JP4031715B2 - ステアリングロック装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車等のステアリングをロックするために用いられるステアリングロック装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特許第3029059号公報
【0003】
従来、前記特許文献1において、正規キーを用いてのステアリングロック解除と、正規キーを用いることなく電子認証によるステアリングロック解除との両方を可能にしたステアリングロック装置が開示されている。このステアリングロック装置では、正規キーを挿入してシリンダをLOCK位置から他の回動位置(例えばACC位置、ON位置、START位置等)に回動させると、ステアリングに連結されたステアリングシャフトの回動を阻止していたロックシャフトが移動してステアリングシャフトとの係合が外れることによってステアリングロックが解除されるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特許文献1に開示されるステアリングロック装置では、ステアリングロックが一旦解除された後にキーでシリンダをLOCK位置に戻り回動させるとステアリングシャフトがロックされてしまう構成になっており、もし走行中に不意にキーをLOCK位置に回動してしまった場合にステアリングがロックされてしまう恐れがある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで、前記問題を解決するために本発明は、ボディ内に回動可能に保持されるとともに外周部に係合部を有するロータと、該ロータ内に回動可能及び前後移動可能に保持され、キーを挿入するキー孔を有し、前記キー孔にキーを挿入することにより前記ロータ内で回動可能となるシリンダと、該シリンダを前方位置から後方位置に移動させてから行われる前記シリンダの回動操作に応じてロック位置又はアンロック位置に移動してステアリングシャフトの回動を阻止又は許容するロックシャフトと、該ロックシャフトがアンロック位置に移動した後に前記シリンダが前記後方位置から前記前方位置に移動されるまで前記ロックシャフトをアンロック位置に保持するロック保持機構と、前記ロータの係合部に係合して前記ロータの回動を阻止するロック部材を作動させるアクチュエータとを備えたステアリングロック装置であって、
前記シリンダの前記キー孔の少なくとも一部を塞ぐように配置され、前記キー孔へのキーの挿入により前記シリンダが前記後方位置に移動したときに前記シリンダの外周から突出するスライドシャッタと、前記ロータの側面に周方向に延びて形成され、前記シリンダから突出した前記スライドシャッタを受け入れるとともに前記スライドシャッタを受け入れた状態で前記シリンダが前記ロータに対して回動可能になるように設けられたスライド溝とを設け、キー挿入時には前記スライドシャッタが前記スライド溝に係合することにより、前記シリンダが前記後方位置で回動可能に保持されるようにしたことを特徴とするものである。
【0006】
本発明のステアリングロック装置では、前記シリンダからの突出時に前記スライド溝の縁部に当接する傾斜部を前記スライドシャッタの前部に設けるとともに、前記シリンダを前記前方位置側へ付勢する付勢部材を設けてもよい。
【0007】
【発明の効果】
本発明のステアリングロック装置によれば、キー挿入時にシリンダ外周から突出したスライドシャッタがロータのスライド溝に突入して係合することによりシリンダはキーを抜かない限り後方位置に保持される。この後方位置でシリンダを回動させることでロックシャフトをアンロック位置に移動させてステアリングロックを一旦解除した後は、ロック保持機構によってロックシャフトはシリンダが後方位置から前方位置に移動するまでアンロック位置に保持される。したがって、キーを抜かない限りロックシャフトはアンロック位置に保持されるので、もし走行中にキーが最初の回動位置(例えばLOCK位置)に回動されてしまったとしても不意にステアリングシャフトがロックされるのを防ぐことができる。
【0008】
