JP4025214B2 - 印刷機の着けローラ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばオフセット印刷機における着けローラの支持装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
オフセット印刷機においては、ベタ刷り部の一部にぼやけた部分が現れる、いわゆるゴーストといわれる印刷障害が発生することがある。このゴーストの発生を防止する対策として、従来のローラの支持装置は、インキ着ローラ内に圧縮コイルばねを介装し、インキ着ローラに対接している振りローラとの摩擦力を利用してインキ着ローラを軸線方向に揺動させるものがある。すなわち、インキ着ローラをローラ軸と、このローラ軸に回転かつ軸線方向に揺動自在に嵌装されたローラ本体と、前記ローラ軸に螺合された振り幅調整部材と、この振り幅調整部材と前記ローラ本体との間に弾装された圧縮コイルばねとによって構成されたものがある。(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
なお、本出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に密接に関連する先行技術文献を出願時までに発見するには至らなかった。
【0004】
【特許文献1】
特公平8−18428号公報(4欄第14〜44行、図1)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来のローラの支持装置においては、インキ着ローラを軸線方向に揺動可能にすることによってゴースト対策が終了した後は、次にインキ着ローラの軸線方向への揺動を規制するために、振り幅調整部材をねじ込むことにより、圧縮コイルばねを圧縮し圧縮コイルばねの弾性を規制するようにしている。また、印刷する絵柄によってはゴースト対策が不要なものがあり、このような絵柄の場合にはインキ着ローラを軸線方向に揺動させてしまうと、非画線部にインキが付着して起こる汚れ、すなわち地よごれが発生してしまう。したがって、このような場合にも、インキ着ローラの軸線方向への揺動を規制するために、振り幅調整部材をねじ込むことにより、圧縮コイルばねを圧縮し切って圧縮コイルばねの弾性を規制するようにしている。
【0006】
しかしながら、圧縮コイルばねの弾発力に抗して圧縮コイルばねの弾性を規制するまで振り幅調整部材をねじ込む作業は、大きなねじ込み力を必要とするため、作業員の肉体的な負担が大きいという問題があった。さらに、振り幅調整部材をねじ込むローラ軸が回転自在に支持されているために、振り幅調整部材をねじ込むのに追従してローラ軸も回転してしまうため、作業性が悪いという問題もあった。これを解決しようとすると、一旦ローラ軸を印刷機械から取り外し、取り外した状態で作業を行い、作業が終了後再び印刷機械に取り付ける必要があり作業時間が多くかかってしまう。
【0007】
したがって、本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、第1の目的は作業性を向上させることにある。また、第2の目的は作業時間の短縮を図ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、振りローラと対接し、この振りローラの軸線方向への移動に追従して軸線方向に揺動する着けローラを備えた印刷機の着けローラ装置において、前記着けローラは、回転自在に支持されたローラ軸と、このローラ軸の軸線方向に移動自在に支持されたローラ本体と、このローラ本体と前記ローラ軸との間に設けられ軸線方向に付勢する弾性部材と、前記ローラ軸の端部に半径方向に進退する係止部材とからなり、この係止部材が係合することにより前記着けローラの軸線方向への揺動を規制する被係合部を前記ローラ本体に設けたものである。
したがって、係止部材を被係合部に係合させることによりローラ本体の軸線方向への揺動が規制される。一方、係止部材と被係合部との係合を解除するとローラ本体の軸線方向への揺動が可能になる。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記係止部材は、前記ローラ軸の半径方向に設けられたねじ部に螺合するボルトであり、前記被係合部は、前記ローラ本体に設けられ、前記ボルトが係合する孔である。
したがって、ボルトをねじ部に螺合させ孔に係合させることによりローラ本体の軸線方向への移動が規制される。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記孔に連通され前記ボルトの先端部が摺動可能な案内溝を前記ローラ本体の軸線方向に設けたものである。
