JP2004084332A - 引戸装置及び引戸装置用制動装置 - Google Patents
引戸装置及び引戸装置用制動装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004084332A JP2004084332A JP2002247566A JP2002247566A JP2004084332A JP 2004084332 A JP2004084332 A JP 2004084332A JP 2002247566 A JP2002247566 A JP 2002247566A JP 2002247566 A JP2002247566 A JP 2002247566A JP 2004084332 A JP2004084332 A JP 2004084332A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- sliding door
- braking
- door
- roller
- closing
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Abstract
【課題】制動力の作用が制動初期の段階から十分に発揮されるとともに、引戸の走行機構とは完全に独立し、かつ、構造が簡略かされた引戸装置及び引戸用制動装置を提供することを課題とする。
【解決手段】戸枠1の上方の開閉区間W内に任意の所定区間で固定される補助レール10と、制動部材20と、ワンウェイクラッチ60で構成される引戸用制動装置140を、転動ローラ40、連結部材50及び出力軸70とともに一体組付けして制動ユニット80を成形する。転動ローラ40が補助レール10上を転動可能となるように連結部材50を介して制動ユニット80を引戸2に固定配置する引戸装置100を構成することにより、上記課題を解決する。
【選択図】 図1
【解決手段】戸枠1の上方の開閉区間W内に任意の所定区間で固定される補助レール10と、制動部材20と、ワンウェイクラッチ60で構成される引戸用制動装置140を、転動ローラ40、連結部材50及び出力軸70とともに一体組付けして制動ユニット80を成形する。転動ローラ40が補助レール10上を転動可能となるように連結部材50を介して制動ユニット80を引戸2に固定配置する引戸装置100を構成することにより、上記課題を解決する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、引戸の開閉時に制動力を作用させ、引戸の開閉を制動する引戸装置及び引戸装置用制動装置に係る技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】引戸は、その開閉における戸枠との衝突に係り、▲1▼激しい衝突音の発生、▲2▼衝突時の衝撃で引戸が跳ね返る(遮蔽性の悪化)、▲3▼引戸と戸枠との間に指等が挟まって怪我をする可能性、等の課題を有している。これらの課題は、従来、エアダンパー、ブレーキ装置等の制動装置を引戸に設置することで解決を図ってきた。
【0003】
上述の制動装置としては、特開平11−044148号公報記載の引戸用ブレーキ装置(以下、従来例1とする)や、特開2002−070412号公報記載の制動装置(以下、従来例2とする)が知られている。従来例1は、ブレーキ片と、ブレーキ片に接触して引戸を停止させるためのブレーキ板とを引戸と戸枠に設けたものであり、従来例2は、ラックとピニオンギヤとを組み合わせた制動装置であり、両従来例とも、引戸と戸枠との衝突を回避させることを目的としている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の従来の引戸の制動装置は、引戸と戸枠との衝突に関する問題をある程度解決させているものの、開放時から閉塞時へと引戸を移動させる際の開閉速度を徐々に減速させて引戸と戸枠との衝突を緩衝させているに過ぎない。したがって、制動され始めの引戸には十分な制動力が作用されないため、制動され始めの引戸が利用者に衝突する際の衝撃があまり緩衝されないという課題を有している。
【0005】
また、上述の制動装置の構造は、引戸に埋め込むタイプやローラ、レール又はランナー等の走行機構等に組付けしなければならない構造のものであるため、引戸への取付作業が複雑化するとともに、構造自体が複雑なために製造コスト、メンテナンスコストが嵩んでしまうという課題を有する。
【0006】
さらに、エアダンパーを用いた制動装置は、空気環境等が制動作用に大きく影響するため、風呂等の水蒸気が大量に発生している場所では安定した制動を引戸に提供することができない課題を有する。
【0007】
本発明は、このような事情に対処してなされたもので、制動力の作用が制動初期の段階から十分に発揮されるとともに、引戸の走行機構とは完全に独立し、かつ、構造が簡略かされた引戸装置及び引戸用制動装置を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】前述の課題を解決するため、本発明に係る引戸装置は、次のような手段を採用する。
【0009】
即ち、請求項1では、走行機構を備え、走行機構を引戸が開閉自在に走行してなる引戸装置において、閉扉手前で引戸の閉扉を制動する制動機構を設け、制動機構には引戸の開閉時に常時分離し閉扉手前でのみ連結して引戸の閉扉を制動する接続機構を設けることを特徴とする。
【0010】
この手段では、制動機構に設けられる接続機構により閉扉の手前で引戸の閉扉を制動することが可能とされ、かつ、開扉時の接続機構は制動機構と分離するため、閉扉時のみの引戸の走行に対して制動が付与される。
【0011】
また、請求項2では、請求項1記載の引戸装置において、閉扉手前に位置して、制動機構と接続機構を設けることを特徴とする。
【0012】
この手段では、制動機構と接続機構を引戸が閉扉する手前に位置させて設けられるため、閉扉時の引戸と戸枠(縦枠)又は利用者との衝突が緩衝される。
【0013】
また、請求項3では、請求項1または2記載の引戸装置において、制動機構と接続機構を引戸の走行機構とは別個に設けることを特徴とする。
【0014】
この手段では、制動機構と接続機構の各々は、走行機構とは独立した構成となるため、引戸の形状、形態等に左右されない簡略化された構造となる。
【0015】
また、請求項4では、請求項1〜3のいずれか記載の引戸装置において、制動機構は、引戸の開閉方向に延びる補助レールと、補助レールを走行して閉扉に制動力を付与する制動部材とを備えることを特徴とする。
【0016】
この手段では、補助レールのレール長に対応する区間において、制動部材が閉扉に制動力を付与することが可能とされるため、制動力が制動部材の走行の初期段階から十分に引戸に伝達される。
【0017】
また、請求項5では、請求項4記載の引戸装置において、制動部材は、回転方向に対してローラを偏位させて転動による負荷を起こさせる制動ローラであることを特徴とする。
