JP4022767B2 - 流体封入式筒形マウント - Google Patents

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本発明は、全体として略円筒形状をもって形成されて内部に封入された非圧縮性流体の流動作用に基づき、主として軸方向に入力される振動に対する防振効果を発揮する流体封入式筒形マウントに係り、例えば、自動車用のエンジンマウントやボデーマウント,キャブマウント等に対して好適に採用され得る、新規な構造の流体封入式筒形マウントに関するものである。
従来から、振動伝達系を構成する部材間に介装される防振連結体乃至は防振支持体の一種として、インナ軸部材とアウタ筒部材をゴム弾性体で連結せしめた筒形の防振装置が知られており、更に、特許文献1や特許文献2には、内部に封入した非圧縮性流体の流動作用を利用して主として軸方向の入力振動に対する防振効果を得るようにした流体封入式の筒形マウントが提案されている。これら特許文献1,2に開示されている従来構造の流体封入式筒形マウントは、インナ軸部材とアウタ筒部材における軸方向一方の端部間を本体ゴム弾性体で弾性的に連結すると共に、軸方向他方の端部間を可撓性膜で連結し、更に軸方向中間部分を隔壁ゴム弾性体で連結することにより、壁部の一部が本体ゴム弾性的で構成された受圧室と、壁部の一部が可撓性膜で構成された平衡室を、隔壁ゴム弾性体を挟んだ軸方向両側に形成して、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体を封入すると共に、受圧室と平衡室をオリフィス通路で相互に連通せしめた構造とされている。
かかる流体封入式筒形マウントにおいては、インナ軸部材とアウタ筒部材の間に軸方向の振動が入力された際に、受圧室と平衡室の間に相対的な圧力変動が惹起されて、かかる圧力変動に基づいてオリフィス通路を通じての流体流動が生ぜしめられることとなり、このオリフィス通路を流動せしめられる流体の共振作用等の流動作用に基づいて防振効果が発揮されるようになっている。
ところが、上述の特許文献1,2に記載されている如き従来構造の流体封入式防振装置では、軸方向の振動入力時にオリフィス通路を通じて受圧室と平衡室の間で流動せしめられる流体流動量を十分に確保することが難しく、そのために、流体の流動作用に基づく防振効果が未だ十分に発揮され難いという問題があった。
なお、そのような問題に対処するために、例えば特許文献3や特許文献4,特許文献5等に記載されているように、受圧室と平衡室を仕切る隔壁ゴム弾性体の内周縁部又は外周縁部をインナ軸部材又はアウタ筒部材に対して非接着として軸方向に摺動可能とすることにより隔壁ゴム弾性体の軸方向変位量を大きくすることも考えられるが、隔壁ゴム弾性体の内周縁部又は外周縁部をインナ軸部材又はアウタ筒部材に非接着とすると、かかる部位におけるシール性と耐久性を十分に確保することが難しく、受圧室と平衡室の短絡によって目的とする防振効果が発揮されなくなるおそれがある。
また、特許文献6においては、隔壁ゴム弾性体を軸方向に延びる略樽形筒体形状とすることが提案されているが、このような樽形筒体形状の隔壁ゴム弾性体も軸方向の振動入力時には軸方向に屈曲して伸縮変形するだけで、受圧室と平衡室の間には、未だ十分な相対的圧力変動が生ぜしめられ難いという問題がある。しかも、隔壁ゴム弾性体が受圧室側に8大きく膨らんだ形状とされることから、受圧室の容積が十分に確保され難くなって、特に大きなストロークの振動に対する防振性能が低下するおそれもある。
特公平7−88866号公報 特開平8−152041号公報 特開平8−170686号公報 特開平9−229128号公報 特開平10−132016号公報 実開平6−22642号公報
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、軸方向の振動入力時にオリフィス通路を通じての流体流動量が有利に確保されて流体の流動作用に基づく防振効果が一層効果的に発揮されると共に、優れた耐久性能が発揮され得る、改良された構造の流体封入式筒形マウントを提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
(本発明の態様1)
本発明の態様1は、インナ軸部材の外周側にアウタ筒部材を離隔配置せしめて、それらインナ軸部材とアウタ筒部材における軸方向一方の端部間を本体ゴム弾性体で連結すると共に、軸方向他方の端部間を可撓性膜で連結し、更に軸方向中間部分を隔壁ゴム弾性体で連結することにより、該隔壁ゴム弾性体を軸方向に挟んだ各一方の側に、壁部の一部が該本体ゴム弾性体で構成されて該インナ軸部材と該アウタ筒部材の間への軸方向の振動入力時に圧力変動が生ぜしめられる受圧室と、壁部の一部が該可撓性膜で構成されて該可撓性膜の変形に基づいて容積変化が容易に許容される平衡室を形成して、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体を充填すると共に、該受圧室と該平衡室を相互に接続するオリフィス通路を設けた流体封入式筒形マウントにおいて、前記アウタ筒部材に嵌着固定されて前記インナ軸部材側に向かって突出する環状のオリフィス部材を設けて、該オリフィス部材に対して前記隔壁ゴム弾性体を固着せしめ、該オリフィス部材の内周縁部から前記本体ゴム弾性体側に向かって軸方向に突出し且つ略円弧状の縦断面形状で湾曲して内周側に延びる略円環ドーム形状をもって該隔壁ゴム弾性体を構成し、該隔壁ゴム弾性体の湾曲して延びた先端部の内周面に嵌着スリーブを固着せしめて該嵌着スリーブを該インナ軸部材に外嵌固定することにより、該隔壁ゴム弾性体を該アウタ筒部材と該インナ軸部材の間に跨がって配設すると共に、該オリフィス部材を利用して前記オリフィス通路を形成する一方、略円弧状の縦断面形状とされた該隔壁ゴム弾性体の肉厚寸法を周方向の中間部分から該嵌着スリーブに固着された先端部に向かって次第に厚肉となる拡幅断面形状としたことを、特徴とする。
