JP4032739B2 - モータ制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パルス幅変調信号をインバータに入力してモータを制御するモータ制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気モータとして、ステータと、該ステータの内側において回転自在に配設されたロータとを備えてなるブラシレスDCモータがある。このブラシレスDCモータは、パルス幅変調(PWM)制御でインバータから出力される電流信号がステータコイルのU端子、V端子及びW端子に供給されることによってロータが回転するように構成されている。
【0003】
ところで、上記のようなブラシレスDCモータの回転を制御する場合、インバータに内蔵された半導体スイッチング素子(以下、単にスイッチング素子とも言う)を通電(オン)又は休電(オフ)させる際に、素子動作時のスイッチング損失に起因して熱が発生するため、該熱による温度上昇が著しいときにはインバータを熱破壊させる虞がある。このため、ブラシレスDCモータのPWM制御では、スイッチング素子動作時の発熱を可及的に低減してインバータの熱破壊を回避する等の目的から、前記U端子、V端子及びW端子に繋がる3つの信号相(三相ゲート)の内の二相のみを使用して発熱量を減少させつつ、PWM信号を生成する。この手法は、U端子、V端子及びW端子がスター結線され、各相のうちの2つの相における電流値が決まると残りの1つの相における電流値も決まるという原理に基づいている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、例えばハイブリッド車にてアイドルストップ機能を働かせる場合、エンジン停止中の車輌を徐々に発進させるためにブラシレスDCモータが低速回転すると、次のような問題を生じることがある。即ち、発進時等の低速域においてブラシレスDCモータを低速回転させる場合、制御部で算出されたインバータ駆動用のパルス幅変調信号(PWM信号)は極めてパルス幅が小さい極小波形となるため、該極小波形のPWM信号がスイッチング素子に印加されても、スイッチング素子が充分に反応して動作することができない状況を招く。この場合、インバータから出力される電流信号の波形が歪むため、このような電流信号を受けるブラシレスDCモータでは、トルクムラが発生し、回転及びトルクの振動を招き、運転フィーリングを損なう等の不都合を生じることになる。
【0005】
そこで、本発明は、PWM制御時に算出したインバータ駆動用の極小のPWM信号ではスイッチング素子が充分に応答することができず、通電時間が極めて小さい歪んだ波形の電流信号が生成されるような場合であっても、適切な制御を施すことによって、トルクムラを発生させずにモータを円滑に回転させる電流信号を生成できるPWM信号を生成し得るように制御し、もって上述した課題を解決したモータ制御装置を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る本発明は、パルス幅変調信号(PWM信号)をインバータ(5)に入力してモータ(2)を制御するモータ制御装置(1)において、
前記パルス幅変調信号における1パルスの生成に要するパルス生成区間(S)にて、前記パルス幅変調信号の第1(a相)、第2(b相)及び第3相(c相)の全てが休電状態となる休電区間に相当する時間(tF+tE)から所定時間(2tα)を減算すると共に、該減算した所定時間(2tα)を、前記各相(a相,b相,c相)の全てが通電状態となる通電区間に相当する時間(t1)に加算し、前記各相にパルス波形(Pa,Pb,Pc)をそれぞれ生成することによって前記パルス幅変調信号の1パルスを得るようにした三相ゲート信号制御モードと、前記第1相(a相)を全区間にて休電状態とし、かつ前記第2(b相)及び第3相(c相)にパルス波形(Pb,Pc)をそれぞれ生成することによって前記パルス幅変調信号の1パルスを得るようにした二相ゲート信号制御モードとを切換え自在な切換え手段(9)と、
前記インバータにおける許容温度内であるか否かを判定する温度判定手段(6)と、
前記二相ゲート信号制御モードに基づく前記モータ(2)への電流信号が所要の波形を有しないことを判定する波形判定手段(7,10)と、を備え、
前記切換え手段(9)は、前記温度判定手段(6)において許容温度内と判定され、かつ前記波形判定手段(7,10)において所要の波形を有しないと判定されたときに、前記二相ゲート信号制御モードから前記三相ゲート信号制御モード切換える、
ことを特徴とするモータ制御装置(1)にある。
【0007】