また、シリンダからの突出時にスライド溝の縁部に当接する傾斜部をスライドシャッタの前部に設けるとともに、シリンダを前方位置側へ付勢する付勢部材を設けた、本発明のステアリングロック装置によれば、シリンダからキーを抜くと、シリンダが付勢部材によって前方に付勢されることで、傾斜部がロータのスライド溝の縁部に当接したスライドシャッタはシリンダの内側に向かって押し込まれ、これによりスライドシャッタとロータのスライド溝との係合が解除されてシリンダが前方位置へ移動する。したがって、スライドシャッタをシリンダの内側に向かって付勢する付勢部材を必要とせず、また、キーを抜くとシリンダが自動的に前方位置へ移動するのでシリンダを手動で前方位置まで戻す操作を必要としない。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態であるステアリングロック装置10の長手方向断面図、図2は図1におけるA−A線断面図、図3はステアリングロック装置10にキー1を挿入した状態を示す長手方向断面図、図4は図3におけるB−B線断面図である。なお、ステアリングロック装置10の長手方向断面において、便宜上、右側を「前」、左側を「後」という。
【0010】
図1に示すように、ステアリングロック装置10は、例えば亜鉛等の金属製である内部空間を有する略円筒状のボディ12を備えている。ボディ12の前端部には、略円筒状のホルダ14が収容されて固定されている。ホルダ14の内部には、円筒状のロータ16が回動可能及び前後移動可能に保持されている。そして、ロータ16の内部には、円柱状のシリンダ18が回動可能及び前後移動可能に保持されている。
【0011】
シリンダ18は、図3,4に示すように、その中心部に、シリンダ18の前端面から後端側に向かって穿孔されたキー孔20を有している。また、シリンダ18は、前記キー孔20と直交する方向にスライド移動可能な複数の板状タンブラ22を有している。キー1の未挿入時には、各タンブラ22の端部がシリンダ18の外周両側から突出してロータ16の内面に形成された係合溝24に係合し、これによりロータ16内でシリンダ18が回動不能になっている。一方、シリンダ18のキー孔20にキー1が挿入されたときには、図3に示すように、各タンブラ22の端部がシリンダ18の内部に引っ込んでロータ16内面の係合溝24との係合が解除され、これによりロータ16内でシリンダ18が回動可能となる。
【0012】
シリンダ18の前端部には、内部空間31を有するノブ32が固定されている。このノブ32の内部空間31を介してシリンダ18のキー孔20にキー1を挿入できるようになっている。また、ノブ32は、後述するように、キー1を用いずに解錠する場合にシリンダ18を回動させるために使用される。
【0013】
シリンダ18の前方内部には、ジョイントプレート26が径方向にスライド移動可能に配置されている。ジョイントプレート26は、中央部に矩形孔27を有するとともに、スプリング30によって径方向外側に向かって付勢されている。キー未挿入時には、ジョイントプレート26の矩形孔27は、キー孔20に対して径方向にずれた位置にあり、図1に示すように、その端部がシリンダ18の外周から突出してロータ16に形成された連結係合孔28内に突入して係合している。これにより、ロータ16とシリンダ18とは、一体に回動可能および前後移動可能な状態に連結されている。一方、シリンダ18のキー孔20にキー1が挿入されると、キー1で前記矩形孔27の縁部が押されることによって矩形孔27がキー孔20と径方向において揃うようにジョイントプレート26がシリンダ18の内側へ移動する。これにより、ジョイントプレート26の端部がロータ16の連結係合孔28から脱出して係合が解除され、その結果、シリンダ18はロータ16から連結解除されてロータ16に対して回動可能になるとともに後方移動可能になる。
【0014】
図2に示すように、ロータ16の前端部外周には2つの係合凸部17が形成されており、ホルダ14の前端部内面には前記係合凸部17に対応する係合凹部15が形成されている。ロータ16が図1に示す前方位置にあるとき、前記係合凸部17と前記係合凹部15とが係合することにより、ロータ16はホルダ14に対して回動不能な状態にある。一方、ロータ16がシリンダ18と共に後述する後方位置に移動したとき(図7参照)、前記係合凸部17と前記係合凹部15との係合が外れることにより、ロータ16はホルダ14に対して回動可能になる。
【0015】
シリンダ18の内部であってジョイントプレート26の近傍には、スライドシャッタ34がシリンダ18のキー孔20の少なくとも一部を塞ぐように配置されるとともに径方向にスライド移動可能に配置されている。スライドシャッタ34の前部には、第1傾斜部36と第2傾斜部38とが設けられている。
【0016】
