JP4026448B2 - インジェクタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関等の燃料噴射に用いられるインジェクタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車用ディーセルエンジン等の内燃機関においては、燃焼室に直接燃料を噴射供給するインジェクタを備えた直噴式のものが実用化されている。こうした直噴式の内燃機関では、燃焼室内の圧力に抗して燃料噴射を行わなければならないため、例えば特開2001−41125公報に示されるような高圧燃料を噴射可能なインジェクタが採用される。
【0003】
同公報に記載のインジェクタは、噴孔を開閉するように往復移動可能なニードル弁を備えている。このニードル弁は、同弁の移動方向両側に設けられた圧力制御室及び燃料溜まり室に高圧燃料を供給することで噴孔を閉じる位置に保持され、上記圧力制御室から高圧燃料を排出することで噴孔を開く位置に移動する。こうして噴孔が開かれると、燃料溜まり室内の高圧燃料が噴孔を介して内燃機関の燃焼室に噴射供給されるようになる。
【0004】
ここで、インジェクタにおける圧力制御室からの高圧燃料の排出構造について図11を参照して説明する。
同図に示されるように、圧力制御室から高圧燃料を排出するための排出通路81の途中には、同通路81を通じての高圧燃料の排出を禁止・許可すべく開閉動作する制御弁82が設けられている。この制御弁82は、通常は排出通路81を通じての高圧燃料の排出を禁止する閉弁状態に保持され、リフタ83の制御弁82側への移動に基づき開弁して上記排出通路81を通じての高圧燃料の排出を許可する。
【0005】
リフタ83は、リフタ室84内に設けられるとともに、同リフタ室84から突出して制御弁82に接触する突部83aを備えている。このリフタ83は、例えば電圧印可の有無による圧電素子の伸縮に基づき往復移動するものであって、突部83aをリフタ室84から突出させる方向に移動させることによって制御弁82を開弁するものである。
【0006】
また、リフタ室84内における突部83a側の空間は、排出通路81の一部を構成するスピル室84aとなっている。従って、リフタ83を突部83aが突出するように移動させて制御弁82を開弁させると、圧力制御室内から排出通路81を通じて排出される高圧燃料がスピル室84aを通過するようになる。
【0007】
こうして圧力制御室から高圧燃料が排出されることにより、ニードル弁に働く圧力制御室内の圧力に基づく力が燃料溜まり室内の圧力に基づく力よりも小さくなり、ニードル弁が噴孔を開く位置に移動する。そして、このニードル弁の移動により噴孔が開かれ、燃料溜まり室内の高圧燃料が噴孔を介して噴射される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、圧力制御室から高圧燃料を排出すべく制御弁82が開弁させられるときには、排出通路81における制御弁82よりも圧力制御室側の部分に存在する高圧燃料がスピル室84a内に一気に流れ込み、スピル室84a内の圧力が一瞬上昇することとなる。こうした圧力上昇に起因してリフタ83が突部83aをリフタ室84内に没入させる方向に押し戻されると、それに伴い制御弁82も閉弁側に押し戻され、排出通路81の燃料流通断面積が適正よりも小さくなり、圧力制御室から高圧燃料が排出されにくくなる。
【0009】
このように、圧力制御室からの高圧燃料の排出が適切に行えなくなると、圧力制御室内の圧力低下によるニードル弁の移動を適切に行うことが困難になる。インジェクタにおいては、ニードル弁の移動によって燃料噴射が制御されるため、上記のようにニードル弁の移動を適切に行えないときには燃料噴射量の調量精度が低下することとなる。
【0010】
これを抑制するために制御弁82を移動させるための圧電素子の伸長量を多くし、制御弁82の開弁時にスピル室84a内の圧力が一瞬上昇するとき、その圧力上昇に関係なくリフタ83を制御弁82が開弁する位置に保持できるよう、リフタ83に対しより大きな力を付与することも考えられる。ただし、上記のように圧電素子の伸長量を多くしようとすると、圧電素子の大型化が必要になるとともに、圧電素子の伸長に必要な電気エネルギも大きなものとなる。
【0011】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、高圧燃料の噴射が行われる際の燃料噴射量の調量を、インジェクタの体格を過度に大きくすることなく、且つ燃料噴射を行うのに必要なエネルギを過度に大きくすることなく、精度良く行うことのできるインジェクタを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
