JP4023396B2 - 指紋画像処理装置、及び指紋画像処理プログラム - Google Patents

指紋画像処理装置、及び指紋画像処理プログラム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の撮像素子が配列された1次元撮像素子によって取り込まれた、各画素が多値の画素値により表される指紋画像データを処理する指紋画像処理装置、指紋画像処理プログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年では、人物を識別するための装置として、人の指紋パターンを画像データとして読み取り、この指紋画像に対して照合処理を実行することにより人物を特定する指紋照合装置(画像処理装置)が用いられるようになってきている。指紋照合装置(画像処理装置)では、例えば複数の撮像素子が1次元配列された1次元撮像素子を用いて指紋画像を読み取っている。
【0003】
一般に、1次元撮像素子によって画像を読み取る画像処理装置では、各撮像素子やレンズ光学系などの特性の違いの影響を補正するために、基準とする白と黒の画像を読み込んで調整用のデータを生成しておく必要がある。
【0004】
例えば、x軸方向にn個の撮像素子が配列された1次元撮像素子によってy軸方向にm画素分スキャンすることで読み取った画像は、n×m画素の画像データとなる。ここで、基準とする白い画像を読み込んだデータをW={wij|i=1…n,j=1…m}、基準とする黒い画像を読み込んだデータをB={bij|i=1…n,j=1…m}とすると、白レベルの調整用データaw、黒レベルの調整用データabは、それぞれ例えば以下の式(1)(2)のように算出することができる。
【0005】
また、読み込んだ画像データの各画素の画素値D={dij|i=1…n,j=1…m}は、例えば以下の式(3)に従って調整することができる。ここで、d’ijは調整された画素データ、depthは1画素の最大画素値(例えば1画素8ビットで表される場合には255)である。
【0006】
【数1】
Figure 0004023396
【0007】
また、従来では、読み取り画像の階調特性について補正するために、シェーディング補正の特性を調整する装置が考えられている(例えば特許文献1)。この装置では、事前読取(プレスキャン)を行って、得られた画像データに基づいて調整値を算出し、その調整値を用いて読取条件を変更(補正)して本読み取りを実行する。調整値は、取得した画像データ中の最大値と最小値を算出し、この算出された最大値と最小値、及びこの算出された最大値と最小値に対して指示された補正値に基づいて算出する。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−270216号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来の画像補正において、調整用データを生成する方法では、装置毎の各撮像素子やレンズ光学系などの特性の違いの影響を補正するために、各装置ごとに調整用のデータを生成しておく必要があった。また、この方法で画像を調整するためにはスキャナ利用時の環境が固定されている(常に一定の明るさの環境か、もしくは外光が入らないようにした環境である)必要がある。環境が一定しない場合には、それぞれの環境に合わせた調整用データがさらに必要となる。
【0010】
また、特許文献1に記載された装置においても、事前読取(プレスキャン)を行って、得られた画像データに基づいて調整値を算出しておかなければならない。
【0011】
本発明は、前記のような問題に鑑みなされたもので、処理対象として取り込んだ指紋画像データから1次元撮像素子の各撮像素子やレンズ光学系などのばらつきなどの影響を排除する補正をすることが可能な指紋画像処理装置、指紋画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数の撮像素子が配列された1次元撮像素子によって取り込まれた、各画素が多値の画素値により表される指紋画像データを処理する指紋画像処理装置において、前記各撮像素子が取り込んだ前記指紋画像データから各々最大とする画素値と最小とする画素値を検出する値検出手段と、前記値検出手段によって検出された前記最大とする画素値と前記最小とする画素値をもとに、前記各撮像素子により読み取られた画素の画素値幅を検出する幅