JP4034791B2 - 塩化ビニル樹脂の再生方法 - Google Patents
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Description
斯かる方法によれば、低級エステル化合物の低級アルコールに対する溶解性が非常に高いため、可塑剤たる低級エステル化合物の含有量が少ない塩化ビニル樹脂を、低級アルコール中に析出させて再生させることができる。
従って、再利用できる塩化ビニル樹脂とするためには、内部に含まれる溶剤を乾燥等によって除去する必要がある。
また、溶剤によっては前記乾燥工程において、塩化ビニル樹脂の溶融温度を越えるため、塩化ビニル樹脂が溶融し、場合によっては分解してしまうおそれがある。
さらに、再生された塩化ビニル樹脂は、塊状であるため、再利用の際に適宜裁断等を要し、ハンドリング性が低いという問題を有している。
a)塩化ビニル樹脂及び前記可塑剤の溶媒である第1溶剤に前記可塑剤含有塩化ビニル樹脂を溶解させる溶解工程、
b)溶解工程により得られた溶液に、前記可塑剤の溶媒で前記塩化ビニル樹脂の非溶媒であり且つ前記第1溶剤に対して相溶性のある前記第1溶剤よりも沸点の高い第2溶剤を、蒸気状態で添加し、該溶液から塩化ビニル樹脂を析出させる析出工程、
c)析出工程にて析出した塩化ビニル樹脂を溶液と分離し回収する回収工程。
斯かる塩化ビニルの再生方法に於いては、第1溶剤が、塩化ビニル及び可塑剤の溶媒であることから、溶解工程によって、塩化ビニル及び可塑剤が溶解された溶液を得ることができる。更に、第2溶剤が可塑剤の溶媒であり且つ塩化ビニル樹脂の非溶媒であることから、析出工程に於いては、前記溶液に第2溶剤を供給することにより、第2溶剤の濃度がある一定以上になると一気に塩化ビニル樹脂が析出し、可塑剤が溶解されたまま維持されることとなる。
従って、可塑剤含有量の少ない塩化ビニル樹脂を析出させて再生させることができる。
また、析出工程に於いては、第2溶剤を蒸気状態にして添加することから、第2溶剤濃度がある一定以上になった際に、蒸気状態の第2溶剤と前記溶液とが接触する局所局所に於いて塩化ビニル樹脂が析出するため、非常に微細で且つ内部の溶剤含有量の少ない顆粒状の塩化ビニル樹脂を析出させることができる。
尚、第2溶剤の沸点は、第1溶剤の沸点よりも高いため、第2溶剤を蒸気状態で添加した際に、第2溶剤よりも沸点の低い第1溶剤は蒸発し、溶液中から第1溶剤を除去することができ、効率よく塩化ビニル樹脂を析出させることができる。
ここで、第1溶剤及び第2溶剤の沸点とは大気圧下に於ける沸点を意味する。
また、塩化ビニル樹脂の溶媒とは塩化ビニル樹脂を溶解可能なものをいい、塩化ビニル樹脂の非溶媒とは塩化ビニル樹脂を溶解しないものをいう。同様に可塑剤の溶媒とは可塑剤を溶解可能なものをいう。
斯かる方法に於いては、一旦第1溶解工程にて可塑剤及び塩化ビニル樹脂を溶解させ、第2溶解工程に於いて、該溶液から可塑剤含有量の減少した可塑剤含有塩化ビニル樹脂を析出させ、更に、これを溶解させて前記析出工程を行うので、可塑剤をより確実に除去しつつ、顆粒状の塩化ビニル樹脂を得ることができる。
また、このようなケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンを良好に使用できる。特に、塩化ビニル樹脂の溶解度が高く、沸点が低いことからメチルエチルケトンを良好に使用できる。
