JP2004304905A - センサレスブラシレスモータの駆動回路 - Google Patents
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Abstract
【課題】センサレスブラシレスモータにおいて制御が簡単でありかつ脱調することがない駆動回路を実現する。
【解決手段】モータ4の回転制御のためにコントロール部1から転流パターンを出力すると共に、モータ端子電圧をセンシング部3でCR位相シフトしたロータ位置信号をコントロール部に入力し、ロータ位置信号に基づいて転流パターンを切り換える。低回転速度時にはロータ位置信号に対して遅角させた転流パターンを用いて制御することにより、低回転速度領域で位相シフトが充分に行われなくても脱調することのない制御を行うことができる。また、位置センサを設けた複雑な回路となることなく、ブラシレスモータの駆動回路を簡単なものとすることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】モータ4の回転制御のためにコントロール部1から転流パターンを出力すると共に、モータ端子電圧をセンシング部3でCR位相シフトしたロータ位置信号をコントロール部に入力し、ロータ位置信号に基づいて転流パターンを切り換える。低回転速度時にはロータ位置信号に対して遅角させた転流パターンを用いて制御することにより、低回転速度領域で位相シフトが充分に行われなくても脱調することのない制御を行うことができる。また、位置センサを設けた複雑な回路となることなく、ブラシレスモータの駆動回路を簡単なものとすることができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、センサレスブラシレスモータの駆動回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ブラシレスモータであって、ホール素子などによる位置検出を行わずに駆動制御可能にしたセンサレスブラシレスモータが知られている(例えば、特許文献1参照。)。位置センサを設けなくても、回転時に発生する誘起電圧波形から疑似ロータ位置信号を取り出して、そのロータ位置信号に基づいて転流パターンを用いたフィードバック制御を行うことができる。
【0003】
3相ブラシレスモータの120度矩形波駆動の場合、3相のモータ端子にはそれぞれ誘起電圧を含む120度位相差の台形波が検出され、このモータ端子電圧波形を元にロータ位置信号を生成することができる。なお、このモータ端子電圧波形は指令に対するロータ位置によって微妙に変化する。また、ホール素子などを設けたものにおける検出位置信号に対して上記モータ端子電圧波形は90度位相が進んでいる。例えば、センサレスブラシレスモータにおけるロータ位置信号として上記モータ端子電圧波形を用いる場合には、その波形をCRフィルタにより90度位相シフトするCR位相シフト法により生成することができる。
【0004】
図6に回転速度とロータ位置信号の電気角との関係を示す。図において、横軸をモータの回転速度、縦軸をCRシフト量90度に対する電気角としている。なお、電気角0度がホール素子を用いた場合の磁極位置0度となる。
【0005】
また、CR位相シフト法によるシフト量の位相θは次式で求められる。
θ=arctan(2πfCR) …(1)
なお、−1/2π<θ<1/2πであり、fはモータ回転速度による電気角周波数である。上記(1)式においてCRをある値として求めた計算値(位相シフト量)θを基にθ´=90(度)−θとした場合を図に想像線で示す。それに対して、モータに位置センサ(U相)を設け、モータの端子電圧(電源電圧)を0V〜最大印加電圧まで上昇させた時のU相センサ信号とU相ロータ位置信号の位相差θuを測定し、θ=90(度)−θuとした場合を実線で示す。
【0006】
また、電気角0度に対してモータを脱調させることなく制御可能な範囲があり、進角側でθaまでであり、遅角側で−θbまでとする。したがって、CR位相シフト法により90度の位相シフト量として制御できる回転速度領域は図から分かるようにn3[rpm]以上であり、それ以下の始動時や低回転速度領域ではCR位相シフト法により得られる位置信号に基づいて通電制御することができない。
【0007】
このように、初期状態から回転し始めた始動時及び低回転速度状態の場合には、CRフィルタによるロータ位置信号の位相が制御可能領域外なので、ロータ位置信号として上記モータ端子電圧波形を使用することができない。そのため、ある程度回転速度が上昇するまでオープンループ転流制御を行い、回転速度が上昇してモータ端子電圧波形に基づいたロータ位置信号の位相が制御可能領域になったら、その信号をフィードバックして回転制御を行う。
【0008】
上記センサレスブラシレスモータにおける始動時のオープンループ制御にあっては、始動前の初期状態ではロータがどの位置にあるか不明なため任意の転流パターンに応じた所定の極に磁気吸引するようにコイルに通電する。そして、所定の極にロータが位置したと仮定して、オープンループ転流による始動制御を行う。続けて、同様のオープンループ転流により加速制御を行い、ある回転速度以上になって安定した疑似ロータ位置信号が得られるようになったらフィードバック制御に移行し、その後フィードバック制御を用いた定常回転制御を行う。
【0009】
しかしながら、例えば3相8極モータの場合で考えると、1機械角(360度)の中に1電気角(360度)が4つあり、その1電気角に6つの転流パターンがある。そのため、1機械角の中に同一の転流パターンが4つ存在し、初期状態で隣り合う電気角における各同一の転流パターンの中間点にロータが位置していた場合には、いずれの電気角の方に吸引されるか不明である。また、初期通電時のロータの角加速度は、電流・初期ロータ位置・慣性重量によって変化するため、一定しない。したがって、初期通電にあっては、例えば任意の転流パターンで一定時間通電し、その転流パターンに応じた位置にロータが位置したと仮定して転流制御を開始する。
