JP4033503B2 - スプレー型接着剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、接着剤組成物に関し、さらに詳しく述べると、エタノールを含有する溶媒と、アクリル共重合体からなる粘着性微小球と、バインダー微粒子とを含んでなる、特に手動ポンプ式スプレー型接着剤に適する接着剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、いろいろなタイプの、アクリル共重合体サスペンジョンから調製されるスプレー型粘着剤等が公知である。例えば、特開平5−43854号公報には、懸濁重合法に得られた粒子径10〜100μmのアクリル共重合体からなる粘着性微小球を含有するサスペンジョン(固形分40〜70重量%)100重量部と、エタノール40〜1,300部とからなり、手動ポンプ式スプレー容器に充填して使用可能な再剥離性粘着剤が開示されている。また、組成の詳細は不明であるが、乳化重合エマルジョン(粒子径約0.1〜1μmと思われるポリマー微粒子のラテックス;固形分50重量%)を上記サスペンジョンに代えて使用した比較例も開示されている。
【0003】
また、特開平4−359984号公報には、上記特開平5−43854号公報に開示のものと同様な組成物にさらに液化噴射ガスを加えてなる再剥離用粘着剤エアゾールが開示されている。
これらの粘着剤では、エタノールを含む溶媒を使用しているので、比較的にすぐれた乾燥性が得られる。また、紙等の吸水性の比較的高い材料からなる被着体に粘着剤をスプレー塗布し、乾燥した後に、その被着体にしわが発生することも比較的少ない。
【0004】
さらに、上記粘着性微小球は、その粒子径が10〜100μmであるので、それを塗布した一方の被着体(たとえば、壁紙)の粘着面に過度の凹凸を形成し、それにより再剥離性粘着性を付与できる。しかしながら、上記粘着性微小球だけでは、その一方の被着体を他方の被着体(たとえば、壁)に貼着し、その後、剥離・貼着操作を繰り返した場合、他方の被着体への粘着性微小球の移行(糊移り)が生じる。このような糊移りは、剥離後に他方の被着体を著しく汚してしまう。
【0005】
なお、これらの公報には、アクリル共重合体からなる粘着性微小球とアルキルアクリレートコポリマー微粒子とを組み合わせて使用する例は開示されていない。また、アクリル共重合体の組成、上記乳化重合エマルジョンの組成、エタノール希釈の方法の詳細、そして上記コポリマー微粒子のエタノールに対する分散安定性に関する記載はない。
【0006】
上記のような糊移りを防止する手段として、たとえば、上記した粘着性微小球に加えて、比較的粒子径の小さい(例えば、10μm以下)のポリマー微粒子からなるバインダー(以下、「バインダー微粒子」と呼ぶことがある)を添加することが考えられる。このようにすると、粘着性微小球を壁紙等の粘着面に強固に結着する役目を、バインダー微粒子が担うことを期待できるからである。
【0007】
上記のようなバインダー微粒子をエタノール系溶媒型の接着剤組成物に使用する場合は、用いられるバインダー微粒子がエタノールに対して良好な親和性を有することが要求される。すなわち、エタノールと接触した時(エタノールによる希釈操作時)に、バインダー微粒子の、容易には解くことができない程度の凝集体が生じないことが要求される。しかしながら、エタノールに可溶なバインダーは一般に耐水性が良くなく、環境湿度の変化による凝集力が変化し、たとえば凝集力の低下はバインダーとしての機能が低下する。一方、通常の方法により製造され、エタノールに比較的不溶なバインダー微粒子を含む水系ラテックスは、エタノール希釈操作に対して比較的不安定で、凝固、ゲル化が生じやすく、エタノール希釈操作が比較的困難である。
【0008】
すなわち、上記のような用途に用いられるバインダー微粒子またはバインダー微粒子を含んでいるバインダーラテックスとしては、エタノール希釈に対する分散安定性が改良されたものが適する。
ここで、エタノールに比較的不溶なバインダー微粒子のラテックスに関する先行技術を以下に紹介する。
非水溶性有機化合物を利用したラテックス
1)J. Polymer Sci., Letters Ed., 11, 505 (1973)
2)ACS Symp. 24, 1 (1976)
3)特開平5−339328号公報
これらの文献は、非水溶性有機化合物(ヘキサデカン、セチルアルコール等)を乳化助剤として使用して重合されたポリマー微粒子を含んでなるラテックスを開示している。たとえば、特開平5−339328号公報は、トルエンなどの有機溶媒を必要とせずに安定なアクリル系ポリマーラテックスが得られることを開示している。
【0009】
しかしながら、上記の公報等の文献には、このようなポリマーラテックスのエタノール希釈安定性に関する記載はない。また、アクリル共重合体の粘着性微小球と組み合わせて使用した、スプレー型接着剤組成物への応用に関する記載もない。
共重合性界面活性剤を利用したラテックス
特開昭52−134658号公報には、原料エマルジョンに含まれる重合性成分の1つとして共重合性界面活性剤を使用し、それを重合してなるポリマーラテックスが開示されている。かかるポリマーラテックスは、具体的には、マレイン酸モノ−(ポリオキシエチレンフェニルアルキルエーテル)エステルまたはその塩からなる共重合性界面活性剤と、スチレンを主成分とするビニルモノマーとを含有する重合性成分を重合して得られたポリマーラテックスである。この公報では、このように重合して得られたポリマー微粒子が分子内に界面活性成分を含有するので、すぐれたアルコール希釈性を有することが教示されている。
【0010】
しかしながら、上記したようなポリマー微粒子は、上記のようなバインダーとしての用途には適さない。なぜならば、スチレンを主成分とするポリマーのガラス転移温度(Tg)は、通常0℃をはるかに超え、バインダーとしての粘着性に乏しいからである。
なお、この公報によれば、上記のタイプの共重合性界面活性剤は、スチレンの代わりに他のビニルモノマーを使用した場合、充分なアルコール希釈性を示さないことが教示されている。
長鎖アルキル(メタ)アクリレートを利用したラテックス
特開平6−192341号公報には、炭素数10〜34の長鎖アルキル(メタ)アクリレート70〜99重量部と、親水性アクリレート(ジエチレングリコールジメタクリレート、アクリル酸等)30〜1重量部とからなるモノマー混合物を水中で重合してなるラテックスが開示されている。この公報は、このような配合において、5μm以下(実際には1μm未満)の微細な粒子径のポリマー微粒子が形成できることを教示している。
【0011】
しかしながら、この公報には、このようなラテックスのエタノール希釈安定性に関する記載はない。また、アクリル共重合体の粘着性微小球と組み合わせて使用した、スプレー型接着剤組成物への応用に関する記載もない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記したような従来の技術の問題点を解決して、接着剤組成物を適用した一方の被着体を他方の被着体に貼着する場合に、一方の被着体の剥離・貼着操作の繰り返しによる他方の被着体への糊移りを効果的に防止し、剥離後に他方の被着体を汚染することのない、特にスプレー型接着剤に最適なエタノール溶媒型の接着剤組成物を提供することにある。
【0013】
本発明のもう1つの目的は、上記のような接着剤組成物の製造方法を提供することにある。
