JP4036892B2 - 大腸菌においてヌクレアーゼ遺伝子を直接クローン化する方法 - Google Patents
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Description
ヌクレアーゼは一本鎖または二本鎖DNAを分解もしくは切断する酵素である。制限エンドヌクレアーゼは、DNA分子中の特定のヌクレオチド配列(「認識配列」)を認識し、これに結合する一群の重要なヌクレアーゼである。上記のように結合した制限エンドヌクレアーゼは、認識配列の内部またはその一端においてDNA分子の両鎖を切断する。異なる制限エンドヌクレアーゼは異なる認識配列を認識する。今までに試験された何百もの細菌種の中から180を越える種類の、独自の特異性を有する制限エンドヌクレアーゼが同定されている。
自然界では制限エンドヌクレアーゼは、細菌細胞を無事であるように保護する役割を果たすと考えられる。制限エンドヌクレアーゼによって細菌は、前記酵素が存在しなければ細菌を破壊するかまたは細菌に寄生するであろうウイルス及びプラスミドのような外来DNA分子への感染に耐性であり得る。この耐性は、適当な認識配列が存在する場合に制限エンドヌクレアーゼが侵入した外来DNA分子を切断することによってもたらされる。前記切断によって感染遺伝子の多くは無力化され、DNAは非特異的エンドヌクレアーゼによって更に分解される。
上記のような細菌保護系の第二の構成要素に修飾メチラーゼが有る。この酵素は制限エンドヌクレアーゼと相補的であり、細菌が細菌自体のDNAを切断から保護し、かつ外来の感染DNAと区別することを可能にする手段を提供する。修飾メチラーゼは、対応する制限エンドヌクレアーゼと同じ認識ヌクレオチド配列を認識してこれに結合するが、DNAを切断する替わりに配列内のいずれかのヌクレオチドをメチル基の付加によって化学的に修飾する。メチル化された認識配列はもはや制限エンドヌクレアーゼによって結合も切断もされない。細菌細胞のDNAは修飾メチラーゼの活性により、常に完全に修飾されている。従って、細菌細胞のDNAは内在制限エンドヌクレアーゼの存在に対して完全に非感受性である。制限エンドヌクレアーゼによる認識及び切断に感受性であるのは、修飾されない、従って確実に外来性であるDNAのみである。
遺伝子操作技術の出現に伴い、遺伝子をクローン化し、当該遺伝子がコードするタンパク質及び酵素を通常の精製技術によって得られるよりも大量に生産することが可能となった。制限エンドヌクレアーゼ遺伝子のクローンを単離する鍵は、このクローンが10-3〜10-4といった低い頻度で発生する場合に複雑な「ライブラリー」、即ち「ショットガン」操作によって得られるクローン集団内で該クローンを同定する簡単でかつ確実な方法を開発することである。
タイプII制限−修飾系はますます頻繁にクローン化されるようになっている。最初にクローン化された系には、制限エンドヌクレアーゼクローンを同定または選択する手段としてバクテリオファージ感染が用いられた(EcoRII: Kosykh等, Molec. Gen. Genet. 178, pp.717−719, 1980; HhaII: Mann等, Gene 3, pp.97−112, 1978; PstI: Walder等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78, pp.1503−1507, 1981)。細菌は制限−修飾系を有することによってバクテリオファージによる感染に耐性となり得るので、クローン化された制限−修飾遺伝子を持つ細胞は原則として、ファージに曝露したライブラリーから生存細胞として選択的に単離し得る。しかし、この方法の価値は限られていることが判明した。特に、クローン化された制限−修飾遺伝子は選択的生存を実現するのに十分なファージ耐性を常に示すわけではないことが明らかとなった。
別のクローニング法では、最初にプラスミド保持型(plasmid−borne)であると特徴付けられた系を大腸菌クローニングプラスミドに挿入する(EcoRV:Bougueleret等, Nucl. Acid. Res. 12, pp.3659−3676, 1984; PaeR7: Gingeras及びBrooks,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80, pp.402−406, 1983; Theriault及びRoy, Gene 19, pp.355−359, 1982; PvuII: Blumenthal等, J. Bacteriol. 164, pp.501−509, 1985)。
次第に多数の系のクローニングに用いられてきている第三の方法では、活性なメチラーゼ遺伝子を選択することによってクローニングを行なう。例えば米国特許第5,200,333号、及びBsuRIに関してはKiss等,Nucl. Acid. Res. 13, pp.6403−6421, 1985を参照されたい。制限遺伝子と修飾遺伝子とはしばしば近接して連結されているので、両遺伝子を同時にクローン化することがしばしば可能である。しかし、このような選択は常に完全な制限系をもたらすとは限らず、メチラーゼ遺伝子のみをもたらす場合も有る(BspRI: Szomolanyi等, Gene10, pp.219−225, 1980; BcnI: Janulaitis等, Gene 20, pp.197−204, 1982, BsuRI: Kiss及びBaldauf, Gene 21, pp.111−119, 1983; 並びにMspI: Walder等, J. Biol. Chem. 258,pp.1235−1241, 1983)。
