JP2017187171A - 流体封入式筒形防振装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】軸方向の入力振動に対して流体流動作用に基づく防振効果を得ることのできる流体封入式筒形防振装置であって、隔壁ゴムとインナ軸部材との間の流体密性を確保しつつ、隔壁ゴムとインナ軸部材との軸方向の相対移動を安定して許容することのできる、新規な構造の流体封入式筒形防振装置を提供する。
【解決手段】流体封入式筒形防振装置16において、隔壁60の外周側がアウタ筒部材44に対して固定されている一方、隔壁60の内周側がインナ軸部材42に対して軸方向へ移動可能に外挿された環状の隔壁ゴム66で構成されており、隔壁ゴム66の内周部分から軸方向両側に向かって突出するシール筒部80,82が一体形成されていると共に、各シール筒部80,82の突出先端部においてシール筒部80,82よりも厚肉でインナ軸部材42に対して摺動可能に外嵌された嵌合部84,86が一体形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、内部に封入された流体の流動作用に基づく防振効果を得ることのできる流体封入式筒形防振装置に係り、特に軸方向の入力振動に対する防振効果を得ることのできる流体封入式筒形防振装置に関するものである。
従来から、振動伝達系を構成する部材間に装着されて振動を低減する防振連結装置や防振支持装置などとして、例えば特公平2−29899号公報(特許文献1)等に示されている流体封入式の筒形防振装置が用いられている。筒形防振装置は、一般に、本体ゴム弾性体で連結されたインナ軸部材とアウタ筒部材との間に、オリフィス通路を通じて連通された二つの流体室を備えており、振動入力時にオリフィス通路を通じて流体室間を流動せしめられる流体の流動作用に基づく防振効果が発揮されるようになっている。
ところで、筒形防振装置では、軸方向の入力振動に対して効果的な防振効果を得るために、特許文献1にも示されているように、二つの流体室を仕切る隔壁をインナ軸部材に対して軸方向で移動可能とした構造が提案されている。
ところが、特許文献1に記載のように、隔壁ゴムの内周面に固着した樹脂スリーブを、インナ軸部材に対して摺動可能に外挿せしめた構造では、樹脂スリーブを準備して隔壁ゴム弾性体の内周面に固着する必要があるために構造が複雑で製造も難しかった。しかも、樹脂スリーブとインナ軸部材との間の隙間を通じて両側の流体室間で流体圧の漏れや流体の短絡が発生しやすく、目的とする防振性能を安定して得ることが難しいという問題もあった。
なお、特開昭64−35138号公報(特許文献2)には、隔壁ゴムの軸方向両側から薄肉で内周側に向かって突出する環状シールを形成して、隔壁ゴムとインナ軸部材との間の隙間を封止する構造が開示されている。しかし、特許文献2に開示された環状シールは、突出方向の中間部分が厚肉で先端に向かって薄肉となる円弧状断面で周方向に延びており、最も小径とされた突出方向の中間部分でインナ軸部材の外周面に当接されると共に、薄肉とされた先端部分が反り返るようにしてインナ軸部材から離れている。
そのために、インナ軸部材の軸方向へ隔壁ゴムが移動する際に、反り返るようにしてインナ軸部材から離れた環状シールの先端部分の内周面側へ流体圧が作用することにより、環状シールのインナ軸部材に対する当接部分へ流体が導き入れられて封止状態が破られやすい。そして、封止状態を維持するために環状シールのインナ軸部材に対する当接力を大きく設定する必要があることから、隔壁ゴムのインナ軸部材に対する当接部分における移動抵抗が大きくなって、防振性能の低下や、当接部分における磨耗による耐久性の低下および摺動異音の発生などといった問題への対策が課題となっていたのである。
しかも、組付時や振動入力時にインナ軸部材の軸方向へ隔壁ゴムが移動することに伴って、環状シールにおいて薄肉とされた先端部分が、摩擦抵抗や流体圧の作用でインナ軸部材側へ変形して、環状シールのインナ軸部材への当接部から更に隔壁ゴムの内周面側へ入り込んで、隔壁ゴムとインナ軸部材との間に噛み込んでしまうおそれもあった。そして、環状シールの先端部分が隔壁ゴムとインナ軸部材との間に噛み込むと、環状シールが損傷してしまって目的とする防振性能が発揮されなくなることから、製品寿命が損なわれてしまうこととなる。
特公平2−29899号公報 特開昭64−35138号公報
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題とするところは、軸方向の入力振動に対して流体流動作用に基づく防振効果を得ることのできる流体封入式筒形防振装置であって、隔壁ゴムとインナ軸部材との間の流体密性を確保しつつ、隔壁ゴムとインナ軸部材との軸方向の相対移動を安定して許容することのできる、新規な構造の流体封入式筒形防振装置を提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
本発明の第一の態様は、インナ軸部材とアウタ筒部材とが本体ゴム弾性体で連結されて、該インナ軸部材と該アウタ筒部材との間に非圧縮性流体の封入領域が形成されていると共に、該封入領域を軸方向両側に仕切る隔壁を設けて二つの流体室が形成されており、該二つの流体室がオリフィス通路で連通された流体封入式筒形防振装置において、前記隔壁の外周側が前記アウタ筒部材に対して固定されている一方、該隔壁の内周側が前記インナ軸部材に対して軸方向へ移動可能に外挿された環状の隔壁ゴムで構成されており、該隔壁ゴムの内周部分から軸方向両側に向かって突出するシール筒部が一体形成されていると共に、各該シール筒部の突出先端部において該シール筒部よりも厚肉で該インナ軸部材に対して摺動可能に外嵌された嵌合部が一体形成されている流体封入式筒形防振装置を、特徴とする。