また、前記第3溶剤としては、これら第2溶剤の他、メタノール、エタノール等を利用することもできる。特に、第1溶剤と相溶性があり、かつ、可塑剤の溶解性が高いことから、第3溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールを利用するのが好ましい。
図1は、本実施形態の塩化ビニル樹脂の再生方法を示す概略フロー図である。
ここでは、第1溶剤としてケトン系溶剤Bを使用し、第2溶剤として前記第1溶剤よりも沸点の高いアルコールを使用した場合について説明する。
まず、可塑剤として低級エステル化合物Cを含有する可塑剤含有塩化ビニル樹脂A及びケトン系溶剤Bを溶解槽1に供給して攪拌し、可塑剤C及び塩化ビニル樹脂Eをケトン系溶剤Bに十分に溶解させ、塩化ビニル樹脂溶液とする(溶解工程(a))。
斯かる工程に於いて、可塑剤含有塩化ビニル樹脂Aの樹脂成分に対するケトン系溶剤Bの添加量は、樹脂成分100重量部に対して、500〜2000重量部であることが好ましい。
500重量部以上とすることにより可塑剤含有塩化ビニル樹脂A中の塩化ビニル樹脂E及び可塑剤Cを十分に溶解できる。尚、ケトン系溶剤Bの使用効率の観点からは、通常、2000重量部より多く用いる必要性に乏しい。
塩化ビニル樹脂Eは、農業用ビニールシート、電線、壁紙等の種々の用途に用いられることから、該溶液には、通常土、紙、木、銅線等の粗雑物Fが含まれているため、斯かる操作によってこれらの粗雑物Fが除去されることとなる。
斯かる操作により、濾過工程(b)によって分離されなかった微細な非溶解物、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン等の充填剤Gが除去されることとなる。
即ち、十分に攪拌を行いつつ、塩化ビニル樹脂Eが析出するまで、可塑剤C及び塩化ビニル樹脂Eの溶液に蒸気状態の低級アルコールDを添加し続ける。
このとき、第2溶剤として沸点が第1溶剤よりも高いものを選択することにより、第2溶剤の添加による析出と、第1溶剤の除去を同時に行うことが可能となる。
低級アルコールDは、塩化ビニル樹脂の溶媒であることから、低級アルコールDの添加された塩化ビニル樹脂E等の溶液に於いては、徐々にアルコール濃度が高くなり、溶媒の塩化ビニル樹脂Eに対する溶解性が低下し、アルコール濃度がある一定の濃度を超えると、低級エステル化合物Cを殆ど含まない塩化ビニル樹脂Eが一気に析出することとなる。本実施形態に於いては、この析出に際して、低級アルコールDを蒸気状態にして塩化ビニル樹脂E等の溶液に添加するため、該溶液と低級アルコールDとの接触箇所を点在させることができることから、接触箇所の各所で微細な顆粒状の塩化ビニル樹脂Eを析出させることができる。
尚、可塑剤たる低級エステル化合物Cは、ケトン系溶剤B及び低級アルコールDの何れに対しても非常に溶解性が高いことから、溶剤中に溶解した状態で維持されることとなる。
添加量としては、それ以上添加しても沈殿槽5内の溶媒の沸点が第2溶剤の沸点とほぼ同じになるまで添加するのが好ましい。つまり、第2溶剤を蒸気状態で添加することにより、第2溶剤よりも沸点の低い第1溶剤は蒸発除去され、槽内から第1溶剤がほとんど除去され、第2溶剤のみ残存することから、沈殿槽5内の溶媒の沸点は第2溶剤の沸点とほぼ同じになる。尚、析出工程(d)に於いては、必要に応じて沈殿槽5を加熱してもよい。
斯かる蒸留工程(f)により、アルコールDを分離して回収することができ、更に、回収したアルコールDを、沈殿槽1にて用いるアルコールD、即ち塩化ビニル樹脂E等の溶液に添加する低級アルコールDとして再利用することができる。また、可塑剤Cも回収し、必要に応じて再利用することができる。