本発明のさらにもう1つの目的は、上記のような接着剤組成物を使用した手動ポンプ式スプレー型接着剤を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、その1つの面において、(a)エタノールを含有する溶媒と、(b)前記エタノール含有溶媒中に分散されたものであって、体積平均直径が10〜300μmのアクリル共重合体からなる粘着性微小球とを含む接着剤組成物において、前記エタノール含有溶媒が実質的に水とエタノールとからなり、前記粘着性微小球を被着体に結着させる体積平均直径0.01μm以上10μm未満のバインダー微粒子が前記エタノール含有溶媒中にさらに分散せしめられていることを特徴とする接着剤組成物を提供する。
【0015】
本発明は、そのもう1つの面において、上記のような接着剤組成物を製造する方法であって、下記の工程:
(a)前記エタノール含有溶媒中に分散された前記粘着性微小球を含有するサスペンジョンを調製し、
(b)前記サスペンジョンに前記バインダー微粒子を含有するバインダーラテックスを添加して前記接着剤組成物を調製する工程
を含んでなることを特徴とする接着剤組成物の製造方法を提供する。
【0016】
本発明は、また、そのもう1つの面において、上記のような接着剤組成物と、アルコール膨潤型スメクタイトとを含んでなることを特徴と手動ポンプ式スプレー型接着剤を提供する。
本発明による接着剤組成物は、エタノールを含有する溶媒と、この溶媒中に分散され、体積平均直径が10〜300μmのアクリル共重合体からなる粘着性微小球と、上記溶媒中に分散され、炭素数4〜10のアルキルアクリレートを含有する重合性成分の重合体からなるバインダー微粒子とを含有する。このようなバインダー微粒子は、接着剤組成物をスプレー等の塗布手段により被着体の表面に適用し乾燥した後、粘着性微小球をその被着体表面(粘着面)に強固に結着するバインダーとして作用する。したがって、接着剤組成物が適用された一方の被着体(たとえば、壁紙)を、他方の被着体(たとえば、壁)に貼着した後、一方の被着体の剥離・貼着操作の繰り返しによる、他方の被着体への糊移りを効果的に防止できる。また、炭素数4〜10のアルキルアクリレートを含有する重合性成分を重合してなるバインダー微粒子は、エタノールに比較的不溶であるので、環境湿度の変化に伴う凝集力の低下によるバインダーとしての機能低下を効果的に防止するようにも作用する。
【0017】
また、本発明の接着剤組成物において、含まれるバインダー微粒子は、好ましくは、炭素数4〜10のアルキルアクリレートを含有する重合性成分を水系溶媒中に分散させて重合させたものであり、また、前記水系溶媒は、好ましくは、非重合性成分として非水溶性有機化合物と乳化剤とを含んでおり、そして前記重合性成分が分子内に酸性基を有するビニルモノマーをさらに含んでいるものであり、また、前記重合性成分は、好ましくは、共重合性界面活性剤をさらに含んでいるものであり、また、前記水系溶媒は、好ましくは、非重合性成分として乳化剤を含んでおり、そして前記重合性成分が、炭素数11〜34の長鎖アルキル(メタ)アクリレートと、分子内に酸性基を有するビニルモノマーとをさらに含んでいるものである。このような場合には、バインダー微粒子のエタノール希釈安定性が高められるので、接着剤組成物中の溶媒に含有される水の量を減らしつつ、エタノールの量を相対的に多くすることが容易である。したがって、接着剤組成物の速乾性が向上し、紙等の材料からなる被着体の乾燥の際のしわの発生を効果的に防止できる。また、これらの形態におけるバインダー微粒子は、エタノールに対する不溶性がさらに増大するので、環境湿度の変化に伴う、バインダー微粒子の凝集力の低下をさらに効果的に防止できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその好ましい実施の形態について説明する。
エタノールを含有する溶媒
本発明による接着剤組成物は、エタノールを含有する溶媒を含む。この溶媒は、以下に詳細に説明する粘着性微小球およびバインダー微粒子の分散媒として機能し、接着剤組成物のスプレー塗布等の適用操作を容易にするとともに、塗布後の乾燥速度を適度に速くするように作用する。このような観点から、本発明の実施において使用する溶媒の量は、接着剤組成物の固形分濃度が、通常5〜60重量%、好適には7〜50重量%、特に好適には10〜40重量%の範囲となるように選ばれる。溶媒の使用量が少なすぎると、スプレー塗布等の被着体への適用操作が困難になる傾向があり、反対に多すぎると乾燥速度が遅くなる傾向がある。乾燥速度が遅い場合、接着剤を一方の被着体に適用後、他方の被着体と貼り合わせるには、接着剤が十分に乾燥するまで待つ時間が長くなるので、実使用上有利でない。また、上記一方の被着体が紙である場合に、乾燥後に紙のしわを発生させる原因にもなる。
【0019】
このような溶媒が実質的に水とエタノールとからなる場合、人体への安全面から好適である。また、水は、後述するように、粘着性微小球やバインダー微粒子の調製に必要であり、接着剤組成物に必然的に含まれる場合、それ以外の水は含まれないようにすべきである。これは、溶媒中に含まれる水の量は可能な限り少なくし、エタノールの量を可能な限り多くすることは、速乾性のさらなる向上と、被着体の乾燥後のしわの発生の確実な防止とを達成できるからである。このような場合、全溶媒中に含まれるエタノールの量は、通常、50〜99重量%、好適には55〜95重量%、特に好適には60〜90重量%の範囲である。エタノールの量が少な過ぎると、乾燥速度が遅くなる傾向がある。反対に多すぎる場合(すなわち、水の量が少なすぎる場合)は、接着剤組成物としての性能は良好であるが、後述する接着成分(粘着性微小球、バインダー粒子)の製造工程上必要な水を相対的に少なくすることが必要となり、製造を困難にする傾向がある。
【0020】
また、溶媒には、本発明の効果を損なわない限り、エタノール以外のアルコール、たとえば、イソプロピルアルコール、メタノール等を含ませることもできる。
アクリル共重合体からなる粘着性微小球
アクリル共重合体からなる粘着性微小球は、アクリル系モノマーを含んでなるモノマー混合物からの懸濁重合により調製することができる。ここで、このような懸濁重合の方法を簡単に説明する。
【0021】
反応媒体として水を使用し、上記モノマー混合物の液滴を水中に乳化分散させて、その液滴内で反応を行う。通常、水の量は、上記モノマー混合物100重量部に対して40〜600重量部の範囲であり、モノマー混合物の乳化分散に使用される乳化剤の量は、上記モノマー混合物100重量部に対して0.1〜50重量部の範囲である。乳化操作には、常用の撹拌装置、たとえば、プロペラ撹拌子付きの装置を使用できる。
【0022】
乳化剤は、通常の懸濁重合または乳化重合に使用されているものを使用できる。好適な乳化剤の例としては、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の非イオン性界面活性剤、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤を挙げることができる。
【0023】
重合開始剤は、油溶性のものを使用する。具体的には、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルなどを適当な重合開始剤として挙げることができる。重合開始剤の量は、通常、モノマー混合物100重量部に対して0.01〜1重量部の範囲である。
【0024】
