JP4018917B2 - 処理方法及び処理システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコンウエハや液晶用ガラス基板及びマスク用基板、そしてIC及びトランジスタ等を作る被処理媒体上から酸化膜や汚染物等を除去する薬液処理が行われた後に、前記被処理媒体上から付着物、例えばエッチング残渣(有機残留物或いは無機残留物等)を洗い落とす水洗処理、この水洗処理が行われた後に被処理媒体上から水滴等を取り除く乾燥処理、これら一連の表面処理を行う半導体基板等の処理方法及び処理システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の半導体基板は、例えばフッ酸(HF)等の薬液流体を用いて半導体基板上から酸化膜等をエッチング除去する薬液処理が行われる。次に、温水等の水洗い流体を用いて半導体基板上から付着する前記薬液流体や除去されたエッチング残渣(有機残留物や無機残留物等)を洗い落とす水洗処理が行われる。そして、IPA(イソプロピルアルコール)等の蒸気化された有機溶剤を用いた蒸気置換(所謂水滴と有機蒸気との混合置換)により半導体材料上から付着する水滴等を取り除く乾燥処理、これら一連の表面処理が段階的に行われることで作製されるようになっている。
【0003】
ところで、半導体材料の前述した一連の表面処理による作製プロセスにおいて、半導体基板を薬液流体中に没入状に浸漬させて行う薬液処理を開始した後は、できる限り半導体材料を空気中に曝すことなく。つまり空気との接触を完全に防いだ状態で、薬液処理後の水洗処理、そして乾燥処理まで一気に行うことが、空気との接触酸化によるウォーターマークの発生がない製品を作製できる。換言すれば、汚染されないクリーンな製品を作製することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし乍ら、従来の処理方法は別途に設備された夫々専用装置を用いて薬液処理と水洗、そして乾燥処理を個々に行うものであることから、薬液処理が終了した後に搬送ロボットにより半導体材料を薬液処理装置の処理槽から取り出して水洗・乾燥処理装置へ搬送移行する際に空気中に曝される。
従って、従来の処理方法においては半導体基板を薬液流体中に没入状に浸漬させて行う薬液処理を開始してから半導体材料を空気中に曝すことなく、水洗処理、そして乾燥処理まで一気に行うことが困難であった。そのために、半導体材料の表面には乾燥(液蒸発)によるウォーターマークが発生してしまう問題があった。
【0005】
又、半導体材料の表面に多数存在するパターンが0.12μm以下、0.2〜0.3μmという線巾が小さいトレンチ内に薬液流体又は水洗い流体等が自身の表面張力やトレンチ内に内在する空気が邪魔をして入り切れないために、トレンチ内のエッチング処理又は不純物やエッチング残渣を洗い除く水洗処理が有効に行われないことが予測されている。
従って、近年の半導体分野の技術において求められている高性能化、高集積化等の高品質の半導体材料の製作プロセスにおいてその改善が要求されている。
【0006】
本発明はこの様な従来事情に鑑み、数年亘り数々の研究を重ねた結果、被処理媒体が没入状に浸漬する密閉された処理チャンバーを減圧せしめることで、表面トレンチ内の空気(気泡)が大きく膨張して破壊することや、薬液流体や水洗い流体の表面張力が低下してそれらの流体がトレンチ内に入り込むことに着目し、本発明に至ったものであり、その目的とする処は、半導体材料の表面に存在しているトレンチ内に薬液流体や水洗い流体を確実に入り込ませて該トレンチ内を完全に薬液処理、そして水洗処理することができ、しかも、薬液処理から水洗処理、そして乾燥処理までの一連の表面処理を空気中に曝すことがない密閉された処理チャンバー内において可能にした処理方法とその処理システムを提供することにある。
【0007】
【課題を達成するための手段】
課題を達成するために本発明は、薬液流体又は水洗い流体を貯溜し、被処理媒体を垂直没入状に浸漬させて収容する上部開口の内槽と、この内槽を遊嵌状に内設する中間槽と、この中間槽を遊嵌没入状に内設すると共に上部開口には密閉蓋を装備する外槽との三重構造からなる処理チャンバーの循環方式にて前記内槽に貯溜される薬液流体を、該内槽の上部開口から前記中間槽内にオーバーフローさせながら該中間槽から槽外に取り出し、循環途中において濾過、再温調して内槽の底部から該内槽内に戻す圧送循環を所定の流量にて繰り返しながら、尚且つ、チャンバー内の減圧又は加圧、その後大気圧に戻すことを1乃至数回繰り返して被処理媒体上から酸化物や汚染物を除去する薬液処理工程と、この薬液処理が終了し、薬液流体の循環を止めて前記内槽内に、該薬液流体を排水した後又はその排水中に、該薬液流体に換えて水洗い流体を、所定の流量にて前記内槽の底部から該内槽内に送り込むと共に該内槽の上部開口から