【0010】
【特許文献1】
特開2002−300792号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、1つのCR時定数によるCR位相シフト法を用いた場合には、低回転速度領域では高回転速度時のようにロータ位置信号の位相が回転制御可能領域にないという問題がある。それに対して低回転速度用と高回転速度用とで異なるCR時定数を設定するようにすることもできるが、その場合には制御が複雑化し、装置が高騰化する。
【0012】
また、従来例で示したように始動時及び低回転速度時のオープンループ制御と高回転速度時のCR位相シフト法とによる制御が可能であるが、始動時にオープンループ制御を行うので、転流したことでロータがその対応する極に位置しているか否かを判別できないまま転流信号を変化させて、転流周波数を上昇させる加速制御を行う。しかしながら、初期状態で仮定した位置とは異なる位置にロータが位置していた場合には、転流周波数の上昇による転流パターンの変化の早さにロータが追従できなくなって、振動して脱調するばかりでなく、負荷が変動した場合や初めから高負荷の場合にも脱調し易いという問題がある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決して、センサレスブラシレスモータにおいて制御が簡単であると共に脱調することがないことを実現するために、本発明に於いては、ブラシレスモータの回転によるモータ端子電圧の変化をCR時定数により位相シフトしてロータ位置信号を生成し、前記ロータ位置信号に対応する転流パターンを前記ロータ位置信号に応じて切り換える転流制御を行うようにしたセンサレスブラシレスモータの駆動回路であって、モータ回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記転流パターンを電気角で所定角度遅角させる転流パターン遅角手段とを有し、前記回転速度検出手段により前記モータ回転速度が所定の回転速度以下の低回転速度領域であると判別された場合には前記転流パターン遅角手段により遅角された転流パターンを用いて前記転流制御を行うものとした。
【0014】
位置センサの代わりにモータ端子電圧の変化を検出し、転流パターンに適する位置信号とするべくモータ端子電圧をCR時定数により位相シフトしたロータ位置信号を用いて転流制御を行う場合に、低回転速度領域では位相シフトが充分に行われず、それにより脱調を起こしてしまう場合がある。そのような低回転速度領域では、遅角された転流パターンを用いることにより、位相シフト量の低下分を補うことができるため、脱調することなく制御可能な電気角の範囲での転流制御を行うことができる。これにより、位置センサを設けた複雑な回路とならず、ブラシレスモータの駆動回路を簡単なものとすることができ、かつ脱調することのない制御を行うことができる。
【0015】
また、ブラシレスモータの回転によるモータ端子電圧の変化をCR時定数により位相シフトしてロータ位置信号を生成し、前記ロータ位置信号に対応する転流パターンを前記ロータ位置信号に応じて切り換える転流制御を行うようにしたセンサレスブラシレスモータの駆動回路であって、始動時の初期には、異なる2つ以上の転流パターンを続ける強制通電を行うことものとした。
【0016】
これによれば、センサレスブラシレスモータにあっては初期位置が不明なため強制的に通電して初期の回転速度を発生させるようにするが、任意の1つの転流パターンのみの通電ではその対応する位置にロータが位置していた場合には回転力が発生しないのに対して、異なる2つ以上の転流パターンによる強制通電によれば、いずれか1つに位置していたとしても他の転流パターンの通電時に回転力が発生し得るため、ロータがどの位置に停止していても始動失敗が起きることがない。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図面に示された具体例に基づいて本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明が適用されたセンサレスブラシレスモータの駆動回路を示すブロック図である。本駆動回路は、図に示されるようにコントロール部1とパワー部2とセンシング部3とにより構成されている。パワー部2は、ハイ・ロー一対のスイッチング素子を制御対象となる例えば3相のブラシレスモータ4の各相毎に有している。各スイッチング素子はコントロール部1の出力I/Fを介して出力される各信号UH・VH・WH・UL・VL・WLによりオン/オフし、それらオン/オフの組み合わせが転流パターンに対応する。
【0019】
パワー部2とモータ4とを接続する各相別の3本の通電線5u・5v・5wからそれぞれ分岐された3本の分岐線6u・6v・6wがセンシング部3に接続されている。センシング部3では各相毎のモータ端子電圧から方形波のロータ位置信号を各相毎に生成し、そのロータ位置信号がコントロール部1の入力I/Fに出力されている。
【0020】
上記センシング部3の回路構成を図2を参照して以下に示す。センシング部3内には、上記分岐線6u・6v・6wが接続された各入力端子Iu・Iv・Iwと対応する各出力端子Ou・Ov・Owとの間に、入力側から分圧回路3a・CR位相シフト回路3b・中性点電位生成回路3c・コンパレータ3dがこの順に設けられている。分圧回路3aで高いモータ端子電圧を分圧してコンパレータ3dに入力できる電圧にする。例えばコンパレータ3dの電源電圧が12Vの場合には分圧電圧が12V以下となるように各抵抗を設定する。
【0021】
CR位相シフト回路3bでは、モータ端子電圧に現れる台形波(矩形波の場合有り)をCR時定数で位相シフトすると共に、120度矩形波駆動特有の還流ダイオードによるサージ電圧を除去することもできる。次の中性点電位生成回路3cでは、CR位相シフト後の波形を元にその中性点電位を生成する。これは、モータ端子電圧に対するモータ中性点電位の関係と相対的に同等である。これを疑似中性点電位とする。コンパレータ3dでは、分圧後のCR位相シフト波形と疑似中性点電位とを比較し、デューティ比50%の矩形波を生成する。この矩形波をロータ位置信号として出力端子Ou・Ov・Owからコントロール部1に出力する。
