JP4020840B2 - 引戸の制動装置 - Google Patents
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Description
さらに、ピニオンの空転距離が引戸の大きさ、あるいは引戸の移動最大速度などを勘案して変更しようとしても、そのような調整はピニオン自体を交換しなければならず、臨機応変に調整することは困難となる問題があった。
本発明はこのような問題を解決するものであって、引戸の閉動時又は開動時に発する衝撃音を簡単な構造の制動装置で緩和し、しかも、一種の装置で空転距離の長さを任意に変更可能とし、静寂を保って引戸の閉動又は開動を制動することができる引戸の制動装置を提供することを課題とするものである。
前記引戸の開閉動時のピニオンの従動回転に対し制動力を与える回転制動装置の回転軸に前記ピニオンが遊転状態で軸支され、該ピニオンに隣接して前記回転軸にはいずれか一方向の回転は空転して伝達しないが、他方向の回転は前記回転軸に回転を伝達する一方向クラッチが設けられ、該一方向クラッチの外周には円周外面に径方向凹部を形成してなるカム板が同軸に設けられ、前記ピニオンの前記カム板に対する側面に、前記径方向凹部内を周方向に移動可能なピンが突設され、歯車と一体に回転するピンが、前記カム板の径方向凹部の周方向端部に当接することで前記歯車が前記カム板を介して前記一方向クラッチにいずれかの方向の回転を伝達するようにしてなることを特徴とするものである。
実施の形態1
図1において、引戸1は、屋内出入口の上枠2、戸先側竪枠3、戸尻側竪枠4及び床部5で形成された開口枠部に設けられている。
また、上枠2には、戸先1a側へ向けて下降傾斜する断面略L字状のフレーム10(図2)が取付けられ、このフレーム10に形成されたレール11上に引戸1の戸車8、9が転動自在に載置されている。したがって、引戸1は自重により傾斜されたレール11上を戸車8、9で下降方向へと自動的に閉動するようにされている。
また、戸尻寄りのブラケット7には、傾斜フレーム10の戸尻寄りに設けられたストッパー13と係合するストッパーローラ14が取付けられている。
また、図示例の場合は、閉動時の回転(矢印a方向の回転)をクラッチ19が伝達するようにされているので、引戸1を閉じる方向(矢印c方向)に移動させると、ラック29に噛合って従動運動するピニオン28の回転は、一方向クラッチ19を介し回転軸18aから制動装置16の回転軸18に伝達され,この結果、制動装置16の制動力が逆の経路でピニオン28側へと伝えられ、閉動速度が制限されるように構成されている。
次に、図6以下を参照して上記引き戸の緩衝装置の作動について説明する。なお、図6以下は図3を図5と同様、制動装置16を図1の紙背側から見た作動説明図を示したもので、必要な部分以外の構造は省略されている。
引戸1を閉めた状態から、引戸1を開扉方向、即ち矢印d方向へ移動させて開扉すると、ラック29と噛合うピニオン28は図6に矢印eで示すように回転し、一体に設けられたピン30は、周方向凹溝21内を点線で示すように周方向へ移動したあと他側内端面21bに当接させて、一方向クラッチ19と共に従動回転しようとする。
しかしこの方向の回転は、一方向クラッチ19は空転するだけで回転軸18aに伝達しないのでピニオン28は、回転軸18a上で、ピン30を介してカム板22と一体的に空転し、ラック29から外れると図7に示すように周方向凹溝21の他側内端面21bにピン30を接した状態で回転を止める。引戸1を必要分開いた後放置すると、支持レール11の傾斜に沿って引戸1は自然と閉扉方向へと戻り移動しだす。
次に、図8に示すように矢印cで示すように引戸1が戻り移動し、ピニオン28がラック29と噛合う位置まで戻ると、周方向凹溝21の他側内端面21b側に位置するピン30は、ピニオン28の矢印a方向の従動回転によって周方向凹溝21内を点線で示すように戻り始める。
図9に示すように周方向凹溝21の延在する範囲長さSだけピニオン28はピン30と一体となって回転するが、その間カム板22は全く回転しない。即ちSの長さ部分はピニオン28は回転抵抗がなく空転し、その間にピニオン28は、騒音を発することなくラック29と噛合う。
そして、ピン30が周方向凹溝21の内端面21aに当接すると、ピニオン28はピン30を介してカム板22を矢印a方向へ回転させ始める。