(1)請求項1に記載の発明は、往復移動により噴孔を開状態と閉状態との間で変更するニードル弁と、ニードル弁に対して噴孔側に設けられた燃料溜まり室と、ニードル弁に対して燃料溜まり室とは反対側に設けられた圧力制御室と、圧力制御室の燃料を排出する排出通路とを含めて構成されるものであって、燃料溜まり室及び圧力制御室のそれぞれに高圧燃料が供給されることに基づくニードル弁の移動により噴孔の閉状態が維持され、圧力制御室の高圧燃料が排出通路を介して排出されることに基づくニードル弁の移動により噴孔が開状態に維持されるとともに、噴孔が開状態のときに燃料溜まり室の高圧燃料が噴孔を介して噴射されるインジェクタにおいて、排出通路の途中に設けられて、圧力制御室の高圧燃料が排出通路を介して排出されることを許容する開弁位置と圧力制御室の高圧燃料が排出通路を介して排出されることを許容しない閉弁位置との間で移動可能な制御弁と、排出通路から分離した空間であるリフト室に設けられて、突部により制御弁を閉弁位置から開弁位置に向けて押すリフタと、制御弁とリフタ室との間に設けられて、リフタの突部をリフタ室側から制御弁側に通過させる貫通孔を有する隔壁とを備え、隔壁の貫通孔を形成する部位の内周面とリフタの突部の外周面との間のクリアランスについて、突部の移動方向におけるリフタ室側のクリアランスが排出通路の一部をなす制御弁側のクリアランスよりも小さいものに設定されることを要旨としている。
【0013】
燃料噴射を行う際には、リフタが制御弁側に移動させられる。これにより、リフタの突部が隔壁の貫通孔を貫通した状態で排出通路内に突出して制御弁を開弁し、圧力制御室から排出通路を介して高圧燃料が排出される。そして、排出される高圧燃料は、上記貫通孔の内周面と上記突部の外周面とのクリアランスを介してリフタ室に入り込もうとする。しかし、このリフタ室は排出通路と分離されており、しかも突部の移動方向におけるリフタ室側のクリアランスが排出通路の一部をなす制御弁側のクリアランスよりも小さいものに設定されているため(上記クリアランスの燃料流通面積は排出通路の燃料流通面積よりも小さくされているため)、上記高圧燃料がリフタ室に入り込んで同室における突部側の空間の圧力が上昇し、リフタが制御弁を押す側とは反対側に押し戻されることは抑制される。そして、上記圧力上昇に基づきリフタが押し戻され、それに伴い制御弁も閉弁側に押し戻されることにより、圧力制御室からの高圧燃料の排出を適切に行えなくなってニードル弁の移動に支障を来し、燃料噴射量の調量精度が低下するのを抑制することができる。従って、上記圧力上昇によりリフタの押し戻しを抑制すべく、リフタを移動させるための圧電素子等のアクチュエータを大型化しなくてもよくなる。このため、インジェクタの体格を過度に大きくすることなく、且つアクチュエータを駆動するのに必要なエネルギを過度に大きくすることなく、高圧燃料を噴射する際の燃料噴射量の調量を精度良く行うことができる。
【0014】
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインジェクタにおいて、制御弁が閉弁位置にあるときに前記制御弁側のクリアランスによって制御弁と隔壁との間に形成されるスピル室、及びリフタと隔壁との間に形成される背圧室について、これらスピル室と背圧室とが前記リフタ室側のクリアランスにより接続されることを要旨としている。
【0015】
(3)請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のインジェクタにおいて、前記隔壁の貫通孔を形成する部位は、突部との間に前記リフタ室側のクリアランスを形成する第1の部位と、突部との間に前記制御弁側のクリアランスを形成する第2の部位とを含むものであり、これら第1の部位及び第2の部位を通じてリフタ室側と制御弁側とにおける前記クリアランスの大きさの違いが維持されることを要旨としている。
【0016】
(4)請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインジェクタにおいて、排出通路は、圧力制御室の燃料を制御弁が収容される収容部に流通させる第1通路と、収容部の燃料をインジェクタの外部に流通させる第2通路とを含むものであって、制御弁が閉弁位置にあるときに第1通路と第2通路とが遮断され、制御弁が開弁位置にあるときに第1通路と第2通路とが連通されることを要旨としている。
【0017】
圧力制御室から排出通路を通じて高圧燃料を排出する際、その高圧燃料が排出通路の第2通路(収容下流部)を流れるとき、同燃料の圧力に基づく力が突部に対しリフタが制御弁を押す側とは反対側に働くこととなる。しかし、リフタの突部における第2通路(収容下流部)が通過する部分においては、高圧燃料の圧力を受ける受圧面積が小さくなることから、その圧力に基づいて突部に働く力は小さいものとなる。従って、その力に基づきリフタが制御弁を押す側とは反対側に押し戻されるのを抑制することができる。
【0018】
(5)請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のインジェクタにおいて、第2通路は、制御弁内に設けられる内部通路を含むことを要旨としている。
(6)請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のインジェクタにおいて、突部は、前記制御弁側のクリアランスに連通する開口部を含むものであり、この開口部が前記内部通路の入口として機能することを要旨としている。
(7)請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のインジェクタにおいて、制御弁は、内部通路と突部の開口部との連通が維持された状態で閉弁位置と開弁位置との間を移動することを要旨としている。
【0019】
(8)請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載のインジェクタにおいて、リフタ室は、リフタと隔壁との間に形成される背圧室を含むものであり、この背圧室が燃料充填領域と空気充填領域とを含むアキュムレータ室に接続されることを要旨としている。