中間槽内及び外槽内にオーバーフローさせながら被処理媒体上から付着物を洗い落とす水洗処理工程と、この水洗処理が終了し、水洗い流体の供給を止めて内槽内の該流体を底部から吸引排水しながら前記外槽の上部側から処理チャンバー内に有機蒸気を導入させて該有機蒸気との蒸気置換がなされた時点で該蒸気の供給を止めて処理チャンバー内を真空引きせしめて被処理媒体を蒸気乾燥する乾燥処理工程と、この乾燥処理中において、前記内槽の底部から吸引排水される前記水洗い流体と前記有機蒸気の有機溶剤との混合液から、前記有機溶剤を分離回収する溶剤回収工程とを包含し、前記薬液流体による薬液処理から水洗い流体による水洗処理、有機溶剤との蒸気置換、真空引きによる乾燥処理までの一連の表面処理が密閉された処理チャンバー内にて行なわれるようにした処理方法である。
【0008】
又、本発明は、被処理媒体を没入垂直状に収容する上部開口の内槽と、この内槽を遊嵌状に内設する中間槽と、この中間槽を遊嵌没入状に内設すると共に上部開口には密閉蓋を装備する外槽との三重構造からなる処理チャンバーと、
上記内槽の底部と中間槽の底部とに亘り循環経路を介して接続され、内槽の上部開口から中間槽にオーバーフローされる薬液流体を、前記循環経路を通して中間槽内から内槽内に所定の流量にて圧送循環する循環ポンプ及び薬液流体の濾過と再温調を行うラインフィルター、ライン温調器を備える薬液供給・温調ユニットと、
上記内槽の底部に給水経路を介して接続され、該内槽の底部から内槽内に所定の流量にて水洗い流体を送り込む純水供給ユニットと、
上記外槽の上部側に吸引経路を、内槽の底部に排水・吸引経路を介してそれぞれ接続され、少なくとも薬液処理中に処理チャンバー内を吸引減圧し、且つ、水洗処理が終了した時点で内槽内の純水を吸引排水すると共に内槽を含めた処理チャンバー内の湿気を強制的に排除する乾燥処理を行う排水・真空吸引ユニットと、
上記外槽の上部側に蒸気導入経路とガス供給経路を介して夫々接続され、被処理媒体の水洗処理が終了した後に処理チャンバー内に有機蒸気を導入する蒸気発生ユニットと、処理チャンバー内にクリーンガスを送り込んで該チャンバー内を大気圧に戻すガス供給ユニットと、前記内槽の底部に接続され、該内槽から吸引排水される前記水洗い流体と前記有機蒸気の有機溶剤との混合液から有機溶剤を分離回収するための溶剤回収ユニットと、を備える処理システムである。
【0009】
因みに、半導体材料のエッチング処理時に薬液流体を圧送循環する際の流量(l/m)は20位が好ましい。又、水洗処理時における水洗い流体は40〜60位に設定することが好ましい。
これにより、薬液が内槽の底部から送り込まれて上部開口からオーバーフロー水として溢れ出る薬液が外槽側へ溢れ出すことなく、中間槽内に確実に受け入れられて循環経路を通って薬液供給・温調ユニットへと戻される圧送循環が行われることとなる。
一方、水洗処理時の純水は内槽の上部開口から中間槽、更には外槽側へとオーバーフロー水として溢れ出ることで、内槽の周壁内面は勿論、内槽の周壁外面と中間槽の周壁内面、そして、中間槽の周壁外面と外槽の周壁内面から薬液を完全に洗い落とす洗浄が行われることとなる。
【0011】
又、本発明は、上記処理チャンバーの前記外槽の外側、前記蒸気発生ユニットの蒸気タンクの外側、およびこの蒸気タンクと前記外槽とを連絡する前記蒸気導入経路の外側に保温隙間をそれぞれ備え、この各保温隙間に保温媒体を循環送り込むための媒体発生ユニットを備える処理システムである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の具体例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明処理システムの実施形態の一例を示す概略図で、1は処理チャンバー、2は薬液供給・温調ユニット、3は純水供給ユニット、4は排水・真空吸引ユニット、5は蒸気発生ユニット、6はガス供給ユニットを示し、半導体材料W(以後、基板と称する)を密閉される処理チャンバー1内に垂直並列状に収容させた状態で、薬液流体Mを用いた圧送循環により基板W上から酸化膜をエッチング除去する薬液処理から水洗い流体Nを用いた基板Wの水洗処理、有機溶剤Xの有機蒸気を用いた蒸気置換(水滴と有機溶剤との混合置換)、そして真空引きによりチャンバー1内の有機蒸気及び湿気等を外部に強制排気して基板Wを完全に乾燥する乾燥処理までの一連の表面処理が密閉された処理チャンバー1内で行なわれるようにしてある。つまり、空気との接触酸化によるウォーターマークの発生を完全に抑制することができる基板Wの表面処理を可能とする。
【0013】
薬液流体Mとしては例えばフッ酸(HF)等が挙げられる。又、水洗い流体Nとしては純水からなる冷水を含む常温水、そして所定の温度に加熱された純水からなる温水等が挙げられる。又、有機溶剤XとしてはIPA(イソプロピルアルコール)等が挙げられる。
