JP4028352B2 - 電解質膜・電極構造体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子電解質膜の両側に一対のガス拡散電極層を設けた電解質膜・電極構造体に係り、特に、固体高分子電解質膜が一方のガス拡散電極層からはみ出した形状の電解質膜・電極構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池には、電解質膜・電極構造体を、一対のセパレータで挟持して燃料電池セルを構成し、この燃料電池セルを複数積層させた構造のものがある。前記電解質膜・電極構造体としては、固体高分子電解質膜を、その両側からガス拡散電極層にて挟持した構造のものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、固体高分子電解質膜と、その両側のガス拡散電極層とが同一サイズに形成され、それぞれの端面を一致させて積層してなる電解質膜・電極構造体が開示されている。
また、特許文献2には、固体高分子電解質膜の外周部分に、ガス拡散電極層の部分と重なる額縁状ガスケットを設けて、当該ガスケットにより固体高分子電解質膜の外周部分がシールされた電解質膜・電極構造体が開示されている。
【0004】
【特許文献1】
米国特許第5176966号明細書
【0005】
【特許文献2】
米国特許第5464700号明細書
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来に示した電解質膜・電極構造体には、以下のような問題がある。
近年、燃料電池のサイズを小型化する要請が高まっており、その要請に応えるために、電解質膜・電極構造体の固体高分子電解質膜は、膜厚の薄いものが用いられる傾向にある。しかし、前記特許文献1に示された電解質膜・電極構造体においては、固体高分子電解質膜の両側に設けたガス拡散電極層同士の端面位置が固体高分子電解質膜の端面位置に一致しており、互いの端面が近い位置に設けられているため、ガス拡散電極層に供給されるそれぞれの反応ガスが固体高分子電解質膜の端面から回り込み、拡散しやすい。従って、反応ガス同士がそれぞれのガス拡散電極層の端面付近で混合するおそれがある。さらに、ガス拡散電極層の端面位置が近いために、電気的に短絡するおそれがある。
【0007】
また、前記特許文献2に示された電解質膜・電極構造体においては、ガス拡散電極層と固体高分子電解質膜の外周部分に額縁状ガスケットを重ねて設けるため、この重なり部分の厚みが増大してしまう。また、このふくらんだ重なり部分を平坦にしようとすると、ガス拡散電極層が変形して平坦度が損なわれるため、これを防止するための処理が必要となり工程が複雑化してしまう。
そこで、本発明は、薄膜化した固体高分子電解質膜を保護して、発電効率を高めることができる電解質膜・電極構造体を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、固体高分子電解質膜(例えば、実施の形態における固体高分子電解質膜22)が、触媒層(例えば、実施の形態における触媒層28,30)とガス拡散層(例えば、実施の形態におけるガス拡散層32,34)とを備える一対のガス拡散電極層(例えば、実施の形態におけるガス拡散電極層24,26)により、前記固体高分子電解質膜の両側に前記触媒層が当接するように挟持され、前記固体高分子電解質膜が、一方のガス拡散電極層(例えば、実施の形態におけるカソード側ガス拡散電極層26)で覆われるとともに、他方のガス拡散電極層(例えば、実施の形態におけるアノード側ガス拡散電極層24)からはみ出してなる電解質膜・電極構造体(例えば、実施の形態における電解質膜・電極構造体10)であって、一方のガス拡散層の触媒層の端面が、他方のガス拡散層の触媒層の端面に対して位置がずれて設置されており、少なくとも一方のガス拡散電極層の外周に、前記触媒層の端面の全周と間隔(例えば、実施の形態における隙間27、29)を開けて、接着層(例えば、実施の形態における接着層36、37)を形成してなることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、固体高分子電解質膜に接触するそれぞれの触媒層端面からの応力が固体高分子電解質膜の一カ所に集中せず、固体高分子電解質膜の両面から分散させることができるため、固体高分子電解質膜に応力が集中するのを防ぐことができる。