【0022】
なお、センシング部3では、モータ端子電圧波形をそのエッジで検出するのではなく、一定時間毎にロータ位置信号のレベルを検出し、それによりロータ位置信号の0または1の状態を判別するようにしている。これにより、始動時や低回転速度時には還流ダイオードのサージ電圧を完全に除去できない場合を回避することができる。
【0023】
また、分圧後のCR位相シフト波形と疑似中性点電位とは必ず相対的な関係にあり、低回転速度(転流周波数が低い状態)でもコンパレータ3dの出力は矩形波を出力することができる。しかしながら、CR位相シフト量が90度に満たないため、低回転速度での出力をロータ位置信号として使用することができない。
【0024】
上記センシング部3では、モータ端子電圧U・V・W、モータ端子電圧CR位相シフト信号Uf・Vf・Wfをセンシングし、それらの信号から、モータ中性点電位M1(=(U+V+W)/3)、疑似中性点電位M2(=(Uf+Vf+Wf)/3)をセンシングする。なお、モータ端子電圧U・V・W及びモータ中性点電位M1の関係と、モータ端子電圧CR位相シフト信号Uf・Vf・Wf及び疑似中性点電位M2の関係とは相対的に同等である。したがって、このモータ端子電圧CR位相シフト信号Uf・Vf・Wfと疑似中性点電位M2とをコンパレータで比較した方形波出力信号をロータ位置信号とすることができる。
【0025】
コントロール部1では、センシング部3からのロータ位置信号がレベル判定部1aと速度モニタ部1bとに入力する。レベル判定部1aではロータ位置信号のレベルを判定し、速度モニタ1bでは、入力されるロータ位置信号の周期からモータ回転速度を算出すると共に、始動初期しきい値n1、始動・低回転しきい値n2、中・高速しきい値n3に対するモータ回転速度の高低を判別する。レベル判定部1aと速度モニタ1bとの両出力信号が、始動初期強制通電モード部1cと始動・低回転モード部1dと中・高速回転モード部1eとに入力されるようになっている。各モード部1c・1d・1eのいずれか1つがレベル判定部1aと速度モニタ1bとの両出力信号に応じて選択され、選択されたモードに応じたモータ制御信号が出力I/Fを介してインバータ2へ出力される。
【0026】
速度モニタ部1bでモータ回転速度が始動初期しきい値n1以下と判別された場合には始動初期強制通電モード部1cが選択される。この始動初期強制通電モードで用いる転流パターンは通常の高回転速度時に用いるものと同じものであって良く、特別に設定する必要はない。また、ロータ位置信号Rに基づくことなく、すなわちオープンループによる転流制御を行う。
【0027】
なお、始動初期しきい値n1は、モータ4が停止しているか否かを判別できる程度の極低回転速度であって良い。例えば、ロータ位置信号で1周期分だけモータ4が回転した時点でのモータ回転速度程度とする。これにより、ロータ位置信号の不明な状態での回転制御を上記したようにオープンループで行う場合の不安定な期間を最小限とすることができる。なお、この場合の初期通電時間は例えば数msで良い。
【0028】
また、従来例で示したように、モータ4を例えば3相8極の場合で考えると、図3に示されるように、1機械角(360度)の中に1電気角(360度)が4つ(θ1・θ2・θ3・θ4)あり、各1電気角の中に6つの転流パターンa・b・c・d・e・fがある。そして、始動初期強制通電モードでの初期通電制御信号としては、任意の電気角(例えばθ1)の中の隣り合う任意の2つの転流パターン(例えばa・b)を連続して通電したら、次に別の任意の2つの転流パターン(例えばc・d)を同じく連続して通電する信号とする。
【0029】
例えば転流パターンaに対応する位置にロータ4aの対応する極が位置していた場合に、1パターンのみの初期通電を行うもので転流パターンaを行うと、ロータ4aに角加速度が生じないので誘起電圧は発生せず、フィードバック制御に移ることができない。
【0030】
それに対して本発明によれば1電気角内の6つの転流パターンの内、任意の2パターン以上を連続で強制的に通電することから、ロータ4aは、上記した最初の通電では転流パターンa・bの間に吸引され、次の通電では転流パターンc・dの間に吸引される。したがって、上記したように転流パターンaに対応する位置にロータ4aが位置していてロータ4aが回転しないとしても、2回目の通電で必ずロータ4aが別の位置(転流パターンc・dの間)へ吸引されるため、この場合には必ずロータ4aが図の矢印に示されるように回転し得る。これにより誘起電圧が発生し、フィードバック制御に移行することができる。
【0031】
なお、ブラシレスモータの位置センサにホール素子を用いたものにあっては、3相の信号レベルが(0・0・0)や(1・1・1)という状態はあり得ない。しかしながら、本発明のようなロータ位置信号を用いる場合には、上記始動・初期強制通電時ではあり得る。したがって、(0・0・0)や(1・1・1)という場合には特定の位置に通電制御するように設定しておくことにより、他の場合と同様にモータ4に回転力を生じさせる切っ掛けを作ることができるため、3相の信号レベルにあっては8パターンを用いても良い。
【0032】
始動初期強制通電モードによる始動が行われてモータ回転速度が上昇し、速度モニタ部1bでモータ回転速度が始動初期しきい値n1以上であると判別された場合には始動・低回転モード部1dが選択される。この始動・低回転モードでは、ロータ位置信号を検出可能な回転速度になっているので、ロータ位置信号に応じて転流制御を行うことができる。
【0033】