尚、析出工程(d)にて蒸発除去したケトン系溶剤Bを必要に応じ回収して蒸留し、溶解槽1にて用いるケトン系溶剤B、即ち、可塑剤含有塩化ビニル樹脂A中の塩化ビニル樹脂E及び可塑剤Cを溶解するケトン系溶剤Bとして再利用することもできる。
また、ケトン系溶剤Bとしては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン等の内の少なくとも1種以上を用いることができる。
これらのケトン系溶剤Bの中でも、塩化ビニル樹脂E及び低級エステル化合物Cに対する溶解性が非常に高いことから、メチルエチルケトンを用いることが好ましい。
尚、本実施形態に於いてはケトン系溶剤を利用する方法について記載したが、本発明に於いてはこれに限定されず、塩化ビニル樹脂の良溶媒であれば用いることができる。このような溶媒としては、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン等を挙げることができる。
ケトン系溶剤Bとしてメチルエチルケトン、テトラヒドロフランを使用した場合、上記のアルコールの中でも、塩化ビニル樹脂Eの溶解度が低く且つ低級エステル化合物Cの溶解度が高く、しかも、上記第1溶剤Bに対する親和性に優れ、更に、第1溶剤よりも沸点が高いという観点からは、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールの少なくとも1種を好ましく用いることができる。
即ち、第2溶剤は攪拌下に蒸気状態で添加されるため、塩化ビニル樹脂Eは第2溶剤中に顆粒状で析出するが、析出時に塩化ビニル樹脂中の可塑剤は第2溶剤中に溶解し、このとき、各溶媒の沸点差が大きい場合、沸点差が小さい場合に比べ、第1溶剤の蒸発が早く進み、塩化ビニル樹脂の表面及び内部に小さな空隙が形成された顆粒状粒子を得ることができる。
この理由は、各溶媒の沸点差が小さい場合は第1溶剤がゆっくりと蒸発するため、析出しつつある塩化ビニル樹脂粒子の内部では、第1溶剤が除去されてできた空隙内に、該空隙を埋めるように、新たな塩化ビニル樹脂Eが徐々に析出して、結果的に空隙の少ないものとなるが、沸点差が上記の如く高い場合には、第1溶剤の除去と塩化ビニル樹脂粒子の析出が略同時進行で進むことから、結果として、より空隙の多い顆粒状粒子が得られるものと考えられる。
そして、空隙の多い塩化ビニル粒子は、再利用する際に、その空隙の多さのために、従来の再生塩化ビニル樹脂Eに比べて非常に可塑剤や添加剤を吸収し易いため、バージンの塩化ビニル樹脂と同様にドライアップ性に優れ貯蔵性や成形性に優れるといった効果を有する。
さらに、従来技術では可塑剤等が残存していたため、再生した塩化ビニル樹脂Eの再利用先が限定されていたが、得られる塩化ビニル樹脂Eは充填材や可塑剤といった添加剤をほとんど含まない高品質な塩化ビニル樹脂Eであるため、バージンの塩化ビニル樹脂と同様に様々な用途に利用することができる。
例えば、本実施形態に於いては、塩化ビニル樹脂等の溶液から粗雑物Fを除去する濾過工程(b)や充填材G等の微細な非溶解物を除去する比重分離工程(c)を行ったが、例えば、可塑剤含有塩化ビニル樹脂Aに粗雑物Fや充填材Gが殆ど配合されていないものから塩化ビニル樹脂Eを再生させる場合に於いては、濾過工程(b)や比重分離工程(c)を特に行わなくてもよい。
塩化ビニル樹脂E及び可塑剤Cの溶媒である第1溶剤に前記可塑剤含有塩化ビニル樹脂を溶解させる第1溶解工程(a1)と、
