JP4027088B2 - プラズマ洗浄装置、及びこのプラズマ洗浄装置を用いて基板を洗浄するプラズマ洗浄方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発生させたプラズマにより基板の表面を洗浄するプラズマ洗浄装置、及びそのプラズマ洗浄方法に関し、特に、ボンディング等の金属間接合用の銅パッドや銅フレームが形成された基板に対してのプラズマ洗浄装置、及びそのプラズマ洗浄方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
基板の表面を洗浄する洗浄装置には、従来より、フロンや有機溶剤等を用いたウエットクリーニング法が一般に適用されていたが、このウエットクリーニング法では環境汚染や毒性の点に問題があるため、近年では、プラズマによって物理・化学的に洗浄するドライクリーニング法が主流に適用されている。このドライクリーニング法の代表的なものとしては、RIE(リアクティブイオンエッチング)方式と、PE(プラズマエッチング)方式とがある。
【0003】
RIE方式では、例えば図8に示すように、気密状態に密閉可能なチャンバ内に、グランド電位に接地された上部電極202と、高周波電源203に接続された下部電極201とが、所定の間隔を有して対向配置され、他方PE方式では、例えば図9に示すように、気密状態に密閉可能なチャンバ内に、高周波電源203に接続された上部電極202と、グランド電位に接地された下部電極201とが、所定の間隔を有して対向配置される。つまり、RIE方式とPE方式とは、上部電極202及び下部電極201各々に接続される対象(高周波電源203及びグランド電位)が逆になる以外に構造上でほとんど相違はなく、両方式ともに下部電極201上に被洗浄用の基板Aを配置し、その状態でチャンバを密閉して真空状態にし、次いでチャンバ内にプラズマ反応ガスを供給した後、高周波電源203から上部電極202又は下部電極201に高周波電力を供給することで、上部電極202と下部電極201との間(プラズマ空間)にプラズマを発生させ、このプラズマによって基板Aの洗浄を行う。
【0004】
そのプラズマ洗浄は、プラズマ中に生成したプラズマ反応ガスの主としてラジカルや陽イオンを活用したもので、具体的には、ラジカルが基板Aの表面に衝突してその表面を改質することによって化学的に基板Aを洗浄すること、或いは、高周波電力が供給された上部電極202又は下部電極201はプラズマ中の電子を捕集して負に帯電するため、陽イオンがその上部電極202又は下部電極201に引き寄せられて(図8、9参照)基板Aの表面に衝突し、有機物や酸化物等の不純物を叩き出して削り取ることによって物理的に基板Aを洗浄することである。ここで、ラジカルは方向を問わず移動し(等方性)、他方陽イオンは負に帯電した上部電極202又は下部電極201に向けて、すなわち一定方向に向けて移動する(異方性)という特質を有しているため、ラジカルの洗浄作用は基板Aの一面にのみ寄与し、他方陽イオンの洗浄作用は基板Aの表面全域にわたって寄与する。なお、ラジカルの洗浄作用が化学的であるのに対して、陽イオンのそれが物理的であることから、基板Aの洗浄進行速度に関しては、陽イオンによる方がラジカルによるよりもはるかに速い。
【0005】
より具体的に説明すると、プラズマ反応ガスとしては一般に酸素(O2)が用いられ、この場合、陽イオン、陰イオン、ラジカルが生成される。酸素のイオンは質量が小さいため、一般に物理的なプラズマ洗浄効果は少ないことから、基板Aをプラズマ洗浄する際、上記した陽イオンの洗浄作用は理論的にはほとんど生じず、ラジカルの洗浄作用が主として寄与する。これは、RIE方式、PE方式ともに共通であるが、高周波電力が供給された上部電極202又は下部電極201付近のプラズマ空間には、プラズマが希薄な層状のシース領域Zが形成されるため、このシース領域Zに基板Aが配置されるRIE方式(図8参照)では、シース領域Zに基板Aが配置されないPE方式(図9参照)と比較して、ラジカルの洗浄作用が劣ることになる。つまり、ラジカルの洗浄作用に関しては、PE方式の方がRIE方式よりも有利である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、基板Aにはボンディング等の金属間接合用の銅パッドや銅フレームが形成されていることが多いが、この基板Aをプラズマ洗浄する際に、プラズマ反応ガスとして酸素を用いると、その酸素によって銅パッド等の酸化が促進され、期待する洗浄効果が得られないという弊害がある。これは、RIE方式、PE方式を問わず、両方式に共通の問題である。
【0007】
この問題を解消するために、通常は、RIE方式でプラズマ反応ガスとしてアルゴン(Ar)を用いることにより、銅パッド等の酸化を防止している。この場合、図8に示すように、プラズマ中に生成するイオンはほとんどが陽イオン(以下、酸素の陽イオンと区別して「陽Arイオン」と記すことがある)であることから、基板Aをプラズマ洗浄する際、上記したラジカル(以下、酸素のラジカルと区別して「Arラジカル」と記すことがある)の洗浄作用に加えて、陽Arイオンの洗浄作用が寄与することになる。
【0008】
ところが、このようなRIE方式でアルゴンガスを用いる手法では、Arラジカルと陽Arイオンの洗浄作用が同時に進行するものの、それら相互の洗浄進行速度の違いから、陽Arイオンによる洗浄が相対的に勝ることになり、しかも、シース領域Zに基板Aが配置されるため、実際にはArラジカルによる洗浄作用はほとんど寄与しないことになる。従って、主としてAr陽イオンによって基板Aが洗浄されることから、基板Aの上面、すなわち上部電極202に対向する面には洗浄処理が施されるが、他方基板Aの下面、すなわち下部電極201に対向する面には洗浄処理がほとんど施されない。
【0009】
よって、基板Aの上下両面を洗浄するには、先ず上面を洗浄しその後に基板Aを反転して改めて下面を洗浄することが必要となるため、効率が極めて悪いという問題が生じる。また、基板Aの上面と下面との洗浄度合いは、後工程の処理に影響を及ぼすため、同等にすることが望ましい。