このような本態様に従う構造とされた流体封入式筒形マウントにおいては、隔壁ゴム弾性体が受圧室に向かって軸方向に突出形成されていることから、軸方向の振動入力時に隔壁ゴム弾性体が受圧室に対するピストンのように作動せしめられることとなる。即ち、軸方向の振動入力に際して、インナ軸部材に対してアウタ筒部材が本体ゴム弾性体側に軸方向変位せしめられた際には、隔壁ゴム弾性体における筒状乃至は環状の外周部分がアウタ筒部材と共に軸方向で受圧室側に変位して、円環ドーム形状とされた該隔壁ゴム弾性体が受圧室内が軸方向で受圧室に対して押し込まれるように作動せしめられる一方、インナ軸部材に対してアウタ筒部材が本体ゴム弾性体と反対側に軸方向変位せしめられた際には、隔壁ゴム弾性体の円筒状部がアウタ筒部材と共に軸方向で平衡室側に変位して円環ドーム状部を受圧室から軸方向に引き抜くように作動せしめられる。それ故、軸方向の振動入力時に受圧室に対して有効な圧力変動が生ぜしめられて、受圧室と平衡室の圧力差に基づくオリフィス通路を通じての流体流動量が大きく確保されて、オリフィス通路を流動せしめられる流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果が極めて効果的に発揮され得るのである。
また、隔壁ゴム弾性体は、その軸方向両端縁部がインナ軸部材の外周面とアウタ筒部材の内周面にそれぞれ固着されていることから、隔壁ゴム弾性体のインナ軸部材やアウタ筒部材に対する取付部位における受圧室と平衡室の間での圧力のリーク(オリフィス通路の短絡)も完全に防止されて、安定した防振効果が長期間に亘って安定して発揮され得る。
加えて、略円環ドーム形状という特定形状が付与された隔壁ゴム弾性体においては、上述の如くインナ軸部材とアウタ筒部材からの軸方向荷重が及ぼされた際に、その弾性変形に伴う応力の集中が懸念される。ここにおいて、本態様は、外観上で座屈状態に近い変形外観をもって屈曲せしめられる周方向の略中央部分よりも、インナ軸部材側の端部の耐久性に着目したことに、一つの特徴を有している。そして、円環ドーム形状の隔壁ゴム弾性体に対して、周方向の中間部分からインナ軸部材側端部に向かって次第に厚肉となる特殊な拡幅断面形状を付与したことにより、かかる隔壁ゴム弾性体において、上述の如きピストン作用に基づく良好な防振性能を確保しつつ、優れた耐久性を実現せしめ得たのであり、そこにも、本態様に係る流体封入式筒形マウントにおける大きな技術的意義が存するのである。
(本発明の態様2)
本発明の態様2は、前記態様1に係る流体封入式筒形マウントにおいて、略円弧状の縦断面形状とされた前記隔壁ゴム弾性体の内周面を、前記オリフィス部材に固着された側の端部よりも周方向の中間部分において該隔壁ゴム弾性体をえぐるようにして拡径する拡径湾曲面としたことを、特徴とする。
このような本態様においては、隔壁ゴム弾性体において、構造上の理由から外周側表面よりも小面積となることを避け得ない内周側表面の有効自由長を効率的に大きく設定することが可能となる。その結果、インナ軸部材とアウタ筒部材の間からの軸方向荷重入力に際して隔壁ゴム弾性体の内周面に発生する応力が分散され得て、最大発生応力が低減されることとなり、以て、隔壁ゴム弾性体ひいては流体封入式筒形マウントの耐久性の更なる向上が図られ得るのである。
(本発明の態様3)
本発明の態様3は、前記態様2に係る流体封入式筒形マウントにおいて、略円弧状の縦断面形状とされた前記隔壁ゴム弾性体の外周面が、前記オリフィス部材に固着された側の端部において最も大径とされており、該隔壁ゴム弾性体の内周面が前記拡径湾曲面とされることによって、該隔壁ゴム弾性体の肉厚寸法が周方向の中間部分において最も小さくされていることを、特徴とする。
本態様においては、隔壁ゴム弾性体の外周面がオリフィス部材から軸方向に立ち上がって略円筒状乃至は径方向内方に向かうテーパ円筒状をもって形成されることとなり、外方への太鼓状の膨らみを持たない形状をもって隔壁ゴム弾性体の外周面が形成される。これにより、隔壁ゴム弾性体に対して軸方向の圧縮荷重が及ぼされた場合でも、隔壁ゴム弾性体が不必要に外周側に膨らんだり、それによって顕著な座屈的変形が容易に発生してしまうようなことが防止され得るのであり、上述の如き隔壁ゴム弾性体によるピストン作用が有効に且つ安定して発揮され得ると共に、耐久性の更なる向上が図られ得ることとなる。
(本発明の態様4)
本発明の態様4は、前記態様2又は3に係る流体封入式筒形マウントであって、前記隔壁ゴム弾性体において略円弧状の縦断面形状とされた周方向の中央部分の外周面と内周面を何れも略一定の曲率半径とすると共に、該外周面の曲率中心よりも該内周面の曲率中心を該隔壁ゴム弾性体に近い位置に設定することにより、周方向の中間部分において該隔壁ゴム弾性体をえぐるようにして拡径する前記拡径湾曲部を実現せしめたことを、特徴とする。
本態様においては、隔壁ゴム弾性体の外周面と内周面における縦断面が何れも円弧形状とされることから、隔壁ゴム弾性体の成形用金型の設計や製作等が容易となると共に、隔壁ゴム弾性体における応力の分散とそれによる集中荷重の低減が一層効率的に実現され得ることとなる。また、外周面の曲率中心よりも内周面の曲率中心を径方向外方に位置せしめたことにより、二つの円弧形縦断面の内外周面を利用して、態様1に記載の拡幅断面形状と、態様2に記載の拡径湾曲面とを、何れも有利に形成することが可能となる。
(本発明の態様5)
本発明の態様5は、前記態様2乃至4の何れかに係る流体封入式筒形マウントにおいて、前記拡径湾曲面において最も拡径された点が、前記オリフィス部材の内周面よりも内周側に位置せしめられていることを、特徴とする。