【0014】
処理チャンバー1は、石英やふっ素樹脂等の所望な材料から製作されるもので、内槽1-1、中間槽1-2、密閉蓋7を開閉可能に装備する外槽1-3から三重構造に構成してなる。
【0015】
内槽1-1は、多数枚の基板Wを垂直没入状に搬入収容し得る大きさで上面開口の有底箱形に形成され、傾斜する底部中央には下方に向けて突出させた給・排水接続口1-10を設け、図1及び図2に示すように後述する給・排水接続口具8と、この接続口具8の接続口8-1,8-2,8-3,8-4の内、下端接続口8-1と側端接続口8-2とに亘り接続配管される循環経路9とを介して薬液供給・温調ユニット2を接続することにより、薬液処理中に内槽1-1の上部開口から中間槽1-2にオーバーフローされる薬液流体Mが前記接続口8-2から循環経路9を通して槽1-2外に取り出され、前記接続口8-1から槽1-1内に所定の流量(l/m)にて戻される圧送循環が繰り返し行われるようにしてある。
【0016】
又、給・排水接続口具8の接続口8-1に接続された循環経路9の一端側途中部位から分岐配管させた給水経路10を介して純水供給ユニット3を接続することにより、薬液処理が終了した時点で水洗い流体Nが給・排水接続口具8を通って内槽1-1底部の給・排水口1-10から同槽1-1内に所定の流量(l/m)にて送り込まれるようにしてある。
又、前記循環経路9の一端側途中部位から分岐させた連絡経路11と、この連絡経路11の一端に接続したヘッダ12、排水・吸引経路13とを介して排水・真空吸引ユニット4を接続することにより、水洗処理が終了した後に内槽1-1内の水洗い流体Nが給・排水口1-10から所定の流速(m/s)にて強制的に吸引排水されるようにしてある。
【0017】
中間槽1-2は、主に基板Wの薬液処理中に前記内槽1-1の上部開口からオーバーフローされる薬液流体Mを受ける流体受け隙間を、内槽1-1との間に確保形成し得る大きさを有する上面開口の有底箱形に形成され、傾斜する底部中央には下方に向けて突出する排水口1-20を設け、前述した給・排水接続口具8を接続することにより、循環経路9の他端が接続する前記接続口具8の排水口8-2から循環経路9を通って薬液流体Mが薬液供給・温調ユニット2に循環戻されるようにしてある。
尚、中間槽1-2の深さは、内槽1-1を遊嵌状に内在させた状態で該内槽1-1の底部との間に前記流体受け隙間を確保し、上部開口が内槽1-1の上部開口よりも下方に位置するように形成することにより、薬液処理時に内槽の上部開口からオーバーフローされる薬液流体Mを確実に受け入れられるように形成する(図3(a)参照)。
【0018】
外槽1-3は、金属板の表面にふっ素樹脂等からなるコーティング膜を施してなる。又は樹脂単体からなる耐圧容器であり、中間槽1-2を図示のように遊嵌没入状に内設し得る大きさを有する上面開口の有底箱形に形成され、傾斜する底部中央に下方に向けて突出する排水口1-30を設け、給・排水接続口具8を適宜のシール構造を介して締結接続することにより、図2に示したように該接続口具8内に0リング等のシール材14を介して中間槽1-2の排水口1-20と内槽1-1の給・排水口1-10が挿入接続され、これにより、三層構造の処理チャンバー1を製作構成し得るようにしてある。
そして、外槽1-3の上部開口には密閉蓋7を開閉自在に装備して、薬液流体Mによる薬液処理開始から後述する真空ポンプ35による基板Wを含めた処理チャンバー1内の完全乾燥処理が終了する間、処理チャンバー1を密閉し得るようにしてある。
【0019】
又、外槽1-3の上部側壁部には蒸気導入口15が設けられており、蒸気導入経路16と蒸気バルブ17を介して蒸気発生ユニット5を接続することにより、基板Wの水洗処理が終了した後、特に予備加熱用の温水が排水・真空吸引ユニット4の作動により内槽1-1底部の給・排水口1-10から所定の流速(m/s)にて吸引排水されることで減圧される処理チャンバー1内に、IPA等の有機溶剤Xの有機蒸気が吸い込まれ導入されるようにしてある。
【0020】
又、外槽1-3の上部側壁部にはガス供給口18が設けられており、ガス供給経路19とガスバルブ20を介してガス供給ユニット6を接続することにより、処理チャンバー1内を減圧状態から大気圧に戻す時や、或いは必要に応じて処理チャンバー1内を加圧する際にクリーンガス(例えばN2)がチャンバー1内に送り込まれるようにしてある。
【0021】
又、外槽1-3の上部側壁部には吸引口21が設けられており、前述のヘッダ12に亘り吸引バルブ23を有する吸引経路22を接続することにより、薬液処理中や水洗処理中に排水・真空吸引ユニット4により処理チャンバー1内が適宜の減圧圧力(mmHg)雰囲気に吸引減圧されるようにしてある。
【0022】