本態様に従う構造とされた流体封入式筒形防振装置では、シール筒部の先端部分に設けられた厚肉の嵌合部においてインナ軸部材の外周面に対して当接状態で封止される。そして、かかる嵌合部は、隔壁から軸方向へ最も離れた先端部分に位置し且つ厚肉とされていることから、隔壁をインナ軸部材へ組み付ける場合や、隔壁がインナ軸部材に対して相対的に軸方向へ移動する場合でも、シール筒部の軸方向先端縁部が隔壁とインナ軸部材との間へ噛み込むことが効果的に防止される。
しかも、シール筒部における突出方向の中間部分は、先端の嵌合部に比して薄肉とされていることから、軸方向の振動入力に際して隔壁がインナ軸部材に対して相対的に軸方向変位した際に発生する正圧側の流体室の圧力によってインナ軸部材へ押し付けられるように変形しやすい。そして、このようなシール筒部の変形により、シール筒部の先端の嵌合部だけでなく、シール筒部の突出方向中間部分でも、流体密性が発揮されることから、嵌合部のインナ軸部材への当接力を過度に大きくせずとも、隔壁とインナ軸部材との間を通じての流体室間の短絡を効果的に防止することが可能となる。
従って、シール筒部を含む隔壁とインナ軸部材との摺動抵抗を軽減して、軸方向のインナ軸部材とアウタ筒部材との相対変位に基づいて発揮される流体の流動作用による防振効果の向上や、摺動異音の発生の低減、摺動による磨耗の低減などを達成する設計も実現可能となるのである。
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る流体封入式筒形防振装置において、前記シール筒部の内周面と前記インナ軸部材との間には隙間が設定されているものである。
本態様の流体封入式筒形防振装置では、シール筒部の内周面とインナ軸部材との摺動抵抗が軽減されると共に、摺動に伴う異音や磨耗の発生も軽減され得る。しかも、シール筒部は、嵌合部に比して薄肉とされていることから、軸方向の振動入力に際して隔壁がインナ軸部材に対して相対的に軸方向変位して流体室に圧力変動が惹起された際には、正圧側の流体室の圧力によってインナ軸部材へ押し付けられることで、シール筒部とインナ軸部材との間の隙間が実質的に消失されて、良好なシール性能も確保され得ることとなる。
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に係る流体封入式筒形防振装置において、前記隔壁における前記インナ軸部材への外挿前の単体状態での形状として、前記シール筒部が略一定の横断面形状で軸方向に延びるストレートな筒形状が採用されていると共に、該シール筒部の突出先端縁部が内周側に厚肉とされて前記嵌合部が設けられているものである。
本態様の流体封入式筒形防振装置では、シール筒部の初期形状がストレートな筒形状とされることから、設計や製造が容易になることに加え、局所的な応力や変形の集中も軽減乃至は回避され得る。
本発明の第四の態様は、前記第一〜三の何れか一つの態様に係る流体封入式筒形防振装置であって、前記隔壁ゴムの内周部分において、前記シール筒部の軸方向両側への突出部分の外周側には、軸方向の両側面を周方向に延びる溝状の凹部が設けられているものである。
本態様の流体封入式筒形防振装置では、軸方向両側面に形成された溝状の凹部によって隔壁ゴムが括れ形状とされており、かかる括れ状部における弾性変形が比較的容易に許容されるようになっている。それ故、括れ状部よりも内周側に位置する部分から軸方向両側に突設されたシール筒部が、インナ軸部材に対して軸方向に相対変位せしめられた際、括れ状部よりも内周側に位置する隔壁ゴムの全体が、シール筒部に及ぼされる摩擦抵抗により、軸方向へ傾動しやすくなる。その結果、シール筒部の全体がインナ軸部材に対して傾斜変形することとなり、軸方向の移動方向の前方に位置して正圧が惹起される受圧室に位置するシール筒部が、インナ軸部材に対して一層効果的に押し付けられてシール性の更なる向上が図られ得る。
本発明の第五の態様は、前記第一〜四の何れか一つの態様に係る流体封入式筒形防振装置において、前記隔壁ゴムの外周側に環状のオリフィス部材が固着されており、該オリフィス部材が前記アウタ筒部材の内周面に嵌着固定されていると共に、該オリフィス部材を利用して前記二つの流体室を連通する前記オリフィス通路が形成されているものである。
本態様の流体封入式筒形防振装置では、隔壁ゴムの外周部分に硬質のオリフィス部材を装着することで、軸方向振動入力時における隔壁の弾性変形量を抑え、隔壁のピストン作用に基づく流体室間での圧力変動をより効率的に生ぜしめて、流体流動量の増大による防振効果の向上などを図ることが可能になる。また、隔壁において周長の大きい外周部分にオリフィス通路を形成することで、オリフィス通路の通路長さの設計自由度も有利に確保され得る。
本発明の第六の態様は、前記第五の態様に係る流体封入式筒形防振装置において、前記オリフィス部材の軸方向中間部分には、内周側に向かって突出する内方凸部が形成されており、該内方凸部に対して前記隔壁ゴムが固着されているものである。
本態様の流体封入式筒形防振装置では、隔壁ゴムの外周部分に固着されたオリフィス部材の内方凸部によって、隔壁ゴムのオリフィス部材への固着面積が大きく確保されると共に、隔壁ゴムが内方凸部で拘束されて弾性変形が抑えられることで、軸方向振動入力時における隔壁のピストン作用の更なる向上が図られ得る。
本発明の第七の態様は、前記第一〜六の何れか一つの態様に係る流体封入式筒形防振装置において、前記隔壁ゴムの軸方向両側に形成された前記シール筒部が互いに同じ形状とされているものである。
本態様の流体封入式筒形防振装置では、軸方向振動の入力時において隔壁とインナ軸部材が軸方向で繰り返し相対的に往復変位せしめられた際、軸方向両側のシール筒部により、何れの軸方向側への変位に際しても略等しいシール性や摺動性、耐久性などを得ることが可能になる。