本態様においては、隔壁ゴム弾性体の内周面において拡径湾曲部を成形するための成形型の外形寸法がオリフィス部材の内径寸法よりも小さくされることから、かかる成形型を分割型等の複雑な構造とすることなく、隔壁ゴム弾性体の成形に際して容易に型抜きすることが可能となって、隔壁ゴム弾性体ひいては流体封入式筒型マウントの製造が容易となる。
(本発明の態様6)
本発明の態様6は、前記態様1乃至5の何れかの態様に係る流体封入式筒形マウントにおいて、前記隔壁ゴム弾性体における前記オリフィス部材側の端部の内径寸法を該オリフィス部材の内径寸法よりも小さくすると共に、該隔壁ゴム弾性体を該オリフィス部材の内周面に延び出させて該オリフィス部材の内周面に被着せしめたことを、特徴とする。
本態様においては、隔壁ゴム弾性体のオリフィス部材に対する被着面積を有利に確保することにより、隔壁ゴム弾性体のオリフィス部材に対する固着強度の確保や、かかる固着部位における応力集中の低減などが、有利に図られ得る。また、例えばオリフィス部材の内周面に被着された隔壁ゴム弾性体によって、インナ軸部材とアウタ筒部材の軸直角方向における相対的変位量を緩衝的に制限する軸直角方向のストッパ機構を構成することも可能である。
(本発明の態様7)
本発明の態様7は、前記態様1乃至6の何れかの態様に係る流体封入式筒形マウントであって、軸方向一方の側において、前記インナ軸部材の軸方向端部から軸直角方向外方に広がる鍔状部を設ける一方、前記アウタ筒部材の軸方向端部の開口部分を軸方向外方に向かって次第に拡開するテーパ筒状部として、それら鍔状部とテーパ筒状部の対向面を前記本体ゴム弾性体で連結せしめたことを、特徴とする。
本態様においては、鍔状部とテーパ筒状部の大きさや傾斜角度等の形状を適当に設定することにより、筒型マウントにおける軸方向のばね特性や、軸方向と軸直角方向でのばね比などを容易に調節することが可能となる。
(本発明の態様8)
本発明の態様8は、前記態様1乃至7の何れかの態様に係る流体封入式筒形マウントであって、前記隔壁ゴム弾性体が、組付前の自由状態よりも軸方向に引き延ばされた状態で、前記インナ軸部材と前記アウタ筒部材の間に組み付けられていることを、特徴とする。
本態様においては、流体の流動作用に基づく防振性能の向上効果を目的として採用した、前述の如き略環状ドーム形状という特定形状を有する隔壁ゴム弾性体において、特に軸方向の圧縮方向の変形時における局部的な応力集中を軽減することが出来るのであり、それによって、隔壁ゴム弾性体における前述の如きピストン作用を十分に確保しつつ、隔壁ゴム弾性体の耐久性を向上せしめることが実現可能となる。
(本発明の態様9)
本発明の態様9は、前記態様1乃至8の何れかの態様に係る流体封入式筒形マウントであって、前記隔壁ゴム弾性体の一方の端部が、前記オリフィス部材の軸方向端面から軸方向に向かって突出している一方、該隔壁ゴム弾性体の他方の端部が、前記嵌着スリーブの外周面から軸直角方向に向かって突出していることを、特徴とする。
本態様においては、インナ軸部材とアウタ筒部材の間に軸方向の振動が入力せしめられた際、略環状ドーム形状とされた隔壁ゴム弾性体において前述の如きピストン作用を発揮し得る変形が、一層効率的に生ぜしめられることとなる。
なお、上述の態様1乃至9の何れかの態様に係る流体封入式筒形マウントは、例えば自動車のエンジンマウントやボデーマウントなどとして採用されることとなる。その場合には、装着状態下において、常時、パワーユニットや車両ボデー等の静的な初期荷重が軸方向に作用せしめられることとなる。このように常時一定の初期荷重が及ぼされる場合でも、上述の如き態様の流体封入式筒形マウントにおいては、略環状ドーム形状とされた隔壁ゴム弾性体は純圧縮や純引張でなく剪断変形を含む弾性変形によって対応することから、良好なる耐久性が発揮される。なかでも特に、前記態様8に記載の流体封入式筒形マウントにおいては、装着状態下で及ぼされる静的な初期荷重によって、装着前の組付状態下で隔壁ゴム弾性体に及ぼされた引張応力が軽減乃至は解消され、或いは逆に圧縮応力が僅かに作用せしめられた状態となることから、隔壁ゴム弾性体において一層優れた耐久性が発揮されると共に、隔壁ゴム弾性体における過度の変形が回避されて、目的とするピストン作用も一層安定して発揮され得ることとなる。
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされた流体封入式筒形マウントでは、略円環ドーム状部を備えた特定構造の隔壁ゴム弾性体を採用したことにより、軸方向の振動入力時にオリフィス通路を流動せしめられる流体流量が有利に確保され得て、かかる流体の流動作用に基づく防振効果を有利に得ることが出来る。しかも、かかる特定構造の隔壁ゴム弾性体において、荷重入力時における発生応力が効率的に軽減され得ることから、隔壁ゴム弾性体延いては筒形マウント全体の耐久性を有利に確保することが可能となるのである。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1には、本発明の一実施形態としての自動車用のエンジンマウント10が示されている。このエンジンマウント10は、インナ軸部材としての内筒金具12とアウタ筒部材としての外筒金具14が、本体ゴム弾性体16等によって弾性的に連結された構造とされており、図2に示されているように自動車のパワーユニット17とボデー19の間に装着されて、パワーユニット17をボデー19に対して防振支持せしめるようになっている。なお、以下の説明中、上下方向は、原則として装着状態で略鉛直方向となる図1中の上下方向をいうものとする。