給・排水接続口具8は、内槽1-1底部の給・排水口1-10、中間槽1-2底部の排水口1-20、外槽1-3底部の排水口1-30、これらを分離させて接続する下部ヘッダであり、図2に示したように、下向き略円錐筒状に形成され、その下端部に前記給・排水口1-10に連通すると共に循環経路9の一端を接続する接続口8-1を開口する。
そして、接続口具8の側端には前記排水口1-20に連通すると共に循環経路9の他端を接続する接続口8-2、前期排水口1-30に連通すると共に薬液流体回収又は排水経路24と水洗い流体排水経路25とを二又状に分岐備える回収・排水経路26を接続する接続口8-3、更に前記ヘッダ12にドレーン経路27を介して接続する接続口8-4を夫々開口してなる。
【0023】
薬剤供給ユニット2は、基板Wの薬液処理中に薬液流体Mを循環方式にて処理チャンバー1の内槽1-1内に、給・排水口1-10から所定の流量(l/m)にて送り込む働きを成すものであり、ラインフィルター2-1、循環ポンプ2-2、ライン温調器2-3、貯溜・回収タンク2-4とで構成され、内槽1-1の上部開口から中間槽1-2にオーバーフローされる薬液流体Mを循環ポンプ2-2で槽1外に循環経路9を通して取り出し、該循環経路9に装備されているラインフィルター2-1によりゴミ等の異物を取り除く濾過、そしてライン温調器2-3により薬液流体Mを所定の温度(例えばHFの場合で19〜24℃位の範囲)に再温調しながら内槽1-1底部の給・排水口1-10から同槽1-1内に戻す圧送循環を繰り返すように構成されている。
【0024】
純水供給ユニット3は、基板Wの薬液処理が終了した後の水洗処理中に、水洗い流体Nを処理チャンバー1の内槽1-1内に、給・排水口1-10から所定の流量(l/m)にて送り込む働きを成すものであり、貯溜タンク等からなる給水部3-1、この給水部3-1から二方向に分岐され、常温水バルブ28を接続備える常温水用給水経路29と、温水バルブ30と加熱ヒーター31とを接続備える温水用給水経路32とで構成され、常温水用給水経路29と温水用給水経路32との合流部を循環経路9に給水経路10を介して接続することにより、水洗処理中に常温水バルブ28と温水バルブ30の開閉切替えにより常温水(冷水を含む)と、過熱ヒーター31により所定の温度(℃)に加熱された予備加熱用の温水とが内槽1-1底部の給・排水口1-10から同槽1-1内に水洗い流体Nとして継続的に送り込まれるように構成されている。
【0025】
排水・真空吸引ユニット4は、薬液処理中や水洗処理中に処理チャンバー1内を吸引減圧せしめる働きと、水洗処理が終了した後に内槽1-1内の温水を槽1-1外に所定の流量(l/m)にて強制的に吸引排水する働きを成すものである。
この排水・真空吸引ユニット4の具体的な構成形態については図示を省略しているが、その一例を挙げるならば、前述のヘッダ12に排水・吸引経路13と排水・吸引バルブ33を介して接続される真空タンクを装備してなる。
而して、排水・吸引バルブ33を開くことで、水洗処理が終了した後に内槽1-1内の水洗い流体N、温水が給・排水口1-10から所定の流速(m/s)にて強制的に吸引排水されるようにしてある。
又、図示を省略しているが、真空タンクには吸引されてくる水洗い流体N、有機溶剤Xや空気等を分離排水又は分離排気するための排水管又は排気管が接続されている。
【0026】
蒸気発生ユニット5は、基板Wの水洗処理、特に温水による予備加熱が終了し、温水の強制排水により処理チャンバー1内が減圧(真空化)されるに伴い同チャンバー1に吸い込まれるように導入されて基板Wの表面に付着残留する水滴を蒸気置換により取り除く有機蒸気を生成する働きを成すものであり、有機溶剤Xを貯溜すると共に有機溶剤Xを加熱せしめて蒸気化させる加熱ヒーター34 を備えた蒸気タンク5-1を具備してなる。
而して、蒸気タンク5-1から外槽1-3の蒸気導入口15に亘る蒸気導入経路16に接続配備した蒸気バルブ17を開くことで、蒸気タンク5-1内にて蒸気化された有機蒸気が、温水による基板Wの予備加熱が終了し、該温水が内槽1-1底部の給・排水口1-10から排水・真空吸引ユニット4により強制的に吸引排水されることで減圧される処理チャンバー1内に吸い込まれ導入される。
【0027】
ガス供給ユニット6は、基板Wが有機蒸気との蒸気置換により乾燥され、その後、継続運転する排水・真空吸引ユニット4及び後述する真空ポンプ35により処理チャンバー1内が吸引減圧されることにより、同チャンバー1内に残る有機蒸気と湿気とを強制排気する。
換言すれば、処理チャンバー1内の真空引き乾燥により基板Wの完全乾燥が終了した後に、該チャンバー1内へクリーンガスを送り込んで同チャンバー1内を大気圧に戻す役目を成すものであり、外槽1-3の上部側側壁に設けたガス供給口18にガス供給経路19を接続し、該ガス供給経路19に流量調整が可能なガスバルブ20を接続配備してなる。
【0028】
尚、前述した薬液供給・温調ユニット2、純水供給ユニット3、排水・真空吸引ユニット4、蒸気発生ユニット5、ガス供給ユニット6の構成形態については一例であり、これらの構成形態に限定されるものではない。