シリンダ18のキー孔20にキー1を浅く挿入したとき、上述したようにジョイントプレート26が移動してシリンダ18とロータ16との連結が解除されるとともに、キー1の先端がスライドシャッタ34の第1傾斜部36に当接することによりスライドシャッタ34はシリンダ18の径方向外側に押し出されようとする。しかし、第2傾斜部38側の端部がロータ16の内周面に当接するために、スライドシャッタ34はシリンダ18の外周から突出するように移動することができず、これによりスライドシャッタ34がキー孔20を部分的に塞いだままの状態にあってキー1を完全に挿入することができない。
【0017】
このようにキー先端がスライドシャッタ34の第1傾斜部36に当接した状態でキー1をさらに押し込むと、図3に示すように、シリンダ18がロータ16内を後方位置まで移動する。後方位置へ移動したシリンダ18のスライドシャッタ34の位置に対応して、ロータ16にはスライド溝40が形成されている。この後方位置において、キー1の挿入により押し出されてシリンダ18の外周から突出したスライドシャッタ34の端部が前記スライド溝40内に受け入れられるようになっている。また、ロータ16のスライド溝40は、図4に示すように、シリンダ18の回動操作角度をカバーするのに十分な周方向長さをもって形成されており、これによりシリンダ18はスライドシャッタ34の端部がスライド溝40内に受け入れられた状態のままロータ16に対して回動可能になっている。このようにシリンダ18から突出したスライドシャッタ34がロータ16のスライド溝40に係合することで、キー挿入時にはシリンダ18は後方位置で回動可能に保持されるようになっている。
【0018】
スライド溝40の開始端部に連通するようにロータ16に形成された貫通孔には、キー検知部材42が配置されている。キー検知部材42は、シリンダ18から突出したスライドシャッタ34によって径方向外側に押し出されるようになっている。また、キー検知部材42の端部には、ボディ12の外壁部に取り付けられたキースイッチ44からボディ12およびホルダ14を貫通して延びる検知ピン46の先端が当接している。
【0019】
図1に示すように、キー検知部材42がスライドシャッタ34で押されていない状態では、キー検知部材42とキースイッチ44の検知ピン46との接触面はロータ16の外周とホルダ14の内周との接触面と一致しており、これによりキー検知部材42およびキースイッチ44の検知ピン46はホルダ14内でのロータ16の回動を妨げないようになっている。一方、図4に示すように、キー検知部材42がシリンダ18から突出したスライドシャッタ34によって押し出されたとき、キー検知部材42はホルダ14とロータ16とにまたがって位置し、これによりロータ16はホルダ14に連結されてホルダ14内での回動が不能になる。
【0020】
ロータ16の外周部には、中央部から後端部にかけて軸方向に延びる係合溝部48が形成されている。係合溝部48の後端部は、ロータ16の後端部に取り付けられたCリング50によって閉じられている。係合溝部48内には、スライド部材52がスライド移動可能に配置されている。スライド部材52は、その側壁部に当接したスプリング54によって後方すなわちCリング50側に付勢されている。また、スライド部材52上には隔壁56が立設されており、この隔壁56と側壁との間に回動許容凹部58が形成されている。さらに、ロータ16の後方側にはスプリング51が配設されている。このスプリング51は、Cリング50とボディ12の内面の段部との間に挟まれて圧縮されて配置され、ロータ16を前方側に付勢している。
【0021】
ボディ12の外壁上には、アクチュエータとしての電磁ソレノイド60が取り付けられている。電磁ソレノイド60から延びるプランジャ62の先端にはロック部材64が固定されている。ロック部材64は、プランジャ62に外装されたスプリング66によってロータ16側に付勢されている。
【0022】
ロック部材64の細くなった先端部は、電磁ソレノイド60の非作動時にはスライド部材52に当接した状態でロータ16の係合溝部48に係合している。ロック部材64の先端部がスライド部材52の隔壁56の後方に位置するときには、ロック部材64の先端部がスライド部材52に立設された側壁53(図5参照)と係合することによりロータ16の回動が阻止される。一方、後述するようにキー1を用いずにノブ32に操作によってステアリングロック装置10を解錠する場合に、ロック部材64の先端部がスライド部材52の回動許容凹部58内に挿入されたときには、図5に示すようにロータ16の外周には前記回動許容凹部58と連通する溝部68が周方向に延びて形成されていることより、ロック部材64の先端部が前記回動許容凹部58から前記溝部68内へと侵入できるので、ロック部材64によってロータ16の回動は阻止されない。