【0010】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、基板に形成された銅パッドや銅フレーム等の酸化を防止しつつ、基板の両面を効率よく同等に洗浄できるプラズマ洗浄装置、及びそのプラズマ洗浄方法を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明によるプラズマ洗浄装置は、高周波電源と、気密状態に密閉可能なチャンバと、このチャンバ内で上下方向に対向配置され、相互の間にプラズマ空間を形成すべく前記高周波電源に接続された上方側の第1の電極、及びグランド電位に接地された下方側の第2の電極と、前記プラズマ空間に対し水平方向に出入り自在に取り付けられ、収容された状態で前記第2の電極に接する導電性のトレイと、このトレイ上に設けられていて、少なくとも銅フレーム又は銅パッドが形成された被プラズマ洗浄用の基板を前記トレイに対しその近傍で非接触状態にすべく前記基板の両側部を支持する一対の突条と、前記チャンバ内にプラズマ洗浄用のアルゴンガスを供給するガス供給手段と、を備えている。
【0013】
また、本発明によるプラズマ洗浄方法は、上記のプラズマ洗浄装置を用いて、少なくとも銅フレーム又は銅パッドが形成された基板を洗浄するプラズマ洗浄方法において、前記基板が支持されて気密状態に密閉された前記チャンバ内に前記ガス供給手段からアルゴンガスを供給するとともに、前記高周波電源から前記第1の電極に高周波電力を供給して、アルゴンガスのプラズマを発生させ、該プラズマ中に生成したラジカルが前記基板の表面を改質することにより前記基板の両面を洗浄するようになっている。
【0014】
つまり、形式としてはPE方式を適用し、主としてラジカルによる洗浄作用を寄与させるものとなっており、アルゴンガスによって、基板に銅パッド等の酸化性に敏感な部分が形成されていてもその部分の酸化防止を図れ、また、第2の電極と直接又は間接的に接触しないよう基板を配置することにより、ラジカルが基板の両面に良好に回り込むようにして、その両面の洗浄度合いが同等になるようにしつつ、効率よくその両面を同時に処理できるように図っている。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のプラズマ洗浄装置の具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳述する。図1及び図2は本発明のプラズマ洗浄装置の全体構造を示した斜視図、図3はそのプラズマ洗浄装置におけるチャンバ及びトレイの斜視図、図4はそのプラズマ洗浄装置におけるチャンバの断面図、図5は図4の要部拡大図、図6はそのプラズマ洗浄装置における整流部材の底面図、図7はそのプラズマ洗浄装置の動作説明図である。なお、図中で同じ名称で同じ機能を有する部分には同一の符号を付している。
【0016】
このプラズマ洗浄装置は、RIE方式とPE方式との選択が可能で、しかもプラズマ反応ガスとしてアルゴンガスと酸素とが簡単に切替できるものであって、洗浄対象となる基板の仕様や後処理に応じて、適宜設定が可変な汎用性に富むものである。
【0017】
図1及び図2に示すように、このプラズマ洗浄装置1は、内部にプラズマが発生し、導入した基板Aを洗浄する一対のチャンバ2と、一対のチャンバ2に交互に高周波電圧を印加する電源部3と、一対のチャンバ2にプラズマ反応ガスであるアルゴンガス及びリークのための窒素ガスを交互に供給するガス供給装置4と、各チャンバ2内を真空状態にする一対の真空吸引装置5と、一対のチャンバ2に対し基板Aを交互に搬入・搬出する搬入・搬出機構6と、搬入・搬出機構6に供給側マガジン7aを介して未処理基板Aaを供給するマガジン供給部8と、搬入・搬出機構6から受け取った処理基板Abを排出側マガジン7bを介して装置外に排出するマガジン排出部9とを備えている。
【0018】
各チャンバ2は、図3に示すように、真空容器である箱状のチャンバ本体21と、チャンバ本体21の前面に設けられたフランジ状の蓋体22とを有している。蓋体22は、両側に設けた蓋ガイド23によりチャンバ本体21に対して進退自在に構成され、且つチャンバ本体21の側面に設けたチャンバ開閉シリンダ(エアシリンダ)24のピストンロッド25と連結板26で連結されている。
【0019】
また、蓋体22の内側には、導電性材料から成るトレイ27が取り付けられており、トレイ27は蓋体22とともに進退する。このトレイ27上には、相互に内向きの受け溝172が形成された一対の突条171が前後方向に2つ設けられていて、各一対の突条171の受け溝172は、後述するチャンバ側移載機構13の移載爪105の左右移動によって端が押された2枚の基板A各々の両側部を案内するとともに、その各基板Aを収容して支持する。ここで、受け溝172とトレイ27の上面との距離は、各基板Aがトレイ27上に収容配置された状態で各基板Aの下面とトレイ27の上面とが接触しないように設定されている。このような構成のもとで、チャンバ開閉シリンダ24が駆動されて蓋体22が前進すると、チャンバ本体21が開放されるとともに、基板Aを収容配置したトレイ27が引き出され、蓋体22が後退すると、トレイ27が押し込まれるとともにチャンバ本体21が閉塞される。
【0020】
なお、チャンバ開閉シリンダ24は、左側のチャンバ2(2a)では、その左側面に取り付けられ、右側のチャンバ2(2b)では、その右側面に取り付けられている(図1参照)。また、図示しないが、チャンバ本体21と蓋体22の間には、チャンバ2の気密性を保持すべく、Oリング等のシール部材が介在している。
【0021】