重合時の反応温度は通常30〜80℃、そして反応時間は通常1〜24時間である。また、重合反応は、通常、密閉容器中にて窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことができる。
粘着性微小球の粒子径は、それを体積平均直径で表すと、10〜300μmの範囲である。この平均直径が10μm未満であると再剥離性が低下する傾向があり、反対に300μmを超えると、塗布性能、特にスプレーによる塗布性能が低下するおそれがある。塗布性能の低下は、被着体への均一な接着層の形成を困難にすることが明らかである。このような観点から、好適な体積平均直径は20〜200μm、特に好適には30〜150μmの範囲である。粘着性微小球の粒子径の制御は、反応容器の形状、撹拌速度、乳化剤の種類および添加量を適宜選択することにより行うことができる。
【0025】
アクリル共重合体(粘着性微小球)のガラス転移温度Tgは、通常25℃以下、好適には0〜−80℃、特に好適には−20〜−65℃の範囲である。Tgが25℃より高い場合、十分な接着性能を発揮できないおそれがある。また、低すぎるTgは、粘着性微小球の凝集力を低下させ、再剥離性を低下させる傾向がある。出発物質としてのアクリル系モノマーには、通常の粘着剤の原料となるものが使用できる。たとえば、炭素数4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等のアクリル性不飽和酸、ヒドロキシエチルアクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド等の塩基性アクリルモノマーなどが使用できる。また、本発明の効果を損なわない限り、スチレン系モノマー、酢酸ビニル等の、他の共重合性モノマーを併用することができる。
【0026】
また、粘着性微小球は、空孔を含まない中実球でも、1個以上の空孔を有する中空球でも良い。場合によっては、両者が混在していてもよい。
エタノール再分散性を有する粘着性微小球
ところで、上記のようにして懸濁重合により調製された粘着性微小球を含有する水系分散液をそのまま使用し、エタノール溶媒等と混合して接着剤組成物を形成することは、接着剤組成物に含まれる水の含有量を減らすには有利でない。このような場合、速乾性を向上させるためには多量のエタノールで希釈する必要があり、接着剤成分が比較的低濃度で含有されるものしか得られないからである(例えば、上記した特開平5−43854号公報の明細書の実施例では、上記粘着性微小球の含有量が9〜27重量%のものが開示されているに過ぎない。)。接着剤成分の濃度が低い場合、乾燥速度が遅くなる傾向があり、乾燥後の紙等の被着体のしわの防止ができないおそれがあり、さらに、スプレー用途に用いる場合には均一にスプレーすることが困難になる。
【0027】
一方、粘着性微小球の水系分散液から水を除去し、粘着性微小球を濃縮し、この濃縮物とエタノール溶媒等と混合して接着剤組成物を形成すれば、接着剤成分(固形分)濃度を高めながら、溶媒中に含まれるエタノールの量を相対的に増やすことが可能である。すなわち、水をエタノールに効率良く置換することが可能である。
【0028】
例えば、粘着性微小球の水系分散液に電解質等の凝集剤を添加し、粘着性微小球の凝集体を形成し、その凝集体外部に存在する水を除去し、これにエタノールを加えることにより、ほとんどの水をエタノールに置換することができる。しかしながら、エタノールを置換溶剤に使用すると、エタノールがアクリル共重合体の貧溶媒であるため、一般に一度凝集させた後にエタノール溶媒中で再分散させることは非常に困難である。
【0029】
本発明の1つの好適な実施形態によれば、従来では実質的に不可能であった、水系分散液におけるエタノール置換が可能である。すなわち、このような好適な実施形態は、上記粘着性微小球として、下記の共重合体:
(A)炭素数4〜10のアルキルアクリレートと、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを含有する重合性成分を重合してなる共重合体、または、
(B)炭素数4〜10のアルキルアクリレートと、N,N−ジ置換アミド基を分子内に有するビニルモノマーとを含有する重合性成分を重合してなる共重合体、
からなる粘着性微小球を含有する接着剤組成物を提供する。
【0030】
上記のような粘着性微小球は、一度凝集させた後にエタノール溶媒中で再分散させることができるので、溶媒中のエタノール濃度を高めることが容易である。このような場合、接着剤組成物中の固形分濃度を30重量%以上に維持しながら、全溶媒中に含まれるエタノールの量を60重量%以上に高めることも可能である。したがって、上記実施形態における、従来技術と比較して有利な効果は、
▲1▼ 所望の高濃度で接着剤成分を含有することが可能で、
▲2▼ 改良された速乾性を有し、
▲3▼ 乾燥後の被着体のしわの防止がより確実で、
▲4▼ スプレー特性が良好で、
▲5▼ しかも、再剥離性が良好な、
接着剤組成物を提供できることである。このような接着剤組成物は、特に以下に詳述する手動ポンプ式スプレー型接着剤として好適である。
【0031】
上記(A)のタイプの共重合体の原料となる、「ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート」とは、分子内に1以上の水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレートである。水酸基を有するアルキル基の炭素数は、通常2〜10、好適には3〜4の範囲である。かかるアルキル基の炭素数が2より小さいと、共重合体の粘着性が低下するおそれがあり、10より大きいと、良好なエタノール再分散性が得られない傾向がある。水酸基の数は、共重合体の粘着性を低下させない範囲で選ばれ、通常1または2個、好適には1個である。このようなヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0032】
炭素数4〜10のアルキルアクリレート(Ac)とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(HA)との含有重量比率(Ac:HA)は、通常90:10〜60:40、好適には85:15〜70:30の範囲である。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、エタノール再分散性を発現させるのに好適な親水性モノマーの1つであるが、このモノマーの重量比率が10より少ないと、エタノール再分散性が低下するおそれがある。反対に、このような親水性モノマーの重量比率が多すぎると、共重合体のTgや弾性率を上昇させ、粘着性が低下するおそれがある。たとえば、アクリル酸を上記親水性モノマーの1つとして用いる場合、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに比べて少ない量で用いないと、共重合体の粘着性を発現できず、粘着性とエタノール再分散性の両立が困難である。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、アクリル酸に比べて共重合体のTgを上昇させる作用が小さいので、比較的多くの量を用いることができる。したがって、上記の重量比率の範囲で用いれば、共重合体の粘着性とエタノール再分散性の両立が容易である。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとアクリル酸とを組み合わせて用いる場合、重合性成分中のアクリル酸の量は、通常10重量%未満、好適には0.1〜8重量%、特に好適には1〜5重量%の範囲である。