第四のクローニング法(「メチラーゼインジケーター」法)では、メチル化依存制限系McrA、McrBC及びMrr(Raleigh及びWilson, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83, pp.9070−9074, 1986; Heitman及びModel, Gene 103, pp.1−9,1991; Kellehr及びRaleigh, J.Bacteriol. 173, pp.5220−5223, 1991)並びにdinD1::lacZオペロン融合体を用いて、メチラーゼ遺伝子を含むクローンをスクリーニングする。dinD1遺伝子座は、大腸菌において紫外線処理、マイトマイシン処理、またはメチル化DNAへのMcrA、McrBCもしくはMrr制限エンドヌクレアーゼの作用などにより「SOS応答」が誘起されると発現するDNA損傷誘導性遺伝子である(その開示が本明細書に参考として含まれるKenyon及びWalker, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77, pp.2819−2823, 1980; Heitman及びModel,上掲誌,1991; Heitman及びModel, J. Bacteriol. 169, pp.3234−3250, 1989; 並びにPiekarowicz等, J.Bacteriol. 173, pp.150−155, 1991)。mcrA、mcrBC及びmrrの温度感受性突然変異体、並びにdinD1::lacZ融合体を有する株を構築し、これを大腸菌以外の細菌供給源から得たメチラーゼ遺伝子の大腸菌中への直接クローニングに用いることが行なわれた(その開示が本明細書に参考として含まれるPiekarowicz等, Nucl. Acid. Res. 19, pp.1831−1835, 1991)。連結したゲノム−ベクターDNAで上記のような株を形質転換すると、上記メチル化依存制限系のうちのいずれかに対する感受性をもたらすメチラーゼを発現する遺伝子を有する形質転換体が、SOS DNA修復誘導及びβ−ガラクトシダーゼ発現を惹起するメチル化依存制限の結果としてXgalインジケータープレート上に42℃において白色のコロニー、30℃において青色のコロニーを形成する。ほとんどの制限酵素遺伝子と同種(cognate)メチラーゼ遺伝子とが近接して連結されているので、適当な大きさのDNA断片中のメチラーゼ遺伝子をクローン化すれば同種エンドヌクレアーゼ遺伝子を共にクローン化することになり得る。
標準的な方法が実用的でないか、または好ましい成果をもたらさない場合には代替方法として、制限エンドヌクレアーゼなどのヌクレアーゼを直接クローン化する方法を設計することが望ましい。
発明の概要
本発明は、大腸菌において制限エンドヌクレアーゼ遺伝子などのヌクレアーゼ遺伝子を直接クローン化する新規な方法を提供する。本発明はまた、上記方法の適用を容易にする新規な株も提供する。本発明の方法は、BsoBI、Tth111I、TaqI及びEco0191などの制限エンドヌクレアーゼを含めたヌクレアーゼをコードする幾つかの遺伝子のクローニングに首尾よく適用できた。従って本発明は、上記のようなヌクレアーゼをコードする単離DNA、並びにそれらのヌクレアーゼの発現に用いるベクター及び形質転換宿主細胞も提供する。
本発明は特に、(i)制限系を総て欠く(EcoKR-、McrA-、McrBC-、Mrr-)、dinD1::lacZ融合体を有する新規な大腸菌株、(ii)dinD1::lacZ融合体などの、DNA損傷誘導プロモーターとインジケーター/レポーター遺伝子との融合体を含む株を用いる、大腸菌においてヌクレアーゼ遺伝子を直接クローン化する方法、並びに(iii)本発明の方法でクローン化した、或る種のヌクレアーゼをコードする単離DNAに係わる。大腸菌においてT7.3エンドヌクレアーゼ、EcoRIまたはBamHI制限酵素によって導入されたDNAの切れ目(breaks)もしくはニックがSOS応答を誘起することが判明しているので(Panayotatos及びFontaine, J. Biol.Chem. 260, pp.3173−3177, 1985; Heitman及びModel,上掲誌,1991; Xu及びSchildkraut, J. Biol. Chem. 266, pp.4425−4429, 1991)、本発明者は、先に述べた制限系を総て欠くdinD1::lacZなどのインジケーター株に連結ゲノムDNA断片及びベクターを導入し、形質転換体をXgalプレート上で平板培養すれば、ヌクレアーゼ保有クローンを青色コロニーの選出(picking)によって直接発見できるのではないかと推論した。制限エンドヌクレアーゼをコードする遺伝子のクローニングに本発明を用いる場合、メチラーゼ選択法の時とは異なり、メチラーゼ遺伝子が宿主染色体を完全に保護する必要は無い。実際のところ、メチラーゼ遺伝子が全く存在しなくともよいことも有る。このことは特に、形質転換体を本発明により比較的低温、即ち約30〜37℃で増殖させる場合の熱安定酵素の場合に該当する。上記のような低温では熱安定性の制限エンドヌクレアーゼはさほど活性でなく、形質転換宿主細胞は保護的メチル化を一部にしか、更には全く受けていなくとも生存し得る。