また、図4に示すように、各チャンバ2内には、下方に配された矩形板状の下部電極28と、その上方に配された矩形板状の上部電極29とが設けられている。下部電極28は、上記のトレイ27の下方に位置するように配され、矩形板状の整流部材158を介してチャンバ本体21の下部内面に取り付けられるとともに、チャンバ本体21の下面に固着された接続端子150と導通している。なお、整流部材158は、絶縁性の材料から成り、下部電極28の真下に位置するとともに下部電極28とほぼ整合するように形成されている。一方、上部電極29は、チャンバ本体21の上部内面に、矩形板状のホルダー151を介して取り付けられるとともに、チャンバ本体21の上面に固着された接続端子152と導通している。
【0022】
トレイ27は、チャンバ本体21に出入りする際には下部電極28との間に空隙を存した状態で水平方向に移動し、チャンバ本体21内に完全に収容される直前に水平方向に移動しつつ下降して下部電極28と接するようになっている。なお、トレイ27における移動方向に直交する方向の幅は、下部電極28の同方向の幅とほぼ等しくなっている。
【0023】
図5に示すように、各チャンバ本体21の頂壁にはガス導入孔153が形成されており、このガス導入孔153は、ホルダー151を貫通して上部電極29に達し、上部電極29の下部で径が拡大して上部電極29の下面に開口している。ガス導入孔153の下端部にはプレート154が嵌め込まれており、このプレート154には厚さ方向に貫通するガス噴出孔155が複数個形成されている。また、ガス導入孔153の上端には、後述するガス導入管43が連通接続されている。
【0024】
また、各チャンバ本体21の底壁には下部電極28の中央部に対向するようにガス排出孔159が形成されており、整流部材158の底面には、ガス排出孔159に連通した溝状のガス通路160が形成されている。このガス通路160は、図6に示すように、格子状に形成されていて、整流部材158の四側面に開口している。整流部材158の中央部にはガス通路160に連通した凹部161が形成されていて、この凹部161はガス排出孔159と整合している。
【0025】
上述したように、整流部材158は下部電極28とほぼ整合するように形成されており、トレイ27における移動方向に直交する方向の幅は下部電極28の同方向の幅とほぼ等しくなっているため、ガス通路160による吸引効果が下部電極28やトレイ27によって妨げられにくい。したがって、上述したトレイ27と各基板Aとの非接触効果と相まって、ガス排出孔159の吸引効果をトレイ27上に収容配置された各基板Aの上下面全域に亘ってほぼ均一に及ぼすことができるものである。
【0026】
電源部3は、高周波電源31と、自動整合器32と、真空リレー33とを有している。真空リレー33は、図示しない制御装置(パソコン)に接続され、制御装置の切替指令により、一対のチャンバ2に対し高周波電源31を交互に切り替える。また、真空リレー33は、真空リレー156を介してチャンバ2の下面の接続端子150に接続され、真空リレー157を介してチャンバ2の上面の接続端子152に接続されている。
【0027】
真空リレー156、157は上記制御装置に接続されており、制御装置の切替指令により、上部電極29または下部電極28のいずれか一方を高周波電源31に接続し、下部電極28または上部電極29のいずれか他方をグランド電位に接地する。
【0028】
自動整合器32は、チャンバ2に印加した高周波の反射波による干渉を防止するものであり、この場合には、一対のチャンバ2に対し1台の自動整合器32を対応させているが、各チャンバ2に対しそれぞれ1台の自動整合器32を対応させるようにしてもよい。かかる場合には、高周波電源31、真空リレー33、自動整合器32の順で結線される。
【0029】
ガス供給装置4は、図外のアルゴンガスボンベに連なるアルゴンガス供給管41と、図外の窒素ガスボンベに連なる窒素ガス供給管42と、各チャンバ2に連なる一対のガス導入管43と、アルゴンガス供給管41及び窒素ガス供給管42と一対のガス導入管43とを接続するガス切替管44とを有している。アルゴンガス供給管41及び窒素ガス供給管42には、それぞれマニュアルで操作されるアルゴンガス供給バルブ45及び窒素ガス供給バルブ46が設けられている。また、アルゴンガス供給管41にはマスフローコントローラ47が介設され、また窒素ガス供給管42にはパージ流量計48が介設され、それぞれガス流量を制御できるようになっている。
【0030】
ガス切替管44は、アルゴンガス供給管41に連なる2本のアルゴン側分岐管44aと、窒素ガス供給管42に連なる2本の窒素側分岐管44bとを有し、各アルゴン側分岐管44aと各窒素側分岐管44bの合流部分に上記の各ガス導入管43が接続されている。両アルゴン側分岐管44aには、それぞれ電磁弁で構成されたアルゴン側切替バルブ49が介設され、また、両窒素側分岐管44bには、それぞれ電磁弁で構成された窒素側切替バルブ50が介設されている。一対のアルゴン側切替バルブ49及び一対の窒素側切替バルブ50は制御装置に接続され、制御装置の切替指令により、開閉する。この場合、アルゴンガスのガス量を精度良く制御するため、上記のマスフローコントローラ47は、制御信号に基づいて、フィードバック制御される。
【0031】
アルゴンガス供給バルブ45及び窒素ガス供給バルブ46は、それぞれ常時「開」となっており、一対のチャンバ2に交互にアルゴンガスを導入する場合には、両窒素側切替バルブ50が「閉」となり、両アルゴン側切替バルブ49の一方が「開」、他方が「閉」となる。また、後述するリークの為に窒素ガスを導入する場合には、両アルゴン側切替バルブ49が「閉」となり、両窒素側切替バルブ50の一方が「開」、他方が「閉」となる。なお、図中の符号51は、プラズマ反応ガスとして、アルゴンガスの他、酸素ガスを導入可能とする場合(仮想線にて図示)に、開閉される開閉電磁弁である。
【0032】
各真空吸引装置5は、真空ポンプ61と、真空ポンプ61と各チャンバ2を接続する真空配管62とを有している。真空配管62には、チャンバ2側から真空計63、圧力調整バルブ64及びメインバルブ65が介設されている。メインバルブ65は電磁弁で構成されており、メインバルブ65が「開」状態で、フレキシブル管67を介して真空配管62と真空ポンプ61とが連通し、チャンバ2内の真空引きが行われる。