【0033】
上記(A)のタイプの共重合体として、粘着性とエタノール再分散性の両方が特にすぐれているのは、イソオクチルアクリレートとヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとを含有する重合性成分を重合してなる共重合体である。
上記(B)のタイプの共重合体の原料となる、「N,N−ジ置換アミド基を分子内に有するビニルモノマー」とは、分子内にN,N−ジ置換アミド基とビニル基〔(メタ)アクリロイル基を含む〕とを有するモノマーである。N,N−ジ置換アミド基は、N,N−ジアルキルアミド等の非環状アミドから誘導される基、ピロリドン、ピペリドン、カプロラクタム等の環状アミドから誘導される基、またはピペリジン、モルホリン、ピロリジン等の環状アミンのアミドから誘導される基であり、モノマー分子中では、窒素原子は水素原子を持たない構造である。このようなモノマーとして、具体的には、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(メタ)アクリロイルピロリドン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン等を挙げることができる。このようなビニルモノマーは、比較的多くの量を用いても共重合体の弾性率を上昇させることがなく、粘着性とエタノール再分散性の両立を容易にする。
【0034】
上記(B)のタイプの共重合体として、粘着性とエタノール再分散性の両方が特にすぐれているのは、イソオクチルアクリレートとN−ビニルピロリドンとを含有する重合性成分を重合してなる共重合体である。
炭素数4〜10のアルキルアクリレート(Ac)とN,N−ジ置換アミド基を分子内に有するビニルモノマー(NA)との含有重量比率(Ac:NA)は、通常90:10〜60:40、好適には85:15〜70:30の範囲である。上記ビニルモノマーの重量比率が10より少ないと、エタノール再分散性が低下するおそれがあり、反対に40を超えると、共重合体の粘着性が低下するおそれがある。
水系分散液におけるエタノール置換
上記の(A)のタイプまたは(B)のタイプの共重合体からなる粘着性微小球を含有する水系分散液における、水をエタノールに置換する方法を説明する。
【0035】
まず、上記のアクリル共重合体からなる粘着性微小球を含有する水系分散液を調製し、その水系分散液に凝集剤を添加して、粘着性微小球を含んでなる凝集体を形成した後、その凝集体外部に存在する水を除去する。水の除去は、たとえば、通常の常圧濾過、減圧濾過、遠心分離等により容易に行える。この場合、上記凝集体内部に含まれる水を完全に除くことは好ましくなく、通常凝集体全体に対して1〜30重量%の水を含有させる。水の完全な除去は、再分散性能を低下させる。また、凝集剤には、通常、塩化バリウムなどの凝集力の比較的高い電解質を使用する。
【0036】
このようにして得られた凝集体に、エタノールを加え、凝集を解いて粘着性微小球を再分散させて、エタノール含有溶媒(エタノールと少量の水を含む)中に粘着微小球が安定に分散したサスペンジョンを形成する。粘着微小球の再分散操作は、軽い撹拌により容易に行える。
上記のようなエタノール再分散性は、粘着性微小球の体積平均直径が10〜300μmであることも必須要件である。また、上記の粘着性微小球の凝集体は、イソプロピルアルコール、メタノールなどの、粘着性微小球を溶解しにくい他の溶媒中でも再分散可能である。
バインダー微粒子
本願明細書において、「バインダー微粒子」とは、上記のようなバインダーとして作用する範囲の粒子径を有する、微細なポリマー粒子であると定義する。このような粒子径は、それを体積平均直径で表すと、通常10μm未満、好適には0.01〜5μm、特に好適には0.05〜3μmの範囲である。この粒子系が10μmを超えると、バインダーとして作用が低下する傾向がある。反対に小さすぎる場合は、バインダー微粒子の凝集力が低下し、再剥離性が低下する傾向がある。
【0037】
また、バインダー微粒子は、好適には、炭素数4〜10のアルキルアクリレートを含有する重合性成分の重合体からなる。これにより、バインダーとしての接着性を効果的に発揮する。
また、このような重合体(バインダー微粒子)のTgは、通常0℃以下、好適には−10℃〜−80℃、特に好適には−20℃〜−65℃の範囲である。Tgが高すぎると粘着性が低下し、バインダーとしての作用が低下するおそれがある。反対にTgが低すぎると、バインダー微粒子の凝集力が低下し、再剥離性が低下する傾向がある。
【0038】
重合性成分には、上記アルキルアクリレート、それぞれ後述する、酸性基含有ビニルモノマー、共重合性界面活性剤、炭素数11〜34の長鎖アルキル(メタ)アクリレートの他、本発明の効果を損なわない範囲において、共重合可能な他のモノマーまたはオリゴマーを含ませることができる。
本発明の接着剤組成物の調製において、バインダー微粒子は、好適には、上記バインダー微粒子を安定に分散して含有する分散液(以下、「バインダーラテックス」と呼ぶ)を別途調製し、そのバインダーラテックスを、溶媒および粘着性微小球と混合する。このような調製方法は、バインダー微粒子が容易には解くことができない程度の凝集体を生じないようにしながら、各成分(粘着性微小球とバインダー微粒子)が安定に分散された最終組成物を容易に形成することができる点において有利である。
【0039】
このようなバインダーラテックスは、水系溶媒中に重合性成分を含有する液滴が乳化分散して含まれる原料エマルジョンから該重合性成分を重合して、その重合体がバインダー微粒子として、そのまま溶媒中に分散されて含まれるように調製するのが好適である。このようにして調製されたバインダーラテックスは、組成物中におけるバインダー微粒子の分散安定性を良好に保つことが容易である。
エタノール希釈性にすぐれたバインダーラテックス:非水溶性有機化合物系
接着剤組成物の上記のような調製方法では、エタノールを含有する溶媒と、または、そのような溶媒を含む溶液または分散液と、上記バインダーラテックスとを混合する必要があり、その際には、バインダーラテックスはエタノール含有溶媒によって希釈される。このエタノール含有溶媒による希釈操作の際のバインダー微粒子の分散安定性、すなわち、エタノール希釈性が良好であることは、接着剤組成物の調製を容易にする。
【0040】
好適な1実施形態におけるバインダーラテックスは、炭素数4〜10のアルキルアクリレートと、酸性基を分子内に有するビニルモノマーとしての(メタ)アクリル酸とを含有する重合性成分と、非重合性成分として非水溶性有機化合物と乳化剤とを含む原料エマルジョンから、該重合性成分を重合して形成したラテックスである。このようにして得られたバインダーラテックスは、アルコール系溶媒に対する希釈安定性、特にエタノール希釈性にすぐれる。
【0041】
このバインダーラテックスのエタノール希釈性の向上は、次のように説明することができる。通常の水系ラテックスにおいて、乳化剤により分散安定化されたバインダー微粒子が、エタノール希釈操作により、微粒子の周囲の乳化剤の吸着層の脱着、破壊等が生じて微粒子どうしが凝集する。しかしながら、上記の形態では、バインダー微粒子中の(メタ)アクリル酸成分と、非水溶性有機化合物とが共同して、上記乳化剤の吸着層を保持し、分散安定性を維持するためと考えられる。また、最終の接着剤組成物においても、バインダー微粒子中の(メタ)アクリル酸成分と、非水溶性有機化合物と、乳化剤とが、バインダー微粒子のエタノール溶媒中での分散安定性を高めていると考えられる。