燃料噴射を行うべくリフタが制御弁側に移動させられる際、リフタ室内における突部側の空間(背圧室)に存在する燃料が圧縮されると、それに伴いアキュムレータ室の空気充填領域が圧縮されて縮小する。これにより、上記空間の圧力が過度に高くなることは抑制され、その圧力に基づく力に抗して制御弁を開弁させるためにリフタに作用させるべき力を小さく抑えることができる。従って、リフタを移動させるためのアクチュエータの大型化を抑制することができ、インジェクタの体格を小さく抑えることができるようになる。
【0020】
(9)請求項9に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載のインジェクタにおいて、リフタ室は、リフタと隔壁との間に形成される背圧室を含むものであり、この背圧室が排出通路においての制御弁よりも下流側の部位にオリフィスを介して接続されることを要旨としている。
燃料噴射を行うべくリフタが制御弁側に移動させられる際、背圧室内に存在する燃料が圧縮されるが、その燃料はオリフィスを介して排出通路における制御弁の下流側に流出する。従って、制御弁の開弁時に、背圧室の圧力が過度に高い状態に保持されることはなく、その分だけ制御弁を強い力で閉弁状態に保持することができ、燃料噴射を確実に制御することができるようになる。
【0021】
(10)請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載のインジェクタにおいて、排出通路の制御弁よりも下流側の部位の圧力を大気圧よりも高い値に保持するための圧力保持手段をさらに備えることを要旨としている。
燃料噴射を終了する際には、リフタを制御弁側に移動させていた力の付与が解除される。これにより、排出通路における制御弁の下流側の部分の圧力に基づき、リフタに対し制御弁を閉弁させる方向への力が働くようになる。この制御弁が閉弁されると、排出通路を通じた圧力制御室からの高圧燃料の排出が停止されるとともに同圧力制御室に高圧燃料が供給される。そして、圧力制御室に高圧燃料が満たされると、ニードル弁が噴孔を閉じる位置に保持されて燃料噴射が終了するようになる。上記発明によれば、排出通路における制御弁の下流側の圧力が大気圧よりも高い値に保持されるため、燃料噴射を終了させるとき上記圧力に基づいてリフタに対し制御弁を閉弁させる方向に働く力を大きくすることができ、制御弁を素早く閉弁させることができるようになる。従って、制御弁を閉弁させることによって実現される燃料噴射の停止を的確なものとすることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
以下、本発明を直噴式ディーゼルエンジンの燃料噴射に用いられるインジェクタに具体化した第1実施形態について、図1〜図7を参照して説明する。
【0023】
図1に示されるインジェクタ1は、噴孔2を開閉するよう往復移動可能なニードル弁3と、噴孔2を閉じる方向(図中下方)にニードル弁3を付勢するコイルスプリング4とを備えている。ニードル弁3の移動方向両側には、上記コイルスプリング4が収容される圧力制御室5と、噴孔2に繋がる燃料溜まり室6とが設けられている。これら圧力制御室5及び燃料溜まり室6には、燃料供給通路7を通じて高圧燃料が供給される。また、ニードル弁3における圧力制御室5側の受圧面積と燃料溜まり室6側の受圧面積とは、圧力制御室5側の受圧面積の方が大きくされている。
【0024】
上記圧力制御室5には、そこから高圧燃料を排出するための排出通路8が接続されている。排出通路8の途中には、同通路8を通じての高圧燃料の排出を禁止・許可すべく開閉動作する制御弁9が設けられている。そして、圧力制御室5から排出通路8を通じての高圧燃料の排出は、制御弁9の閉弁時には禁止され、制御弁9の開弁時には許可されるようになる。
【0025】
制御弁9の閉弁時には圧力制御室5及び燃料溜まり室6内に高圧燃料が溜められ、ニードル弁3に働く圧力制御室5内の圧力に基づく力が燃料溜まり室6内の圧力に基づく力よりも大きくなる。従って、ニードル弁3は圧力制御室5内の圧力に基づく力によって噴孔2を閉じる位置に保持される。
【0026】
ニードル弁3が噴孔2を閉じた状態にあって、制御弁9を開弁させると圧力制御室5内の高圧燃料が排出通路8を介して排出され、ニードル弁3に働く圧力制御室5内の圧力に基づく力が小さくなる。そして、圧力制御室5内の圧力に基づく力とコイルスプリング4の付勢力との和が、燃料溜まり室6内の圧力に基づく力よりも小さくなると、ニードル弁3が噴孔2を開く位置に移動し、燃料溜まり室6内の高圧燃料が噴孔2を介してディーゼルエンジンの燃焼室内に噴射供給される。
【0027】
制御弁9は、コイルスプリング10によって隔壁11に形成されたシート11aに向けて付勢されるとともに、同隔壁11で区画されたリフタ室12内に往復移動可能に設けられたリフタ13によって開閉させられる。上記制御弁9と上記リフタ室12とは隔壁11によって隔てられ、リフタ13は隔壁11に形成された貫通孔14を貫通して制御弁9に接触する突部13aを備えている。また、リフタ室12内において、突部13a側の空間は背圧室15とされ、突部13aと反対側の空間はポンプ室16とされる。
