JP4030673B2 - 電気コネクタの雌型端子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、雄型端子を受け入れる雌型端子を備えた電気コネクタの技術分野に属し、特に雌型端子の内部に設けられた接触バネを保護するための構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電気コネクタのハウジングの収容室に挿入される雌型端子として、図7(a)に示すように、前端に雄型端子を受け入れる受入口51が開口し、後部に電線が接続される接続部52を設け、内部に、先端が前方に延びて雄型端子に圧接する接触バネ(図示省略)を設けたものが知られている(実公平5−48371号公報を参照)。この雌型端子の接続部52に電線を接続してハウジングの収容室に挿入し、この電気コネクタに相手側の電気コネクタを嵌合等させると、雌型端子の受入口51が相手側コネクタの雄型端子を受け入れ、これに接触バネが圧接して両コネクタの機械的接続及び電気的接続が果たされる。そして、このような雌型端子では、前半部を略箱形つまり前後方向からみて略四角形になるように形成して、外力がかかったときに内部の接触バネを保護して接触信頼性を保証するようにしている。さらに、受入口51を構成する壁の先端を受入口51の内方に折り返すことで、バネ保護部53を設けている。これとは別に図7(b)及び(c)に示す同種の従来例により、このバネ保護部の作用を説明すると、バネ保護部53’は、雄型端子54’が受入口51’に入るときにこれをガイドすると共に、この雄型端子54’が接触バネ55’の先端と雌型端子の上壁との間に入り込んで接触バネ55’をこじることを防ぎ、且つストッパとして機能させて接触バネ55’が過大変形することを防いで接触バネ55’の損傷を防止するというものである(例えば、特開平9−232021号公報、特開平6−13118号公報を参照)。なお、ここでいう雄型端子は、これと同形状のテスト用治具等を含む概念である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このようなバネ保護部53、53’を設けると、これを雌型端子の壁に一体的に形成するにしても別部材で形成して壁等に固定するにしても、そのための材料が必要となり、コスト高となる。
【0004】
また、雌型端子を一枚の金属板から打ち抜いて曲げ加工することで成形し、このとき同時にバネ保護部を成形するときには、バネ保護部となる部位が雌型端子の展開形状を大きくし、そのために一定面積の材料から効率よく板取りを行うことができず、コスト高となる。しかも、受入口を構成する壁の先端を受入口の内方へ折り返してバネ保護部を成形するときには、受入口の内側の高さを確保するなど一定のスペースが必要となり、小型の雌型端子では成立させることが難しい。
【0005】
本発明の目的とするところは、雌型端子の前半部を略箱形とすることを踏襲することで接触バネを保護し、接触信頼性を保証すると共に、この前半部の壁の一部を絞り加工で内方に落ち込ませてバネ保護部を形成することにより、バネ保護部の機能を確保しながら、バネ保護部のための材料を不要にし且つ展開形状の小型化により板取りを効率化してコストを低減し、バネ保護部の加工のためのスペースを最小限にして小型の雌型端子、特に背の低い雌型端子にバネ保護部を設けることを可能とすることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の電気コネクタの雌型端子は、一枚の金属板から展開形状で打ち抜かれ、曲げ加工及び絞り加工により成形された電気コネクタの雌型端子であって、ハウジングの収容室に挿入できるように前半部が略箱形に形成され、前端に雄型端子を受け入れる受入口が開口し、後部に電線が接続される接続部が設けられ、内部に、先端が前方に延びて雄型端子に圧接する接触バネが設けられ、上記前半部は底壁と、この底壁の幅方向の両端からそれぞれ立ち上がる側壁と、各側壁の上縁から対向する側壁の上縁に向かって延びて上下に重なる外上壁及び内上壁とにより構成されており、内上壁の前部が、側壁に連なったままで内上壁の他の部分から分離され、この前部の後半部が絞り加工により、接触バネ先端に向かって下方に傾斜し且つ接触バネ先端の前側に落ち込むバネ保護部に形成されており、上記前部に続く内上壁の前後方向中途部が、側壁に連なった後端を残して短冊状に切り抜かれ、この切り抜かれた板片により先端が高さ方向に撓んで雄型端子に圧接する接触バネが形成されている。
