JP4019711B2 - エンジンベンチシステムのシャフトばね定数計測方法 - Google Patents
エンジンベンチシステムのシャフトばね定数計測方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンにダイナモメータを直結してエンジンの各種性能試験を行うためのエンジンベンチシステムに係り、特にエンジンとダイナモメータを結合するシャフトの動的ばね定数を計測する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のエンジンベンチシステムでは、図4に示すように、エンジン1とトランスミッション(ATあるいMT、MTの場合はクラッチ付)2を組み合わせ、シャフト3を介してダイナモメータ4と結合している。
【0003】
エンジン側はスロットルアクチェータ(ACT)5によりスロットル開度をコントロールする。ダイナモ4側には回転検出器6、トルク検出器(ロードセル)7を設け、この検出によりダイナモ4の速度、トルクの制御を実施する。このシステムによりエンジン1の耐久性や性能(燃費、排ガス計測等)、ECU適合等の試験をしている。
【0004】
但し、このようなシステムでは、機械の共振点が低く、ダイナモ側からエンジン側へ高応答なトルク特性をもってトルク伝達ができない、あるいはエンジン側の高応答な挙動をダイナモ側へ伝達することができないため、エンジンや車両関連部品の過渡性能試験が完成車両を使用しないと実施できない問題があった。
【0005】
このような課題を解決する手段として、最近、図5に示すように、エンジン1とダイナモ4を高剛性のシャフト8で直結することで、ダイナモ4からエンジン1に対して高い周波数特性までのトルク加振を可能にし、実車に近い状態での過渡再現を実施することにより、車両レスでのエンジン試験を可能にするシステムが考えられている。
【0006】
図6は、エンジンベンチシステムのダイナモメータ制御装置の基本構成図を示す。エンジン1とダイナモ4をシャフト8で機械結合した機構に対して、軸トルクメータ9によるエンジン軸トルク検出と、図示省略する回転検出器によるダイナモ4の速度検出を行い、コントローラ10はダイナモ速度または軸トルクを指令値とし、軸トルク検出値またはダイナモ速度検出値をフィードバック信号として自動制御演算を行い、この演算結果としてダイナモトルク指令を求める。インバータ11は、コントローラ10からのダイナモトルク指令に応じた電流出力でダイナモ4を駆動することでダイナモ4にダイナモトルク指令に一致したトルクを発生させる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
図4に示すような従来のエンジンベンチシステムでは、トランスミッションを入れたり、シャフトのばね定数を低く設定して、対象機械系の共振周波数をエンジンのアイドリング回転以下(例えば10Hz程度)にしていた。但し、図5のような高応答のシステムでは、エンジンへの加振トルクの周波数を高くする必要があるため、共振周波数を100Hz以上に設定する場合がある。このような場合は通常のエンジン運転周波数領域にエンジン−ダイナモ機械系の共振周波数が存在することになる。そのため、その共振周波数を避けて運転したり、共振周波数でのゲインを抑制するような制御をする。
【0008】
このような制御をする場合、制御対象となる機械的パラメータの把握が不可欠である。この時、系の機械的周波数特性に大きく影響を与えるものとして、エンジンやダイナモ慣性値およびシャフトのばね定数がある。慣性値は設計値を利用できるが、シャフトのばね定数は設計値との誤差が大きいため、実測が不可欠であった。
【0009】
従来の実測方法を図7に示す。この手法はシャフト12の一端を固定装置13に固定し、他端にはそれに結合する加重装置14のアームなどを用いて加重をかけ、その際の加重トルクとねじり角度を計測装置15で計測してシャフト12のばね定数を測定するものである。
【0010】
この手法では静的な特性は把握できるが、動的な特性は把握できず、制御性能誤差の要因になっていた。
【0011】
本発明の目的は、エンジンとダイナモメータを結合するためのシャフト等の動的ばね定数を正確に計測し、ひいては正確な試験ができるようにしたエンジンベンチシステムのシャフトばね定数計測方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、シャフトからダイナモメータまでの系を慣性系としてモデル化し、このモデルの運動方程式を解いてその理論伝達特性を求め、この理論伝達特性から共振周波数探索範囲を決定しておき、シャフトの一端を固定し、他端をダイナモメータに結合し、コントローラに加振指令を与えたときの軸トルク検出値を周波数分析してパワースペクトルを求め、このパワースペクトルから探索範囲内でのゲインのピーク値を共振周波数として順次算出し、この共振周波数からシャフト等の動的ばね定数を正確に算出できるようにしたもので、以下の方法を特徴とする。
【0013】
(1)エンジンとダイナモメータをシャフトで結合し、コントローラによるエンジンの軸トルク制御またはダイナモトルク制御によってエンジンの各種性能試験を行うエンジンベンチシステムにおいて、
前記シャフトのばね定数を計測するコンピュータは、
前記シャフトの一端を固定し、他端にダイナモメータを結合した機械系を慣性系としてモデル化を行い、このモデルの運動方程式を解いてダイナモトルクに対する軸トルク検出のゲイン理論伝達特性を求め、この理論伝達特性から機械系に存在する共振周波数探索範囲を決定しておく手順と、
前記コントローラにランダム波または正弦波のダイナモトルク指令を与えたときの該ダイナモトルク指令に対する軸トルク検出値を周波数分析してパワースペクトルを求め、このパワースペクトルと前記探索範囲を基にゲインのピーク値を順次算出してそれを共振周波数とし、この共振周波数から動的ばね定数を算出する手順とを有することを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施形態を示すシャフトのばね定数計測装置の構成図である。本実施形態では、エンジンベンチシステムに既設のダイナモメータ制御装置を利用してシャフト等の動的ばね定数を計測するものである。
