JP4033691B2 - フッ素樹脂コートポリエステルフィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、離型性ポリエステルフィルムに関するものであり、さらに詳しくはシリコーンを含まない、耐熱性、透明性、防汚性、撥水性に加え、コート表面の平坦性にも優れた離型性ポリエステルフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、離型性ポリエステルフィルムは、付加型、縮合型、二液型のシリコーンをポリエステルフィルムの片面又は両面に塗工し、熱又は紫外線照射硬化させることにより得るのが一般的であった。現在でもポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに代表される二軸延伸ポリエステルフィルムの透明性、寸法安定性、機械的性質、電気的性質、耐薬品性等の優れた性能と、離型性を有するシリコーンの特長とを組み合わせて、工程紙用等の用途に、離型性ポリエステルフィルムが利用されている。しかし、特に工場生産ラインの工程紙用等において、離型した相手製品の離型面にさらにメッキ等の加工をする際、製品に離型性フィルムのシリコーンが移行することによるトラブルが発生しやすいという問題がある。
【0003】
このようなシリコーンの移行を避けるために、シリコーンを含まない離型性フィルムとして、ウレタン系、炭化水素系の離型剤を用いたものがあるが、これらの離型剤は耐熱性が低いため、160℃以上の熱雰囲気下で使用することは不可能である。又、ポリメチルペンテンフィルム(TPXフィルム)は、耐熱性離型フィルムとして知られているが、このフィルムは弾性率が低く(いわゆる「腰」がなく)、工場生産ラインの工程紙用に使用する際、取り扱いにくいという欠点がある。
【0004】
一方、シリコーンを含まない離型性フィルムの需要は、IC部品等の電子部品産業業界でますます増加しているが、電子部品製品の生産技術が高度になるにつれ、生産工程中に使用される離型性フィルムに対してより高い性能が要求されてきている。そのような要求をある程度満たすものとして、フッ素を含有する一群のフィルム、シート(テフロン(登録商標)類)があるが、高価なものになるという欠点を有している。
【0005】
これらの問題を解決するために、基材フィルムにフッ素系樹脂を塗工する方法が検討されているが、フッ素系樹脂は溶剤に対する溶解性に乏しく、また基材フィルムに対する接着性に乏しいため実用性のある離型性フィルムを製造することは困難であった。すなわち、フィルムとフッ素系樹脂とが密着していないため、フッ素系樹脂塗工フィルム使用時には相手素材とフッ素系樹脂との間で剥離すべきものが、フィルムとフッ素系樹脂との間で剥離を起こすことがある。更にフッ素系樹脂は溶剤溶解性に乏しく微粒子状態でフィルムに並んだ状態にあるため、微粒子状のフッ素系樹脂が脱離するなどの問題があった。
【0006】
本発明者らは、特開2001−129940号公報において、フッ素を含有する一群のフィルム、シート(テフロン(登録商標)類)と同等の性能を持ち、かつ耐熱性、透明性、防汚性、撥水性にも優れた特性を有する離型性フィルムを開示した。このフィルムは、フルオロオレフィン、シクロヘキシル基含有アクリル酸エステル、水酸基含有ビニルエーテルを構成成分とする含フッ素共重合体を、イソシアネート基を持つ架橋剤とともにポリエステルフィルムの片面及び/又は両面に塗布し、加熱することにより得られ、得られた離型性フィルムは基材フィルムとの密着に優れるものであった。しかし、このフィルムには、表面凹凸が見られ表面の平坦性に欠けることがあった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような状況に鑑み、本発明は、フッ素を含有する一群のフィルム、シート(テフロン(登録商標)類)と同等の性能を持ち、耐熱性、平坦性、透明性、防汚性、撥水性に優れ、かつコート表面の凹凸が少ない離型性フィルムを提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決しようとする手段】