この場合、従来例で示したCR位相シフト法による90度シフト(基準位置;図4の電気角0度)に対して進角側に所定の電気角(θa)までと、遅角側にも所定の電気角(−θb)までの領域内であれば制御可能である。しかしながら、図4の実線Rで示すモータ端子電圧に基づくロータ位置信号(従来例で示した図6の実線)では、回転速度がn3(>n1)[rpm]以下の低回転速度領域では基準位置に対して進角がθa以上になってしまい、そのロータ位置信号(R)に基づいて転流パターン信号を出力してもモータ4を正常に回転制御することができない。
【0034】
そこで、ロータ位置信号(R)に対して60度遅角させた状態(図4の想像線Rd)を作る。この60度遅角状態Rdにあっては、図4に示されるように、−θbになる回転速度がn2(<n3)であるとすると、n1〜n2の回転速度領域では基準位置に対して遅角がθa〜−θb以内に収まるようになり、上記したように回転制御可能である。このように、n1〜n2の低回転速度領域に対しては上記60度遅角状態Rdに基づいて転流制御を行うことができる。なお、n1を超えた直後では進角制御であり、回転速度が上昇していくと、60度遅角状態Rdのロータ位置信号が基準位置(電気角0度)の軸(x軸)を横切って遅角側になる。
【0035】
次に、図5に60度遅角状態Rdに対する転流制御の例を示す。図において、上段にロータ位置信号Rに対応するセンシング部3の出力を示し、下段に転流制御としてコントロール部1の出力I/Fの出力を示す。また、図の最上段のa〜fは転流パターンを示す。上記転流パターンa〜fは、ロータ位置信号Rに応じて予め設定しておく。
【0036】
例えば、センシング部3の各相の出力が図5のように変化する場合には、各状態(0または1)による組み合わせパターンに応じて、各スイッチング素子のオン/オフ信号に対応する出力I/Fの出力を図5の想像線に示されるように変化させることにより通常の転流制御を行うことができる。
【0037】
それに対して、低回転速度時には出力I/Fの各相毎のオン信号出力を図5の矢印に示されるように想像線の状態から電気角で60度遅角させて図の実線とする。これにより、図4の60度遅角状態Rdを実現することができ、CR位相シフトによる90度位相シフトの基準位置に対する遅角θb以内に収まる転流制御を行うことができる。したがって、低回転速度時における脱調のない円滑な回転及び加速を行うことができる。この低回転速度時にロータ位置信号Rに基づいて転流制御を行うと、図4から明らかなように基準位置に対してθa以上進角した位置で転流パターンを変えていくことになり、その場合には従来例で示したように脱調してしまう。
【0038】
始動・低回転モードにて回転速度が上昇して、速度モニタ部1bでモータ回転速度が上記しきい値n2以上であると判別された場合には通常のロータ位置信号R(図4の進角側の太線)に基づいて転流制御を行うように切り換える。この60度遅角状態Rdからロータ位置信号Rへの切り替えはプログラムソフトで行うことであって良い。切り換えを行うと、転流の位相が進角側になるので、モータ4の印加電圧が同じであっても回転速度は瞬時にn2からn3(>n2)になる(図4の破線の上向き矢印)。
【0039】
このn3以上の領域では中・高速回転モードとして制御を行う。このモードでは、通常のロータ位置信号Rに基づいて制御することから、図4に示されるように基準位置に対する進角θa以内に収まる進角による転流制御を行うことができる。したがって、高回転速度時においても脱調のない円滑な回転及び加速を行うことができる。特に、高回転速度時では基準位置に対してロータ位置信号Rが約5〜10度程度の進角状態となり、約5〜10度程度進角させた転流制御となるため、高回転速度時の制御を好適に行うことができる。
【0040】
また、この中・高速回転中に負荷増大により回転速度が低下してn3以下になったことを速度モニタ部1bで検出した場合には、始動・低回転モードに切り換える。この場合には、上記と逆に転流の位相が遅角側になるので、モータ4の印加電圧が同じであっても回転速度は瞬時にn3からn2になる(図4の破線の下向き矢印)。さらに、負荷が増大して回転速度がn1以下になったことを速度モニタ部1bで検出した場合には、始動時初期強制通電モードに切り換える。これにより、60度遅角状態Rdでは進角側のθaを超えてさらに進角してしまって脱調する虞を防止することができる。過負荷状態が解除されれば、上記回転速度の上昇時の制御要領で再び好適な回転制御を行うことができる。
【0041】
なお、本制御は一方向回転のみに限られるものではなく、上記図示例とは逆向きに回転させる場合にも適用可能である。例えば、ブラシレスモータにおいて通常行われる正逆回転制御と同様に、上記図示例に対して逆回転させるように転流パターンを切り換えるようにすれば良く、正逆両方向の回転制御を何ら問題なく実行し得る。
【0042】
【発明の効果】
このように本発明によれば、モータ端子電圧をCR時定数により位相シフトしたロータ位置信号を用いて転流制御を行う場合に、低回転速度領域で位相シフトが充分に行われなくても、遅角された転流パターンを用いるという単純な構成により、位置センサを設けた複雑な回路となることなく、ブラシレスモータの駆動回路を簡単なものとすることができ、かつ脱調することのない制御を行うことができる。
【0043】
また、始動時の初期に異なる2つ以上の転流パターンを続ける強制通電を行うことにより、センサレスブラシレスモータにおける初期の強制通電の転流パターンの対応する位置にロータが位置していた場合でも他の転流パターンの通電時に回転力が発生し得るため、ロータがどの位置に停止していても始動失敗が起きることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されたセンサレスブラシレスモータの駆動回路を示すブロック図。
【図2】センシング部を示す回路図。
【図3】初期始動要領を示す説明図。
【図4】本発明に基づくCR位相シフト法における回転速度と電気角との関係を示す図。
【図5】本発明に基づく転流パターンの切り換えタイミングを示す図。
【図6】CR位相シフト法における計算値と実測値とにおける回転速度と電気角との関係を示す図。
【符号の説明】
1 コントロール部
2 パワー部