【0018】
この手段では、ローラが制動ローラの回転に対して偏位するため、偏位による負荷が制動力となって、制動ローラの転動が制動される。
【0019】
また、請求項6では、請求項1から5のいずれか記載の引戸装置において、接続機構が引戸の開閉時に制動部材を常時分離し閉扉手前でのみ制動部材を連結して引戸の閉扉を制動するワンウェイクラッチであることを特徴とする。
【0020】
この手段では、ワンウェイクラッチの連結または分離の作用より、引戸に制動部材による制動力が伝達され、閉扉時のみの引戸の走行に対してワンウェイクラッチが連結して、閉扉に制動が付与される。
【0021】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る引戸装置用制動装置は、次のような手段を採用する。
【0022】
即ち、請求項7では、走行機構を備え、走行機構を引戸が開閉自在に走行してなる引戸装置において、引戸の走行機構とは別個でかつ閉扉手前から閉扉位置まで設けられる補助レールと、引戸に設けられて補助レールを走行し閉扉に制動力を付与する制動部材と、制動部材に隣接して設けられ引戸の開閉時には制動部材を常時分離し閉扉手前でのみ制動部材を連結して引戸の閉扉に制動力を付与するワンウェイクラッチとを備える。
【0023】
この手段では、補助レールが走行機構とは別個に設けられることにより、閉扉に制動力を付与する制動部材は補助レールに対応した引戸の任意位置に設けられる構成となる。したがって、ユニット化された引戸用制動装置を提供できるとともに、ワンウェイクラッチは、補助レールを走行する制動部材が閉扉時のみの連結して、引戸の走行に制動が付与される。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1乃至図8は、本発明の引戸装置100の実施の形態(1)を示すものである。ここで引戸2に備えられる走行機構110は、ガイドレール5とレール7と、それぞれを転動するランナー6とローラ8とで構成され、戸枠1と引戸2とに各々設置されている。
【0026】
図1に示すように、実施の形態(1)の引戸装置100は、制動機構130と、接続機構120とから構成される。
【0027】
制動機構130は、補助レール10と、補助レール10を走行する制動部材20とで構成され、この補助レール10と制動部材20とは接続機構であるワンウェイクラッチ60とともに引戸用制動装置140を構成している。
【0028】
制動部材20は、後述する制動原理を構成するローラ35と、ローラ35に当接して回転する制動ローラ30とで構成され、制動ローラ30には、後述する出力軸70と、出力軸70に回転可能に連結される転動ローラ40とが設けられている。
【0029】
また、制動部材20は、ローラ35と制動ローラ30とを格納する制動部22と、制動部22よりも幅広に形成され、連結部材50に当接する当接部21とが設けられる。制動部22の中央部には、出力軸70が接続可能な接続孔23が形成され、当接部21には固定孔25が穿孔されており、ネジ24が挿通されて連結部材50に固定される。
【0030】
接続機構120は、制動機構130に設けられて引戸2の開閉時に常時分離し閉扉手前でのみ連結して引戸2の閉扉を制動するために、一方向のみの引戸の開閉の走行を伝達する後述するワンウェイクラッチ60で構成されている。
【0031】
補助レール10は、転動ローラ40が転動可能な走行幅dの走行溝10aが形成され、レール長は、引戸2の開閉区間Wに対応した任意長さに形成される。ここではレール長をLとする。また、補助レール10は、走行溝10aを構成する両側部のうち一方の側部10bに、ネジ穴10cが設けられ、ネジ10dにより引戸2上方の戸枠1又は壁面等の設置される。ネジ10dには皿ネジを用いることが望ましい。
【0032】
連結部材50は、制動部材20が設置される孔51が形成される設置部52と、引戸2に固定される固定部53とが設けられる厚さのある板材で、材質は強度面からステンレス鋼等の鋼材が望ましい。固定部53には、引戸2に固定するための連結孔54が形成されている。
【0033】
ローラ35は、直径dの円筒形状に形成され、所定の幅で円盤状に形成される摩擦板20fの周面上に、等間隔で回転可能に複数設けられている。制動ローラ30は、摩擦板20fと略同形の円盤状に形成され、ローラ35が設けられている摩擦板20fの周面に当接している。ここで、ローラ35は、制動ローラ30の回転軸Xに対して角度θだけ傾斜して配置されている。
【0034】
図5に示すように、制動部22の内部には、出力軸70を回転可能に支持するベアリング20aと、摩擦板20fを押圧して制動ローラ30に摩擦を作用させるバネ材20bとが設けられている。出力軸70と制動ローラ30とは、キー20dを介して連結されている。ローラ35が配設された摩擦板20fは、制動ローラ30を両側から挟み込むように2枚配置される。したがって、出力軸70に設けられて補助レール10上を転動する転動ローラの回転が出力軸70に伝達され、その回転により、回転する制動ローラ30は、バネ材20bの弾性力Dにより押圧される摩擦板20fとの間で摩擦力fを受け、この摩擦力fが制動力Fとして作用し、制動ローラ30は減衰された回転となる。その減速された回転は、出力軸70を介して転動ローラ30の転動速度となる。
【0035】
ローラ35が制動ローラ30に作用させる摩擦力fの発生原理は、図6に示す通りである。ローラ35は、制動ローラ30に当接し、制動ローラ30の回転に伴って、滑るように回転を始める。しかし、図6(b)に示すように、角度θだけ傾斜しているローラ35は、傾斜していない時のローラ35に作用する力f´よりも余分な力fが付与されなければならない。したがって、この余分な力fは、制動ローラ30の回転抵抗となるので、摩擦力fとして制動ローラ30に作用することになる。(特許第2733200号公報参照。)
【0036】
転動ローラ40は、補助レール10の走行幅dに対応した幅d1のローラ部41と、ローラ部41から突出するように設けられる補強部42とで構成され、ローラ部41の表面は、補助レール10との摩擦抵抗を高くするためにゴム材43で形成されている。ローラ部41の中央には、ワンウェイクラッチ60が嵌合する挿通孔44が、補強部42の中央には出力軸70が挿通可能な挿通孔45が形成され、ローラ部41の表面以外の材質は、硬質プラスチック、金属等を採用して強度を向上させている。
【0037】
出力軸70は、長さL1で円形状の棒状に形成され、一方側の端部が制動部22の接続孔23に挿通されて、制動ローラ30に連結されている。他方側の端部がワンウェイクラッチ60を介して転動ローラ40に接続されている。
【0038】