本発明者らは鋭意検討の結果、フルオロオレフィン、シクロヘキシル基含有アクリル酸エステル、及び水酸基含有ビニルエーテルを構成成分とする含フッ素共重合体と、イソシアネート基を2以上有する架橋剤と、150℃以上の沸点を有する有機溶剤とからなる塗液を、ポリエステルフィルムの片面又は両面に塗布し、加熱することにより上記の課題が解決でき、コート表面の平坦性にも優れた離型性フィルムが得られることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、下記式(1)に示すフルオロオレフィン、式(2)に示すシクロヘキシル基含有アクリル酸エステル、及び式(3)に示す水酸基含有ビニルエーテルを構成成分とする含フッ素共重合体(A)と、イソシアネート基を2以上有する架橋剤(B)との反応生成物をポリエステルフィルムの片面又は両面に形成してなるフッ素樹脂コートポリエステルフィルムであって、フィルムの算術平均粗さRa75が0.02μm以下であることを特徴とするフッ素樹脂コートポリエステルフィルムの製造方法であって、含フッ素共重合体(A)と、イソシアネート基を2以上有する架橋剤(B)と、150℃以上の沸点を有する有機溶剤(C)とからなる塗液をポリエステルフィルムの片面又は両面に塗布し、塗布面を100〜180℃、5〜120秒の条件で加熱することを特徴とするフッ素樹脂コートポリエステルフィルムの製造方法。
【化4】
(式中、XはF又はH、YはH、Cl、F、CF3である。)
【化5】
(式中、R1は水素又はメチル基である。)
【化6】
(式中、R2は炭素数2〜5のアルキレン基、又はシクロヘキシレン基である。)
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について詳細に説明する。本発明において用いられるポリエステルフィルムとしては、PETフィルムが好ましいが、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等の他のジカルボン酸成分や、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA等の他のグリコール成分を共重合してもよく、これらの成分を2種類以上併用してもよい。また、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)等の他のポリエステルとブレンドして用いることもできる。これらのポリエステルフィルムは未延伸フィルム、延伸フィルムのどちらでも用いることができる。
【0011】
本発明におけるポリエステルフィルムは、例えば未延伸フィルムでは、原料ポリマーを溶融押出し、急冷固化して得ることができ、また延伸フィルムでは、該未延伸フィルムを縦方向及び横方向に二軸延伸した後、熱固定及び弛緩処理を施すことによって得ることができる。また、そのようにして製造したポリエステルフィルムを120℃以上の高温下でさらに熱処理を行い、熱収縮率をさらに小さくしたものを用いることもできる。
【0012】
本発明において用いられる含フッ素共重合体(A)は、フルオロオレフィン、シクロヘキシル基含有アクリル酸エステル、水酸基含有ビニルエーテルを構成成分とすることが必要である。
【0013】
本発明において、フルオロオレフィンは式(1)で表される分子中に少なくとも2個のフッ素原子を有するオレフィンであって、例えばフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン等が好適である。これらのフルオロオレフィンは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
本発明において、シクロヘキシル基含有アクリル酸エステルは式(2)で表され、具体例としては、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等を挙げることが出来るが、シクロヘキシルメタクリレートが特に好ましい。
【0015】
本発明において、水酸基含有ビニルエーテルは式(3)で表され、具体例としては、ヒドロキシメチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられるが、特にヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテルが好適である。これらの水酸基含有ビニルエーテルはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組合わせ用いてもよい。
【0016】