より詳細には、内筒金具12は、全体として厚肉小径のストレートな略円筒形状を有している。内筒金具12の軸方向中間部分の外周面には段差状部が設けられており、段差状部を挟んで軸方向上側が大径外周面13とされている。また、段差状部より軸方向上方に位置して、大径外周面13から径方向外方に突出するようにして環状凸部15が一体形成されている。
さらに、内筒金具12の軸方向上端部には、鍔状部としての略円板形状を有する拘束板金具18が溶接等で固着されている。拘束板金具18は、内筒金具12と同一中心軸上で軸直角方向に広がって配設されており、中央部分には、内筒金具12の中心孔20と略同じ内径の中央孔22が形成されている。また、内筒金具12と拘束板金具18は、鉄等の金属材により十分な剛性を発揮し得る部材寸法をもって形成されている。そして、この内筒金具12は、図2に示すようにパワーユニット17に突設されたロッド21が中心孔20に挿通されて、このロッド21に対してナット23で締付固定されることにより、パワーユニット17に固定的に取り付けられるようになっている。なお、内筒金具12の下端面には、軸直角方向に広がるストッパプレート25が重ね合わされてナット23で締付固定されている。
一方、外筒金具14は、内筒金具12の外形寸法よりも十分に大きな内径寸法と内筒金具12よりも小さな軸方向寸法を有しており、内筒金具12に外挿されて、内筒金具12と略同一中心軸上に配設されている。そして、かかる配設状態下、内筒金具12と外筒金具14は、径方向に所定距離を隔てて対向位置せしめられていると共に、外筒金具14が、内筒金具12の軸方向中間部分に位置せしめられており、外筒金具14の軸方向両側から内筒金具12の軸方向両端部が、それぞれ所定長さで突出せしめられている。また、外筒金具14の軸方向上側開口部分には、軸方向外方に向って次第に径方向に広がるテーパ筒状部24が一体形成されており、このテーパ筒状部24が、内筒金具12の拘束板金具18に対して、軸方向で所定距離を隔てて対向せしめられている。そして、外筒金具14は、図2に示すように、略筒状のブラケット金具27に圧入固定され、該ブラケット金具27を介して自動車のボデー19に対して、ボルト29で固定的に取りつけられるようになっている。
また、このように互いに内外挿状態で配設された内外筒金具12,14は、軸方向の上側端部分が、軸方向所定長さに亘って本体ゴム弾性体16にて相互に連結されている。かかる本体ゴム弾性体16は、図3にも示されているように、全体として厚肉の略円環ブロック形状を有しており、内周面が内筒金具12の外周面に加硫接着されていると共に、外周面が外筒金具14の内周面に加硫接着されていることにより、それら内外筒金具12,14を備えた第一の一体加硫成形品26として形成されている。特に本実施形態では、本体ゴム弾性体16が、拘束板金具18とテーパ筒状部24の各対向面に対しても、それぞれ加硫接着されており、それらの対向面間に介在せしめられている。また、内筒金具12の環状凸部15が本体ゴム弾性体16内に突出して埋設されており、本体ゴム弾性体16の内筒金具12への接着面積が大きくされていると共に、本体ゴム弾性体16の下部の内周部分に対して、環状凸部15による変形拘束力が及ぼされるようになっている。
さらに、本体ゴム弾性体16は、内外筒金具12,14の対向面間を軸方向下方に向かって所定長さで延び出していると共に、その軸方向下端面は、略逆すり鉢形状で下方に向かって開口するテーパ状内面28とされている。また、外筒金具14の内周面上には、本体ゴム弾性体16の下側端面から軸方向下方に向かって延び出す筒形のシールゴム層30が、外筒金具14の内周面の略全体を覆うようにして、本体ゴム弾性体16と一体形成されて、外筒金具14に加硫接着されている。更に、シールゴム層30の内周面には、本体ゴム弾性体16から軸方向下方に向かって所定長さで延び出す位置決め突部33が一体形成されている。そして、これら位置決め突部33の下端面が、外筒金具14の軸方向中間部分に位置する段差面とされている。
また一方、本体ゴム弾性体16の軸方向上側部分は、外筒金具14の上側開口部から更に軸方向上方に向かって突出せしめられており、その突出先端面34が拘束板金具18に対して加硫接着されている。
一方、内外筒金具12,14における軸方向下側の端部間には、薄肉ゴム膜からなる可撓性膜としてのダイヤフラム36が配設されている。このダイヤフラム36は、図5にも示されているように、筒状部の上端開口部が外周側に延び出すと共に、筒状部の下側開口部が内周側に延び出した、周方向の全周に亘って略一定のクランク状断面の筒体形状を有している。そして、軸方向上端の外周縁部が大径の略円筒形状のアウタリング38に加硫接着されていると共に、軸方向下端の内周縁部が小径の略円筒形状のインナリング40に加硫接着されていることにより、ダイヤフラム36が、それらアウタリング38とインナリング40を備えた第二の一体加硫成形品42として形成されている。また、インナリング40の内周面には、シールゴム層44が、ダイヤフラム36と一体形成されている。
そして、アウタリング38が外筒金具14の軸方向下端部に内挿されて嵌着固定されている一方、インナリング40が内筒金具12の軸方向下端部に外挿されて嵌着固定されている。要するに、ダイヤフラム36は、内外筒金具12,14間への装着状態下においても、十分な弛みをもって弛緩状態で配設されており、軸方向の弾性変形が十分なストロークをもって極めて容易に生ぜしめられ得るようにされているのである。なお、アウタリング38およびインナリング40は、鉄等の金属材で形成されており、外筒金具14や内筒金具12との嵌着面間には、シールゴム層30やシールゴム層44が挟圧配設されて、それらの嵌着面間が流体密にシールされている。
これにより、内外筒金具12,14は、軸方向上側の端部間が本体ゴム弾性体16で流体密に連結されていると共に、軸方向下側の端部間がダイヤフラム36で流体密に連結されており、以て、内外筒金具12,14の径方向対向面間において、外部空間に対して遮断された密閉状態の流体封入領域48が形成されている。