ワンウェイクラッチ60は、出力軸70と嵌合する挿通孔60aが形成され、引戸2の閉方向への移動時のみ転動ローラ40に制動ローラから出力軸70を介して制動力Fが伝達され、引戸2を開方向へ移動させるときは、出力軸70を空転させて制動力Fを転動ローラ30に伝達させないワンウェイクラッチ60の作動機構を有している。
【0039】
図2に示すように、戸枠1の上方の開閉区間W内に任意の所定区間で固定される補助レール10と、制動部材20と、ワンウェイクラッチ60で構成される引戸用制動装置140は、転動ローラ40、連結部材50及び出力軸70とが一体組付けられて、制動ユニット80を構成する。よって、転動ローラ40が補助レール10上を転動可能となるように連結部材50により制動ユニット80が引戸2に固定配置されて引戸装置100が構成される。さらに、補助レール10は、引戸2の走行機構110とは別個の位置、この実施の形態(1)では戸枠1の上方に配設されるため、引戸用制動装置140は、走行機構110とは完全に独立した構成となる。
【0040】
次に、引戸2の開閉動作を説明する。
【0041】
図7に示すように、引戸2が開状態(縦枠4に引戸2が接している状態)から閉状態(開口部9を閉塞し、引戸1が縦枠3に当接する状態)へと引戸2を閉める際、補助レール10か設置されている区間までの開閉速度V1は、利用者が引戸2に作用させる力により、増加又は定常となる。
【0042】
やがて、補助レール10が設置された区間へと引戸2が移動すると、引戸2の上方に設置された転動ローラ40が、補助レール10を転動する。このとき、転動ローラ40は、走行機構110同様に、引戸1の開閉速度V1に対応した転動を開始しようとする。
【0043】
しかし、開閉速度V1で転動を開始しようとする転動ローラ30には、ワンウェイクラッチ60を介して出力軸70が接続されているため、出力軸70が転動ローラ40に対応して回転運動を始め、この回転運動が制動部材20へと伝達される。制動部材20へと伝達された回転運動は、上述の摩擦力fによる減衰作用により弱められ、その弱められた回転運動は、逆に出力軸70を介して、転動ローラ40へと伝達される。よって、転動ローラ40は弱められた回転運動に応じた転動を行う。したがって、引戸2の開閉速度V1は、転動ローラ40が補助レール10の転動を開始する時点から制動部材20により即座に減速され、制動部材20により弱められた転動ローラ40に対応する開閉速度V2へと遷移される。このようにして、補助レール10のレール長Lに対応した引戸2の制動区間の開閉速度が減速される。
【0044】
転動ローラ40が、補助レール10を転動している間の開閉速度V2は、制動部22のバネ材20bの弾性力Dの設定により、定常または、徐々に減速させることが可能となる。
【0045】
また、図8に示すように、引戸2を閉状態から開状態へと移動させる際は、少ない力で開閉動作を行えるようにしなければならない。そこで、転動ローラ40に設置されているワンウェイクラッチ60の機能により、補助レール10を転動する転動ローラ40の転動は、出力軸70には伝達されず、制動部材20から制動力Fの影響を受けない開動作を可能とする。
【0046】
実施の形態(1)の引戸装置100によると、任意のレール長Lに設定された補助レール10を転動する転動ローラ40により、転動を開始する時点から即座に減速された開閉速度へと遷移されるため、引戸2は、縦枠3との衝突が緩衝されるととともに、一定速度または減速された開閉速度V2から更に減速された開閉速度で移動可能となる。よって、制動区間を移動する引戸2と利用者との衝突を緩衝させ、また、この区間での開閉速度を常に一定に保つことも可能であるため、衝突回避を向上させるも可能となる。
【0047】
また、転動ローラ40の転動による出力軸70の回転運動を制動部材20により減衰させて、転動ローラ40を制動させる簡略化された引戸の制動原理であるので、引戸2の大きさ、自重等の様々な形態に柔軟に対応でき、製造コストダウンを確実に削減できるとともに、取付作業が容易なことから、全体的なコストダウンを実現させる。さらに、補助レール10は、引戸2の走行機構とは別個の離間した位置、この実施の形態(1)では戸枠1の上方に配設されるため、引戸用制動装置140は、走行機構110とは完全に独立した構成となり、引戸2の開閉動作が阻害されないとともに、汎用性が高い。
【0048】
さらに、制動ユニット80は連結部材50を介して引戸2に固定配置されるため、開閉区間Wの任意の区間に配置される補助レール10に対応した任意に位置に設置可能となる。したがって、ユニット化された引戸用制動装置140は、既存の引戸や新設の引戸に対しても、容易に取付けることが可能となる。
【0049】
また、制動機構130の制動原理は、制動ローラ30に作用する摩擦力fによるものであり、その摩擦力fが制動力Fとして出力軸70を介して直接に転動ローラ40に伝達されるため、風呂場などの湿気、水蒸気が多く発生する場所であっても、上述の制動原理による引戸2の制動は何ら影響を受けることはない。よって、安定した制動を引戸に提供することができる。
【0050】
さらに、引戸2の開放時の転動ローラ40は、ワンウェイクラッチ60により制動機構143から制動力Fを受けないため、少ない力で軽くスムーズな引戸2の開動作を提供している。
【0051】
図9は、本発明に係る引戸装置の実施の形態(2)を示すものである。
【0052】
この実施の形態(2)は、上述の実施の形態(1)の引戸用制動装置140の他に、引戸2を開方向へ移動させたときに縦枠4との衝突を干渉させるために、縦枠4付近に引戸用制動装置140aを設置する引戸装置100aの実施形態である。
【0053】
この実施の形態(2)によると、引戸2の開閉の両方向において、引戸2と縦枠3及び4との衝突が緩衝される。なお、その他の作用・効果は上述の実施の形態(1)と同様に奏される。
【0054】
図10は、本発明に係る引戸装置の実施の形態(3)を示すものである。
【0055】
この実施の形態(3)は、上述の実施の形態(1)の制動機構130及び接続機構120を引戸2の下方に設置するとともに、床面Tに補助レール10が延設することで、上述の実施の形態(1)と同様の引戸用制動装置140bを設置することが可能となる引戸装置100bの実施形態である。
【0056】
この実施の形態(3)の引戸用制動装置140bは、補助レール10が引戸2の下方の床面T上に延設され、制動機構130が引戸2に埋設された構成をとり、連結部材50を採用していない。
【0057】
この実施の形態(3)よると、制動機構130が引戸2に埋設される構成となっているため、補助レール10の延設場所を引戸2に隣接した場所に確保できる。さらに、制動機構130が外からが見え難い位置となるので、外観が良好な引戸装置100bを提供することができる。また、図示しないが、引戸2の上方に引戸用制動装置140bを設置する際でも、制動機構130を引戸2に埋設する構成をとることは可能である。なお、その他の作用・効果は上述の実施の形態(1)と同様に奏される。
【0058】
