JP4034644B2 - 翼付き鋼管杭 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、無排土で埋設を行うことのできる翼付鋼管杭に関するもので、特に、コストの低減が図れるとともに、施工効率がよく、小型機械での施工を可能とし、また、硬質地盤でも貫入性の優れた、下端開放型の翼付鋼管杭に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
建築物の基礎杭工法としては、場所打ち杭、コンクリートパイルや鋼管杭の埋設工法等各種あるが、無排土でかつ施工性がよいことから、大径の螺旋翼を設けた鋼管杭(翼付鋼管杭)を回転させて地中にネジ込んで行く工法が多く用いられるようになってきた。
【0003】
翼付鋼管杭としては、杭本体の、先端閉塞形のものと、先端開放形のものとがある。先端閉塞形の杭の場合は、杭本体の体積分の土砂を杭側面に押出し圧密させながら回転推進するので、大径の杭や硬質地盤では、土砂抵抗が過大となり、埋設が困難となるため、小径の短尺杭や軟質地盤における施工に限られる。先端開放形の杭は、大径杭や硬質地盤における施工が行えるように開発されたものである。
【0004】
この種翼付鋼管杭では、図5(イ)に示すように、杭本体1にかかる荷重は翼部2で受けるので、翼部2を挟んで杭本体1に大きな曲げ応力aがかかるので、その応力に耐えられるようにするため、杭本体1の肉厚を厚くする必要があり、それだけコスト高となっており、この点が翼付鋼管杭の普及を妨げている大きな理由の一つとなっている。しかし、この問題点の解決に関しては、記載すべき先行技術文献がない。
【0005】
また、先端開放形の翼付鋼管杭では、翼部前半が土砂に食い込み回転推進し、翼部後半の半周では、推進とともに土砂を押さえ込む作用をし、翼下の土砂は流動して杭の下方と側面に押出されるが、杭先端の側面土砂を押し出すより、抵抗の少ない杭先端の開放部には、杭先端断面積以上の土砂が杭内部に流入することになる。そのため、杭の深度が深くなるにつれ、杭内部に土砂が詰まり、内部閉塞状態となり、先端閉塞形の杭と同様、先端抵抗が増加し推進不能の状態が生じ、施工に長時間を要し、硬質な支持層にはさらに杭埋設推進が困難になる、といった問題が指摘されている。
【0006】
このような問題点を解決するための方策として、従来、杭内部にオーガーを入れて内部閉塞土砂の掘削を行うこと、及び、杭先端内部に圧縮流体を噴出して内部閉塞土砂の掘削を行うことが提案されている(特許文献1参照)。また、他の方策としては、杭先端の開放内に螺旋内部翼を設け、杭先端部に入った土砂を上方に送り、閉塞状態を解消するようにしているものもある(特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−220830号公報
【0008】
【特許文献2】
実公平6−24420号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、翼付鋼管杭では、杭本体の肉厚を極力薄くしてコストの低減を図ることが大きな課題である。そのためには、翼部で受けた荷重による杭本体の曲げ応力を極力少なくするための方策が必要である。また、先端開放形とした翼付鋼管杭においても、杭先端部内の土砂の詰りによる閉塞状態の解消を図ることが重要となっている。
【0010】
しかし、特開2002-220830号の方法では、オーガーを用いて杭内部の土砂を掘削し、さらには、圧力流体を噴射して土砂を掘削するため、施工が非常に面倒で、回転圧入機械以外の機械類を使用することから、施工時間が長く、しかも経費も余分にかかるばかりでなく、オーガー掘削により排出される土砂を処理しなければならないといった問題がある。
【0011】
また、実公平6-24420号公報の杭では、杭本体内に螺旋翼を設けたことにより、杭先端部内への土砂の詰まりはある程度解消されるが、杭側面から流入してくる土砂はかなり大量であるため、杭下端部の閉塞状態を解消するには不十分である、という問題がある。
【0012】