【0028】
リフタ13の往復移動は、ポンプ室16内の流体(燃料)を加減圧すべく伸縮する圧電素子17によって行われる。この圧電素子17は、PZT等からなる板状部材を複数枚積層した構造を有するピエゾ素子で構成されており、電圧印加の有無によって伸縮するものである。
【0029】
圧電素子17が電圧印可によって伸長すると、ポンプ室16内が加圧され、ポンプ室16内の圧力に基づきリフタ13に働く力により、同リフタ13が制御弁9側に移動させられる。これにより、リフタ13の突部13aが貫通孔14を貫通した状態で排出通路8内に突出し、制御弁9が開弁させられる。また、圧電素子17が電圧印可の解除によって収縮すると、ポンプ室16内が減圧され、背圧室15内の圧力に基づきリフタ13に働く力や、コイルスプリング10の付勢力等により、同リフタ13が制御弁9側とは反対側に移動させられる。これにより、リフタ13の突部13aが貫通孔14内に没入し、制御弁9が閉弁させられる。
【0030】
隔壁11において貫通孔14の制御弁9側の部分には、排出通路8の一部を構成するスピル室18が形成されている。また、排出通路8において、制御弁9に対応する部分には同制御弁9を収容する収容部8aが形成されている。更に、排出通路8は、突部13a及び制御弁9の内部に上記収容部8aの下流側(スピル室18の下流側)として形成された収容下流部8bを備えている。そして、制御弁9の閉弁時には、排出通路8における制御弁9周りの部分(収容部8a)と、スピル室18及び収容下流部8bとが遮断される。また、制御弁9の開弁時には収容部8aとスピル室18及び収容下流部8bとが連通し、高圧燃料が排出通路8を収容部8a、スピル室18、収容下流部8bの順に流れるようになる。
【0031】
排出通路8において制御弁9よりも下流側(正確には収容下流部13aより下流側)、にはチェック弁19が設けられている。このチェック弁19は、排出通路8における制御弁9よりも下流側の部分の圧力を大気圧よりも高い所定値に保持すべく開閉されるものである。即ち、チェック弁19は、上記部分の圧力が上記所定値値未満であるときに閉弁して排出通路8の燃料流通を禁止し、上記部分の圧力が上記所定値よりも大きいときに開弁して排出通路8の燃料流通を許可する。
【0032】
隔壁11における貫通孔14の内周面とリフタ13における突部13aの外周面とのクリアランスについては、同クリアランスの燃料流通面積が排出通路8の燃料流通面積よりも小さくなる大きさとされている。また、リフタ室12における突部13a側の空間である背圧室15は、圧力制御室5から高圧燃料を排出するための排出通路8とは分離されている。このため、制御弁9が開弁して圧力制御室5内の高圧燃料が排出通路8を通じて排出されるとき、スピル室18を通過する高圧燃料が上記クリアランスを介して背圧室15に入り込みにくくなる。
【0033】
この背圧室15は、ピストン20が往復移動可能に設けられたアキュムレータ室21と繋がっている。アキュムレータ室21内はピストン20によって燃料充填領域21aと空気充填領域21bとに区画され、燃料充填領域21aが上記背圧室15と繋がっている。そして、燃料充填領域21a及び背圧室15には燃料が充填された状態となっており、空気充填領域21bには空気が充填された状態となっている。従って、背圧室15内が加圧されると、その中の燃料が燃料充填領域21a内に流れ、ピストン20が燃料充填領域21aを拡大する方向に移動する。このときには、空気充填領域21bが縮小し、その中の空気が圧縮されることとなる。
【0034】
次に、圧力制御室5から高圧燃料を排出させる際にリフタ13に作用する力、並びに、その際のリフタ13及び制御弁9の動作について、図2〜図6を参照して説明する。
【0035】
圧力制御室5から高圧燃料を排出させる際にリフタ13に作用する力Fは、例えばリフタ13を制御弁9側に変位させる方向(図1の下方)を正方向とすると、以下の式(1)で表すことができる。
【0036】
F=P1・S1−P2・S2−P3・S3−A …(1)
F :リフタ13に作用する下向きの力
P1:ポンプ室16内の圧力
S1:圧力P1を受けるリフタ13の受圧面積(図2参照)
P2:背圧室15内の圧力
S2:圧力P2を受けるリフタ13の受圧面積(図2参照)
P3:スピル室18内の圧力
S3:圧力P3を受けるリフタ13の重圧面積(図2参照)
A :コイルスプリング10の付勢力
図6は、燃料噴射が行われるときの圧電素子17に対する印加電圧、圧電素子17の変位、制御弁9の変位、ポンプ室16内の圧力P1、背圧室15内の圧力P2、スピル室18内の圧力P3、及びリフタ13に働く力Fの推移を示すタイムチャートである。
【0037】
圧電素子17への電圧印可がなされていないときには、圧電素子17が収縮した状態にあり、ポンプ室16内の燃料が圧縮されていないことから、ポンプ室16内の圧力P1が高くなることはない。このため、上記力Fが制御弁9を開弁させるほど大きくなることはなく、制御弁9が図3に示されるように閉弁した状態に維持され、圧力制御室5から排出通路8を通じての燃料排出が禁止される。
【0038】