検出手段と、前記各撮像素子に読み取られた指紋画像データの各画素について、画素値の前記画素値幅に対する比を表す正規化データを生成する正規化データ生成手段と、前記正規化データ生成手段により生成された各撮像素子における各画素の前記正規化データの平均値を算出する正規化データ平均値算出手段と、前記正規化データ平均値算出手段により算出された各撮像素子に対する前記平均値と前記画素が取り得る画素値をもとに、前記各撮像素子に読み取られた指紋画像データの各画素の画素値を補正する画素値補正手段とを具備したことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施形態に係わる画像処理装置の機能が搭載された携帯電話の電子回路の構成を示すブロック図である。携帯電話は、記録媒体に記録されたプログラムを読み込み、この読み込んだプログラムによって動作が制御されるコンピュータの機能を利用して実現される。本実施形態における画像処理装置は、被検体とする人の指先(指頭の掌側面)から皮膚隆線による特徴的な紋である指紋パターンの画像(以下、指紋画像と称する)を読み取り、この指紋画像に対して照合処理を実行する指紋照合装置として構成されているものとする。
【0015】
図1に示す携帯電話は、CPU10が記憶装置12、RAM14、通話ユニット16、表示部18、キー部19、指紋読み取り部20などの各種デバイスとバスを介して接続されることで構成されている。
【0016】
CPU10は、RAM14のプログラムエリアに格納されたプログラムを実行することにより各種の機能を実現する。CPU10は、携帯電話としての機能を制御する他、指紋読み取り部20によって指紋画像を読み取り、この指紋画像に対して照合を行う指紋照合処理(画像処理)等を制御する。指紋照合処理(画像処理)には、指紋読み取り部20から読み込まれた画像データに対して、撮像素子やレンズ光学系などのばらつきなどを補正する画像データ補正処理が含まれる。
【0017】
記憶装置12は、プログラムやデータ等が記憶されるもので、必要に応じて読み出されてRAM14に格納される。本実施形態では、画像照合プログラム(画像処理プログラム)の他、指紋照合に用いられる照合元となる登録指紋画像データなどが記録されるものとする。
【0018】
RAM14は、プログラムや各種データが格納されてCPU10によってアクセスされるもので、携帯電話を制御する各種プログラムの他、指紋読み取り部20によって指紋画像を読み取り、この指紋画像に対して指紋照合を実行する画像照合プログラム(画像処理プログラム)などが格納される。画像照合プログラムにより指紋照合処理が実行される場合には、指紋読み取り部20により読み取られた指紋画像データが記録される他、処理に用いられる各種データが記録される。
【0019】
通話ユニット16は、携帯電話としての無線通信を行うためのユニットである。
表示部18は、CPU10により実現される各種機能を実行する際に様々なデータ等を表示する。
キー部19は、電話番号入力用の数字キーや各種の機能キーからなる複数のキーにより構成されている。
指紋読み取り部20は、指紋画像データを読み取るもので、例えば図2の携帯電話の外観例に示すように前面上部など、指紋読み取り操作が容易となる位置に設けられる。本実施形態における指紋読み取り部20には、光源21、レンズ光学系(セルフォックレンズ22)、1次元撮像素子24、撮像制御回路26、A/D変換回路28、透明回転ローラ29が含まれており、透明回転ローラ29の外周面の一部が携帯電話の筐体に設けられたスリットから外部に露出されている。この露出された透明回転ローラ29の部分が指紋画像の読み取り部となる。指紋画像の読み取りを行う場合には、読み取り部に被検体である指先が圧接されて、その状態で所定の方向(透明回転ローラ29の回転軸と垂直な方向)で透明回転ローラ29を回転させながら移動されることで行われる(図6参照)。筐体表面に設けられるスリットは、利用者が透明回転ローラ29に対して指先を圧接させて、透明回転ローラ29を回転させることができる程度の幅が確保されていれば良い。従って、指紋画像を読み取るために、指紋全体が収まる読み取り面を確保する必要がなく、筐体表面における指紋読み取り部20(透明回転ローラ29)の実装面積が少なくて済む。
【0020】
