JP4022030B2 - 液化石油ガスの精製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液化石油ガス中に含まれる微量有害不純物を吸着除去する液化石油ガスの精製方法に関するものであり、さらに詳しくは、液化石油ガスを特定の活性炭と接触させることにより微量有害不純物を除去する液化石油ガスの精製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プロパン、ブタン等の液化石油ガスは、家庭用の燃料、小さいものではスプレー缶の圧力剤、小型コンロの燃料、ライター、大量に用いられるものには工業用のバーナーや自動車の燃料として使用されている。特に液化ブタンガスは、自動車用燃料としても多く用いられている。
【0003】
これら液化石油ガスは、石油精製装置、例えば、石油接触分解装置、石油接触改質装置、石油化学分解装置等の各装置の副生物として製造されるものが多く、各装置から製造された液化石油ガスは、酸性ガスや硫黄化物等の各種有害な不純物が含まれるために、一般的には、例えば、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン等のアミン系化合物、カセイソーダ水溶液等と接触洗浄後に水洗する方法等により精製されている。例えば、石油接触分解装置および石油接触改質装置等からの液化石油ガスをアミン洗浄装置、カセイソーダ洗浄装置に供給し、硫化水素、二酸化炭素および塩化水素等を除去することが行なわれている。
【0004】
しかしながら、石油精製装置や触媒のクリーニングや活性化に用いられる薬剤等または液化石油ガスの精製洗浄剤が微量に残留し、このような液化石油ガス、特にブタンを主成分とする液化ブタンガスでは、微量不純物が残留しやすい。例えば、アルカリ金属塩、特に、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム等のナトリウム塩、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン等のアミン系化合物等が残留することもある。このため、例えば、液化ブタンガスの気化装置の圧力調整弁のゴム弁座シートが劣化損傷してガス漏れが発生する等の問題があり、液化石油ガス中のこれらの微量不純物の除去に適合し、その取扱い上簡便な精製方法が要望されてきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、前記事情に鑑み、液化石油ガスの気化装置等の劣化損傷を発生させる微量有害不純物を含有し易い液化ブタンガスを含む液化石油ガスの精製方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、前記課題を解決するために種々の検討を重ねた結果、前記気化装置を劣化損傷する微量の不純物を効率よく吸着除去できる吸着剤に液化石油ガスを接触させることにより精製できることを見出すと共に、さらに、該吸着剤に液化石油ガスを微量水分の存在下において接触させることにより、効率よく精製できることに着目し、これらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明の第一は、微量有害不純物を含有する液化石油ガスを常温下に液相で下記の活性炭;
日本工業規格 JIS K-1474 の方法にて測定した
pH価が9以上である活性炭
と接触させることを特徴とする液化石油ガスの精製方法に関するものである。
【0008】
また、本発明の第二は、微量有害不純物を含有する液化石油ガスを常温下に液相で微量水分の存在下において下記の活性炭;
日本工業規格 JIS K-1474 の方法にて測定した
pH価が9以上である活性炭
と接触させることを特徴とする液化石油ガスの精製方法に関するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の液化石油ガスの精製方法において精製の対象とされる液化石油ガスは、炭素数2〜4の飽和炭化水素および不飽和炭化水素であるが、炭素数3の飽和炭化水素のプロパンを主成分とする液化プロパンガスおよび炭素数4の飽和炭化水素を主成分とする液化ブタンガスが好ましく、特に微量有害不純物が含まれ易い液化ブタンガスが好適である。
【0010】