また、前記固体高分子電解質膜が一方のガス拡散電極層で覆われているため、固体高分子電解質膜を保護して固体高分子電解質膜の破損を防止することが出来る。さらに、それぞれのガス拡散電極層の端面が離れた位置にあるため、それぞれのガス拡散電極層に供給される反応ガス同士がガス拡散電極層の端面位置で混合するおそれが無くなるとともに、電気的に短絡するおそれが無くなる。
また、前記接着層により、固体高分子電解質膜とガス拡散層とが一体化し、固体高分子電解質膜の厚み方向の強度をガス拡散層で支持して補強することが出来、電解質膜・電極構造体の取扱い性が向上する。また、前記接着層が内側の触媒層を覆うためシール機能を果たし、これにより反応ガスの混合するおそれを一層低減することができる。加えて、前記接着層は前記触媒層の端面と少なくとも一部間隔を開けて形成しているため、接着層が触媒層に干渉することを防止でき、接着層が触媒層に接触することによって触媒機能を阻害することがないので、触媒層の発電機能を全面に亘って確保させることができる。また、接着層を触媒層の端面に密着させて設ける必要がないため、接着層の配置自由度を高めることができ、電解質膜・電極構造体の製造負担を低減することができる。
なお、前記一方の触媒層は、前記他方の触媒層に対して位置がずれて設置されるものであればよく、同一サイズのものであっても、異なるサイズのものであってもよい。また、他方のガス拡散電極層の触媒層の外周にも接着層を形成してもよい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態における電解質膜・電極構造体及び燃料電池を図面と共に説明する。図1は本発明の実施の形態における電解質膜・電極構造体10の断面図である。電解質膜・電極構造体10は、固体高分子電解質膜22と、この固体高分子電解質膜22を挟んで配設されるアノード側ガス拡散電極層24及びカソード側ガス拡散電極層26とを有する。前記アノード側ガス拡散電極層24及びカソード側ガス拡散電極層26には、それぞれ触媒層28,30とガス拡散層32,34が形成されて、前記触媒層28,30が固体高分子電解質膜22の両面にそれぞれ当接している。前記触媒層28,30は白金を主成分とする材料で形成され、前記ガス拡散層32,34は多孔質層である多孔質カーボンクロス又は多孔質カーボンペーパーで形成され、前記固体高分子電解質膜22は炭化水素系樹脂(例えば、ポリアリレン系樹脂)を主成分とする材料で形成されている。なお、固体高分子電解質膜22の材料としては、フッ素系樹脂(例えば、ペルフルオロスルホン酸ポリマー)を主成分とするものを用いることもできる。
また、触媒層28,30の形成方法は、特に限定されず、ガス拡散層32,34の表面に触媒ペーストを塗布あるいは触媒元素を蒸着して形成してもよく、他の部材(例えばフィルム)に形成した触媒層を固体高分子電解質膜に転写させて形成してもよい。
【0011】
前記固体高分子電解質膜22は、図2に示したように、前記アノード側ガス拡散電極層24から一方の面のみがはみ出しているとともに、他方の面が前記カソード側ガス拡散電極層26にて覆われている。このように固体高分子電解質膜22の両側に配されるガス拡散電極層24,26の平面寸法を異ならせて、固体高分子電解質膜22の一方の面のみがはみ出しているため、ガス拡散電極層24,26の端面同士が固体高分子電解質膜22を介して離間した位置に設けられる。このため、ガス拡散電極層24,26にそれぞれ供給される反応ガス(燃料ガス、酸化剤ガス、いずれも図示せず)が固体高分子電解質膜22の端面付近で混合するおそれを低減することができるとともに、電気的に短絡することを防止できる。また、固体高分子電解質膜22の一方の面はカソード側ガス拡散電極層26により覆われているため、固体高分子電解質膜22を保護して固体高分子電解質膜22の破損を防止することができる。特に、炭化水素系樹脂の固体高分子電解質膜は、フッ素系樹脂の固体高分子電解質膜に比べて剛直であるため、一方の面をガス拡散電極層で覆うことにより保護することが好ましい。