本発明の第八の態様は、前記第一〜七の何れか一つの態様に係る流体封入式筒形防振装置において、前記隔壁の軸方向両側に設けられた前記二つの流体室は、前記インナ軸部材と前記アウタ筒部材との軸方向の相対移動に際して該隔壁が軸方向に移動せしめられることにより互いに正負で反対の圧力変動が生ぜしめられる受圧室とされているものである。
本態様に従えば、隔壁を挟んだ両側にそれぞれ軸方向振動入力時に正負で逆となる圧力変動が積極的に惹起される二つの流体室が形成されて、二つの流体室のピストン作用によって流体流動量をより積極的に確保することのできる流体封入式筒形防振装置が実現され得る。
本発明の第九の態様は、前記第一〜七の何れか一つの態様に係る流体封入式筒形防振装置において、前記隔壁の軸方向一方の側に設けられた前記流体室は、前記インナ軸部材と前記アウタ筒部材との軸方向の相対移動に際して該隔壁が軸方向に移動せしめられることにより圧力変動が生ぜしめられる受圧室とされている一方、該隔壁の軸方向他方の側に設けられた前記流体室は、壁部の一部が可撓性膜で構成されており前記インナ軸部材と前記アウタ筒部材との軸方向の相対移動に際しての圧力変動が回避される平衡室とされているものである。
本態様に従えば、隔壁の一方の側に設けられて、軸方向振動入力時に正負の圧力変動が繰り返して積極的に惹起される流体室に対して、隔壁の他方の側には、可撓性膜の変形によって圧力変動が逃がされて抑えられる流体室が設けられた流体封入式筒形防振装置が実現され得る。
本発明に従う構造とされた流体封入式筒形防振装置においては、隔壁ゴムの内周部分から軸方向両側に突出するシール筒部の先端部分に厚肉の嵌合部を設けてインナ軸部材とのシール構造を実現したことにより、シール筒部における隔壁とインナ軸部材との間への噛み込みが防止されて安定したシール性能が実現されることとなる。
本発明の第一の実施形態としての流体封入式筒形防振装置を備えた自動車用のキャブマウントを示す縦断面図である。 図1に示された流体封入式筒形防振装置を構成する隔壁を単体で示す縦断面図である。 図1に示された流体封入式筒形防振装置のFEM解析図であり、(a)は振動荷重が入力されていない平常状態のFEM解析図を示し、(b)は軸方向振動荷重が入力された状態のFEM解析図を示す。 本発明の第二の実施形態としての流体封入式筒形防振装置を備えた自動車用のキャブマウントを示す縦断面図である。 本発明の第三の実施形態としての流体封入式筒形防振装置を示す縦断面図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1には、本発明の第一の実施形態として、本発明に従う構造とされた流体封入式筒形防振装置を備えた自動車用のキャブマウント12が示されている。本実施形態のキャブマウント12は、上側マウント14と下側マウント16が、車両ボデー18を挟んだ上下に組み合わされて装着された構造を有しており、下側マウント16を含んで、本発明に係る流体封入式筒形防振装置が構成されている。なお、以下の説明において上下方向および軸方向とは、車両への装着状態で略上下方向とされる図1中の上下方向をいう。
上側マウント14は、連結ゴム弾性体20の上下面に対して上板金具22と下板金具24が重ね合わされて固着された構造とされている。
連結ゴム弾性体20は、中心軸上を貫通する内孔26を有していると共に、上方に向かって次第に小径となるテーパ状の外周面を有している。また、上下の板金具22,24は、中心穴28,30が設けられた円環板形状とされており、各中心穴28,30が連結ゴム弾性体20の内孔26に連通されている。
なお、上板金具22の中心穴28の内径は、下板金具24の中心穴30と連結ゴム弾性体20の内孔26の何れよりも小さい。また、下板金具24には、周上の複数箇所で外周上に広がる固定部32が設けられており、各固定部32にはボルト装着孔34が形成されている。
そして、上側マウント14は、車両ボデー18におけるマウント装着部の上面に重ね合わされた状態で装着されるようになっている。車両ボデー18のマウント装着部には、複数のボルト装着孔36が形成されており、各ボルト装着孔36に装着される固定ボルト38が、下板金具24の各ボルト装着孔34に挿通されて、下板金具24が車両ボデー18へ固定されることにより取り付けられるようになっている。
また、車両ボデー18のマウント装着部には、下板金具24の中心穴30と略同じ大きさの装着穴40が形成されており、上側マウント14における上下板金具22,24の各中心穴28,30および連結ゴム弾性体20の内孔26が、装着穴40を通じて、車両ボデー18の下側に開口して連通状態とされている。
一方、下側マウント16は、略同一中心軸上で径方向に所定距離を隔てて配されたインナ軸部材としてのインナ筒金具42とアウタ筒部材としてのアウタ筒金具44とが、本体ゴム弾性体46で弾性連結された構造とされている。
インナ筒金具42は、上下方向にストレートに延びる小径の円筒形状とされており、中央に上下方向に延びる内孔47を備えている。特に本実施形態では、上側マウント14の上板金具22の中心穴28と略同じ内径寸法を有していると共に、上側マウント14の連結ゴム弾性体20の内孔26と下板金具24の中心穴30との何れの内径よりも小さい外径寸法を有している。
また、これらインナ筒金具42とアウタ筒金具44との径方向対向面間には、軸方向両側部分に位置して上側ゴム弾性体48と下側ゴム弾性体50が配されている。これら上下のゴム弾性体48,50は、略同じ構造とされており、インナ筒金具42とアウタ筒金具44を軸方向両側部分で弾性的に連結している。かかる上下のゴム弾性体48,50を含んで本体ゴム弾性体46が構成されている。