【0007】
この雌型端子の接続部に電線を接続して雌型端子をハウジングの収容室に挿入し、この電気コネクタに相手側コネクタを嵌合等すると、雌型端子の受入口が相手側コネクタの雄型端子を受け入れ、これに接触バネが圧接して両コネクタの機械的接続及び電気的接続が果たされる。
【0008】
その場合、雌型端子の前半部が略箱形なので、外力がかかっても接触バネが保護され、接触信頼性が保証される。また、バネ保護部により、受入口に入る雄型端子がガイドされると共に、雄型端子が接触バネをこじることが阻止され且つ接触バネの過大変形が阻止されて、接触バネが損傷することがない。そして、バネ保護部は絞り加工により形成されるので、バネ保護部のための材料が不要となり且つ展開形状が小型化されて板取りが効率化することになり、コストが低減される。バネ保護部の加工のためのスペースが最小限となり、小型の雌型端子、特に背の低い雌型端子にバネ保護部を設けることが可能となる。
【0009】
また、内上壁の前部が内上壁の他の部分から分離されているので、前部が絞り加工により塑性変形しやすくなる。
【0010】
さらに、接触バネが内上壁により形成されるので、内上壁とは別に接触バネを設けることに較べて展開形状が小さくなり、板取りが効率化されてコストが低減されると共に、曲げ工程が減って製造工程が簡略化される。しかも、接触バネが変形しても外上壁に当たってそれ以上は変形しないので、これによって接触バネの過変形を防止することができる。そして、雌型端子を一枚の金属板から成形し、殆どの折線が前後方向に走るので、曲げ方向が概ね同一方向となり、作業工程の簡略化に寄与する。
【0011】
請求項2の電気コネクタの雌型端子は、請求項1の構成において、接続部が、前後方向からみて断面略U字形に形成されている。
【0012】
このようにすれば、上端縁を内側に曲げることで電線の芯線が圧着又は半田付け等により取り付けられる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は実施形態に係る電気コネクタCの雌型端子Tを示し、図2は、この雌型端子TをハウジングHに挿入してなる電気コネクタCを示す。収容室hは必要に応じて幅方向及び高さ方向に数列ずつ並列に設けることができる。
【0014】
図1、図3及び図4に示すように、この雌型端子Tは、ハウジングHの収容室hに挿入できるように前半部が略箱形に形成され、前端に雄型端子TTを受け入れる受入口1が開口し、後部に電線Wが接続される接続部2が設けられ、内部に、先端3aが前方に延びて雄型端子TTに圧接する接触バネ3が設けられている。この接続部2は例えば断面略U字形に形成されており、上端縁を内側に曲げることで電線Wの芯線を圧着又は半田付け等により取り付けるようにしている。また、必要に応じて雌型端子Tの前後方向の中途部には、ハウジングHのリテーナrが嵌入する係止部4が設けられている。この係止部4は、例えばハウジングHの前半部の後側を高さ方向に切り欠くことにより設けられている。ここで雌型端子Tにおいて前後方向とは長手方向であり、また高さ方向は長手方向にみて上下となる方向であり、さらに幅方向は長手方向にみて左右となる方向である。この方向付けはハウジングHに対しても用いる。すなわち、収容室hに雌型端子Tが挿入されたときの雌型端子Tにおける前後方向、高さ方向、及び幅方向をそのままハウジングHの収容室hの前後方向、高さ方向、及び幅方向とする。
【0015】
上記前半部は底壁5と、この底壁5の幅方向の両端からそれぞれ立ち上がる側壁6、7と、各側壁6、7の上縁から対向する側壁7、6の上縁に向かって延びて上下に重なる外上壁8及び内上壁9とにより構成されている。この内上壁9に、接触バネ3の先端3aの前側に落ち込むバネ保護部10が絞り加工により形成されている。すなわち、内上壁9の前部9aが、側壁6に連なったままで内上壁9の他の部分から分離されており、この前部9aの後半部が局部絞り加工により塑性変形して、接触バネ3の先端3aに向かって下方に傾斜するバネ保護部10に形成されている。
【0016】
また、上記接触バネ3は、上記前部9aに続く内上壁9の前後方向中途部を、側壁6に連なった後端を残して短冊状に切り抜いて得た板片により形成されており、先端3aが高さ方向に撓んで雄型端子TTに圧接する。この接触バネ3には必要に応じて、断面が湾曲したビード部を形成して曲げ剛性を上げるようにしてもよい。また必要に応じて、接触バネ3の基端を、他の壁に係止して接触バネ3の位置精度及び支持力を向上させるようにしてもよい。
【0017】
