンは摂氏45度以下であれば爆発等の危険も少なく、比較的安全であることが判明した。 従って、本発明の低臭気DMDTBパーオキシヘキサンは、上記の環状化合物を含むDMDTBパーオキシヘキサンを、その液温が摂氏45度を越えない程度の温度において、例えば0.5時間以上、好ましくは0.8時間以上処理することにより得ることが出来る。処理時間の上限は処理条件や、目的とする純度等などにより異なるが効率などを考えると40時間以内程度、好ましくは20時間以内程度、更に好ましくは5時間以内程度である。このように処理することにより、上記環状化合物の総量を2重量%程度以下、好ましくは1.7重量%以下程度、より好ましくは1.5重量%以下程度、更に好ましくは1.2重量%以下程度、特に好ましくは1.0重量%以下程度まで低減した本発明の低臭気2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンを得ることが出来る。
【0022】
【実施例】
実施例・比較例
以下の実施例及び比較例により本発明の効果をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお以後、環状化合物の2,2,5,5−テトラメチルテトラヒドロフランをTMTHF、3,3,6,6−テトラメチル−1,2−ジオキソシクロヘキサンをTMDCHと略称する。
【0023】
比較例1
(a) 従来法によるDMDTBパーオキシヘキサンの合成
温度計、撹拌機及び槽内冷却器を有する500mlのガラスビーカーに10℃から15℃に温度を保ちながら60%の過酸化水素水溶液128gと90%の濃硫酸80gを入れ、続いて温度を20℃以下に保ちながら2,5−ジメチル−2,5−ジヒドロキシヘキサン66gを40分間で仕込んだ。
この状態で60分間撹拌を続けた。反応終了後60gの冷水で2回の洗浄とろ過を行い、ハイドロパーオキサイドである2,5−ジメチル−2,5−ジヒドロパーオキシヘキサンを純度78%の水湿体品として77g得た。
引き続き同様の装置を有するガラスビーカーに純度88%の第3級ブタノール水溶液113gを入れ、温度を20℃に保ちながら90%濃硫酸90gを100分間かけて仕込んだ。その後20℃で、2,5−ジメチル−2,5−ジヒドロパーオキシヘキサン77gを20分で仕込み45℃に昇温して180分間反応を行った。水層を分離除去した後、油層を水洗浄及び乾燥剤による脱水を行い、純度95%のDMDTBパーオキシヘキサンを98g得た。
得られたDMDTBパーオキシヘキサン中のTMTHF及びTMDCH濃度はそれぞれ1.5重量%及び2.8重量%で、総量では4.3重量%であった。このDMDTBパーオキシヘキサンのサンプルをSA43Aとする。
【0024】
(b) 架橋試験、引張試験、引裂試験、臭気検査
架橋試験:サンプルSA43Aを使用して、表1に示したEPDMコンパウンドの架橋試験を行った。EPDMコンパウンドとサンプルSA43Aををそれぞれ6インチのオープンロールを使用し2分間混練りしたものをプレス架橋した。架橋は180℃、15分の条件で行った。 架橋特性についてはレオメーターを用いて測定した。測定結果を表2に示した。
引張試験及び引裂試験:上記の架橋で得られた架橋体(架橋ゴム)についてはJIS−K−6301に準拠した引張試験、引裂試験を行った。
臭気検査: 臭気についてはサンプルSA43A自体の臭気、サンプルSA43AとEPDMコンパウンドの混練り物の臭気及び架橋したゴムの臭気について官能評価した。
結果を表2に示した。
【0025】
実施例1
(a) 低臭気DMDTBパーオキシヘキサンの製造
比較例1で得られた90gのSA43Aを500mlの丸底フラスコに入れ、ロータリーエバポレーターに装着し、45℃に設定された温水浴層にこの丸底フラスコが浸かるように調整し、フラスコ部分を回転させながら真空ポンプにて減圧度10mmHg以下で120分間減圧蒸留を行い、TMTHF及びTMDCHを留去した純度99%のDMDTBパーオキシヘキサンを86g得た。このDMDTBパーオキシヘキサン中のTMTHF及びTMDCHはガスクロマトグラフィーでまったく検出されなかった。
得られた有機過酸化物をSA00と略す。
(b) 架橋試験、引張試験、引裂試験、臭気検査
比較例1におけるサンプルSA43Aの代わりに上記で得られ得たサンプルSA00を使用する以外は比較例1におけると全く同様にして、架橋試験、引張試験、引裂試験及び臭気検査を行った。結果を表2に示した。
【0026】
実施例2
(a) 低臭気DMDTBパーオキシヘキサンの製造