請求項2に係る本発明は、前記波形判定手段(7)は、前記インバータ(5)が反応可能な通電時間となる前記モータ(2)の回転数未満であるときに、所要の波形を有しないと判定する
請求項1記載のモータ制御装置(1)にある。
【0008】
請求項3に係る本発明は、前記波形判定手段(10)、前記各相(a相,b相,c相)が全て通電状態となる時間が1μs未満であるときに、所要の波形を有しないと判定する
請求項1記載のモータ制御装置(1)にある。
【0009】
請求項4に係る本発明は、前記第1ないし第3相(a相,b相,c相)の全てが休電状態となる休電区間に相当する時間(tF+tE)が1μsを超えることを判定する休電区間判定手段(10)を備えてなる、
請求項1ないし3のいずれか記載のモータ制御装置(1)にある。
請求項5に係る本発明は、前記切換え手段(9)が、前記温度判定手段(6)において許容温度以上と判定され、又は前記波形判定手段(7,10)において所要の波形を有すると判定されたときに、前記三相ゲート信号制御モードから前記二相ゲート信号制御モードに切換えてなる、
請求項1ないし4のいずれか記載のモータ制御装置(1)にある。
【0010】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、実施の形態との対応を容易にして理解の迅速化を図る便宜的なものであり、これにより請求項の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【0011】
【発明の効果】
請求項1に係る本発明によると、切換え手段が、温度判定手段において許容温度内と判定され、かつ波形判定手段において所要の波形を有しないと判定されたときに、二相ゲート信号制御モードから三相ゲート信号制御モードに切換えるので、二相ゲート信号制御モードによれば通電状態が不完全なPWM信号が生成されるような場合でも、三相ゲート信号制御モードに切換えることによって、通電時間が充分で良好なパルス波形のPWM信号を生成することができる。これにより、低速域でのモータ回転時のトルクムラを防止することができるので、本発明のモータ制御装置をハイブリッド車等に適用した場合に、低速域にてトルク振動が発生して運転フィーリングを損なうような問題を解消することができる。更に、インバータの温度変化等のパラメータを所定条件として予め用意するので、二相ゲート信号制御モード時に比較して発熱量が大きくなる三相ゲート信号制御モードを適切に活用することができる。
【0012】
請求項2に係る本発明によると、波形判定手段が、インバータが反応可能な通電時間となるモータの回転数未満であるときに、所要の波形を有しないと判定するので、インバータの熱破壊を招くことなく、かつ所要の波形を有する電流信号によりモータを回転することができる。つまり、通電時間が極小のPWM信号が生成されない状況下では三相ゲート信号制御モードに切換えず、本来必要とされる低速域にて該三相ゲート信号制御モードを有効に活用することができる。
【0013】
請求項3に係る本発明によると、波形判定手段が、各相が全て通電状態となる時間が1μs未満であるときに、所要の波形を有しないと判定するので、インバータの熱破壊を招くことなく、かつ所要の波形を有する電流信号によりモータを回転することができる。つまり、通電時間が極小のPWM信号が生成されない状況下では三相ゲート信号制御モードに切換えず、本来必要とされる低速域にて該三相ゲート信号制御モードを有効に活用することができる。
【0014】
請求項4に係る本発明によると、第1ないし第3相の全てが休電状態となる休電区間に相当する時間が1μsを超えることを判定する休電区間判定手段を備えるので、全相が休電状態となる時間が1μs以下で、休電区間から所定時間分を減算すると隣接の他のパルス生成区間との判別が困難になる場合には、三相ゲート信号制御モードに切換えないように制御することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明に係るモータ制御装置の構成を示すブロック図である。該モータ制御装置1は、PWM信号をインバータ5に入力してブラシレスDCモータ2を制御するもので、温度判定手段6と、回転数判定手段7と、モード切換え判定手段9と、パルス生成演算手段10と、PWM信号生成手段11とを備えている。また、インバータ5は、内部に3対の半導体スイッチング素子を備えており、該インバータ5には、内部温度を検出するサーミスタ等の温度検出素子12が設けられ、かつ直流電源13が接続されている。
【0016】
