JP4030267B2 - インクジェット記録用媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録用媒体に関するもので、特にインクの吸収性や画質が良好なインクジェット記録用媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、記録時における騒音が少ないこと、カラー化が容易であること、高速記録が可能であること等の特徴があり、ファクシミリ、各種プリンター、OHPシート等への応用が進められている。
しかし、記録の高速化や多色化などインクジェット記録装置の性能向上に伴い、被記録体に対してより高度な特性が要望されている。すなわち、インクの吸収速度が大きいこと、インクの裏抜けやにじみがなく画像が鮮明であること等である。
【0003】
従来、インクジェット記録装置に用いられるインクが水溶性であるため、インク吸収層には水溶性高分子であるポリビニルアルコール(以下「PVA」と略記する)系樹脂がよく用いられている。更には、該PVA系樹脂として、部分ケン化PVA系樹脂やカルボン酸変性PVA系樹脂を好適であることが公知である(特許第2604367号公報、特開2000−280615号公報)。
しかし、いずれの場合でもケン化度を下げるに従い、記録品位が向上する傾向にあるものの、PVA系樹脂を水に溶解する際に曇点を生ずるようになり、場合によっては常温に近い温度であっても該樹脂を溶解することが困難になるという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、曇点がなく溶解性に優れたPVA系樹脂であって、かつ記録画像の鮮明性に優れ、インクの裏抜けやにじみがないインクジェット記録用媒体を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、(1)支持体と該支持体上の少なくとも片面に形成したインク吸収層を有する記録用媒体において、該インク吸収層が曇点を有しないケン化度60〜85モル%の酸変性ポリビニルアルコール系樹脂を含有してなることを特徴とするインクジェット記録用媒体、(2)酸変性ポリビニルアルコール系樹脂の酸変性成分が、(a)オレフィン性不飽和ジカルボン酸のモノエステル、(b)オレフィン性不飽和ジカルボン酸のジエステル、(c)オレフィン性不飽和ジカルボン酸及び/又はその無水物の中から(a)又は(b)の一種以上を含む又は、(a)又は(b)と(c)とを含むものである(1)記載のインクジェット記録用媒体である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において用いられる曇点を有しない酸変性PVA系樹脂は、ビニルエステルとオレフィン性不飽和ジカルボン酸及びその誘導体から選択される単量体との共重合体を部分ケン化することによって得ることができる。ビニルエステルとしては酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ギ酸ビニルが挙げられるが経済的にみて酢酸ビニルが好ましい。オレフィン性不飽和ジカルボン酸及びその誘導体としては、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸、それらの無水物、それらの塩およびそれらのアルキルエステルが挙げられるが、曇点を有しない酸変性PVA系樹脂を得るためにはオレフィン性不飽和ジカルボン酸のモノエステルまたはジエステルを用いるか、またはそれらとオレフィン性不飽和ジカルボン酸またはその無水物との混合物を用いるのが好ましい。オレフィン性不飽和ジカルボン酸及びその誘導体の共重合量は0.1〜10モル%、好ましくは0.3〜5モル%の範囲から選ばれる。また、ビニルエステル単位のケン化度としては、60〜85モル%である。ケン化度が60モル%以下では樹脂の軟化温度が低くなりすぎ粉体乾燥時に融着して製造しにくい。ケン化度が85モル%以上では鮮明な画質が得られにくい。該変性PVAの平均重合度は特に制限はないが通常200〜3000の範囲から選ばれる。
【0007】
また、上述の共重合を実施する際には、酢酸ビニルこれらのほかに他の共重合性単量体、例えば、エチレン、プロピレン、スチレン、アルキルビニルエーテル、バーサチック酸ビニル、(メタ)アクリルアミド等を少量併用することもできる。
【0008】
本発明で使用される変性PVAは、単独で使用することもでき、あるいは曇点を有しない他の水溶性または水分散性樹脂と併用して使用することもできる。
併用できるものとしては、澱粉およびその誘導体、ゼラチン、カゼイン、アラビヤゴム、メチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドンおよびその共重合体、ポリアクリル酸ソーダ等のアニオン系水溶性樹脂等の水溶性樹脂、SBRラテックス、NBRラテックス、酢酸ビニル系エマルジョン、エチレン/酢酸ビニル系共重合体エマルジョン、(メタ)アクリル酸エステル系エマルジョン、塩化ビニル系エマルジョン等の水分散性樹脂が挙げられる。
【0009】