本発明は、上記のような、従来の翼付鋼管杭の各問題点を解決するためになされたもので、杭の外側に突設している螺旋翼を、杭の内側にも突出させて設けることにより、杭本体の曲げ応力を軽減させ、それによって杭本体の肉厚を薄くできるようにし、杭コストの低減化を図るとともに、螺旋翼の取付位置を杭本体下端より杭本体径の1.5倍前後のところに設定するようにして、回転ネジ込みによる施工において、杭下端部が土砂により閉塞することがなく、硬質地盤での施工でも小型機械で能率よく埋設することができるようにした、ネジ込み式の翼付鋼管杭を安価に提供しようとするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成させるための本発明の構成について、添付の図面を参照して説明すると、請求項1の翼付鋼管杭は、杭本体1の下端部に、杭本体1の外側に突出する外翼部2aから、杭本体1の内側に突出する内翼部2bにわたり一体成型した、大径広巾のほぼ一巻きのドーナツ形の螺旋翼2を設け、この螺旋翼2の下面に、杭本体1と同径とし、下端部に掘削刃6を突設した延長管3を、杭本体1と同心に結合したことを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項2の翼付鋼管杭は、請求項1の翼付鋼管杭において、螺旋翼2を設けた個所より、この螺旋翼2の外径以上の上方に距離を隔てた杭本体1の外周に、この螺旋翼2よりさらに大径とした上部螺旋翼7を突設したことを特徴とするものである。
【0015】
また、請求項3の翼付鋼管杭は、請求項1の翼付鋼管杭において、螺旋翼2を設けた個所より上部の杭本体1の外周に、その長さ方向にほぼ等間隔をおいて、この螺旋翼2より一定の比率で大径とした複数の螺旋翼7a,7b,7cを突設したことを特徴とするものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1、図2は、本発明の一実施態様を示し、図3、図4はそれぞれ本発明の他の実施態様を示したものである。
【0017】
本発明の翼付鋼管杭は、図1、図2に示すように、鋼管製の杭本体1と、約一巻きにわたる螺旋翼2と、この螺旋翼2の下面に結合された延長管3とからなる。
【0018】
螺旋翼2は、杭本体1の径dの2〜3倍の外径D1を有し、杭本体1の径の1/2〜1/3程度の内径D2を有する平面ドーナツ形に形成されている。杭本体1の下端面は、上記螺旋翼2の上面に沿うように螺旋状に形成され、その始端と終端間には、螺旋翼2の始端と終端を結ぶ線に沿った側断面4が形成されている。上記の螺旋翼2は、上記杭本体1の下端に同心状態で溶接により結合される。それによって、杭本体1の外側には外翼部2aが突出し、杭本体1の内側には内翼部2bが突出したものとなる。
【0019】
そして、杭本体1に結合した螺旋翼2の下面には、杭本体1と同径の延長管3が同心状態で溶接により結合される。この延長管3は、結合される上端面が、上記螺旋翼2の下面に沿うように螺旋状に形成され、その始端と終端間には、杭本体1の側断面4と接合する側断面5が形成されており、また、延長管3の下端は水平面をなし、その下端部には周方向に間隔をおいて複数の掘削刃6が突設されている。そして、この延長管は、螺旋翼2の始端aから下端までの長さLが杭本体径の1.5倍前後の長さとなるようにされている。
【0020】
それにより、この翼付鋼管杭は、全体として、杭本体1(延長管3を含む)の下端から杭本体径dの1.5倍前後の上方位置に、杭本体径dの2〜3倍の外径を有する螺旋翼2がほぼ一巻きにわたり、その内側部分を杭本体1内にも突出して設けたものとなる。
【0021】
上記構成の翼付鋼管杭の埋設にあたっては、杭本体1の上端部に図示を省略した回転押込み装置を取付け、その駆動によって杭本体1を回動しながら地中にネジ込んで行くのである。それにより、下端の掘削刃6の作用で、杭先端部の土砂は掘削軟化、流動化し、杭本体下方の土砂は延長管3の開放された下端から管内に流入し、また、螺旋翼2は回転により地盤にネジ込まれて行き、杭を地中に推進埋設することになる。その際、螺旋翼2は推進とともに土砂を押さえ込む作用をし、翼下の土砂は流動して杭の下方と側面に押し出され、杭側面を地盤を圧密することになり、従来杭では、翼下の土砂の一部が杭本体内に押し込まれることになるが、この翼付鋼管杭では、螺旋翼が杭本体1の下端から杭本体径の1.5倍前後上方位置に設けられているので、翼下の土砂のほとんどは、杭側面へと押し出され、杭本体下端部を閉塞することなく、施工が円滑に能率よく行なえることになる。
【0022】
また、この翼は鋼管杭では、螺旋翼2の内翼部2bが杭本体内に突出しているので、図5(ロ)に示すように、杭が荷重がかかったときに、外翼部2aばかりでなく内翼部2bでも荷重を受けることになるため、杭本体1に作用する曲げ応力が大巾に軽減されることになる。したがって、それだけ杭本体1の肉厚を薄くすることができ、コストの低減が図れることになる。
【0023】