【0029】
而して、以上の如く構成した本実施例詳述の処理システムによれば、薬液流体Mを用いた基板Wの薬液処理から常温水(冷水を含む)からなる水洗い流体Nを用いた水洗処理、そして、温水による基板Wの予備加熱、その後の有機溶剤Xの有機蒸気を用いた置換乾燥、最後の真空引きによる基板Wの完全乾燥処理までの一連の表面処理が密閉された処理チャンバー1内で可能となる。つまり、乾燥(液蒸発)によるウォーターマークの発生を完全に抑制する基板Wの表面処理が可能となる。
しかも、薬液処理時にはチャンバー1内の減圧により、基板Wの表面に多数存在するパターンが0.12μm以下、0.2〜0.3μmという線巾が小さいトレンチW-1内の空気を膨張させて破壊することが可能であることから、該トレンチW-1内に薬液流体Mを確実に入り込ませて同トレンチW-1内の酸化膜をもエッチング除去する高性能化、高集積化等の高品質の半導体材料の製作プロセスにおいて要求される薬液処理が可能となる。
【0030】
又、本発明の処理システムは図示したように、温水による予備加熱が終了した後に、排気・真空吸引ユニット4により内槽1-1内から温水を強制的に吸引排水する際に、蒸気導入口15から導入されてくる有機蒸気と温水との混合液Kから有機溶剤Nを分離回収し、該有機溶剤Nを取り除いた無毒の温水(廃液)を下水路等へ廃水し得る溶剤回収ユニット36を装備してある。
【0031】
溶剤回収ユニット36は、蒸気発生ユニット5から吸い込まれるように導入される有機蒸気による基板Wの置換乾燥処理の開始から内槽1-1内の水洗い流体(温水)Nが全て強制排水される間において、液化した有機溶剤Xが混ざり合った水洗い流体(温水)Nとの混合液Kを吸引導入し、該混合液Kから有機溶剤Xを分離して回収する働きを成すものである。
この溶剤回収ユニット36は、前述した排水・吸引経路13の途中部位から分岐接続した回収経路37に回収バルブ38を介して接続備えた貯溜タンク36-1と、この貯溜タンク36-1に連絡流路39を介して接続した蒸留器36-2からなり、排水・吸引経路13の排水・吸引バルブ33を閉じると共に回収バルブ38を開くことで、内槽1-1の給・排水口1-10から連絡経路11、ヘッダ12、排水・吸引経路13、そして回収経路37を通って混合液Kが貯溜タンク36-1へ吸い込まれるように導入され、貯溜されるようにしてなる。
そして、貯溜タンク36-1に吸引導入された混合液Kを蒸留器36-2へ移行し、この蒸留器36-2で混合液Kを加熱して水洗い流体Nよりも沸点が低い有機溶剤Mを蒸気化し、これを集めて液体に凝縮して精製するように構成してなる。
【0032】
貯溜タンク36-1は、真空タンクであり、ヘッダ12に対する接続部と排水・吸引バルブ33を配備した部位との間における排水・吸引経路13の途中部位から分岐させた回収流路37に回収バルブ38を介して接続してなる。
【0033】
又、貯溜タンク36-1には真空バルブ40を介して真空ポンプ35が接続されており、この真空ポンプ35により貯溜タンク36-1内を予め真空引きして置き、回収バルブ38が開かれることで、排水・吸引経路13から回収流路37を通って内槽1-1の混合液Kが貯溜タンク36-1へと吸引導入されるように構成してなる。
【0034】
図中41は、排水・吸引経路10に対する分岐接続部と回収バルブ38との間における回収経路37の途中部位から分岐せしめて真空ポンプ35に亘りドライバルブ42を介して配管接続したドライ経路であり、内槽1-1内の混合液Kが全て貯溜タンク36-1に吸引導入され、蒸気バルブ17が閉じられて蒸気発生ユニット5からの有機蒸気の導入が止められた後、回収バルブ38を閉じると同時に、ドライバルブ42を開くバルブ切替えを行うことで、処理チャンバー1内が真空引きされて該チャンバー1内に残る有機溶剤Mと湿気とがチャンバー1外に完全に強制排気されるようになっている。それにより、基板Wを含めた処理チャンバー1内が完全乾燥される。
【0035】
又、図中43,44は、貯溜タンク36-1と蒸留器36-2とを連絡する連絡経路39に配備した入替えバルブと入替えポンプであり、この入替えバルブ43を開き、入替えポンプ44を作動させることで、貯溜タンク36-1に導入貯溜された混合液Kが蒸留器36-2へと移され、該蒸留器36-2にて有機溶剤Mが混合液Kから加熱分離されるようにしてなる。
又、図中45は、蒸留器36-2から配管引出した充填経路46に充填バルブ47を介して着脱取り替え可能に接続した回収ボンベであり、充填バルブ47を開くことで、蒸留器36-2で液体に凝縮された有機溶剤Mを回収ボンベ45に回収充填し得るようにしてなる。
又、図中48は、蒸留器36-2に廃液バルブ49を介して備えた廃液口であり、廃液バルブ49を開くことで、有機溶剤Mが回収取り除かれた無毒の水洗い流体Nのみが下水路等に排水されるようにしてなる。