3 センシング部
3a 分圧回路
3b CR位相シフト回路
3c 中性点電位生成回路
3d コンパレータ
4 ブラシレスモータ
【発明の属する技術分野】
本発明は、センサレスブラシレスモータの駆動回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ブラシレスモータであって、ホール素子などによる位置検出を行わずに駆動制御可能にしたセンサレスブラシレスモータが知られている(例えば、特許文献1参照。)。位置センサを設けなくても、回転時に発生する誘起電圧波形から疑似ロータ位置信号を取り出して、そのロータ位置信号に基づいて転流パターンを用いたフィードバック制御を行うことができる。
【0003】
3相ブラシレスモータの120度矩形波駆動の場合、3相のモータ端子にはそれぞれ誘起電圧を含む120度位相差の台形波が検出され、このモータ端子電圧波形を元にロータ位置信号を生成することができる。なお、このモータ端子電圧波形は指令に対するロータ位置によって微妙に変化する。また、ホール素子などを設けたものにおける検出位置信号に対して上記モータ端子電圧波形は90度位相が進んでいる。例えば、センサレスブラシレスモータにおけるロータ位置信号として上記モータ端子電圧波形を用いる場合には、その波形をCRフィルタにより90度位相シフトするCR位相シフト法により生成することができる。
【0004】
図6に回転速度とロータ位置信号の電気角との関係を示す。図において、横軸をモータの回転速度、縦軸をCRシフト量90度に対する電気角としている。なお、電気角0度がホール素子を用いた場合の磁極位置0度となる。
【0005】
また、CR位相シフト法によるシフト量の位相θは次式で求められる。
θ=arctan(2πfCR) …(1)
なお、−1/2π<θ<1/2πであり、fはモータ回転速度による電気角周波数である。上記(1)式においてCRをある値として求めた計算値(位相シフト量)θを基にθ´=90(度)−θとした場合を図に想像線で示す。それに対して、モータに位置センサ(U相)を設け、モータの端子電圧(電源電圧)を0V〜最大印加電圧まで上昇させた時のU相センサ信号とU相ロータ位置信号の位相差θuを測定し、θ=90(度)−θuとした場合を実線で示す。
【0006】
また、電気角0度に対してモータを脱調させることなく制御可能な範囲があり、進角側でθaまでであり、遅角側で−θbまでとする。したがって、CR位相シフト法により90度の位相シフト量として制御できる回転速度領域は図から分かるようにn3[rpm]以上であり、それ以下の始動時や低回転速度領域ではCR位相シフト法により得られる位置信号に基づいて通電制御することができない。
【0007】
このように、初期状態から回転し始めた始動時及び低回転速度状態の場合には、CRフィルタによるロータ位置信号の位相が制御可能領域外なので、ロータ位置信号として上記モータ端子電圧波形を使用することができない。そのため、ある程度回転速度が上昇するまでオープンループ転流制御を行い、回転速度が上昇してモータ端子電圧波形に基づいたロータ位置信号の位相が制御可能領域になったら、その信号をフィードバックして回転制御を行う。
【0008】
上記センサレスブラシレスモータにおける始動時のオープンループ制御にあっては、始動前の初期状態ではロータがどの位置にあるか不明なため任意の転流パターンに応じた所定の極に磁気吸引するようにコイルに通電する。そして、所定の極にロータが位置したと仮定して、オープンループ転流による始動制御を行う。続けて、同様のオープンループ転流により加速制御を行い、ある回転速度以上になって安定した疑似ロータ位置信号が得られるようになったらフィードバック制御に移行し、その後フィードバック制御を用いた定常回転制御を行う。
【0009】
しかしながら、例えば3相8極モータの場合で考えると、1機械角(360度)の中に1電気角(360度)が4つあり、その1電気角に6つの転流パターンがある。そのため、1機械角の中に同一の転流パターンが4つ存在し、初期状態で隣り合う電気角における各同一の転流パターンの中間点にロータが位置していた場合には、いずれの電気角の方に吸引されるか不明である。また、初期通電時のロータの角加速度は、電流・初期ロータ位置・慣性重量によって変化するため、一定しない。したがって、初期通電にあっては、例えば任意の転流パターンで一定時間通電し、その転流パターンに応じた位置にロータが位置したと仮定して転流制御を開始する。
【0010】
【特許文献1】
特開2002−300792号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、1つのCR時定数によるCR位相シフト法を用いた場合には、低回転速度領域では高回転速度時のようにロータ位置信号の位相が回転制御可能領域にないという問題がある。それに対して低回転速度用と高回転速度用とで異なるCR時定数を設定するようにすることもできるが、その場合には制御が複雑化し、装置が高騰化する。
【0012】
また、従来例で示したように始動時及び低回転速度時のオープンループ制御と高回転速度時のCR位相シフト法とによる制御が可能であるが、始動時にオープンループ制御を行うので、転流したことでロータがその対応する極に位置しているか否かを判別できないまま転流信号を変化させて、転流周波数を上昇させる加速制御を行う。しかしながら、初期状態で仮定した位置とは異なる位置にロータが位置していた場合には、転流周波数の上昇による転流パターンの変化の早さにロータが追従できなくなって、振動して脱調するばかりでなく、負荷が変動した場合や初めから高負荷の場合にも脱調し易いという問題がある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決して、センサレスブラシレスモータにおいて制御が簡単であると共に脱調することがないことを実現するために、本発明に於いては、ブラシレスモータの回転によるモータ端子電圧の変化をCR時定数により位相シフトしてロータ位置信号を生成し、前記ロータ位置信号に対応する転流パターンを前記ロータ位置信号に応じて切り換える転流制御を行うようにしたセンサレスブラシレスモータの駆動回路であって、モータ回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記転流パターンを電気角で所定角度遅角させる転流パターン遅角手段とを有し、前記回転速度検出手段により前記モータ回転速度が所定の回転速度以下の低回転速度領域であると判別された場合には前記転流パターン遅角手段により遅角された転流パターンを用いて前記転流制御を行うものとした。