即ち、本発明の方法によれば、好ましい大腸菌細胞(dinD1::lacZ、EcoKR-、McrA-、McrBC-、Mrr-)などの宿主細胞を連結ゲノム−ベクターDNAで形質転換し、形質転換体をXgalプレート上で平板培養すると、制限エンドヌクレアーゼ遺伝子を有する細胞は青色のコロニーを形成し、なぜなら制限酵素はin vivoでDNAを損傷し、SOS DNA修復応答を誘起するからである。この方法(「エンドヌクレアーゼインジケーター法」)はPiekarowicz等,上掲誌,1991に記載された「メチラーゼインジケーター法」と、後者の従来方法がエンドヌクレアーゼではなくメチラーゼの発現を検出する点において相違する。上記従来方法は、特異的なメチル化配列に作用する内在制限酵素(McrA、McrBCまたはMrr)のDNA損傷作用に依拠していた。適当な外来メチラーゼの発現によって、上記メチル化特異的エンドヌクレアーゼのうちの一つ以上に感受性である配列が創出され得、その結果SOS応答の誘起と青色の発色とが生起する。メチラーゼ遺伝子は同種エンドヌクレアーゼをコードする遺伝子を伴っても伴わなくてもよい。本発明のエンドヌクレアーゼインジケーター法はエンドヌクレアーゼのみを検出してメチラーゼは検出せず、なぜなら関連するメチル化依存制限系が宿主細胞に存在しないからである。本発明の方法によって熱安定制限酵素TaqI(5′TCGA3′; 配列番号1)及びTth111I(5′GACNNNGTC3′; 配列番号2)をコードする遺伝子を、大腸菌において首尾よくクローン化した。メチラーゼ選択法(Szomolanyi等,上掲誌,1980)と「エンドヌクレアーゼインジケーター法」とを組み合わせて制限エンドヌクレアーゼ遺伝子をクローン化することも可能である。これら2方法の組み合わせによって、制限エンドヌクレアーゼコーディング遺伝子ecoO109IRをクローン化した。
【図面の簡単な説明】
図1はTth111Iをコードする遺伝子であるtth111IR遺伝子の大腸菌におけるクローニングの説明図である。
図2は大腸菌によって産生されたクローン化TaqI及びTth111I制限酵素のDNA切断パターンを示す。細胞抽出物のTaqI及びTth111Iエンドヌクレアーゼ活性をアッセイした。レーン1は切断していないpBR322 DNA、レーン2はTaqIエンドヌクレアーゼを含有する細胞抽出物で切断したpBR322、レーン3は精製TaqIで切断したpBR322、レーン4はBstEII切断λDNA寸法標準、レーン5は切断していないλDNA、レーン6はTth111Iエンドヌクレアーゼを含有する細胞抽出物で切断したλDNA、レーン7は精製Tth111Iエンドヌクレアーゼで切断したλDNAである。TaqI及びTth111I制限消化は65℃で1時間行なった。
図3はBsoBI活性アッセイの結果を示す。50mMNaCl、10mMトリス−HCl、10mM MgCl2及び1mM DTTを含有する緩衝液中で1μgのλDNA基質を10μlの細胞抽出物と共に65℃で1時間インキュベートした。DNA消化産物を0.8%アガロースゲル中で分離させ(resolved)、エチジウムブロミド染色によって検出した。単離物#16から得られた細胞抽出物はBsoBIヌクレアーゼ活性を有することが判明した。最初のレーンはBsoBI陽性対照である。各レーン上の数字は単離物番号を示す。
図4AはBsoBIメチラーゼ遺伝子である(配列番号3)。図4BはBsoBI制限エンドヌクレアーゼ遺伝子である(配列番号4)。図4CはBsoBIメチラーゼ遺伝子に対応するアミノ酸配列である(配列番号5)。図4DはBsoBI制限エンドヌクレアーゼ遺伝子に対応するアミノ酸配列である(配列番号6)。
図5はBsoBI制限エンドヌクレアーゼ遺伝子を含むDNA挿入部分の制限マップである。挿入部分の大きさは約8.0kbである。挿入部分はSau3AIで部分消化したBacillus stearothermophilusゲノムDNAから得、pUC19のBamHI部位へクローン化した。
発明の詳細な説明
本発明はその一形態によって、ヌクレアーゼ遺伝子を直接クローン化する新規な方法を提供する。本発明の方法は通常次のステップを含むが、当業者には理解されるように、これらのステップの変形も結果に悪影響を及ぼさずに可能である。
1) ヌクレアーゼ産生株からゲノムDNAを調製し、これを完全に、または部分的に切断して約500〜20,000bpのクローン化可能なDNA断片を生じさせる。このような断片は、例えば制限酵素を用いたり、音波処理で切り取ったりして取得し得る。得られた断片はその後、pBR322、pUC19、pACYC187、pSC101、またはこれらの誘導体中の相容性の付着端または平滑末端を持つクローニングベクターに連結する。
2) 連結DNA混合物を、好ましくはdinD::lacZ融合体などの、インジケーター/レポーターと融合したDNA損傷性プロモーターを有し、かつメチル化依存制限系を欠く細菌株(dinD::lacZ、mcrA、mcrBC、mrr)に移入する。好ましい株の一つに大腸菌ER1992(NEB #907)が有り、この株の標本はブダペスト条約の約定に基づき1994年5月24日付でAmerican Type Cultrue Collectionに、ATCC受託番号第55582号の下に寄託してある。用い得る他のDNA損傷誘導プロモーターにはdinA(M. Iwasaki等,J. Bacteriol. 172, pp.6268−6273, 1990)及びdinG(L. K. Lewis, J. Bacteriol. 174, pp.5110−5116, 1992)が含まれ、前記文献の開示は本明細書に参考として含まれる。上記プロモーターのうちのいずれかと融合し得る他のインジケーター/レポーター遺伝子には、アルカリホスファターゼ(phoA; Proc. Natl. Acad. Sci.USA 82, pp.5107−5111, 1985)、ルシフェラーゼ(lux; J. Engelrecht, Science 227, pp.1345−1347, 1985)、β−グルクロニダーゼ(W. W. Metcalfe, Gene 129, pp.17−25, 1993)、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(J. M. Ward等, Mol.Gen. Genet. 203, pp.468−478, 1986)及びエンドグルカナーゼ(W. W. Bingle等, Can. J. Microbiol.39, pp.70−80, 1993)が含まれ、前記文献の開示は本明細書に参考として含まれる。