以上、図示した実施の形態の外に、引戸2に設置されるガイドレール5、ランナー6、レール7、ローラ8等の走行機構110は、引戸2の開閉動作を補助する他の形態であってもよく、上述の実施の形態に制限されない。
【0059】
また、連結部材50は、制動部材20が設置される設置部52と、引戸2に固定される固定部53とを確保できる形状であればよく、その形状は上述の実施の形態に限定されない。
【0060】
次に、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
(実施例1)
図1における引戸用制動装置140は、レール長L約250mm、走行幅d=約18mmの走行溝10aを有する補助レール10と、幅D=約15mmの転動ローラ40と、特許第2733200号記載の回転摩擦装置を基本構造とする制動部材20とで構成する。また、転動ローラ40に設置されるワンウェイクラッチ60は、NTN社製ワンウェイクラッチを使用する。
【0061】
このように構成される引戸用制動装置140は、縦約2100mm、横約1200mm、厚さ約40mmの引戸2が配置される戸枠1の上方に設置される。
【0062】
図4に示すような引戸2の開閉動作を行うと、例えば、引戸2の開閉速度V1は、転動ローラ40が補助レール10を転動を開始する時点から即座に減速された開閉速度V2へと遷移されたことが確認できた。この時の減速された開閉速度V2は、例えば、約250mmの距離を約5秒で移動する速度を目安に、任意設定される。
【0063】
また、引戸2を閉状態から開状態へと移動させる際は、転動ローラ40に設置されているワンウェイクラッチ60により、補助レール10を転動する転動ローラ40の転動は、出力軸70には伝達させず、制動機構130から制動力Fの影響を受けないスムーズな開閉動作を確認することができた。
【0064】
【発明の効果】このように、本発明の請求項1に係る引戸制動は、補助レールを転動する転動ローラにより、転動を開始する時点から引戸の開閉速度は、即座に減速された開閉速度へと遷移され、引戸と縦枠との衝突が緩衝されるととともに、一定速度または減速された開閉速度から更に減速された開閉速度で移動されることも可能となる。制動区間を移動する引戸と利用者との衝突を緩衝させ、また、この区間での開閉速度を常に一定に保つことも可能であるため、衝突回避性を向上させるも可能となる。
【0065】
さらに、接続機構により、補助レールのレール長に対応する開閉区間の少なくとも一方向に移動する引戸の開閉が制動されるため、例えば、引戸の閉扉方向への移動にのみ制動力が作用されるようになり、少ない力で軽くスムーズな引戸の開動作を提供する。
【0066】
さらに、制動ローラに作用する摩擦力が制動力として出力軸を介して直接に転動ローラに伝達されるため、風呂場などの湿気、水蒸気が多く発生する場所であっても、引戸2の制動は何ら影響を受けることはない。よって、安定した制動を引戸に提供することができる。
【0067】
また、本発明の請求項7に係る引戸用制動装置は、上述の請求項1と同様な作用・効果が奏されるとともに、走行機構とは独立した制動ユニットととしてユニット化されるので、下荷重式、上吊式等の引戸形態や引戸の形状等に左右されない極めて汎用性の高い引戸用制動装置が提供される。また、簡略化された構造は、製造及び取付作業のコストダウンを促進させることを可能とさせる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の引戸用制動装置の実施の形態(1)を示す斜視図である。
【図2】本発明の引戸用制動装置の実施の形態(1)を示す分解斜視図である。
【図3】図2の詳細分解斜視図である。
【図4】図1の側面図である。
【図5】図2におけるA−A断面図である。
【図6】図5における要部Yの拡大図であり、制動力の発生原理を示す。
【図7】図1の引戸の閉動作を説明を示す略正面図である。
【図8】図1の引戸の開動作を説明を示す略正面図である。
【図9】本発明の引戸用制動装置の実施の形態(2)を示す略正面図である。
【図10】本発明の引戸用制動装置の実施の形態(3)を示す側面図である。
【符号の説明】
1 戸枠
2 引戸
3、4 縦枠
5 ガイドレール
6 ランナー
7 レール
8 ローラ
9 開口部
10 補助レール
20 制動部材
30 制動ローラ
35 ローラ
40 転動ローラ
50 連結部材
60 ワンウェイクラッチ
70 出力軸
80 制動ユニット
100 引戸装置
110 走行機構
120 接続機構
130 制動機構
140 引戸用制動装置
F 制動力
T 床面
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、引戸の開閉時に制動力を作用させ、引戸の開閉を制動する引戸装置及び引戸装置用制動装置に係る技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】引戸は、その開閉における戸枠との衝突に係り、▲1▼激しい衝突音の発生、▲2▼衝突時の衝撃で引戸が跳ね返る(遮蔽性の悪化)、▲3▼引戸と戸枠との間に指等が挟まって怪我をする可能性、等の課題を有している。これらの課題は、従来、エアダンパー、ブレーキ装置等の制動装置を引戸に設置することで解決を図ってきた。
【0003】
上述の制動装置としては、特開平11−044148号公報記載の引戸用ブレーキ装置(以下、従来例1とする)や、特開2002−070412号公報記載の制動装置(以下、従来例2とする)が知られている。従来例1は、ブレーキ片と、ブレーキ片に接触して引戸を停止させるためのブレーキ板とを引戸と戸枠に設けたものであり、従来例2は、ラックとピニオンギヤとを組み合わせた制動装置であり、両従来例とも、引戸と戸枠との衝突を回避させることを目的としている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の従来の引戸の制動装置は、引戸と戸枠との衝突に関する問題をある程度解決させているものの、開放時から閉塞時へと引戸を移動させる際の開閉速度を徐々に減速させて引戸と戸枠との衝突を緩衝させているに過ぎない。したがって、制動され始めの引戸には十分な制動力が作用されないため、制動され始めの引戸が利用者に衝突する際の衝撃があまり緩衝されないという課題を有している。
【0005】
また、上述の制動装置の構造は、引戸に埋め込むタイプやローラ、レール又はランナー等の走行機構等に組付けしなければならない構造のものであるため、引戸への取付作業が複雑化するとともに、構造自体が複雑なために製造コスト、メンテナンスコストが嵩んでしまうという課題を有する。
【0006】
さらに、エアダンパーを用いた制動装置は、空気環境等が制動作用に大きく影響するため、風呂等の水蒸気が大量に発生している場所では安定した制動を引戸に提供することができない課題を有する。
【0007】