上下のゴム弾性体48,50は、厚肉の略円環板形状とされており、内周面に内側嵌着金具52が加硫接着されている一方、外周面に外側嵌着金具54が加硫接着されている。そして、内側嵌着金具52がインナ筒金具42に外嵌固定されている一方、外側嵌着金具54がアウタ筒金具44に内嵌固定されている。
なお、内側嵌着金具52の内周面にはシールリップが設けられており、インナ筒金具42への嵌着面がシールされている。また、外側嵌着金具54のアウタ筒金具44への嵌着面は、アウタ筒金具44の内周面に被着形成されたシールゴム層56によってシールされている。
そして、インナ筒金具42とアウタ筒金具44との径方向対向面間には、上下のゴム弾性体48,50の軸方向間において、外部空間から遮断されて非圧縮性流体が封入された封入領域としての流体封入領域58が画成されている。なお、封入流体として、本実施形態では流体の共振作用に基づいて発揮されるばね特性を考慮して水やアルキレングリコールなどの低粘性流体が好適に採用される。
さらに、上下のゴム弾性体48,50の軸方向対向面間には、隔壁60が配設されている。隔壁60は、全体として円環形状を有しており、流体封入領域58内においてインナ筒金具42とアウタ筒金具44との径方向間に跨がって配されている。
隔壁60は、上下のゴム弾性体48,50から軸方向に略等距離を隔てて対向配置されており、流体封入領域58が上下方向の略中央部分に位置する隔壁60によって仕切られている。そして、隔壁60の上側には、上側ゴム弾性体48で壁部の一部が構成された上側流体室62が形成されている。隔壁60の下側には、下側ゴム弾性体50で壁部の一部が構成された下側流体室64が形成されている。
また、隔壁60の内周部分は、円環形状の隔壁ゴム66によって構成されている。隔壁60の外周部分には、円環形状のオリフィス部材68が固着されている。なお、本実施形態では、隔壁ゴム66が、オリフィス部材68を備える一体加硫成形品とされている。
オリフィス部材68は、合成樹脂やアルミニウム合金などの硬質材で形成されており、外周面上には、周方向に延びる凹溝70が設けられている。なお、本実施形態では、周方向で略螺旋状に一周以上の長さで延びる凹溝70が採用されている。
オリフィス部材68は、外周面においてアウタ筒金具44の内周面に対して嵌着固定されている。また、オリフィス部材68の外周部分は、隔壁ゴム66よりも軸方向寸法が大きくされており、上下のゴム弾性体48,50の外側嵌着金具54,54間で軸方向に挟まれて位置決めされている。
オリフィス部材68に外嵌されたアウタ筒金具44でオリフィス部材68の凹溝70が覆蓋されることにより、アウタ筒金具44の内周面に沿って周方向に延びるオリフィス通路72が形成されている。また、オリフィス通路72の長さ方向の一端は、連通孔74を通じて上側流体室62に開口していると共に、オリフィス通路72の長さ方向の他端は、連通孔76を通じて下側流体室64に開口している。これにより、オリフィス通路72によって上下の流体室62,64が互いに連通されている。
更にまた、オリフィス部材68には、軸方向中間部分から内周側に突出する内方凸部78が設けられている。本実施形態の内方凸部78は、周方向の全周に亘って連続して延びる円環板形状とされている。そして、オリフィス部材68の外周部分よりも軸方向寸法が小さくされた内方凸部78の内周側端部に対して、隔壁ゴム66の外周部分が固着されている。
隔壁ゴム66は、内方凸部78と略同じ厚さ寸法でインナ筒金具42の外周面上に広がる円環形状とされており、インナ筒金具42とオリフィス部材68との径方向対向面間に配されて、インナ筒金具42とアウタ筒金具44との径方向の相対変位を弾性変形によって許容するようになっている。また、隔壁ゴム66は、インナ筒金具42に対して非接着とされており、インナ筒金具42とオリフィス部材68との径方向対向面間の流体密性を保ちつつ、隔壁60のインナ筒金具42に対する軸方向の相対的な移動を許容し得るようになっている。
すなわち、隔壁ゴム66の内周面は、インナ筒金具42の外径に対して略同じか僅かに大きな内径寸法を有しており、インナ筒金具42の外周面に非接着で軸方向に移動可能とされている。
また、図2に示されているように、隔壁ゴム66には、内周端部から軸方向両側に向かってそれぞれ同一中心軸上で突出する上下のシール筒部80,82が一体的に形成されている。なお、本実施形態では、上下のシール筒部80,82が、互いに同じ形状とされている。
シール筒部80,82は、図2に示されるインナ筒金具42に外挿される前の単体状態では、隔壁ゴム66の内径と略同じ内径寸法をもって略一定の横断面でストレートに軸方向に突出する円筒形状とされており、弾性変形が許容されるように薄肉の筒壁構造とされている。なお、筒壁の肉厚寸法は、採用されるゴム材料やサイズの他、入力振動に際して発生する流体圧、要求される耐久性などを考慮して適宜に設定されるものであり限定されないが、一般に3mm以下の肉厚寸法が好ましく、より好適には0.3〜2mm程度の肉厚寸法とされる。
さらに、シール筒部80,82の突出先端側の開口周縁部は、全周に亘って肉厚寸法が大きくされており、環状の嵌合部84,86とされている。特に本実施形態では、シール筒部80,82の突出先端縁部の内径が小さくされることで内周側に厚肉とされて嵌合部84,86が形成されている。即ち、シール筒部80,82を含む隔壁ゴム66において、嵌合部84,86が最も小さい内径寸法とされている。また、嵌合部84,86の内径寸法は、インナ筒金具42の外径寸法よりも小さく設定されている。
その結果、図1に示されているように、インナ筒金具42に対して隔壁60が外挿された組付状態では、嵌合部84,86の内周面がインナ筒金具42の外周面に対して全周に亘って押し付けられたシール状態で当接されている。そして、このようにインナ筒金具42に外嵌された嵌合部84,86が、軸方向の振動入力時に、インナ筒金具42に対して摺動可能とされている。