【0023】
図1、図3および図6に示すように、シリンダ18の後端部にはカムシャフト70が連結されている。カムシャフト70は、シリンダ18と一緒に回動および前後移動できるようになっている。また、カムシャフト70は、前方側から順に、円盤状の大径部72、この大径部72に隣接して設けられたカム部74、および、後端側に設けられたフランジ部76を有している。
【0024】
カムシャフト70の後端側にはスプリング(付勢部材)78が外装されている。スプリング78は、カムシャフト70のフランジ部76とボディ12の内面の段部との間に挟まれて圧縮されることにより、カムシャフト70およびシリンダ18を前記前方位置側に付勢している。
【0025】
カムシャフト70の大径部72とフランジ部76との間には、ロックシャフト80がボディ12内においてロック位置とアンロック位置との間でスライド移動可能に設けられている。ロックシャフト80は、端部に従動部82を有している。この従動部82とボディ12の開口部を塞ぐキャップ13との間にスプリング84が設けてあり、このスプリング84によってカムシャフト70側に付勢されている。これにより、ロック位置にあるロックシャフト80は、その従動部82がカムシャフト70のカム部74に圧接されるとともに、先端部86がボディ12から突出して図示しないステアリングシャフトの凹部に係合することによりステアリングシャフトの回動が阻止されてステアリングがロックされた状態になっている。
【0026】
一方、後述するようにシリンダ18を前方位置から後方位置へ移動させてから行われるシリンダ18の回動操作に応じてカムシャフト70が回転すると、カム部74によってロックシャフト80の従動部82が図6中下方に押し下げられ、これによりアンロック位置へ移動したロックシャフト80の先端部86はボディ12内に没入してステアリングシャフトの凹部から外れ、その結果、ステアリングシャフトの回動が許容されてステアリングロックが解除されることなる。
【0027】
図6に示すように、ロックシャフト80の従動部82には、スプリング90により付勢されて従動部82から突出したピン92が設けられている。このピン92の先端は、シリンダ18およびカムシャフト70が後方位置へ押し込まれていないときには、カムシャフト70の大径部72の側面に近接して対向している。一方、シリンダ18およびカムシャフト70が後方位置へ押し込まれて回動操作されると、上述したようにカム部74によって従動部82が押し下げられてロックシャフト80がアンロック位置に移動するが、このときカムシャフト70の後方移動により大径部72の側面によって従動部74内に一旦押し込まれたピン92は従動部82が押し下げられたことで大径部72の外周面上に突出して係合する。これにより、ロックシャフト80は、カムシャフト70が前方へ移動して大径部72とピン92との係合が外れない限り、アンロック位置に保持されることになる。このように、前記大径部72、スプリング90およびピン92は、ロックシャフト80がアンロック位置に移動した後にシリンダ18が後方位置から前方位置に移動されるまでロックシャフト80をアンロック位置に保持するロック保持機構を構成する。
【0028】
ボディ12の後端部にはイグニッションスイッチ94が装着されている。カムシャフト70の後端部はイグニッションスイッチ94の内部にある図示しないロータに連結されており、カムシャフト70の回動に応じて前記ロータが回動することにより所定のスイッチ操作が行われるようになっている。また、イグニッションスイッチ94内には移動検知スイッチ96が配置されている。そして、移動検知スイッチ96の検知ピン98がカムシャフト70の後端部に近接して対向しており、シリンダ18と共にカムシャフト70が後方に移動すると検知ピン98が押されてシリンダ18の後方位置への移動を検知できるようになっている。
【0029】
また、ステアリングロック装置10は、図示しない制御部を備えている。制御部は、ユーザが所持する携帯機から発信される電波信号を受信して電子認証を行い、その認証結果に応じて電磁ソレノイド60の作動を制御するものである。
【0030】
次に、上述した構成からなるステアリングロック装置10においてキー1を用いて操作する場合について説明する。
操作前のステアリングロック装置10では、図1に示すように、シリンダ18の回動位置は初期位置であるLOCK位置にあって、かつ、シリンダ18は前方位置にある。