【0033】
搬入・搬出機構6は、両チャンバ2と、マガジン供給部8及びマガジン排出部9との間で、基板Aを搬送する基板搬送機構12を有するとともに、基板搬送機構12と両チャンバ2との間で基板Aを移載するチャンバ側移載機構13と、基板搬送機構12と供給側・排出側両マガジン7a、7bとの間で基板Aを移載するマガジン側移載機構14とを有している。
【0034】
供給側マガジン7aに収容されている未処理基板Aaは、マガジン側移載機構14により基板搬送機構12に移載され、基板搬送機構12により下動位置からチャンバ2近傍の上動位置まで搬入される。ここで、チャンバ側移載機構13が駆動され、未処理基板Aaを基板搬送機構12からチャンバ2のトレイ27に移載する。一方、処理基板Abは、チャンバ側移載機構13によりトレイ27から基板搬送機構12に移載され、基板搬送機構12により上動位置から供給・排出側両マガジン7a、7b近傍の下動位置まで搬出される。ここで、マガジン側移載機構14が駆動され、処理基板Abを基板搬送機構12から排出側マガジン7bに移載する。
【0035】
基板搬送機構12は、図外の機台に取り付けられた基板昇降装置71と、基板昇降装置71に取り付けられた基板Y動装置72と、基板Y動装置72により図示の前後方向に移動する基板載置ステージ73とを有している。
【0036】
基板載置ステージ73は、ベースプレート75上に、相互に平行に配設した3条の突条76により、上段及び下段にそれぞれ2枚の基板Aを棚板状に載置できるようになっている。すなわち、3条の突条76には、それぞれ上下に内向きの受け部(図示省略)が突出形成されており、この受け部により上段に2枚の未処理基板Aaを載置する前後一対の第1載置部77が、下段に2枚の処理基板Abを載置する前後一対の第2載置部78が構成されている。すなわち、供給側マガジン7aから移載される未処理基板Aaは第1載置部77に載置され、各チャンバ2のトレイ27から移載される処理基板Abは第2載置部78に載置される。
【0037】
基板Y動装置72は、後述する基板昇降装置71の昇降ブロック85に取り付けられており、減速機付きの基板Y動モータ80と、基板Y動モータ80により回転するボールネジ81を有している。図示では省略されているが、基板載置ステージ73は、基板昇降装置71の昇降ブロック85との間で前後方向に進退自在に構成(案内)されており、基板載置ステージ73の一部に螺合するボールネジ81が、基板Y動モータ80により正逆回転することにより、基板載置ステージ73が昇降ブロック85に対し、前後方向に進退する。
【0038】
基板昇降装置71は、減速機付きの基板昇降モータ83と、基板昇降モータ83により回転するボールネジ84と、ボールネジ84に螺合する雌ネジ部(図示省略)が形成された昇降ブロック85とを有している。上述のように、基板載置ステージ73及び基板Y動装置72は昇降ブロック85に支持されており、昇降ブロック85は、基板昇降モータ83を介して正逆回転するボールネジ84により、昇降する。なお、基板昇降装置71を基板Y動装置72に取り付け、基板昇降装置71で基板載置ステージ73を昇降させ、基板Y動装置72で基板昇降装置71及び基板載置ステージ73を前後動させるようにしてもよい。
【0039】
供給側マガジン7aから未処理基板Aaを受け取る場合には、供給側マガジン7aの該当する未処理基板Aaの位置に、基板載置ステージ73の第1載置部77が合致するように、基板昇降装置71及び基板Y動装置72を駆動する。具体的には、基板載置ステージ73をホーム位置から後退及び上昇させ、先ず一方の第1載置部77を該当する未処理基板Aaに位置合わせし、さらに基板載置ステージ73の後退(前進)により、他方の第1載置部77を該当する次の未処理基板Aaに位置合わせする。なお、詳細は後述するが、供給側マガジン7aは昇降するようになっており、未処理基板Aaの移載高さ位置(レベル)は、特定の位置に設定されている。
【0040】
また、処理基板Abを排出側マガジン7bに受け渡す場合には、同様に第2載置部78の2枚の処理基板Abを、それぞれ排出側マガジン7bの該当する収容位置に位置合わせする。この場合も、排出側マガジン7bは昇降するようになっており、処理基板Abの移載高さ位置(上記の移載高さ位置とは異なるが)は、特定の位置に設定されている。なお、基板載置ステージ73に対し供給側マガジン7a及び排出側マガジン7bは、その左右両側に近接して配置されているため(図示では離れているが)、基板Aの移載に際し基板載置ステージ73を左右方向に移動させる必要はない。
【0041】
一方、未処理基板Aa及び処理基板Abをチャンバ2との間でやりとりする場合には、先ず基板昇降装置71及び基板Y動装置72を駆動して、トレイ27上に収容配置された処理基板Abと第2載置部78を位置合わせし、2枚の処理基板Abを第2載置部78に同時に受け取る(詳細は後述する)。次に、基板載置ステージ73をわずかに下降させ、第1載置部77の未処理基板Aaとトレイ27の突条171の受け溝172とを位置合わせし、2枚の未処理基板Aaをトレイ27の突条171の受け溝172に受け渡す。なお、この場合も、基板載置ステージ73に対し、両チャンバ2は、その左右両側に近接して配置されているため(図示では離れているが)、基板Aの移載に際し基板載置ステージ73を左右方向に移動させる必要はない。
【0042】
マガジン側移載機構14は、未処理基板Aaを供給側マガジン7aから基板搬送機構12に送り出す供給側シリンダ91と、処理基板Abを基板搬送機構12から排出側マガジン7bに送り込む排出側シリンダ92とを有している。供給側シリンダ91は図外の機台に取り付けられており、そのピストンロッド94により、該当する未処理基板Aaの端を押して、これを供給側マガジン7aから基板搬送機構12に送り出す。
【0043】