比較例1で得られた90gのSA43Aを、処理時間を90分に短縮する以外は実施例1と同様な方法で処理し、純度98%のDMDTBパーオキシヘキサンを87g得た。得られたDMDTBパーオキシヘキサン中のTMTHF及びTMDCH濃度はそれぞれ0.4重量%及び0.6重量%で、総量では1.0重量%であった。
得られた有機過酸化物をSA10と略す。
(b) 架橋試験、引張試験、引裂試験、臭気検査
比較例1におけるサンプルSA43Aの代わりに上記で得られ得たサンプルSA10を使用する以外は比較例1におけると全く同様にして、架橋試験、引張試験、引裂試験及び臭気検査を行った。結果を表2に示した。
【0027】
参考例
(a) 低臭気DMDTBパーオキシヘキサンの製造比較例1で得られた90gのSA43Aを、処理時間を60分に短縮する以外は実施例1と同様な方法で処理し、純度97%のDMDTBパーオキシヘキサンを87g得た。得られたDMDTBパーオキシヘキサン中のTMTHF及びTMDCH濃度はそれぞれ0.5重量%及び1.0重量%で、総量では1.5重量%であった。得られた有機過酸化物をSA15と略す。
(b) 架橋試験、引張試験、引裂試験、臭気検査比較例1におけるサンプルSA43Aの代わりに上記で得られたサンプルSA15を使用する以外は比較例1におけると全く同様にして、架橋試験、引張試験、引裂試験及び臭気検査を行った。結果を表2に示した。
【0028】
比較例2
(a) 比較用DMDTBパーオキシヘキサンの製造
実施例1で得られたSA00に市販のTMTHFとTMDCHをそれぞれ1.5重量%及び2.8重量%添加して比較例1で作成したSA43Aと同じ濃度のDMDTBパーオキシヘキサンを作成した。
得られた有機過酸化物をSA43Bと略す。
(b) 架橋試験、引張試験、引裂試験、臭気検査
比較例1におけるサンプルSA43Aの代わりに上記で得られたサンプルSA43Bを使用する以外は比較例1におけると全く同様にして、架橋試験、引張試験、引裂試験及び臭気検査を行った。結果を表2に示した。
【0029】
表1中、JSR−EP86は日本合成ゴム社製EPDMの商品名である。また、HAFカーボンブラックとして旭カーボン社製#70(商品番号)を、ナフテン系プロセスオイルとして日本サン石油社製サンパー2280(商品名)を使用した。さらに老化防止剤としてはフェノール系老化防止剤を使用した。なお、架橋助剤として使用したTMPTはトリメチロールプロパントリメタクリレートの略である。
【0030】
【表1】
Figure 0004036980
【0031】
下記の表2に架橋試験、引張試験、引裂試験及び臭気検査の結果を示しす。なお表中における記号、略称等は下記の意味を示す。
架橋特性の項
T10:最大トルクの10%に達するまでの時間。
T90:最大トルクの90%に達するまでの時間。
引張試験の項
:破断時の引張強さ。
:破断時の伸び。
:スプリング硬さ。
引裂試験の項
TR:は引裂強さ。
臭気の項
◎: 臭気は全く又はほとんど臭気無し。
○: わずか臭気あり。
△: 臭気あり。
×: 強い臭気あり。
【0032】
【表2】
Figure 0004036980
【0033】
実施例4〜5、参考例及び比較例3〜4
架橋剤としてサンプルSA00(実施例1)、SA10(実施例2)、SA15(参考例)、SA43A(比較例3)、又は SA43B(比較例4)を使用してシリコーンゴムの架橋試験を行った。まず、市販のシリコーンゴム用架橋剤と同様に、これら有機過酸化物にジメチルシリコーンオイルとシリカを加え、純度が50%の架橋剤ペーストを作成した。その組成を表3に示した。市販のメチルビニルシリコーンゴム100重量部に対して上記の架橋剤ペーストを1.1重量部を添加し、オープンロールで2分間混練りした後、厚さ2mmのモールドを用いて180℃で15分間の架橋を行った。得られた架橋シートについてJIS−K−6301によりTB、EB及びHSを測定した。架橋シートの臭気についても官能試験を行った。なお、メチルビニルシリコーンゴムは東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)社製SE1185U(商品名)を使用した。
【0034】
【表3】
Figure 0004036980
【0035】
下記の表4に上記表3に示した架橋剤ペーストを用いて架橋した架橋シートの引張試験及び臭気検査の結果を示す。
なお表中におけるT、E及びH及び臭気の官能試験の結果の記号は前記と同じ意味を示す。
【0036】
【表4】
Figure 0004036980
【0037】