【0012】
本実施の形態においては、アノード側ガス拡散電極層24の触媒層28と、カソード側ガス拡散電極層26の触媒層30との平面的な大きさがそれぞれ異なっており、それぞれの触媒層28,30の端面位置をずらして設置されている。これにより、固体高分子電解質膜22に接触するそれぞれの触媒層28,30端面からの応力が一カ所に集中せず、固体高分子電解質膜の両面から分散することができるため、固体高分子電解質膜22に応力が集中するのを防ぐことができる。
【0013】
また、カソード側ガス拡散電極層26の触媒層30は、アノード側ガス拡散電極層24の触媒層28に対して平面寸法を小さく形成してあるとともに、前記触媒層30の外周側には接着層36を形成してあり、当該接着層36により固体高分子電解質膜22の周縁部を覆わせている。このように接着層36を設けたため、固体高分子電解質膜22とカソード側ガス拡散電極層26とが一体化し、固体高分子電解質膜22をガス拡散層で支持して補強することが出来、電解質膜・電極構造体の取扱い性が向上する。また、前記接着層36が内側の触媒層30を覆うためシール機能を果たし、これにより反応ガス(燃料ガス、酸化剤ガス)同士が混合するおそれを一層低減することができるとともに、反応ガス同士の混合による短絡をより確実に防止することができる。さらに、固体高分子電解質膜22には、前記触媒層28の端面と接触する箇所の反対側に接着層36を配置しているため、固体高分子電解質膜22を前記触媒層28の端面からの応力から保護することができる。
【0014】
また、本実施の形態においては、アノード側拡散電極層24の触媒層28の外周にも接着層37を形成しているため、上述した接着層36の場合と同様の作用効果を奏することができる。
加えて、前記接着層36、37は前記触媒層30,28の端面とそれぞれ隙間29,27を設けて形成している。このため、接着層36、37が触媒層30、28に干渉することを防止でき、接着層が触媒層に接触することによって触媒機能を阻害することがないので、触媒層30,28の発電機能を全面に亘って確保させることができる。また、接着層36,37を触媒層30、28の端面に密着させて設ける必要がないため、接着層36,37の配置自由度を高めることができ、電解質膜・電極構造体10の製造負担を低減することができる。なお、接着層36、37に用いられる接着材には、フッ素系またはシリコン系の材料を用いることが好ましい。
【0015】
以上、アノード側ガス拡散電極層24よりもカソード側ガス拡散電極層26の平面寸法を大きくした場合について説明したが、これに限らず、アノード側ガス拡散電極層24よりもカソード側ガス拡散電極層26の平面寸法を小さくしてもよい。また、互いの触媒層28,30の端面同士の位置がずれていれば、互いの触媒層28,30を同一寸法に形成してもよい。また、隙間27,29は触媒層28,30の外周端面の少なくとも一部に設けてあればよい。
【0016】
【実施例】
図3は、実施例の電解質膜・電極構造体10と、比較例の電解質膜・電極構造体40の耐久性の測定結果を示したグラフである。実施例の電解質膜・電極構造体10(図1参照)は、固体高分子電解質膜22としてポリアリレン系の電解質膜を用いた。触媒層28,30は、以下のようにして作成した。すなわち、イオン導電性バインダーと、Ptを担持したカーボン粒子からなる触媒粒子とを、一定の割合で混合して触媒ペーストを作製した。この触媒ペーストを、固体高分子電解質膜22の両面に、互いに所定位置で端面がずれるようにスクリーン印刷した後に、前記触媒ペーストを乾燥させて、固体高分子電解質膜両面22に触媒層28,30を設けた。
【0017】