本発明は、このような事情に対処してなされたもので、制動力の作用が制動初期の段階から十分に発揮されるとともに、引戸の走行機構とは完全に独立し、かつ、構造が簡略かされた引戸装置及び引戸用制動装置を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】前述の課題を解決するため、本発明に係る引戸装置は、次のような手段を採用する。
【0009】
即ち、請求項1では、走行機構を備え、走行機構を引戸が開閉自在に走行してなる引戸装置において、閉扉手前で引戸の閉扉を制動する制動機構を設け、制動機構には引戸の開閉時に常時分離し閉扉手前でのみ連結して引戸の閉扉を制動する接続機構を設けることを特徴とする。
【0010】
この手段では、制動機構に設けられる接続機構により閉扉の手前で引戸の閉扉を制動することが可能とされ、かつ、開扉時の接続機構は制動機構と分離するため、閉扉時のみの引戸の走行に対して制動が付与される。
【0011】
また、請求項2では、請求項1記載の引戸装置において、閉扉手前に位置して、制動機構と接続機構を設けることを特徴とする。
【0012】
この手段では、制動機構と接続機構を引戸が閉扉する手前に位置させて設けられるため、閉扉時の引戸と戸枠(縦枠)又は利用者との衝突が緩衝される。
【0013】
また、請求項3では、請求項1または2記載の引戸装置において、制動機構と接続機構を引戸の走行機構とは別個に設けることを特徴とする。
【0014】
この手段では、制動機構と接続機構の各々は、走行機構とは独立した構成となるため、引戸の形状、形態等に左右されない簡略化された構造となる。
【0015】
また、請求項4では、請求項1〜3のいずれか記載の引戸装置において、制動機構は、引戸の開閉方向に延びる補助レールと、補助レールを走行して閉扉に制動力を付与する制動部材とを備えることを特徴とする。
【0016】
この手段では、補助レールのレール長に対応する区間において、制動部材が閉扉に制動力を付与することが可能とされるため、制動力が制動部材の走行の初期段階から十分に引戸に伝達される。
【0017】
また、請求項5では、請求項4記載の引戸装置において、制動部材は、回転方向に対してローラを偏位させて転動による負荷を起こさせる制動ローラであることを特徴とする。
【0018】
この手段では、ローラが制動ローラの回転に対して偏位するため、偏位による負荷が制動力となって、制動ローラの転動が制動される。
【0019】
また、請求項6では、請求項1から5のいずれか記載の引戸装置において、接続機構が引戸の開閉時に制動部材を常時分離し閉扉手前でのみ制動部材を連結して引戸の閉扉を制動するワンウェイクラッチであることを特徴とする。
【0020】
この手段では、ワンウェイクラッチの連結または分離の作用より、引戸に制動部材による制動力が伝達され、閉扉時のみの引戸の走行に対してワンウェイクラッチが連結して、閉扉に制動が付与される。
【0021】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る引戸装置用制動装置は、次のような手段を採用する。
【0022】
即ち、請求項7では、走行機構を備え、走行機構を引戸が開閉自在に走行してなる引戸装置において、引戸の走行機構とは別個でかつ閉扉手前から閉扉位置まで設けられる補助レールと、引戸に設けられて補助レールを走行し閉扉に制動力を付与する制動部材と、制動部材に隣接して設けられ引戸の開閉時には制動部材を常時分離し閉扉手前でのみ制動部材を連結して引戸の閉扉に制動力を付与するワンウェイクラッチとを備える。
【0023】
この手段では、補助レールが走行機構とは別個に設けられることにより、閉扉に制動力を付与する制動部材は補助レールに対応した引戸の任意位置に設けられる構成となる。したがって、ユニット化された引戸用制動装置を提供できるとともに、ワンウェイクラッチは、補助レールを走行する制動部材が閉扉時のみの連結して、引戸の走行に制動が付与される。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1乃至図8は、本発明の引戸装置100の実施の形態(1)を示すものである。ここで引戸2に備えられる走行機構110は、ガイドレール5とレール7と、それぞれを転動するランナー6とローラ8とで構成され、戸枠1と引戸2とに各々設置されている。
【0026】
図1に示すように、実施の形態(1)の引戸装置100は、制動機構130と、接続機構120とから構成される。
【0027】
制動機構130は、補助レール10と、補助レール10を走行する制動部材20とで構成され、この補助レール10と制動部材20とは接続機構であるワンウェイクラッチ60とともに引戸用制動装置140を構成している。
【0028】
制動部材20は、後述する制動原理を構成するローラ35と、ローラ35に当接して回転する制動ローラ30とで構成され、制動ローラ30には、後述する出力軸70と、出力軸70に回転可能に連結される転動ローラ40とが設けられている。
【0029】
また、制動部材20は、ローラ35と制動ローラ30とを格納する制動部22と、制動部22よりも幅広に形成され、連結部材50に当接する当接部21とが設けられる。制動部22の中央部には、出力軸70が接続可能な接続孔23が形成され、当接部21には固定孔25が穿孔されており、ネジ24が挿通されて連結部材50に固定される。
【0030】
接続機構120は、制動機構130に設けられて引戸2の開閉時に常時分離し閉扉手前でのみ連結して引戸2の閉扉を制動するために、一方向のみの引戸の開閉の走行を伝達する後述するワンウェイクラッチ60で構成されている。
【0031】
補助レール10は、転動ローラ40が転動可能な走行幅dの走行溝10aが形成され、レール長は、引戸2の開閉区間Wに対応した任意長さに形成される。ここではレール長をLとする。また、補助レール10は、走行溝10aを構成する両側部のうち一方の側部10bに、ネジ穴10cが設けられ、ネジ10dにより引戸2上方の戸枠1又は壁面等の設置される。ネジ10dには皿ネジを用いることが望ましい。
【0032】
連結部材50は、制動部材20が設置される孔51が形成される設置部52と、引戸2に固定される固定部53とが設けられる厚さのある板材で、材質は強度面からステンレス鋼等の鋼材が望ましい。固定部53には、引戸2に固定するための連結孔54が形成されている。
【0033】
ローラ35は、直径dの円筒形状に形成され、所定の幅で円盤状に形成される摩擦板20fの周面上に、等間隔で回転可能に複数設けられている。制動ローラ30は、摩擦板20fと略同形の円盤状に形成され、ローラ35が設けられている摩擦板20fの周面に当接している。ここで、ローラ35は、制動ローラ30の回転軸Xに対して角度θだけ傾斜して配置されている。
【0034】