そして、この流体封入領域48には、水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油等の非圧縮性流体が充填されて封入されている。特に、本実施形態では、後述する流体の共振作用に基づく防振効果を有利に得るために、0.1Pa・s以下の粘度を有する低粘性流体が好適に採用される。
さらに、本体ゴム弾性体16とダイヤフラム36の間には、隔壁ゴム弾性体としての隔壁ゴム50が配設されて流体封入領域48に収容されており、この隔壁ゴム50によって、内外筒金具12,14の軸方向中間部分が相互に弾性的に連結されている。
かかる隔壁ゴム50は、図6〜7に加えて図8に拡大図が示されているように、全体としてマウント中心軸55回りに拡がる回転体形状を有しており、碗をふせたようなドーム状体の天頂部分に円形孔を貫設せしめた略円環ドーム形状とされている。より詳細には、図8に示された縦断面において、何れも円環状乃至は円筒状をもって外周部分および内周部分に位置せしめられたアウタ固定部54aおよびインナ固定部54bと、それらアウタ固定部54aとインナ固定部54bの間に跨がって延びる中間部54cを含んで形成されている。中間部54cは、円弧状に湾曲して四半周弱の長さで延びる縦断面形状を有している。また、この中心部54cの大径側の下端部に一体形成されたアウタ固定部54aは、軸方向に下方に向かって延びている一方、中心部54cの小径側の上端部に一体形成されたインナ固定部54bは、径方向内方に向かって延びている。
また、アウタ固定部54aは、その先端部である軸方向下方に向かって次第に断面幅寸法:Baが大きくなる拡幅断面形状とされている。更にまた、インナ固定部54bは、その先端部である径方向内方に向かって次第に断面幅寸法:Bbが大きくなる拡幅断面形状とされている。
更にまた、中間部54cは、図8に示された縦断面において、内外周面が何れも略一定の曲率半径:Ra,Rbの円弧形状とされているが、内周面の曲率中心:Oaと外周面の曲率中心:Obが異なる位置に設定されている。具体的には、両曲率中心:Oa,Obは、何れも、オリフィス金具56の上端面よりも上方に位置し、且つマウント中心軸55から径方向外方に所定距離だけ離れた位置に設定されている。加えて、外周面の曲率中心:Obに比して内周面の曲率中心:Oaの方が、中間部54cの近くに位置せしめられている。特に本実施形態では、図8に示された縦断面において、外周面の曲率中心:Obの外周側で且つ僅か上方に離れた位置に内周面の曲率半径:Oaが位置せしめられている。
これにより、中間部54cの肉厚寸法:Bcが周方向で変化せしめられており、周方向の中間部分で最も肉厚寸法が小さく、周方向両側に向かって次第に肉厚寸法が大きくなるようにされている。しかも、中間部54cの外周面は、アウタ固定部54aの外周面の上端部から軸方向上方か、それよりも内周側に向かう方向に延び出して、アウタ固定部54aの上端部に接続されているが、一方、中間部54cの内周面は、アウタ固定部54aの内周面の上端部から外周側に向かう方向に延び出して、アウタ固定部54aの上端部に接続されている。要するに、マウント中心軸55に対して軸直角方向に広がる平面に対する軸方向の投影において、中間部54cの内周面の曲率中心:Oaとアウタ固定部54aの下端部内周面との間の距離:Lよりも、中間部54cの内周面の曲率半径:Raの方が所定量だけ大きく設定されている。
而して、隔壁ゴム50の内周面は、アウタ固定部54aよりも中間部54c側において外周側にえぐられるようにしてマウント中心軸55から離隔して拡径されている。このようにえぐるような形状が設定されていることにより、隔壁ゴム50の内周面は、図8に示された縦断面において、円弧方向での自由長が大きく設定されているのである。
そして、アウタ固定部54aの軸方向下端面が、オリフィス部材としてのオリフィス金具56が加硫接着されている。このオリフィス金具56は、大径厚肉円筒形状を有しており、外周面には凹溝62が形成されている。かかる凹溝62は、略螺旋状に延びており、その両端部が、オリフィス金具56の軸方向各一方の面に対して連通孔64,66を通じて開口せしめられている。なお、本実施形態では、オリフィス金具56の内径寸法が、アウタ固定部54aの内径寸法と外形寸法の中間値とされており、それによって、アウタ固定部54aの外周部分がオリフィス金具56の上端面に被着されていると共に、アウタ固定部54aの内周部分がオリフィス金具56の内周面上に延び出して被着されている。これにより、アウタ固定部54aの内周面には、径方向内方に突出する緩衝ゴム層52が、隔壁ゴム50によって一体形成されている。
また、インナ固定部54bの径方向内周面には、嵌着スリーブとしての嵌着筒金具58が加硫接着されている。この嵌着筒金具58は、薄肉の円筒形状を有しており、外周面に対してインナ固定部54bが被着されている。要するに、隔壁ゴム50は、オリフィス金具56と嵌着筒金具58を備えた第三の一体加硫成形品60として形成されているのである。
そして、嵌着筒金具58に対して、内筒金具12が圧入されて、内筒金具12の軸方向中間部分に嵌着筒金具58が外嵌固定されている。また、オリフィス金具56が、外筒金具14に内挿されて、外筒金具14の軸方向中間部分に対して流体密に嵌着固定されている。これにより、オリフィス金具56や嵌着筒金具58を備えた隔壁ゴム50の第三の一体加硫成形品60が、内外筒金具12,14を備えた本体ゴム弾性体16の第一の一体加硫成形品26に対して組み付けられて、隔壁ゴム50が、流体封入領域48に収容された状態で、内外筒金具12,14の各軸方向中央部間に跨がって、それら内外筒金具12,14を連結するようにして配設されている。