次に、前記触媒層付き電解質膜22を両側から挟む一対の拡散層32,34を以下のように製造した。拡散層は、その一方(拡散層34)を前記電解質膜22と同等の平面寸法とし、他方(拡散層32)を前記電解質膜22よりも小さい平面寸法とした。そして、前記拡散層32,34の周縁部にフッ素系材料を含む接着剤を塗布して接着層36,37を形成し、前記触媒層付き電解質膜22に両側から接着して、電解質膜・電極構造体10とした。このとき、大きい方の拡散層36に接着された触媒層30と、該触媒層30と電解質膜22を挟んで対極にある触媒層28とが、外周端面の平面位置が重ならないように位置をずらした。また、それぞれの接着層36,37は、触媒層30,28の端面と隙間29,27が開くようにして製造した。
【0018】
また、比較例は、電解質膜42としてNafion112(デュポン社商品名)を用いた。そして、比較例の拡散層52,54および触媒層48,50の材質、製造方法は実施例と同様にしたが、電解質膜42を挟持する一対の拡散電極層44,46は、共に略同一寸法に形成され、前記電解質膜42よりも平面寸法が小さい。前記電解質膜42はこれらの拡散電極層44,46により挟持され、拡散電極層44,46の外周から電解質膜42がはみ出すようにした(図4参照)。
【0019】
上述した実施例の電解質膜・電極構造体10と、比較例の電解質膜・電極構造体40とを、それぞれセパレータで挟持して燃料電池セルを形成した。そして、それぞれの燃料電池セルにおいて、一方の拡散電極層に燃料ガスを、他方の拡散電極層に酸化剤ガスを供給する。このとき、両者(燃料ガス、酸化剤ガス)の圧力差が40kPaになるように、それぞれのガスの圧力を交互に反転させてその反転回数を測定し、電解質膜・電極構造体の性能が維持されている間、前記測定を継続した。その結果、図3に示したように、実施例における電解質膜・電極構造体10は、比較例における電解質膜・電極構造体40と比べて、ガス圧力の変動に対して約2倍の反転回数までその性能を維持することができた。
【0020】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る発明によれば、固体高分子電解質膜に応力が集中するのを防ぐことができ、固体高分子電解質膜を保護して固体高分子電解質膜の破損を防止することが出来るため、固体高分子電解質膜の薄膜化を図ることができる。また、前記接着層が内側の触媒層を覆うためシール機能を果たし、これにより反応ガスの混合を防止することができる。加えて、接着層が触媒層に干渉することを防止でき、接着層が触媒層に接触することによって触媒機能を阻害することがないので、触媒層の全面を発電に寄与させることができる。また、接着層の配置自由度を高めることができ、電解質膜・電極構造体の製造負担を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の実施の形態における電解質膜・電極構造体の断面図である。
【図2】 図1の電解質膜・電極構造体の平面図である。
【図3】 本発明の実施例の電解質膜・電極構造体と、比較例の電解質膜・電極構造体の耐久性の測定結果を示したグラフである。
【図4】 比較例の電解質膜・電極構造体の断面図である。
【符号の説明】
10 電解質膜・電極構造体
24 アノード側ガス拡散電極層
26 カソード側ガス拡散電極層
28、30 触媒層
32、34 ガス拡散層
36、37 接着層
Claims (1)
- 固体高分子電解質膜が、触媒層とガス拡散層とを備える一対のガス拡散電極層により、前記固体高分子電解質膜の両側に前記触媒層が当接するように挟持され、
前記固体高分子電解質膜が、一方のガス拡散電極層で覆われるとともに、他方のガス拡散電極層からはみ出してなる電解質膜・電極構造体であって、
一方のガス拡散層の触媒層の端面が、他方のガス拡散層の触媒層の端面に対して位置がずれて設置されており、
少なくとも一方のガス拡散電極層の外周に、前記触媒層の端面の全周と間隔を開けて、接着層を形成してなることを特徴とする電解質膜・電極構造体。
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