温度判定手段6は、温度検出素子12から送信される温度検出信号を入力し、インバータ5の内部温度が該インバータ5の機能が低下しないような許容温度である例えば80℃(所定温度)未満か否かを判定する。
【0017】
回転数判定手段7は、ブラシレスDCモータ2の現在の回転数を検出するために、回転センサ(図示せず)にて検出したブラシレスDCモータ2の回転検出値を入力する。また、回転数判定手段7は、後述する二相ゲート信号制御モードに基づくブラシレスDCモータ2への電流信号が所要の波形を有しないことを判定する波形判定手段を構成しており、予め算出されてマップ化されているモータ回転指令値等に基づいて、通電に拘わらずインバータ5内のスイッチング素子が反応し得ない通電時間となって上記電流信号が理想的な(所要の)波形を持てない状況となるか否かを判定する。本実施の形態では、この判定の閾値を、例えば100rpmとする。
【0018】
モード切換え判定手段(切換え手段)9は、温度判定手段6及び回転数判定手段7による各判定結果に基づき、モード切換えに際して必要な所定条件を満たしているか否かを判定し、該判定に基づいて、二相ゲート信号制御モードと三相ゲート信号制御モードとを切換える旨の指令(切換え指令)を発行する。該切換えでは、上記所定条件を満たしていると判定した時点で後述の二相ゲート信号制御モードを実施している際には、該二相ゲート信号制御モードを三相ゲート信号制御モードに切換える旨の切換え指令をパルス生成演算手段10に送る。また、三相ゲート信号制御モードの実施中に、上記所定条件を満たさなくなったと判定した場合には、三相ゲート信号制御モードを二相ゲート信号制御モードに切換える旨の切換え指令をパルス生成演算手段10に送る。上記各切換え指令は、切換え後のパルス生成区間S(図2又は図3)の直前のパルス生成区間S(図3又は図2)でのパルス生成中に発行する。
【0019】
なお、前記二相ゲート信号制御モードは、インバータ5に内蔵した6つのスイッチング素子の内の2組の素子対(即ち4つのスイッチング素子)を使用する二相変調制御(2アーム変調制御)を意味し、また、三相ゲート信号制御モードは、6つのスイッチング素子の内の3組の素子対(即ち6つのスイッチング素子)を使用する三相変調制御(3アーム変調制御)を意味している。後述するa相,b相,c相で生成されるパルス波形Pa,Pb,Pcはそれぞれ、インバータ5における上記6つのスイッチング素子の内の各素子対に対応して生成される。
【0020】
パルス生成演算手段10は、モード切換え判定手段9から送られた切換え指令に応答して、必要となるPWM信号を演算し、該演算が三相ゲート信号制御モードへの切換えのためである場合には、該PWM信号における後述のa相,b相,c相の全てが休電状態となる休電区間に相当する時間(tF+tE)が1μsを超えるか否かを判定する。その結果、1μsを超えると判定した際には、演算した三相ゲート信号制御モードのPWM信号に関するパルス幅及びタイミング等に基づく制御指令をPWM信号生成手段11に送る。一方、パルス生成演算手段10は、必要となるPWM信号を演算した場合に、上記休電区間に相当する時間が1μs以下であると判定したときには、二相ゲート信号制御モードのPWM信号に関するパルス幅及びタイミング等を演算し、該演算結果に基づく制御指令をPWM信号生成手段11に送る。これら演算は、制御モードを切換えるべきパルス生成区間Sの実施直前のタイミングで行うもので、本モータ制御装置1が車輌に搭載されることを想定すると、アクセルの踏込み操作等に応じて行うことになる。
【0021】
PWM信号生成手段11は、パルス生成演算手段10からの制御指令に基づき、切換えるべき三相ゲート信号制御モード又は二相ゲート信号制御モードにそれぞれ対応するPWM信号を生成して、インバータ5内のスイッチング素子に所定のタイミングで印加する。
【0022】
ついで、図2及び図3に沿って、二相ゲート信号制御モード及び三相ゲート信号制御モードについて説明する。図2及び図3はそれぞれ、二相ゲート信号制御モードにおけるPWM信号のa相(第1相)、b相(第2相)、及びc相(第3相)のパルス生成状況を示すタイミングチャートである。ここでは、所定時間毎に区切られるパルス生成区間Sが多数連続することによってPWM信号全体が構成されるとし、PWM信号の1パルスの生成に要する1個のパルス生成区間Sを抜粋してそれぞれ図示した。
【0023】
まず、図2に示すように、二相ゲート信号制御モードを実施する場合、パルス生成区間Sにおけるa相を全区間にて休電状態とし、かつb相及びc相にそれぞれパルス波形Pb,Pcを生成することによってPWM信号の1パルスを得るように制御する。即ち、該二相ゲート信号制御モードでは、パルス生成区間S全体の中間時刻において、時間t1に相当するパルス幅のパルス波形Pbをb相に生成し、かつ時間t2に相当するパルス幅のパルス波形Pcをc相に生成する。この場合、パルス波形Pcは、パルス波形Pbよりも時間(t1/2)×2の分だけパルス幅を大きく生成される。