したがって、ボルトの先端部を案内溝に位置付けることによりローラ本体の軸線方向へ移動が可能になる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1は本発明に係る印刷機の着けローラ装置を示す断面図、図2は同じく被係合部材を示し、同図(a)は背面図、同図(b)は平面図、同図(c)は正面図、同図(d)は同図(b)におけるII(d)-II(d) 線断面図、図3は図1における III部の拡大図、図4は本発明を実施した輪転印刷機の胴配列図である。
【0012】
図4に示すように、全体を符号1で示す印刷機の印刷ユニットには、周面に刷版が装着された版胴4が配設されている。この版胴4には、インキを蓄えるインキ壷5および壷ローラ6をはじめとする多数のローラ群7とからなるインキ装置8と、湿し水を蓄える水舟9および複数個のローラ群10からなる給水装置11とが付設されている。12は版胴4に対接するゴム胴であって、このゴム胴12には圧胴13が対接している。
【0013】
このように構成された印刷機の印刷ユニット1におけるインキ装置8のローラ群7の終端側には、2本の振りローラ14と4本のインキ着ローラ15とが版胴4に近接して設けられている。すなわち、振りローラ14は左右のフレームに軸支されて原動側から回転駆動されており、また、軸端部に設けた振り機構によって所定の周期と振り幅によって軸線方向へ往復動するように構成されている。この振りローラ14の両端軸には、図示を省略したローラアームが枢支されており、このローラアームの遊端部に設けられた軸受16には、図3に示すように、ローラ軸17が両端部に形成した段部17aが軸受16に係合することにより、軸線方向への移動を規制されて回転自在に軸支されている。
【0014】
インキ着ローラ15は、上記したローラ軸17と、このローラ軸17に軸線方向に移動自在に支持されたローラ本体20と、このローラ本体20とローラ軸17との間に設けられた弾性部材としての圧縮コイルばね24と、ローラ軸17の半径方向に進退する係止部材としてのボルト30とによって概略構成されている。ローラ軸17の両端部には、このローラ軸17の半径方向を貫通するねじ孔18が設けられており、ローラ軸17の両端の中央部には軸線方向に延在するねじ孔19が設けられ、このねじ孔19の先端には、このねじ孔19と上記したねじ孔18とを連通する連通孔19aが形成されている。
【0015】
ローラ本体20は、図1に示すように、金属管20aとこれに被覆されたゴム20bとによって形成されている。このローラ本体20は、2個のスライド軸受21を介してローラ軸17に嵌装されており、ローラ軸17に対して軸線方向へ移動自在に支持されている。このスライド軸受21の一端とローラ軸17の段部22との間には、リング部材23,23を介して、弾性部材としての左右一対の圧縮コイルばね24,24が弾発力を蓄積された状態で弾装されている。したがって、後述するようにローラ本体20が軸線方向に揺動すると、左右の圧縮コイルばね24が交互に圧縮され、圧縮され終わった端限において揺動が規制されるように構成されている。このローラ本体20は、図1に示すように、揺動していない状態で、ローラ軸17のねじ孔18が、図3に示すように、ローラ本体20の両端から露呈するように位置付けられている。
【0016】
図1に符号25で示す被係合部材は、図2に示すように、両端が開口した略円筒状に形成されており、一端部にフランジ26が一体に形成されている。この被係合部材25の内径R1は、ローラ軸17の直径よりも僅かに大きく形成されており、フランジ26の直径R2は、金属管20bの開口端側の内径よりも僅かに小さく形成されている。被係合部材25の他端部には、対向する2個のU字溝27,28が設けられており、被係合部としての一方のU字溝27の幅W1は、後述するボルト30の係止部30dの外径よりも僅かに大きく形成されており、他方のU字溝28の幅は、ボルト30の外径よりも大きく形成されている。なお、一方のU字溝27は、本明細書中における特許請求の範囲の請求項2に記載された孔に相当するものである。
【0017】
また、被係合部材25の内周部の一部には、案内溝25aが設けられており、この案内溝25aの幅W1は、同図(c)に示すように一方のU字溝27の幅W1と同一に形成されている。また、この案内溝25aは、同図(b)に示すように、円周方向において一方のU字溝27と同じ位置で、このU字溝27と連通し、同図(d)に示すように、U字溝27の一端から被係合部材25の一端側の開口まで延設されている。
【0018】
この被係合部材25は、図1に示すように、ローラ軸17が貫挿され、フランジ26がローラ本体20の金属管20a内に嵌合しており、スライド軸受21とリング部材29とによって挟持されることにより、ローラ本体20に軸線方向への移動が規制された状態で取り付けられている。このように組み付けられた被係合部材25のU字溝27,28は、図3に示すように、ローラ本体20の両端から露呈するように位置付けられており、案内溝25aは矢印A−B方向に延在した状態を呈している。