第1溶解工程(a1)により得られた溶液に、可塑剤Cの溶媒で前記塩化ビニル樹脂Eの非溶媒であり且つ第1溶剤に対して相溶性のある第3溶剤Hを添加し、該溶液から可塑剤含有塩化ビニル樹脂Aを析出させて固液分離し(i)、固液分離後、更に、塩化ビニル樹脂E及び可塑剤Cの溶媒である第1溶剤に、析出した可塑剤含有塩化ビニル樹脂Aを溶解させる第2溶解工程(a2)とを実施する。
ここで、第3溶剤Hとしては、前述した如く可塑剤Cを溶解し、塩化ビニル樹脂Eの非溶媒であるアルコール(特に、メタノール、エタノール、プロパノール)等を利用することができる。
第1溶解工程(a1)と第2溶解工程(a2)とを実施した場合、第2溶解工程(a2)に於いて、第3溶剤Hの添加により、可塑剤Cは第3溶剤H中に溶解した状態で残存し、塩化ビニル樹脂Eが第3溶剤中に析出するため、予め、可塑剤含有量の減少した可塑剤含有塩化ビニル樹脂Aとすることができ、この可塑剤含有塩化ビニル樹脂Aを第1溶剤Bに再度溶解させることから、可塑剤濃度の低減された溶液を得ることができる。従って、後の析出工程(d)に於いて、より充分に可塑剤Cの除去された塩化ビニル樹脂Eを析出させることができる。
尚、第2溶解工程に於いて、可塑剤含有塩化ビニル樹脂Aの析出後、固液分離(i)を行うことで、可塑剤Cを含む第3溶剤H 及び第1溶剤Bの混合液と可塑剤含有塩化ビニル樹脂Aとに分離されるが、可塑剤Cを含む前記混合液を、蒸留(g)によって可塑剤Cと第1溶剤Bと第3溶剤Hとに分離し、必要に応じて更に蒸留(h)を行い、それぞれ再利用してもよい。
(a)・・・溶解工程、 (d)・・・析出工程、 (e)・・・回収工程
Claims (6)
- 可塑剤として低級エステル化合物が配合された可塑剤含有塩化ビニル樹脂から、塩化ビニル樹脂を再生させる塩化ビニル樹脂の再生方法であって、
a)塩化ビニル樹脂及び前記可塑剤の溶媒である第1溶剤に前記可塑剤含有塩化ビニル樹脂を溶解させる溶解工程、
b)溶解工程により得られた溶液に、前記可塑剤の溶媒で前記塩化ビニル樹脂の非溶媒であり且つ前記第1溶剤に対して相溶性のある前記第1溶剤よりも沸点の高い第2溶剤を、蒸気状態で添加し、該溶液から塩化ビニル樹脂を析出させる析出工程、
c)析出工程にて析出した塩化ビニル樹脂を溶液と分離し回収する回収工程、
の工程を含み、
前記溶解工程は、塩化ビニル樹脂及び前記可塑剤の溶媒である第1溶剤に前記可塑剤含有塩化ビニル樹脂を溶解させる第1溶解工程と、
第1溶解工程により得られた溶液に、前記可塑剤の溶媒で前記塩化ビニル樹脂の非溶媒であり且つ前記第1溶剤に対して相溶性のある第3溶剤を添加し、該溶液から可塑剤含有塩化ビニル樹脂を析出させ、分離後、更に、塩化ビニル樹脂及び前記可塑剤の溶媒である第1溶剤に、析出した可塑剤含有塩化ビニル樹脂を溶解させる第2溶解工程と
を含むことを特徴とする塩化ビニル樹脂の再生方法。 - 前記第2溶剤の添加を減圧状態で行うことを特徴とする請求項1記載の塩化ビニル樹脂の再生方法。
- 前記第3溶剤がアルコールであることを特徴とする請求項1又は2記載の塩化ビニル樹脂の再生方法。
- 前記第1溶剤がケトン系溶剤であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の塩化ビニル樹脂の再生方法。
- 前記低級エステル化合物がジオクチルフタレートであることを特徴とする請求項4に記載の塩化ビニル樹脂の再生方法。
- 前記第2溶剤がアルコールであることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の塩化ビニル樹脂の再生方法。
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