【0042】
ここで、「非水溶性有機化合物」とは、不飽和性二重結合を含まず、アクリル系重合性成分と重合しない、水に実質的に不溶の脂肪族炭化水素、脂肪族アルコール等の脂肪族炭化水素基を有する化合物であると定義される。これらの有機化合物は、重合反応中は乳化助剤として機能する。上記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が通常8以上、好適には10〜24、特に好適には12〜22の範囲の基である。炭化水素基の炭素数が8未満では、重合が安定に進まないおそれがあり、また、得られたバインダーラテックスのエタノール希釈性が低下するおそれがある。反対に炭素数が大きすぎても、エタノール希釈性が低下するおそれがある。非水溶性有機化合物の具体例としては、ヘキサデカン、セチルアルコール等を挙げることができる。これらの化合物は、単独若しくは混合物として使用できる。
【0043】
非水溶性有機化合物の含有量は、重合成分100重量部に対して、好適には0.1〜10重量部、特に好適には0.3〜5重量部の範囲である。0.1重量部を下回るとエタノール希釈性が低下するおそれがあり、反対に10重量部を超えると可塑剤として作用し、接着剤組成物の糊移りの防止効果が低下するおそれがある。
【0044】
また、(メタ)アクリル酸と同様の効果を奏する酸性基含有ビニルモノマーとして、マレイン酸、カルボキシルエチル(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸が挙げられる。また、酸性基含有ビニルモノマーと同様のエタノール希釈性を達成するために、使用量を比較的多くする必要があるが、酸性基含有ビニルモノマーに換えて、酸性基以外の極性基を分子内に有するモノマーを使用することができる。これらのモノマーは、単独若しくは混合物として使用できる。
【0045】
(メタ)アクリル酸等の酸性基含有ビニルモノマーは、重合性成分中に、好適には1〜10重量%、特に好適には3〜8重量%の割合で含有される。1重量%を下回るとエタノール希釈性が低下するおそれがあり、反対に10重量%を超えると接着剤組成物の粘着性が低下するおそれがある。
乳化剤は、前述の粘着性微小球の懸濁重合に使用されるものと同様のものを使用できる。乳化剤の量は、通常、重合性成分100重量部に対して、0.1〜5重量部の範囲で用いられる。
【0046】
上記バインダーラテックスは、通常、良く知られたマイクロサスペンジョン重合法や、ミニエマルジョン重合法により調製することができる。例えば、次のようにして調製することができる。
非水溶性有機化合物を重合性成分に溶解させた重合性成分溶液を、乳化剤水溶液に添加し、撹拌装置により、重合性成分溶液を5μm以下の粒子径の液滴として乳化分散した原料エマルジョンを調製する。撹拌装置には、例えば、高圧ホモジナイザー(日本精機(株)製)、ミルミックス(Tokusyukika (株)製)等のハイシェアータイプの乳化機が使用できる。また、水の量は、重合性成分100重量部に対して50〜600重量部の範囲が良い。原料エマルジョンには、予め若しくは乳化分散後に、重合開始剤を添加する。重合開始剤には、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の常用の油溶性または水溶性の化合物を使用できる。また、過酸化水素、二価の鉄塩、過硫酸塩、酸性亜硫酸ナトリウムなどのレドックス重合開始剤も使用することができる。
【0047】
重合開始剤を添加した原料エマルジョンを、液滴を5μm以下に保つように撹拌しながら加熱して重合を開始させ、所定の温度に保ちながら重合反応を続ける。所定の反応時間の経過後、反応させた上記エマルジョンを冷却し、反応を終了させる。重合時の反応温度は通常30〜80℃、そして反応時間は通常1〜24時間である。また、上記レドックス重合開始剤を使用した場合は、比較的低温(5〜50℃)にて反応を行うことができる。さらに、重合反応は、通常、密閉容器中にて窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことができる。
【0048】
上記の方法の他、非水溶性有機化合物を乳化剤水溶液中に分散させた後、重合性成分を加えて、重合性成分と非水溶性有機化合物とからなる液滴を5μm以下に保つように撹拌しながら反応させることもできる。
エタノール希釈性にすぐれたバインダーラテックス:共重合性界面活性剤系
別の好適な実施形態におけるバインダーラテックスは、炭素数4〜10のアルキルアクリレートと共重合性界面活性剤とを含む原料エマルジョンから、該重合性成分を重合して形成したラテックスである。このようにして得られるバインダーラテックスは、アルコール系溶媒に対する希釈安定性、特にエタノール希釈性にすぐれる。
【0049】
このバインダーラテックスのエタノール希釈性の向上は、次のように説明することができる。上記のように、通常の水系エマルジョンでは、エタノールによる希釈操作により、微粒子の周囲の乳化剤の吸着層の脱着、破壊等が生じ、微粒子どうしが凝集する。しかしながら、バインダー微粒子中の組み込まれた共重合性界面活性剤は、微粒子の周囲に脱着しない界面活性剤の層を形成し、分散安定性を維持することができる。また、最終の接着剤組成物においても、同様にして、バインダー微粒子のエタノール溶媒中での分散安定性が高められていることも考えられる。
【0050】
ここで、「共重合性界面活性剤」とは、不飽和性二重結合を含み、アクリル系重合性成分と共重合可能であり、界面活性剤として作用する官能基を分子内に有する化合物であると定義される。このような共重合性界面活性剤の例としては、アクリル基と、スルホン酸、スルホン酸塩、または硫酸塩を含む官能基とを分子内に有するタイプを挙げることができる。具体的には、次のような化合物が挙げられる。
【0051】
エレミノールJS−2:アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム(三洋化成工業(株)より入手可能)
エレミノールRS−30:ポリオキシプロピレンメタクリロイル硫酸ナトリウム(同上)
アデカリアソプNE−10:ポリオキシエチレンノニルフェノキシアリルオキシ−プロパン硫酸塩(旭電化工業(株)より入手可能)アクアロンHS−10およびアクアロンHS−20:
α−スルホ−ω−〔2−(1−プロペニル)−4−ノニルフェノキシ〕ポリオキシエチレンアンモニウム塩(第一工業製薬(株)より入手可能)
アクアロンRN−10、アクアロンRN−20およびアクアロンRN−50:α−ヒドロ−ω−〔2−(1−プロペニル)−4−ノニルフェノキシ〕ポリオキシエチレン(同上)
ラテムルS−180A:アルキルアリルオキシヒドロキシプロピルスルホコハク酸塩(花王(株)より入手可能)
これらの化合物は、単独若しくは混合物として使用できる。
【0052】
共重合性界面活性剤の含有量は、重合成分100重量部に対して、好適には0.1〜10重量部、特に好適には0.3〜5重量部の範囲である。この界面活性剤の含有量が0.1重量部を下回ると、重合安定性およびエタノール希釈性がともに低下するおそれがあり、反対に10重量部を超えると、環境湿度の変化に伴うバインダー微粒子の凝集力の低下を、効果的に防止できない可能性がある。
【0053】
このタイプのバインダーラテックスは、上記非水溶性有機化合物系ラテックスと同様にして調製することができる。例えば、炭素数4〜10のアルキルアクリレートと共重合性界面活性剤との混合溶液を水中に添加し、混合溶液が5μm以下の粒子径の液滴として乳化分散した原料エマルジョンを調製し、これを重合反応させて形成する。