【0036】
又、内槽1-1内又は給・排水接続口具8の給・排水口8-1近傍又は連絡経路11に、図では循環経路9との分岐近傍における連絡経路11に、濃度又はTOC又は導電率等を検出するセンサー50を備え、有機蒸気による基板Wの置換乾燥処理中(図4(a)から(b))に、強制排水される水洗い流体N中に混合する有機溶剤Mの濃度又はTOC又は導電率等が予め設定された実験値に達した時点で、排水・吸引バルブ33を閉じると同時に、回収バルブ38を開いて混合液Kが回収流路37を通って溶剤回収ユニット36の貯溜タンク36-1に吸引導入されるように排水・吸引バルブ33と回収バルブ38とのバルブ開閉を自動的に切換えられるようにしてなる。
【0037】
而して、以上の如く構成した本実施例詳述の処理システムによれば、処理チャンバー1内の真空化により同チャンバー1内に有機蒸気が導入されることで行なわれる基板Wの置換乾燥中に、予備加熱用の温水と有機溶剤Mとの混合液Kを溶剤回収ユニット36の貯溜タンク36-1に吸引導入し回収することができる。
そして、貯溜タンク36-1に回収した混合液Kを蒸留器36-2により加熱して沸点が低い有機溶剤Mを蒸気化し、これを集めて液体に凝縮して精製することで有機溶剤Mを水洗い流体Nから分離して回収ボンベ45に充填回収することができる。又、溶剤回収ユニット36にて分離回収した有機溶剤Xを再び有機蒸気を作る蒸気発生ユニット5へ戻すことで、有機溶剤Xの再利用が可能となることで、近年の資源リサイクルに有効な処理システムとなる。よって、水洗処理が行なわれた後、有機蒸気による置換乾燥処理を行う基板Wの製作プロセスにおいて、処理コストの削減と環境に優しい処理システムとなる。
【0038】
尚、図示を省略しているが、前述した濃度又はTOC又は導電計を検出するセンサー50に変えて、内槽1-1の壁面に水洗い流体Nの液面Lを検出する他の液面センサーを装備して排水・吸引バルブ33と回収バルブ38との開閉切換え行うようにするも良い。
即ち、基板Wの予備加熱処理が終了した後に行なわれる温水からなる水洗い流体Nの強制排水、この強制排水により真空化される処理チャンバー1内に吸い込まれるように有機蒸気が導入されることで行なわれる基板Wの置換乾燥開始からこの置換乾燥が終了する間において、液化した有機溶剤Xが混ざり合った混合液Kが内槽1-1から強制排水される水位まで液面Lが降下した時点(例えば図4の(a)の状態まで液面Lが降下した時点)で、排水・吸引バルブ33を閉じると同時に、回収バルブ38を開いて混合液Kが回収経路37を通って溶剤回収ユニット36の貯溜タンク36-1に吸引導入されるように排水・吸引バルブ33と回収バルブ38とのバルブ開閉を自動的に切換えられるように構成するも良い。
【0039】
又、本発明の処理システムは処理チャンバー1と蒸気発生ユニット5とを連絡する蒸気導入経路16を積極的に加熱保温せしめることで、有機蒸気が蒸気導入経路16を通って処理チャンバー1内に導入される際の液化戻りを確実に防ぐ加熱機構を備えてなる。
即ち、処理チャンバー1の外槽1-3の外側、蒸気発生ユニット5の蒸気タンク5-1の外側、そしてこの蒸気タンク5-1と外槽1-3とを連絡する蒸気導入経路16の外側に連通させた保温間隙51,52,53を夫々形成すると共に、各保温間隙51,52,53に所定の温度に加熱された保温媒体を循環送り込む媒体発生ユニット54を接続し、外槽1-3、蒸気タンク5-1、蒸気導入経路16を保温媒体により加熱保温することで、有機蒸気の液化戻りを抑止するようにしてなる。
【0040】
媒体発生ユニット54は、加熱液体や加熱気体等の保温媒体を貯溜する貯溜タンク54-1を備え、この貯溜タンク54-1に保温媒体を所定温度に加熱する加熱ヒーター55と、図示したように貯溜タンク54-1から蒸気タンク5-1の保温空隙52に亘り配管した循環経路(往路)56に接続配備した循環ポンプ57とを備えてなる。
而して、貯溜タンク54-1にて加熱された保温媒体を循環ポンプ57にて循環経路56を通して蒸気タンク5-1の保温空隙52へと送り込むことで、連絡経路58,59,60を介して連通する蒸気導入経路16の保温空隙53、処理チャンバー1の保温空隙51へと送り込まれ、この保温空隙51から貯溜タンク54-1に亘り配管されている循環経路(復路)61を通って貯溜タンク54-1へ戻される強制循環のもとで蒸気タンク5-1、蒸気導入経路16、処理チャンバー1の外槽1-3が常時加熱保温されるようにしてなる。
【0041】
尚、保温媒体との熱交換による外槽1-3、蒸気タンク5-1、蒸気導入経路16、特に蒸気導入経路16の加熱温度は、例えばIPAからなる有機溶剤を使用した場合には40〜80℃の範囲が好ましいものである。