ところが、この方向の回転は一方向クラッチ19により回転制御装置16へと伝達されるので、その制動力が逆にピニオン28へと伝えられ、引戸1の閉動速度に制御が加わり、自然に閉動速度が低下されるのである。また、この制動力が作用するときは、既にラック29にピニオン28が噛み合った後なので歯跳びなどによる大きな騒音の発生も防止される。
もちろん、引戸1の閉動速度も制限されるので戸先竪枠3との衝突も避けられ騒音の発生もない。
上記実施の形態として、閉扉時に制動される場合を示したが、傾斜フレーム10の戸尻1c寄り箇所に歯面29tを上方に向けて開動制動用ラック(29)を取付け、開動時にも引戸1が戸尻側竪枠4に衝突して大きな騒音を発生させないようにすることもできる。
実施の形態2
図10は実施の形態2の引き戸の緩衝装置を示す正面図、図11は回転制動装置部分の拡大正面図である。
すなわち、フレーム10に沿って形成される閉動制動用ラック29が、本来の閉扉位置側のもの29aと、その手前部分側のもの29bの二箇所にわたって一連に、かつ不連続に設けられており、また、図11に示すように制動装置16の回転軸18a上のピニオン28のピン30とカム板22との間に、ピン30を周方向凹溝21の他の内端面21bに接するように復帰させる引張りバネ26が架設されている点が実施の形態1の構成と異なる。
次に実施の形態2の引き戸の緩衝装置の作動について説明する。
一方向クラッチ19は、この方向への回転を許容するので、ピニオン28は回転軸18a上で、カム板22とピン30を介して一体的に空転し、ラック29から外れると、図13に示すように周方向凹溝21の他側内端面21bにピン30を接した状態で回転を止める。次いで二番目のラック29bにピニオン28が係合するが、このときも一番目のラック29aと噛合っていたのと同様ピニオン28はカム板22と一体に空転するので、開扉動作の抵抗とはならない。
次に、開扉した状態から引戸1を開放すると、引戸1は自然に閉扉方向へ移動し始める。
図10に示したようにレール11の長さが長いため、引戸1が中間部分に達するだけで閉扉速度がかなり速くなる。しかし、その位置にラック29bがあるため、ピニオン28は、図14に示すようにその位置で、ラック29に噛合い始める。このとき、ピン30は周方向凹溝21の他側内端面21b側にバネ26によりひきつけられているので、ピニオン28の従動回転が始まっても周方向凹溝21の延在する範囲長さSだけピン30は移動し、ピニオン28は回転軸18a上を空転する。なお、その間バネ26はカム板22を元に戻す方向へと引張るが、バネ26の弾性は一方向クラッチ19を回転させ得るほど強くはないので、図15(a)に示すようにそのまま引き伸ばされ、長さS部分ピニオン28が矢印a方向へ回転する間、ピニオン28は実質的に空転する。
したがって、ピニオン28はラック29に対して遊転状態で噛合いはじめ、ピン30が内端面21aに当接した瞬間から一方向クラッチ19を介して制動装置16が機能し始め、閉扉速度が制限されるが、この制動開始時には既にピニオン28がラック29に噛合っているので、騒音を発することなく閉扉速度が制動される。
そして、ピニオン28がラック29aを通り過ぎると、引戸1は再び閉扉方向へ自然に移動し出すが、図15(b)に示すようにラック29aから離れたピニオン28は、カム板22とピン30との間に設けた引張バネ26の引張弾性力によって矢印fで示すようにカム板22に対して互いに近づく方向へと回転し、その結果内端面21bIピン30が接するまで位置を復帰させられる。
この位置は、ピニオン28が距離Sだけ回動したあと径方向凹部21の内端面21aに接する移動前の位置となるので、戸先側のラック29aにピニオン28が噛合うまでに空転距離Sが確保される。
したがって、ラック29aにピニオン28が噛合うときも、噛み合い始めの空転距離Sが確保され、この空転により騒音発生も防止されるのである。
したがって、長い距離を自由移動する場合であっても二段にわたっ.ラック29により、移動速度が制動されるので、速度過剰になった場合に生じる衝突音や噛合騒音などが殆ど解消でき快適な開閉動作が可能となるのである。
なお、図示は省略するが、レール11に沿って設けるラック29の数は、レール11の長さにより三箇所以上設けても良い。