【0019】
図3に符号30で示す係止部材としてのボルトは、軸線方向の略中央部にねじ部が形成されていない細径部30aが設けられており、この細径部30aを挟んで操作側ねじ部30bと先端側ねじ部30cとに分けて形成され、先端側ねじ部30cには小円柱状に形成された係止部30dが一体に突設されている。このボルト30を、被係合部材25の他方のU字溝28から挿入し、ローラ軸17のねじ孔18に螺合させ、図中矢印C方向に前進させることにより、係止部30dが被係合部材25のU字溝27内に嵌入しU字溝27の底部27aに係合する。
【0020】
このように、係止部30dが被係合部材25のU字溝27の底部27aに係合することにより、この被係合部材25を介してローラ本体20が矢印A方向への移動が規制され、図示を省略したローラ本体20の他端側において、ボルト30によってローラ本体20が矢印B方向への移動が規制されるため、ローラ本体20は軸線方向(矢印A−B方向)への移動が規制される。
【0021】
図3に符号31で示すスプリングプランジャー31は、ローラ軸17のねじ孔19に螺合し、図示を省略したスプリングの付勢力によって突出する方向(矢印B方向)に付勢されたプランジャー31aが備えられている。したがって、このスプリングプランジャー31をねじ孔19に螺合させることにより、プランジャー31aが連通孔19a内を貫通して、先端部31bがねじ孔18内、すなわちボルト30の細径部30aに臨み、この先端部31bが操作側ねじ部30bの下端に係合する。
【0022】
この状態で、ボルト30を矢印D方向へ後退させ、プランジャー31aの先端部31bに先端側ねじ部30cが係合することにより、ボルト30の係止部30dと被係合部材25のU字溝27の底部27aとの係合が解除され、図中二点鎖線で示すように、被係合部材25の案内溝25aに係合する。この案内溝25aの幅W1は、上述したように、ボルト30の係止部30dの外径よりも僅かに大きく形成され、かつ案内溝25aがインキ着ローラ15の軸線方向、すなわち矢印A−B方向に延在しているため、係止部30dは案内溝25a内を矢印A−B方向に摺動可能になる。したがって、ローラ本体20は軸線方向(矢印A−B方向)への移動が可能になる。
【0023】
このように、スプリングプランジャー31のプランジャー31aと、ボルト30の操作側ねじ部30bおよび先端側ねじ部30cとは、ボルト30の係止部30dが被係合部材25のU字溝27の底部27aに係合する位置(実線で示す位置)と、U字溝27の底部27aとの係合が解除され案内溝25aと係合する位置(二点鎖線で示す位置)との2位置を位置決めする位置決め手段を構成している。したがって、この位置決め手段によって、ボルト30の2位置が容易かつ確実に位置付けられる。同時に、スプリングプランジャー31のプランジャー31aと、ボルト30の操作側ねじ部30bおよび先端側ねじ部30cとの協働によって、ボルト30がねじ孔18から印刷機械内に脱落するのを防止することができるため、印刷機械の故障を防止することもできる。
【0024】
また、ボルト30を矢印D方向に後退させた状態で、係止部30dと案内溝25aとの係合状態が保持され、ローラ軸17に対して被係合部材25の回転が規制された状態が保持されている。したがって、係止部30dと被係合部材25のU字溝27とが回転方向の位相のずれがなく、常に係止部30dと被係合部材25のU字溝27とが対向した状態が維持されているため、次に、ローラ本体20の軸線方向への移動規制するために、ボルト30を矢印C方向に前進させたときに、円滑かつ短時間で係止部30dがU字溝27に係合する。
【0025】
また、ローラ軸17のねじ孔18に螺合されたボルト30と被係合部材25とは、インキ着けローラ15の回転方向に対して位相のずれがなく、常にボルト30の操作側ねじ部30bと被係合部材25のU字溝28とが対向する。したがって、U字溝28から工具を挿入してボルト30を前進、後退させる作業が容易になり、仮にローラ本体20が軸線方向にずれていたとしても、ローラ本体20を軸線方向に移動させるだけでよく、操作側ねじ部30bとU字溝28との回転位相を一致させて対向させるためにローラ本体20を回転させる必要がないから作業性が向上する。このように、ローラ本体20の軸線方向への移動を規制する切替作業の操作性を向上させることができるばかりではなく、作業を円滑に短時間で行うことができる。
【0026】
次に、このように構成された印刷機の着けローラ装置における印刷動作を説明する。