大腸菌ER1992の形質転換後、細胞を、Xgal及び適当な抗生物質を含有するインジケータープレート上で平板培養し、約30〜42℃で一晩インキュベートする。クローン化するべき特定の制限エンドヌクレアーゼ遺伝子またはヌクレアーゼ遺伝子次第では、宿主のメチル化依存制限系の全部または一部を不活性化しなくともよい場合が有る。上記制限系が常に欠けている必要は無いが、修飾塩基(異常なC5シトシン、N4シトシンまたはN6アデニン)が未知である場合の制限−修飾系のクローニングには総てのメチル化依存系を欠くdinD::lacZ株を用いることが好ましい。
3) 個々の中青色(medium blue)/暗青色コロニーを選出し、適当な抗生物質を加えたLB培地(10〜1000ml)に接種して約30〜42℃で一晩振盪する。
4) 細胞を遠心によって回収し、溶菌酵素を加えた音波処理緩衝液中に再懸濁させ、細胞溶解を音波処理によって完了させる。細胞破片及び不溶性構成要素を遠心によって除去する。
5) クローン化するべきヌクレアーゼ遺伝子が熱安定性の細菌に由来する場合は溶解物を約65℃で、大腸菌天然タンパク質の変性に十分な時間(例えば30分間)加熱する。このステップによって、天然の大腸菌ヌクレアーゼを効率的に不活性化する。
6) 上清(細胞抽出物)を適当な緩衝液中で37〜68℃において、pUC19、pBR322、M13mp18/19複製形態もしくは一本鎖DNAまたはλDNAといった適当なDNA基質に対するヌクレアーゼ活性に関してアッセイする。
7) DNA消化パターンもしくは断片をアガロースゲル電気泳動またはPAGEによって分離させ、エチジウムブロミド染色によって検出する。
上述の方法は、taqIR遺伝子、tth111IR遺伝子、及びThermus filiformis由来のDNAヌクレアーゼをコードする遺伝子を含めた幾つかのヌクレアーゼ遺伝子のクローニングに首尾よく用いることができた。先に指摘したように、本発明の方法は特に、Bacillus stearothermophilus(NEB #882)由来のBsoBIなどの熱安定ヌクレアーゼを含めた上記以外のヌクレアーゼのクローニングに有用である。BsoBIは、CPyCGPuG(配列番号7)を認識するAvaIのアイソシゾマーである。
本発明は別の形態によって、上述のエンドヌクレアーゼインジケーター法で用い得る新規な株を提供する。この株、即ち大腸菌ER1992はdinD::lacZ融合体を有し、かつ総ての制限系を欠いている(EcoKR-、McrA-、McrBC-及びMrr-)。
大腸菌ER1992[F- λ- Δ(argF−lac)U169 supE44 e14- dinD1::Mu dl1734(KanR,LacZ+) rfbD1? relA1? endA1 spoT1? thi−1 Δ(mcrC−mrr)114::IS10]は、(i)NK6993由来のΔ(argF−lac)U169に連結したproC::Tn5での形質導入、KanRの選択、及びLac-Pro-のスクリーニングによりER1984を得ることによってER1821のLac-誘導体を取得し、(ii)前記誘導体をER1578からの形質導入によりPro+KanSとしてER1991を得、(iii)JH140[dinD1::μdl1734(KanR,LacZ+)である大腸菌株; J. Heitman等,上掲誌,1991)からの形質導入、KanRの選択、及びdinD融合体によって媒介されるβ−ガラクトシダーゼのナリジキシン酸誘導性発現のスクリーニングによってdinD1::μdl1734(KanR,LacZ+)を導入する3ステップで構築した。この大腸菌株を、上記DNA損傷物質を収容したウェルを中央に設けたXgalプレート上で試験した。精製した形質導入体を、ウェルから放射状に画線培養した。暗青色にグラデーションの有る培養を大腸菌ER1992と名付けた。この株は一切のDNA損傷を受けず、Xgal上で淡青色を示した。
以下の実施例を、現段階で好ましく実施される本発明の具体例を説明するために示す。これらの実施例は説明用であり、本発明は添付の請求の範囲に記されている事以外では前記実施例に限定されないと考えるべきであることは理解されよう。
実施例1
BsoBI制限エンドヌクレアーゼをコードするbsoBI遺伝子のE.coli中でのクローニング
細菌DNAの精製:5gのBacillus stearothermophilus(NEB#882)細胞を、25%スクロース、50mM トリス−HCl,pH8.0を含む緩衝液25mlに再懸濁した。該細胞懸濁液に、5mlの0.5M EDTA、pH8.0及び6mlのリゾチーム(10mg/ml)を加えた。室温で10分間インキュベートした後、36mlの溶菌緩衝液(1% Triton X−100、50mM トリス−HCl、pH8.0、62mM EDTA)及び5mlの10% SDSを加えて、細胞を完全に溶解した。フェノール−CHCl3で2回、CHCl3で2回抽出してタンパク質を取り出した。1/10容量の3.5M 酢酸ナトリウム及び等量のイソプロパノールを添加し、15,000rpm/分で遠心して、ゲノムDNAを沈降させた。DNAペレットを50mlの70%エタノールで洗浄し、真空下に乾燥した。DNAペレットを10mlのTE緩衝液に再懸濁し、2リットルのTE緩衝液(10mM トリス−HCl、pH7.8、1mM EDTA)中4℃で一晩透析した。