エタノール希釈性にすぐれたバインダーラテックス:長鎖アルキル(メタ)アクリレート系
さらに別の好適な実施形態におけるバインダーラテックスは、炭素数4〜10のアルキルアクリレートと、分子内に酸性基を有するビニルモノマーとしての(メタ)アクリル酸と、炭素数11〜34の長鎖アルキル(メタ)アクリレートとを含有する重合性成分と、非重合性成分として乳化剤とを含む原料エマルジョンから、該重合性成分を重合して形成したラテックスである。このようにして得られるバインダーラテックスは、アルコール系溶媒に対する希釈安定性、特にエタノール希釈性にすぐれている。
【0054】
この長鎖アルキル(メタ)アクリレートは、上記共重合界面活性剤と同様にバインダー微粒子内に組み込まれ、微粒子の周囲に脱着しない分散安定化の層を形成し、これと(メタ)アクリル酸と乳化剤とが共同して、エタノール希釈に対する分散安定化効果を奏すると考えられる。また、最終の接着剤組成物においても、同様にして、バインダー微粒子のエタノール溶媒中での分散安定性を高めていると考えられる。
【0055】
上記長鎖アルキル(メタ)アクリレートは、炭素数4〜10のアルキルアクリレートと(メタ)アクリル酸の両方に対する溶解性が良好で、かつ水に対する溶解度が20℃において0.01g/水100g未満のものを好適に選択できる。このような長鎖アルキル(メタ)アクリレートは、重合反応中に乳化助剤としても機能する。また、このような長鎖アルキル(メタ)アクリレートは、単独若しくは混合物として使用できる。
【0056】
上記長鎖アルキル(メタ)アクリレートの、アルキル基の炭素数は、11〜34である。アルキル基の炭素数が11未満であると、エタノール希釈性が低下するおそれがあり、反対に34を超えると、バインダーとしての接着力が低下する傾向がある。このような観点から、好適な炭素数は12〜30、特に好適には14〜22の範囲である。
【0057】
上記長鎖アルキル(メタ)アクリレートは、重合性成分中に、好適には0.1〜50重量%、特に好適には1〜30重量%の割合で含有される。この含有量が少なすぎると、重合安定性およびエタノール希釈性がともに低下するおそれがあり、反対に多すぎると、バインダーとしての凝集接着力が低下するおそれがある。
【0058】
このタイプのバインダーラテックスの調製において使用される乳化剤、(メタ)アクリル酸以外の酸性基含有ビニルモノマーは、前述のものが使用でき、その配合量も同様の理由から任意に選択できる。
また、このタイプのバインダーラテックスは、上記非水溶性有機化合物系ラテックスと同様にして調製することができる。例えば、すべての重合性成分からなる混合溶液を乳化剤水溶液に添加し、混合溶液が5μm以下の粒子径の液滴として乳化分散した原料エマルジョンを調製し、これを重合反応させて形成する。
接着剤組成物の調製
本発明の接着剤組成物は、次のようにして調製することができる。
【0059】
まず、エタノール含有溶媒中に分散された粘着性微小球を含有するサスペンジョンを調製する。このサスペンジョンは、懸濁重合により調製された粘着性微小球を含有する水系分散液、または、水系分散液に濃縮操作を加え、粘着性微小球の含有濃度を高めたものに、エタノールを添加して調製する。エタノールの添加操作では、必要に応じて、機械的な撹拌操作を水系分散液に加えながら行う。また、前述のようにエタノール再分散性を有する粘着性微小球を使用した場合は、前述のような方法で調製したサスペンジョンを用いることもできる。
【0060】
続いて、上記サスペンジョンに前記バインダー微粒子を含有するバインダーラテックスを添加し、接着剤組成物を調製する。この工程でも、必要に応じて、機械的な撹拌操作を加えながら行う。
粘着性微小球(A)とバインダー微粒子(B)との混合比率は、通常A:B=55:45〜99:1、好適には60:40〜95:5の範囲である。
手動ポンプ式スプレー型接着剤
本発明による接着剤組成物は、特に手動ポンプ式スプレー型接着剤の用途に適している。これまで使用されてきた、液化噴射ガスと接着剤成分とを缶容器に高圧充填した、エアゾールスプレー型接着剤と異なり、液化噴射ガスが不用である点が特徴である。手動ポンプ式スプレー容器には、化粧品用、家庭用、農園用などに現在使用されているものと同様のものが使用できる。本発明の接着剤組成物は、液化噴射ガスの助けを借りることなく、手動ポンプ式のスプレー装置にて良好にスプレーできる。
【0061】
上記スプレー型接着剤における、接着成分の沈降による溶媒からの分離を防ぐために、増粘剤を接着剤組成物に添加するのが効果的である。しかしながら、溶媒に溶解するタイプの従来の増粘剤は、接着剤の粘度が不要な程度に高くなりやすく、スプレー特性(霧状またはレース状にスプレーできること)が悪化し、場合によっては棒状に吹き出される現象を引き起こす。スプレー特性のこのような悪化は、少ないスプレー回数にて、被着体に均一かつ広い面積に接着剤を塗布することを困難にする。
【0062】
そこで、本発明では、チキソトロピー剤として知られているスメクタイトのうち、アルコール膨潤型スメクタイトを増粘剤として用い、スプレー特性を損なわないようにしつつ、接着成分の沈降、分離を効果的に防止することができる。アルコール膨潤型スメクタイトは、アルコール溶媒中に分散可能な層状粘土鉱物系増粘剤であり、それが添加された組成物(接着剤)のチキソトロピーを高めるように作用する。すなわち、静置した時には粘着性微小球やバインダー粒子等の接着成分が沈降し、溶媒と分離するのを防ぎ、スプレー操作においては、スプレーの剪断力により粘度が低下し、スプレー特性が良好になる。さらに、被着体に塗布された後は粘度が上昇するので、垂直面に塗布された時の液垂れを効果的に防ぐことができる。これは、壁面や、壁紙を垂直に保った状態でそれらに塗布する場合に有利な効果である。
【0063】
スメクタイトの含有量は、エタノール100重量部に対して、通常0.5〜10重量部、好適には1〜6重量部の範囲である。また、スメクタイトの具体例としては、層状ケイ酸塩などを挙げることができる。
【0064】
【実施例】
以下、本発明をその実施例について詳細に説明する。なお、実施例中、「部」は、特別に断らない限り「重量部」を表す。また、説明の簡略化のため、下記の実施例で用いられる化合物を次のような略語で参照することもある。さらに、参照される商品名も以下に説明する。
【0065】
AmDS:ドデシル硫酸アンモニウム
SDS:ドデシル硫酸ナトリウム
HD:n−ヘキサデカン
CA:セチルアルコール
IOA:イソオクチルアクリレート
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
HPA:ヒドロキシプロピルアクリレート
NVP:N−ビニル−2−ピロリドン
AA:アクリル酸
VAc:酢酸ビニル
TMPT:トリメチロールプロパントリメタクリレート
1,4−BDA:1,4−ブタンジオールジアクリレート
ODMA:オクタデシルメタクリレート
BPO:ベンゾイルパーオキサイド
AVN:アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル
AmPS:過硫酸アンモニウム
スメクタイト:層状ケイ酸塩(コープケミカル(株)製、商品名ルーセンタイトSPN)
TW−P120:ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート(花王(株)製、レオドールTW−P120、商品名)
