JP3884561B2 - プラズマクリーニング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体チップ、小物機械電気部品等の表面に成膜、エッチング、清浄等のプラズマを用いた各種処理を施すプラズマ表面処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体基板や小物機械電気部品、光学プラスチック部品等の表面に導体層や絶縁層を成膜・積層したり、逆に、半導体基板の表面や積層物の表面をエッチングするために、プラズマを用いて処理することは現在極めて広く行なわれている。また、近年では基板等の表面の汚れを除去するための洗浄にも、従来のフロン等を用いたウェット処理に代わってプラズマによるドライクリーニング処理が広く用いられるようになりつつある。
【0003】
プラズマによる表面処理の原理は次のように説明される。すなわち、高周波電源(RF電源)に接続された電極(RF電極)及びアースされた電極(接地電極)から成る一対の電極を密閉可能な反応室内に配置し、該反応室から空気を十分に除去する。この状態で、反応室内に反応ガス(Ar、O2等)を供給しつつ、RF電源を起動することによりRF電極に高周波(通常13.56MHz)で電力を供給すると、電極間に反応ガスの低温プラズマ(陽イオン及び電子)とラジカル種が生成される。ここで、イオンと電子の易動度の違いにより、電子はRF電極に捕集されて該RF電極を相対的に負に帯電させる(自己バイアス)一方、ラジカル種及び陽イオンは容易には電極に捕集されずにプラズマ中を運動する。このプラズマ中に被処理物を配すると、プラズマ中で運動するラジカル種や陽イオンが被処理物の表面に衝突又は接触する。こうして、被処理物の表面処理(クリーニング、エッチング、成膜等)が行なわれるのである。
【0004】
プラズマ処理の方法にはいくつかの形態(モード)があるが、そのうちの2つ、反応性イオンエッチング(RIE)モード及びプラズマエッチング(PE)モードについて図6及び図7を参照しながら説明する。なお、図6及び図7において、符号61はRF電源、符号62はRF電極、符号63は接地電極、符号64はコンデンサ、符号65は被処理物を示す。
【0005】
PEモードでは、図6に示すように、板状に成形された接地電極63の上に被処理物65を載置した状態でプラズマを発生させる。すると、陽イオンは負に帯電したRF電極62により引き寄せられるため、被処理物65の表面には主としてラジカル種が衝突又は接触することになる。一方、RIEモードでは、図7に示すように、板状に成形されたRF電極62の上に被処理物65を載置した状態で、上記のように電極間にプラズマを発生させる。すると、負に帯電したRF電極62により引き寄せられる陽イオンが被処理物65の表面に衝突する。RIEモードとPEモードと比較すると、RIEモードはイオン衝撃による物理的で高速な表面処理に適している。一方、PEモードは低速でラジカル種による化学的で穏やかな表面処理に適している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
図6又は図7に示したように電極板上に被処理物を載置する構成のプラズマ表面処理装置は、電極板上に一度に載置可能な被処理物の数が少ない。このため、多数の被処理物を処理するには、被処理物の搬入、反応室の真空引き、プラズマ処理、反応室の開放、被処理物の搬出、という一連の行程を繰り返さなければならず、時間がかかり、生産性が著しく低くなるという問題が生じる。
【0007】
もちろん、階層的に配置された複数の棚板を備える棚(以下、マガジンと呼ぶ)を用いれば、一度に多数の被処理物を反応室内に収納してプラズマに晒すことは可能である。しかし、特にRIEモードで処理を行なう場合、被処理物の近くの空間における陽イオン密度が該被処理物とRF電極との距離に依存するため、棚板毎に表面処理の仕上がり具合が異なってくるという問題がある。また、従来のマガジンは金属製の外壁を備えており、この外壁がプラズマ分子のマガジン内への流入を妨げてしまうという問題もある。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、スペース効率が良く、多数の被処理物を一度に且つ均一に処理することができるとともに、反応室内への被処理物のセットや反応室からの被処理物の取り出しを容易に且つ短時間で行なうことのできるプラズマ表面処理装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために成された本発明に係るプラズマ表面処理装置は、
a)高周波電源と、
b)導電性材料から成る複数の棚板及び該複数の棚板を階層的に支持する外枠とを含むマガジンと、
c)前記マガジンを内部に収納した状態で密閉可能な反応室と、
d)前記反応室内に収納された前記マガジンの棚板を前記高周波電源に電気的に接続する電気接続手段と、
e) 前記反応室の天井及び側面を覆うように内装された接地電極と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に係るプラズマ表面処理装置に用いられるマガジンは、被処理物を載置するための複数の棚板が外枠により階層的に支持された構造を有する。このマガジンの棚板は導電性材料から成る。マガジンが反応室に収納されたのち、全ての棚板は電気接続手段により高周波電源と接続される。このように反応室に収納されたマガジンに高周波電力を供給すると、棚板間の空間においてプラズマが生成される。このプラズマにより、各棚板上に載置された被処理物の表面が処理されるのである。