排出側シリンダ92は、図外の機台に取り付けられ、マガジン供給部8及びマガジン排出部9間に亘って延在するシリンダ本体95と、シリンダ本体95により左右方向に移動する送り爪装置96とを有している。送り爪装置96は、ハウジング内にモータ等のアクチュエータを収容するとともに、アクチュエータにより上下動する送り爪97を有している。アクチュエータにより送り爪97を所定の下動位置に移動させ、シリンダ本体95により送り爪装置96を図示左方に移動させることにより、送り爪97が処理基板Abの端を押して、これを基板搬送機構12から排出側マガジン7bに送り込む。
【0044】
供給側シリンダ91のピストンロッド94の高さ位置及び排出側シリンダ92の送り爪97の高さ位置は、上記の移載高さ位置に設定され、且つ、ピストンロッド94側の移載高さ位置と送り爪97の移載高さ位置とは、基板載置ステージ73の第1載置部77と第2載置部78との間の段差分の差を有している。このため、基板載置ステージ73の第1載置部77と第2載置部78を、それぞれ両移載高さ位置に位置合わせしておいて、先ず排出側シリンダ92を駆動することで、処理基板Abが第2載置部78から排出側マガジン7bに送り込まれ、次に供給側シリンダ91を駆動すれば、未処理基板Aaが供給側マガジン7aから第1載置部77に送り出される。もっとも、基板載置ステージ73、供給側マガジン7a及び排出側マガジン7bは昇降可能であり、かつ送り爪97も上下動可能に構成されているため、必ずしも上記のように移載高さ位置を設定する必要はない。
【0045】
なお、詳細は後述するが、供給側マガジン7aから送り出されるべき任意の1枚の未処理基板Aaの選択、及び処理基板Abが送り込まれるべき排出側マガジン7bの任意の1つの収容位置(何段目か)の選択は、マガジン供給部8において供給側マガジン7aを昇降させること、及びマガジン排出部9において排出側マガジン7bを昇降することで行われる。
【0046】
チャンバ側移載機構13は、一対のチャンバ2、2間に亘って左右方向に延在するガイドケース101と、ガイドケース101の一方の端に取り付けられた減速機付きのX動モータ102と、X動モータ102により回転するボールネジ103と、ボールネジ103により左右方向に移動する移載爪装置104とを有している。移載爪装置104は、ハウジング内にモータ等のアクチュエータを収容するとともに、アクチュエータにより上下動する移載爪105を有している。
【0047】
移載爪105の先端は二股に形成されており、トレイ27と基板搬送機構12との間で、2枚の基板Aを同時に移載可能に構成されている。移載爪装置104は、ハウジングの部分でガイドケース101により左右方向の移動をガイドされており、X動モータ102を介してボールネジ103が正逆回転することにより、移載爪装置104はガイドケース101に沿って左右方向に移動する。また、アクチュエータの正逆駆動により、移載爪105が上下動する。
【0048】
基板搬送機構12が第1載置部77に未処理基板Aaを載置してチャンバ2に臨むと、X動モータ102が駆動されて移載爪装置104をトレイ27の端位置に移動させ、続いて移載爪装置104が駆動されて移載爪105をトレイ27の上面位置まで下動させる。次に、X動モータ102が駆動されて移載爪装置104を基板搬送機構12側に移動させる。これにより、移載爪105がトレイ27上に収容配置された2枚の処理基板Abを押すようにして移動させ、処理基板Abを基板搬送機構12の第2載置部78に受け渡す。次に、基板載置ステージ73をわずかに下降させて、第1載置部77の未処理基板Aaとトレイ27の突条171の受け溝172とを位置合わせした後、移載爪装置104をトレイ27側に移動させることにより、移載爪105が2枚の未処理基板Aaを第1載置部77からトレイ27の突条171の受け溝172に受け渡す。なお、移載爪105を二股とせず、基板Aを1枚ずつ移載させる構造であってもよい。
【0049】
マガジン供給部8は、複数個の供給側マガジン7aを載置可能な供給側マガジン載置台111と、供給側マガジン載置台111から供給された供給側マガジン7aを昇降させる供給側昇降装置112と、供給側マガジン7aを供給側マガジン載置台111から供給側昇降装置112に送り込む供給側マガジンシリンダ113とを有している。一方、供給側マガジン7aは、複数段に亘って基板Aを棚板状に収容できるように、両側壁にそれぞれ複数の受け部が形成されている。そして、このように構成された供給側マガジン7aは、未処理基板Aaを収容した状態で、前面を基板搬送機構12側に向けて配設されている。なお、排出側マガジン7bは、この供給側マガジン7aと全く同一のものである。
【0050】
供給側マガジンシリンダ113は、供給側昇降装置112の供給側マガジン7aが空になったときに、そのピストンロッド115により、供給側マガジン載置台111に載置されている複数個の供給側マガジン7aを順に送り込んで、新たに供給側マガジン7aを供給側昇降装置112に供給する。なお、供給側マガジン載置台111に新たに投入される供給側マガジン7aは、ピストンロッド115が後退した状態で、供給側マガジン載置台111のピストンロッド115側に投入される。
【0051】
供給側昇降装置112は、減速機付きのマガジン昇降モータ116と、マガジン昇降モータ116により回転するボールネジ117と、ボールネジ117に螺合する雌ネジ部(図示省略)が形成された昇降ブロック118とを有している。未処理基板Aaを送り出す供給側マガジン7aは、昇降ブロック118に支持されており、昇降ブロック118は、マガジン昇降モータ116を介して正逆回転するボールネジ117により、昇降する。
【0052】
供給側昇降装置112に送り込まれた供給側マガジン7aは適宜昇降し、その際上記の供給側シリンダ91が、供給側マガジン7aに収容した未処理基板Aaを1枚ずつ送り出してゆく。この場合、未処理基板Aaを、供給側マガジン7aの最下段のものから順に送り出してゆくことが、好ましい。すなわち、最初に最下段の未処理基板Aaを移載高さ位置に位置合わせしてこれを送り出し、次に下から2段目の未処理基板Aaを移載高さ位置に位置合わせ(下降)してこれを送り出す。このようにして、最上段の未処理基板Aaを送り出したところで、供給側マガジン7aが空になるため、これをさらに下降させて、後述するマガジン移送部10に受け渡すようにしている。
