しかし、テフロンフェルトは、太いテフロン繊維によって形成されているので、耐久時においては、回転トルクを低減する一方で摩耗により抜けやすく、また、トナーの侵入を許容して漏れを生じやすいという不具合を有する。また、テフロンであるため、脆く、ちぎれやすいという不具合をも有する。
とりわけ、このような不具合は、現像ローラを高速回転させた時に顕著となる。
本発明は、このような不具合に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、耐久時においても、毛抜けなどの損傷を生じにくく、かつ、現像剤の漏れを良好に防止することができ、さらには、現像剤担持体を高速動作させても、良好なシール性を確保することのできるシール部材を備える現像装置、および、そのような現像装置を備える画像形成装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、現像剤収容部と、現像剤を担持して移動する現像剤担持体と、前記現像剤担持体に摺擦して現像剤の漏れを防止するためのシール部材とを備える現像装置において、前記シール部材が、織物部材により構成され、前記現像剤担持体における前記現像剤担持体の移動方向と略直交する方向の両側に配置されており、前記織物部材における前記現像剤担持体側に突出する糸が、各前記シール部材に侵入した現像剤を現像剤収容部側に再び戻すことができるように、前記現像剤担持体の移動方向に対して所定の角度をなすように傾斜状に並ぶように織られており、前記シール部材のうちの一方側に配置されるシール部材と他方側に配置されるシール部材とで前記角度が異なることを特徴としている。
このような構成によると、シール部材が織物部材により構成されているので、耐久時においても、毛抜けなどの損傷を生じにくく、かつ、織り目の凹凸によって現像剤担持体との間の良好なシール性を確保することができるので、現像剤担持体を高速動作させても良好なシール性を確保することができる。
さらに、シール部材に侵入した現像剤は、織物部材における現像剤担持体側に突出する糸による傾斜状の織り目に沿って、現像剤担持体の移動とともに、現像剤収容部側に再び戻される。そのため、現像剤の漏れを確実に防止することができ、現像剤担持体を高速動作させても確実なシール性を確保することができる。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記突出する糸が、前記現像剤担持体の移動方向における上流側から下流側に沿って、現像剤収容部側に向くように傾斜状に並んでいることを特徴としている。
このような構成によると、シール部材に侵入した現像剤は、突出する糸による傾斜状の織り目に沿って、現像剤担持体の移動とともに、現像剤担持体の移動方向における上流側から下流側に沿って、現像剤収容部側に送られ、現像剤収容部に再び戻される。そのため、現像剤の漏れをより確実に防止することができ、現像剤担持体を高速動作させてもより確実なシール性を確保することができる。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、一方側又は他方側に配置される前記シール部材の前記突出する糸が、前記現像剤担持体の移動方向に対して45°以下の角度をなすように傾斜状に並んでいることを特徴としている。
たとえば、突出する糸が、現像剤担持体の移動方向に対して45°よりも大きい角度をなすように傾斜状に並んでいる場合には、現像剤担持体の移動によってシール部材に侵入した現像剤に働く力を、突出した糸で受けやすくなり、シール部材に侵入した現像剤が現像剤収容部側に戻りにくくなる。
一方、このような構成によると、突出する糸が、現像剤担持体の移動方向に対して45°以下の角度をなすように傾斜状に並んでいるので、現像剤担持体の移動によってシール部材に侵入した現像剤に働く力を、突出した糸で受けにくくなり、シール部材に侵入した現像剤が現像剤収容部側に戻りやすくなる。そのため、シール部材に侵入した現像剤をより確実かつ迅速に、現像剤収容部側に再び戻すことができる。その結果、現像剤の漏れをより一層確実に防止することができ、現像剤担持体を高速動作させてもより一層確実なシール性を確保することができる。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の発明において、前記織物部材が、縦糸と横糸とによって織られており、前記縦糸および前記横糸の太さは全て略等しく、前記突出する糸が、隣り合う2本以上の前記横糸を乗りこえる前記縦糸により構成されることを特徴としている。
このような構成によると、縦糸が隣り合う2本以上の横糸を乗りこえた後、その次の横糸の下をくぐるように織られているので、織物部材を、縦糸と横糸とによって織られる簡易な構成としながらも、突出する糸が確実に傾斜状に並ぶように織ることができる。そのため、簡易な構成により、突出する糸を確実に傾斜状に並べて、現像剤の漏れを確実に防止することができる。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の発明において、前記織物部材が、縦糸と横糸とによって織られており、前記縦糸および前記横糸の太さは全て略等しく、隣り合う前記縦糸は、それぞれが、少なくとも1本の共通する前記横糸を乗りこえるとともに、それそれが、少なくとも1本の異なる前記横糸を乗りこえるように織られていることを特徴としている。
このような構成によると、隣り合う縦糸が、それぞれ少なくとも1本の共通する横糸を乗りこえるとともに、それぞれ少なくとも1本の異なる横糸を乗りこえるように織られているので、織物部材を、縦糸と横糸とによって織られる簡易な構成としながらも、突出する糸が確実に傾斜状に並ぶように織ることができる。そのため、簡易な構成により、突出する糸を確実に傾斜状に並べて、隣り合う各縦糸の横方向の重なりによって、現像剤の漏れを確実に防止することができる。
また、請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載の発明において、前記縦糸が、前記現像剤担持体の移動方向と同方向で織られていることを特徴としている。
たとえば、突出する糸である縦糸が、現像剤担持体の移動方向に対して異なる方向で織られていると、耐久時における現像剤担持体との摺擦によってほつれを生じ、早い時期からシール性が低下するという不具合を生じる。
しかし、このような構成によると、縦糸が現像剤担持体の移動方向と同方向で織られているので、耐久時における現像剤担持体との摺擦によってもほつれが生じにくく、長期にわたって、良好なシール性を確保することができる。
また、請求項7に記載の発明は、請求項4ないし6のいずれかに記載の発明において、隣り合う各前記縦糸が、共通する1つの前記横糸に対して、その横糸の延びる方向において互いに重なりを有するように織られていることを特徴としている。
このような構成によると、隣り合う各縦糸が、共通する1つの横糸に対して、その横糸の延びる方向において互いに重なっているので、横糸の延びる方向を現像剤担持体の移動方向と略直交する方向、すなわち、現像剤が漏れる方向と一致させれば、そのような隣り合う各縦糸の横方向の重なりによって、現像剤の漏れを確実に阻止することができる。そのため、より確実なシール性を実現することができる。