ゲノムDNAの部分消化:50μgのゲノムDNAを、それぞれ、2単位、1単位、0.5単位、0.25単位、0.125単位のSau3AIで30分間37℃で消化した。消化DNAをフェノール−CHCl3で2回、CHCl3で2回抽出し、エタノールで沈降させて精製した。ベクターpUC19 DNAをBamHI制限酵素により直鎖状にし、ウシ腸アルカリホスファターゼ(CIP)で脱リン酸化した。CIP処理した後、ベクターDNAをフェノール−CHCl3で2回、CHCl3で2回抽出し、エタノールで沈降させて精製した。
連結及び形質転換:Sau3AIで部分消化した10μgのゲノムDNAを、BamHI切断及びCIP処理したpUC19 DNA1μgと一晩16℃で連結させた。等量のTE緩衝液を加えて連結DNAを希釈し、ER1992(dinD1::lacZ+、hsdR、mcrA、mcrBC、mrr)コンピテント細胞の形質転換に用いた。形質転換細胞をアンピシリン(Ap)+Xgalプレート(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−D−ガラクトピラノシド、Xgal、0.016%w/v)上で平板培養し、37℃で一晩インキュベートした。10,000個の形質転換細胞中に24のブルーコロニーが見出された。各ブルーコロニーを10mlのLB+Apに接種し、振盪機中37℃で一晩インキュベートした。細胞を遠心して収穫し、1mlの音波処理緩衝液(10mM トリス−HCl、pH7.8、10mM β−メルカプトエタノール、10mg/ml リゾチーム)に再懸濁した。30秒間の音波処理を2回行って細胞の溶菌を完了した。不溶成分を遠心して除去し、上清を捕集して、以下のようなエンドヌクレアーゼ活性アッセイに用いた:1μgのλDNA基質を、10μlの細胞抽出物と共に、50mM NaCl、10mM トリス−HCl、10mM MgCl2、1mMDTTを含む緩衝液中65℃で1時間インキュベートした。DNAフラグメントを0.8%アガロースゲル中で分離し、臭化エチジウム染色により検出した。1つの分離物からの細胞抽出物は、BsoBIエンドヌクレアーゼ活性を含むことが判明した(図3、分離物#16参照)。この株からプラスミドDNAを抽出し、BsoBI制限インドヌクレアーゼで消化して耐性を調べた。該プラスミドDNAはBsoBIで切断されたが、これは、BsoBIメチラーゼ遺伝子が挿入物中に存在しないか、又は該メチラーゼ遺伝子が全く発現されないことを示している。BsoBIエンドヌクレアーゼ遺伝子(BsoBIR)を有するプラスミドをpBsoR1と命名した。BsoBIクローンの安定性を測定するために、ER1992[pBsoR1]細胞を37℃で増殖させ、プラスミドDNAを細胞から分離し、ER1992コンピテント細胞への再形質転換に用いた。再形質転換実験では、さらなる突然変異を最小限にするべく、形質転換細胞を30℃で平板培養した。形質転換細胞の67%がブルーコロニーを形成する(528個の形質転換細胞中356のブルーコロニー)のに対し、他の33%はホワイトコロニーを形成する(528個の形質転換細胞中172のホワイトコロニー)ことが知見された。プラスミドDNAをホワイトコロニーから分離し、制限消化により分析すると、該DNAが広範囲の欠失を示すことが見出された。ER1992[pBsoR1]細胞は37℃ではあまり安定ではないという結論を得た。pBsoR1を有するブルーコロニーを37℃の代わりに30℃で一晩インキュベートすると、ER1992[pBsoR1]細胞はより安定になる。30℃培養物から分離したプラスミドDNAを用いて再形質転換すると、形質転換細胞の99.6%が30℃でブルーコロニーを形成する(480のブルーコロニー、2つのホワイトコロニー)。pBsoR1(NEB#951)の試料は、ブダペスト条約の条項に基づき、1994年12月13日にAmerican Type Culture Collectionに寄託され、ATCC受託番号75966の元に受託された。
AvaI制限−修飾系をコードする遺伝子は、NewEngland Biolabsでクローン化された。AvaI及びBsoBIは同一の認識配列5′CPyCGPuG3′(配列番号7)を共有している。AvaIメチラーゼ遺伝子(avaIM)を有する1.8kbのPstIフラグメントをpAvaIRM12から消化し、pR976ベクター(pACYC184誘導体、TcR)にクローン化した。プラスミドpR976−AvaIM+をER1992(dinD::lacZ)細胞に形質転換して、E.coli染色体を予備修飾した。次いで、BsoBIエンドヌクレアーゼ遺伝子を有する第2のプラスミド、pBsoR1をpR976−AvaIM+を含む細胞に導入し、Xgalインジケータープレート上で平板培養した。該形質転換細胞はまだブルーコロニーを形成することが知見されたが、これは、AvaIメチラーゼがBsoBIエンドヌクレアーゼ損傷に対してE.coli染色体を保護しないことを示唆している。
プラスミドミニ調製手順:1.5mlの一晩培養物を14,000rpm/分で3分間ペレット化した。上清を流し出し、細胞ペレットを200mlのSTET緩衝液(50mM トリス−HCl、pH7.8、50mM EDTA、0.5% Triton−X100、8%スクロース)に再懸濁した。該細胞懸濁液に50μlのリゾチーム(10mg/ml)を加えた。溶解した細胞を沸騰水中で1分間沸騰させ、沈降物を14,000rpm/分で10分間スピンした。200μlの上清を捕集し、100μlの7.5M NH3Ac及び600mlの95%エタノールと混合した。室温で10分間14,000rpm/分で遠心してDNAを沈降させた。DNAペレットを1mlの70%エタノールで洗浄し、真空下に15分間乾燥した。乾燥したペレットを100μlのTE緩衝液+5μlのRNアーゼA(10mg/ml)に再懸濁した。