【0053】
マガジン排出部9は、マガジン供給部8と同様に、複数個の排出側マガジン7bを載置可能な排出側マガジン載置台121と、排出側マガジン7bを昇降させる排出側昇降装置122と、処理基板Abで満杯になった排出側マガジン7bを排出側昇降装置122から排出側マガジン載置台121に送り込む排出側マガジンシリンダ123とを有している。排出側マガジンシリンダ123は、そのピストンロッド125により、満杯になった排出側マガジン7bを順次排出側マガジン載置台121に送り込んでゆく。
【0054】
排出側昇降装置122は、供給側昇降装置112と同様に、マガジン昇降モータ126と、ボールネジ127と、昇降ブロック128とを有している。処理基板Abが送り込まれる排出側マガジン7bは、昇降ブロック128に支持されており、昇降ブロック128は、マガジン昇降モータ126を介して正逆回転するボールネジ127により、昇降する。この場合、空の排出側マガジン7bは、後述するマガジン移送部10を介して供給側昇降装置112から供給される。
【0055】
そして、この場合も、排出側昇降装置122の排出側マガジン7bは適宜昇降し、その際上記の排出側シリンダ92が、排出側マガジン7bに処理基板Abを1枚ずつ送り込んでゆく。この場合には、排出側マガジン7bを間欠上昇させながら、処理基板Abを最上段から順に収容してゆくことが好ましい。なお、供給側昇降装置112及び排出側昇降装置122の各昇降ブロック118、128は、各マガジン7a、7bを載置するプレート部位118a、128aの中央が、広く「コ」字状に切り欠かれており、後述するチャック装置131が上下方向にすり抜け得るようになっている。
【0056】
マガジン移送部10は、空マガジン(空になった供給側マガジン7a)7cを受け取って把持するチャック装置131と、先端部でチャック装置131を支持する回転アーム132と、回転アーム132を基端部を中心に回転させる減速機付きの回転モータ133とを有している。回転モータ133は、図外の機台に固定されており、回転アーム132を水平面内において角度180度、往復回転(回動)させ、チャック装置131に把持した空マガジン7cをマガジン供給部8からマガジン排出部9に移送する。チャック装置131は、上面に空マガジン7cが載置されるハウジング135と、ハウジング135内に収容したシリンダ(図示省略)と、ハウジング135の上面から突出しシリンダにより離接方向に相互に移動する一対のチャック136とを有している。
【0057】
一対のチャック136を離間する方向に開いておいて、供給側昇降装置112に臨ませ、この状態で、供給側昇降装置112に載置されている空マガジン7cを下降させると、昇降ブロック118のプレート部位118aがチャック136を上側から下側にすり抜けたところで、空マガジン7cがハウジング135の上面に載る。これにより、空マガジン7cが供給側昇降装置112からマガジン移送部10に受け渡される。ここで、一対のチャック136を閉じるようにして、空マガジン7cを把持する。空マガジン7cがチャック装置131に不動に把持されたら、回転アーム132を回動させて空マガジン7cを排出側昇降装置122に臨ませる。
【0058】
このとき、排出側昇降装置122の昇降ブロック128には排出側マガジン7bは無く、また、昇降ブロック128は下降位置にある。空マガジン7cが排出側昇降装置122に臨んだら、チャック装置131による把持状態を解除し、昇降ブロック128を上昇させる。昇降ブロック128が上昇し、そのプレート部位128aがチャック136を下側から上側にすり抜けると、昇降ブロック128が空マガジン7cを自動的に受け取ってそのまま上昇する。なお、マガジン移送部10により、マガジン供給部8からマガジン排出部9に移送された空マガジン7cは、マガジン排出部9で排出側マガジン7bとして利用されるが、空マガジン7cは回転して移送されるため、その前部が搬入・搬出機構6側に向いた姿勢で、マガジン排出部9に受け渡される。このため、移送の前後で別の装置により空マガジン7cの姿勢を変える必要がない。
【0059】
なお、搬入・搬出機構6、マガジン供給部8、マガジン排出部9及びマガジン移送部10におけるモータやシリンダ等のアクチュエータは制御装置に接続され、制御装置により総括的に制御される。ここで、図7を参照して、各部の動作を順を追って説明する。
【0060】
同図において、左側のチャンバ2aは基板Aの洗浄工程にあり、右側のチャンバ2bは基板Aの搬入・搬出工程にあるものとする。右側のチャンバ2bで洗浄済みの基板(処理基板Ab)Aが外部に引き出される動きに合わせて、搬入・搬出機構6は、マガジン供給部8から未処理基板Aaを受け取って、右側のチャンバ2bの近傍まで搬送する。ここで、搬入・搬出機構6は、右側のチャンバ2bから処理基板Abを受け取り、続いて未処理基板Aaを右側のチャンバ2bに受け渡す。
【0061】
右側のチャンバ2bは、未処理基板Aaを受け取ると、これを内部に持ち込む。同時に、搬入・搬出機構6は、処理基板Abを搬送してマガジン排出部9に受け渡す。右側のチャンバ2bが未処理基板Aaを内部に持ち込むと、真空リレー33が右側のチャンバ2bに切り替えられて右側のチャンバ2bが洗浄工程に移行する。これと同時に、左側のチャンバ2aは、窒素ガスによるリークを経て搬入・搬出工程に移行する。
【0062】
そして今度は、左側のチャンバ2aで処理基板Abが引き出される動きに合わせて、搬入・搬出機構6は、マガジン供給部8から未処理基板Aaを受け取って、左側のチャンバ2aに搬入する。そして、真空リレー33が左側のチャンバ2aに切り替えられて左側のチャンバ2aが洗浄工程に移行する。一方、右側のチャンバ2bは、窒素ガスによるリークを経て搬入・搬出工程に移行する。