レベノールWZ:ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム(花王(株)製、商品名)
アクアロンHS−10:共重合性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、商品名)
さらに、下記の実施例において粒径、Tg等を記載するけれども、これらの値は以下の手順に従って測定した。また、実施例において用いられた各種のテスト法も、以下に説明する。
<粒径>
得られた共重合体粒子の粒径は、 MALVERN社製粒径分布測定器マスターサイザーにより測定した。
<Tg>
得られた共重合体のTgは、レオメトリックス社製RSAII粘弾性スペクトロメーターを用いて測定を行った。直径5mm、高さ7mmのシリンダー状の試料を粘着性微小球又はバインダー微粒子の分散液を乾燥させて成形し、平行プレート治具に取り付け、1 rad/sec の周波数の圧縮ひずみを与えながら、−80〜200℃の温度変化を与え、弾性率の温度依存性を測定した。ここで、Tgは、貯蔵弾性率と損失弾性率との比(tanδ)である損失正接曲線の極大点を示す温度をもって定義した。
<エタノール再分散性>
得られた水系サスペンジョンに、5%塩化バリウム水溶液を加え凝集させ、その凝集物をろ過により取り出し、その凝集物30gに対して50gのエタノールを加える。簡単に再分散するものを「良好」とし、しないものを「不良」とした。
<エタノール希釈性>
得られた水系エマルジョンに、そのエマルジョン5gに対して50gのエタノールを加えたとき、まったく凝集せずに希釈できたものを「良好」とし、凝集物が観察できたものは、「不良」とした。
<手動ポンプ式スプレー>
下記の第3表に示す配合で手動ポンプ式スプレー容器(100ccの市販品、1回の吐出量が0.11cc)に充填した。微小球アクリル共重合体の配合で、凝集工程を使用したものを「有」とし、使用しないものを「無」とした。
【0066】
手動ポンプ式スプレーの容器中での液の分離の有無、また、これら粘着剤を紙に塗布し、乾燥性、乾燥後の紙のしわの状態、接着力および、再剥離性について、評価した結果も第3表に示した。
<容器中での液の分離>
手動ポンプ式スプレー容器に粘着剤をいれ、よく振り、静置した。24時間後に分離の有無を観察した。
<乾燥性>
A5サイズの上質紙に、ポンプスプレーで1回スプレーし、乾燥するまでの時間を測った。
<紙のしわ>
A5サイズの上質紙に、ポンプスプレーで2回重ね塗りスプレーし、乾燥後のしわの有無を観察した。
<接着性>
A5サイズの上質紙に、ポンプスプレーで1回スプレーし、他の新しい上質紙を重ねて貼り付けた。剥離したときの接着性を評価した。
【0067】
◎:強
○:中
△:弱
<再剥離性>
A5サイズの上質紙に、ポンプスプレーで1回スプレーし、他の新しい上質紙を重ねて貼り付けた。剥離、貼着を繰り返したときの接着性の変化を評価した。
【0068】
○:接着性に変化がない。
×:接着性が弱くなる。
<剥離時の糊移行>
接着力の評価後、後で貼りあわせたほうの紙の表面を手で触り、糊移行の有無を観察した。さらに新しい上質紙をそこに貼り、付着するか否かを観察した。
【0069】
○:ほとんど糊残りがなく、紙も付着しない。
×:べたべたしており、紙が付着する。
水系分散液(中間原料となるサスペンジョン)S−1の調製
イオン交換水375.00部、AmDS(懸濁剤:ドデシル硫酸アンモニウム)1.25部、IOA(イソオクチルアクリレート)100.0部、HPA(ヒドロキシプロピルアクリレート)25.0部、BPO(重合開始剤:ベンゾイルパーオキサイド)0.25部を含有する原料懸濁液から、懸濁重合により、IOA−HPA共重合体からなる粘着性微小球を含有する水系分散液S−1を調製した。
【0070】
ここで、この重合方法を説明する。まず、上記原料の混合物を密閉可能な容器に入れ、容器内を窒素ガスで満たし、室温(約25℃)下、プロペラ撹拌子を有する撹拌装置で、400rpm の回転速度にて、30分撹拌して上記原料懸濁液を調製した。この原料懸濁液に上記と同様にして撹拌を加えながら、原料懸濁液の温度を序々に65℃まで上げ、その温度に保ちつつ同撹拌を続け重合反応を行った。反応を5時間続けた後、反応させた懸濁液を室温(約25℃)まで冷却し、反応を完了させた。得られた粘着性微小球の体積平均直径は60.9μmであり、そのTgは−38℃であった。また、水系分散液S−1中の粘着性微小球の含有割合は、約25重量%であった。このようにして得られた粘着性微小球のエタノール再分散性は、「良好」であった。得られた結果を下記の第1表に示す。
水系分散液S−2〜S−7の調製
下記の第1表に示す原料及び配合を用いた以外は、上記水系分散液S−1の調製と同様な手法に従って、各水系分散液を調製した。得られた水系分散液に含まれる粘着性微小球の体積平均直径、Tgおよびエタノール再分散性の評価結果を合わせて第1表に示す。水系分散液S−6及びS−7では、粘着性微小球の原料モノマー(共重合成分)に、ヒドロキシプロピルアクリレートおよびN−ビニルピロリドンが使用されていない。したがって、エタノール再分散性は不良であったが、後述するように、本発明による接着剤組成物、および、手動ポンプ式スプレー型接着剤の調製に支障をきたすものではなかった。
【0071】
【表1】
Figure 0004033503
【0072】
バインダーラテックスL−1の調製
ラテックスL−1は、重合性成分が炭素数4〜10のアルキルアクリレートとアクリル酸を含み、非重合性成分として非水溶性有機化合物と乳化剤とを含む原料エマルジョンから調製された、バインダーラテックスの例である。
イオン交換水120.00部、SDS(乳化剤:ドデシル硫酸ナトリウム)0.40部、IOA(イソオクチルアクリレート)73.6部、AA(アクリル酸)6.4部、HD(非水溶性有機化合物:n−ヘキサデカン)2.0部、AmPS(重合開始剤:過硫酸アンモニウム)0.15部を含有する原料エマルジョンから、重合性成分を重合させてなる、IOA−AA共重合体からなるポリマー微粒子が、HDと乳化剤とにより安定に分散されて含有されるラテックスL−1を調製した。
【0073】
ここで、この重合方法を説明する。まず、重合の前処理段階で、上記非水溶性有機化合物と上記重合性成分(IOA+AA)とを密閉可能な容器に入れ、撹拌して均一な溶液を調製した。この溶液に、上記イオン交換水と上記乳化剤と上記重合開始剤とからなる水溶液を加えて、容器内を窒素ガスで満たし、室温(約25℃)下、前記ミルミックスを用いて、15,000rpm の回転速度にて、15分間撹拌して上記原料エマルジョンを調製した。この原料エマルジョン中のモノマー溶液の液滴の平均直径は約1μmであった。続いて、400rpm にて撹拌しながら、原料エマルジョンの温度を序々に60℃まで上げ、その温度に保ちつつ同撹拌を続け重合反応を行った。反応を5時間続けた後、反応させたラテックスを室温(約25℃)まで冷却し、反応を完了させた。
【0074】
得られたポリマー微粒子の体積平均直径は0.47μmであり、そのTgは−37℃であった。また、ラテックスL−1中の固形分の含有割合は、約41重量%であった。さらに、このラテックスのエタノール希釈性は、良好であった。得られた結果を下記の第2表に示す。
バインダーラテックスL−2〜L−4の調製
原料の種類と配合を下記の第2表に示すものに変更した以外は、上記ラテックスL−1の調製と同様な方法に従って、各バインダーラテックスを調製した。得られたラテックスに含まれるポリマー微粒子の体積平均直径、Tgおよびエタノール希釈性の評価結果を合わせて下記の第2表に示す。