液化石油ガス中の微量有害不純物としては特に限定されるものではないが、石油液化ガスの精製の過程において混入される種々の不純物、例えば、水酸化ナトリウム等の塩基性アルカリ金属化合物、アルカノールアミン等のアミン系化合物が挙げられ、これらは、通常、40ppt〜500ppt程度含有している。また、原油中に含有される不純物、改質触媒の活性化剤等の混入による塩化物等を挙げることもできる。
【0011】
本発明の液化石油ガスの精製方法において、除去の対象とするアミン系化合物としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアルカノールアミンのほか、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン等のアルキルアミン類、ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン等のジアルキルアミン類、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、トリエチルアミン等のトリアルキルアミン類、さらに、ピリジン、ピロール等を挙げることができる。
【0012】
本発明の液化石油ガスの精製方法において用いられる活性炭は、日本工業規格 JIS K-1474-1991に記載の方法により測定したpH値が9以上、好ましくは9.5〜12のものであり、如何なる製造方法により得られたものでもよい。製造方法として、例えば、ガス賦活法または薬品賦活法のいずれも採用することができ、賦活工程後に行なわれる酸洗浄前の活性炭、または塩基性成分の含浸により得られた活性炭であって、前記pH値が9以上のものであれば有用である。塩基性成分としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の塩基性化合物およびアンモニア等が好ましい。
【0013】
本発明の液化石油ガスの精製方法において高いpH値を示す活性炭が、低pH値のものに比較して顕著な効果を示すことは、除去の対象とする不純物が主として塩基性化合物であることを勘案すると極めて特異的である。
前記活性炭としては、比表面積50m2 /g以上、好ましくは100m2 /g〜2500m2 /gであり、平均細孔半径2Å以上、好ましくは2Å〜500Å、さらに好ましくは5Å〜100Åのものを用いることができる。
さらに、前記活性炭としては、細孔半径20Å以下の細孔の容積が全細孔容積の50%以上、特に70%以上である細孔分布を有するものが好ましい。
このような活性炭の原料は、特に限定されることはなく、石炭、コークス、木炭、ヤシ殻等を用いることができるが、特にヤシ殻が好ましい。
【0014】
本発明の液化石油ガスの精製方法において、前記活性炭は他の固体吸着剤と併用することができる。固体吸着剤としては比表面積が大きく、多孔性の物質が好ましく、種々のものを挙げることができる。例えば、活性白土、ゼオライト、アルミナ、シリカ−アルミナ等が好ましい。前記活性炭と固体吸着剤との併用の形態としては、活性炭とこれらの固体吸着剤とを混合した吸着剤混合体とするか、または吸着工程において、各吸着剤の吸着帯域を設け、液化石油ガスを直列または並列に通液できるように配置することもできる。
【0015】
固体吸着剤としての活性白土は、粘土の一種である酸性白土を硫酸等で処理して吸着活性を更に向上させたものであり、化学組成は、SiO2 、Al2 O3 、Fe2 O3 、CaO、MgO、K2 O等からなるものである。
シリカゲルは、珪酸コロイド溶液を凝固させることにより製造されるものであり、その化学組成はSiO2 を主成分としている。
また、ゼオライトは、主としてアルカリ金属またはアルカリ土類金属の結晶性アルミノ珪酸塩からなり、SiO2 四面体とAlO4 四面体が互いに1個ずつの酸素原子を共有したかたちの規則性のある空洞をもった三次元の骨格構造を有している。
【0016】
アルミナは、酸化アルミナを主成分としたものであり、アルミニウム化合物から調製したアルミナ水和物ゲルの乾燥、焼成により製造することができる。
シリカ−アルミナは、SiO2 およびAl2 O3 を化学組成とし、通常、珪素化合物とアルミニウム化合物からそれぞれの水和物の共沈またはゲル混合等により製造することができる。シリカの含有量は、任意に決定することができるが2重量%〜80重量%の範囲が好ましい。
【0017】