【0011】
前記電気接続手段は、例えば、前記外枠を導電性材料により作成するとともに、前記反応室の床面に前記高周波電源に接続された電極を配設し、前記マガジンを前記反応室の所定位置に載置すると前記外枠と前記電極とが電気的に接続される、という構成とすればよい。
【0012】
前記マガジンの好ましい形態としては、前記外枠を直方体状に構成し、その側面に外部のプラズマを内部へ導入するための開口を設けたものが挙げられる。このようなマガジンは、作成が容易であり、しかも、マガジンの外部で生成されたプラズマが開口を通じて内部へ流入しやすいという長所がある。
【0013】
本発明に係るプラズマ表面処理装置において、前記マガジンは前記反応室から取り出し可能とすることが好ましい。このようなプラズマ表面処理装置は、小さい被処理物を多数処理するだけでなく、マガジンを反応室から取り出せば大きな被処理物の処理にも対応できる。また、被処理物に対する処理工程がプラズマ表面処理を含む複数の処理から成る場合、マガジンに被処理物を載置したまま一の処理から次の処理へ移ることができるため、処理毎に多数の被処理物を個別に移動させるという面倒な作業が不要となり、作業効率が高まる。
【0014】
本発明に係るプラズマ表面処理装置において、前記棚板は前記外枠から取り外し可能とすることが好ましい。このようにすると、被処理物の棚板上への載置及び棚板からの取り出しが容易となる。また、このプラズマ表面処理装置は、全ての棚板を取り外すことにより、より大きな被処理物の処理にも対応できる。
【0015】
【発明の効果】
以上のような本発明に係るプラズマ表面処理装置によれば、多数の被処理物を一括処理できるため、処理効率が高まる。また、反応室からマガジンを取り出し可能とした場合、及び/又は、マガジンから棚板を取り外し可能とした場合には、反応室への被処理物の搬入や、反応室からの被処理物の搬出が容易となるだけでなく、より大きな被処理物の処理にも、本発明のプラズマ表面処理装置を使用できる。
【0016】
【実施例】
図1は本発明の一実施例であるプラズマ表面処理装置10を示す斜視図である。このプラズマ表面処理装置10は、直方体形状を有する処理ユニット11、及びそれと同一の筐体内に設けられた制御ユニット12から成る。処理ユニット11の内部には反応室13が設けられている。反応室13の床面にはRF電極14が埋設されており、その上に後述するマガジン15が載置されている。処理ユニット11の前面に備えられた扉16を図のように開くと、マガジン15を反応室13から取り出すことができる。また、扉16を閉じると反応室13は気密な閉空間となる。一方、制御ユニット12には、反応室13内のRF電極14にプラズマ発生用高周波電力(通常、13.56MHz)を供給するためのRF電源、反応室13から空気を除去するための真空ポンプ、図示せぬガス源から供給される反応ガス(例えばAr)を反応室13内へ送るためのガス供給器、装置全体の動作を制御するための制御回路等が収納されている。
【0017】
図2はマガジン15の斜視図である。マガジン15は、矩形の底板155の4隅に立設された4本の支柱156により天板157を支持させた構造を有する直方体形状の外枠151と、5枚の棚板152とから成る。外枠151の右側面又は左側面を構成する一対の支柱156、156の間には、棚板152を支持するためのレール153が、各側面に5段ずつ設けられている。棚板152は、同じ高さにある一対のレール153、153により摺動可能に支持されている。なお、図示しないが、棚板152をレール153上の所定位置で固定するための固定手段(例えば、ネジ、クランパ)を外枠151又はレール153の適宜箇所に設けることが好ましい。外枠151及び棚板152はステンレス(SUS)やアルミニウムのような導電性材料により作成されている。
【0018】
図3は処理ユニット11の構成及びプラズマ表面処理に関連する電気系の構成を示す図である。反応室13内には、天井面及び側面(ただし、図1の扉16が取り付けられた側を除く)を覆うように内装された接地電極20が備えられている。反応室13の床に埋設されたRF電極14はコンデンサ64を介してRF電源61と接続されている。接地電極20とRF電極14とは絶縁部材21により絶縁されている。一方、マガジン15は底板155においてRF電極14と接触しているため、両者の間で電気の導通が可能である。なお、電気の導通をより確実にするために、例えば、RF電極14の上面及び底板155の底面に接続端子を設けるようにしてもよい。マガジン15の各棚板152にはそれぞれ被処理物22が載置されている。また、処理ユニット11には、反応室13内へ反応ガスを供給するためのガス入口111及び、反応室13内のガスを外部へ排出するためのガス出口112が備えられている。
【0019】
以上のような処理ユニット11において、被処理物22の表面処理を行なうには、ガス出口112から反応室13内の空気を除去した後、ガス入口111から反応室13内へ反応ガスを供給しつつ、RF電源61からRF電極14へ高周波電力を供給する。すると、その電力は、RF電極14から、底板155、支柱156及びレール153を通じて各棚板152に供給される。すなわち、全ての棚板152はRF電極14と同様にガスを電離させる電極として機能する。そして、棚板152に載置された全ての被処理物22は、RIEモードのプラズマ表面処理を同時に受ける。かくして、複数の被処理物の表面処理が一括して行なわれるのである。