この状態にあって、圧電素子17が電圧印可によって伸長し始めると(図6のタイミングT1)、ポンプ室16内の燃料が圧縮されて圧力P1が図6(d)に示されるように上昇する。その結果、上記力Fがリフタ13及び制御弁9を移動させるほど大きくなると(T2)、制御弁9が図6(c)に示されるように変位して図4に示されるように開弁する。この制御弁9の変位によって背圧室15内の燃料が加圧されるが、背圧室15内の圧力P2の上昇はアキュムレータ室21の空気充填領域21bが縮小することによって図6(e)に示されるように抑制される。
【0039】
制御弁9が開弁すると、スピル室18と排出通路8の制御弁9周りに位置する部分(収容部8a)とが連通する。その結果、排出通路8における制御弁9よりも圧力制御室5側に存在していた高圧燃料が当該排出通路8のスピル室18、及びその下流側(収容下流部8a)に一気に流れ込み、スピル室18内の圧力P3が図6(f)に示されるように一瞬上昇することとなる。
【0040】
このとき、スピル室18を通過する高圧燃料が貫通孔14の内周面と突部13aの外周面とのクリアランスを介して背圧室15に流れ込もうとする。しかし、背圧室15が排出通路8と分離されていること、及び上記クリアランスの燃料流通面積が排出通路8の燃料流通面積よりも小さいことから、高圧燃料がスピル室18から同クリアランスを介して背圧室15に流れ込むことは抑制される。このため、背圧室15内に高圧燃料が流れ込むことにより圧力P2が上昇することは抑制され、同圧力P2は図6(e)に示されるように推移する。
【0041】
仮に、圧力制御室5から排出された高圧燃料が背圧室15に入り込み、圧力P2が過度に大きい値になるとすると、同圧力P2に基づいてリフタ13に対し制御弁9から離れる方向に押す力、即ち上記(1)の「P2・S2」が大きくなる。その結果、上記力Fが図6(g)に破線で示されるように負の値になり、リフタ13が制御弁9を押す側とは反対側に押し戻されるようになる。このようにリフタ13が押し戻されている間は、排出通路8の燃料流通面積が適正よりも小さくなり、圧力制御室5から高圧燃料が排出されにくくなることから、圧力制御室5からの高圧燃料の排出が適切に行えなくなる。その結果、圧力制御室5内の圧力を低下させて燃料噴射のためのニードル弁3の移動を適切に行うことが困難になり、燃料噴射量の調量精度が低下することとなる。
【0042】
しかし、圧力制御室5から排出された高圧燃料が背圧室15に流れ込むことによる圧力P2の上昇は、上記のようにして抑制される。このため、背圧室15内の圧力P2に基づいてリフタ13に対し押し戻す方向に働く力、即ち上記式(1)の「P2・S2」を小さく抑えることができる。
【0043】
更に、排出通路8におけるスピル室18よりも下流側がリフタ13の突部13a及び制御弁9の内部を通過するように形成されているため、スピル室18(排出通路8)内の圧力P3を受けるリフタ13の受圧面積S3が極小さいものとなる。このため、排出通路8を流れる高圧燃料に基づきリフタ13に対し押し戻す方向に作用する力、即ち上記式(1)の「P3・S3」も小さく抑えることができる。
【0044】
このように、リフタ13に対し押し戻す方向に働く力、「P2・S3」及び「P3・S3」が小さく抑えられるため、上記力Fが図6(e)に実線で示されるように推移することとなり、当該力Fが負の値になってリフタ13が制御弁9を押す方向と反対側に押し戻されることは抑制される。従って、このリフタ13の押し戻しにより、圧力制御室5からの高圧燃料の排出が適切に行えなくなってニードル弁3の移動に支障を来し、燃料噴射量の調量精度が悪化するのを抑制することができる。
【0045】
なお、上記圧力P2の上昇に伴うリフタ13の押し戻しを抑制するのに、例えば従来のように圧電素子17の伸長量を多くするといった方法が採用される場合、同伸長量を多くするために圧電素子17を大型化する必要がある。しかし、こうした従来の方法は採用されないことから、圧電素子17の大型化に伴うインジェクタ1の体格が大きくなることを抑制するとともに、圧電素子17の伸長に必要な電気エネルギの増大も抑制することができる。
【0046】
制御弁9は、開弁開始した後に図5に示されるように開弁状態に維持される。そして、制御弁9が開弁してスピル室18に高圧燃料が一気に流れ込んだ後には、排出通路8におけるスピル室18よりも下流側で高圧燃料の反射が生じ、これに伴いスピル室18内の圧力P3が上記のように一瞬上昇した後に図6(f)に示されるように再び一時的な上昇が生じる。このように圧力P3が再度上昇したとしても、当該圧力P3を受けるリフタ13の受圧面積S3は極めて小さいため、上記力Fが図6(e)に破線で示されるように負の値になることは抑制される。
【0047】
圧電素子17への電圧印可が開始されてから、必要な燃料噴射量を得るための燃料噴射時間が経過すると、圧電素子17への電圧印可が停止され(T3)、圧電素子17が収縮し始める。それに伴いポンプ室16内の圧力P1が図6(d)に示されるように低下してゆく。そして、上記式(1)における「P1・S1」が低下し、リフタ13に働く上記力Fが制御弁9を開弁状態に維持できなくなるまで低下すると(T4)、制御弁9が図3に示されるように閉弁する。これにより、圧力制御室5から排出通路8を通じての高圧燃料の排出が禁止され、圧力制御室5内に燃料供給通路7を介して供給された高圧燃料が溜められるようになる。その結果、ニードル弁3が噴孔2を閉じる位置に移動され、燃料溜まり室6から噴孔2を介しての燃料噴射が停止される。
【0048】