かかる配設状態下、隔壁ゴム50は、本体ゴム弾性体16とダイヤフラム36の対向面間の中間部分に位置せしめられており、外筒金具14から内周面上に所定高さで突出せしめられたオリフィス金具56の内周縁部分から、即ち流体封入領域48内で内外筒金具12,14の径方向対向面間の中間部分から軸方向上方(本体ゴム弾性体16側)に向かって突出すると共に内方に湾曲して内筒金具12の外周面に延びている。また、このように隔壁ゴム50が流体封入領域48に配設されることにより、流体封入領域48が隔壁ゴム50を挟んだ軸方向両側に仕切られており、以て、隔壁ゴム50の軸方向上側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成された受圧室68が形成されていると共に、隔壁ゴム50の軸方向下側には、壁部の一部がダイヤフラム36で構成された平衡室70が形成されている。
また、オリフィス金具56は、外周面が外筒金具14に密着されて、凹溝62が周方向の全周に亘って流体密に覆蓋されており、それによって、受圧室68と平衡室70を相互に連通するオリフィス通路72が、外筒金具14の内周面に沿って周方向に延びるようにして形成されている。
なお、このようなエンジンマウント10は、例えば、図9に示されているように、本体ゴム弾性体16からなる第一の一体加硫成形品26と、ダイヤフラム36からなる第二の一体加硫成形品42と、隔壁ゴム50からなる第三の一体加硫成形品60を、受圧室68や平衡室70に充填する非圧縮性流体中で軸方向に組み付け、その後、外筒金具14に八方絞り等の縮径加工を施して、外筒金具14をシールゴム層30を介してオリフィス金具56とアウタリング38に流体密に嵌着固定することによって、有利に製造され得る。
また、特に本実施形態では、オリフィス金具56の外筒金具14に対する軸方向の嵌め入れ位置が、外筒金具14の内周面に形成された位置決め突部33への当接で規定されること等によって、隔壁ゴム50が、その装着前の軸方向自由長よりも大きな軸方向長さとされて、所定量だけ軸方向に引張変形せしめられた状態で、組み付けられている。
このような構造とされた本実施形態のエンジンマウント10は、前述のように内筒金具12が自動車のパワーユニット17に取り付けられる一方、外筒金具14が自動車のボデー19に取り付けられることにより、図2に示されているように、パワーユニットをボデーに対して防振支持するようにされる。
そして、かかる装着状態下では、パワーユニット17の分担支持荷重が、静的な初期荷重として内筒金具12と外筒金具14の間に軸方向荷重として作用せしめられると共に、それら内外筒金具12,14間に対して、防振すべき主たる振動が軸方向に及ぼされることとなる。而して、防振すべき振動が入力されると、内外筒金具12,14が軸方向に相対変位せしめられることに伴って隔壁ゴム50にも弾性変形が及ぼされる。その際、隔壁ゴム50は、アウタ固定部54aがオリフィス金具56を介して外筒金具14に固定されていることから、アウタ固定部54aが外筒金具14と共に内筒金具12に対して軸方向に相対変位せしめられて、それが中間部54cに及ぼされることにより、中間部54cにおいて、内筒金具12に対する軸方向の相対的な往復変位が生ぜしめられることとなる。
その結果、受圧室68の壁部の一部を構成する隔壁ゴム50の中間部54cが、受圧室68に対してピストンのように作動せしめられることとなり、以て、受圧室68に有効な圧力変動が生ぜしめられて、受圧室68と平衡室70の圧力差に基づくオリフィス通路72を通じての流体流動量が十分に確保されることにより、オリフィス通路72を流動せしめられる流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果が、内外筒金具12,14間に及ぼされる軸方向振動に対して有効に発揮されるのである。特に隔壁ゴム50が、受圧室68側に突出する略円環ドーム形状とされていることから、受圧室68に生ぜしめられる圧力に対しても、容易に凹んでしまうようなことがなく、有利に対向し得て、優れたピストン効率を発揮し得るのである。
ここにおいて、上述の如き略円環ドーム形状の隔壁ゴム50は、軸方向荷重の入力に際して、例えば図10(a),(b)の如く圧縮,引張変形せしめられることとなる。これらの形状からわかるように、視覚的には大きく屈曲せしめられる周方向の略中央部分:αにおいて最も耐久性が問題となり易く、かかる部分の肉厚を十分に確保するべきであるように考えられる。ところが、本実施形態のエンジンマウント10における隔壁ゴム50では、反対に、周方向の略中央部分:αの位置付近で肉厚寸法を小さく設定し、且つ周方向の両端部分(アウタ固定部54a,インナ固定部54b)において何れも端部に行くに従って次第に肉厚寸法を大きく設定している。その結果、隔壁ゴム50の耐久性を極めて有利に確保することが可能となったのである。
このような構成は、圧縮荷重よりも引張荷重を考慮すべきとするゴム弾性体の耐久性に関して非常に特殊なことなのであり、その理由として、前述の如き略円環ドーム形状という特殊な形状の隔壁ゴム50を採用したことが挙げられる。
加えて、上述の実施形態では、隔壁ゴム50の内周面にえぐり状の円弧面を設定したことにより、外周面に比して自由長の短い内周面においても有効な自由長を大きく設定されている。これによっても、集中応力を軽減し、耐久性の更なる向上を図ることが可能となるのである。
因みに、本実施形態に従う形状の隔壁ゴム50として、図8中、Ra=5.0mm,Rb=10.5mmのものを実施例とする一方、比較例として、図10に示されているように縦断面の全長に亘って略一定の肉厚寸法とした隔壁ゴムを採用したものを用い、それら実施例と比較例の各隔壁ゴム50(採用したものは、オリフィス金具56と嵌着筒金具58を固着せしめた第三の一体加硫成形品60)の耐久性について、試験および解析を行った。なお、比較例の隔壁ゴムは、その理解を容易とするために、図10中に寸法を記載すると共に、本実施形態と対応する各部材に対して、それぞれ、本実施形態と同一の符号を付しておく。