また、請求項8に記載の発明は、請求項4ないし7のいずれかに記載の発明において、前記縦糸が織られている方向が、このシール部材における前記現像剤担持体の移動方向に沿う端縁と同方向であることを特徴としている。
たとえば、縦糸が、シール部材における現像剤担持体の移動方向に沿う端縁と異なる方向で織られていると、耐久時における現像剤担持体との摺擦によって、その端縁からほつれを生じ、早い時期からシール性が低下するという不具合を生じる。
しかし、このような構成によると、縦糸がシール部材の端縁と同方向で織られているので、耐久時における現像剤担持体との摺擦によっても、その端縁からほつれが生じにくく、長期にわたって、良好なシール性を確保することができる。
また、請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれかに記載の発明において、前記シール部材の摺擦面には、潤滑剤が塗布されていることを特徴としている。
このような構成によると、現像剤担持体の移動時には、現像剤担持体とシール部材との間において、潤滑剤が潤滑し、摺動抵抗を低減することができる。そのため、シール部材の耐摩耗性および耐久性を、より一層向上させることができるとともに、これらの摺動に起因する異音の発生を確実に防止することができる。
また、織物部材においては、不織布に比べると規則的に糸が配置されているので、現像剤を絡め取る性能が若干劣るが、潤滑剤の塗布により、そのような性能の低下を防止することができる。さらに、潤滑剤は、織り目の間に含浸されるので、現像剤担持体との間のシール性をさらに向上させることもできる。
また、請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の発明において、前記潤滑剤がフッ素系潤滑剤であることを特徴としている。
潤滑剤がフッ素系潤滑剤であると、現像剤担持体とシール部材との間の摺動抵抗をより一層低減させることができる。そのため、耐摩耗性および耐久性を、より一層向上させることができるとともに、とりわけ、これらの摺動に起因する異音の発生をより一層確実に防止することができる。
また、請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の発明において、前記フッ素系潤滑剤が、フッ素油およびフッ素系樹脂を含有していることを特徴としている。
フッ素系潤滑剤が、フッ素油およびフッ素系樹脂を含有していると、フッ素油およびフッ素系樹脂が摩擦を低減し、現像剤担持体とシール部材との間の摺動抵抗を、より一層低減させることができる。そのため、耐摩耗性および耐久性を、さらに向上させることができるとともに、とりわけ、これらの摺動に起因する異音の発生をより一層確実に防止することができる。
また、請求項12に記載の発明は、請求項1ないし11のいずれかに記載の発明において、現像剤が、重合法により得られる重合トナーであることを特徴としている。
重合トナーは流動性が良いため良好な現像を達成することができる。一方、重合トナーは、その良好な流動性ゆえに、現像剤担持体の移動によって、現像剤担持体とシール部材との間の侵入して漏れやすくなるが、このような本発明のシール部材によって、そのような重合トナーの漏れを確実に防止することができる。
また、請求項13に記載の発明は、請求項1ないし12のいずれかに記載の発明において、各前記シール部材は、前記一方側に配置されるシール部材と前記他方側に配置されるシール部材とを識別するための識別部分が形成されていることを特徴としている。
たとえば、一方側に配置されるシール部材と、他方側に配置されるシール部材とを、それぞれ逆に配置してしまうと、それらのシール部材に侵入した現像剤は漏れる方向に送られるので、却って漏れが多くなるという不具合を生じる。
しかし、このような構成によると、各シール部材には、それぞれ、一方側に配置されるシール部材と他方側に配置されるシール部材とを識別するための識別部分が形成されているので、それらを逆に配置してしまうことを有効に防止することができる。そのため、シール部材の確実な配置によって、現像剤の漏れを確実に防止することができる。
また、請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の発明において、前記識別部分が、切り欠きによって形成されていることを特徴としている。
このような構成によると、十分に識別できる識別部分を、簡易な構成によって、確実に形成することができる。
また、請求項15に記載の発明は、請求項1ないし14のいずれかに記載の発明において、前記現像剤担持体が、弾性体のローラからなり、前記現像装置の筐体に支持されるとともに、前記ローラの軸方向両端部において、前記ローラと前記筐体との間に、前記シール部材が配置されていることを特徴としている。
現像ローラのローラは、感光体や現像剤へのダメージを低減するために、弾性体によって形成されていることが好ましいが、ローラを弾性体によって形成すると、たとえば、発泡体で形成した場合に比べて、現像剤の漏れを生じやすく、また、金属で形成した場合とに比べて、ローラの削れを防止することができず、現像時の現像剤の漏れが生じやすくなる。
しかし、このような構成によると、現像ローラの軸方向両端部に配置されたシール部材によって、耐久時における現像剤の軸方向両端部からの漏れを確実に防止することができる。そのため、現像ローラのローラを弾性体によって形成して、良好な現像を達成しつつ、現像剤の漏れを有効に防止することができる。
また、請求項16に記載の発明は、画像形成装置であって、請求項1ないし15のいずれかに記載の現像装置を備えていることを特徴としている。
このような現像装置を備えることで、耐久時において、シール部材は、毛抜けなどの損傷を生じにくく、かつ、現像剤の漏れを良好に防止するので、装置内に現像剤が飛散することを有効に防止することができる。さらには、現像剤担持体を高速動作させても良好なシール性を確保することができるので、画像形成速度の向上を図ることができる。そのため、装置の確実な作動を確保して、迅速な画像形成を達成することができる。
以上述べたように、請求項1に記載の発明によれば、耐久時においても、毛抜けなどの損傷を生じにくく、かつ、現像剤担持体との間の良好なシール性を確保することができ、現像剤担持体を高速動作させても良好なシール性を確保することができる。
さらに、織物部材における現像剤担持体側に突出する糸による傾斜状の織り目により、現像剤の漏れを確実に防止することができ、現像剤担持体を高速動作させても確実なシール性を確保することができる。
請求項2に記載の発明によれば、現像剤の漏れをより確実に防止することができ、現像剤担持体を高速動作させてもより確実なシール性を確保することができる。
請求項3に記載の発明によれば、現像剤の漏れをより一層確実に防止することができ、現像剤担持体を高速動作させてもより一層確実なシール性を確保することができる。
請求項4に記載の発明によれば、簡易な構成により、突出する糸を確実に傾斜状に並べて、隣り合う各縦糸の横方向の重なりによって、現像剤の漏れを確実に防止することができる。