図5に示すように、制動部22の内部には、出力軸70を回転可能に支持するベアリング20aと、摩擦板20fを押圧して制動ローラ30に摩擦を作用させるバネ材20bとが設けられている。出力軸70と制動ローラ30とは、キー20dを介して連結されている。ローラ35が配設された摩擦板20fは、制動ローラ30を両側から挟み込むように2枚配置される。したがって、出力軸70に設けられて補助レール10上を転動する転動ローラの回転が出力軸70に伝達され、その回転により、回転する制動ローラ30は、バネ材20bの弾性力Dにより押圧される摩擦板20fとの間で摩擦力fを受け、この摩擦力fが制動力Fとして作用し、制動ローラ30は減衰された回転となる。その減速された回転は、出力軸70を介して転動ローラ30の転動速度となる。
【0035】
ローラ35が制動ローラ30に作用させる摩擦力fの発生原理は、図6に示す通りである。ローラ35は、制動ローラ30に当接し、制動ローラ30の回転に伴って、滑るように回転を始める。しかし、図6(b)に示すように、角度θだけ傾斜しているローラ35は、傾斜していない時のローラ35に作用する力f´よりも余分な力fが付与されなければならない。したがって、この余分な力fは、制動ローラ30の回転抵抗となるので、摩擦力fとして制動ローラ30に作用することになる。(特許第2733200号公報参照。)
【0036】
転動ローラ40は、補助レール10の走行幅dに対応した幅d1のローラ部41と、ローラ部41から突出するように設けられる補強部42とで構成され、ローラ部41の表面は、補助レール10との摩擦抵抗を高くするためにゴム材43で形成されている。ローラ部41の中央には、ワンウェイクラッチ60が嵌合する挿通孔44が、補強部42の中央には出力軸70が挿通可能な挿通孔45が形成され、ローラ部41の表面以外の材質は、硬質プラスチック、金属等を採用して強度を向上させている。
【0037】
出力軸70は、長さL1で円形状の棒状に形成され、一方側の端部が制動部22の接続孔23に挿通されて、制動ローラ30に連結されている。他方側の端部がワンウェイクラッチ60を介して転動ローラ40に接続されている。
【0038】
ワンウェイクラッチ60は、出力軸70と嵌合する挿通孔60aが形成され、引戸2の閉方向への移動時のみ転動ローラ40に制動ローラから出力軸70を介して制動力Fが伝達され、引戸2を開方向へ移動させるときは、出力軸70を空転させて制動力Fを転動ローラ30に伝達させないワンウェイクラッチ60の作動機構を有している。
【0039】
図2に示すように、戸枠1の上方の開閉区間W内に任意の所定区間で固定される補助レール10と、制動部材20と、ワンウェイクラッチ60で構成される引戸用制動装置140は、転動ローラ40、連結部材50及び出力軸70とが一体組付けられて、制動ユニット80を構成する。よって、転動ローラ40が補助レール10上を転動可能となるように連結部材50により制動ユニット80が引戸2に固定配置されて引戸装置100が構成される。さらに、補助レール10は、引戸2の走行機構110とは別個の位置、この実施の形態(1)では戸枠1の上方に配設されるため、引戸用制動装置140は、走行機構110とは完全に独立した構成となる。
【0040】
次に、引戸2の開閉動作を説明する。
【0041】
図7に示すように、引戸2が開状態(縦枠4に引戸2が接している状態)から閉状態(開口部9を閉塞し、引戸1が縦枠3に当接する状態)へと引戸2を閉める際、補助レール10か設置されている区間までの開閉速度V1は、利用者が引戸2に作用させる力により、増加又は定常となる。
【0042】
やがて、補助レール10が設置された区間へと引戸2が移動すると、引戸2の上方に設置された転動ローラ40が、補助レール10を転動する。このとき、転動ローラ40は、走行機構110同様に、引戸1の開閉速度V1に対応した転動を開始しようとする。
【0043】
しかし、開閉速度V1で転動を開始しようとする転動ローラ30には、ワンウェイクラッチ60を介して出力軸70が接続されているため、出力軸70が転動ローラ40に対応して回転運動を始め、この回転運動が制動部材20へと伝達される。制動部材20へと伝達された回転運動は、上述の摩擦力fによる減衰作用により弱められ、その弱められた回転運動は、逆に出力軸70を介して、転動ローラ40へと伝達される。よって、転動ローラ40は弱められた回転運動に応じた転動を行う。したがって、引戸2の開閉速度V1は、転動ローラ40が補助レール10の転動を開始する時点から制動部材20により即座に減速され、制動部材20により弱められた転動ローラ40に対応する開閉速度V2へと遷移される。このようにして、補助レール10のレール長Lに対応した引戸2の制動区間の開閉速度が減速される。
【0044】
転動ローラ40が、補助レール10を転動している間の開閉速度V2は、制動部22のバネ材20bの弾性力Dの設定により、定常または、徐々に減速させることが可能となる。
【0045】
また、図8に示すように、引戸2を閉状態から開状態へと移動させる際は、少ない力で開閉動作を行えるようにしなければならない。そこで、転動ローラ40に設置されているワンウェイクラッチ60の機能により、補助レール10を転動する転動ローラ40の転動は、出力軸70には伝達されず、制動部材20から制動力Fの影響を受けない開動作を可能とする。
【0046】
実施の形態(1)の引戸装置100によると、任意のレール長Lに設定された補助レール10を転動する転動ローラ40により、転動を開始する時点から即座に減速された開閉速度へと遷移されるため、引戸2は、縦枠3との衝突が緩衝されるととともに、一定速度または減速された開閉速度V2から更に減速された開閉速度で移動可能となる。よって、制動区間を移動する引戸2と利用者との衝突を緩衝させ、また、この区間での開閉速度を常に一定に保つことも可能であるため、衝突回避を向上させるも可能となる。
【0047】
また、転動ローラ40の転動による出力軸70の回転運動を制動部材20により減衰させて、転動ローラ40を制動させる簡略化された引戸の制動原理であるので、引戸2の大きさ、自重等の様々な形態に柔軟に対応でき、製造コストダウンを確実に削減できるとともに、取付作業が容易なことから、全体的なコストダウンを実現させる。さらに、補助レール10は、引戸2の走行機構とは別個の離間した位置、この実施の形態(1)では戸枠1の上方に配設されるため、引戸用制動装置140は、走行機構110とは完全に独立した構成となり、引戸2の開閉動作が阻害されないとともに、汎用性が高い。
【0048】
さらに、制動ユニット80は連結部材50を介して引戸2に固定配置されるため、開閉区間Wの任意の区間に配置される補助レール10に対応した任意に位置に設置可能となる。したがって、ユニット化された引戸用制動装置140は、既存の引戸や新設の引戸に対しても、容易に取付けることが可能となる。
【0049】