本発明において含フッ素共重合体(A)は、前記フルオロオレフィン、シクロヘキシル基含有アクリル酸エステル、及び水酸基含有ビニルエーテルを構成成分とするものであるが、さらにこれらの成分に加えて、使用目的などに応じて20モル%を超えない範囲で他の共重合可能な成分を含むこともできる。該共重合可能な成分としては、例えばエチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類やエチレン、プロピレン等のオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロオレフィン類、酢酸ビニル、n−酪酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類等が挙げられる。
【0017】
本発明における含フッ素共重合体(A)を構成する各成分の好ましい共重合割合は、フルオロオレフィンが40〜90モル%、シクロヘキシル基含有アクリル酸エステルが1〜30モル%、水酸基含有ビニルエーテルが1〜30モル%である。フルオロオレフィンの割合が40モル%より少ない場合には、塗工したフィルムの離型性が低下し、また90モル%より多い場合には溶剤に対する溶解性が低下し、フィルムに塗工することが困難になる。シクロヘキシル基含有アクリル酸エステルの割合が1モル%より少ないと、樹脂溶液の保存安定性が低下して好ましくなく、30モル%より多い場合には重合時における重合速度が低下して好ましくない。水酸基含有ビニルエーテルの割合が1モル%より少ないと、硬化反応が起こりにくくなり、30モル%より多い場合には共重合反応が困難となる。
【0018】
本発明における含フッ素共重合体(A)は、溶媒の存在下又は不存在下で、上記構成成分を、重合開始剤を用いて共重合させることにより製造することができる。重合開始剤としては、重合に用いられる溶媒の種類に応じて、水溶性のものあるいは油溶性のものが適宜用いられる。水溶性重合開始剤としては、例えば過硫酸カリウム等の過硫酸塩、過酸化水素、あるいはこれらと亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤との組み合わせからなるレドックス開始剤、さらには、これらに少量の鉄、第一鉄塩、硝酸銀等を共存させた無機系開始剤やコハク酸パーオキサイド、ジグルタル酸パーオキサイド、モノコハク酸パーオキサイド等の二塩基酸塩等の有機系開始剤等が用いられる。また油溶性開始剤としては、例えばt−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシアセテート等のパーオキシエステル型過酸化物、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジノルマルプロピルパーオキシカーボネート等のジアルキルパーオキシジカーボネート、ベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等が用いられる。これらの重合開始剤の使用量は、その種類、共重合反応条件等に応じて適宜選ばれるが、単量体全量に対して、0.005〜5質量%、好ましくは0.1〜1質量%の範囲で選ばれる。
【0019】
また、重合法については特に制限はなく、例えば塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法等を用いることができるが、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、フッ素原子を1個以上有する飽和ハロゲン化炭化水素類等を溶媒とする溶液重合法や水性媒体中での乳化重合法等が好ましく用いられる。水性媒体中で共重合させる場合には、通常分散安定剤として懸濁剤や乳化剤を用い、かつ塩基性緩衝剤を添加して、重合中の反応液のpH値を4、好ましくは6以上にすることが望ましい。共重合反応における反応温度は、通常−30℃〜150℃での範囲内で重合開始剤や重合媒体の種類に応じて適宜選ばれ、例えば水性媒体中で重合を行う場合には、通常0〜100℃、好ましくは10〜90℃の範囲で選ばれる。また、反応圧力については特に制限はないが、通常9.8×104〜9.8×106N/m2、好ましくは9.8×104〜5.9×106N/m2の範囲で選ばれる。さらに、共重合反応は適当な連鎖移動剤を添加して行うことができる。