指紋読み取り部20では、光源21から照射され読み取り部に圧接(接触)される被検体である指先において反射した光が、透明回転ローラ29を透過してセルフォックレンズ22により1次元撮像素子24に集光される。撮像制御回路26の制御により、セルフォックレンズ22を介して集光された光が1次元撮像素子24により光電変換され、さらにA/D変換回路28により指紋パターンを表す画像データとして変換される。1次元撮像素子24からの画像データは、所定のタイミングでRAM14にバッファリングされる。
【0021】
図3には、指紋読み取り部20の機構部分の概略構成(側面断面図)を示している。
図3に示すように、携帯電話の筐体には透明回転ローラ29の回転軸に沿って、透明回転ローラ29の外周面の一部が指紋画像の読み取り部として露出するようなスリットが設けられている。透明回転ローラ29は、光が透過するように透明な材料、例えばアクリルやガラスなどにより構成され、筐体に設けられたスリットから外周面の一部を露出させて回転するように実装されている。また、透明回転ローラ29は、ローラ内部が中空になっており、この中空内に光源21(例えば、LED(Light Emitting Diode)など)、レンズ光学系(セルフォックレンズ22)、1次元撮像素子24を含む撮像機能部が実装されている。これら撮像機能部は、透明回転ローラ29の回転と連動しないように実装されている。
【0022】
セルフォックレンズ22は、透明回転ローラ29における被検体が圧接される部分(読み取り部)を1次元撮像素子24に結像させる。なお、セルフォックレンズに限るものではなく、ロッドレンズ群によって構成される結像光学系を用いること可能である。
【0023】
1次元撮像素子24は、CCDラインセンサまたはCMOSラインセンサなどによって構成されるもので、図4に示すように、各撮像素子24aの配列が透明回転ローラ29の回転軸と平行となるように実装されている。透明回転ローラ29を中空にしてその内部に撮像機能部を実装することで、指紋読み取り部20の筐体表面における実装面積及び筐体内の実装体積を小さくしている。
【0024】
次に、本実施形態における携帯電話に搭載された指紋照合装置の動作について説明する。
図5は、指紋照合装置による指紋照合処理を説明するためのフローチャートである。
まず、CPU10は、指紋照合処理の実行が例えばキー部19を通じて指示されると、画像照合プログラムを起動して指紋照合処理を開始する。CPU10は、指紋読み取り部20を通じて照合の対象とする指紋画像を取り込むための指紋画像取り込み処理を実行する(ステップS1)。
【0025】
図6には、指紋読み取り部20によって指紋画像を取り込む際の指の動かし方の一例を示している。まず、図6(a)に示すように、透明回転ローラ29上に読み取り部に被検体である指先が圧接されて、その状態で所定の方向(透明回転ローラ29の回転軸と垂直な方向)に透明回転ローラ29を回転させながら移動される。図6(b)では、手前方向に指が移動される様子を示している。
【0026】
図6(a)(b)に示すように、指紋の部分で透明回転ローラ29を回転させながら移動されることで、透明回転ローラ29の回転軸と平行に実行された1次元撮像素子24によって、指紋部分全体をスキャンすることができる。
【0027】
1次元撮像素子24から出力される画像信号は、A/D変換回路28によりデジタルデータ(指紋画像データ)に変換される。A/D変換回路28により変換された指紋画像データは、指紋読み取り部20から出力されてRAM14に記録される。指紋画像データは、例えば各画素が多値(例えば0〜255)の画素値で表される。指紋読み取り部20において光学的にスキャンにより読み取られた指紋画像データには、1次元撮像素子24の各撮像素子やセルフォックレンズ22(レンズ光学系)のばらつきなどの影響によって、画素値に偏りやばらつき等が含まれている場合ある。
【0028】
この画素値の偏りやばらつき等を補正するために、次に、CPU10は、指紋読み取り部20により読み取られた指紋画像データについて画像データ補正処理を施す(ステップS2)。本実施形態における画像データ補正処理では、処理対象として読み取られた指紋画像データの各画素の画素値をもとにして各画素値を補正する。
【0029】
図9は、画像データ補正処理の詳細について説明するためのフローチャートである。