先ず、耐久試験は、オリフィス金具56と嵌着筒金具58に対して相対的な軸方向の荷重を常温下で繰り返し作用せしめる試験を、同一試験条件下で行ったところ、比較例の隔壁ゴム50では、40〜60万回で貫通亀裂が発生したのに対して、実施例のものは200万回でも亀裂等は確認し得なかった。
また、耐久解析は、オリフィス金具56と嵌着筒金具58を圧縮方向および引張方向で軸方向に一定量だけ相対変位せしめた際における隔壁ゴム50の静的な変形状態を想定し、かかる状態下での発生応力の最大値とその発生場所を求めることによって行った。解析には、二次元の有限要素法による演算を採用した。その実施例の結果を図11(a),(b)に示すと共に、比較例の結果を図12(a),(b)に示す。これらの結果から、圧縮方向の荷重入力時における発生応力が問題となり易いことが認められる。そして、同一変形量において、比較例では161MPaの最大引張応力が発生しているのに対して、実施例では110MPaの最大引張応力に抑えられている。
さらに、本実施形態では、組み付けられた隔壁ゴム50が、車両へのマウント装着による初期荷重が及ぼされていない状態下で、図1に示されているように、軸方向に所定量だけ引張変形せしめられた状態となっている。そして、車両に装着された状態では、パワーユニット17の分担支持荷重の入力で本体ゴム弾性体16が弾性変形して内外筒金具12,14が軸方向に所定量だけ相対変位せしめられた位置で安定することとなり、隔壁ゴム50は、パワーユニット17の分担支持荷重が軸方向で圧縮側に及ぼされることから、装着前の引張変形が解消され、或いは、更に軸方向に所定量だけ圧縮変形せしめられた状態とされる。
ここにおいて、本実施形態のエンジンマウント10にあっては、隔壁ゴム50が軸方向に引張状態で組み付けられており、パワーユニット17の分担支持荷重が及ぼされた装着状態下における軸方向の圧縮変形量が抑えられていることから、装着状態下で及ぼされる初期荷重や振動荷重によって隔壁ゴム50に生ぜしめられる軸方向圧縮側の弾性変形量が軽減されることとなる。それ故、前述の如く隔壁ゴム50において最大応力が発生し易い軸方向の圧縮変形に際して、組付初期状態で隔壁ゴム50に加えられている引張変形による発生応力の軽減が図られ得ることとなり、隔壁ゴム50における発生応力の軽減とそれに基づく耐久性の更なる向上が、図られ得るのである。
また、本実施形態では、隔壁ゴム50を利用してオリフィス金具56の内周面に所定厚さの緩衝ゴム層52が形成されていることから、軸直角方向に大きな荷重が及ぼされた際には、オリフィス金具56が、この緩衝ゴム層52を介して内筒金具12に当接することによって、内外筒金具12,14の軸直角方向での相対的変位量を緩衝的に制限するストッパ機構が有利に実現され得るのである。
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であり、かかる実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでない。本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様で実施可能であり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
例えば、前記実施形態では、本体ゴム弾性体16の軸方向外面に拘束板金具18が加硫接着されていたが、例えば実開平6−22642号公報や特開平8−170686号公報等に記載されているように、そのような拘束板金具18を設けることなく、本体ゴム弾性体16の軸方向外面を全体に亘って自由表面としても良い。
また、前記実施形態におけるオリフィス通路72の具体的構造や形状,通路長さや断面積などは、要求される防振特性等に応じて適宜に変更され得る。例えば、オリフィス金具56を軸方向に貫通して延びる一つ若しくは複数のオリフィス通路を形成したり、内筒金具12と嵌着筒金具58によって内筒金具12の表面に沿って延びるオリフィス通路を形成したりすることも可能である。
さらに、前記実施形態においてオリフィス金具56を軸方向に位置決めするために採用された位置決め突部33は、適当な大きさの突起や、周方向の全周に亘って連続して延びる突条等、任意の形状で形成され得る。また、かかる位置決め突部33を、シールゴム層30に代えて、外筒金具14等によって形成することも可能である。尤も、オリフィス金具56を外筒金具14に組み付ける際に位置決め出来る限り、そのような位置決め突部33は、本発明において必ずしも設ける必要がない。
また、隔壁ゴム50の内周面をえぐれた形状とすることや、初期荷重が及ぼされる前の組付状態下で隔壁ゴム50に軸方向の引張変形を加えることは、何れも、本発明において必ずしも採用する必要がない。
更にまた、前述の解析結果からもわかるように、隔壁ゴム50のアウタ固定部54a側の発生応力は、インナ固定部54bに比して周方向で大きな自由長さ乃至は面積が確保されていること等により、それ程大きな問題とならないことから、アウタ固定部54aは、必ずしも肉厚寸法を下方端部に行くに従って拡幅させる必要がない。
加えて、本発明は、例示の如き自動車用エンジンマウントの他、自動車用のボデーマウントやメンバマウント,キャブマウント,ストラットバークッション等、或いは自動車以外の各種分野に用いられる流体封入式の筒形マウントに対して、何れも適用可能であることは言うまでもない。
