JP4035237B2 - 軸流送風機 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気調和機の室外機の送風機等に使用される軸流送風機に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、この種の軸流送風機の一例としては例えば図１０に示すように形成されたものがある。この軸流送風機１は、ハブ２周りに複数の翼３、３、３を周方向等分位置にて一体ないし一体的に取り付けている。
【０００３】
これら各翼３は、そのハブ２の中心０から半径方向に任意の距離ｒ離れた部分における周方向ａ−ｂの翼断面形状を、図１１に示すように翼３の負圧面側前縁部３ａから翼面３ｃにかけて流線形厚肉形状３ｄに形成している。この厚肉形状３ｄにより、図１２に示すように各翼３の負圧面側前縁部３ａから流入した空気流れｕが翼面３ｃの正、負圧面両面側を矢印に示すように流れ、空気流れｕが翼面３ｃから剥離することを抑制し、翼後縁部３ｂの後方にできる後流渦ｖｆを小さくして送風音を低減する効果があった。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の軸流送風機１では、これを空気調和機の室外機に送風機として組み込み、この送風機の単位時間当りの回転数（以下、単に回転数という。）を上昇させ、送風量の増加を図った場合、室外機内の静圧上昇が起こり、各翼３の負圧面側前縁部３ａに対する空気流れｕの流入角が変化して、翼面３ｃで流れの剥離が発生しやすくなり、送風音が増加してしまうという課題がある。
【０００５】
本発明は上記問題点を考慮してなされたもので、その目的は、翼の負圧面で発生する流れの剥離による送風音の増加を抑え、かつ、成形性が良好で安価な軸流送風機を提供することにある。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
請求項１の発明は、ハブ周りに複数の翼を配設した軸流送風機において、上記各翼の負圧面側前縁部に、その前縁端から翼後縁に向けてリブを複数個設け、各リブは、その送風機回転方向に沿う中心軸が、翼外周前縁側円弧部の中心を中心点とした円弧と翼前縁との交点を通ると共に、この円弧の接線に平行になるように配置されていることを特徴とする軸流送風機である。
【０００７】
この発明によれば、各翼の負圧面側前縁部の複数のリブにより、各翼の翼面境界層は層流から乱流への遷移が促進される。この乱流境界層の方が層流境界層よりも流れが剥離しにくいので、送風性能の向上と、送風騒音の低減とを共に図ることができる。
【０００８】
また、各リブを、その送風機回転方向に沿う中心軸が、翼外周前縁側円弧部の中心を中心点とした円弧と翼の負圧面前縁との交点を通ると共に、この円弧の接線に平行になるように配置しているので、各翼の負圧面側前縁から流入した空気流れがリブを通過する際に図４、図５で示すような縦渦列となり、翼面上を乱流境界層に遷移させることができる。この作用により、送風音の要因となる後流渦の幅を狭くし、送風音を低減することができる。
【０００９】
請求項２の発明は、複数個のリブは、それぞれ等間隔に配置され、その間隔は、送風機半径方向に沿う負圧面側前縁部の長さＬに対し、Ｌ／１２に設定されていることを特徴とする請求項１に記載の軸流送風機である。
【００１０】
この発明によれば、複数個のリブは等間隔に配置され、送風機半径方向に沿う負圧面側前縁部の長さＬに対して、Ｌ／１２の間隔で配置しているので、送風機内の静圧上昇が起こり、各翼の負圧側面前縁部に対する空気の流れの流入角が変化した場合においても、送風音を低減することができる。
【００１１】
請求項３の発明は、各リブはその送風機回転方向に沿う断面の外面が円弧をなし、その円弧外面の翼前縁端側の円弧曲面の半径の方が翼内面側の円弧曲面の半径よりも大きくなるように一体に形成されていることを特徴とする請求項１または２記載の軸流送風機である。
【００１２】
この発明によれば、各リブの送風機回転方向に沿う円弧断面において、その翼前縁端側の円弧曲面の半径の方を、翼内面側の円弧曲面の半径よりも大きくした方が、リブを空気の流れが通過する際にできる縦渦を安定して発生させることができ、送風音低減の効果をさらに向上させることができる。
【００１３】
請求項４の発明は、各リブは、その送風機回転方向に沿う翼外周側の長さｋをいずれも等しく設定していることを特徴とする請求項１〜３のいずれか１項に記載の軸流送風機である。
【００１４】
また、請求項５の発明は、各リブは、その送風機回転方向に沿う翼外周側の長さｋを、翼外周弦長Ｃ_Ｌに対し、ｋ：Ｃ_Ｌ＝１：９となるように設定していることを特徴とする請求項４に記載の軸流送風機である。
【００１５】