11は、必要に応じて外上壁8に設けられたスタビライザであって、このスタビライザ11は、雌型端子TをハウジングHの収容室hに挿入すると、収容室hの上壁から上方に刻設され且つ前後方向に延びる溝nに嵌入して前進し、溝nの前部に幅方向に撓むように形成されたランスを乗り越えて当該ランスの前側に入り、これに係止されるようになっている。
【0018】
上記雌型端子Tは一枚の金属板から成形される。すなわち、図5に示すように、展開形状で成形された複数の雌型端子T、T・・がランナーRに連なった状態で金属板から打ち抜かれ、次いで各部を曲げて雌型端子T、T・・を最終形状に成形し、その後に各雌型端子TをランナーRから切り離すというものである。その曲げ加工例を示すと、図6(a)に示すように、底壁5に対して側壁7、6を折曲げ、更に内上壁9を折曲げてから、内上壁9の前部9aを絞り加工して、図6(b)に示すようにバネ保護部10を形成するというものである。
【0019】
従って、上記実施形態においては、雌型端子Tの接続部2に電線Wを接続して雌型端子TをハウジングHの収容室hに挿入すると、スタビライザ11がハウジングHの溝nに嵌入して前進し、ハウジングHのランスを乗り越えて当該ランスに係止され、これで雌型端子TがハウジングHに一次係止される。次いで、ハウジングHにリテーナrを押し込めばリテーナrが雌型端子Tの係止部4に嵌合し、これで雌型端子TがハウジングHに二次係止される。そして、この電気コネクタCに相手側コネクタCCを嵌合等すると、雌型端子Tの受入口1が相手側コネクタCCの雄型端子TTをそれぞれ受け入れ、これに接触バネ3が圧接して両コネクタC、CCの機械的接続及び電気的接続が果たされる(図2の状態)。
【0020】
その場合、雌型端子Tの前半部が略箱形なので、外力がかかっても接触バネ3が保護され、接触信頼性が保証される。また、バネ保護部10により、受入口1に入る雄型端子TTがガイドされると共に、雄型端子TTが接触バネ3をこじることが阻止され且つ接触バネ3の過大変形が阻止されて、接触バネ3が損傷することがない。そして、バネ保護部10は絞り加工により形成されるので、バネ保護部10のための材料が不要となり且つ展開形状が小型化されて板取りが効率され、コストが低減される。バネ保護部10の加工のためのスペースが最小限となり、小型の雌型端子T、特に背の低い雌型端子Tにバネ保護部10を設けることが可能となる。
【0021】
上記実施形態では、内上壁9の前部9aを、側壁6に連なったままで内上壁9の他の部分から分離し、この前部9aの後半部を絞り加工により、接触バネ3の先端3aに向かって下方に傾斜するバネ保護部10に形成したので、前部9aが絞り加工により塑性変形しやすくなることから、バネ保護部10の加工性を向上させることができる。
【0022】
上記実施形態では、接触バネ3を内上壁9の一部で形成したので、展開形状が小さくなり、板取りが効率化されてコストが低減されると共に、曲げ工程が減って製造工程が簡略化される。しかも、接触バネ3が変形しても外上壁8に当たってそれ以上は変形しないので、これによって接触バネ3の過変形を防止することができる。そして、雌型端子Tを一枚の金属板から成形し、殆どの折線が前後方向に走るので、曲げ方向が概ね同一方向となり、作業工程の簡略化に寄与する。
【0023】
本発明は、スタビライザ11を設けない実施形態を含むが、スタビライザ11を前端に設けたときには、雌型端子TがハウジングHの収容室hに対して間違った向きで挿入されても挿入当初の段階で収容室hの入口に引っ掛かることになり、確実に雌型端子Tの逆差し防止が図られ、作業者の誤操作によるハウジングHの破損が回避される。さらに、ハウジングHの前面にスタビライザ11に連通するテスト用窓部を開口したときには、雄型端子TTと同形状のテスト用治具をテスト用窓部に挿入するとスタビライザ11に接触するので、接触バネ等を損傷させることなく導通テスト等を行うことができる。
【0024】