バインダーラテックスL−5の調製
ラテックスL−5は、重合性成分が炭素数4〜10のアルキルアクリレートと炭素数11〜34の長鎖アルキル(メタ)アクリレート(ODMA)とアクリル酸とを含み、非重合性成分として乳化剤を含む原料エマルジョンから調製された、バインダーラテックスの例である。原料の種類と配合を下記の第2表に示す。
【0075】
このラテックスの製造方法は、重合の前処理段階で、重合性成分(IOA+AA+ODMA)の均一な溶液を調製した以外は、上記ラテックスL−1の調製と同様な手法に従った。得られたラテックスに含まれるポリマー微粒子の体積平均直径、Tgおよびエタノール希釈性の評価結果を合わせて下記の第2表に示す。
バインダーラテックスL−6およびL−7の調製
ラテックスL−6およびL−7は、重合性成分が炭素数4〜10のアルキルアクリレートと共重合性界面活性剤(前記アクアロンHS−10)とを含む原料エマルジョンから調製された、バインダーラテックスの例である。原料の種類と配合を次の第2表に示す。
【0076】
このラテックスの製造方法は、重合の前処理段階で、重合性成分(IOA+アクアロンHS−10)の均一な溶液を調製した以外は、上記ラテックスL−1の調製と同様な手法に従った。得られたラテックスに含まれるポリマー微粒子の体積平均直径、Tgおよびエタノール希釈性の評価結果を合わせて次の第2表に示す。
【0077】
【表2】
Figure 0004033503
【0078】
バインダーラテックスL−8〜L−10の調製(参考例)
これらの参考例は、エタノール希釈性が上記のラテックスL−1〜L−7に比べて良好でない、バインダーラテックスの例である。原料の種類と配合を下記の第2表(続き)に示す。
これらを簡単に説明すると、
▲1▼ ラテックスL−8は、非水溶性有機化合物を含むが、アクリル酸を含まない。
【0079】
▲2▼ ラテックスL−9は、アクリル酸を含むが、非水溶性有機化合物、長鎖アルキル(メタ)アクリレート、および、共重合性界面活性剤のいずれも含まず、油溶性開始剤(AVN:アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル)を用いた。
▲3▼ ラテックスL−10は、アクリル酸を含むが、非水溶性有機化合物、長鎖アルキル(メタ)アクリレート、および、共重合性界面活性剤のいずれも含まず、水溶性開始剤(AmPS)を用いた。
【0080】
これらのバインダーラテックスは、エタノール希釈性が比較的良好ではないので、比較的多量にエタノールを含む溶媒(全溶媒に対して50重量%以上のエタノールを含む場合)と組み合わせて、本発明による接着剤組成物、および、手動ポンプ式スプレー型接着剤を調製するには適さない。しかしながら、これらのポリマー微粒子の体積平均直径はいずれも5μm以下であるので、上記した他の例と同様にバインダーとしての機能は十分である。
【0081】
【表3】
Figure 0004033503
【0082】
例1
水系分散液S−1から形成した凝集体を30部(固形分含有割合約85重量%、残りは水)と、5部のラテックスL−1、50部のエタノールを組み合わせて使用した例である。
ここで、本例の接着剤組成物の調製方法について説明する。まず、上記水系分散液に、凝集剤として5%塩化バリウム水溶液を添加して分散している成分を凝集させ、それを濾過操作により、上ずみと上記凝集体とに分離した。その凝集体にエタノールを加えて撹拌装置(上記プロペラ撹拌子を有する撹拌装置)にて撹拌して、凝集を解いて粘着性微小球を再分散させて、エタノール溶媒中に上記粘着性微小球を分散させて含有するサスペンジョンを形成した。このサスペンジョンに、上記ラテックスを撹拌しながら添加して、本例の接着剤組成物を調製した。
【0083】
本例の接着剤組成物中の固形分濃度は約33重量%であり、粘着性微小球の含有濃度は約30重量%であった。また、溶媒全体に含まれるエタノールの割合は約83重量%であった。
さらに、この接着剤組成物に、アルコール膨潤型スメクタイトを2部添加して、本例の手動ポンプ式スプレー型接着剤を調製した。この手動ポンプ式スプレー型接着剤の各評価結果を下記の第3表に示す。
例2〜例4
水系分散液とラテックスとの組み合わせを下記の第3表に示すように変更した以外は、前記1と同様にして各例の接着剤組成物を調製した。これらの接着剤組成物に、アルコール膨潤型スメクタイトを2部添加して、各例の手動ポンプ式スプレー型接着剤を調製した。これらの手動ポンプ式スプレー型接着剤の各評価結果を下記の第3に示す。
例5
水系分散液とラテックスとの組み合わせを下記の第3表に示すように変更し、水系分散液から凝集体を形成しないで、この水系分散液を上記サスペンジョンとして使用した以外は、前記例1と同様にして各例の接着剤組成物を調製した。これらの接着剤組成物に、アルコール膨潤型スメクタイトを2部添加して、各例の手動ポンプ式スプレー型接着剤を調製した。これらの手動ポンプ式スプレー型接着剤の各評価結果を下記の第3表に示す。
比較例1
バインダー成分、すなわち、バインダーラテックスを添加しなかった以外は、前記例5の手法を繰り返した。本例の手動ポンプ式スプレー型接着剤の各評価結果を下記の第3表に示す。
比較例2
バインダーラテックスとスメクタイトとを添加しなかった以外は、前記例5の手法を繰り返した。本例の手動ポンプ式スプレー型接着剤の各評価結果を次の第3表に示す。
【0084】
【表4】
Figure 0004033503
【0085】
【発明の効果】
本発明による接着剤組成物では、それに含まれるバインダー微粒子が、接着剤組成物をスプレー等の塗布手段により被着体の表面に適用し乾燥した後、粘着性微小球をその被着体表面(粘着面)に強固に結着するバインダーとして作用する。したがって、接着剤組成物が適用された一方の被着体(たとえば、壁紙)を、他方の被着体(たとえば、壁)に貼着した後、一方の被着体の剥離・貼着操作の繰り返しによる、他方の被着体への糊移りを効果的に防止できる。また、炭素数4〜10のアルキルアクリレートを含有する重合性成分を重合してなるバインダー微粒子は、エタノールに比較的不溶であるので、環境湿度の変化に伴う凝集力の低下によるバインダーとしての機能低下を効果的に防止するようにも作用する。また、本発明の接着剤組成物では、バインダー微粒子のエタノール希釈安定性が高められるので、接着剤組成物中の溶媒に含有される水の量を減らしつつ、エタノールの量を相対的に多くすることが容易である。したがって、接着剤組成物の速乾性が向上し、紙等の材料からなる被着体の乾燥の際のしわの発生を効果的に防止できる。また、これらの形態におけるバインダー微粒子は、エタノールに対する不溶性がさらに増大するので、環境湿度の変化に伴う、バインダー微粒子の凝集力の低下をさらに効果的に防止できる。

Claims (1)

  1. (a)エタノールを含有する溶媒と、(b)前記エタノール含有溶媒中に分散されたものであって、体積平均直径が10〜300μmのアクリル共重合体からなる粘着性微小球とを含む接着剤組成物であって、前記エタノール含有溶媒が水とエタノールとからなり、前記粘着性微小球を被着体に結着させる体積平均直径0.01μm以上10μm未満のバインダー微粒子が前記エタノール含有溶媒中にさらに分散せしめられている接着剤組成物と、アルコール膨潤型スメクタイトとを含んでなることを特徴とする手動ポンプ式スプレー型接着剤。
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