また、嵌合部84,86がインナ筒金具42で拡径されることにより、シール筒部80,82も押し広げられて湾曲変形されている。シール筒部80,82の少なくとも嵌合部84,86側の軸方向端部では、シール筒部80,82の内周面側への嵌合部84,86の突出高さに略相当する寸法だけ、シール筒部80,82がインナ筒金具42の外周面から離れており、シール筒部80,82とインナ筒金具42との間に径方向の隙間88が設けられている。なお、本実施形態では、隔壁ゴム66の内径寸法がインナ筒金具42の外径寸法より僅かに大きくされており、上下のシール筒部80,82とインナ筒金具42との間に設けられる隙間が、隔壁ゴム66の内周面とインナ筒金具42の外周面との間に設けられる隙間により相互に連通されて、一体的な隙間88が形成されている。
更にまた、隔壁ゴム66の内周部分において、隔壁ゴム66の厚さ方向となる上下両側面には、シール筒部80,82の基端部分の外周側を周方向に延びる凹部92,94が形成されている。そして、上下の凹部92,94が形成されることにより、隔壁ゴム66の厚さ寸法が、シール筒部80,82の突出部分の外周側で薄肉とされている。
すなわち、隔壁ゴム66の径方向中間部分には、上下の凹部92,94によって薄肉化されて、軸方向の曲げ変形剛性を小さくされた括れ状部96が形成されている。そして、この括れ状部96よりも内周側に位置する、上下のシール筒部80,82を含む内周側部分が、首振り状に軸方向へ弾性変形され得るようになっている。なお、本実施形態では、各凹部92,94が、何れも周方向に連続して環状に延びる溝形状とされている。
かくの如き構造の隔壁60で仕切られて上下の流体室62,64が形成された下側マウント16は、車両ボデー18におけるマウント装着部の下面に重ね合わされた状態で装着されるようになっている。
下側マウント16のインナ筒金具42は、アウタ筒金具44から軸方向上方に延び出しており、車両ボデー18のマウント装着部に形成された装着穴40を通じて上方に突出されている。そして、車両ボデー18のマウント装着部に対して上方から装着された上側マウント14に対して、インナ筒金具42が下方から挿し入れられており、インナ筒金具42の上端が、上側マウント14の上板金具22の内周縁部に対して重ね合わされている。
上側マウント14の上板金具22と下側マウント16のインナ筒金具42とは、上板金具22の中心穴28とインナ筒金具42の内孔47を貫通して挿通される固定ボルトによって、自動車のキャブハウジングに対して装着されることとなる。かかる装着状態下、上側マウント14の上板金具22と下側マウント16のインナ筒金具42とは、固定ボルトの締付力によって締結固定されて一体化される。
なお、インナ筒金具42の外周には、上側マウント14における連結ゴム弾性体20の内孔26や下板金具24の中心穴30の内周面、車両ボデー18の装着穴40の内周面との間に、何れも所定の隙間が設定されている。かかる隙間により、振動荷重の入力に際して、インナ筒金具42における連結ゴム弾性体20や下板金具24、車両ボデー18などへの干渉や当接が軽減又は回避されるようになっている。
一方、下側マウント16のアウタ筒金具44は、アウタブラケット98を介して、車両ボデー18に対して固定されて装着されている。
アウタブラケット98は、大径の円筒形状とされており、下側マウント16のアウタ筒金具44が圧入固定されるようになっている。また、アウタブラケット98の軸方向上端側の開口周縁部には、外周に広がるフランジ部100が一体形成されており、フランジ部100において複数のボルト挿通孔102が設けられている。
そして、各ボルト挿通孔102が、車両ボデー18のボルト装着孔36および上側マウント14における下板金具24のボルト装着孔34に対して位置合わせされて、各ボルト挿通孔102およびボルト装着孔36,34に挿通される固定ボルト38によって相互に締結固定されるようになっている。なお、アウタブラケット98の周壁部には、各ボルト挿通孔102に対応する周上で窓部104が形成されており、固定ボルト38の頭部の干渉が回避されている。
而して、上述の如き構造とされた本実施形態のキャブマウント12では、軸方向の支持荷重に対しては、主として上側マウント14の連結ゴム弾性体20における圧縮変形によって所定の支持ばね特性が発揮される。また軸直角方向の支持荷重に対しては、剪断変形する上側マウント14の連結ゴム弾性体20と、圧縮変形する下側マウント16の上下のゴム弾性体48,50および隔壁ゴム66とによって所定の支持ばね特性が発揮される。
また、インナ筒金具42とアウタ筒金具44との間への軸方向の振動荷重の入力に際しては、下側マウント16において上下の流体室62,64間に惹起されるオリフィス通路72を通じての流体流動作用に基づいて所定の防振効果が発揮されることとなる。
その際、上下の流体室62,64の外側壁部を構成する上下のゴム弾性体48,50は、何れも、内外周をインナ筒金具42とアウタ筒金具44に固定されており、略同じ方向に剪断変形せしめられる。これに対して、隔壁60は、外周側のオリフィス部材68がアウタ筒金具44に固定されている一方、内周側の隔壁ゴム66がインナ筒金具42に非固定とされており、アウタ筒金具44がインナ筒金具42に対して軸方向で相対変位するのに伴って、隔壁60もインナ筒金具42に対して軸方向で相対移動せしめられる。
その結果、軸方向に入力される振動に同期するように、隔壁60が上下のゴム弾性体48,50に対して相対的に接近/離隔方向へ往復変位することとなり、上下の流体室62,64に対して相対的な圧力変動が惹起される。そして、かかる圧力変動に基づいて、上下の流体室62,64間には、オリフィス通路72を通じての流体流動が生ぜしめられ、流体の共振作用などの流動作用による防振効果が発揮されることとなる。