挿入物の制限マッピング:プラスミドDNA pBsoR1を種々の制限酵素で消化し、消化DNA産物をアガロースゲル電気泳動により分析した。制限マップを図5に示した。
bsoBIR遺伝子を、欠失マッピングにより8kbのゲノムDNA挿入物中の1.4kbのEcoNI/XbaIフラグメント内にマッピングした。全bsoBIR遺伝子を、サブクローン及び欠失クローン(SspIフラグメントサブクローン、AvrII/XbaIサブクローン、NlaIIIフラグメントサブクローン、Sau3AIフラグメントサブクローン、EcoNI/AvrIIサブクローン、AvrII/XhoI)並びに「プライマーウォーキング」から配列決定した。精製BsoBIエンドヌクレアーゼのN末端タンパク質配列は開始コドンの後の予測タンパク質配列〔(M)NTQKPFENHLKSVDDL(配列番号6の1−17アミノ酸に対応する)〕とマッチするので、bsoBIR遺伝子の開始コドンをTTGコドンと定めた。bsoBIR遺伝子の両側のDNAも配列決定して、8.0kbのDNAフラグメントにクローン化されているシトシンメチラーゼ遺伝子の一部が存在するかどうかを測定した。bsoBIM遺伝子又は該遺伝子の一部は、保存されたメチラーゼモチーフに基づいて同定し得る。bsoBIR遺伝子の後のDNA領域を配列決定し、6つのフレーム全てについて翻訳すると、保存されたN4シトシンメチラーゼモチーフが1個見つかった。この配列は、DPFLGSGTT(配列番号5の106−114アミノ酸に対応する)である。bsoBIM遺伝子の727pbのみが元の8.0kb挿入物上に存在していた。従って、逆PCRを用いてメチラーゼ遺伝子の残りの部分をクローン化した。HaeII及びNlaIII切断/自己連結したゲノムDNAの逆PCR産物のクローニング及び配列決定により、別の保存メチラーゼモチーフTSPPY(配列番号5の319−323アミノ酸に対応する)が見出された、メチラーゼ遺伝子の別の902bpを得た。全メチラーゼ遺伝子(1629bp)をゲノムDNAからlacRにより増幅し、pSX33lacIqにクローン化し、E.coli RR1コンピテント細胞に形質転換して、宿主を予備修飾した。bsoBIR遺伝子を含むBbsI/XbaIフラグメントを発現ベクターpRRSにクローン化して過産生構築物E.coli RR1(pSX33lacIq−BsoBIM+、pRRS−BsoBIR+)を得た。bsoBIM及びbsoBIR遺伝子の配列をそれぞれ図4−1〜図4−4に示す。
実施例2
Taq/R遺伝子のE.coli中でのクローニング
細菌DNAの精製を以下のように行った:5gのThermus aquaticus YT−1(ATCC 25104)細胞を、25%スクロース、50mM トリス−HCl、pH8.0を含む25mlの緩衝液中に懸濁した。該細胞懸濁液に、5mlの0.5M EDTA、pH8.0及び6mlのリゾチーム(10mg/ml)を加えた。室温で10分間インキュベートした後、36mlの溶菌緩衝液(1% Triton X−100、50mM トリス−HCl、pH8.0、62mM EDTA)及び5mlの10%SDSを加えて細胞を完全に溶解した。フェノール−CHCl3で2回、CHCl3で2回抽出してタンパク質を取り出し、1/10容量の3.5M 酢酸ナトリウム及び等量のイソプロパノールを加え、15,000rpm/分で遠心してゲノムDNAを沈降させた。DNAペレットを50mlの70%エタノールで洗浄し、真空下に乾燥した。DNAを10mlのTE緩衝液に再懸濁し、2リットルのTE緩衝液中4℃で一晩透析した。50μgのゲノムDNAを、1単位、0.5単位、0.25単位、0.125単位のSau3AIで30分間37℃で消化した。消化DNAをフェノールCHCl3で2回、CHCl3で2回抽出し、エタノールで沈降させて精製した。ベクターpBR322 DNAをBamHI制限酵素で直鎖状とし、ウシ腸アルカリホスファターゼ(CIP)で脱リン酸化した。ベクターDNAをフェノール−CHCl3で2回、CHCl3で2回抽出し、エタノールで沈降させて再度精製した。
Sau3AIで部分消化したゲノムDNAを、BamHIで切断し、CIP処理したpBR322 DNAと連結した。E.coli ER1992(dinD1::lacZ、mcrA、mcrBC、mrr)コンピテント細胞及び連結DNAを混合して、1回の形質転換実験から合計して約4,000のコロニーを得、形質転換細胞をAp+Xgalプレート上で平板培養する。10のブルーコロニーが見出された。各コロニーを10mlのLB+Apに接種し、振盪機中37℃で一晩インキュベートした。細胞を遠心して収穫し、1mlの音波処理緩衝液(10mM トリス−HCl、pH7.8、10mM β−メルカプトエタノール)+リゾチーム(10mg/ml)中に再懸濁した。音波処理により細胞の溶菌を完了した。65℃で30分間溶解物をインキュベートして、E.coliタンパク質を熱変性させた。不溶成分を遠心して除去し、上清をエンドヌクレアーゼ活性アッセイに用いた。λ又はpBR322 DNA基質を5μlの細胞抽出物と共に65℃で1時間インキュベートした。DNAフラグメントを0.8%アガロースゲル中で分離し、臭化エチジウム染色により検出した。細胞抽出物をpBR322基質上でエンドヌクレアーゼ活性について調べたが、2つの株はTaqIエンドヌクレアーゼを産生することがわかった(図2)。これら2つの株からプラスミドDNAを抽出し、TaqIエンドヌクレアーゼ消化にかけた。1方のプラスミドはTaqI消化に対して部分的に耐性であり、他方は完全に消化された。上記結果から、一方のクローンはTaqIメチラーゼ遺伝子を含み、他方のクローンは該遺伝子を含んでいないものと推論された。