【0020】
本発明におけるイソシアネート基を2以上有する架橋剤(B)としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート、トリス(フェニルイソシアネート)チオフォスフェート等のトリイソシアネート、イソシアヌレート類を有する多価イソシアネート等が挙げられる。
【0021】
本発明における150℃以上の沸点を有する有機溶剤(C)としては、シクロヘキサノン(沸点156℃)、シクロヘキサノール(沸点161℃)、メチルシクロヘキサノン(沸点170℃)、メチルシクロヘキサノール(沸点174℃)などを用いることが出来る。これらを用いることにより本発明におけるフッ素を含有する一群のフィルム、シート(テフロン(登録商標)類)と同等の性能を持ち、かつコート表面の平坦性を有する離型性フィルムを得ることが出来る。
【0022】
本発明において、フィルム表面の平坦性を表す指標として、二次元表面算術平均粗さを用いた。すなわち本発明の算術平均粗さは、小坂研究所社製表面粗さ測定器SE−3400で測定したJIS B0601−1982で定義されるRa75を用いた。本発明のフッ素樹脂コートポリエステルフィルムは、150℃以上の沸点を有する有機溶剤を使用したので、Ra75を0.02μm以下とすることができる。150℃未満の沸点を有する有機溶剤を用いた場合にはコート表面に凹凸が見られ、この場合Ra75は0.02μmを超え、表面平坦性に欠けるフィルムとなる。
【0023】
本発明において、含フッ素共重合体(A)とイソシアネート基を2以上有する架橋剤(B)、150℃以上の沸点を有する有機溶剤(C)とから塗液を調整する。塗液には、150℃以上の沸点を有する有機溶剤(C)以外の溶媒を併用してもよい。そのような溶媒としては、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類、n−ブタノール等のアルコール類、酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、エチルセロソルブ等のグリコールエーテル類、市販の各種シンナー類等が挙げられる。塗液の含フッ素共重合体(A)濃度は、5〜80質量%、好ましくは10〜60質量%である。
【0024】
含フッ素共重合体(A)と架橋剤(B)を溶剤(C)と混合する方法としては、ボールミル、ペイントシェーカー、サンドミル、3本ロールミル、ニーダー等を用いて行うことができる。この際、顔料、分散安定剤、粘度調節剤、レベリング剤、紫外線吸収剤等を添加することもできる。
【0025】
本発明のフッ素樹脂コート二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法としては、ベースのポリエステルフィルムに、含フッ素共重合体(A)とイソシアネート基を2以上有する架橋剤(B)と溶剤(C)とからなる塗液を塗布する方法、あるいは未延伸フィルムに塗布したのち延伸する、いわゆる、インラインコート法が挙げられる。塗液を塗布する方法としては、公知の塗工法が適用でき、例えばグラビアロール法、スプレー法、ロールコーター法等を用いて塗布することができるが、塗布厚みを調節する上でグラビアロール法が適している。また、ベースのポリエステルフィルムは、塗液との親和性を向上させ乾燥後の含フッ素共重合体樹脂との密着性を好適なものにするために、あらかじめコロナ処理等の物理的処理や化学的処理が施されていることが望ましい。塗液の乾燥後の塗工厚みは、0.1〜2μmが好ましく、より好ましくは0.5〜1.5μmである。塗工厚みが0.1μm未満の場合にはフッ素が本来持つ良好な剥離強度が得られにくく、塗工厚みを2μmより厚くしてもそれ以上の性能の発現は認められず、コストアップとなり好ましくない。
【0026】
上記塗液を塗布したフィルムの塗布面において、含フッ素共重合体(A)とイソシアネート基を2以上有する架橋剤(B)の反応生成物を形成することにより、本発明のフッ素樹脂コートポリエステルフィルムが得られる。反応生成物を形成する条件としては、塗布面を100〜180℃、5〜120秒で乾燥後、35〜110℃の温度で5〜72時間保持することが好ましく、より好ましくは、乾燥後40〜50℃の温度で40〜50時間保持することが好ましい。
【0027】