請求項5に記載の発明によれば、簡易な構成により、突出する糸を確実に傾斜状に並べて、隣り合う各縦糸の横方向の重なりによって、現像剤の漏れを確実に防止することができる。
請求項6に記載の発明によれば、縦糸が現像剤担持体の移動方向と同方向で織られているので、現像剤担持体との摺擦によっても縦糸のほつれが生じにくく、長期にわたって、良好なシール性を確保することができる。
請求項7に記載の発明によれば、隣り合う各縦糸の横方向の重なりによって、現像剤の漏れを確実に阻止することができ、より確実なシール性を実現することができる。
請求項8に記載の発明によれば、縦糸が現像剤担持体の移動方向と同方向で織られているので、現像剤担持体との摺擦によっても、その端縁から縦糸のほつれが生じにくく、長期にわたって、良好なシール性を確保することができる。
請求項9に記載の発明によれば、シール部材の耐摩耗性および耐久性を、より一層向上させることができるとともに、これらの摺動に起因する異音の発生を確実に防止することができる。また、織物部材においては、現像剤を絡め取る性能の低下を防止することができ、さらには、潤滑剤が、織り目の間に含浸されるので、現像剤担持体との間のシール性をさらに向上させることができる。
請求項10に記載の発明によれば、耐摩耗性および耐久性を、より一層向上させることができるとともに、とりわけ、これらの摺動に起因する異音の発生をより一層確実に防止することができる。
請求項11に記載の発明によれば、耐摩耗性および耐久性を、さらに向上させることができるとともに、とりわけ、これらの摺動に起因する異音の発生をより一層確実に防止することができる。
請求項12に記載の発明によれば、重合トナーによる良好な現像を達成しつつ、そのような重合トナーの漏れを確実に防止することができる。
請求項13に記載の発明によれば、シール部材の確実な配置によって、現像剤の漏れを確実に防止することができる。
請求項14に記載の発明によれば、十分に識別できる識別部分を、簡易な構成によって、確実に形成することができる。
請求項15に記載の発明によれば、現像ローラのローラを弾性体によって形成して、良好な現像を達成しつつ、現像剤の漏れを有効に防止することができる。
請求項16に記載の発明によれば、装置の確実な作動を確保して、迅速な画像形成を達成することができる。
図1は、本発明の画像形成装置としてのレーザプリンタの一実施形態を示す要部側断面図である。図1において、レーザプリンタ1は、本体ケーシング2内に、用紙3を給紙するためのフィーダ部4や、給紙された用紙3に所定の画像を形成するための画像形成部5などを備えている。
フィーダ部4は、本体ケーシング2内の底部に、着脱可能に装着される給紙トレイ6と、給紙トレイ6内に設けられた用紙押圧板7と、給紙トレイ6の一端側端部の上方に設けられる給紙ローラ8および給紙パット9と、給紙ローラ8に対し用紙3の搬送方向の下流側に設けられる紙粉取りローラ10および11と、紙粉取りローラ10および11に対し用紙3の搬送方向の下流側に設けられるレジストローラ12とを備えている。
用紙押圧板7は、用紙3を積層状にスタック可能とされ、給紙ローラ8に対して遠い方の端部において揺動可能に支持されることによって、近い方の端部が上下方向に移動可能とされており、また、その裏側から図示しないばねによって上方向に付勢されている。そのため、用紙押圧板7は、用紙3の積層量が増えるに従って、給紙ローラ8に対して遠い方の端部を支点として、ばねの付勢力に抗して下向きに揺動される。給紙ローラ8および給紙パット9は、互いに対向状に配設され、給紙パット9の裏側に配設されるばね13によって、給紙パット9が給紙ローラ8に向かって押圧されている。用紙押圧板7上の最上位にある用紙3は、用紙押圧板7の裏側から図示しないばねによって給紙ローラ8に向かって押圧され、その給紙ローラ8の回転によって給紙ローラ8と給紙パット9とで挟まれた後、1枚毎に給紙される。給紙された用紙3は、紙粉取りローラ10および11によって、紙粉が取り除かれた後、レジストローラ12に送られる。レジストローラ12は、1対のローラから構成されており、用紙3を所定のレジスト後に、画像形成部5に送るようにしている。
なお、このフィーダ部4は、さらに、マルチパーパストレイ14と、マルチパーパストレイ14上に積層される用紙3を給紙するためのマルチパーパス側給紙ローラ15およびマルチパーパス側給紙パット25とを備えており、マルチパーパス側給紙ローラ15およびマルチパーパス側給紙パット25は、互いに対向状に配設され、マルチパーパス側給紙パット25の裏側に配設されるばね25aによって、マルチパーパス側給紙パット25がマルチパーパス側給紙ローラ15に向かって押圧されている。マルチパーパストレイ14上に積層される用紙3は、マルチパーパス側給紙ローラ15の回転によってマルチパーパス側給紙ローラ15とマルチパーパス側給紙パット25とで挟まれた後、1枚毎に給紙される。
画像形成部5は、スキャナユニット16、プロセスユニット17、定着部18などを備えている。
スキャナユニット16は、本体ケーシング2内の上部に設けられ、レーザ発光部(図示せず。)、回転駆動されるポリゴンミラー19、レンズ20および21、反射鏡22、23および24などを備えており、レーザ発光部からの発光される所定の画像データに基づくレーザビームを、鎖線で示すように、ポリゴンミラー19、レンズ20、反射鏡22および23、レンズ21、反射鏡24の順に通過あるいは反射させて、後述するプロセスユニット17の感光ドラム27の表面上に高速走査にて照射させている。
プロセスユニット17は、スキャナユニット16の下方に配設され、図2に示すように、本体ケーシング2に対して着脱自在に装着されるドラムカートリッジ26内に、感光ドラム27(静電潜像担持体)、現像装置としての現像カートリッジ28、スコロトロン型帯電器29、転写ローラ30を備えている。
現像カートリッジ28は、図3にも示すように、ドラムカートリッジ26に対して着脱自在に装着されており、現像剤担持体としての現像ローラ31、層厚規制ブレード32、供給ローラ33、現像剤収容部としての現像室34aおよびトナー収容室34bなどを備えている。
トナー収容室34b内には、現像剤として、正帯電性の非磁性1成分のトナーが充填されている。このトナーとしては、重合性単量体、たとえば、スチレンなどのスチレン系単量体や、アクリル酸、アルキル(C1〜C4)アクリレート、アルキル(C1〜C4)メタアクリレートなどのアクリル系単量体を、懸濁重合などの公知の重合方法によって共重合させることにより得られる重合トナーが使用されている。このような重合トナーは、球状をなし、流動性が極めて良好であるため、良好な現像を達成することができ、その結果、高画質の画像を形成することができる。なお、このようなトナーには、カーボンブラックなどの着色剤やワックスなどが配合されるとともに、流動性を向上させるために、シリカなどの外添剤が添加されている。その平均粒径は、約6〜10μm程度である。