TaqIエンドヌクレアーゼ収率を予測するために、1リットルの細胞培養物を37℃にし、細胞抽出物をその活性についてアッセイした。両株とも、湿潤細胞1g当たり5×104単位のTaqIを産生した。細胞抽出物は以下のように調製した:1リットルのLB+Apに5mlの一晩細胞を接種し、37℃で一晩振盪した。細胞を遠心し、細胞ペレットを20mlの音波処理緩衝液(10mM トリス−HCl、10mM β−メルカプトエタノール)中に再懸濁し、30秒バーストで10回音波処理し、15,000rpm/分で30分間遠心して、細胞破片を除去した。上清を、TaqI緩衝液(100mM NaCl、10mM トリス−HCl、10mM MgCl2)中65℃で1時間エンドヌクレアーゼ活性についてアッセイした。
実施例3
Tth111IR遺伝子のクローニング
Tth111I制限酵素を産生するThermus thermophilus 111(NEB#249)株からゲノムDNAを形成した。5gの細胞を、25%スクロース、50mM トリス−HCl,pH8.0を含む25mlの緩衝液に再懸濁した。該細胞懸濁液に5mlの0.5M EDTA、pH8.0及び6mlのリゾチーム(10mg/ml)を加えた。室温で10分間インキュベートした後、36mlの溶菌緩衝液(1%Triton X−100、50mM トリス−HCl、pH8.0、62mM EDTA)及び5mlの10%SDSを加えて、細胞を完全に溶解させた。フェノール−CHCl3で2回、CHCl3で2回抽出してタンパク質を取り出し、1/10容量の3.5M 酢酸ナトリウム及び等量のイソプロパノールを加え、15,000rpm/分で遠心してゲノムDNAを沈降させた。DNAペレットを50mlの70%エタノールで洗浄し、真空下に乾燥した。DNAを10mlのTE緩衝液に再懸濁し、2リットルのTE緩衝液中4℃で一晩透析した。50μgのゲノムDNAを、1単位、0.5単位、0.25単位、0.125単位のSau3AIで30分間37℃で消化した。消化DNAをフェノールCHCl3で2回、CHCl3で2回抽出し、エタノールで沈降させて精製した。ベクターpBR322 DNAをBamHI制限酵素で直鎖状とし、CIPで脱リン酸化した。ベクターDNAをフェノール−CHCl3で2回、CHCl3で2回抽出し、エタノールで沈降させて再精製した。Sau3AIで部分消化したゲノムDNAを、BamHI切断/CIP処理したpBR322 DNAと連結した。該DNA連結混合物をE.coli ER1992(dinD1::lacZ、mcrA、mcrBC、mrr)コンピテント細胞に形質転換した。8,000個の形質転換細胞中に40のブルーコロニーが見出された。これら40の株をエンドヌクレアーゼ活性について調べた。14の株はTth111Iエンドヌクレアーゼを産生した(図2)。Tth111I産生株からプラスミドDNAを作成し、Tth111I制限消化にかけた。12のプラスミドはTth111Iエンドヌクレアーゼにより直鎖状となった。これは、メチラーゼ遺伝子が同一フラグメント中には含まれていないか、又は37℃では発現されないことを示唆している。3つのプラスミドはTth111Iに対して部分的に耐性であり、これは、クローン化フラグメント上に同種メチラーゼ遺伝子が存在することを示している。
実施例4
メチラーゼ選択法とブルーコロニースクリーニング法の組合わせによるEcoO109IR遺伝子のクローニング
この実施例においては、制限エンドヌクレアーゼ遺伝子をクローニングするためにメチラーゼ選択法とエンドヌクレアーゼインジケーター法を組合わせる可能性をテストした。E.coli H709c(NEB#361)のゲノムDNAを実施例2に記載のように作成した。DNAを実施例2に記載のようにSau3AIで部分的に切断し、16℃で一晩pBR322(BamHIで直鎖状にし、CIP処理した)に連結した。該連結混合物を用いてE.coliRR1コンピテント細胞を形質転換した。合計105個の形質転換細胞をプールし、500mlのLB培地に接種した。細胞培養物を一晩37℃で振盪した。細菌細胞を遠心して収穫し、20mlの緩衝液P1(100μg/ml RNアーゼA、50mM トリス−HCl、10mMEDTA、pH8.0)に再懸濁した。20mlの緩衝液P2(100mM NaOH、1%SDS)を添加した後、室温で5分間インキュベートし、20mlの緩衝液P3(2.55M KAc、pH4.8)を加えた。4℃で30分間遠心(15,000rpm/分)して沈降物を除去した。上清を、緩衝液QBT(750mM NaCl、50mM MOPS、15%エタノール、pH7.0、0.15% TritonX−100)で予備平衡化した2つのQiagen中型カラムに装入した。プラスミドDNAを20mlの緩衝液QC(1M NaCl、50mM MOPS、15%エタノール,pH7.0)で洗浄し、5mlの緩衝液QF(1.25mM NaCl、50mM MOPS、15%エタノール、pH8.2)で溶離した。プラスミドDNAを等量のイソプロパノールで沈降させ、4℃で30分間遠心した。DNAペレットを70%エタノールで洗浄し、真空下に乾燥、1mlのTE緩衝液に溶解した。プラスミドライブラリーからの10μgのプラスミドDNAを100単位のEcoO109I制限酵素で3時間37℃で消化した。消化プラスミドDNAを用いて、E.coli ER1992(dinD1::lacZ、mcrA、mcrBC、mrr)を形質転換し、細胞をXgal+Apプレート上で平板培養した。120個の形質転換細胞中に14のブルーコロニーが見出された。14の株それぞれから10mlの細胞培養物を調製し、細胞抽出物を作成してλDNA基質上でEcoO109Iエンドヌクレアーゼ活性についてアッセイした。8つの株がEcoO109I制限エンドヌクレアーゼを産生することが判明した。メチラーゼ選択法とエンドヌクレアーゼインジケーター法を組み合わせることにより、メチラーゼ遺伝子のみを含むか又はチャレンジ後に切断部位を欠失したクローンは排除するが、エンドヌクレアーゼ遺伝子を単独で有するか又はエンドヌクレアーゼ遺伝子とメチラーゼ遺伝子とを共に有するクローンを同定し得る。