上記実施形態では、雌型端子Tのスタビライザ11をハウジングHのランスに係止して一次係止を行い、リテーナrを雌型端子Tの係止部4に嵌合して二次係止を行ったが、本発明は、このような二重係止を行う実施形態以外に、一次的な係止のみ行うようにした雌型端子の実施形態を含むものである。その場合、係止手段としては、ハウジングに設けた突部を雌型端子の凹所に係合させるようにした所謂ハウジングランスにより行うもの、雌型端子に設けた突部をハウジングの凹所に係合させるようにした所謂コンタクトランスにより行うもの、リテーナを端子本体の係止部に嵌合して行うもの、及びこれらを組み合わせたものがあるが、本発明はこれらを用いた実施形態を全て含むものである。本発明は上記実施形態以外に、ランナーに連なった状態ではなく一つごとに金属板から打ち抜かれる実施形態、及び以上の実施形態を組み合わせた実施形態を含む。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の電気コネクタの雌型端子によれば、雌型端子の前半部を略箱形としたことで、外力がかかっても接触バネを保護して接触信頼性を保証することができ、またバネ保護部により受入口に入る雄型端子をガイドして両コネクタをスムーズに接続することができると共に、雄型端子が接触バネをこじることを阻止し且つ接触バネの過大変形を阻止して接触バネが損傷することを防止することができる。そして、バネ保護部を絞り加工により形成したので、バネ保護部のための材料が不要となり且つ展開形状が小型化されて板取りが効率化されることになり、コストを低減することができると共に、バネ保護部の加工のためのスペースが最小限となり、小型の雌型端子、特に背の低い雌型端子にバネ保護部を設けることができるようになった。
【0026】
また、内上壁の前部を内上壁の他の部分から分離したので、前部が絞り加工により塑性変形しやすくなり、バネ保護部の加工性を向上させることができる。
【0027】
さらに、別途に接触バネを設けることに較べて展開形状が更に小さくなり、板取りが更に効率化されてコストが低減されると共に、曲げ工程が減って製造工程を簡略化することができ、コスト低減に寄与することができる。しかも、接触バネが変形しても外上壁に当たってそれ以上は変形しないので、これによって接触バネの過変形を防止することができる。そして、雌型端子を一枚の金属板から成形し、殆どの折線が前後方向に走るので、曲げ方向が概ね同一方向となり、作業工程の簡略化に寄与する。
【0028】
また、請求項2のようにすれば、上端縁を内側に曲げることで電線の芯線が圧着又は半田付け等により取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施形態に係る電気コネクタの雌型端子を示す斜視図である。
【図2】 上記実施形態の雌型端子をハウジングに挿入してなる電気コネクタと、これに嵌合する相手側コネクタの縮小縦断面図である。
【図3】 上記実施形態の雌型端子において、外上壁を切除して示す斜視図である。
【図4】 上記実施形態の雌型端子の縦断面図である。
【図5】 上記実施形態の雌型端子の展開形状を示し、曲げ加工する前の縮小図である。
【図6】 上記実施形態の雌型端子におけるバネ保護部の付近を外上壁を切除して示す要部拡大斜視図であり、(a)は絞り加工でバネ保護部を成形する前を、(b)は成形した後をそれぞれ示す。
【図7】 二つの従来例を示し、(a)は第一の雌型端子の斜視図、(b)は第二の雌型端子において雄型端子が入る前の縦断面図、(c)は雄型端子が入りつつあるときの縦断面図である。
【符号の説明】
C 電気コネクタ
T 雌型端子
H ハウジング
h 収容室
TT 雄型端子
W 電線
1 受入口
2 接続部
3 接触バネ
3a 先端
5 底壁
6 側壁
7 側壁
8 外上壁
9 内上壁
9a 前部
10 バネ保護部
Claims (2)
- 一枚の金属板から展開形状で打ち抜かれ、曲げ加工及び絞り加工により成形された電気コネクタの雌型端子であって、
ハウジングの収容室に挿入できるように前半部が略箱形に形成され、前端に雄型端子を受け入れる受入口が開口し、後部に電線が接続される接続部が設けられ、内部に、先端が前方に延びて雄型端子に圧接する接触バネが設けられ、
上記前半部は底壁と、この底壁の幅方向の両端からそれぞれ立ち上がる側壁と、各側壁の上縁から対向する側壁の上縁に向かって延びて上下に重なる外上壁及び内上壁とにより構成されており、
内上壁の前部が、側壁に連なったままで内上壁の他の部分から分離され、この前部の後半部が絞り加工により、接触バネ先端に向かって下方に傾斜し且つ接触バネ先端の前側に落ち込むバネ保護部に形成されており、
上記前部に続く内上壁の前後方向中途部が、側壁に連なった後端を残して短冊状に切り抜かれ、この切り抜かれた板片により先端が高さ方向に撓んで雄型端子に圧接する接触バネが形成されている電気コネクタの雌型端子。 - 接続部が、前後方向からみて断面略U字形に形成されている請求項1記載の電気コネクタの雌型端子。
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