あらかじめ、ボルト30を矢印C方向へ前進させ、図3中実線で示すように、係止部30dを被係合部材25のU字溝27内に嵌入させてU字溝27の底部27aに係合させることにより、ローラ本体20の軸線方向(矢印A−B方向)への移動が規制される。この状態としてから印刷を開始する。印刷する絵柄によって印刷中にゴーストが発生したら、印刷機械の駆動を一旦停止する。ボルト30を矢印D方向に後退させ、係止部30dを図中二点鎖線で示す位置に位置付けて、係止部30dとU字溝27の底部27aとの係合を解除し、係止部30dを案内溝25aに係合させる。したがって、係止部30dは案内溝25a内を矢印A−B方向に摺動可能になるため、ローラ本体20は軸線方向(矢印A−B方向)への移動が可能になる。
【0027】
この状態してから、印刷機を再び駆動すると、振りローラ14が原動側から駆動されて回転しながら軸線方向に揺動するため、これに対接しているインキ着ローラ15のローラ本体20も、振りローラ14との摩擦によってローラ軸17上で軸線方向に揺動しながらローラ軸17とともに回転する。このローラ本体20の揺動に際しては、左右の圧縮コイルばね24,24を交互に圧縮しながら往復動するため、振り端における衝撃が緩和されるとともに、圧縮コイルばね24,24を圧縮し終わるとローラ本体18は移動を規制され、そのあとは振りローラ14のみが横振りする。
【0028】
このように、インキ着ローラ15の揺動の規制とこれを解除するのに、ボルト30を前進、後退させればよく、この前進、後退に際してボルト30には負荷がかからないため、操作性が向上するばかりではなく切替の作業を短時間で行うことができる。
【0029】
なお、本実施の形態においては、被係合部をU字溝27としたが、長孔または円形の孔としてもよく、円形の孔とした場合には被係合部材25をローラ本体20の少なくとも一方の端部に設ければよい。また、U字溝28を長孔または円形の孔としてもよい。また、本実施の形態においては、振りローラ14に対接するインキ着ローラ15について説明したが、給水装置11の水着ローラに適用してもよい。また、本実施の形態においては、インキ着けローラ15の回転および軸線方向への移動を、対接する振りローラ14から駆動される構造のものを説明したが、着けローラの回転がモータから駆動される構造のものにも適用できる。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、操作性が向上するばかりではなく切替の作業を短時間で行うことができる。
【0031】
また、請求項3に係る発明によれば、着けローラの軸線方向への移動を規制する切替作業の操作性を向上させることができるばかりではなく、作業を円滑に短時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る印刷機の着けローラ装置を示す断面図である。
【図2】 本発明に係る印刷機の着けローラ装置における被係合部材を示し、同図(a)は背面図、同図(b)は平面図、同図(c)は正面図、同図(d)は同図(b)におけるII(d)-II(d) 線断面図である。
【図3】 図1における III部の拡大図である。
【図4】 本発明を実施した輪転印刷機の胴配列図である。
【符号の説明】
1…印刷機の印刷ユニット、4…版胴、8…インキ装置、11…給水装置、12…ゴム胴、13…圧胴、14…振りローラ、15…インキ着ローラ、16…軸受、17…ローラ軸、18…ねじ孔、20…ローラ本体、21…スライド軸受、24…圧縮コイルばね、25…被係止部材、25a…案内溝、27…U字溝(被係止部)、30…ボルト(係止部材)、30a…細径部、30d…係止部、31…スプリングプランジャー。
Claims (3)
- 振りローラと対接し、この振りローラの軸線方向への移動に追従して軸線方向に揺動する着けローラを備えた印刷機の着けローラ装置において、
前記着けローラは、
回転自在に支持されたローラ軸と、
このローラ軸の軸線方向に移動自在に支持されたローラ本体と、
このローラ本体と前記ローラ軸との間に設けられ軸線方向に付勢する弾性部材と、
前記ローラ軸の端部に半径方向に進退する係止部材とからなり、
この係止部材が係合することにより前記着けローラの軸線方向への揺動を規制する被係合部を前記ローラ本体に設けたことを特徴とする印刷機の着けローラ装置。 - 請求項1記載の印刷機の着けローラ装置において、
前記係止部材は、
前記ローラ軸の半径方向に設けられたねじ部に螺合するボルトであり、
前記被係合部は、
前記ローラ本体に設けられ、前記ボルトが係合する孔であることを特徴とする印刷機の着けローラ装置。 - 請求項2記載の印刷機の着けローラ装置において、
前記孔に連通され前記ボルトの先端部が摺動可能な案内溝を前記ローラ本体の軸線方向に設けたことを特徴とする印刷機の着けローラ装置。
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