実施例5
熱安定性DNAヌクレアーゼ(TFヌクレアーゼ)をコードする遺伝子のクローニング
実施例2に記載のようにして、Thermus filiformis株からゲノムDNAを作成した。該DNAを実施例2に記載のようにSau3AIで部分的に切断し、16℃で一晩pBR322(BamHIで直鎖状にし、CIP処理した)に連結した。連結混合物を用いてE.coli ER1992コンピテント細胞を形質転換し、Xgal、Apプレート上で平板培養した。1回の形質転換実験から合計8,000個の形質転換細胞を得た。これらの形質転換細胞中に23のブルーコロニーが見出された。23のブルー分離物それぞれから、10mlの細胞培養物を作製し、細胞抽出物を(実施例2に記載のように)調製して、pBR322 DNA基質上でDNAヌクレアーゼ活性についてアッセイした。1つの分離物(#17)からの細胞抽出物は、pBR322二本鎖DNA上68℃のインキュベーション温度でDNAニック活性を示した。ヌクレアーゼ活性をさらにテストするために、M13mp18RF形態(二本鎖DNA)及び一本鎖形態を基質として用いた。この場合も、該ヌクレアーゼは二本鎖基質上でDNAニック活性を示す。該ヌクレアーゼを加えて一本鎖DNAを分解した。二本鎖DNA(λDNA又はM13RF形態)をヌクレアーゼと共に長時間(12時間)インキュベートすると、DNAも分解した。従って、Tfヌクレアーゼに好ましい基質は一本鎖DNAであるとの結論を得た。さらに、テストにより、該ヌクレアーゼは二本鎖DNAをエキソヌクレアーゼIIIで消化した後のような一方向欠失の適用に用い得、残りの一本鎖DNAはTfヌクレアーゼにより除去し得ることも判明した。
配列表
配列番号:1
配列の長さ:4
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:DNA(genomic)
配列
配列番号:2
配列の長さ:9
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:DNA(genomic)
配列
配列番号:3
配列の長さ:1629
配列の型:核酸
鎖の数:不明
トポロジー:不明
配列の種類:DNA(genomic)
配列
配列番号:4
配列の長さ:966
配列の型:核酸
鎖の数:不明
トポロジー:不明
配列の種類:DNA(genomic)
配列
配列番号:5
配列の長さ:542
配列の型:アミノ酸
鎖の数:不明
トポロジー:不明
配列の種類:タンパク質
配列
配列番号:6
配列の長さ:321
配列の型:アミノ酸
鎖の数:不明
トポロジー:不明
配列の種類:タンパク質
配列
配列番号:7
配列の長さ:6
配列の型:核酸
鎖の数:不明
トポロジー:不明
配列の種類:DNA(genomic)
配列
Claims (14)
- ヌクレアーゼをコードするDNAを分離する方法であって、
(a)ヌクレアーゼをコードする供給源からDNAライブラリーを形成するステップ;
(b)適切なクローニングベクターにステップ(a)のDNAを連結するステップ;
(c)ステップ(b)のクローニングベクターにより、(i)インジケーター/レポーター遺伝子に融合したDNA損傷誘発プロモーターを含み、(ii)mcrA、mcrBCまたはmrrに欠陥がある大腸菌宿主細胞を形質転換するステップ;
(d)インジケーター/レポーター遺伝子の発現産物と反応する基質及び適切な抗生物質を含むインジケータープレート上で、ステップ(c)の形質転換宿主細胞を平板培養/インキュベートするステップ;及び
(e)ステップ(d)の平板培養された形質転換宿主細胞から適切なコロニーを選択し、発現されたヌクレアーゼの存在についてスクリーニングするステップを含む前記方法。 - インジケーター/レポーター遺伝子に融合したDNA損傷誘発プロモーターがdinD1::lacZである、請求項1に記載の方法。
- インジケーター/レポーター遺伝子の発現産物と反応する基質がXgalである、請求項2に記載の方法。
- ダークブルーコロニーに対する培地を選抜することによりステップ(c)の選択を実施する、請求項2に記載の方法。
- ヌクレアーゼが制限エンドヌクレアーゼである、請求項1に記載の方法。
- 宿主細胞がmcrA、mcrBCまたはmrrに欠陥がある、請求項1に記載の方法。
- 宿主細胞が大腸菌ER1992である、請求項1に記載の方法。
- インジケーター/レポーター遺伝子に融合したDNA損傷誘発プロモーターを含み、mcrA、mcrBCまたはmrrに欠陥がある、ヌクレアーゼをクローン化するための大腸菌宿主細胞。
- 大腸菌ER1992である、請求項8に記載の宿主細胞。
- 配列番号4のヌクレオチド配列を有する、BsoBI制限エンドヌクレアーゼをコードする単離DNA。
- 配列番号6のアミノ酸配列を有するBsoBI制限エンドヌクレアーゼをコードするDNAセグメントが挿入されたベクターを含む組換えDNAベクター。
- 請求項10に記載の単離DNAを含むクローニングベクター。
- 請求項12に記載のクローニングベクターにより形質転換された大腸菌宿主細胞。
- BsoBI制限エンドヌクレアーゼを産生させる方法であって、該エンドヌクレアーゼの発現に適した条件下に請求項12に記載のベクターにより形質転換された宿主細胞を培養することを含む前記方法。
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