【0031】
この状態で、シリンダ18のキー孔20にキー1を浅く挿入すると、まず、ジョイントプレート26がシリンダ16の内部へ移動してジョイントプレート26の端部がロータ16の連結係合孔28から脱出することによりシリンダ18のロータ16に対する連結が解除される。また、キー1の先端は、スライドシャッタ34の第1傾斜部36に当接するが、シリンダ18が前方位置にある間はスライドシャッタ34が径方向外側に移動してシリンダ18から突出することができないので、キー1をそれ以上挿入することができない。
【0032】
キー1をさらに強く押し込むと、キー先端がスライドシャッタ34に当接した状態でシリンダ18が後方位置に移動する。このとき、ロータ16は、スプリング51の付勢力により後方位置に移動することができず、前方位置に留まったままとなる。
【0033】
図2に示すように、シリンダ18が後方位置に移動すると、キー挿入によってシリンダ18から押し出されて外周面から突出したスライドシャッタ34の端部がロータ16のスライド溝40内に受け入れられて係合し、これによりキー1をシリンダ18内に完全に挿入することができる。また、このときスライドシャッタ34によりキー検知部材42を介して検知ピン46が押されることによりキースイッチ44はシリンダ18へのキー1の挿入を検知し、その検知信号が制御部に送信される。
【0034】
シリンダ18の後方位置への移動に伴ってカムシャフト70もまた後方へ移動し、カムシャフト70の後端部が移動検知スイッチ96の検知ピン98を押すことによりシリンダ18の後方移動が検知され、この検知信号が制御部に送信される。この検知信号を受信した制御部は、ユーザがキー1とは別体の携帯機を所持している場合には、その携帯機から受信した電波信号に基づいて電子認証を行う。キー1を用いずにロック解除を行う後述する場合には、電子認証が確認できたら制御部は電磁ソレノイド60を作動させることになるが、この場合にはキー挿入検知信号がキースイッチ44から送信されているため、制御部は電磁ソレノイド60を作動させることなく、ロック部材64をロータ16の係合溝部48内に係合した状態に保持する。
【0035】
キー1がシリンダ18に完全に挿入されたとき、各タンブラ22の端部がシリンダ18内に没入してロータ16の係合溝24との係合が解除されている。また、シリンダ18から突出したスライドシャッタ34はロータ16のスライド溝40に沿って周方向に移動可能である。したがって、後方位置に移動したシリンダ18はロータ16内で回動可能になっている。なお、ロータ16は、ロック部材64がスライド部材52の側壁53に係合していること、および、キー検知部材42がロータ16とホルダ14とにまたがって位置していることにより回動が阻止されている。
【0036】
キー1を回すことによりシリンダ18を後方位置でLOCK位置から他の回動位置(例えば、ACC位置、ON位置、START位置など)に回動させると、これに伴ってカムシャフト70も回動する。すると、カム部74も回動してロックシャフト80の従動部82を押すことにより、ロックシャフト80はロック位置からアンロック位置へ移動する。これにより、ロックシャフト80の先端がボディ12内に没入してステアリングシャフトの凹部から外れ、その結果、ステアリングシャフトの回動が許容されてステアリングロックが解除される。
【0037】
ロックシャフト80がアンロック位置に移動すると、従動部82から突出したピン92がカムシャフト70の大径部72の外周面上に突出して係合する。これにより、カムシャフト70が前方に移動して大径部72とピン92との係合が外れない限り、ロックシャフト80はアンロック位置に保持される。
【0038】
上記のようにしてステアリングロックが解除された後、キー1を回すことによりシリンダ18をLOCK位置まで戻り回動させたとき、シリンダ18から突出したスライドシャッタ34はロータ16のスライド溝40に係合したままであるので、シリンダ18はスプリング78の付勢力によりカムシャフト70を介して前方に押されても移動することはなく、後方位置のままで保持される。
【0039】