制御弁9を閉弁させるに当たり、リフタ13に働く上記力Fのうちの「P3・S3」については、排出通路8にチェック弁19を設けることによって大きい値とすることができる。即ち、制御弁9の開弁中での排出通路8における制御弁9よりも下流側の圧力がチェック弁19の動作によって大気圧よりも高い所定値に維持されるため、スピル室18内の圧力P3が大となって上記「P3・S3」を大きい値とすることができるのである。なお、チェック弁19による圧力P3の増加は、制御弁9の開弁時に上記「P3・S3」によってリフタ13が押し戻されなることのない程度にとどめられる。上記のように「P3・S3」を大きい値としておくことにより、圧電素子17への電圧印可を停止した後、上記力Fを速やかに負の値として制御弁9を素早く閉弁し、燃料噴射の停止を的確なものとすることができる。
【0049】
また、図7に示されるように、圧電素子17の電圧印可を停止したとき(T3)、上述したスピル室18内の圧力P3の再度の上昇が生じていることも考えられる。ただし、この圧力P3を受けるリフタ13の受圧面積S3は極めて小さいため、上記「P3・S3」が大きくなってリフタ13に働く力Fが小さくなり過ぎることはない。従って、力Fが小さくなり過ぎることに伴い制御弁9の閉弁速度が過度に速くなって燃料噴射時間が適正よりも短くなり、燃料噴射量の調量精度が低下するのを抑制することができる。
【0050】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)燃料噴射を行うためにリフタ13を制御弁9側に移動させて同制御弁9を開弁させると、スピル室18と排出通路8の制御弁9周りに位置する部分(収容部8a)とが連通する。その結果、排出通路8における制御弁9よりも圧力制御室5側に存在していた高圧燃料が当該排出通路8のスピル室18、及びその下流側(収容下流部8b)に一気に流れ込み、スピル室18内の圧力P3が一瞬上昇する。このとき、スピル室18を通過する高圧燃料が貫通孔14の内周面と突部13aの外周面とのクリアランスを介して背圧室15に流れ込もうとする。しかし、背圧室15が排出通路8と分離されていること、及び上記クリアランスの燃料流通面積が排出通路8の燃料流通面積よりも小さいことから、高圧燃料がスピル室18から同クリアランスを介して背圧室15に流れ込むことは抑制される。
【0051】
このため、背圧室15内に高圧燃料が流れ込むことにより圧力P2が上昇することは抑制され、同圧力P2に基づいてリフタ13に対し制御弁9から離れる方向に押す力、即ち上記(1)の「P2・S2」を小さく抑えることができる。従って、リフタ13が制御弁9を押す方向と反対側に押し戻され、圧力制御室5からの高圧燃料の排出が適切に行えなくなってニードル弁3の移動に支障を来し、燃料噴射量の調量精度が悪化するのを抑制することができる。なお、上記圧力P2の上昇に伴うリフタ13の押し戻しを抑制するのに、圧電素子17を大型化して伸長量を多くする必要はないため、圧電素子17の大型化に伴うインジェクタ1の体格が大きくなることを抑制するとともに、圧電素子17の伸長に必要な電気エネルギの増大も抑制することができる。
【0052】
(2)排出通路8におけるスピル室18の下流側(収容下流部8b)が、リフタ13の突部13a及び制御弁9の内部を通過するように形成されているため、スピル室18(排出通路8)内の圧力P3を受けるリフタ13の受圧面積S3が極小さいものとなる。このため、排出通路8を流れる高圧燃料に基づきリフタ13を制御弁9から離す方向に押し戻す力、即ち上記式(1)の「P3・S3」を小さく抑えることができ、上記リフタ13の押し戻しを抑制することができる。
【0053】
(3)制御弁9を開弁すべくリフタ13を移動させるときに背圧室15内の燃料が加圧されるが、それに伴う背圧室15内の圧力P2の上昇はアキュムレータ室21の空気充填領域21bが縮小することによって抑制される。従って、上記圧力P2に基づく力「P2・S2」等に抗して制御弁9を開弁させるためにリフタ13に作用させるべき力「P1・S1」を小さく抑えることができる。このため、ポンプ室16内の圧力P1を大きくすることを意図した圧電素子17の大型化を抑制し、インジェクタ1の体格を小さく抑えることができる。
【0054】
(4)制御弁9が開弁してスピル室18に高圧燃料が一気に流れ込んだ後には、排出通路8におけるスピル室18よりも下流側で高圧燃料の反射が生じ、これに伴いスピル室18内の圧力P3が一瞬上昇した後に再び一時的に上昇する。このように圧力P3が再度上昇したとしても、当該圧力P3を受けるリフタ13の受圧面積S3は極めて小さいため、リフタ13に働く上記力Fが負の値になるのを抑制することができる。
【0055】
(5)排出通路8にチェック弁19を設けることにより、開弁中の制御弁9を閉弁させる際にリフタ13に働く力「P3・S3」をリフタ13が制御弁9から離れる側に押し戻されない程度に大きい値とすることができる。即ち、チェック弁19の動作によって制御弁9の開弁中での排出通路8における制御弁9よりも下流側の圧力が大気圧よりも高い所定値に維持され、スピル室18内の圧力P3が大となって上記「P3・S3」を大きい値とすることができるのである。このように制御弁9の開弁中に上記「P3・S3」を大きい値としておくことにより、圧電素子17への電圧印可を停止した後、リフタ13に作用する力Fを速やかに負の値として制御弁9を素早く閉弁し、燃料噴射の停止を的確なものとすることができる。
【0056】