更に必要に応じて、主にインク吸収性と被記録体の白度を高めるために、シリカ、クレー、タルク、ケイソウ土、ゼオライト、炭酸カルシウム、酸化チタン、サチンホワイト、ケイ酸アルミニウム、アルミナ、酸化亜鉛等の充填材と併用して使用することもできる。しかし、OHPシートのような高い透明性が必要な場合には、その透明性を阻害しないような最適な添加量と粉末の粒度を選択する必要がある。
【0010】
また、被記録媒体の静電気を押さえる目的で無機電解質、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム等を添加することが可能である。
【0011】
本発明における支持体としては、紙、板紙及びこれらの加工紙が使用されるが、特に限定するものではなく、パルプと各種ポリマーの混合物、あるいはポリマーのみのフィルムもしくはシート等を使用することも可能である。特に、OHP用ポリマーシートとしては、透明性に優れた、例えばポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリイミド、セロハン、セルロイド等のプラスチックを使用することが好ましい。
【0012】
本発明において支持体にインク吸収層を形成する方法としては、上述の変性PVAの水溶液またはこれと他の水溶性または水分散性樹脂あるいは充填材等との混合物水溶液あるいは水分散液をサイズプレス、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、ブレードコーター等の通常のコーティング方法によって支持体中に含浸するか、支持体の上表面あるいは上表面と下表面の両表面上にコート層を形成する等の方法が使用できる。
【0013】
インク吸収層の塗工量はコスト的にも少ないほうが良好であることは明白であるが支持体として紙を使用した場合は通常0.1〜10g/m2の範囲であり、また、支持体としてOHP用のポリマーシートを使用した場合は通常1〜100g/m2の範囲である。塗工液の濃度は、塗工する装置・操作条件等に応じて任意に選択される。
【0014】
【実施例】
以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例には限定されないものである。以下「部」とあるのは重量部である。
【0015】
実施例1
支持体としてインク吸収層のない中性PPC用原紙を用い、マレイン酸ジメチル0.5モル%及びマレイン酸0.5モル%変性した重合度1000、ケン化度85モル%のPVAを濃度10質量%になるように溶解した水溶液を、ブレードコーターで乾燥後の塗工量が1g/m2になるように塗工し乾燥してインクジェット記録用媒体とした。
【0016】
該記録媒体について、プリンターとしてエプソンPM―700Cを用いてカラーインクジェット記録を行ない、画像の鮮明性、インクのにじみを目視で評価し結果を表1に示す。
【0017】
(1)画像の鮮明性の評価
記録部分のインクが支持体表面近傍により多く留まっている場合、すなわち記録部分裏面のインクの裏抜けがないほうが画像の鮮明性に優れており下記の評価基準により目視で評価した。
◎:非常に良好(裏抜けがない)
○:良好
△:やや劣る
×:裏抜けが多い
【0018】
(2)インクのにじみの評価
記録部分と非記録部分の境界部分を下記の評価基準により目視で評価した。
◎:非常に鮮明でにじみがない
○:良好
△:やや劣る
×:色が沈みにじみがある
【0019】
実施例2〜4
表1に示す変性PVAを用いて、実施例1と同様にしてインクジェット用記録媒体を得た。該インクジェット用記録媒体の画像の鮮明性、インクのにじみを実施例1と同様に評価し結果を表1に示す。
【0020】
比較例1〜3
表1に示す変性PVAまたは未変性PVAを用いて、実施例1と同様にしてインクジェット用記録媒体を得た。該インクジェット用記録媒体の画像の鮮明性、インクのにじみを実施例1と同様に評価し結果を表1に示す。なお、比較例1及び3で用いたPVAは曇点を有しているため、温度が変化すると均一で安定な塗工液を得ることができず塗工できなかった。
【0021】
【表1】
Figure 0004030267
【0022】
【発明の効果】
本発明における変性PVAを使用することにより、曇点を有しないため、広い温度範囲において水への溶解が良く均一で安定な塗工液を得ることができ、インクジェット記録を行なった場合、記録画像の鮮明性に優れ、インクのにじみが少ないインクジェット用記録媒体を得ることが可能になった。

Claims (2)

  1. 支持体と該支持体上の少なくとも片面に形成したインク吸収層を有する記録用媒体において、該インク吸収層が曇点を有しないケン化度60〜85モル%の酸変性ポリビニルアルコール系樹脂を含有してなり、該酸変性ポリビニルアルコール系樹脂の酸変性成分が、マレイン酸ジメチル、または、マレイン酸ジメチルとマレイン酸との併用であることを特徴とするインクジェット記録用媒体。
  2. 酸変性ポリビニルアルコール系樹脂の酸変性成分が、マレイン酸ジメチルである請求項1記載のインクジェット記録用媒体。
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