【0014】
位置センサの代わりにモータ端子電圧の変化を検出し、転流パターンに適する位置信号とするべくモータ端子電圧をCR時定数により位相シフトしたロータ位置信号を用いて転流制御を行う場合に、低回転速度領域では位相シフトが充分に行われず、それにより脱調を起こしてしまう場合がある。そのような低回転速度領域では、遅角された転流パターンを用いることにより、位相シフト量の低下分を補うことができるため、脱調することなく制御可能な電気角の範囲での転流制御を行うことができる。これにより、位置センサを設けた複雑な回路とならず、ブラシレスモータの駆動回路を簡単なものとすることができ、かつ脱調することのない制御を行うことができる。
【0015】
また、ブラシレスモータの回転によるモータ端子電圧の変化をCR時定数により位相シフトしてロータ位置信号を生成し、前記ロータ位置信号に対応する転流パターンを前記ロータ位置信号に応じて切り換える転流制御を行うようにしたセンサレスブラシレスモータの駆動回路であって、始動時の初期には、異なる2つ以上の転流パターンを続ける強制通電を行うことものとした。
【0016】
これによれば、センサレスブラシレスモータにあっては初期位置が不明なため強制的に通電して初期の回転速度を発生させるようにするが、任意の1つの転流パターンのみの通電ではその対応する位置にロータが位置していた場合には回転力が発生しないのに対して、異なる2つ以上の転流パターンによる強制通電によれば、いずれか1つに位置していたとしても他の転流パターンの通電時に回転力が発生し得るため、ロータがどの位置に停止していても始動失敗が起きることがない。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図面に示された具体例に基づいて本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明が適用されたセンサレスブラシレスモータの駆動回路を示すブロック図である。本駆動回路は、図に示されるようにコントロール部1とパワー部2とセンシング部3とにより構成されている。パワー部2は、ハイ・ロー一対のスイッチング素子を制御対象となる例えば3相のブラシレスモータ4の各相毎に有している。各スイッチング素子はコントロール部1の出力I/Fを介して出力される各信号UH・VH・WH・UL・VL・WLによりオン/オフし、それらオン/オフの組み合わせが転流パターンに対応する。
【0019】
パワー部2とモータ4とを接続する各相別の3本の通電線5u・5v・5wからそれぞれ分岐された3本の分岐線6u・6v・6wがセンシング部3に接続されている。センシング部3では各相毎のモータ端子電圧から方形波のロータ位置信号を各相毎に生成し、そのロータ位置信号がコントロール部1の入力I/Fに出力されている。
【0020】
上記センシング部3の回路構成を図2を参照して以下に示す。センシング部3内には、上記分岐線6u・6v・6wが接続された各入力端子Iu・Iv・Iwと対応する各出力端子Ou・Ov・Owとの間に、入力側から分圧回路3a・CR位相シフト回路3b・中性点電位生成回路3c・コンパレータ3dがこの順に設けられている。分圧回路3aで高いモータ端子電圧を分圧してコンパレータ3dに入力できる電圧にする。例えばコンパレータ3dの電源電圧が12Vの場合には分圧電圧が12V以下となるように各抵抗を設定する。
【0021】
CR位相シフト回路3bでは、モータ端子電圧に現れる台形波(矩形波の場合有り)をCR時定数で位相シフトすると共に、120度矩形波駆動特有の還流ダイオードによるサージ電圧を除去することもできる。次の中性点電位生成回路3cでは、CR位相シフト後の波形を元にその中性点電位を生成する。これは、モータ端子電圧に対するモータ中性点電位の関係と相対的に同等である。これを疑似中性点電位とする。コンパレータ3dでは、分圧後のCR位相シフト波形と疑似中性点電位とを比較し、デューティ比50%の矩形波を生成する。この矩形波をロータ位置信号として出力端子Ou・Ov・Owからコントロール部1に出力する。
【0022】
なお、センシング部3では、モータ端子電圧波形をそのエッジで検出するのではなく、一定時間毎にロータ位置信号のレベルを検出し、それによりロータ位置信号の0または1の状態を判別するようにしている。これにより、始動時や低回転速度時には還流ダイオードのサージ電圧を完全に除去できない場合を回避することができる。
【0023】
また、分圧後のCR位相シフト波形と疑似中性点電位とは必ず相対的な関係にあり、低回転速度(転流周波数が低い状態)でもコンパレータ3dの出力は矩形波を出力することができる。しかしながら、CR位相シフト量が90度に満たないため、低回転速度での出力をロータ位置信号として使用することができない。
【0024】
上記センシング部3では、モータ端子電圧U・V・W、モータ端子電圧CR位相シフト信号Uf・Vf・Wfをセンシングし、それらの信号から、モータ中性点電位M1(=(U+V+W)/3)、疑似中性点電位M2(=(Uf+Vf+Wf)/3)をセンシングする。なお、モータ端子電圧U・V・W及びモータ中性点電位M1の関係と、モータ端子電圧CR位相シフト信号Uf・Vf・Wf及び疑似中性点電位M2の関係とは相対的に同等である。したがって、このモータ端子電圧CR位相シフト信号Uf・Vf・Wfと疑似中性点電位M2とをコンパレータで比較した方形波出力信号をロータ位置信号とすることができる。