【0024】
また、パルス生成区間Sの開始側の時間tFと最終側の時間tEとを加算した値は、PWM信号のa相ないしc相の全てが休電状態(0ベクトル)となる休電区間に相当する。なお、図2において、直流電源13によりインバータ5内のインバータブリッジに印加される電圧をVdcとし、a相ないしc相にそれぞれ印加したい平均の電圧(算出された電圧値)をVa,Vb,Vcとし、スイッチング周波数(キャリア周波数)をTとし、a相の全区間分の時間をt0とすると、
t0=0
t1=(T/Vdc)×(Va+2Vc)
t2=−(T/Vdc)×(2Va+Vc)となる。なお、1つのパルス生成区間Sに相当する時間の逆数が上記キャリア周波数Tとなる。
【0025】
また、図3に示すように、三相ゲート信号制御モードを実施する場合、パルス生成区間Sにおけるa相,b相,c相にそれぞれ、パルス波形Pa,Pb,Pcを生成することによってPWM信号の1パルスを得るように制御する。即ち、該三相ゲート信号制御モードでは、パルス生成区間S全体の中間時刻において、時間t0(即ち、図2におけるtα×2)に相当するパルス幅のパルス波形Paをa相に生成し、時間t1+2tαに相当するパルス幅のパルス波形Pbをb相に生成し、時間t2+2tαに相当するパルス幅のパルス波形Pcをc相に生成する。
【0026】
即ち、a相ないしc相の全てが休電状態となる休電区間に相当する時間(tF+tE)から、a相ないしc相の全てが通電状態となる通電区間に相当する時間(2tα)を減算する。更に、この減算した時間(2tα)を、a相ないしc相の全てが通電状態となる通電区間に相当する時間に加算、即ち、パルス生成区間Sの中間時刻に挿入するように足し合わせて、a相ないしc相にそれぞれ、PWM信号の1パルスを得るためのパルス波形Pa,Pb,Pcを生成する。
【0027】
これにより、図2の二相ゲート信号制御モードにおけるb相のパルス波形Pbの2倍のパルス幅を有するパルス波形Paをa相に生成し、二相ゲート信号制御モードにおけるb相のパルス波形Pbより2tαだけパルス幅が大きいパルス波形Pbをb相に生成し、二相ゲート信号制御モードにおけるc相のパルス波形Pcより2tαだけパルス幅が大きいパルス波形Pcをc相に生成することができる。
【0028】
上記のように、例えば車輌走行時の低速域にて極小パルスのPWM信号が生成されようとする際に、二相ゲート信号制御モードに代えて三相ゲート信号制御モードが実施されると、二相ゲート信号制御モード時に比較して充分なパルス幅を有するパルス波形がa相ないしc相にそれぞれ生成される。このため、図2の二相ゲート信号制御モードでは以下のような問題を生じる場合であっても、三相ゲート信号制御モードによって該問題を解消することができる。
【0029】
即ち、二相ゲート信号制御モードによれば、極小のパルス生成時には、図2に示すように、パルス波形Pbにおける波線で示す立上がりeuが予定エッジ形状よりも緩やかに立ち上がり、かつ立下がりedが予定エッジ形状よりも早く立ち下がることで、パルス波形Pbが不完全にオンしたままオフすることになる。パルス波形Pcも同様、不完全にオンしたままオフするので、これらのパルス波形Pb,PcのPWM信号ではインバータ5内のスイッチング素子を充分に駆動することができず、従って、ブラシレスDCモータ2を円滑に回転させ得る電流信号が生成されない状態を招く。
【0030】
これに対し、三相ゲート信号制御モードによれば、極小のパルス生成時に、パルス波形Paにおけるエッジの立上がりeu、立下がりedがそれぞれ予定エッジ形状よりも遅く立上がり、また早く立下がることによって、両端エッジ形状が不完全なパルス波形Pbとなるとしても、パルス波形PaないしPcが二相ゲート信号制御モード時に比べて充分なパルス幅を有するので、インバータ5内のスイッチング素子を介して、ブラシレスDCモータ2を円滑に回転させ得る電流信号を生成することができる。
【0031】
ついで、本実施の形態のモータ制御装置1を車輌に搭載した場合、該モータ制御装置1が二相ゲート信号制御モードと三相ゲート信号制御モードとを切換えるときに判定すべき条件について、図4のフローチャートに沿って詳細に説明する。
【0032】