例えば、IPA溶剤の場合では、その沸騰点が常圧で一般的に82℃位とされているのに対し、真空化雰囲気では35〜60℃と言う低い温度で蒸気化されることになることから、35〜60℃よりも高い40〜80℃の範囲で加熱保温することで、有機蒸気の液化戻りを確実に防ぐことができる。
又、保温媒体を各保温空隙51,52,53へ循環送り込む流速は適宜設定するものである。
【0042】
而して、以上の如く構成した本実施例詳述の処理システムによれば、常温水からなる水洗い流体Nにより水洗処理が行なわれた後に、温水による基板Wの予備加熱が行われ、その後、温水の強制排水により処理チャンバー1内の真空化に伴い蒸気発生ユニット5から蒸気導入経路16を通って吸い込まれるように処理チャンバー1内に導入されてくる有機蒸気はその流動過程で液化に戻されることはない。
又、処理チャンバー1内に導入された有機蒸気は外槽1-3との接触によっても液化に戻されることなく、導入された全ての有機溶剤が内槽1-1内に並列収容されている基板Wの表面と接触し、該表面に付着している水滴との蒸気置換(混合置換)が成され、基板Wの効率的な蒸気乾燥が行なわれる。
従って、蒸気発生ユニット5から処理チャンバー1へと吸い込まれるように導入されてくる全ての有機蒸気を、水洗いそして予備加熱された基板Wと接触させて、有機蒸気の液化ロスがない効率的な蒸気乾燥が可能になる。
【0043】
又、前述した処理システムによれば、40〜80℃の範囲で蒸気発生ユニット5の蒸気タンク5-1が常時加熱保温されることで、該蒸気タンク5-1内の有機溶剤Xは前記熱により加熱されて蒸気化し、蒸気導入経路16を通って処理チャンバー1内に吸い込まれるように導入されることから、蒸気タンク5-1内の有機溶剤Xの蒸気化を循環する保温媒体(温水)の熱により行うことが可能になり、安全対策上において優れた効果を発揮することは言うまでもないであろう。
つまり、前述した蒸気タンク5-1に内設する前述した実施例詳述の加熱ヒーター34は必ずしも必要とするものではなく、有機溶剤Xの蒸気化を更に加熱促進するための蒸気化促進手段として用いれば良いことになる。
【0044】
次に、以上の構成した処理システムによる処理方法を図3及び図4に示した工程図と、図5乃至図7に示した動作フローチャートを参照しながら以下、簡単に述べる。
薬液供給・温調ユニット2を動作させて薬液流体Mを処理チャンバー1の内槽1-1に送る(ステップ62)。継続して薬液流体Mの圧送循環を繰り返すと共に薬液流体Mの温調を行う(ステップ63)。薬液流体Mの温調が設定温度に達したことを確認し(ステップ64)、該設定温度であることが確認された時点で外槽1-3の密閉蓋7を開いて基板Wを内槽1-1内に搬入する(ステップ65)。
基板Wを内槽1-1内に搬入収納した後に密閉蓋7を閉じ(ステップ66)、薬液流体Mを継続循環させながら20(l/m)にて圧送循環する薬液処理を開始する(ステップ67)。この処理開始直後又は開始から所定のタイミングにて薬液流体Mの循環を止め(ステップ68)、排水・真空吸引ユニット4を作動させると共に排水・吸引経路13の排水・吸引バルブ33を開いて処理チャンバー1内の吸引減圧を開始する(ステップ69)。
すると、基板X表面のトレンチX-1内の空気がチャンバー1内減圧化(真空化)に伴い膨張して破壊する(図3(b)の状態)。これにより、薬液流体Mは基板Xの表面のみならずトレンチX-1内に入り、該トレンチX-1内の酸化膜をも確実にエッチング除去する。
【0045】
そして、処理チャンバー1内の減圧を所定時間続けた後に、排水・真空吸引ユニット4の作動を止め、排水・吸引バルブ33を閉じると同時に、ガス供給ユニット6を作動させると共にガスバルブ20を開いて処理チャンバー内1にクリーンガスを送り込み(図3(c)の状態)、該チャンバー1内を大気圧に戻す(ステップ70)。処理チャンバー1内が大気圧に戻った時点で薬液流体Mの圧送循環を続行させる(ステップ71、図3(a)の状態に戻る)。
この時、チャンバー1内減圧(ステップ69)と大気圧復帰(ステップ70)とを数回繰り返しながら、薬液供給・温調ユニット2から薬液流体Mの圧送循環を続行(ステップ71)させることも良い。
【0046】
薬液処理時間が経過した時点で(ステップ72)、純水を内槽1-1と中間槽1-2の何れか一方又は双方に注入すると共に内槽1-1内の薬液流体Mを、底部の給・排水口1-10から薬液供給・温調ユニット2の貯溜・回収タンク2-4に回収することにより、内槽1-1から薬液流体Mを排水する(ステップ73)。この時、薬液流体Mが内槽1-1内から完全に排水される前に、純水供給ユニット3の常温水バルブ28を開いて内槽1-1内に常温水(冷水を含む)を送り込むも良い。
【0047】