実施の形態3
図16は実施の形態3の引き戸の緩衝装置の要部正面図である。
この引き戸の緩衝装置は、実施の形態1又は2における制動装置16のカム板22部分における変更例で、カム板22の外周20に設けた径方向凹部21の周方向長さSが実施の形態1、2よりも長くされ、径方向凹部21内に適宜間隔毎にピン30と当接可能なストッパ用リブ31…が複数箇所設けられ、それぞれが点線で示すように根元部分から切除可能に突設されている。
なお図17に示すように径方向凹部21をなくし、カム板22全周にリブ31…を適宜間隔毎に突設しそれぞれを任意に折り取るようにすることで空転距離Sを事後的に調整するようにすることもできる。
実施の形態4
図18は、実施の形態4の引き戸の緩衝装置の引き戸の緩衝装置の要部正面図である。
この引き戸の緩衝装置は、実施の形態1又は2における制動装置16部分のさらに別の変更例で、カム板22の外周20に設けた径方向凹部21の長さが長くされ、ピン30に当接可能なストッパアーム32が径方向凹部21内に張出すようにカム板22側面に固定可能に取付けられている。
この取付け手段は、図示のようにストッパアーム32の根元部分33を回転軸18aに軸支し、径方向凹部21に沿って周方向に任意に回転させた後、回転軸18aに設けた締め付けナット34を締付けて固定するようにされている。
したがって、ストッパアーム32の固定位置によって、ピニオン28のラック29と噛み合ったときの空転距離Sを無段階変化させることができる。
なお図19に示すように径方向凹部21をなくしてカム板22の外周にリブ22aを突設し、この固定リブに対してストッパアーム32の固定位置を変化させることでピニオン28がラック29に噛み合いはじめた時の空転距離Sを任意に変更できるように構成することができる。
2 上枠
3 戸先竪枠
4 戸尻竪枠
5 床部
6 ブラケット
7 ブラケット
8 戸車
9 戸車
10 傾斜フレーム
11 レール
12 ガイドローラ
13 ストッパー
14 ストッパーローラ
16 制動装置
17 密閉容器
18 回転軸
18a 延長回転軸
19 一方向クラッチ
20 外周
21 径方向凹部
22 カム板
26 引張りバネ
28 ピニオン
29 ラック
30 ピン
31 リブ
32 ストッパアーム
Claims (4)
- 引戸上縁とその支持レールとのいずれかに沿ってラック、他方にピニオンを取付け、前記引戸の開閉動時に前記ラックとピニオンを噛合わせ、この時のピニオンの従動回転に制動力を与えることによって前記引戸の開閉速度を制動するようにした引戸の制動装置であって、
前記引戸の開閉動時のピニオンの従動回転に対し制動力を与える回転制動装置の回転軸に前記ピニオンが遊転状態で軸支され、該ピニオンに隣接して前記回転軸にはいずれか一方向の回転は空転して伝達しないが、他方向の回転は前記回転軸に回転を伝達する一方向クラッチが設けられ、該一方向クラッチの外周には円周外面に径方向凹部を形成してなるカム板が同軸に設けられ、前記ピニオンの前記カム板に対する側面に、前記径方向凹部内を周方向に移動可能なピンが突設され、歯車と一体に回転するピンが、前記カム板の径方向凹部の周方向端部に当接することで前記歯車が前記カム板を介して前記一方向クラッチにいずれかの方向の回転を伝達するようにしてなることを特徴とする引戸の制動装置。 - 請求項1の引戸の制動装置において、前記引戸のガイドレールに沿って前記ラックが複数本不連続に設けられ、また前記ピニオンとその回転制動装置が引戸に設けられていると共に、前記ラックが前記ピニオンと噛合っていないときは前記ピンがカム板の周方向凹溝に対して回動初期位置に復帰するように付勢する弾性部材を設けたことを特徴とする引戸の制動装置。
- 請求項1または2の引戸の制動装置において、カム板の径方向凹部に、径方向に突出する複数のストッパ用リブが、周方向に沿って一定間隔毎に切除可能に形成されてなる引戸の制動装置。
- 請求項1または2の引戸の制動装置において、ピニオン側面に突設されたピンと係合可能なストッパアームが前記カム板側面の前記径方向凹部の周方向に沿った任意位置に固定可能に取付けてなる引戸の制動装置。
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