1次元撮像素子24によって読み取られた指紋画像データは、図7に示すように、y軸方向に各撮像素子によって読み取られたデータが並んでいる。指紋画像データにおいては、y軸方向に切り出した1列の画像データは、各撮像素子に対応する他の列の画像データと性質が類似している。すなわち、指紋パターンは、指紋の隆線と谷線の何れかに該当する部分からなり、ほぼ一様なパターンであるので、何れの列の画像データも性質(各画素値の画素の割合など)や平均値などは大きく異ならない。こうした指紋画像データの特徴を利用して、以下に説明するように各画素を補正する。
【0030】
まず、1次元撮像素子24の各撮像素子ごとに、それぞれの撮像素子が読み取った画像から最大値(第1の画素値)と最小値(第2の画素値)となる画素値を検出する(ステップA1)。ここで、各撮像素子が読み込んだ画像データの各画素(画素値)は、図8に示すように、D={dij|i=1…n,j=1…m}によって表す。各撮像素子ごとの画素値の最大値maxと最小値minは以下の式(4)(5)によって算出される。
【0031】
max=MAX(dij|j=1…m) ;1≦i≦n …(4)
min=MIN(dij|j=1…m) ;1≦i≦n …(5)
ここで、MAX()、MIN()はそれぞれ最大値と最小値を求める関数である。
【0032】
次に、各撮像素子ごとにデータの幅、すなわちステップA1により求めた画素値の最大値と最小値の画素値幅を以下の式(6)のようにして算出する(ステップA2)。
【0033】
range=max−min ;1≦i≦n …(6)
次に、1次元撮像素子24の各撮像素子ごとに、撮像素子によって取り込まれた各画素について、画素値dijの画素値幅rangeに対する比を表す正規化データd’ijを以下の式(7)のようにして算出する(ステップA3)。
【0034】
【数2】
Figure 0004023396
【0035】
さらに、各撮像素子ごとに、それぞれの撮像素子によって取り込まれた各画素について求めた正規化データd’ijの平均値を以下の式(8)のようにして算出する(ステップA4)。
【0036】
【数3】
Figure 0004023396
【0037】
そして、正規化データd’ijの平均値を合わせた調整された画素データを算出する(ステップA5)。すなわち、CPU10は、ステップA4において算出された正規化データd’ijの平均値と画素が取り得る画素値(depth)をもとに、撮像素子に読み取られた画像データの各画素の画素値を以下の式(9)のようにして補正する。
【0038】
【数4】
Figure 0004023396
【0039】
ここで、depthは、1画素の最大画素値(例えば1画素8ビットで表される場合には255)である。なお、前述した式(9)で表すように比例計算によって調整された画素データを生成する場合には、算出された画素値が1画素の取り得る最大値や最小値を超える場合がある。その場合には、1画素が取り得る範囲内に収まるように、画素値を調整するクリッピング処理をするものとする。
【0040】
次に、CPU10は、画像データ補正処理によって補正された指紋画像データに対して、傾きや大きさを照合元となる登録指紋画像データと整合させるために正規化処理を実行する(ステップS3)。
【0041】
そして、CPU10は、正規化された指紋画像データに対して、指紋照合処理により登録指紋画像データとの照合を実行する(ステップS4)。指紋照合処理の前段階で照合対象となる指紋画像に対して画像データ補正処理が施されているため、良好な照合結果を期待することができる。
【0042】
CPU10は、指紋照合処理の結果(OK,NG)を例えば表示装置20において表示させる(ステップS5)。
【0043】
このようにして、画像データ補正処理を実行することによって、1次元撮像素子24により読み込まれた指紋画像データを、1次元撮像素子24の各撮像素子やセルフォックレンズ22(レンズ光学系)のばらつきなどの影響を排除するように補正することができる。本実施形態における画像データ補正処理では、予め調整用データなどを作成しておく必要がないため、予め画像補正のためのプレスキャンを行う必要がない。また、画像読み取り時における外光などの環境の変化にも対応した画像補正を実現しているので、環境の状態に関係なく常に安定した指紋照合結果を得ることが可能となる。
【0044】
次に、前述した実施形態の変形例(1)(2)について説明する。
変形例(1)