【0015】
計測対象とするシャフト8には、図7の計測装置と同様に、一端を固定装置13で固定する。一方、シャフト8の他端にはダイナモメータ4を結合し、ダイナモメータ4のトルク出力でシャフト8にねじりを加え、このときのトルクを軸トルクメータ16で計測可能にする。
【0016】
上位装置17は、コントローラ10にトルク加振指令を与え、この加振指令によりコントローラ10とインバータ11によるダイナモメータ4のトルク制御を行い、このときの軸トルクメータ16の軸トルク検出値を利用してシャフト8等の動的ばね定数を算出する。
【0017】
上位装置17は、コンピュータとそのソフトウェア構成によるデータ入出力機能とデータ処理機能を有し、以下、図2及び図3を参照して詳細な処理機能を説明する。
【0018】
図2は、固定装置13とシャフト8とダイナモメータ4の機械系を3慣性系としてモデル化した例を示す。この機械系のモデルにおいて、各機械パラメータは、以下の表に示す意味である。
【0019】
【表1】
【0020】
このモデル化は、適用する計測対象で振動に大きく寄与する機械パラメータを利用してモデル化を行うもので、3慣性系に限らず、4慣性系などとしてモデル化をしてもよい。
【0021】
次に、モデルの3慣性系の場合は、運動方程式を次のように展開する。なお、θxは、機械要素xのねじれ角である。
【0022】
【数1】
【0023】
この運動方程式を解くことで、ダイナモトルク指令−軸トルク検出のゲイン理論伝達特性を求めておく。
【0024】
次に、上位装置17では、図3に計測フローを示すように、ダイナモトルク指令から軸トルク検出まのゲイン理論伝達特性を伝達関数形式で入力しておく(S1)、この特性から共振周波数探索範囲を決定しておく(S2)。例えば、判別される理論共振周波数の±10%のように設定しておく。
【0025】
次に、上位装置17からコントローラ10に加振指令を与え、ダイナモメータ4にトルク出力を発生させる(S3)。この加振はランダム的であったり、正弦波を周波数を変えてスイープさせてもよい。
【0026】
この加振時の軸トルク検出値を軸トルクメータ16からデータ収集する(S4)。
【0027】
次に、受信した軸トルク検出値を周波数分析してパワースペクトルを求め、このスペクトルから先に決定された探索範囲を元に、ゲインのピーク値を順次算出し、共振周波数を得る(S5)。
【0028】
次に、この共振周波数から、以下の式に基づいて、動的ばね定数を算出する(S6)。
【0029】
【数2】
k2=ω1 2×ω2 2×JTM×Jd/k1
この式は、図1に示した計測装置構成で固定装置13、シャフト8、軸トルクメータ16、ダイナモメータ4を3慣性系と見なした図2のモデルにおけるばね定数と他のパラメータの関係式を示したものである。ここでω1とω2は共振周波数の1次、2次を示している。
【0030】
最後に、上位装置17は、算出したシャフト8等の動的ばね定数を計測値として出力する(S7)。
【0031】
本実施形態によれば、エンジンベンチシステムのダイナモメータとその制御系を利用し、エンジンに代えて固定装置でシャフトの一端を固定し、コントローラに加振指令を与えることでシャフト等の動的ばね定数を計測することができ、正確なパラメータの把握により、エンジンの実性能試験での制御性能を高めることができる。すなわち、エンジン運転周波数領域にシャフト等の動的ばね定数に因る共振周波数が存在する場合に、その共振周波数を避けて運転したり、共振周波数でのゲインを抑制するような制御を可能にする。
【0032】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、シャフトからダイナモメータまでの系を慣性系としてモデル化し、このモデルの運動方程式を解いてその理論伝達特性を求め、この理論伝達特性から共振周波数探索範囲を決定しておき、シャフトの一端を固定し、他端をダイナモメータに結合し、コントローラに加振指令を与えたときの軸トルク検出値を周波数分析してパワースペクトルを求め、このパワースペクトルから探索範囲内でのゲインのピーク値を共振周波数として順次算出し、この共振周波数からシャフト等の動的ばね定数を正確に算出するようにしたため、エンジンベンチシステムでの制御性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示すシャフトばね定数計測装置の構成図。
【図2】実施形態における機械系モデルの概念図。
【図3】実施形態における上位装置の計測フロー。
【図4】従来のエンジンベンチシステムの構成図。
【図5】従来の他のシステム構成図。
【図6】ダイナモメータ制御装置の構成図。
【図7】従来のシャフトばね定数計測装置。
【符号の説明】
1…エンジン
4…ダイナモメータ
8、12…シャフト
9、16…軸トルクメータ
10…コントローラ
11…インバータ
13…固定装置
17…上位装置
Claims (1)
- エンジンとダイナモメータをシャフトで結合し、コントローラによるエンジンの軸トルク制御またはダイナモトルク制御によってエンジンの各種性能試験を行うエンジンベンチシステムにおいて、
前記シャフトのばね定数を計測するコンピュータは、
前記シャフトの一端を固定し、他端にダイナモメータを結合した機械系を慣性系としてモデル化を行い、このモデルの運動方程式を解いてダイナモトルクに対する軸トルク検出のゲイン理論伝達特性を求め、この理論伝達特性から機械系に存在する共振周波数探索範囲を決定しておく手順と、
前記コントローラにランダム波または正弦波のダイナモトルク指令を与えたときの該ダイナモトルク指令に対する軸トルク検出値を周波数分析してパワースペクトルを求め、このパワースペクトルと前記探索範囲を基にゲインのピーク値を順次算出してそれを共振周波数とし、この共振周波数から動的ばね定数を算出する手順とを有することを特徴とするエンジンベンチシステムのシャフトばね定数計測方法。
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