特に本実施形態における上下の流体室62,64は、何れも、変形容易な可撓性壁部を備えておらず、隔壁60の、上下のゴム弾性体48,50に対する接近/離隔方向への変位に伴って互いに正負で反対の圧力変動を生じる受圧室とされている。それ故、振動入力時にオリフィス通路72を流動せしめられる流体の水頭圧ひいては流体流動量を積極的に大きく確保することが可能となる。
また、隔壁ゴム66とインナ筒金具42との間では、隔壁ゴム66の内周面から軸方向両側に突設されたシール筒部80,82の各先端部に設けた厚肉の嵌合部84,86によって、シール性が確保されることで、振動入力時における上下の流体室62,64間での短絡連通が防止されて、オリフィス通路72を通じての流体流動量が安定して確保されるようになっている。
特に、シール部分となる嵌合部84,86が、隔壁ゴム66を軸方向両側に外れた位置に設けられていることから、シール性能を確保するに際して、隔壁ゴム66の本体部分をインナ筒金具42の外周面に対して強く押し付ける必要がない。それ故、軸直角方向の入力荷重に対して、径方向寸法が小さくされた隔壁ゴム66の大きなばね剛性が悪影響を及ぼすことが効果的に回避され得る。さらに、厚肉とされた嵌合部84,86がシール筒部80,82の突出先端に設けられていることから、隔壁60をインナ筒金具42に組み付ける際や、隔壁60がインナ筒金具42に対して軸方向で変位する際にも、シール筒部80,82の噛み込みが防止されて、安定したシール性能が発揮される。また、隔壁ゴム66とインナ筒金具42との摺接抵抗が軽減されることから、軸方向のばね特性の向上や異音の防止などが達成されると共に、摺接部位における磨耗による耐久性の低下などの問題も解消することが可能になる。
しかも、嵌合部84,86と隔壁ゴム66との間には、インナ筒金具42を覆うようにシール筒部80,82が設けられている。このシール筒部80,82は、薄肉で変形が容易とされていることから、軸方向の振動入力時に一方の流体室62(64)に惹起される正圧がシール筒部80(82)の外周面に及ぼされると、内周側へ弾性変形して、インナ筒金具42の外周面に押し付けられることとなる。その結果、流体室の圧力を巧く利用して、シール筒部80,82とインナ筒金具42との間を通じての上下流体室62,64の短絡がより効果的に防止され得る。
特に隔壁ゴム66やシール筒部80,82は、インナ筒金具42に対して軸方向へ相対移動する際、インナ筒金具42の外周面に対する摩擦抵抗や流体圧の作用で、移動方向の後方に向かって全体的に傾動しやすい。その結果、移動方向の前方側に延びるシール筒部80(82)が、インナ筒金具42の外周面に対して押し付けられやすくなり、目的とするシール性が一層効率的に確保され得る。
特に本実施形態では、隔壁ゴム66の径方向中間部分に設けられた括れ状部96により、上下のシール筒部80,82が形成された隔壁ゴム66の内周側部分が、首振り状に軸方向へ弾性変形して傾動しやすくされている。
因みに、軸方向振動入力に際しての下側マウント16における上側ゴム弾性体48、下側ゴム弾性体50、隔壁ゴム66の各壁部について、有限要素法(FEM)で数値解析した結果を、図3に示す。軸方向振動が及ぼされていない平常時(a)に比して、軸方向振動入力によって隔壁60がインナ筒金具42に対して図中の上方へ相対的に移動せしめられた状態における(b)では、隔壁ゴム66の内周部分が移動方向の後方となる下方へ首振り状に変形し、その結果、隔壁60の移動方向の前方側ではシール筒部80がインナ筒金具42の外周面に押し付けられていることがわかる。
なお、図3(b)中では、上側の流体室62に正圧が発生して、シール筒部80がインナ筒金具42の外周面に押し付けられている。なお、下側の流体室64では、負圧が発生している。その際、嵌合部86は、インナ筒金具42の外周面から離隔してもよい。
そして、このようなシール筒部80,82の流体圧による弾性変形を利用してシール性能の向上が図られることから、隔壁60とインナ筒金具42との間に要求されるシール性能を確保するに際して、嵌合部84,86とインナ筒金具42との嵌合力を過度に大きくする必要もない。それ故、隔壁ゴム66とインナ筒金具42との間の流体密性を確保しつつ、嵌合部84,86とインナ筒金具42との嵌合力を抑えて、嵌合部84,86の摺接に伴う異音の発生や磨耗などを軽減することも可能となるのである。
次に、図4には、本発明の第二の実施形態として、本発明に従う構造とされた流体封入式筒形防振装置(下側マウント)108を備えた自動車用のキャブマウント110が示されている。前記第一の実施形態では、略同じ構造とされた上下のゴム弾性体(48,50)が設けられており、軸方向の振動入力時には、上側ゴム弾性体(48)によって壁部の一部が構成された上側流体室(62)と、下側ゴム弾性体(50)によって壁部の一部が構成された下側流体室(64)とが、何れも、互いに正負で反対の圧力変動を生じる受圧室とされていたが、本実施形態では、上下のゴム弾性体の構造が、相互に異ならされている。なお、以下の説明において、前記実施形態と実質的に同一の部材および部位には、図中に、前記実施形態と同一の符号を付すことにより、詳細な説明を省略する。
すなわち、本実施形態では、下側のゴム弾性体が、上側のゴム弾性体に比べて薄肉とされて、軸方向で内外に向かって比較的容易に撓み変形可能な可撓性膜112とされている。また、図4の縦断面において、可撓性膜112が内方(上方)に向かって円弧状に湾曲した断面形状とされており、内外への変形自由度や変形許容量の向上が図られている。
