JP4020220B2 - プッシュプル増幅回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プッシュプル回路を用いて増幅動作を行うプッシュプル増幅回路に係わり、特に、低消費電力で高ドライブ能力を備える等の利点を有するプッシュプル増幅回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の回路としては、例えば、特開昭63−153903号公報記載の増幅回路が提案されていた。この増幅回路は、入力信号を電圧増幅段によって増幅したものと基準電圧発生回路が発生する基準電圧との減算電圧を求め、この求めた減算電圧を電圧電流変換回路および電流電圧変換回路によってレベル変換し、さらに、このレベル変換した信号をコンプリメンタリ接続された出力トランジスタの一方の駆動制御信号として、AB級の増幅動作を行わせるものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、高能率のAB級増幅動作を行わせるためには、出力トランジスタを駆動制御する信号のゲインを大きく設定すればよく、このためには演算増幅器を用いてゲインを大きくする回路構成が考えられる。
【0004】
しかしながら、演算増幅器にはオフセットが存在するため直流電圧バイアス点が変動しやすくなってしまい、回路に電圧供給する電源間に流れるバイアス電流が大きくなってしまう可能性があり、その結果、演算増幅器の消費電流が大きくなってしまうという問題があった。
【0005】
したがって、演算増幅器の消費電流の上限が定められている場合には、消費電流の設定値が少な目になるように回路設計を行う必要があり、回路設計の際の繁雑さを招くと共に、電源利用効率が高くならないという問題もあった。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するために創作されたもので、その目的は、演算増幅器を用いず、即ち、消費電流が大きくならないようにした高効率のプッシュプル増幅器を提供する点にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明によれば、与えられる入力信号を相補的に増幅可能な回路であって、前記入力信号を増幅する増幅回路と、相補的動作を行うようにトランジスタ対を接続したプッシュプル回路と、前記トランジスタ対のうちの一方のトランジスタを駆動制御する駆動回路と、を備え、前記トランジスタ対のうちの他方のトランジスタが前記増幅回路の出力で駆動制御されるように構成され、さらに、前記駆動回路は、前記増幅回路から出力される電圧を、電圧値として反対方向にシフト出力する反転回路と、この反転回路から出力される電圧値と反比例関係にある大きさの電圧を生成する演算回路とを含み、前記増幅回路の出力が所定電圧値以下の場合には略一定のゲインとなると共に、前記増幅回路の出力が前記所定電圧値以上の場合にはゲインが大となるように構成され、
前記演算回路は、電流源と、この電流源に自身のドレイン端子が接続される第1のMOSトランジスタと、この第1のMOSトランジスタのソース端子に自身のドレインが接続される第2のMOSトランジスタと、を含み、前記第1のMOSトランジスタのゲート端子が前記反転回路の出力信号を供給可能に接続されると共に、前記第2のMOSトランジスタのゲート端子が前記第1のMOSトランジスタのドレイン端子に接続され、前記第2のMOSトランジスタのゲート端子の出力電圧が、前記トランジスタ対の一方のトランジスタの駆動電圧であることを特徴とするプッシュプル増幅回路が提供される。
【0008】
この発明によれば、駆動回路は、増幅回路の出力が所定電圧値以下の場合には略一定のゲインになると共に、増幅回路の出力が前記所定電圧値以上の場合にはゲインが大となるので、プッシュプル回路からの出力電圧振幅を大きくすることができる。
【0010】
また、反転回路が、増幅回路から出力される電圧を反対方向(出力電圧が上昇すれば下降、下降すれば上昇する方向)にシフトして、演算回路が、この反転回路から出力される電圧値と反比例関係にある大きさの電圧を生成するので、駆動回路全体の動作は、増幅回路の出力が所定電圧値以下の場合には略一定のゲインとなると共に、増幅回路の出力が所定電圧値以下の場合にはゲインが大となる。
【0012】