そして、LOCK位置でシリンダ18からキー1を抜くと、シリンダ18を介してスプリング78の前方への付勢力が作用するスライドシャッタ34の第2傾斜部38がスライド溝40の縁部に当接していることにより、スライドシャッタ34にはシリンダ18に押し込まれる力が作用してシリンダ18の内部へと移動し、その結果、スライドシャッタ34とロータ16のスライド溝40との係合が外れる。これにより、シリンダ18およびカムシャフト70はスプリング78の付勢力によって前方位置に自動的に移動する。このカムシャフト70の前方移動によって大径部72とピン92との係合が外れるので、ロックシャフト80はスプリング84の付勢力によってアンロック位置からロック位置へ移動する。これにより、ロックシャフト80の先端部86がステアリングシャフトの凹部内に突入して係合し、その結果、ステアリングシャフトの回動が阻止されることでステアリングがロックされる。
【0040】
上記に説明したように、本実施形態のステアリングロック装置10によれば、キー1を抜かない限りロックシャフト70はアンロック位置に保持されるので、もし走行中にキー1が最初の回動位置であるLOCK位置に回動されてしまったとしても不意にステアリングシャフトがロックされるのを防ぐことができる。
【0041】
また、シリンダ18からキー1を抜くと、シリンダ18に作用するスプリング78の付勢力によってスライドシャッタ34がシリンダ18の内側に押し込まれて、シリンダ18が前方位置へ移動するようにしたので、スライドシャッタ34をシリンダ18の内側に向かって付勢する付勢部材を必要とせず、また、キー1を抜くとシリンダ18が自動的に前方位置へ移動するのでシリンダ18を手動で前方位置まで戻す操作を必要としない。
【0042】
次に、ステアリングロック装置10においてキー1を用いることなくロック解除操作および再ロック操作を行う場合について図7,8を参照して説明する。
操作前のステアリングロック装置10では、シリンダ18の回動位置はLOCK位置にあって、かつ、シリンダ18は前方位置にあり、ジョイントプレート26の端部がロータ16の連結係合孔28に係合していることによりシリンダ18とロータ16は連結状態にあって一体に回動および前後移動する状態にある。ただし、LOCK位置にあるシリンダ18およびロータ16は、図2に示すようにロータ16の係合凸部17とホルダ14の係合凹部15とが係合していること、および、ロック部材64がスライド部材52の側壁53に係合していることにより回動不能な状態にある。
【0043】
この状態で、携帯機を所持したユーザがノブ32をつかんで後方に押し込むと、図7に示すように、シリンダ18およびロータ16が後方位置に移動するとともに、カムシャフト70も後方へ移動する。このとき、ロータ16の係合凸部17とホルダ14の係合凹部15との係合が解除されるため、この点においてはホルダ14内でのロータ16の回動が許容される。また、ロータ16の係合溝部48内にあるスライド部材52は、ロック部材64が隔壁56に係合しているため後方への移動が阻止され、ロータ16が移動した分だけスプリング54が圧縮されることになる。
【0044】
カムシャフト70が後方へ移動したことを検知したイグニッションスイッチ94内の移動検知スイッチ96は、検知信号を図示しない制御部に出力する。この検知信号が入力された制御部は、携帯機から発信される電波信号を受信して電子認証を行い、認証が確認できたら電磁ソレノイド60を所定時間だけ通電して作動させる。
【0045】
なお、制御部による電子認証は、ノブ32を押し込み操作する前に行ってもよい。そうすれば、電磁ソレノイド60をより早い時期に作動させることができる。
【0046】
電磁ソレノイド60が通電されるとプランジャ62がスプリング66の付勢力に抗して引っ込んで、ロック部材64が図7中上方に移動する。これにより、ロック部材64の先端とスライド部材52の隔壁56との係合が解除され、その結果、スライド部材52はスプリング54の付勢力によってその後端部がCリング50に当接するまで後方へ移動する。
【0047】
所定時間経過後に電磁ソレノイド60の通電が解除されると、スプリング66の付勢力によってプランジャ62が突出する。これにより、ロック部材64が図7中下方へ移動して、図8に示すようにその先端部が既に後方へ移動しているスライド部材52の回動許容凹部58内に嵌り込む。
【0048】
スライド部材52の回動許容凹部58内に係合したロック部材64の先端部は、図5に示すように前記回動許容凹部58がロータ16外周の溝部68に連通しているため、前記回動許容凹部58から前記溝部68へと侵入することができ、これによりホルダ14内でのシリンダ18およびロータ16の回動が許容される。
【0049】
この状態で、ノブ32を回すことによりシリンダ18およびロータ16をLOCK位置から他の回動位置(例えばACC位置等)へ回動させると、これに伴ってカムシャフト70も回動し、上述したキー1によるロック解除動作と同様にしてステアリングロックが解除される。