また、可撓性膜112は、外周面に、外側嵌着金具54が加硫接着されている一方、内周面に、略筒状または略リング状の内側嵌着金具114が加硫接着されている。そして、内側嵌着金具114がインナ筒金具42に外嵌固定されている一方、外側嵌着金具54がアウタ筒金具44に内嵌固定されている。これにより、アウタ筒金具44の下方開口部に可撓性膜112が取り付けられている。なお、本実施形態における上側のゴム弾性体48は、前記第一の実施形態と同様の構造とされており、上側ゴム弾性体48を含んで本体ゴム弾性体46が構成されている。
本実施形態においても、上側のゴム弾性体48と下側のゴム弾性体(可撓性膜)112との軸方向間に流体封入領域58が画成されており、当該流体封入領域58が、前記第一の実施形態と同様の構造とされた隔壁60によって仕切られている。これにより、隔壁60の上側には、上側ゴム弾性体48で壁部の一部が構成された受圧室としての上側流体室62が形成されているとともに、隔壁60の下側には、下側ゴム弾性体(可撓性膜)112で壁部の一部が構成された下側流体室116が形成されている。そして、これら上側流体室62と下側流体室116とが、オリフィス通路72を通じて相互に連通されている。
かかる構造とされた本実施形態のキャブマウント110では、軸方向の入力振動、即ちインナ筒金具42とアウタ筒金具44との軸方向の相対移動に伴う隔壁60の軸方向移動に際して、受圧室とされた上側流体室62において積極的な圧力変動が惹起される。一方、下側流体室116は、壁部の一部を構成する可撓性膜112の内外への膨縮変形で容積変化が容易に許容されることにより、圧力変動が軽減又は回避されることとなる。そして、下側流体室116によって、振動入力時にも内部の流体圧力の変動が上側流体室62より抑えられ又は略一定に保たれる平衡室が構成されている。
このようにして軸方向の振動入力時には、上側流体室62と下側流体室116との間に惹起される相対的な圧力変動に基づいて、上下の流体室62,116間でオリフィス通路72を通じての流体流動が生じせしめられることとなる。
以上の如き構造とされた本実施形態の流体封入式筒形防振装置108を備えたキャブマウント110においても、前記第一の実施形態と同様の効果が発揮され得る。
次に、図5には、本発明の第三の実施形態として、本発明に従う構造とされた流体封入式筒形防振装置である自動車用のキャブマウント120が示されている。前記第一および第二の実施形態では、車両ボデーにおけるマウント装着部の上方に上側マウント(14)が装着されるとともに、マウント装着部の下方に、本発明に係る流体封入式筒形防振装置である下側マウント(16,108)が装着されることでキャブマウント(12,110)が構成されていたが、本実施形態のように、下側マウントのみでキャブマウントが構成されてもよい。したがって、本発明では、上側マウント(14)と組み合わせた構造は必須でなく、本発明に従う構造とされた下側マウントだけで目的とする防振装置を構成することも可能である。
すなわち、前記第一および第二の実施形態では、車両ボデー(18)の上側に、振動荷重に加えて静的な上下方向の支持荷重の殆どを受けることとなる上側マウント(14)が配設されており、かかる上側マウント(14)を構成する連結ゴム弾性体(20)が、アウタ筒金具(44)の上方開口部を覆蓋する上側ゴム弾性体(48)とは、別体として設けられていたが、本実施形態では、これらが一つのゴム弾性体として形成されたような構造とされている。
要するに、本実施形態では、略厚肉環状の上側ゴム弾性体122が、インナ筒金具42の上端部分の外周面と、アウタ筒金具124の上方開口部における内周面とに固着されており、インナ筒金具42とアウタ筒金具124とが、本体ゴム弾性体としての上側ゴム弾性体122により弾性連結されている。また、上側ゴム弾性体122の上端面には、インナ筒金具42の上端面に固定された上板金具22が固着されており、上板金具22とアウタ筒金具124の上端部に設けられた外フランジ部125との軸方向間を連結するようにして、インナ筒金具42の外周面とアウタ筒金具124の内周面とを弾性連結する上側ゴム弾性体(本体ゴム弾性体)122が配設されている。
一方、アウタ筒金具124の下方開口部には、前記第二の実施形態と同様に、下側ゴム弾性体として可撓性膜112が取り付けられている。これにより、上側ゴム弾性体122と可撓性膜112との軸方向間に流体封入領域58が画成されるとともに、当該流体封入領域58の軸方向中間部分に隔壁60が収容配置されることで、隔壁60の上側に受圧室としての上側流体室126が形成されている一方、隔壁60の下側に平衡室としての下側流体室128が形成されている。
かかる構造とされたキャブマウント120は、第一及び第二の実施形態と同様に、自動車におけるキャブハウジングと車両ボデーとの間の振動伝達経路上に装着されて、キャブハウジングを防振支持せしめるようにされる。具体的には、例えばインナ筒金具42の内孔47および上板金具22の中心穴28に固定ボルトが挿通されてキャブハウジングに対して装着される一方、アウタ筒金具124が、車両ボデー(18)に設けられた装着孔に対して上方から嵌め入れられて、外フランジ部125が当該装着孔の上方への開口周縁部に重ね合わされた状態で固定されることとなる。
そして、軸方向の入力振動により上側ゴム弾性体122が圧縮変形せしめられるとともに、隔壁60がインナ筒金具42に対して軸方向に移動せしめられる。それに伴って、上側流体室126と下側流体室128との間に相対的な圧力変動が生ぜしめられて、オリフィス通路72を通じて流動せしめられる流体の共振などの流動作用により、防振効果が発揮されるようになっている。