また、制動機構130の制動原理は、制動ローラ30に作用する摩擦力fによるものであり、その摩擦力fが制動力Fとして出力軸70を介して直接に転動ローラ40に伝達されるため、風呂場などの湿気、水蒸気が多く発生する場所であっても、上述の制動原理による引戸2の制動は何ら影響を受けることはない。よって、安定した制動を引戸に提供することができる。
【0050】
さらに、引戸2の開放時の転動ローラ40は、ワンウェイクラッチ60により制動機構143から制動力Fを受けないため、少ない力で軽くスムーズな引戸2の開動作を提供している。
【0051】
図9は、本発明に係る引戸装置の実施の形態(2)を示すものである。
【0052】
この実施の形態(2)は、上述の実施の形態(1)の引戸用制動装置140の他に、引戸2を開方向へ移動させたときに縦枠4との衝突を干渉させるために、縦枠4付近に引戸用制動装置140aを設置する引戸装置100aの実施形態である。
【0053】
この実施の形態(2)によると、引戸2の開閉の両方向において、引戸2と縦枠3及び4との衝突が緩衝される。なお、その他の作用・効果は上述の実施の形態(1)と同様に奏される。
【0054】
図10は、本発明に係る引戸装置の実施の形態(3)を示すものである。
【0055】
この実施の形態(3)は、上述の実施の形態(1)の制動機構130及び接続機構120を引戸2の下方に設置するとともに、床面Tに補助レール10が延設することで、上述の実施の形態(1)と同様の引戸用制動装置140bを設置することが可能となる引戸装置100bの実施形態である。
【0056】
この実施の形態(3)の引戸用制動装置140bは、補助レール10が引戸2の下方の床面T上に延設され、制動機構130が引戸2に埋設された構成をとり、連結部材50を採用していない。
【0057】
この実施の形態(3)よると、制動機構130が引戸2に埋設される構成となっているため、補助レール10の延設場所を引戸2に隣接した場所に確保できる。さらに、制動機構130が外からが見え難い位置となるので、外観が良好な引戸装置100bを提供することができる。また、図示しないが、引戸2の上方に引戸用制動装置140bを設置する際でも、制動機構130を引戸2に埋設する構成をとることは可能である。なお、その他の作用・効果は上述の実施の形態(1)と同様に奏される。
【0058】
以上、図示した実施の形態の外に、引戸2に設置されるガイドレール5、ランナー6、レール7、ローラ8等の走行機構110は、引戸2の開閉動作を補助する他の形態であってもよく、上述の実施の形態に制限されない。
【0059】
また、連結部材50は、制動部材20が設置される設置部52と、引戸2に固定される固定部53とを確保できる形状であればよく、その形状は上述の実施の形態に限定されない。
【0060】
次に、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
(実施例1)
図1における引戸用制動装置140は、レール長L約250mm、走行幅d=約18mmの走行溝10aを有する補助レール10と、幅D=約15mmの転動ローラ40と、特許第2733200号記載の回転摩擦装置を基本構造とする制動部材20とで構成する。また、転動ローラ40に設置されるワンウェイクラッチ60は、NTN社製ワンウェイクラッチを使用する。
【0061】
このように構成される引戸用制動装置140は、縦約2100mm、横約1200mm、厚さ約40mmの引戸2が配置される戸枠1の上方に設置される。
【0062】
図4に示すような引戸2の開閉動作を行うと、例えば、引戸2の開閉速度V1は、転動ローラ40が補助レール10を転動を開始する時点から即座に減速された開閉速度V2へと遷移されたことが確認できた。この時の減速された開閉速度V2は、例えば、約250mmの距離を約5秒で移動する速度を目安に、任意設定される。
【0063】
また、引戸2を閉状態から開状態へと移動させる際は、転動ローラ40に設置されているワンウェイクラッチ60により、補助レール10を転動する転動ローラ40の転動は、出力軸70には伝達させず、制動機構130から制動力Fの影響を受けないスムーズな開閉動作を確認することができた。
【0064】
【発明の効果】このように、本発明の請求項1に係る引戸制動は、補助レールを転動する転動ローラにより、転動を開始する時点から引戸の開閉速度は、即座に減速された開閉速度へと遷移され、引戸と縦枠との衝突が緩衝されるととともに、一定速度または減速された開閉速度から更に減速された開閉速度で移動されることも可能となる。制動区間を移動する引戸と利用者との衝突を緩衝させ、また、この区間での開閉速度を常に一定に保つことも可能であるため、衝突回避性を向上させるも可能となる。
【0065】
さらに、接続機構により、補助レールのレール長に対応する開閉区間の少なくとも一方向に移動する引戸の開閉が制動されるため、例えば、引戸の閉扉方向への移動にのみ制動力が作用されるようになり、少ない力で軽くスムーズな引戸の開動作を提供する。
【0066】
さらに、制動ローラに作用する摩擦力が制動力として出力軸を介して直接に転動ローラに伝達されるため、風呂場などの湿気、水蒸気が多く発生する場所であっても、引戸2の制動は何ら影響を受けることはない。よって、安定した制動を引戸に提供することができる。
【0067】
また、本発明の請求項7に係る引戸用制動装置は、上述の請求項1と同様な作用・効果が奏されるとともに、走行機構とは独立した制動ユニットととしてユニット化されるので、下荷重式、上吊式等の引戸形態や引戸の形状等に左右されない極めて汎用性の高い引戸用制動装置が提供される。また、簡略化された構造は、製造及び取付作業のコストダウンを促進させることを可能とさせる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の引戸用制動装置の実施の形態(1)を示す斜視図である。
【図2】本発明の引戸用制動装置の実施の形態(1)を示す分解斜視図である。
【図3】図2の詳細分解斜視図である。
【図4】図1の側面図である。
【図5】図2におけるA−A断面図である。
【図6】図5における要部Yの拡大図であり、制動力の発生原理を示す。
【図7】図1の引戸の閉動作を説明を示す略正面図である。
【図8】図1の引戸の開動作を説明を示す略正面図である。
【図9】本発明の引戸用制動装置の実施の形態(2)を示す略正面図である。
【図10】本発明の引戸用制動装置の実施の形態(3)を示す側面図である。
【符号の説明】
1 戸枠
2 引戸
3、4 縦枠
5 ガイドレール
6 ランナー
7 レール
8 ローラ
9 開口部
10 補助レール
20 制動部材
30 制動ローラ
35 ローラ
40 転動ローラ
50 連結部材
60 ワンウェイクラッチ
70 出力軸
80 制動ユニット
100 引戸装置
110 走行機構
120 接続機構
130 制動機構
140 引戸用制動装置
F 制動力
T 床面
Claims (7)
- 走行機構を備え、走行機構を引戸が開閉自在に走行してなる引戸装置において、