また、演算回路は、電流源から供給される定電流が第1のMOSトランジスタのドレイン端子と第2のMOSトランジスタのゲート端子に供給され、第1のトランジスタの印加電圧の上昇・下降に応じて、第1のトランジスタに流れる電流が増加、減少し、また、第2のMOSトランジスタに流れる電流は逆に、減少、増加するので、第1のMOSトランジスタのゲート端子に印加される電圧の大きさと反比例の関係にある大きさの電圧を出力する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るプッシュプル増幅回路の構成図である。図1に示すようにこのこプッシュプル増幅回路は、電源電圧VDDが供給される電源ライン1と電位が接地電圧VDDとなっている接地ライン2との間に、差動増幅部10と駆動部20と出力部30とが設けられて構成されていて、さらに、駆動部20は反転部21と演算部22とを有している。
【0014】
差動増幅部10は、ソース端子が電源ラインに接続されると共に、互いのゲート電位が共通となるようにカレントミラー接続されるPMOSFETQ8、Q9と、このPMOSFETQ8、Q9の夫々のドレイン端子に、夫々のドレイン端子が接続されると共に、夫々のゲート端子が入力端子3a、3bに接続されているNMOSFETQ10、Q11と、このNMOSFETQ10およびQ11の両ソース端子と接地ライン2との間に接続される電流源5とを有していて、入力端子3a、3b間に与えられる入力信号を差動増幅したものを出力する。
【0015】
出力部30は、電源ライン1にソース端子が接続されるPMOSFETQ7と接地ライン2にソース端子が接続されるNMOSFETQ6とが直列接続されて構成されていて、PMOSFETQ7のゲート端子がPMOSFETQ9のドレイン端子に接続されて差動増幅部10の出力電圧でPMOSFETQ7が駆動制御されるようになっていると共に、NMOSFETQ6のゲート端子がNMOSFETQ4のゲート端子に接続されて演算部22の出力電圧でNMOSFETQ6が駆動制御されるようになっている。
【0016】
反転部21は、電源ライン1にソース端子が接続されるPMOSFETQ1と、ダイオード接続されたNMOSFETQ2と、接地ライン2にソース端子が接続されるNMOSFETQ3とが直列接続されていて、さらに、PMOSFETQ1のゲート端子がPMOSFETQ9のドレイン端子に接続されると共に、NMOSFETQ2およびQ3のゲート端子が同電圧となるように接続されている。
【0017】
演算部22は、一端が電源ライン1に接続された電流源6と、NMOSFETQ5と、接地ライン2にソース端子が接続されるNMOSFETQ4とが直列接続されていて、さらに、NMOSFETQ4のゲート端子とNMOSFETQ5のドレイン端子とが同電圧となるように接続されている。
【0018】
また、反転部21のNMOSFETQ2およびNMOSFETQ3のゲート端子と、演算部22のNMOSFETQ5のゲート端子とが同電圧となるように接続されていて、さらに、NMOSFETQ4のゲート端子が出力部30のNMOSFETQ6のゲート端子に接続されている。
【0019】
次に動作を説明する。入力端子3a、3bに入力信号が与えられると差動増幅部10によって入力信号の差動増幅電圧が出力される。この出力電圧をV1とするとこの電圧V1は、PMOSFETQ1の動作によって電圧電流変換されて、さらに、NMOSFETQ2、Q3によって電流電圧変換された電圧がNMOSFETQ5のゲート端子に出力される。
【0020】
そして、NMOSFETQ5のゲート端子に印加される電圧が下降すると、NMOSFETQ5に流れる電流が小さくなり、電流源6からNMOSFETQ4に流れる電流が大きくなるので、演算部22の出力電圧は上昇する。このように、演算部22は、反転部21から出力される電圧値と反比例関係にある大きさの電圧を生成する。
【0021】
今、電圧V1が上昇すると、PMOSFETQ1を流れる電流は減少し、NMOSFETQ2、Q3のゲート端子電圧が下降する。この結果、演算部22の出力電圧が上昇し、PMOSFETQ7に流れる電流(出力端子4から流れだす電流2)が減少するものの、NMOSFETQ6に流れる電流(出力端子4に流れ込む電流3)が増加する。
【0022】