なお、上側ゴム弾性体122において、上板金具22と外フランジ部125との間で外部空間に露出された外周面は、上方に向かって小径化する略テーパ形状とされていると共に、インナ筒金具42の外周面とアウタ筒金具124の内周面との間で上側流体室126内に露呈された下面は、外周に向かって拡開して下方に向かって開口する大径の凹面形状とされている。これにより、軸方向の支持荷重の入力に際して発生する引張応力が軽減されるようになっていると共に、軸方向の振動入力時に上側流体室126に惹起される圧力変動ひいてはオリフィス通路72を通じての流体流動量の向上が図られている。
従って、このような本実施形態の流体封入式筒形防振装置(キャブマウント)120においても、前記第一又は第二の実施形態と同様の効果が発揮され得る。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はかかる実施形態や解決手段などの記載によって限定的に解釈されるものでない。
例えば、隔壁ゴム66の径方向寸法は、防振装置に要求される防振特性やばね剛性などに応じて設定可能であり、例えばオリフィス部材68の内周面に突設される内方凸部78の突出高さを調節することによって、隔壁ゴム66の径方向における有効長を適宜に設定することも可能である。
更にまた、流体室62,64間を連通するオリフィス通路72の構造や長さ、断面積などは、要求される防振特性に応じて変更可能であり、例えばオリフィス部材の径方向中間部分を軸方向に貫通してオリフィス通路を形成することも可能である。
さらに、本体ゴム弾性体(上側および下側ゴム弾性体)をインナ筒金具に対して加硫接着により固定するようにしても良い。
また、前記第三の実施形態では、下側のゴム弾性体が、前記第二の実施形態と同様の可撓性膜112により構成されていたが、前記第一の実施形態と同様に、所定の厚さ寸法を有する略円環板形状のゴム弾性体により構成されてもよい。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
16,108:下側マウント(流体封入式筒形防振装置)、42:インナ筒金具(インナ軸部材)、44,124:アウタ筒金具(アウタ筒部材)、46:本体ゴム弾性体、58:流体封入領域(封入領域)、60:隔壁、62,64:流体室(受圧室)、66:隔壁ゴム、68:オリフィス部材、72:オリフィス通路、78:内方凸部、80,82:シール筒部、84,86:嵌合部、88:隙間、92,94:凹部、112:可撓性膜、116,128:下側流体室(平衡室)、120:キャブマウント(流体封入式筒形防振装置)、122:上側ゴム弾性体(本体ゴム弾性体)、126:上側流体室(受圧室)

Claims (9)

  1. インナ軸部材とアウタ筒部材とが本体ゴム弾性体で連結されて、該インナ軸部材と該アウタ筒部材との間に非圧縮性流体の封入領域が形成されていると共に、該封入領域を軸方向両側に仕切る隔壁を設けて二つの流体室が形成されており、該二つの流体室がオリフィス通路で連通された流体封入式筒形防振装置において、
    前記隔壁の外周側が前記アウタ筒部材に対して固定されている一方、該隔壁の内周側が前記インナ軸部材に対して軸方向へ移動可能に外挿された環状の隔壁ゴムで構成されており、該隔壁ゴムの内周部分から軸方向両側に向かって突出するシール筒部が一体形成されていると共に、各該シール筒部の突出先端部において該シール筒部よりも厚肉で該インナ軸部材に対して摺動可能に外嵌された嵌合部が一体形成されていることを特徴とする流体封入式筒形防振装置。
  2. 前記シール筒部の内周面と前記インナ軸部材との間には隙間が設定されている請求項1に記載の流体封入式筒形防振装置。
  3. 前記隔壁における前記インナ軸部材への外挿前の単体状態での形状として、前記シール筒部が略一定の横断面形状で軸方向に延びるストレートな筒形状が採用されていると共に、該シール筒部の突出先端縁部が内周側に厚肉とされて前記嵌合部が設けられている請求項1又は2に記載の流体封入式筒形防振装置。
  4. 前記隔壁ゴムの内周部分において、前記シール筒部の軸方向両側への突出部分の外周側には、軸方向の両側面を周方向に延びる溝状の凹部が設けられている請求項1〜3の何れか一項に記載の流体封入式筒形防振装置。
  5. 前記隔壁ゴムの外周側に環状のオリフィス部材が固着されており、該オリフィス部材が前記アウタ筒部材の内周面に嵌着固定されていると共に、該オリフィス部材を利用して前記二つの流体室を連通する前記オリフィス通路が形成されている請求項1〜4の何れか一項に記載の流体封入式筒形防振装置。
  6. 前記オリフィス部材の軸方向中間部分には、内周側に向かって突出する内方凸部が形成されており、該内方凸部に対して前記隔壁ゴムが固着されている請求項5に記載の流体封入式筒形防振装置。
  7. 前記隔壁ゴムの軸方向両側に形成された前記シール筒部が互いに同じ形状とされている請求項1〜6の何れか一項に記載の流体封入式筒形防振装置。
  8. 前記隔壁の軸方向両側に設けられた前記二つの流体室は、前記インナ軸部材と前記アウタ筒部材との軸方向の相対移動に際して該隔壁が軸方向に移動せしめられることにより互いに正負で反対の圧力変動が生ぜしめられる受圧室とされている請求項1〜7の何れか一項に記載の流体封入式筒形防振装置。
  9. 前記隔壁の軸方向一方の側に設けられた前記流体室は、前記インナ軸部材と前記アウタ筒部材との軸方向の相対移動に際して該隔壁が軸方向に移動せしめられることにより圧力変動が生ぜしめられる受圧室とされている一方、該隔壁の軸方向他方の側に設けられた前記流体室は、壁部の一部が可撓性膜で構成されており前記インナ軸部材と前記アウタ筒部材との軸方向の相対移動に際しての圧力変動が回避される平衡室とされている請求項1〜7の何れか一項に記載の流体封入式筒形防振装置。
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