【0063】
すなわち、左右のチャンバ2a、2bは交互に搬入・搬出工程と洗浄工程とを繰り返し、これに合わせて搬入・搬出機構6は左右のチャンバ2a、2bに対し、未処理基板Aa及び処理基板Abを交互に搬入・搬出する。
【0064】
洗浄工程の詳細について、洗浄方式(RIE方式、PE方式)及びプラズマ反応ガス(Ar、O2)の種別で場合分けして、以下に説明する。先ず、RIE方式で基板Aをプラズマ洗浄する場合は、制御装置の操作入力部でRIE方式を指定する。すると、真空リレー156が高周波電源31側に切り替えられ、真空リレー157がグランド電位側に切り替えられて、下部電極28が高周波電源31に接続され、上部電極29がグランド電位に接地される。次いで、チャンバ2内に基板Aが搬入されると、真空吸引装置5が駆動されてチャンバ2内が真空状態にされ、ガス導入管43を介してガス導入孔153内にプラズマ反応ガスが供給される。
【0065】
ガス導入孔153に供給されたプラズマ反応ガスは、プレート154のガス噴出孔155を介してチャンバ2内に噴出する。そして、高周波電源31が駆動されて、下部電極28に高周波電力が供給されると、チャンバ2内の上部電極29と下部電極28との間にプラズマが発生する。
【0066】
ここで、プラズマ反応ガスとして酸素を供給した場合は、プラズマ中にラジカルが生成し、このラジカルがトレイ27に非接触状態で収容配置された基板Aの上面のみならず下面にも回り込み、基板Aの表面に衝突してその上下面全域を改質し、基板Aを洗浄する。ただし、基板Aにボンディング等の金属間接合用の銅パッドや銅フレームのような酸化性に敏感な部分が形成されていると、酸素によってその部分の酸化が促進され、期待する洗浄効果が得られないおそれがあるので、基板Aを事前に選定することが重要である。
【0067】
一方、プラズマ反応ガスとしてアルゴンガスを供給した場合は、プラズマ中にArラジカル及び陽Arイオンが生成し、そのArラジカルが上述した酸素の場合と同様に、基板Aの表面に衝突してその上下面全域を改質するとともに、その陽Arイオンが負に帯電した下部電極28に引き寄せられて基板Aの上面に衝突し、その上面の不純物を削り取り、基板Aを洗浄する。この場合、基板Aに銅パッド等の酸化性に敏感な部分が形成されていてもその部分の酸化を防止でき、有効な洗浄効果が得られる反面、Arラジカルと陽Arイオン相互の洗浄進行速度の違いや、基板Aが収容配置されるシース領域の影響から、実際には、陽Arイオンによる洗浄作用が支配的となり、基板Aの上面は優先的に洗浄処理が施されるが、他方基板Aの下面は洗浄処理がほとんど施されないことになる。従って、基板Aの上下両面を洗浄するには、基板Aを反転して改めて下面を洗浄することが必要となる。
【0068】
また、PE方式で基板Aをプラズマ洗浄する場合は、制御装置の操作入力部でPE方式を指定する。すると、真空リレー156がグランド電位側に切り替えられ、真空リレー157が高周波電源31側に切り替えられて、下部電極28がグランド電位に接地され、上部電極29が高周波電源31に接続される。次いで、チャンバ2内に基板Aが搬入されると、真空吸引装置5が駆動されてチャンバ2内が真空状態にされ、ガス導入管43を介してガス導入孔153内にプラズマ反応ガスが供給される。
【0069】
ガス導入孔153に供給されたプラズマ反応ガスは、プレート154のガス噴出孔155を介してチャンバ2内に噴出する。そして、高周波電源31が駆動されて、上部電極29に高周波電力が供給されると、チャンバ2内の上部電極29と下部電極28との間にプラズマが発生する。
【0070】
ここで、プラズマ反応ガスとして酸素を供給した場合は、上述したRIE方式の場合と同様に、プラズマ中に生成したラジカルが基板Aの表面に衝突してその上下面全域を改質し、基板Aを洗浄する。この場合、基板Aがシース領域に収容配置されないため、RIE方式の場合よりも、そのラジカルの洗浄作用が有効に寄与する。ただし、RIE方式の場合と同様に、酸素による酸化促進性に対しての配慮はやはり必要である。
【0071】
一方、プラズマ反応ガスとしてアルゴンガスを供給した場合は、上述したRIE方式の場合と同様に、プラズマ中にArラジカル及び陽Arイオンが生成する。この場合、そのArラジカルは上述した酸素の場合と同様に、基板Aの表面に衝突してその上下面全域を改質し、基板Aを洗浄するが、他方の陽Arイオンは負に帯電した上部電極29に引き寄せられるため、基板Aには衝突せず、陽イオンの洗浄作用は実質的には寄与しないことになる。従って、Arラジカルの洗浄作用によって基板Aの上下面を同時にかつ同等に洗浄処理でき、もちろん酸化促進性に対しての配慮が不要で有効な洗浄効果が得られる。
【0072】
なお、チャンバ2内に噴出したプラズマ反応ガスは、各基板Aの上面に当たった後に各基板Aの全周方向に拡散し、トレイ27、下部電極28の各側面に沿って下方に流れ、図5に矢印で示す如く、整流部材158の各側面に開口した通路160に流入し、凹部161、ガス排出孔159を介して真空配管62に流入する。
【0073】
このように、トレイ27の上方に配されたガス噴出孔155から各基板Aの上面に向けてプラズマ反応ガスを噴出させるとともに、チャンバ本体21の底壁に設けられたガス排出孔159を介してプラズマ反応ガスを吸引するようにしたことにより、各基板Aとガス噴出孔155及びガス排出孔159との距離をほぼ等しくすることができ、全ての基板Aに対してガス噴出孔155によるシャワー効果及びガス排出孔159による吸引効果を全面に亘ってほぼ均一に与えることができる。また、これはPE方式でアルゴンガスを供給する場合に特に好適であって、各基板Aの下面にもプラズマ反応ガス(ラジカル)がより効果的に回り込み、その基板Aの上下面の両面で洗浄度合いを同等にすることもできる。ちなみに発明者らは、その洗浄度合いについてぬれ性の評価を行い、特にPE方式のアルゴンガス供給の場合に他の場合よりも優れた顕著な効果を得た。
【0074】