一方、電圧V1が下降すると、PMOSFETQ1を流れる電流は増加し、NMOSFETQ2、Q3のゲート端子電圧が上昇することになる。この結果、演算部22の出力電圧が下降し、NMOSFETQ6に流れる電流(出力端子4に流れ込む電流▲3▼)が減少するものの、PMOSFETQ7に流れる電流(出力端子4から流れだす電流▲2▼)が増加する。
【0023】
このように、駆動部20全体の動作は、入力電圧V1がある電圧値(Vth)になるまではゲインが略一定であると共に、入力電圧V1がある電圧値になるとゲインが大きくなるように動作する(図2)ので、出力部30には図中▲1▼で示すような貫通電流やバイアス電流が流れにくくなり、効率の良いプッシュプル動作が行われ、消費電流が大きくならず高いドライブ能力を有し高効率のプッシュプル増幅回路が実現できる。
【0024】
なお、この回路では、第1に、大きな出力電圧振幅を得られること、第2に、電源電圧変動が生じても出力電圧が変化しないこと、第3に、プロセス変動があっても出力部30のトランジスタの電流値が変化しないこと、等の利点を有するので、以下ではこれらのことについてさらに詳細な回路解析に基づいて説明を行う。
【0025】
図3は、図1に示す回路におけるQ1〜Q6、電流源6を特に示した回路図であって、図3に示す回路の小信号等価回路を図4に示す。この小信号等価回路においては、Q4の相互コンダクタンスをGm4、Q5の相互コンダクタンスをGm5、Q4、Q5、電流源6の抵抗分をR4、R5、R6としている。
【0026】
Q1は、差動増幅部10から出力される電圧によって、流れる電流量が制御される。また、電流源6の供給電流をI0 とし、信号無入力時にQ1に電流I0 が流れるように設定されているものとする。Q2、Q3、Q4、Q5のトランジスタサイズ(例えばゲート幅Wとゲート長Lの比)を等しくしておけば、Q1、Q6には同一電流値I0 の電流が流れているため電圧VCとVAは等しくなる。今、Q7に流れるドレイン電流はVCとVAが等しいため、「(Q7の寸法比/Q2(=Q3=Q4=Q5))の寸法比)・2・I0 」となる。このとき、Q2、Q5、Q7は飽和領域にあり、Q3、Q4は線形領域にある。
【0027】
さて、図4を参照してキルヒホッフの電流方程式をたてると以下の(式1)、(式2)のようになる。
Gm5・(VA−VB)+(VC−VB)/R5+VC/R6=0 (式1)
Gm4・VC+VB/R4=Gm5・(VA−VB)+(VC−VB)/R5(式2)
(式1)より(式3)が導かれる。
【0028】
VB・(Gm5+1/R5)=Gm5・VA+VC・(1/R5+1/R6)(式3)
一方、(式1)、(式2)より(式3)が導かれる。
【0029】
VB=−R4・(Gm4+1/R6)・VC (式4)
したがって、(式3)、(式4)より(式5)が導かれる。
VC/VA=−Gm5/(Gm5・Gm4・R4+Gm4・R4/R5+Gm5・R4/R6+R4/(R5・R6)+1/R5+1/R6) (式5)
Q5、Q4が飽和領域で動作する場合、Gm4≒10-4、Gm5≒10-4、R4≒107 、R5≒107 、R6≒107 程度と仮定できるので、「Gm5・Gm4・R4=10-1、Gm4・R4/R5=10-4、Gm5・R4/R6=10-4、R4/(R5・R6)+1/R5+1/R6=10-7」となり、(式5)は、「VC/VA≒1/(Gm4・R4)」となる。
【0030】
また、Q5が飽和領域、Q4が線形領域にある場合、Gm4≒0、Gm5≒10-4、R4≒103 〜104 、R5≒103 〜104 、R6≒103 〜104 程度と仮定できるので、「VC/VA=−Gm5/(Gm5・R4/R6+R4/(R5・R6)+1/R5+1/R6)≒1/(R4/R6+1/(Gm5・R5)+1/Gm5・R6))」となって、分母の3項の値は略等しいオーダーとなり、電流源6が理想的である(R6=∞)であるとすると、「VC/VA≒−Gm5・(R5//R6)」となる。
【0031】
今、Q1の電流値がI0 から増加すると、Q2、Q3で電流電圧変換が行われVAの電位が上昇する。これにより、VBの電位が上昇しQ4が線形領域から飽和領域に移行する。このとき、「VC/VA≒1/(Gm4・R4)≒0」となり、VAの変化はVCに伝達しないためQ6に流れるドレイン電流は変化しないことになる。
【0032】