【0025】
コントロール部1では、センシング部3からのロータ位置信号がレベル判定部1aと速度モニタ部1bとに入力する。レベル判定部1aではロータ位置信号のレベルを判定し、速度モニタ1bでは、入力されるロータ位置信号の周期からモータ回転速度を算出すると共に、始動初期しきい値n1、始動・低回転しきい値n2、中・高速しきい値n3に対するモータ回転速度の高低を判別する。レベル判定部1aと速度モニタ1bとの両出力信号が、始動初期強制通電モード部1cと始動・低回転モード部1dと中・高速回転モード部1eとに入力されるようになっている。各モード部1c・1d・1eのいずれか1つがレベル判定部1aと速度モニタ1bとの両出力信号に応じて選択され、選択されたモードに応じたモータ制御信号が出力I/Fを介してインバータ2へ出力される。
【0026】
速度モニタ部1bでモータ回転速度が始動初期しきい値n1以下と判別された場合には始動初期強制通電モード部1cが選択される。この始動初期強制通電モードで用いる転流パターンは通常の高回転速度時に用いるものと同じものであって良く、特別に設定する必要はない。また、ロータ位置信号Rに基づくことなく、すなわちオープンループによる転流制御を行う。
【0027】
なお、始動初期しきい値n1は、モータ4が停止しているか否かを判別できる程度の極低回転速度であって良い。例えば、ロータ位置信号で1周期分だけモータ4が回転した時点でのモータ回転速度程度とする。これにより、ロータ位置信号の不明な状態での回転制御を上記したようにオープンループで行う場合の不安定な期間を最小限とすることができる。なお、この場合の初期通電時間は例えば数msで良い。
【0028】
また、従来例で示したように、モータ4を例えば3相8極の場合で考えると、図3に示されるように、1機械角(360度)の中に1電気角(360度)が4つ(θ1・θ2・θ3・θ4)あり、各1電気角の中に6つの転流パターンa・b・c・d・e・fがある。そして、始動初期強制通電モードでの初期通電制御信号としては、任意の電気角(例えばθ1)の中の隣り合う任意の2つの転流パターン(例えばa・b)を連続して通電したら、次に別の任意の2つの転流パターン(例えばc・d)を同じく連続して通電する信号とする。
【0029】
例えば転流パターンaに対応する位置にロータ4aの対応する極が位置していた場合に、1パターンのみの初期通電を行うもので転流パターンaを行うと、ロータ4aに角加速度が生じないので誘起電圧は発生せず、フィードバック制御に移ることができない。
【0030】
それに対して本発明によれば1電気角内の6つの転流パターンの内、任意の2パターン以上を連続で強制的に通電することから、ロータ4aは、上記した最初の通電では転流パターンa・bの間に吸引され、次の通電では転流パターンc・dの間に吸引される。したがって、上記したように転流パターンaに対応する位置にロータ4aが位置していてロータ4aが回転しないとしても、2回目の通電で必ずロータ4aが別の位置(転流パターンc・dの間)へ吸引されるため、この場合には必ずロータ4aが図の矢印に示されるように回転し得る。これにより誘起電圧が発生し、フィードバック制御に移行することができる。
【0031】
なお、ブラシレスモータの位置センサにホール素子を用いたものにあっては、3相の信号レベルが(0・0・0)や(1・1・1)という状態はあり得ない。しかしながら、本発明のようなロータ位置信号を用いる場合には、上記始動・初期強制通電時ではあり得る。したがって、(0・0・0)や(1・1・1)という場合には特定の位置に通電制御するように設定しておくことにより、他の場合と同様にモータ4に回転力を生じさせる切っ掛けを作ることができるため、3相の信号レベルにあっては8パターンを用いても良い。
【0032】
始動初期強制通電モードによる始動が行われてモータ回転速度が上昇し、速度モニタ部1bでモータ回転速度が始動初期しきい値n1以上であると判別された場合には始動・低回転モード部1dが選択される。この始動・低回転モードでは、ロータ位置信号を検出可能な回転速度になっているので、ロータ位置信号に応じて転流制御を行うことができる。
【0033】
この場合、従来例で示したCR位相シフト法による90度シフト(基準位置;図4の電気角0度)に対して進角側に所定の電気角(θa)までと、遅角側にも所定の電気角(−θb)までの領域内であれば制御可能である。しかしながら、図4の実線Rで示すモータ端子電圧に基づくロータ位置信号(従来例で示した図6の実線)では、回転速度がn3(>n1)[rpm]以下の低回転速度領域では基準位置に対して進角がθa以上になってしまい、そのロータ位置信号(R)に基づいて転流パターン信号を出力してもモータ4を正常に回転制御することができない。
【0034】
そこで、ロータ位置信号(R)に対して60度遅角させた状態(図4の想像線Rd)を作る。この60度遅角状態Rdにあっては、図4に示されるように、−θbになる回転速度がn2(<n3)であるとすると、n1〜n2の回転速度領域では基準位置に対して遅角がθa〜−θb以内に収まるようになり、上記したように回転制御可能である。このように、n1〜n2の低回転速度領域に対しては上記60度遅角状態Rdに基づいて転流制御を行うことができる。なお、n1を超えた直後では進角制御であり、回転速度が上昇していくと、60度遅角状態Rdのロータ位置信号が基準位置(電気角0度)の軸(x軸)を横切って遅角側になる。
【0035】
次に、図5に60度遅角状態Rdに対する転流制御の例を示す。図において、上段にロータ位置信号Rに対応するセンシング部3の出力を示し、下段に転流制御としてコントロール部1の出力I/Fの出力を示す。また、図の最上段のa〜fは転流パターンを示す。上記転流パターンa〜fは、ロータ位置信号Rに応じて予め設定しておく。
【0036】
例えば、センシング部3の各相の出力が図5のように変化する場合には、各状態(0または1)による組み合わせパターンに応じて、各スイッチング素子のオン/オフ信号に対応する出力I/Fの出力を図5の想像線に示されるように変化させることにより通常の転流制御を行うことができる。