また、これらの固体吸着剤は、いずれもそのまま液化石油ガスの精製に用いることができるが、液化石油ガス中の微量有害不純物の吸着除去を容易に行なうためには塩基性物質を担持させたものが好ましい。具体的には、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等を含有しているものにさらにアンモニアを担持させたものを用いることができる。塩基性物質の担持量としては、pH換算で9以上、好ましくは9.5〜10.5になるように調整すればよい。
【0018】
前記活性炭の形状は、特に限定されるものではなく、液化石油ガスの流通が容易であり、かつ、接触面積の広いもの、例えば、粉末状、円柱状、球状等のいずれのものでもよい。これらの形状のなかでは、特に、円柱状、球状等が好ましく、平均粒径0.3mm〜2mm、特に0.5mm〜1.5mmのものが好適である。以上、説明した活性炭としては市販品を選択して用いることもできる。
また、前記固体吸着剤の形状も前記活性炭と同様のものでよく、特に限定されるものではない。
【0019】
次に、微量有害不純物を含有する液化石油ガスを活性炭と接触させる際に吸着処理帯域に存在する微量水分の量について説明すると、該吸着処理帯域における水分量としては、前記液化石油ガスの全重量基準で1ppm〜300ppm、好ましくは10ppm〜100ppmの範囲を採用することができる。吸着処理帯域において水分が微量存在することにより液化石油ガス中の微量有害不純物の除去効果が顕著となり、これにより、気化装置の圧力調整弁のゴム弁座シートの劣化損傷を効果的に抑制することができ、ゴム弁座シートの使用可能期間を著しく延長させることができる。
【0020】
液化石油ガスと活性炭を接触させる方法は、固定床方式によることが好ましく、液化石油ガスは、活性炭粒状体を充填した固定層の充填塔の上部から加圧流下させることによって活性炭と接触させることができる。接触条件としては、常温下において、LV値3cm/min〜100cm/min、好ましくは5cm/min〜50cm/minおよび圧力0.1MPa〜3MPa、好ましくは0.2MPa〜1.5MPaを採用し、接触を液相で行うことが好ましい。
【0021】
図1に本発明の一実施例として液化ブタンガスの精製装置を示す。液化ブタンガスが液化ブタンガス供給管1より活性炭充填塔2に供給される。精製後の液化ブタンガスは活性炭処理取出管3から取り出され管5を経て気化装置6に供給されるかまたは管8を経て出荷され、他場所での気化装置に供給される。
【0022】
【実施例】
本発明の液化石油ガスの精製方法をより詳細に説明するために次に実施例を示す。もっとも本発明は、実施例等により限定されるものではない。
なお、実施例等で用いた活性炭接触装置および活性炭のpH値の測定方法は次の通りである。
【0023】
活性炭接触装置
図1の説明図に示す活性炭充填塔(直径30cm、充填層高さ100cm)に活性炭71リットルを充填し、次に気化装置[矢崎アロライザー:VP−50G(商品名)、気化能力:50kg/hr、フッ素系ゴム弁座シート:バイトン(商品名)]を配管接続して用いた。
【0024】
活性炭pH値測定方法
日本工業規格 活性炭試験方法(JIS K1474-1991)(第5.10項)による。
【0025】
実施例1
(1)液化石油ガス:BTX(ベンゼン、トルエン、キシレン)製造装置で副生されたブタンを主成分とする次の表1に示す性状のものに不純物をとして水酸化ナトリウムおよびモノエタノールアミンをそれぞれ0.5ppm添加したものを用いた。
(2)活性炭:前記測定方法によるpH=9の粒状活性炭I(ヤシガラ破砕炭(クラレケミカル社製GW−A(商品名)粒度分布:10〜30mesh))
【0026】
【表1】
【0027】
前記試料の液化ブタンガス(水分30ppm含有。)を図1に示す活性炭充填塔に、流量1.3m3 /hr、LV値30cm/min、圧力0.35MPaおよび温度25℃の条件で通液し、その後に気化装置で、流量0.5リットル/min、圧力0.1MPaおよび温度60℃〜70℃の条件で通液気化を連続して行った。その結果、9週間の活性炭処理を行っても液化ブタンガスの気化装置のゴムバルブ外観には変化がなく、またガス漏れも認められなかった。
【0028】
実施例2〜4
液化ブタンガスの水分含有量が10ppm〜100ppm含有されているものを、それぞれ実施例1の条件と同一の条件で、粒状活性炭Iを充填した活性炭充填塔に通液し、その後に気化装置で通液気化し、同様にゴムバルブ外観について評価した。結果を表2に示す。
【0029】