そして、トナー収容室34b内のトナーは、トナー収容室34bの中心に設けられる回転軸35に支持されるアジテータ36の矢印方向(時計方向)への回転により、攪拌されて、トナー収容室34bの側部に開口されたトナー供給口37から現像室34aに放出される。なお、トナー収容室34bの側壁には、トナーの残量検知用の窓38が設けられており、回転軸35に支持されたクリーナ39によって清掃される。
現像室34a内には、現像ローラ31、層厚規制ブレード32および供給ローラ33が設けられている。
トナー供給口37の側方位置には、供給ローラ33が矢印方向(反時計方向)に回転可能に配設されており、また、この供給ローラ33に対向して、現像ローラ31が矢印方向(反時計方向)に回転可能に配設されている。そして、これら供給ローラ33と現像ローラ31とは、そのそれぞれがある程度圧縮するような状態で互いに当接されている。
供給ローラ33は、金属製のローラ軸に、導電性のスポンジ体からなるローラが被覆されている。
現像ローラ31は、金属製のローラ軸76に、導電性のゴム材料である弾性体からなるローラが被覆されている。より具体的には、現像ローラ31のローラは、カーボン微粒子などを含む導電性のウレタンゴムまたはシリコーンゴムからなるローラ本体の表面に、フッ素が含有されているウレタンゴムまたはシリコーンゴムのコート層が被覆されている。なお、現像ローラ31には、感光ドラム27に対して、所定の現像バイアスが印加されている。
また、現像ローラ31の近傍には、層厚規制ブレード32が配設されている。この層厚規制ブレード32は、後で詳述するが、現像ローラ31の上方において、その現像ローラ31の軸方向に沿って対向状に配置され、現像カートリッジ28の筐体52に取り付けられる支持部材58と、その支持部材58から現像ローラ31に向かって延びる金属の板ばね材からなる板ばね部材59と、その板ばね部材59の先端部に設けられる絶縁性のシリコーンゴムからなる断面半円形状の押圧部40とを備えており、押圧部40が板ばね部材59の弾性力によって現像ローラ31上に圧接されるように構成されている。
そして、トナー供給口37から現像室34aに放出されるトナーは、供給ローラ33の回転により、現像ローラ31に供給され、この時、供給ローラ33と現像ローラ31との間で正に摩擦帯電され、さらに、現像ローラ31上に供給されたトナーは、現像ローラ31の回転に伴って、層厚規制ブレード32の押圧部40と現像ローラ31との間に進入し、ここでさらに十分に摩擦帯電されて、一定厚さの薄層として現像ローラ31上に担持される。
感光ドラム27は、図2に示すように、現像ローラ31の側方位置において、その現像ローラ31と対向するような状態で矢印方向(時計方向)に回転可能に配設されている。この感光ドラム27は、ドラム本体が接地されるとともに、その表面部分がポリカーボネートなどから構成される正帯電性の感光層により形成されている。
スコロトロン型帯電器29は、感光ドラム27の上方に、感光ドラム27に接触しないように、所定の間隔を隔てて配設されている。このスコロトロン型帯電器29は、タングステンなどの帯電用ワイヤからコロナ放電を発生させる正帯電用のスコロトロン型の帯電器であり、感光ドラム27の表面を一様に正極性に帯電させるように構成されている。
そして、感光ドラム27の表面は、その感光ドラム27の回転に伴なって、まず、スコロトロン型帯電器29により一様に正帯電された後、スキャナユニット16からのレーザービームの高速走査により露光され、所定の画像データに基づく静電潜像が形成される。
次いで、現像ローラ31の回転により、現像ローラ31上に担持されかつ正帯電されているトナーが、感光ドラム27に対向して接触する時に、感光ドラム27の表面上に形成される静電潜像、すなわち、一様に正帯電されている感光ドラム27の表面のうち、レーザービームによって露光され電位が下がっている露光部分に供給され、選択的に担持されることによって可視像化され、これによって反転現像が達成される。
転写ローラ30は、感光ドラム27の下方において、この感光ドラム27に対向するように配置され、ドラムカートリッジ26に矢印方向(反時計方向)に回転可能に支持されている。この転写ローラ30は、金属製のローラ軸に、導電性のゴム材料からなるローラが被覆されており、転写時には、感光ドラム27に対して所定の転写バイアスが印加されるように構成されている。そのため、感光ドラム27の表面上に担持された可視像は、用紙3が感光ドラム27と転写ローラ30との間を通る間に用紙3に転写される。
定着部18は、図1に示すように、プロセスユニット17の側方下流側に配設され、加熱ローラ41、加熱ローラ41を押圧する押圧ローラ42、および、これら加熱ローラ41および押圧ローラ42の下流側に設けられる1対の搬送ローラ43を備えている。加熱ローラ41は、金属製で加熱のためのハロゲンランプを備えており、プロセスユニット17において用紙3上に転写されたトナーを、用紙3が加熱ローラ41と押圧ローラ42との間を通過する間に熱定着させ、その後、その用紙3を搬送ローラ43によって、排紙パス44に搬送するようにしている。排紙パス44に送られた用紙3は、排紙ローラ45に送られて、その排紙ローラ45によって排紙トレイ46上に排紙される。
また、このレーザプリンタ1には、用紙3の両面に画像を形成するために、反転搬送部47が設けられている。この反転搬送部47は、排紙ローラ45と、反転搬送パス48と、フラッパ49と、複数の反転搬送ローラ50とを備えている。
排紙ローラ45は、1対のローラからなり、正回転および逆回転の切り換えができるように構成されている。この排紙ローラ45は、上記したように、排紙トレイ46上に用紙3を排紙する場合には、正方向に回転するが、用紙3を反転させる場合には、逆方向に回転する。
反転搬送パス48は、排紙ローラ45から画像形成部5の下方に配設される複数の反転搬送ローラ50まで用紙3を搬送することができるように、上下方向に沿って設けられており、その上流側端部が、排紙ローラ45の近くに配置されるとともに、その下流側端部が、反転搬送ローラ50の近くに配置されている。
フラッパ49は、排紙パス44と反転搬送パス48との分岐部分に臨むように、揺動可能に設けられており、図示しないソレノイドの励磁または非励磁により、排紙ローラ45によって反転された用紙3の搬送方向を、排紙パス44に向かう方向から、反転搬送パス48に向かう方向に切り換えることができるように構成されている。
反転搬送ローラ50は、給紙トレイ6の上方において、略水平方向に複数設けられており、最も上流側の反転搬送ローラ50が、反転搬送パス48の後端部の近くに配置されるとともに、最も下流側の反転搬送ローラ50が、レジストローラ12の下方に配置されるように設けられている。
そして、用紙3の両面に画像を形成する場合には、この反転搬送部47が、次のように動作される。すなわち、一方の面に画像が形成された用紙3が搬送ローラ43によって排紙パス44から排紙ローラ45に送られてくると、排紙ローラ45は、用紙3を挟んだ状態で正回転して、この用紙3を一旦外側(排紙トレイ46側)に向けて搬送し、用紙3の大部分が外側に送られ、用紙3の後端が排紙ローラ45に挟まれた時に、正回転を停止する。次いで、排紙ローラ45は、逆回転するとともに、フラッパ49が、用紙3が反転搬送パス48に搬送されるように、搬送方向を切り換えて、用紙3を前後逆向きの状態で反転搬送パス48に搬送するようにする。なお、フラッパ49は、用紙3の搬送が終了すると、元の状態、すなわち、搬送ローラ43から送られる用紙3を排紙ローラ45に送る状態に切り換えられる。次いで、反転搬送パス48に逆向きに搬送された用紙3は、反転搬送ローラ50に搬送され、この反転搬送ローラ50から、上方向に反転されて、レジストローラ12に送られる。レジストローラ12に搬送された用紙3は、裏返しの状態で、再び、所定のレジスト後に、画像形成部5に向けて送られ、これによって、用紙3の両面に所定の画像が形成される。