【0037】
それに対して、低回転速度時には出力I/Fの各相毎のオン信号出力を図5の矢印に示されるように想像線の状態から電気角で60度遅角させて図の実線とする。これにより、図4の60度遅角状態Rdを実現することができ、CR位相シフトによる90度位相シフトの基準位置に対する遅角θb以内に収まる転流制御を行うことができる。したがって、低回転速度時における脱調のない円滑な回転及び加速を行うことができる。この低回転速度時にロータ位置信号Rに基づいて転流制御を行うと、図4から明らかなように基準位置に対してθa以上進角した位置で転流パターンを変えていくことになり、その場合には従来例で示したように脱調してしまう。
【0038】
始動・低回転モードにて回転速度が上昇して、速度モニタ部1bでモータ回転速度が上記しきい値n2以上であると判別された場合には通常のロータ位置信号R(図4の進角側の太線)に基づいて転流制御を行うように切り換える。この60度遅角状態Rdからロータ位置信号Rへの切り替えはプログラムソフトで行うことであって良い。切り換えを行うと、転流の位相が進角側になるので、モータ4の印加電圧が同じであっても回転速度は瞬時にn2からn3(>n2)になる(図4の破線の上向き矢印)。
【0039】
このn3以上の領域では中・高速回転モードとして制御を行う。このモードでは、通常のロータ位置信号Rに基づいて制御することから、図4に示されるように基準位置に対する進角θa以内に収まる進角による転流制御を行うことができる。したがって、高回転速度時においても脱調のない円滑な回転及び加速を行うことができる。特に、高回転速度時では基準位置に対してロータ位置信号Rが約5〜10度程度の進角状態となり、約5〜10度程度進角させた転流制御となるため、高回転速度時の制御を好適に行うことができる。
【0040】
また、この中・高速回転中に負荷増大により回転速度が低下してn3以下になったことを速度モニタ部1bで検出した場合には、始動・低回転モードに切り換える。この場合には、上記と逆に転流の位相が遅角側になるので、モータ4の印加電圧が同じであっても回転速度は瞬時にn3からn2になる(図4の破線の下向き矢印)。さらに、負荷が増大して回転速度がn1以下になったことを速度モニタ部1bで検出した場合には、始動時初期強制通電モードに切り換える。これにより、60度遅角状態Rdでは進角側のθaを超えてさらに進角してしまって脱調する虞を防止することができる。過負荷状態が解除されれば、上記回転速度の上昇時の制御要領で再び好適な回転制御を行うことができる。
【0041】
なお、本制御は一方向回転のみに限られるものではなく、上記図示例とは逆向きに回転させる場合にも適用可能である。例えば、ブラシレスモータにおいて通常行われる正逆回転制御と同様に、上記図示例に対して逆回転させるように転流パターンを切り換えるようにすれば良く、正逆両方向の回転制御を何ら問題なく実行し得る。
【0042】
【発明の効果】
このように本発明によれば、モータ端子電圧をCR時定数により位相シフトしたロータ位置信号を用いて転流制御を行う場合に、低回転速度領域で位相シフトが充分に行われなくても、遅角された転流パターンを用いるという単純な構成により、位置センサを設けた複雑な回路となることなく、ブラシレスモータの駆動回路を簡単なものとすることができ、かつ脱調することのない制御を行うことができる。
【0043】
また、始動時の初期に異なる2つ以上の転流パターンを続ける強制通電を行うことにより、センサレスブラシレスモータにおける初期の強制通電の転流パターンの対応する位置にロータが位置していた場合でも他の転流パターンの通電時に回転力が発生し得るため、ロータがどの位置に停止していても始動失敗が起きることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されたセンサレスブラシレスモータの駆動回路を示すブロック図。
【図2】センシング部を示す回路図。
【図3】初期始動要領を示す説明図。
【図4】本発明に基づくCR位相シフト法における回転速度と電気角との関係を示す図。
【図5】本発明に基づく転流パターンの切り換えタイミングを示す図。
【図6】CR位相シフト法における計算値と実測値とにおける回転速度と電気角との関係を示す図。
【符号の説明】
1 コントロール部
2 パワー部
3 センシング部
3a 分圧回路
3b CR位相シフト回路
3c 中性点電位生成回路
3d コンパレータ
4 ブラシレスモータ
Claims (2)
- ブラシレスモータの回転によるモータ端子電圧の変化をCR時定数により位相シフトしてロータ位置信号を生成し、前記ロータ位置信号に対応する転流パターンを前記ロータ位置信号に応じて切り換える転流制御を行うようにしたセンサレスブラシレスモータの駆動回路であって、
モータ回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記転流パターンを電気角で所定角度遅角させる転流パターン遅角手段とを有し、
前記回転速度検出手段により前記モータ回転速度が所定の回転速度以下の低回転速度領域であると判別された場合には前記転流パターン遅角手段により遅角された転流パターンを用いて前記転流制御を行うことを特徴とするセンサレスブラシレスモータの駆動回路。 - ブラシレスモータの回転によるモータ端子電圧の変化をCR時定数により位相シフトしてロータ位置信号を生成し、前記ロータ位置信号に対応する転流パターンを前記ロータ位置信号に応じて切り換える転流制御を行うようにしたセンサレスブラシレスモータの駆動回路であって、
始動時の初期には、異なる2つ以上の転流パターンを続ける強制通電を行うことを特徴とするセンサレスブラシレスモータの駆動回路。
Priority Applications (1)
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