なお、上述した実施形態では、各チャンバ2で同じ処理を行うようにしているが、一方のチャンバ2でRIE処理を行い、他方のチャンバ2でPE処理を行うようにしてもよい。また、上述した実施形態では、一回の洗浄工程で二枚の基板を同時処理するようにしているが、一枚の基板を処理するようにしてもよく、三枚以上の基板を同時処理するようにしてもよい。更に、上述した実施形態では、上部電極と下部電極をそれぞれ真空リレーを用いて高周波電源またはグランド電位に選択的に接続できるようにすることにより、自動的にRIE処理とPE処理を切り替えるようにしているが、これに代えて、上部電極と下部電極をそれぞれコネクタを用いて高周波電源またはグランド電位に選択的に接続できるようにすることにより、マニュアルでRIE処理とPE処理を切り替えるようにしてもよい。この場合、装置構成が簡素化するため、製造コストが安価になる。
【0075】
その他、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。例えば、トレイを用いることなく基板を下部電極上に直接近接配置しても構わない。また、プラズマ空間を形成する一対の電極が上部電極と下部電極とのように上下方向に対向配置される場合に限らず、左右方向に対向配置された左側電極と右側電極とであっても構わない。ただし、この場合は、プラズマ空間において基板を左側電極と右側電極のいずれか一方に近接配置することになる。また、各基板がトレイと非接触状態で近接して収容配置される限り、単に一対の突条の上面で各基板の両側部が支持されることでもよい。更に、プラズマ反応ガスとしてアルゴンガスと酸素との混合ガスを適用しても構わないが、その際は、基板が酸化性に敏感な部分をどの程度有しているかを考慮して適宜設定することになる。
【0076】
【発明の効果】
以上説明した通り本発明のプラズマ洗浄装置によれば、高周波電源と、気密状態に密閉可能なチャンバと、このチャンバ内で上下方向に対向配置され、相互の間にプラズマ空間を形成すべく前記高周波電源に接続された上方側の第1の電極、及びグランド電位に接地された下方側の第2の電極と、前記プラズマ空間に対し水平方向に出入り自在に取り付けられ、収容された状態で前記第2の電極に接する導電性のトレイと、このトレイ上に設けられていて、少なくとも銅フレーム又は銅パッドが形成された被プラズマ洗浄用の基板を前記トレイに対しその近傍で非接触状態にすべく前記基板の両側部を支持する一対の突条と、前記チャンバ内にプラズマ洗浄用のアルゴンガスを供給するガス供給手段と、を備えているので、形式としては実用性の高いPE方式となり、主としてラジカルによって洗浄が行える。ここで、プラズマ反応ガスとしてアルゴンガスを用いるため、基板に銅パッド等の酸化性に敏感な部分が形成されていてもその部分の酸化を防止でき、有効な洗浄効果が得られる。また、基板が第2の電極と直接接触しないよう配置されているので、ラジカルが基板の両面に良好に回り込むようになって、その両面の洗浄度合いが同等になるし、しかも、その両面を同時に処理できることから効率がよい。
【0078】
また、本発明のプラズマ洗浄方法によれば、上記のプラズマ洗浄装置を用いて、少なくとも銅フレーム又は銅パッドが形成された基板を洗浄するプラズマ洗浄方法において、前記基板が支持されて気密状態に密閉された前記チャンバ内に前記ガス供給手段からアルゴンガスを供給するとともに、前記高周波電源から前記第1の電極に高周波電力を供給して、アルゴンガスのプラズマを発生させ、該プラズマ中に生成したラジカルが前記基板の表面を改質することにより前記基板の両面を洗浄するようになっているので、銅パッド等が酸化することなく両面の洗浄度合いが均等で良好な基板を効率よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のプラズマ洗浄装置の全体構造(上半部)を示した斜視図である。
【図2】 本発明のプラズマ洗浄装置の全体構造(下半部)を示した斜視図である。
【図3】 本発明のプラズマ洗浄装置におけるチャンバ及びトレイの斜視図である。
【図4】 本発明のプラズマ洗浄装置におけるチャンバの断面図である。
【図5】 図4の要部拡大図である。
【図6】 本発明のプラズマ洗浄装置における整流部材の底面図である。
【図7】 本発明のプラズマ洗浄装置の動作説明図である。
【図8】 RIE方式のプラズマ洗浄の原理説明図である。
【図9】 PE方式のプラズマ洗浄の原理説明図である。
【符号の説明】
1 プラズマ洗浄装置
2 チャンバ
3 電源部
4 ガス供給装置
5 真空吸引装置
27 トレイ
28 下部電極
29 上部電極
31 高周波電源
171 突条
172 受け溝
A 基板
Claims (2)
- 高周波電源と、気密状態に密閉可能なチャンバと、このチャンバ内で上下方向に対向配置され、相互の間にプラズマ空間を形成すべく前記高周波電源に接続された上方側の第1の電極、及びグランド電位に接地された下方側の第2の電極と、前記プラズマ空間に対し水平方向に出入り自在に取り付けられ、収容された状態で前記第2の電極に接する導電性のトレイと、このトレイ上に設けられていて、少なくとも銅フレーム又は銅パッドが形成された被プラズマ洗浄用の基板を前記トレイに対しその近傍で非接触状態にすべく前記基板の両側部を支持する一対の突条と、前記チャンバ内にプラズマ洗浄用のアルゴンガスを供給するガス供給手段と、を備えたプラズマ洗浄装置。
- 請求項1に記載のプラズマ洗浄装置を用いて、少なくとも銅フレーム又は銅パッドが形成された基板を洗浄するプラズマ洗浄方法において、
前記基板が支持されて気密状態に密閉された前記チャンバ内に前記ガス供給手段からアルゴンガスを供給するとともに、前記高周波電源から前記第1の電極に高周波電力を供給して、アルゴンガスのプラズマを発生させ、該プラズマ中に生成したラジカルが前記基板の表面を改質することにより前記基板の両面を洗浄することを特徴とするプラズマ洗浄方法。
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