また、このレーザプリンタ1では、転写ローラ30によって用紙3に転写された後に感光ドラム27の表面上に残存する残存トナーを、現像ローラ31によって回収する、いわゆるクリーナレス方式によって残存トナーを回収するようにしている。このようなクリーナレス方式によって感光ドラム27の表面上の残存トナーを回収すれば、ブレードなどのクリーナ装置や廃トナーの貯留手段を設ける必要がないため、装置構成の簡略化、小型化およびコストの低減化を図ることができる。
そして、このレーザプリンタ1の現像カートリッジ28では、現像ローラ31に担持されるトナーが、現像時において回転される現像ローラ31の軸方向両端部から漏れることを防止するためのサイドシール51が、現像ローラ31の軸方向両端部にそれぞれ設けられている。以下、図4ないし図6を参照して、サイドシール51を、現像ローラ31の軸方向端部のシール構造とともに詳述する。なお、図4ないし図6では、現像ローラ31の軸方向一端部側のみを示し、以下、その軸方向一端部側のみを説明するが、現像ローラ31の軸方向他端部側も、同様の構成とされている。
図4に示すように、現像カートリッジ28における現像ローラ31の軸方向端部は、筐体52の前面が開放されるとともに、その側壁53には、現像ローラ31を装着させるための支持孔54が形成されており、その側壁53に隣接して、サイドシール51とともに、図5および図6に示すように、アッパサイドシール55、ブレードサイドシール56、および、図4に示すように、ロアサイドシール57が設けられている。そして、これらサイドシール51、アッパサイドシール55、ブレードサイドシール56およびロアサイドシール57によって、現像ローラ31の軸方向端部におけるトナーの漏れを確実に防止するようにしている。なお、支持孔54は、その前方側端部が開口されており、その開口部75に沿って現像ローラ31のローラ軸76を受け入れることができるように形成されている。
アッパサイドシール55は、所定の厚みを有する略矩形板状をなし、ウレタンなどのスポンジ部材からなり、側壁53に隣接する筐体52の幅方向側端部上方において、層厚規制ブレード32の板ばね部材59に対向配置され、両面テープなどによって貼着されている。このアッパサイドシール55を設けることにより、次に述べるブレードサイドシール56の密着性を向上させることができる。
ブレードサイドシール56は、層厚規制ブレード32の板ばね部材59の幅方向側端部において、アッパサイドシール55と対向する部分に設けられており、板ばね部材59の裏面(後面)に設けられるバックブレードシール63と、板ばね部材59の表面(前面)に設けられるフロントブレードシール64とを備えている。なお、層厚規制ブレード32の支持部材58は、現像ローラ31の軸方向に沿って延びる板状のバックサポート部材60と、そのバックサポート部材60に対向配置される断面略L字状のフロントサポート部材61とを備えており、バックサポート部材60とフロントサポート部材61との間において、板ばね部材59を挟んだ状態で、ねじ62によって筐体52の上部に固定されている。
バックブレードシール63は、所定の厚みを有する略矩形板状をなし、ウレタンなどのスポンジ部材からなり、アッパサイドシール55と対向する板ばね部材59の裏面に、両面テープなどによって貼着されている。これによって、バックブレードシール63とアッパサイドシール55とは、スポンジ部材同士の接触となるので、現像ローラ31の軸方向端部上方におけるトナーの漏れを確実に防止することができる。
また、フロントブレードシール64は、所定の厚みを有する略矩形板状をなし、ウレタンなどのスポンジ部材からなり、バックブレードシール63と対向する板ばね部材59の表面に、両面テープなどによって貼着されている。このフロントブレードシール64は、その上に、次に述べるシール部材66が積層されるが、その厚さ(フロントブレードシール64とシール部材66との積層状態での厚さ)が、ある程度のつぶし量を見込んで、層厚規制ブレード32の押圧部40よりも厚くなるように形成されている。このように形成することにより、押圧部40が摩耗しても、押圧部40と現像ローラ31との圧接部分側方からのトナー洩れを確実に防止することができる。
また、図4に示すように、ロアサイドシール57は、所定の厚みを有する略矩形板状をなし、ウレタンなどのスポンジ部材からなり、筐体52の幅方向端部であって、次に述べるサイドシール51の内側に隣接配置され、筐体52の下部表面に両面テープなどによって貼着されている。このロアサイドシール57を設けることにより、次に述べるサイドシール51とロアフィルム78(図2参照)とが取り付けられる境界部分におけるトナーの漏れを防止することができる。
そして、サイドシール51は、側壁53に隣接する筐体52の幅方向側端部において、現像ローラ31の外周面と摺接するように設けられている。このサイドシール51は、スポンジシール部材65と、そのスポンジシール部材65上に積層されるシール部材66とを備えている。
スポンジシール部材65は、ウレタンなどのスポンジ部材からなり、より具体的には、スポンジの中でも比較的剛性の高いウレタンのスポンジ部材(商品名:ポロン、ロジャースイノアック社製)からなり、現像ローラ31を装着した時に圧縮されて所定の押圧力を発現するような、ある程度の厚みを有する略矩形状に形成されている。このスポンジシール部材65は、図4(a)に示すように、側壁53に隣接する筐体52の幅方向側端部において、図6に示すように、その上端部が、ブレードサイドシール56のバックブレードシール63およびフロントブレードシール64に圧接し、図4(a)に示すように、その下端部が、ロアサイドシール57と筐体52の幅方向においてオーバーラップする状態で、両面テープなどによって貼着されている。スポンジシール部材65の上端部を、ブレードサイドシール56のバックブレードシール63およびフロントブレードシール64に圧接させれば、これらのスポンジ部材同士の接触により、スポンジシール部材65とブレードサイドシール56との境界部分におけるトナーの漏れを防止することができる。また、スポンジシール部材65の下端部を、ロアサイドシール57と筐体52の幅方向においてオーバーラップさせれば、これらのスポンジ部材同士の接触により、スポンジシール部材65とロアサイドシール57との境界部分におけるトナーの漏れを防止することができる。