【0020】
また、上記マガジン15の外枠151は側壁面を有していないため、マガジン15とRF電極14との間で生成されたプラズマは容易にマガジン15内へ流れ込む。これにより、処理効率は更に高められるのである。
【0021】
反応室13内でプラズマ放電を効果的に発生させるためのパラメータには様々なものが考えられるが、反応室13及びマガジン15の寸法や形状について言えば、マガジン15の外側面と反応室13の内壁(すなわち接地電極20の表面)との間の距離(以下、A寸法と呼ぶ)や、各棚板152間の距離(又はマガジン15の天井と最も上の棚板152との間の距離。以下、B寸法と呼ぶ)が、プラズマ放電の発生に影響を与える。図4はA寸法及びB寸法の設定とプラズマ放電の発生との関係を調べた実験結果を示すグラフである。なお、この実験は、反応室13内のガス圧力が89mTorr、RF電源の出力が50Wという条件下で行なった。
【0022】
図4のグラフを見ると、放電可能領域はB寸法が20mm以上の範囲に含まれている。このことから、ガス圧力及び電源出力が与えられた場合、それに応じてプラズマ放電を発生させることのできるB寸法の最小値が決定されると考えられる。一方、B寸法の値を大きくすると、マガジン15に搭載可能な棚板152の数がそれだけ少なくなり、スペース利用効率が低下する。以上のことを考慮すると、ガス圧力及び電源出力が予め決まっている場合は、B寸法を上記最小値に設定することが好ましい。
【0023】
以上、本発明に係るプラズマ表面処理装置の一実施例について説明したが、実施例は上記のものに限られないことは言うまでもない。例えば、図1のプラズマ表面処理装置では、反応室13への被処理物の搬入及び反応室13からの被処理物の搬出は、使用者が扉16を開いて手作業でこれを行なうことを想定していたが、このような被処理物の搬入及び搬出を自動的に行なう装置(以下、自動移送装置と呼ぶ)を更に備えるようにすれば、処理効率がより高まる。このような自動移送装置を備えるプラズマ表面処理装置に好適な処理ユニットの一例について、図5を参照しながら以下に説明する。
【0024】
図5に示した処理ユニット11Aは、接地電極20の内装された蓋部115と、RF電極14の埋設された底部116に分割されている。蓋部115を底部116に被せ、所定の固定手段で両者を完全に結合させると、内部に気密な反応室13が形成される。蓋部115は図示せぬ蓋駆動機構により上下方向に駆動される。蓋駆動機構が蓋部115を駆動する動作は、図示せぬ自動移送装置による被処理物22の搬入/搬出動作と連動させる。すなわち、まず、自動移送装置が被処理物22を反応室13へ搬入するとき、蓋駆動機構が蓋部115を、蓋部115の下端がマガジン15の上端とほぼ同じ高さに来るまで、上昇させる。被処理物22の搬入が完了したら、蓋駆動機構が蓋部115を下降させ、所定の結合手段により蓋部115を底部116と結合させる。この状態で、先に説明したようなプラズマ表面処理が行なわれる。プラズマ表面処理が終了した後、蓋駆動機構は蓋部115を再び前記高さまで上昇させ、自動移送装置は被処理物22を反応室13から搬出する。
【0025】
上記のような処理ユニット11Aでは、蓋部115を上昇させることにより、被処理物22の搬入及び搬出を一方向(例えば図5では左から右)に、スムーズに行なうことができる。このように被処理物22の移送経路が単純化される結果、自動移送装置の構成を単純化することが可能となり、ひいてはプラズマ表面処理装置全体の製造コストも低下するという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例であるプラズマ表面処理装置を示す斜視図。
【図2】 マガジンの斜視図。
【図3】 処理ユニットの構成及びプラズマ表面処理に関連する電気系の構成を示す図。
【図4】 A寸法及びB寸法の設定とプラズマ放電の発生との関係を調べた実験結果を示すグラフ。
【図5】 処理ユニットの変形例を示す図。
【図6】 反応性イオンエッチングモードの原理を説明するための図。
【図7】 プラズマエッチングモードの原理を説明するための図。
【符号の説明】
10…プラズマ表面処理装置
11、11A…処理ユニット
12…制御ユニット
13…反応室
14、62…高周波電極(RF電極)
15…マガジン
151…外枠
152…棚板
153…レール
20、63…接地電極
22、65…被処理物
61…高周波電源(RF電源)

Claims (3)

  1. a)高周波電源と、
    b)被処理物を載置するための導電性材料から成る複数の棚板及び該複数の棚板を階層的に支持する外枠を含むマガジンと、
    c)前記マガジンを内部に収納した状態で密閉可能な反応室と、
    d)前記反応室内に収納された前記マガジンの棚板を前記高周波電源に電気的に接続する電気接続手段と、
    e)前記反応室の天井及び側面を覆うように内装された接地電極と、
    を備えることを特徴とするプラズマクリーニング装置。
  2. 前記マガジンは前記反応室から取り出し可能であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマクリーニング装置。
  3. 前記棚板は前記外枠から取り外し可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマクリーニング装置。
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