本発明の一実施形態としての自動車用エンジンマウントを示す縦断面説明図である。 図1に示されたエンジンマウントの装着状態を示す縦断面図である。 図1に示されたエンジンマウントを構成する第一の一体加硫成形品を示す縦断面説明図であって、図4のIII −III 断面に相当する図である。 図3に示された第一の一体加硫成形品を示す底面図である。 図1に示されたエンジンマウントを構成する第二の一体加硫成形品を示す縦断面説明図である。 図1に示されたエンジンマウントを構成する第三の一体加硫成形品を示す縦断面説明図であって、図7のVI−VI断面に相当する図である。 図6に示された第三の一体加硫成形品の平面図である。 図6に示された第三の一体加硫成形品の要部拡大説明図である。 図1に示されたエンジンマウントを製造する一工程を示す説明図である。 比較例としての隔壁ゴムの一体加硫成形品を示す、図6に対応する縦断面図である。 (a)および(b)は、図6に示された一体加硫成形品を構成する隔壁ゴムにおける圧縮荷重および引張荷重の入力に際しての発生応力を有限要素法で解析した結果を示す説明図である。 (a)および(b)は、図10に示された比較例を構成する隔壁ゴムにおける圧縮荷重および引張荷重の入力に際しての発生応力を有限要素法で解析した結果を示す説明図である。
符号の説明
10 エンジンマウント
12 内筒金具
14 外筒金具
16 本体ゴム弾性体
30 シールゴム層
33 位置決め突部
36 ダイヤフラム
50 隔壁ゴム
56 オリフィス金具
68 受圧室
70 平衡室
72 オリフィス通路

Claims (9)

  1. インナ軸部材の外周側にアウタ筒部材を離隔配置せしめて、それらインナ軸部材とアウタ筒部材における軸方向一方の端部間を本体ゴム弾性体で連結すると共に、軸方向他方の端部間を可撓性膜で連結し、更に軸方向中間部分を隔壁ゴム弾性体で連結することにより、該隔壁ゴム弾性体を軸方向に挟んだ各一方の側に、壁部の一部が該本体ゴム弾性体で構成されて該インナ軸部材と該アウタ筒部材の間への軸方向の振動入力時に圧力変動が生ぜしめられる受圧室と、壁部の一部が該可撓性膜で構成されて該可撓性膜の変形に基づいて容積変化が容易に許容される平衡室を形成して、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体を充填すると共に、該受圧室と該平衡室を相互に接続するオリフィス通路を設けた流体封入式筒形マウントにおいて、
    前記アウタ筒部材に嵌着固定されて前記インナ軸部材側に向かって突出する環状のオリフィス部材を設けて、該オリフィス部材に対して前記隔壁ゴム弾性体を固着せしめ、該オリフィス部材の内周縁部から前記本体ゴム弾性体側に向かって軸方向に突出し且つ略円弧状の縦断面形状で湾曲して内周側に延びる略円環ドーム形状をもって該隔壁ゴム弾性体を構成し、該隔壁ゴム弾性体の湾曲して延びた先端部の内周面に嵌着スリーブを固着せしめて該嵌着スリーブを該インナ軸部材に外嵌固定することにより、該隔壁ゴム弾性体を該アウタ筒部材と該インナ軸部材の間に跨がって配設すると共に、該オリフィス部材を利用して前記オリフィス通路を形成する一方、略円弧状の縦断面形状とされた該隔壁ゴム弾性体の肉厚寸法を周方向の中間部分から該嵌着スリーブに固着された先端部に向かって次第に厚肉となる拡幅断面形状としたことを特徴とする流体封入式筒形マウント。
  2. 略円弧状の縦断面形状とされた前記隔壁ゴム弾性体の内周面を、前記オリフィス部材に固着された側の端部よりも周方向の中間部分において該隔壁ゴム弾性体をえぐるようにして拡径する拡径湾曲面とした請求項1に記載の流体封入式筒形マウント。
  3. 略円弧状の縦断面形状とされた前記隔壁ゴム弾性体の外周面が、前記オリフィス部材に固着された側の端部において最も大径とされており、該隔壁ゴム弾性体の内周面が前記拡径湾曲面とされることによって、該隔壁ゴム弾性体の肉厚寸法が周方向の中間部分において最も小さくされている請求項2に記載の流体封入式筒形マウント。
  4. 前記隔壁ゴム弾性体において略円弧状の縦断面形状とされた周方向の中央部分の外周面と内周面を何れも略一定の曲率半径とすると共に、該外周面の曲率中心よりも該内周面の曲率中心を該隔壁ゴム弾性体に近い位置に設定することにより、周方向の中間部分において該隔壁ゴム弾性体をえぐるようにして拡径する前記拡径湾曲部を実現せしめた請求項2又は3に記載の流体封入式筒形マウント。
  5. 前記拡径湾曲面において最も拡径された点が、前記オリフィス部材の内周面よりも内周側に位置せしめられている請求項2乃至4の何れかに記載の流体封入式筒形マウント。
  6. 前記隔壁ゴム弾性体における前記オリフィス部材側の端部の内径寸法を該オリフィス部材の内径寸法よりも小さくすると共に、該隔壁ゴム弾性体を該オリフィス部材の内周面に延び出させて該オリフィス部材の内周面に被着せしめた請求項1乃至5の何れかに記載の流体封入式筒形マウント。
  7. 軸方向一方の側において、前記インナ軸部材の軸方向端部から軸直角方向外方に広がる鍔状部を設ける一方、前記アウタ筒部材の軸方向端部の開口部分を軸方向外方に向かって次第に拡開するテーパ筒状部として、それら鍔状部とテーパ筒状部の対向面を前記本体ゴム弾性体で連結せしめた請求項1乃至6の何れかに記載の流体封入式筒形マウント。
  8. 前記隔壁ゴム弾性体が、組付前の自由状態よりも軸方向に引き延ばされた状態で、前記インナ軸部材と前記アウタ筒部材の間に組み付けられている請求項1乃至7の何れかに記載の流体封入式筒形マウント。
  9. 前記隔壁ゴム弾性体の一方の端部が、前記オリフィス部材の軸方向端面から軸方向に向かって突出している一方、該隔壁ゴム弾性体の他方の端部が、前記嵌着スリーブの外周面から軸直角方向に向かって突出している請求項1乃至8の何れかに記載の流体封入式筒形マウント。
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