【実施例】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例により限定されるものではない。なお、実施例に用いた評価方法は次のとおりである。
(1)フィルムの可視光線透過率
東京電色社製、TC−HIIIDPKを用いて、350nm〜780nmの範囲で測定した。
(2)塗膜の硬化性
ガーゼにキシレンを含浸し、塗膜表面を50回こすった後の塗膜表面を観察した。
○:変化なし。
△:キズ、白濁。
×:剥離、溶解。
(3)塗膜の密着性
クロスカットセロハンテープ剥離試験を行った。塗膜の表面10mm×10mmの部分に1mm間隔で縦横に切れ目を入れて、100個の枡目を作り、セロハンテープ(ニチバン社製、エルパックLP−24)を圧着・貼付した後、180°方向に勢いよく引き剥がし(正セロハンテープ剥離)、塗膜が剥離せずに残った枡目の数を調べ、次に示す評価基準に従い5段階評価を行った。
(評価基準)
1:残った枡目が10個未満
2:残った枡目が10個以上50未満
3:残った枡目が50個以上90未満
4:残った枡目が90個以上95未満
5:残った枡目が95個以上
(4)剥離力、残留接着率
▲1▼剥離力測定法
塗膜面に日東31B粘着テープを2kgのローラーで貼り合わせ、1.96×106N/m2の下で70℃×20時間処理後、取り出して23℃×30分放置し、剥離角度180°、剥離速度300mm/minで剥離強度を測定する。測定回数は4回とし表示値は平均値とする。
▲2▼残留接着率測定法
上記剥離力測定で使用したテープをテフロン(登録商標)板に2kgのローラーで貼り合わせ、1.96×106N/m2の下で70℃×20時間処理後、取り出して23℃×30分放置し、剥離角度180°剥離速度300mm/minで剥離強度を測定する。測定回数は3回とし表示値は平均値とする。(測定値A)未使用の日東31B粘着テープを、同様にテフロン(登録商標)板に貼り合わせ、同様の処理後、剥離強度を測定する。(測定値B)
(測定値A/測定値B)×100=残留接着率(%)とする。
(5)耐熱性
フィルムをステンレス板の間に挟み180℃×5min間、9.8×105N/m2で加圧し冷却後、塗膜の密着性、剥離力、残留接着率の評価を行った。
(6)撥水性
塗膜表面の水に対する接触角を測定した。角度が大きいほどより水をはじく。
(7)油性マジックに対する防汚性
塗膜表面に油性赤マジックで線を書き、5min後コットンによる乾拭き及びコットンにイソプロピルアルコールを含浸したもので拭き取った。
○:完全に拭き取り可能
△:赤溥色マジック痕が残る
×:拭き取り不可
(8)シリコーン移行性
フィルムの塗膜面にカプトンフィルム(100H)を重ね合わせ、ステンレス板に挟み180℃×10min間、9.8×105N/m2の圧力下でプレス後空冷した。カプトンフィルムを剥がし、フィルム塗膜に接していた面のシリコーン量をESCAで測定した。なお、ESCA測定条件は下記の通りである。
ESCA装置:アルバック・ファイ社製 ESCA5600
測定X線源:Mg Kα線(1253.6eV)15kV−400W
分析面積:800μmψ
測定条件:[ワイドスキャン測定(定性分析)]
・測定エネルギー範囲 0〜1000eV
・Pass Energy 187.85
・eV/step 0.800
・time/step 30ms
・測定時間(3回積算で)112.5s
[ナロウスキャン測定(定量・状態分析)]
・各元素の測定エネルギー範囲
Si 1s 95〜115eV
C 1s 280〜300eV
O 1s 525〜545eV
・Pass Energy 23.50
・eV/step 0.100
・time/step 100
ESCA測定の評価基準
◎:atomic% 検出限界値以下
○:0.1〜1.0
×:1以上
(9)二次元算術平均粗さ
小坂研究所社製表面粗さ測定器SE−3400でJIS B0601−1982で定義されるRa75の測定をコート表面に関して行った。
(10)総合評価
上記の各評価を総合して、次に示す評価基準に従い4段階評価を行った。
◎:良好
○:問題ないレベル
△:問題あり
×:大いに問題あり
【0028】
実施例1