シール部材66は、カシミヤ系の繊維からなる織物部材67から構成されており、その織物部材67が略矩形シート状に形成されたものが用いられている。このシール部材66は、図4(b)に示すように、側壁53に隣接する筐体52の幅方向側端部において、スポンジシール部材65上に積層され、図5および図6に示すように、その上端部が、フロントブレードシール64を覆い、かつ、その下端部が、スポンジシール部材65の下端部から、さらに下方に延び、筐体52の下端部を巻回状に被覆するような状態で、両面テープなどによって貼着されている。シール部材66の上端部で、フロントブレードシール64を覆うようにすれば、層厚規制ブレード32の押圧部40の側方からのトナーの漏れを確実に防止することができる。また、シール部材66は、層厚規制ブレード32の板ばね部材59の動きに従って一緒に動くので、板ばね部材59の動きが規制されることなく、押圧部40による現像ローラ31の良好な圧接を確保することができる。さらに、シール部材66と板ばね部材59との間に介在されるフロントブレードシール64が、スポンジ部材によって形成されており、適度なつぶれ量を有しているので、シール部材66と現像ローラ31との間の押圧力の反力を良好に吸収して、これらシール部材66と現像ローラ31との間のシールを確実に確保することができる。
なお、このサイドシール51が設けられる筐体52の端部は、サイドシール51と現像ローラ31とを密着状に接触させるために、現像ローラ31の外周面に沿った湾曲形状をなし、スポンジシール部材65およびシール部材66は、この湾曲形状に沿って積層されているため、シール部材66の表面が、現像ローラ31の外周面に沿う湾曲形状として形成されている。
そして、図4(b)に示すように、筐体52が開放される前面側から、現像ローラ31のローラ軸76を支持孔54に沿って挿入させることにより、現像ローラ31が筐体52に回転可能に装着支持されており、これによって、図6に示すように、現像ローラ31の軸方向端部の外周面が、シール部材66の表面と密着状に摺動可能に接触される。
したがって、この現像ローラ31の軸方向端部の外周面とシール部材66の表面との間において、現像時における現像ローラ31の回転駆動による軸方向端部からのトナーの漏れを、確実にシールすることができる。
また、筐体52の下端部の上面には、その幅方向全体にわたって、PET(ポリエチレンテレフタレート)シートやウレタンゴムフィルムなどからなるロアフィルム78(図2および図3参照)が両面テープによって貼着されており、これによって、筐体52の下側からの漏れが防止されている。
そして、このレーザプリンタ1では、サイドシール51のシール部材66が、上記したように、カシミヤ系の繊維からなる織物部材67によって形成されており、その繊維太さが、現像時に使用されるトナーの平均粒径の2.1倍以下であり、より具体的には15±5μmとされている。また、繊維の断面形状は、円形状または扁平状とされている。この繊維を複数本よることによって、後述する1本の縦糸68および1本の横糸69を形成している。
たとえば、シール部材66に、テフロン系の繊維部材を用いると、太いテフロン繊維のみによって形成されるので、耐久時においては、回転トルクを低減する一方で摩耗により抜けやすく、また、トナーの侵入を許容して漏れを生じやすく、しかも、テフロンであるため、脆く、ちぎれやすいという不具合を生じ、とりわけ、現像ローラ31を高速回転させるとそのような不具合が顕著となるが、このように、織物部材67を用いれば、毛抜けなどの損傷が生じにくく、かつ、織り目の凹凸によって現像ローラ31との間の良好なシール性を確保することができ、テフロン系の繊維部材を用いる場合に比べて、耐摩耗性および耐久性の向上を図ることができる。さらに、耐久時において現像ローラ31を高速回転させても、良好なシール性を確保することができる。
そして、この現像カートリッジ28においては、シール部材66を構成する織物部材67は、シール部材66に侵入するトナーを現像室34a側に再び戻すことができるように、現像ローラ31の回転方向に対して傾斜状の織り目が形成されるような織方によって形成されている。
より具体的には、織物部材67の現像ローラ31との摺擦面の光学顕微鏡写真である図7および図8、および、織物部材67の織り目の模式図である図9に示すように、この織物部材67は、綾織または斜文織と呼ばれる、縦糸と横糸とが交差する織り目が斜めに形成されるような織方で織られており、現像ローラ31との摺擦面側において、1本の縦糸68は、2本の横糸69の上を乗りこえた後に、1本の横糸69の下をくぐるように織られており、一方、1本の横糸69は、1本の縦糸68の上を乗りこえた後に、2本の縦糸68の下をくぐるように織られている。また、隣り合う縦糸68が1本の共通の横糸69の上をともに乗りこえた後、その次の横糸69においては、一方の縦糸68がそのまま上を乗りこえる一方で、他方の縦糸68が下をくぐるように織られている。そして、現像ローラ31との摺擦面側において2本の横糸69の上を乗りこえた部分の縦糸68、すなわち、図9に示す表面側縦糸70は、現像ローラ31との摺擦面側に突出しており、これら表面側縦糸70は、互いに傾斜状(図7ないし図9においては右斜め上方に傾斜)に並ぶように形成されており、この表面側縦糸70の連続した並びによって、織物部材67の摺擦面に傾斜状の凸状織り目77(図4(b)参照)が形成されている。
そして、この現像カートリッジ28のシール部材66では、これらの織物部材67の表面側縦糸70による傾斜状の凸状織り目77が、現像ローラ31の回転方向Xにおける上流側から下流側に沿って現像室34a側(すなわち、現像ローラ31の軸方向中心側)に向くように傾斜状に織られている。より具体的には、これら凸状織り目77の現像ローラ31の回転方向に対する傾斜角度が45°以下となるように、傾斜状に織られている。
このように、このシール部材66では、織物部材67の表面側縦糸70の連続した並びによって形成された凸状織り目77が、現像ローラ31の回転方向における上流側から下流側に沿って現像室34a側に傾斜状に向くように織られているため、シール部材66に侵入したトナーには、織物部材67における現像ローラ31側に突出する表面側縦糸70によって、現像室34a側に戻す方向に力が働くので、現像ローラ31の軸方向外側へ移動することが妨げられ、凸状織り目77に沿って現像ローラ31の回転とともに、現像ローラ31の回転方向Xにおける上流側から下流側に沿って現像室34a側に送られ、現像室34aに再び戻される。そのため、トナーの漏れを確実に防止することができ、現像ローラ31を高速動作させても確実なシール性を確保することができる。
また、このシール部材66では、織物部材67の凸状織り目77の傾斜角度が45°以下となるように織られているので、シール部材66に侵入したトナーを、その凸状織り目77によって、より確実かつ迅速に、現像室34a側に再び戻すことができる。
すなわち、図13(a)に示すように、たとえば、凸状織り目77の傾斜角度が現像ローラ31の回転方向Xに対して90°である場合には、現像ローラ31の回転によってシール部材66に侵入したトナーに働く力Fを、すべて凸状織り目77によって受けることとなり、シール部材66に侵入したトナーが現像室34aに良好に戻らず、また、図13(b)に示すように、凸状織り目77の傾斜角度が現像ローラ31の回転方向Xに対して90°より小さいが、45°よりも大きい場合でも、現像ローラ31の回転によってシール部材66に侵入したトナーに働く力F(図13(b)においては、力Fを、凸状織り目77に沿う分力Fbと、凸状織り目77に直交する分力Faとに分けて示している。)を、凸状織り目77で受けやすく、そのため、シール部材66に侵入したトナーが現像室34aに戻りにくくなる。