閉扉手前で引戸の閉扉を制動する制動機構を設け、制動機構には引戸の開閉時に常時分離し閉扉手前でのみ連結して引戸の閉扉を制動する接続機構を設けることを特徴とする引戸装置。 - 請求項1記載の引戸装置において、閉扉手前に位置して、制動機構と接続機構を設けることを特徴とする引戸装置。
- 請求項1または2記載の引戸装置において、制動機構と接続機構を引戸の走行機構とは別個に設けることを特徴とする引戸装置。
- 請求項1〜3のいずれか記載の引戸装置において、制動機構は、引戸の開閉方向に延びる補助レールと、補助レールを走行して閉扉に制動力を付与する制動部材とを備えることを特徴とする引戸装置。
- 請求項4記載の引戸装置において、制動部材は、回転方向に対してローラを偏位させて転動による負荷を起こさせる制動ローラであることを特徴とする引戸装置。
- 請求項1から5のいずれか記載の引戸装置において、接続機構が引戸の開閉時に制動部材を常時分離し閉扉手前でのみ制動部材を連結して引戸の閉扉を制動するワンウェイクラッチであることを特徴とする引戸装置。
- 走行機構を備え、走行機構を引戸が開閉自在に走行してなる引戸装置において、
引戸の走行機構とは別個でかつ閉扉手前から閉扉位置まで設けられる補助レールと、引戸に設けられて補助レールを走行し閉扉に制動力を付与する制動部材と、制動部材に隣接して設けられ引戸の開閉時には制動部材を常時分離し閉扉手前でのみ制動部材を連結して引戸の閉扉に制動力を付与するワンウェイクラッチとを備える引戸装置用制動装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002247566A JP2004084332A (ja) | 2002-08-27 | 2002-08-27 | 引戸装置及び引戸装置用制動装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002247566A JP2004084332A (ja) | 2002-08-27 | 2002-08-27 | 引戸装置及び引戸装置用制動装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004084332A true JP2004084332A (ja) | 2004-03-18 |
Family
ID=32055176
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002247566A Pending JP2004084332A (ja) | 2002-08-27 | 2002-08-27 | 引戸装置及び引戸装置用制動装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004084332A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008025239A (ja) * | 2006-07-21 | 2008-02-07 | Ykk Ap株式会社 | 建具 |
JP2014025237A (ja) * | 2012-07-26 | 2014-02-06 | Comany Inc | 一定速度で引戸が閉じる引戸装置 |
KR101654915B1 (ko) * | 2016-02-22 | 2016-09-22 | 주식회사 다인스 | 슬라이딩 도어용 롤러 브레이크 |
KR101804356B1 (ko) | 2017-08-25 | 2017-12-04 | 주식회사 대명기술단 | 건축용 슬라이딩 행거도어의 완충장치 |
-
2002
- 2002-08-27 JP JP2002247566A patent/JP2004084332A/ja active Pending
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008025239A (ja) * | 2006-07-21 | 2008-02-07 | Ykk Ap株式会社 | 建具 |
JP4669822B2 (ja) * | 2006-07-21 | 2011-04-13 | Ykk Ap株式会社 | 建具 |
JP2014025237A (ja) * | 2012-07-26 | 2014-02-06 | Comany Inc | 一定速度で引戸が閉じる引戸装置 |
KR101654915B1 (ko) * | 2016-02-22 | 2016-09-22 | 주식회사 다인스 | 슬라이딩 도어용 롤러 브레이크 |
KR101804356B1 (ko) | 2017-08-25 | 2017-12-04 | 주식회사 대명기술단 | 건축용 슬라이딩 행거도어의 완충장치 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2006207232A (ja) | 戸の制動装置 | |
JP2004084332A (ja) | 引戸装置及び引戸装置用制動装置 | |
US5951083A (en) | Glove box door damper | |
US8510912B2 (en) | Self-closing device for sliding doors | |
JP2003020862A (ja) | 連動式重ね引戸装置 | |
JP4037075B2 (ja) | 自閉式引戸装置 | |
JP4150384B2 (ja) | 自閉式スライド扉のフリーストップ機構 | |
KR20200040646A (ko) | 도어 장치 | |
JP3168850U (ja) | 引き戸の制動装置 | |
JP7182421B2 (ja) | 扉装置 | |
KR20080076475A (ko) | 스윙 도어 | |
KR200399555Y1 (ko) | 도어의 열림각도 제어장치 | |
JPH0988415A (ja) | 引戸装置 | |
JP7041553B2 (ja) | ブース用の円弧状ドア装置 | |
JP3276610B2 (ja) | 戸の制動装置 | |
JP4008157B2 (ja) | 引戸の緩衝装置 | |
JP4577034B2 (ja) | 格納ボックスにおける引出し体の駆動支持構造 | |
JPH083656Y2 (ja) | ローラ式ドアガイド | |
JP5388831B2 (ja) | スライド装置及びスライド建具 | |
JP4020840B2 (ja) | 引戸の制動装置 | |
JP3693660B2 (ja) | スライドレール式上吊り扉装置 | |
JP3124228B2 (ja) | 連動引戸装置 | |
JP4769140B2 (ja) | 自動ドア装置 | |
JPS5925690Y2 (ja) | サンル−フの滑動装置 | |
CN113738210A (zh) | 铰链结构及冰箱 |