これら請求項４、５の発明によれば、各リブの送風機回転方向における翼外周側の長さｋをそれぞれ等しくすると共に、これらの各翼外周側の長さｋを、ｋ：Ｃ_Ｌ＝１：９となるように設定しているので、図６で示すように送風音の低減効果を最大にすることができる。
【００１６】
請求項６の発明は、各リブは、その翼厚方向に沿う断面高さを、ハブ側から翼外周方向に向かって漸次薄くなる翼前縁部断面の厚さとは逆に、ハブ側から翼外周方向に向かって漸次高くなるように徐変させていることを特徴とする請求項１〜５のいずれか１項に記載の軸流送風機である。
【００１７】
また、請求項７の発明は、複数個のリブは、その翼外周側に最も近いリブ高さをｈ_１、ハブ側に最も近いリブ高さをｈ_２としたときに、ｈ_１＝２ｈ_２となるように設定していることを特徴とする請求項１〜６のいずれか１項に記載の軸流送風機である。
【００１８】
これら請求項６、７の発明によれば、翼前縁部の厚さは図８で示すようにハブ側から翼外周側へ向かって漸次薄くなるように徐変されているので、この翼厚変化とは反対にリブの断面の高さｈを、ハブ側から翼外周方向に向かって漸次高くなるように徐変し、翼外周側のリブの高さをｈ_１、ハブ側のリブの高さをｈ_２とした場合、ｈ_１＝２ｈ_２となるように形成すると、各リブの高さと、翼前縁部の厚さを含めた前縁部の断面厚さが送風機半径方向でいずれの箇所においてもほぼ等しくなる。したがって、この軸流送風機を樹脂成形により一体成形する際には、冷却時間の短縮と肉ひけ等を防止することができる。
【００１９】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図１〜図９に基づいて説明する。これらの図中、同一または担当部分には同一符号を付している。
【００２０】
図２は本発明の第１の実施形態に係る軸流送風機１１の負圧面側から見た斜視図、図１はこの軸流送風機１１の一部を省略した負圧面側の正面図である。この軸流送風機１１は、図示しない駆動モータの回転軸が固定される円筒状のハブ１２の外側周面に、複数枚の翼１３、１３、１３を周方向等分位置にて一体ないし一体的に取り付けている。
【００２１】
そして、図１にも示すように軸流送風機１１は各翼１３の前縁部１３ａの負圧面側前縁部１３ｂに、その前縁フィレット１３ｃから後縁部１３ｄに向けて滑らかに連なる流線形リブ１４の複数個を送風機半径方向に所定の間隔を置いて列状に並設している。
【００２２】
また、図１に示すように各流線形リブ１４は、翼外周前縁側円弧部１３ｅの中心をＰとした時、このＰを中心点とした複数の異径同心円の各円弧α_ｎ，α_ｎ…と前縁フィレット１３ｃの前縁端との交点Ｓ_ｎを通ると共に、これらの各円弧α_ｎの接線に、各流線形リブ１４の送風機回転方向に沿う中心軸がそれぞれ平行になるよう配置されている。
【００２３】
さらに、図１に示すように、複数個の流線形リブ１４は、送風機半径方向に等間隔に配置され、その間隔は負圧面側前縁部１３ｂの送風機半径方向に沿う長さＬに対して、Ｌ／１２に設定されている。
【００２４】
図３は各流線形リブ１４をその軸方向に沿う図１中Ｘａ−Ｘｂ方向に切断したときの切断部の断面の外面（図３では上面）が流線形の円弧状断面を形成している点を示している。各流線形リブ１４は、その翼前縁部１３ａ側（図１、図３ではＸａ側）端部の円弧曲面１４ａの半径Ｒ_１の方が、翼後縁部１３ｄ側（図１、図３ではＸｄ側）端部の円弧曲面１４ｄの半径Ｒよりも大きくなるように形成されている。
【００２５】
図４はこのように構成された軸流送風機１１の作用を示す一部省略正面図、図５は同様に軸流送風機１１の各翼１３の周方向断面図である。この図４、図５に示すように、空気流れｕが各翼１３の前縁フィレット１３ａから翼内面１３ｆ側へ図中太線矢印に示すように流入して、複数の流線形リブ１４を通過すると、その際に、複数の空気流れｕが図中小矢印で示すようにそれぞれ縦渦列１５となり、翼内面１３ｆ上を乱流境界層に遷移させることができる。この乱流境界層は層流境界層よりも流れの剥離を抑制することができ、送風音の要因となる後流渦の幅を狭くするので、送風音を低減することができる。
【００２６】
図６は複数個の流線形リブ１４を送風機半径方向に沿って等間隔で並設し、この間隔を負圧面側前縁部１３ｂの送風機半径方向に沿う長さＬに対して、Ｌ／８からＬ／１６まで変化させた場合の騒音低減効果を示している。図６から明らかなように、Ｌ／１２の場合に最も大きい騒音低減効果が得られる。すなわち、このように形成された軸流送風機１１を例えば空気調和機の室外機に組み付けた場合は室外機内の静圧上昇が発生して、翼送風機半径方向に沿う負圧面側前縁部１３ｂに対する流れの流入角γ（図４参照）が変化した場合においても、送風音を低減させることができる。
【００２７】
そして、図７に示すように各流線形リブ１４は、その送風機回転方向における各々の翼外周１３ｇ側の長さｋをいずれも等しくなるように形成していると共に、翼外周１３ｇの弦長をＣ_Ｌとした場合、ｋ：Ｃ_Ｌ＝１：９となるように設定しており、これにより送風騒音を一層低減することがきる。