一方、図13(c)に示すように、このシール部材66では、凸状織り目77の傾斜角度が現像ローラ31の回転方向Xに対して45°以下であるので、現像ローラ31の回転によってシール部材66に侵入したトナーに働く力F(図13(c)においては、力Fを、凸状織り目77に沿う分力Fbと、凸状織り目77に直交する分力Faとに分けて示している。)を、凸状織り目77で受けにくくなり、シール部材66に侵入したトナーが現像室34a側に戻りやすくなる。そのため、トナーの漏れをより一層確実に防止することができ、現像ローラ31を高速動作させてもより一層確実なシール性を確保することができる。
また、この織物部材67は、上記したように、縦糸68と横糸69とによって織られており、現像ローラ31側に突出する糸となる表面側縦糸70が、縦糸68により構成されるとともに、その表面側縦糸70が、隣り合う2本の横糸69を乗りこえた後、その次の横糸69の下をくぐるように織られている。そのため、織物部材67を、縦糸68と横糸69とによって織られる簡易な構成としながらも、表面側縦糸70が確実に傾斜状に並ぶように織ることができる。そのため、簡易な構成により、表面側縦糸70を確実に傾斜状に並べて、隣り合う2本の縦糸68の表面側縦糸70の重なりによって、現像剤の漏れを確実に防止することができる。
また、この織物部材67の隣り合う縦糸68は、それぞれが、1本の共通する横糸69の上を乗りこえるとともに、そのそれそれが、1本の異なる横糸69の上を乗りこえるように織られている。言い換えると、隣り合う縦糸68が1本の共通の横糸68の上をともに乗りこえた後、その次の横糸69においては、一方の縦糸68がそのまま上を乗りこえる一方で、他方の縦糸68が下をくぐるように織られている。
これによって、表面側縦糸70が互いにずれて(傾斜して)並ぶように織られるため、縦糸68と横糸69とによって織られる簡易な構成としながらも、表面側縦糸70による凸状織り目77が確実に傾斜状となるように織ることができるため、簡易な構成により、トナーの漏れを確実に防止することができる。
また、このシール部材66の織物部材67は、その縦糸68が織られている方向が、現像ローラ31の回転方向と同方向となるように設けられている。
たとえば、表面側縦糸70を構成する縦糸68が織られている方向が、現像ローラ31の回転方向に対して異なる方向となるように設けられていると、耐久時における現像ローラ31との摺擦によってほつれを生じ、早い時期からシール性が低下するという不具合を生じる。
しかし、このようにして、縦糸68が織られている方向が現像ローラ31の回転方向と同方向となるように設ければ、耐久時における現像ローラ31との摺擦によってもほつれが生じにくく、長期にわたって、良好なシール性を確保することができる。
しかも、この織物部材67は、縦糸68が織られている方向が、このシール部材66における現像ローラ31の回転方向に沿う端縁と同方向となるように形成されている。言い換えると、この織物部材67は、縦糸68が織られている方向に沿って所定の形状にカットされ、その縦糸68が織られている方向と現像ローラ31の回転方向とが一致するようにスポンジシール部材65上に設けられている。
たとえば、縦糸68が、シール部材66の端縁と異なる方向で織られていると、耐久時における現像ローラ31との摺擦によって、その端縁からほつれを生じ、早い時期からシール性が低下するという不具合を生じる。
しかし、このように、縦糸68が織られている方向がシール部材66の端縁と同方向であれば、耐久時における現像ローラ31との摺擦によっても、その端縁からほつれが生じにくく、長期にわたって、良好なシール性を確保することができる。
また、この織物部材67は、隣り合う各縦糸68が、共通する1つの横糸69に対して、その横糸69の延びる方向において互いに重なりを有する、すなわち、1本の横糸69に対して連続して隣り合う2本の縦糸68の表面側縦糸70が連続するように織られている。
このように、共通する1つの横糸69に対して、その横糸69の延びる方向において連続して隣り合う2本の縦糸68の表面側縦糸70が連続するように、重なっていると、そのような隣り合う2本の縦糸68の表面側縦糸70の重なりによって、トナーの漏れを確実に阻止することができる。そのため、より確実なシール性を実現することができる。
また、このシール部材66の表面、すなわち、織物部材67の摺擦面には、潤滑剤が塗布されている。潤滑剤を塗布することで、現像ローラ31の回転駆動時には、現像ローラ31とシール部材66との間において、潤滑剤が潤滑するので織り目によって凹凸が形成されている織物部材67に現像ローラ31が摺擦しても、摺動抵抗を低減することができる。そのため、現像ローラ31の回転トルクを低減することができるとともに、耐摩耗性および耐久性の向上を図ることができる。さらには、これらの摺動に起因する異音の発生を確実に防止することができる。
より具体的には、このシール部材66の表面には、フッ素油およびフッ素系樹脂を揮発性の溶媒中に分散させたフッ素系潤滑剤が塗布されている。
このようなフッ素系潤滑剤を塗布すれば、フッ素油およびフッ素系樹脂が摩擦を低減し、現像ローラ31とシール部材66との間の摺動抵抗をより一層低減させることができる。そのため、耐摩耗性および耐久性を、さらに向上させることができ、とりわけ、これらの摺動に起因する異音の発生をより一層確実に防止することができる。
また、織物部材67においては、不織布に比べると規則的に糸が配置されているので、トナーを絡め取る性能が若干劣るが、フッ素系潤滑剤の塗布により、そのような性能の低下を防止することができる。さらに、フッ素系潤滑剤は、織り目の間に含浸されるので、現像ローラ31との間のシール性をさらに向上させることもできる。
なお、フッ素系潤滑剤を、シール部材66の表面に塗布する方法は、特に制限されないが、たとえば、シール部材66として所定の寸法に加工する前の長尺の織物部材67の表面に、刷毛により潤滑剤を均一に塗布した後、所定の寸法に切り出せばよい。なお、塗布量は、適宜決定すればよいが、たとえば、100個のシール部材66に対して、20±5gとして塗布される。
また、このようなフッ素系潤滑剤としては、たとえば、関東化成工業株式会社製の商品名「ハナールFL−Z75」が用いられる。このハナールFL−Z75は、揮発性の溶媒として、ハイドロフルオロカーボンが80〜90重量%含有され、さらに、フッ素油およびフッ素系樹脂としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ならびにその他の成分が10〜20重量%含有されている。
また、たとえば、関東化成工業株式会社製の商品名「ハナールFL−955」を用いてもよい。このハナールFL−955は、揮発性の溶媒として、パーフルオロアルカンが85〜95重量%含有され、さらに、フッ素油およびフッ素系樹脂としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ならびにその他の成分が5〜15重量%含有されている。