【0050】
一方、ステアリングロックが一旦解除された後、ノブ32を回してシリンダ18およびロータ16をLOCK位置まで戻り回動させたとき、回動許容凹部58にロック部材64が係合したスライド部材52の後端部がCリング50に当接しているためにロータ16およびシリンダ18は前方へ移動することができず、後方位置に保持される。
【0051】
制御部は、携帯機を所持したユーザが車外に出ることにより携帯機からの電波信号の受信ができなくなったことを検知して、電磁ソレノイド60を所定時間だけ通電させて作動させる。この通電により電磁ソレノイド60はロック部材64を図8中上方へ移動させる。これにより、ロック部材64の先端部が回動許容凹部58から脱出してスライド部材52との係合が解除されることで、シリンダ18およびロータ16はカムシャフト70と共にスプリング78およびスプリング51の付勢力によって後方位置から前方位置へ移動する。その結果、上述したキー1による操作の場合と同様にしてステアリングがロックされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ステアリングロック装置の長手方向断面図。
【図2】 図1のA−A線断面図。
【図3】 キーを挿入してシリンダを押し込んだ状態にあるステアリングロック装置の長手方向断面図。
【図4】 図3のB−B線断面図。
【図5】 ロータの後部を示す部分斜視図。
【図6】 図1の断面から90°ずれた位置でのステアリングロック装置の長手方向後部断面図。
【図7】 ノブを押し込んだ状態にあるステアリングロック装置の長手方向断面図。
【図8】 ロック部材の先端がスライド部材の回動許容凹部に係合した状態にあるステアリングロック装置の長手方向断面図。
【符号の説明】
10…ステアリングロック装置、12…ボディ、14…ホルダ、16…ロータ、18…シリンダ、20…キー孔、22…タンブラ、24…係合溝、26…ジョイントプレート、28…連結係合孔、32…ノブ、34…スライドシャッタ、36…第1傾斜部、38…第2傾斜部、40…スライド溝、42…キースイッチ、48…係合溝部、52…スライド部材、56…隔壁、58…回動許容凹部、60…電磁ソレノイド、64…ロック部材、70…カムシャフト、72…大径部、74…カム部、80…ロックシャフト、90…スプリング、92…ピン、94…イグニッションスイッチ。

Claims (2)

  1. ボディ内に回動可能に保持されるとともに外周部に係合部を有するロータと、
    該ロータ内に回動可能及び前後移動可能に保持され、キーを挿入するキー孔を有し、前記キー孔にキーを挿入することにより前記ロータ内で回動可能となるシリンダと、
    該シリンダを前方位置から後方位置に移動させてから行われる前記シリンダの回動操作に応じてロック位置又はアンロック位置に移動してステアリングシャフトの回動を阻止又は許容するロックシャフトと、
    該ロックシャフトがアンロック位置に移動した後に前記シリンダが前記後方位置から前記前方位置に移動されるまで前記ロックシャフトをアンロック位置に保持するロック保持機構と、
    前記ロータの係合部に係合して前記ロータの回動を阻止するロック部材を作動させるアクチュエータとを備えたステアリングロック装置であって、
    前記シリンダの前記キー孔の少なくとも一部を塞ぐように配置され、前記キー孔へのキーの挿入により前記シリンダが前記後方位置に移動したときに前記シリンダの外周から突出するスライドシャッタと、
    前記ロータの側面に周方向に延びて形成され、前記シリンダから突出した前記スライドシャッタを受け入れるとともに前記スライドシャッタを受け入れた状態で前記シリンダが前記ロータに対して回動可能になるように設けられたスライド溝とを設け、
    キー挿入時には前記スライドシャッタが前記スライド溝に係合することにより、前記シリンダが前記後方位置で回動可能に保持されるようにしたことを特徴とするステアリングロック装置。
  2. 前記シリンダからの突出時に前記スライド溝の縁部に当接する傾斜部を前記スライドシャッタの前部に設けるとともに、前記シリンダを前記前方位置側へ付勢する付勢部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載のステアリングロック装置。
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