まず、PWM制御をスタートすると、ステップS1において、モータ制御装置1の温度判定手段6が、温度検出素子12から取り込んだ検出温度値に基づいて、インバータ5の許容温度内であるか否か、即ちインバータ5の内部温度が80℃未満であるか否かを判定する。その結果、80℃以上であると判定した場合には、ステップS2に進んで二相ゲート信号制御モードによるPWM制御を実行し、80℃未満であると判定した場合にはステップS3に進む。
【0033】
該ステップS3では、回転数判定手段7が、通電に拘わらずインバータ5が反応し得ない通電時間となるモータ回転数であるか否か、即ちブラシレスDCモータ2の回転数が100rpm未満か否かを判定する。その結果、100rpm以上であると判定した場合には、二相ゲート信号制御モードによるPWM制御を実行する(S2)。一方、100rpm未満であると判定した場合には、ステップS4において、パルス生成演算手段10が、a相,b相,c相の全てが休電状態となる時間(tF+tE)は1μsを超えるか否かを判定する。その結果、1μs未満であると判定した場合には、二相ゲート信号制御モードによるPWM制御を実行し(S2)、1μsを超えると判定した場合には、三相ゲート信号制御モードによるPWM制御を実行する(S5)。
【0034】
以上のように、本実施の形態のモータ制御装置1では、インバータ5の熱破壊を招く虞がある80℃以上の状況下、及びブラシレスDCモータ2の回転数が100rpm以上あって極小のPWM信号が生成されない状況下では三相ゲート信号制御モードへの切換えを行わず、本来必要とされる低速域にて三相ゲート信号制御モードに切換えることができる。また、a相ないしc相が全て休電状態となる時間(tF+tE)が1μsを超えるか否かを更に判定するので、a相ないしc相が全て休電状態となる時間が1μs以下で、休電区間に相当する時間(tF+tE)から所定時間(2tα)を減算すると隣接の他のパルス生成区間Sとの判別が困難になる場合には、三相ゲート信号制御モードへの切換えを行わないように制御することができる。これにより、二相ゲート信号制御モードと三相ゲート信号制御モードとを適時切換えつつ有効に活用したPWM制御を得ることができる。
【0035】
ついで、上述の判定条件とは異なる判定条件を採用した場合のPWM制御ついて、図1、及び図5のフローチャートを併せて参照しつつ説明する。上記異なる判定条件を採用する場合には、モード切換え判定手段9及びパルス生成演算手段10は、上述とはやや異なる制御を行う。即ち、モード切換え判定手段9は、温度判定手段6による判定結果に基づき、モード切換えに際して必要な所定条件を満たしているか否かを判定し、二相ゲート信号制御モードと三相ゲート信号制御モードとを切換える旨の切換え指令を発行して、パルス生成演算手段10に送る。
【0036】
また、パルス生成演算手段10は、a相,b相,c相が全て通電状態となる時間が1μs未満であることを判定する波形判定手段を構成している。即ち、パルス生成演算手段10は、a相,b相,c相の全てが通電状態となる時間(t1)は1μs未満であるか否かを判定する。更に、パルス生成演算手段10は、a相ないしc相の全てが休電状態となる休電区間に相当する時間が1μsを超えることを判定する休電区間判定手段を構成している。即ち、パルス生成演算手段10は、モード切換え判定手段9から送られた切換え指令に応答して、必要となるPWM信号を演算し、該PWM信号におけるa相,b相,c相の全てが休電状態となる休電区間に相当する時間(tF+tE)が1μsを超えるか否かを判定し、これらの判定に従って制御指令をPWM信号生成手段11に送る。
【0037】
上記異なる判定条件を採用する場合、まず、PWM制御をスタートすると、モータ制御装置1における温度判定手段6が、インバータ5の内部温度が80℃未満であるか否かを判定し(S11)、80℃以上であると判定した場合には、二相ゲート信号制御モードによるPWM制御を実行し(S12)、80℃未満であると判定した場合には、ステップS13に進む。
【0038】
該ステップS13では、パルス生成演算手段10が、a相,b相,c相の全てが通電状態となる時間(t1)は1μs未満であるか否かを判定し、1μs以上であると判定した場合には、二相ゲート信号制御モードによるPWM制御を実行し(S12)、1μs未満であると判定した場合には、ステップS14に進む。該ステップS14では、更にパルス生成演算手段10が、a相,b相,c相の全てが休電状態となる時間(tF+tE)は1μsを超えるか否かを判定し、1μs未満であると判定した場合には、二相ゲート信号制御モードによるPWM制御を実行し(S12)、1μsを超えると判定した場合には、三相ゲート信号制御モードによるPWM制御を実行する(S15)。
【0039】