(6)圧電素子17の電圧印可を停止したとき、上述したスピル室18内の圧力P3の再度の上昇が生じていたとしても、この圧力P3を受けるリフタ13の受圧面積S3は極めて小さいため、上記「P3・S3」が大きくなってリフタ13に働く力Fが小さくなり過ぎることはない。従って、力Fが小さくなり過ぎることに伴い制御弁9の閉弁速度が過度に速くなって燃料噴射時間が適正よりも短くなり、燃料噴射量の調量精度が低下するのを抑制することができる。
【0057】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について図8及び図9を参照して説明する。
第1実施形態においては、リフタ13が制御弁9を開弁させるように移動して背圧室15内の燃料が加圧されるとき、アキュムレータ室21における空気充填領域21bの空気が圧縮され、背圧室15内の圧力P2が過度に上昇することが抑制される。しかし、上記空気充填領域21bが空気ばねとして働き、リフタ13が制御弁9を全開状態としたとき、空気充填領域21b内の空気の圧力(背圧室15内の圧力P2)に基づき、リフタ13に対し制御弁9を開弁させる方向に働く力が大きくなって、リフタ13が押し戻される(バウンドする)可能性がある。
【0058】
上記のようなリフタ13のバウンドが生じる場合、制御弁9の全開時等の閉弁時にリフタ13に対し制御弁9を閉弁させる方向に力が働き、その力の分だけ制御弁9を開弁させようとする力が弱まることになる。こうした不都合を抑制するため、本実施形態では 図8に示されるように、背圧室15が通路22及びオリフィス23を介して排出通路8の制御弁9よりも大幅に下流側の部分、例えばチェック弁19の直前の部分に接続される。
【0059】
この場合、リフタ13が制御弁9を開弁させるように移動するとき、背圧室15内の燃料が圧縮されるが、その燃料は通路22及びオリフィス23を介して排出通路8に流出するようになる。従って、制御弁9の閉弁時には背圧室15内の圧力P2が一旦上昇するものの、その後には図9(e)に示されるように徐々に低下してゆくこととなる。従って、制御弁9の全閉時等の閉弁時に圧力P2が過度に高い状態に保持されることはなく、その分だけ制御弁9を強い力で閉弁状態に保持することができるようになる。
【0060】
従って、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(7)制御弁9の全閉時等の閉弁時に、圧力P2が過度に高い状態に保持されない分だけ制御弁9を強い力で閉弁状態に保持することができ、これにより燃料噴射を確実に制御することができるようになる。
【0061】
(8)制御弁9が開弁してスピル室18に高圧燃料が一気に流れ込むとスピル室18内の圧力P3が一瞬上昇し、その後には排出通路8におけるスピル室18よりも下流側で上記高圧燃料の反射が生じて再び圧力P3の一時的な上昇が生じる。排出通路8におけるスピル室18よりも下流側の圧力は、上記圧力P3の上昇によって影響を受けて上昇するようになるが、この影響は下流になるほど小さいものとなる。背圧室15は通路22及びオリフィス23を介して排出通路8の制御弁9よりも大幅に下流側の部分に繋がれている。このため、リフタ13が制御弁9を開弁させるように移動するとき、上記圧力P3の上昇に伴う排出通路8における制御弁9の下流側における圧力上昇によって、背圧室15内の燃料を上記通路22及びオリフィス23を介して排出通路8に流出させにくくなるのを抑制することができる。
【0062】
[その他の実施形態]
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・第1実施形態では、アキュムレータ室21内をピストン20によって燃料充填領域21aと空気充填領域21bとに区画したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図10に示されるようにアキュムレータ室21内に樹脂など弾性を有する材料によって形成された中空構造のバルーン24を封入し、そのバルーン24の内部を空気充填領域とするとともに、バルーン24の外部を燃料充填領域としてもよい。また、アキュムレータ室21に空気の混入した燃料を充填し、燃料充填領域と空気充填領域とを形成してもよい。
【0063】
・第1及び第2実施形態において、必ずしも排出通路8にチェック弁19を設ける必要はない。
・上記各実施形態では、リフタ13を移動させるためのアクチュエータとして圧電素子17を例示したが、これに代えて電磁ソレノイドなど他のアクチュエータを用いてもよい。
【0064】
・本発明を直噴式のディーゼルエンジンに用いられるインジェクタ1に適用したが、直噴式のガソリンエンジンに用いられるインジェクタに適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態のインジェクタの内部構造を示す断面図。
【図2】リフタの受圧面積を示す断面図。
【図3】インジェクタにおける制御弁周りを示す拡大断面図。
【図4】インジェクタにおける制御弁周りを示す拡大断面図。
【図5】インジェクタにおける制御弁周りを示す拡大断面図。
【図6】(a)〜(g)は、燃料噴射が行われるときの圧電素子に対する印加電圧、圧電素子の変位、制御弁の変位、ポンプ室内の圧力、背圧室内の圧力、スピル室内の圧力、及びリフタに働く力の推移を示すタイムチャート。