実施例7
本発明の有機過酸化物を用いてポリプロピレン(以下PPと略す)の減成を行った。
メルトフローインデックス(MFI)が1.4のPPに対し実施例1で得られたSA00を0.05重量%添加し、ラボプラストミル(東洋精機製)を用いて混練り中、225℃で3分間加熱処理を行った。処理したPPの臭気を評価し、引き続きMFIを測定した。MFIの測定はJIS−K−7210に準拠して行った。改質PPの臭気は官能評価を行った。結果を表5に示した。
使用したPPは以下の通りである。
Figure 0004036980
【0038】
比較例5
実施例7と同様にして比較例1で作成したSA43Aを使用してPPの減成を行った。結果を表5に示した。なお表中における臭気の官能試験の結果の記号は前記と同じ意味を示す。
【0039】
【表5】
Figure 0004036980
【0040】
実施例8
実施例1のSA00を使用してPPの無水マレイン酸(以下MAHと略す)による変性を行った。
PP、MAHを表6に示した割合で配合し、良く混合した。ラボプラストミル(東洋精機製)のホッパーにPPとMAHの混合物を、引き続きSA00を表6に示した配合で投入し、混練り中、230℃で3分間処理した。
得られた変性ポリマーのMFI及びグラフト効率を測定した。また、変性ポリマーの臭気についても官能試験により評価した。結果をまとめて表6に示した。グラフト効率は次式により算出した。
【0041】
【式1】
Figure 0004036980
【0042】
比較例6
比較例1で得られたSA43Aを使用して表6に示す配合でPPの変性を行った。実施例8の試験条件で行い、結果を表6に示した。
PPは実施例7と同じものを使用した。MAHは市販品(試薬1級)を使用した。結果を表6に示した。なお表中における臭気の官能試験の結果の記号は前記と同じ意味を示す。
【0043】
【表6】
Figure 0004036980
【0044】
【発明の効果】
本発明の低臭気DMDTBパーオキシヘキサンを使用することにより、ポリマーの改質において、物性を低下させたり、又は脱臭工程を追加すること無く、臭気の少ない改質(架橋・減成・変性等)された高分子化合物(ゴムや熱可塑性プラスチック等)を得ることができる。

Claims (5)

  1. 2,5−ジメチル−2,5−ジヒドロキシへキサンと過酸化水素水を硫酸存在下で反応させて得られた2,5−ジメチル−2,5−ジヒドロパーオキシヘキサンを用いて合成された、副生環状化合物2,2,5,5−テトラメチルテトラヒドロフラン及び3,3,6,6−テトラメチル−1,2−ジオキソシクロヘキサンを含む2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(以下DMDTBパーオキシヘキサンという)を液温が45℃を越えない温度において減圧蒸留することにより、上記環状化合物の総量を1.0重量%以下まで低減した低臭気DMDTBパーオキシヘキサンの製造方法。
  2. 上記環状化合物の総量が1.0重量%以下で、かつ3,3,6,6−テトラメチル−1,2−ジオキソシクロヘキサンの含量が0.6%以下である請求項1に記載の低臭気DMDTBパーオキシヘキサンの製造方法。
  3. 2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(以下DMDTBパーオキシヘキサンと言う)が98重量%以上で、2,2,5,5−テトラメチルテトラヒドロフラン及び3,3,6,6−テトラメチル−1,2−ジオキソシクロヘキサンの総量が1.0重量%以下であり、かつ、3,3,6,6−テトラメチル−1,2−ジオキソシクロヘキサンの含量が0.6重量%以下である低臭気DMDTBパーオキシヘキサンを有効成分とするゴム又は熱可塑性プラスチック用の改質剤。
  4. 請求項3に記載の改質剤で改質されたゴム又は熱可塑性プラスチックの改質体。
  5. 2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(以下DMDTBパーオキシヘキサンと言う)が98重量%以上で、2,2,5,5−テトラメチルテトラヒドロフラン及び3,3,6,6−テトラメチル−1,2−ジオキソシクロヘキサンの総量が1.0重量%以下であり、かつ、3,3,6,6−テトラメチル−1,2−ジオキソシクロヘキサンの含量が0.6重量%以下であることを特徴とする低臭気DMDTBパーオキシヘキサン組成物
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