以上のように、本実施の形態のモータ制御装置1により、上述の異なる判定条件を採用してPWM制御する場合には、80℃以上の状況下、及びa相,b相,c相が全て通電状態となる時間(t1)が1μs以上の状況下では三相ゲート信号制御モードへの切換えは行わず、本来必要とされる低速域にて三相ゲート信号制御モードに切換えることができる。また、a相ないしc相が全て休電状態となる時間(tF+tE)が1μsを超えるか否かを更に判定することにより、隣接する他のパルス生成区間Sとの判別が困難になる場合には三相ゲート信号制御モードへの切換えを行わないように制御することができる。これにより、二相ゲート信号制御モードと三相ゲート信号制御モードとを適時切換えつつ有効に活用したPWM制御を得ることができる。
【0040】
なお、上述した実施の形態は、車輌への搭載が可能なブラシレスDCモータ2に適用したが、これに限らず、トルクがそれほど大きくない小型のブラシレスDCモータ等に適用してもよく、要はブラシ付き直流モータ以外のブラシレスモータであればよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るモータ制御装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】二相ゲート信号制御モードにおけるPWM信号の各相のパルス生成状況を示すタイミングチャート。
【図3】三相ゲート信号制御モードにおけるPWM信号の各相のパルス生成状況を示すタイミングチャート。
【図4】本発明に係るモータ制御装置による制御を示すフローチャート。
【図5】本発明に係るモータ制御装置にて別の判定条件を用いた際の制御を示すフローチャート。
【符号の説明】
1 モータ制御装置
2 モータ(ブラシレスDCモータ)
5 インバータ
6 温度判定手段
7 波形判定手段(回転数判定手段)
9 切換え手段(モード切換え判定手段)
10 波形判定手段、休電区間判定手段(パルス生成演算手段)
11 PWM信号生成手段
12 温度検出素子
13 直流電源
Pa,Pb,Pc パルス波形
S パルス生成区間
t1 通電区間
tF+tE 時間(休電区間に相当する時間)
2tα 時間(通電区間に相当する時間)
tF 開始側の時間
tE 最終側の時間

Claims (5)

  1. パルス幅変調信号をインバータに入力してモータを制御するモータ制御装置において、
    前記パルス幅変調信号における1パルスの生成に要するパルス生成区間にて、前記パルス幅変調信号の第1、第2及び第3相の全てが休電状態となる休電区間に相当する時間から所定時間を減算すると共に、該減算した所定時間を、前記各相の全てが通電状態となる通電区間に相当する時間に加算し、前記各相にパルス波形をそれぞれ生成することによって前記パルス幅変調信号の1パルスを得るようにした三相ゲート信号制御モードと、前記第1相を全区間にて休電状態とし、かつ前記第2及び第3相にパルス波形をそれぞれ生成することによって前記パルス幅変調信号の1パルスを得るようにした二相ゲート信号制御モードとを切換え自在な切換え手段と、
    前記インバータにおける許容温度内であるか否かを判定する温度判定手段と、
    前記二相ゲート信号制御モードに基づく前記モータへの電流信号が所要の波形を有しないことを判定する波形判定手段と、を備え、
    前記切換え手段は、前記温度判定手段において許容温度内と判定され、かつ前記波形判定手段において所要の波形を有しないと判定されたときに、前記二相ゲート信号制御モードから前記三相ゲート信号制御モード切換える、
    ことを特徴とするモータ制御装置。
  2. 前記波形判定手段、前記インバータが反応可能な通電時間となる前記モータの回転数未満であるときに、所要の波形を有しないと判定する
    請求項1記載のモータ制御装置。
  3. 前記波形判定手段、前記各相が全て通電状態となる時間が1μs未満であるときに、所要の波形を有しないと判定する
    請求項1記載のモータ制御装置。
  4. 前記第1ないし第3相の全てが休電状態となる休電区間に相当する時間が1μsを超えることを判定する休電区間判定手段を備えてなる、
    請求項1ないし3のいずれか記載のモータ制御装置。
  5. 前記切換え手段は、前記温度判定手段において許容温度以上と判定され、又は前記波形判定手段において所要の波形を有すると判定されたときに、前記三相ゲート信号制御モードから前記二相ゲート信号制御モードに切換えてなる、
    請求項1ないし4のいずれか記載のモータ制御装置。
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