フルオロオレフィン、シクロヘキシル基含有アクリル酸エステル、水酸基含有ビニルエーテルを構成成分とする含フッ素共重合体(関東電化工業社製 KD200)の30質量%酢酸エチル溶液の固形分100質量部に対し、架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネートを24質量部溶解し、150℃以上の沸点を有する有機溶剤としてシクロヘキサノン(沸点156℃)35質量部、酢酸ブチル(沸点126℃)20質量部を用いて塗液を調製した。得られた塗液を、50μmの二軸延伸PETフィルム(ユニチカ社製 エンブレット)のコロナ処理面にワイヤーバーコーターにて塗工し、165℃で1min間熱処理後、70℃で48時間熱処理し塗工厚み1μmのフッ素コートポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの性能を表1に示した。
【0029】
実施例2
150℃以上の沸点を有する有機溶剤としてシクロヘキサノール(沸点161℃)を用いた以外は実施例1と同様の方法でフッ素コートポリエステルを得た。得られたフィルムの性能を表1に示した。
【0030】
比較例1
シクロヘキサノン35質量部の替わりに酢酸ブチルを用いた以外は実施例1と同様の方法でフッ素コートポリエステルを得た。得られたフィルムの性能を表1に示した。
【0031】
比較例2
架橋剤としてトリス(フェニルイソシアネート)チオフォスフェート(住友バイエルウレタン社製 デスモジュールRFE)を用いた以外は、比較例1と同様の方法でフッ素コートポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの性能を表1に示した。
【0032】
比較例3
ポリメタクリル酸メチルをメチルエチルケトンに溶解し、ポリフッ化ビニリデン樹脂を分散させて、固形分濃度30質量%溶液を調製し、この塗液を用いた以外は比較例1と同様の方法で、フッ素コートポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの性能を表1に示した。
【0033】
比較例4
エチレンイミン系の非シリコーン離型剤を塗液に用いた以外は比較例1と同様の方法で、離型性ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの性能を表1に示した。
【0034】
比較例5
縮合型硬化タイプのシリコーン離型剤を塗液に用いた以外は比較例1と同様の方法で、離型性ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの性能を表1に示した。
【0035】
【表1】
【0036】
表1から明らかなように、フルオロオレフィン、シクロヘキシル基含有アクリル酸エステル、水酸基含有ビニルエーテルを構成成分とした含フッ素共重合体とイソシアネート基を2以上有する架橋剤、150℃以上の沸点を有する有機溶剤の溶液を用いてポリエステルフィルムに塗膜形成することにより、シリコーンを含まずなおかつ耐熱性に優れると共に、コート表面の平坦性、透明性、防汚性、撥水性を満足する離型性ポリエステルフィルムが得られる。また、基板生産を想定した場合、本発明で得られる離型性フィルムは相手材にシリコーンの痕跡すら与えない。
【0037】
【発明の効果】
本発明の製造方法によって得られるフッ素コートポリエステルフィルムは、シリコーンを含まずなおかつ表面の平坦性、耐熱性、透明性、防汚性、撥水性を満足する離型性ポリエステルフィルムであるので、基板生産用の離型フィルム、或いは防汚性、撥水性を有する壁材及びガラスの表面等に好適に用いることができる。
Claims (1)
- 下記式(1)に示すフルオロオレフィン、式(2)に示すシクロヘキシル基含有アクリル酸エステル、及び式(3)に示す水酸基含有ビニルエーテルを構成成分とする含フッ素共重合体(A)と、イソシアネート基を2以上有する架橋剤(B)との反応生成物をポリエステルフィルムの片面又は両面に形成してなるフッ素樹脂コートポリエステルフィルムであって、フィルムの算術平均粗さRa75が0.02μm以下であることを特徴とするフッ素樹脂コートポリエステルフィルムの製造方法であって、含フッ素共重合体(A)と、イソシアネート基を2以上有する架橋剤(B)と、150℃以上の沸点を有する有機溶剤(C)とからなる塗液をポリエステルフィルムの片面又は両面に塗布し、塗布面を100〜180℃、5〜120秒の条件で加熱することを特徴とするフッ素樹脂コートポリエステルフィルムの製造方法。
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