一方、Q1の電流値がI0 から減少したとするとVAの電位は下降する。これにより、Q5の相互コンダクタンスGm5が減少してVCの電位が上昇する。このとき、「VC/VA≒−Gm5・(R5//R6)、|VC/VA|≫1」となり、VCの電位の上昇によりQ6に流れるドレイン電流は増加するので、VCの電位は電源電圧VDD近くまで上昇可能になるので、Q6によって大きな出力電圧振幅が得られることになる。
【0033】
このように、Q1の電流値が増加する場合(Q4が飽和領域)にはゲインが小さく、また、AB級動作を行う場合(Q4が線形領域)には、大きなゲインを有することが分かる。なお、PMOSFETQ7を接続した場合を想定しても同様の解析結果が得られる。
【0034】
また、電流源6とQ1には定電流I0 が流れているため、電源電圧VDDが変動してもQ2、Q3、Q4、Q5に流れる電流I0 は変化せず、VA、VCの電位変動も生じない。したがって、Q6に流れるドレイン電流も変化せず出力電圧は、電源電圧が変動しても、接地電圧VSSを基準として一定となる。
【0035】
さらに、Q2、Q3、Q4、およびQ5は同一トランジスタサイズのNMOSFETであるので、プロセス変動が生じても、Q1および電流源6に定電流I0 が流れていれば、VAとVCは同電位となりプロセス変動の影響を受けない。
【0036】
また、Q6のプロセス変動は、Q2、Q3、Q4、およびQ5と同様のプロセス変動を受けるため、プロセス変動の影響が相殺されて、Q6のドレイン電流は一定となる。信号無入力時の状態では、VA、VC間のゲインが小さいため、プロセス変動によるQ7のドレイン電流の変動は極めて小さくなる。
【0037】
以上説明してきたように、この実施の形態に係る回路は、低消費電力で高いドライブ能力を有し高い効率のAB級動作が可能なプッシュプル増幅回路を実現できる。さらに、この回路は、素子ミスマッチング等のプロセス変動に不感であるという利点を有する。
【0038】
以上説明してきたように、本発明によれば、消費電流が大きくならないようにして高効率でプッシュプル動作を行うことが可能なプッシュプル増幅回路を実現することが可能になる。
【0039】
特に、MOSトランジスタを用いることによって、演算回路を簡易に構成できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るプッシュプル増幅回路の回路図である。
【図2】回路動作の説明図である。
【図3】プッシュプル増幅回路の主要部の説明図である。
【図4】動作解析のための小信号等価回路図である。
【符号の説明】
1 電源ライン
2 接地ライン
3a、3b 入力端子
4 出力端子
5 電流源
6 電流源
10 差動増幅部
20 駆動部
21 反転部
22 演算部
30 出力部
Q1、Q7、Q8、Q9 PMOSFET
Q2、Q3、Q4、Q5、Q6、Q10、Q11 NMOSFET
Claims (1)
- 与えられる入力信号を相補的に増幅可能な回路であって、
前記入力信号を増幅する増幅回路と、
相補的動作を行うようにトランジスタ対を接続したプッシュプル回路と、
前記トランジスタ対のうちの一方のトランジスタを駆動制御する駆動回路と、を備え、
前記トランジスタ対のうちの他方のトランジスタが前記増幅回路の出力で駆動制御されるように構成され、
さらに、前記駆動回路は、前記増幅回路から出力される電圧を、電圧値として反対方向にシフト出力する反転回路と、この反転回路から出力される電圧値と反比例関係にある大きさの電圧を生成する演算回路とを含み、前記増幅回路の出力が所定電圧値以下の場合には略一定のゲインとなると共に、前記増幅回路の出力が前記所定電圧値以上の場合にはゲインが大となるように構成され、
前記演算回路は、
電流源と、
この電流源に自身のドレイン端子が接続される第1のMOSトランジスタと、
この第1のMOSトランジスタのソース端子に自身のドレインが接続される第2のMOSトランジスタと、を含み、
前記第1のMOSトランジスタのゲート端子が前記反転回路の出力信号を供給可能に接続されると共に、前記第2のMOSトランジスタのゲート端子が前記第1のMOSトランジスタのドレイン端子に接続され、
前記第2のMOSトランジスタのゲート端子の出力電圧が、前記トランジスタ対の一方のトランジスタの駆動電圧であることを特徴とするプッシュプル増幅回路。
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