指紋画像読み込み処理時に、例えば透明回転ローラ29の表面にゴミなどが付着していた場合に、そのゴミの部分が指紋パターンが通常取り得る画素値とは異なる画素値となってしまい、その画素値が最大値あるいは最小値に該当してしまうことがある。こうした場合には、ゴミの部分に該当する画素の画素値の影響のために正しく画像補正をすることができなくなってしまう。こうした場合、補正後の指紋画像データでは、ゴミの部分に該当する列が全体的に他の列と画素値が異なり、筋(あるいは線)のようなパターンが生成されてしまう。
【0045】
前述した説明では、1次元撮像素子24の各撮像素子が取り込んだ画素から最大値と最小値の画素値を検出するとしているが、変形例(1)では最大値と最小値のそれぞれから指定された順番の画素の画素値を検出することで、ゴミなどの影響により読み取られた不正な画素値を持つ画素の影響を受けないように画像データ補正処理を実行する。
【0046】
図10には、図9中のステップA1に該当する変形例(1)の詳細な処理を示すフローチャートである。なお、画像データ補正処理(図9)における他の部分の処理は、前述した実施形態と同様にして実行されるものとして詳細な説明を省略する。
【0047】
なお、変形例(1)の方法を用いる場合には、各撮像素子が取り込んだ画像データに対する画素の順番を示す指定値を記憶装置12に記録しておくものとする。この指定値は、予め記憶装置12に記録されていても良いし、ユーザによりキー部19を通じて入力させて記録しても良い。例えば、各撮像素子が読み込んだ画素から検出すべき最大値からの順番(例えばx)と最小値からの順番(例えばy)が、それぞれ記録されているものとする。
【0048】
まず、1次元撮像素子24の最初の撮像素子によって読み取られた画素群を指定し(ステップB1)、その画素群をそれぞれの画素値をもとにソート(昇順あるいは降順)する(ステップB2)。
【0049】
次に、画素値が最大の画素からx番目の画素が持つ画素値を、正規化データを生成するための画素幅の最大値とし、また最小の画素からy番目の画素が持つ画素値を、正規化データを生成するための画素幅の最小値として検出する(ステップB3)。
【0050】
次に、最大値と最小値の検出対象とする次の撮像素子を指定し(ステップB4)、同様にして、この撮像素子によって読み取られた画素群から、最大値からx番目の画素の画素値と最小値からy番目の画素の画素値を検出する(ステップB5、B2,B3)。
【0051】
例えば、読み込んだ画像データの各画素の画素値D={dij|i=1…n,j=1…m}に対し、各撮像素子ごとにデータをソートし、i番目の撮像素子が取り込んだデータ{dij|j=1…m}中、最も画素値が大きいデータをsdi1、2番目に大きいデータをsdi2というように降順にソートしたデータを{sdik|k=1…m}と表すと、各撮像素子ごとにデータを正規化するためのmaxとminは以下のように算出される。
【0052】
max=sdix …(10)
min=sdi(m−y+1)…(11)
このようにして、変形例(1)により正規化データを生成するための画素値幅の最大値max、最小値minを算出することにより、ゴミなどが透明回転ローラ29に付着しているなどのために、指紋画像中では通常存在しない画素値の画素が存在しても、こうした画素を除去した上で最大値と最小値が検出されることになり、ごみなどの影響を除去して画像データの補正を実現することができる。
【0053】
変形例(2)
前述した変形例(1)では、各撮像素子が読み取った画素群から、最大値と最小値のそれぞれx番目とy番目の画素値を検出するとしているが、最大値から指定番目までの画素の集合(画素群)、最小値から指定番目までの画素の集合(画素群)から、正規化データを生成するための画素幅の最大値と最小値を算出するようにしても良い。ここでは、例えば、それぞれの画素の集合(画素群)の平均値を画素幅の最大値と最小値とする。
【0054】
図11には、図9中のステップA1に該当する変形例(2)の詳細な処理を示すフローチャートである。なお、画像データ補正処理(図9)における他の部分の処理は、前述した実施形態と同様にして実行されるものとして詳細な説明を省略する。なお、変形例(2)の方法を用いる場合には、変形例(1)と同様にして、各撮像素子が取り込んだ画像データに対する画素の順番を示す指定値を記憶装置12に記録しておくものとする。
【0055】
まず、1次元撮像素子24の最初の撮像素子によって読み取られた画素群を指定し(ステップC1)、その画素群をそれぞれの画素値をもとにソート(昇順あるいは降順)する(ステップC2)。