【００２８】
図８は各翼１３の負圧面側前縁部１３ａの送風機半径方向に沿う断面を示しており、その断面の厚さｈ_０はハブ１２側Ｚａから翼外周１３ｇ側Ｚｂへ行くに従って漸次薄くなるように除変されている。
【００２９】
一方、図９に示すように各流線形リブ１４の高さｈはハブ１２側Ｙａから翼外周１３ｇ側Ｙｂへ行くに従って漸次高くなるように徐変されており、翼外周１３ｇ側の流線形リブの高さｈ_１と、ハブ１２側の流線形リブ１４の高さｈ_２とは、ｈ_１＝２ｈ_２となるように形成されている。すなわち、各流線形リブ１４の高さｈが増して行く方向と、翼負圧面側前縁部１３ａの厚さを増して行く方向とが正反対であるので、この翼負圧面側前縁部１３ａの厚さｈ_０を含めた断面厚さｈtがいずれの箇所でもほぼ等しくなる。このため、軸流送風機１１の樹脂成形時による一体成形の冷却時間の短縮および肉ひけ等を防止ないし低減することができる。
【００３０】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は各翼の負圧面側前縁部に、リブを複数個設け、かつ、これらリブを、その中心軸が、翼外周前縁側円弧部の中心を中心点とした円弧と前縁端との交点を通ると共に、この円弧の接線に平行になるよう配置しているので、翼負圧面上にて空気流れの縦渦列を発生させ、流れの剥離を抑制することができ、ひいては翼後縁端にできる後流渦幅を小さくし、送風音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明の一実施形態に係る軸流送風機の翼負圧面側から見たときの一部省略正面図。
【図２】 図１で示す軸流送風機の全体を翼負圧面側から見たときの斜視図。
【図３】 図２で示す流線形リブのＸａ−Ｘｂ線に沿う切断部の断面図。
【図４】 図１等で示す実施形態の作用を説明するための一部省略正面図。
【図５】 図４で示す各翼の周方向断面図。
【図６】 図１等で示す実施形態に係る各翼の負圧面側前縁部の長さＬと、流線形リブどうし間の間隔との比と、送風騒音低減効果との相対関係を示すグラフ。
【図７】 本発明の一実施形態における各流線形リブの翼外周側長さｋと翼外周の長さＣ_Ｌとを示す一部省略正面図。
【図８】 本発明の一実施形態における各翼の負圧面側前縁部の送風機半径方向に沿う断面図。
【図９】 図７のＹａ−Ｙｂ線に沿う切断部の断面図。
【図１０】 従来の軸流送風機の翼負圧面側から見たときの正面図。
【図１１】 図１０の翼を任意の半径ｒで周方向に切断した時の翼断面図。
【図１２】 図１０で示す従来の軸流送風機の空気流れを示す翼断面図。
【符号の説明】
１１ 軸流送風機
１２ ハブ
１３ 翼
１３ａ 翼の前縁部
１３ｂ 翼の負圧面側前縁部
１３ｃ 翼の前縁フィレット
１３ｄ 翼の後縁部
１３ｅ 翼外周前縁側円弧部
１３ｆ 翼内面

Claims (7)

1. ハブ周りに複数の翼を配設した軸流送風機において、上記各翼の負圧面側前縁部に、その前縁端から翼後縁に向けてリブを複数個設け、各リブは、その送風機回転方向に沿う中心軸が、翼外周前縁側円弧部の中心を中心点とした円弧と翼前縁との交点を通ると共に、この円弧の接線に平行になるように配置されていることを特徴とする軸流送風機。
2. 複数個のリブは、それぞれ等間隔に配置され、その間隔は、送風機半径方向に沿う負圧面側前縁部の長さＬに対し、Ｌ／１２に設定されていることを特徴とする請求項１に記載の軸流送風機。
3. 各リブは、その送風機回転方向に沿う断面の外面が円弧をなし、その円弧外面の翼前縁端側の円弧曲面の半径の方が翼内面側の円弧曲面の半径よりも大きくなるように一体に形成されていることを特徴とする請求項項１または２に記載の軸流送風機。
4. 各リブは、その送風機回転方向に沿う翼外周側の長さｋをいずれも等しく設定していることを特徴とする請求項１〜３のいずれか１項に記載の軸流送風機。
5. 各リブは、その送風機回転方向に沿う翼外周側の長さｋを、翼外周弦長をＣ_Ｌに対し、ｋ：Ｃ_Ｌ＝１：９となるように設定していることを特徴とする請求項４に記載の軸流送風機。
6. 各リブは、その翼厚方向に沿う断面高さを、ハブ側から翼外周方向に向かって漸次薄くなる翼前縁部断面の厚さとは逆に、ハブ側から翼外周方向に向かって漸次高くなるように徐変させていることを特徴とする請求項１〜５のいずれか１項に記載の軸流送風機。
7. 複数個のリブは、その翼外周側に最も近いリブ高さをｈ_１、ハブ側に最も近いリブ高さをｈ_２としたときに、ｈ_１＝２ｈ_２となるように設定していることを特徴とする請求項１〜６のいずれか１項に記載の軸流送風機。

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