上記螺旋翼2の内径D2、つまり、杭本体1の内側に突出する内翼部2bの突出巾は、長くするほど杭本体1の曲げ応力を軽減させることになるが、そうすれば、杭本体1(延長管3)に流入する土砂に抵抗を与えることになり、土砂による閉塞をまねくようになる。これまで行った試験の結果から、螺旋翼2の内径D2を杭本体径の1/2〜1/3とするのが好適である。また、螺旋翼2の配置位置は、低すぎれば杭本体下部内の閉塞が生じ、また高すぎれば、閉塞が生じにくく、かつ貫入安定性はよくなるが、杭の有効支持力が低下することから、杭本体1の下端(延長管3)の下端から杭本体径の1.5倍前後の長さ上方の位置とするのが好適である。
【0024】
次に、本発明翼付鋼管杭の他の実施態様について説明する。図3に示す翼付鋼管杭は、上記翼付鋼管杭において、螺旋翼2を設けた位置より、螺旋翼2の外径以上の距離を隔てた上方位置の杭本体1の外周に、この螺旋翼2より大径とした上部螺旋翼7を突設したものである。この翼付鋼管杭では、上部螺旋翼の翼面積に相応した分だけ大きな支圧力が得られることになる。
【0025】
また、図4に示す翼付鋼管杭は、図3の翼付鋼管杭をさらに発展させたもので、杭本体1の螺旋翼2を設けた位置より上方の外周に、杭本体1の長さ方向にほぼ等間隔をおいて、螺旋翼2より一定比率で大径とした複数のほぼ一巻きにわたる螺旋翼7a,7b,7cを突設したものである。この翼付鋼管杭では、各螺旋翼2,7a,7b,7cの全翼面積相応した支圧力が得られるとともに、各螺旋翼の外周を結んだ全体の逆円錐形状による地中のクサビ効果も加わり、優れた支持力が発揮されることになる。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、螺旋欲を、杭本体の外側から内側にわたる大径広巾のドーナツ形に形成して杭本体に設けたので、建物荷重にかかると、杭本体の外側に突出した外部翼の曲げ応力は、杭本体内に突出した内翼部が反力として作用し、杭本体にかかる曲げ応力を減少させることになるので、杭本体の肉厚を薄くすることができ、さらに、内翼部と杭本体内部側面に働く土砂の抵抗作用(アーチ作用)が働き、外翼部と延長管側面に働く抵抗とで、杭先端を閉塞した場合と同様の支持力が得られることになる。
【0027】
また、螺旋翼の下側には、杭径の例えば1.5倍前後の長さの延長管が設けられているので,回転する螺旋翼の推進力により翼下部の土砂が流動しても、杭の内部に流入することなく、杭内径断面の土砂のみが進入し、杭本体内部の土砂閉塞詰まりが防がれるとともに、杭側面に杭の体積分の土砂を押し出さないので、杭表面の土砂摩擦抵抗が少なく、また、杭先端の土砂抵抗も僅かで、螺旋翼の回転推進力と杭を押さえ込む力が小さくてすみ、杭先端の特に硬質地層への推進根入れが容易となる。
【0028】
また、請求項2の翼付鋼管杭は、上部螺旋翼を付加したので、その分支持力が増加されるとともに、上部螺旋翼も推進力を発揮するので、螺旋翼一枚のみでは起る空転が防止され、施工能率が向上する。また、請求項3の翼付鋼管杭は、上記の効果に加え、複数設けた上部螺旋翼の全翼面積に相応した大きな支圧力が得られるとともに、クサビ効果も加わり、極めて大きな支持力が得られることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明翼付鋼管杭の一実施態様を示したもので、(イ)は正面図、(ロ)は正断面図、(ハ)は平面図、(二)は底面図である。
【図2】同螺旋杭の取り付け状態を説明する。(イ)は斜面図、(ロ)は断面図である。
【図3】同他の実施態様を示す正面図である。
【図4】同さらに他の実施態様を示す正面図である。
【図5】螺旋翼に働く曲げ応力の説明図で、(イ)は従来例を示し、(ロ)は本発明の例を示したものである。
【符号の説明】
1 杭本体
2 螺旋翼
3 延長管
4,5 断面部
6 掘削刃
7,7a,7b,7c 上部螺旋翼

Claims (3)

  1. 杭本体の下端部に、杭本体の外側に突出する外翼部から、杭本体の内側に突出する内翼部にわたり一体成型した、大径広巾のほぼ一巻きのドーナツ形の螺旋翼を設け、この螺旋翼の下面に、杭本体と同径とし、下端部に掘削刃を突設した延長管を、杭本体と同心に結合したことを特徴とする、翼付き鋼管杭。
  2. 螺旋翼を設けた個所より、この螺旋翼の外径以上の上方に距離を隔てた杭本体の外周に、この螺旋翼よりさらに大径とした上部螺旋翼を突設したことを特徴とする、請求項1記載の翼付き鋼管杭。
  3. 螺旋翼を設けた個所より上部の杭本体の外周に、その長さ方向にほぼ等間隔をおいて、この螺旋翼より一定の比率で大径とした複数の螺旋翼を突設したことを特徴とする、請求項1記載の翼付き鋼管杭。
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