実施例5〜7
内径1.5cmの吸着塔に粒状活性炭I、粒状活性炭II(石炭系破砕炭;pH=10.4、粒度分布;10〜30mesh、BET比表面積;639m2 /g、平均細孔半径;19.7Å)および粒状活性炭III (ヤシガラ破砕炭;pH=10.2、粒度分布;8〜32mesh、BET比表面積;1150m2 /g、平均細孔半径;12Å)をそれぞれ20ml充填しそれぞれ充填層を設けた、各充填層に、モノエタノールアミン(MEA)をトルエンに溶解して調製したMEA溶液(MEA濃度:452wt.ppm)を流量3ml/min(液空間速度=9)の速度で通過させ、処理液中のMEA濃度を測定したところ、それぞれ0.1wt.ppm未満となり、MEA除去率100%の結果を得た。
なお、MEA濃度は、全窒素分析装置にて窒素濃度を測定し、窒素濃度からMEA濃度に換算した。
【0030】
比較例1
活性炭による吸着処理を行わなかった同一液化ブタンガスを同一の気化装置で、同一条件で気化を行った結果、2週間後に気化装置のゴムバルブ表面に劣化損傷が発生しガス漏れが生じた。
【0031】
比較例2
粒状活性炭Iの代わりに粒状活性炭a(市販品を塩酸処理し、pH=3.8とした活性炭。粒度分布;8〜30mesh)を用いたこと以外すべて実施例5と同様に吸着処理を行なった。処理液中のMEA濃度を測定したところ86wt.ppmであり、除去率81%であった。
【0032】
比較例3
液化ブタン中の水分が表2に示す水分量350ppmのものに粒状活性炭Iを用いて実施例1と同様に活性炭処理を行なった。活性炭処理の結果は表2に示すように6週間経過時劣化が発生した。
【0033】
【表2】
【0034】
前記の実施例および比較例の結果から、有害不純物含有の液化ブタンの活性炭処理において、液化ブタンに対しpH9以上の塩基性成分を有する活性炭が極めて顕著な処理効果を奏することがわかる。
【0035】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、液化石油ガス中の微量有害不純物を吸着除去することができ、使用時の気化装置を損傷してガス漏れを発生させることがなく安全かつ経済的である。また、有害不純物の吸着除去は、比較的簡単な吸着塔により行うことができるため作業性および経済性においても優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例を示す説明図である。
【符号の説明】
1. 液化ブタンガス供給管
2. 活性炭充填塔
3. 活性炭処理液化ブタンガス取出管
4. 切替バルブ
5. 処理後の液化ブタンガスの供給管
6. 気化装置
7. 気化ブタンガス管
8. バイパス管
Claims (8)
- 微量有害不純物を含有する液化石油ガスを常温下に液相で下記の活性炭;
日本工業規格 JIS K-1474 の方法にて測定した
pH価が9以上である活性炭
と接触させることを特徴とする液化石油ガスの精製方法。 - 前記液化石油ガスが、炭素数4の炭化水素でブタンを主成分とする液化石油ガスである請求項1に記載の液化石油ガスの精製方法。
- 前記活性炭の塩基性成分が、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物を含有する成分である請求項1に記載の液化石油ガスの精製方法。
- 前記活性炭の比表面積が100m2 /g〜2500m2 /gであり、平均細孔半径が2Å〜500Åである請求項1または3に記載の液化石油ガスの精製方法。
- 前記活性炭の粒径が0.05mm〜5mmである請求項1、3および4のいずれかの1項に記載の液化石油ガスの精製方法。
- 前記有害不純物が、アミン系化合物、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物からなる群より選択される化合物である請求項1ないし5のいずれかの1項に記載の液化石油ガスの精製方法。
- 微量有害不純物を含有する液化石油ガスを常温下に液相で微量水分の存在下において下記の活性炭;
日本工業規格 JIS K-1474 の方法にて測定した
pH価が9以上である活性炭
と接触させることを特徴とする液化石油ガスの精製方法。 - 前記水分の含有量が前記液化石油ガス全重量基準で1ppm〜300ppmである請求項7に記載の液化石油ガスの精製方法。
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