【0056】
次に、画素値が最大の画素からx番目までの画素が持つ画素値の平均を算出し、この平均値を正規化データを生成するための画素幅の最大値とし、また最小の画素からy番目の画素が持つ画素値の平均を算出し、この平均値を正規化データを生成するための画素幅の最小値とする(ステップC3)。
【0057】
次に、最大値と最小値の検出対象とする次の撮像素子を指定し(ステップC4)、同様にして、この撮像素子によって読み取られた画素群から、最大値からx番目の画素までの画素値の平均と最小値からy番目の画素までの画素値の平均を算出してそれぞれ最大値、最小値とする(ステップC5、C2,C3)。
【0058】
例えば、最大の画素からx番目までの画素が持つ画素値の平均、最小の画素からy番目の画素が持つ画素値の平均は、以下の式(12)(13)により算出される。
【0059】
【数5】
Figure 0004023396
【0060】
このようにして、変形例(2)により最大値、最小値を算出することにより、安定した結果を得ることができる。すなわち、指紋画像データにおいては、1つの撮像素子から得られるデータ内に多くの指紋の隆線(山)と谷線(谷)に相当する画像部分が含まれている。そのため、最大値と最小値のそれぞれから指定番目までの画素の集合(画素群)には、それぞれ画素値が近い画素が多く存在することになり、画素群の平均値を求めることで、ゴミなどが透明回転ローラ29に付着していたとしても、ゴミの部分に該当する画素による影響を少なくすることができる。
【0061】
なお、前述した説明では、本実施形態における画像データ読み取り装置を携帯電話に実装した場合を例にして説明しているが、他の情報機器に実装するようにしても良いし、画像データ読み取り装置として単独で構成されるものであっても良い。
【0062】
また、前述した説明では、指紋パターンを読み取る場合について説明しているが、掌紋パターンなどの画像データを読み取る場合などに適用することもできる。すなわち、指紋読み取り部20(1次元撮像素子24)によって取り込まれる画像が、前述した指紋画像と同様にして、y軸方向での平均値や最大・最小値が各撮像素子間で類似している場合に適用することが可能である。
【0063】
また、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、前述した実施形態の内容は可能な限り適宜組み合わせて実施しても良い。前述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られるので有れば、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0064】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、プレスキャンや調整データの生成を行うことなく、処理対象として取り込んだ指紋画像データから1次元撮像素子の各撮像素子やレンズ光学系などのばらつきなどの影響を排除する補正をすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係わる画像処理装置を搭載した携帯電話の電子回路構成を示すブロック図。
【図2】本実施形態における指紋読み取り部20が実装された携帯電話の外観例を示す図。
【図3】本実施形態における指紋読み取り部20の機構部分の概略構成(側面断面図)を示す図。
【図4】1次元撮像素子24における各撮像素子24aの配列を示す図。
【図5】本実施形態における指紋照合装置による指紋照合処理を説明するためのフローチャート。
【図6】指紋読み取り部20によって指紋画像を取り込む際の指の動かし方の一例を示す図。
【図7】1次元撮像素子24によって読み取られた指紋画像データの一例を示す図。
【図8】各撮像素子が読み込んだ画像データの各画素(画素値)の配列を示す図。
【図9】本実施形態における画像データ補正処理の詳細について説明するためのフローチャート。
【図10】図9中のステップA1に該当する変形例(1)の詳細な処理を示すフローチャート。
【図11】図9中のステップA1に該当する変形例(2)の詳細な処理を示すフローチャート。
【符号の説明】
10…CPU
12…記憶装置
14…RAM
16…通話ユニット
18…表示部
19…キー部
20…指紋読み取り部
21…光源
22…セルフォックレンズ(レンズ光学系)