そして、このレーザプリンタ1では、流動性の良好な重合トナーを用いて良好な現像を達成しているが、重合トナーでは、その良好な流動性ゆえに、現像時の現像ローラ31の回転駆動によって、現像ローラ31とサイドシール51との間に侵入しやすくなるが、このレーザプリンタ1においては、サイドシール51のシール部材66を、上記したように、傾斜状の凸状織り目77が形成されている織物部材67によって形成しているので、そのようなトナーの侵入を阻止して、その漏れを確実に防止するようにしている。
また、このレーザプリンタ1では、非磁性1成分の現像方式を採用しており、トナーおよび感光ドラム27へのダメージを低減すべく、現像ローラ31のローラを弾性体によって形成している。現像ローラ31のローラを弾性体によって形成すると、たとえば、発泡体で形成した場合に比べて、トナーの漏れを生じやすく、また、金属で形成した場合とに比べて、ローラの削れを防止することができず、現像時のトナーの漏れが生じやすくなる。しかし、このレーザプリンタ1では、現像ローラ31の軸方向両端に配置されるサイドシール51のシール部材66を、上記したように、カシミヤ系の繊維からなる織物部材67によって形成することで、耐久時におけるトナーの現像ローラ31の軸方向端部からの漏れを確実に防止するようにしている。そのため、現像ローラ31のローラを弾性体によって形成して、良好な現像を達成しながらも、トナーの漏れを有効に防止することができる。
したがって、このレーザプリンタ1では、このようにトナーの漏れが確実にシールされる現像カートリッジ28を備えるので、トナーが本体ケーシング2内に飛散することが防止される。そのため、装置の確実な作動が確保され、また、耐久時においては、現像ローラ31を高速回転させても良好なシール性が確保されるので、迅速な画像形成を達成することができる。
以上の説明では、シール部材66を織物部材67によって構成したが、たとえば、シール部材66を、ポリイミドまたはPET(ポリエチレンテレフタレート)などからなる樹脂製のシート部材71によって構成してもよい。
より具体的には、シート部材71は、図10に示すように、略矩形シート状に形成されており、現像ローラ31との摺擦面において、シール部材66に侵入するトナーを、現像室34a側に再び戻すことができるような凹凸部を形成する溝部72が設けられている。
溝部72は、シート部材71における現像ローラ31との摺擦面の全体に、略等しい間隔を隔てて、断面視において半円形状の凹部となる筋状に形成されている。また、この溝部72は、現像ローラ31の回転方向Xにおける上流側から下流側に沿って、現像室34a側に向かって傾斜して形成されており、その傾斜角度は、現像ローラ31の回転方向Xに対して45°以下となるように形成されている。
このように、傾斜状の溝部72を筋状に形成すれば、シール部材66に侵入したトナーは、溝部72間の凸部によって現像ローラ31の軸方向外方へ移動することが妨げられ、溝部72の傾斜に沿って、現像ローラ31の回転とともに、現像ローラ31の回転方向Xにおける上流側から下流側に沿って現像室34a側に送られ、現像室34aに再び戻される。そのため、トナーの漏れを確実に防止することができ、現像ローラ31を高速動作させても確実なシール性を確保することができる。
また、たとえば、溝部72が、現像ローラ31の回転方向に対して45°よりも大きい角度で傾斜している場合には、上記と同様に、現像ローラ31の回転によってシール部材66に侵入したトナーに働く力を、溝部72で受けやすくなり、シール部材66に侵入したトナーがトナー収容室34b側に戻りにくくなる。
一方、このように、溝部72が、現像ローラ31の回転方向に対して45°以下の角度で傾斜していれば、現像ローラ31の回転によってシール部材66に侵入したトナーに働く力を、溝部72が受けにくくなり、シール部材66に侵入したトナーがトナー収容室34b側に戻りやすくなる。そのため、シール部材66に侵入したトナーをより確実かつ迅速に、トナー収容室34b側に再び戻すことができる。その結果、トナーの漏れをより一層確実に防止することができ、現像ローラ31を高速動作させてもより一層確実なシール性を確保することができる。
また、上記した、溝部72の傾斜は、トナーとの接触部分において上記のように形成されていればよく、たとえば、全体として円弧状に形成されていてもよい。
また、上記したシール部材66には、図11および図12に示すように、識別部分としての切り欠き部73が形成されている。なお、図11では、現像ローラ31の軸方向一端部側のみを示し、以下、その軸方向一端部側のみを説明するが、現像ローラ31の軸方向他端部側も、同様の構成とされている。
すなわち、この現像カートリッジ28には、図11に示すように、筐体52の側壁53から、シール部材66の上側側方に向かって、略矩形状のフレームリブ74が突出形成されている。
そして、一端部側のシール部材66には、このフレームリブ74に対向する上側側方位置に、図12(b)に示すように、識別部分としての切り欠き部73bが形成されている。
この切り欠き部73bは、シール部材66の右側側方(現像室34a側と反対側)が開口されるような略矩形状に形成されており、このシール部材66が、フレームリブ74をこの切り欠き部73bによって受け入れるような状態で、スポンジシール部材65上に貼着されている。
また、他端部側(すなわち、筐体52の前面開口側から見て左側)のシール部材66においても、図12(a)に示すように、切り欠き部73aは、左側側方(現像室34a側と反対側)が開口されるような略矩形状に形成されており、このシール部材66も、フレームリブ74をこの切り欠き部73aによって受け入れるような状態で、スポンジシール部材65上に貼着されている。
たとえば、上記のように、このシール部材66は、傾斜状の凸状織り目77が形成される織物部材67から構成されているので、一端部側に配置されるべきシール部材66と、他端部側に配置されるべきシール部材66とを、それぞれ逆に配置してしまうと、それらのシール部材66に侵入したトナーは、傾斜する凸状織り目77によって現像室34aとは反対側の外側に漏れる方向に送られるので、却って漏れが多くなるという不具合を生じる。
しかし、このように、各シール部材66に、それぞれ、開口方向の異なる切り欠き部73が形成されていれば、誤まって、それらを逆に配置しようとしても、フレームリブ74に嵌合しないため、それらを逆に配置してしまうことを有効に防止することができる。そのため、シール部材66の確実な配置によって、トナーの漏れを確実に防止することができる。
したがって、このように、一端部側に配置されるシール部材66と他端部側に配置されるシール部材66とに、開口方向の異なる切り欠き部73をそれぞれ形成すれば、簡易な構成によって、確実に識別することができる。
なお、たとえば、一端部側に配置されるシール部材66と、他端部側に配置されるシール部材66とを、その幅(すなわち、現像ローラ31の軸方向における長さ)がそれぞれ異なるように形成することによって、両者を識別させることもできる。