【図7】(a)〜(d)は、燃料噴射が行われるときの圧電素子に対する印加電圧、圧電素子の変位、制御弁の変位、及びスピル室内の圧力の推移の他の例を示すタイムチャート。
【図8】第2実施形態のインジェクタの内部構造を示す断面図。
【図9】(a)〜(g)は、燃料噴射が行われるときの圧電素子に対する印加電圧、圧電素子の変位、制御弁の変位、ポンプ室内の圧力、背圧室内の圧力、スピル室内の圧力、及びリフタに働く力の推移を示すタイムチャート。
【図10】アキュムレータ室の他の例を示すインジェクタにおける制御弁周りの拡大断面図。
【図11】圧力制御室から高圧燃料を排出する構造の従来例を模式的に示した図。
【符号の説明】
1…インジェクタ、2…噴孔、3…ニードル弁、4…コイルスプリング、5…圧力制御室、6…燃料溜まり室、7…燃料供給通路、8…排出通路、9…制御弁、10…コイルスプリング、11…隔壁、12…リフタ室、13…リフタ、13a…突部、14…貫通孔、15…背圧室、16…ポンプ室、17…圧電素子、18…スピル室、19…チェック弁(圧力保持手段)、20…ピストン、21…アキュムレータ室、21a…燃料充填領域、21b…空気充填領域、22…通路、23…オリフィス、24…バルーン。
Claims (10)
- 往復移動により噴孔を開状態と閉状態との間で変更するニードル弁と、ニードル弁に対して噴孔側に設けられた燃料溜まり室と、ニードル弁に対して燃料溜まり室とは反対側に設けられた圧力制御室と、圧力制御室の燃料を排出する排出通路とを含めて構成されるものであって、燃料溜まり室及び圧力制御室のそれぞれに高圧燃料が供給されることに基づくニードル弁の移動により噴孔の閉状態が維持され、圧力制御室の高圧燃料が排出通路を介して排出されることに基づくニードル弁の移動により噴孔が開状態に維持されるとともに、噴孔が開状態のときに燃料溜まり室の高圧燃料が噴孔を介して噴射されるインジェクタにおいて、
排出通路の途中に設けられて、圧力制御室の高圧燃料が排出通路を介して排出されることを許容する開弁位置と圧力制御室の高圧燃料が排出通路を介して排出されることを許容しない閉弁位置との間で移動可能な制御弁と、
排出通路から分離した空間であるリフト室に設けられて、突部により制御弁を閉弁位置から開弁位置に向けて押すリフタと、
制御弁とリフタ室との間に設けられて、リフタの突部をリフタ室側から制御弁側に通過させる貫通孔を有する隔壁とを備え、
隔壁の貫通孔を形成する部位の内周面とリフタの突部の外周面との間のクリアランスについて、突部の移動方向におけるリフタ室側のクリアランスが排出通路の一部をなす制御弁側のクリアランスよりも小さいものに設定される
ことを特徴とするインジェクタ。 - 請求項1に記載のインジェクタにおいて、
制御弁が閉弁位置にあるときに前記制御弁側のクリアランスによって制御弁と隔壁との間に形成されるスピル室、及びリフタと隔壁との間に形成される背圧室について、これらスピル室と背圧室とが前記リフタ室側のクリアランスにより接続される
ことを特徴とするインジェクタ。 - 請求項1または2に記載のインジェクタにおいて、
前記隔壁の貫通孔を形成する部位は、突部との間に前記リフタ室側のクリアランスを形成する第1の部位と、突部との間に前記制御弁側のクリアランスを形成する第2の部位とを含むものであり、これら第1の部位及び第2の部位を通じてリフタ室側と制御弁側とにおける前記クリアランスの大きさの違いが維持される
ことを特徴とするインジェクタ。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載のインジェクタにおいて、
排出通路は、圧力制御室の燃料を制御弁が収容される収容部に流通させる第1通路と、収容部の燃料をインジェクタの外部に流通させる第2通路とを含むものであって、制御弁が閉弁位置にあるときに第1通路と第2通路とが遮断され、制御弁が開弁位置にあるときに第1通路と第2通路とが連通される
ことを特徴とするインジェクタ。 - 請求項4に記載のインジェクタにおいて、
第2通路は、制御弁内に設けられる内部通路を含む
ことを特徴とするインジェクタ。 - 請求項5に記載のインジェクタにおいて、
突部は、前記制御弁側のクリアランスに連通する開口部を含むものであり、この開口部が前記内部通路の入口として機能する
ことを特徴とするインジェクタ。 - 請求項6に記載のインジェクタにおいて、
制御弁は、内部通路と突部の開口部との連通が維持された状態で閉弁位置と開弁位置との間を移動する
ことを特徴とするインジェクタ。 - 請求項1〜7のいずれか一項に記載のインジェクタにおいて、
リフタ室は、リフタと隔壁との間に形成される背圧室を含むものであり、この背圧室が 燃料充填領域と空気充填領域とを含むアキュムレータ室に接続される
ことを特徴とするインジェクタ。 - 請求項1〜7のいずれか一項に記載のインジェクタにおいて、
リフタ室は、リフタと隔壁との間に形成される背圧室を含むものであり、この背圧室が排出通路においての制御弁よりも下流側の部位にオリフィスを介して接続される
ことを特徴とするインジェクタ。 - 請求項1〜9のいずれか一項に記載のインジェクタにおいて、
排出通路の制御弁よりも下流側の部位の圧力を大気圧よりも高い値に保持するための圧力保持手段をさらに備える
ことを特徴とするインジェクタ。
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