24…1次元撮像素子
24a…撮像素子
26…撮像制御回路
28…A/D変換回路
29…透明回転ローラ

Claims (6)

  1. 複数の撮像素子が配列された1次元撮像素子によって取り込まれた、各画素が多値の画素値により表される指紋画像データを処理する指紋画像処理装置において、
    前記撮像素子が取り込んだ前記指紋画像データから各々最大とする画素値と最小とする画素値を検出する値検出手段と、
    前記値検出手段によって検出された前記最大とする画素値と前記最小とする画素値をもとに、前記撮像素子により読み取られた画素の画素値幅を検出する幅検出手段と、
    前記撮像素子に読み取られた指紋画像データの各画素について、画素値の前記画素値幅に対する比を表す正規化データを生成する正規化データ生成手段と、
    前記正規化データ生成手段により生成された各撮像素子における各画素の前記正規化データの平均値を算出する正規化データ平均値算出手段と、
    前記正規化データ平均値算出手段により算出された各撮像素子に対する前記平均値と前記画素が取り得る画素値をもとに、前記撮像素子に読み取られた指紋画像データの各画素の画素値を補正する画素値補正手段と
    を具備したことを特徴とする指紋画像処理装置。
  2. 前記値検出手段は、
    前記各撮像素子が取り込んだ前記指紋画像データから前記最大とする画素値として最大値を検出し、前記最小とする画素値として最小値を検出することを特徴とする請求項1記載の指紋画像処理装置。
  3. 前記検出手段は、
    前記撮像素子が取り込んだ前記指紋画像データに対する画素の順番を示す指定値を記録する指定値記録手段と、
    前記撮像素子が取り込んだ前記指紋画像データから、最大画素値の画素から前記指定値記録手段に記録された指定値番目に大きい画素の画素値を前記最大とする画素値として検出する第1検出手段と、
    前記撮像素子が取り込んだ前記指紋画像データから、最小画素値の画素から前記指定値記録手段に記録された指定値番目に小さい画素の画素値を前記最小とする画素値として検出する第2検出手段と
    を具備することを特徴とする請求項1記載の指紋画像処理装置。
  4. 前記検出手段は、
    前記撮像素子が取り込んだ前記指紋画像データに対する画素の順番を示す指定値を記録する指定値記録手段と、
    前記撮像素子が取り込んだ前記画像データから、最大画素値の画素から前記指定値記録手段に記録された指定値番目までの画素の画素値の平均を前記最大とする画素値として設定する第1設定手段と、
    前記撮像素子が取り込んだ前記指紋画像データから、最小画素値の画素から前記指定値記録手段に記録された指定値番目までの画素の画素値の平均を前記最小とする画素値として設定する第2設定手段と
    を具備することを特徴とする請求項1記載の指紋画像処理装置。
  5. 前記画素値補正手段によって画素値が補正された指紋画像データについて指紋照合を行う指紋照合手段を具備したことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載された指紋画像処理装置。
  6. 複数の撮像素子が配列された1次元撮像素子によって取り込まれた、各画素が多値の画素値により表される指紋画像データを処理する指紋画像処理プログラムであって、
    コンピュータを、
    前記各撮像素子が取り込んだ前記指紋画像データから各々最大とする画素値と最小とする画素値を検出する値検出手段、
    前記値検出手段によって検出された前記最大とする画素値と前記最小とする画素値をも とに、前記各撮像素子により読み取られた画素の画素幅を検出する幅検出手段、
    前記各撮像素子に読み取られた指紋画像データの各画素について、画素値の前記画素値幅に対する比を表す正規化データを生成する正規化データ生成手段、
    前記正規化データ生成手段により生成された各撮像素子における各画素の前記正規化データの平均値を算出する正規化データ平均値算出手段、
    前記正規化データ平均値算出手段により算出された各撮像素子に対する前記平均値と前記画素が取り得る画素値をもとに、前記各撮像素子に読み取られた指紋画像データの各画素の画素値を補正する画素値補正手段、
    として機能させる指紋画像処理プログラム。
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