基板Wの薬液処理が終了し、内槽1-1内の薬液流体Mが排水された時点で純水供給ユニット3の常温水バルブ28を開いて内槽1-1底部の給・排水口1-10から同槽1-1内に常温水(冷水を含む)からなる水洗い流体Nを40〜60(l/m)にて送り込む水洗処理を開始する(ステップ74)。この時、給・排水口1-10から内槽1-1内に大量に送り込まれてくる水洗い流体Nは内槽1-1の上部開口から中間槽1-2、この中間槽1-2を越えた外槽1-3側へオーバーフローすることにより、基板Wを含めた内槽1-1内、中間槽1-2、そして外槽1-3内をも洗い流される(図3(d)の状態)。つまり、基板Wを含めた処理チャンバー1内全体から薬液流体Mが完全に洗い流される。
【0048】
水洗い時間が経過すると(ステップ75)、純水供給ユニット3の常温水バルブ28が閉じられると共にこれに平行して温水バルブ30が開くバルブ切替えが行われ、内槽1-1底部の給・排水口1-10から同槽1-1内に温水が送り込まれて基板W及びチャンバー1内の予備加熱が行なわれる(ステップ76)。この予備加熱は水洗処理後に導入される有機蒸気との蒸気置換による基板Wの乾燥が効果的且つ有効に行われる置換促進のために行われる。
【0049】
基板Wを含めた処理チャンバー1内の温度が有機蒸気との蒸気置換に最適な温度に達したことが確認されると(ステップ77)、純水供給ユニット3の温水バルブ30が閉じて温水の供給が止め(ステップ78)、排水・真空吸引ユニット4を作動させると共に排水・吸引バルブ33を開き、更に吸引経路22の吸引バルブ23を開くバルブ切替が行われて処理チャンバー1内の吸引減圧を開始する(ステップ79)。
すると、図3(b)に示すように前述した薬液処理時と同様にトレンチX-1内の空気はチャンバー1内の減圧(真空化)に伴い膨張し破壊する。これにより、トレンチX-1内洗浄が確実に行われる。更に温水中には減圧沸騰による泡が発生し、この泡の浮上による物理的な接触(衝突)により基板Wの洗浄効果が促進される。
【0050】
チャンバー1内の減圧が終了すると、継続運転する排水・真空吸引ユニット4により内槽1-1内の水洗い流体N(温水)を底部の給・排水口9から所要の流速(m/s)にて強制的に吸引排水する排水を開始すると共に、この排水開始又は水洗い流体Nの液面Lが降下し始めた時点で蒸気バルブ17が開いて蒸気導入口15から有機蒸気が吸い込まれるように導入されてくる(ステップ80、図4(a)の状態)。
【0051】
処理チャンバー1内に導入された有機蒸気は図4の(a)に示したように、液面L降下により徐々に露出する基板Wの表面に接触し、該表面の水滴との蒸気置換(混合置換)が成されることで、基板Wの置換乾燥が行なわれる(ステップ81)。この置換乾燥処理は基板Wが水洗い流体Nから完全に露出するまで、若しくは内槽1-1内の水洗い流体N(温水)が全て排水されるまで継続される。
【0052】
有機蒸気が処理チャンバー1内に導入され、連絡経路11、ヘッダ12、排水・吸引経路13を通って強制排水される水洗い流体N中の有機溶剤Mの濃度又はTOC又は導電率等が、予め設定された実験値に達し、それがセンサ50により検出されると、排水・吸引バルブ33が閉じられ、これと平行して回収バルブ38が開くバルブ切替えが行われる(ステップ82)。すると、有機溶剤Mが混ざり合った水洗い流体Nとの混合液Kが回収経路37を通って吸い込まれるように溶剤回収ユニット36の貯溜タンク36-1に導入されて回収される(ステップ83)。
【0053】
内槽1-1内の混合液Kが全て貯溜タンク6-1へと吸引導入されると、蒸気バルブ17と回収バルブ38が閉じられると共に、それと平行して真空ポンプ35が作動し、ドライバルブ42が開く切替えが行われる(ステップ84)。すると、処理チャンバー1内の真空引きが行なわれ、その真空引きによりチャンバー1内に残る有機溶剤Mと湿気がチャンバー1外に強制排気されることで、密閉された処理チャンバーでの薬液処理、水洗処理、乾燥処理までの被処理媒体Wの一連の表面処理が終了する(ステップ85)。
【0054】
真空ポンプ35による処理チャンバー1内の真空引き乾燥が終了し、ドライバルブ42が閉じられると、それと平行してガス供給ユニット6が作動し、ガスバルブ20が開く切替えが行われる。これにより、ガス供給口18から処理チャンバー1内にクリーンガスが送り込まれて真空状態(負圧下)の同チャンバー1内は大気圧に戻される(ステップ86、図4(c)の状態)。
処理チャンバー1内が大気圧に戻された時点で、ガスバルブ20を閉じると共に外槽1-3の上部開口を密閉する密閉蓋7を開いて(ステップ87)、基板Wを内槽1-1内から搬出する(ステップ88、図4(d)の状態)。
【0055】
尚、貯溜タンク36-1に回収された水洗い流体Nと有機溶剤Mとの混合液Kは、図4の(b)に示したように内槽1-1内から全て吸引排水されて導入された時点、若しくは定期的に移行ポンプ44を作動させ、移行バルブ43を開いて蒸留器36-2へ移し、該蒸留器36-2にて有機溶剤Mを水洗い流体Nから分離し、補充バルブ47を開いて有機溶剤Mを回収ボンベ45へ充填する。
そして、有機溶剤Mが分離取り除かれた処理液は蒸留器36-2の廃水バルブ49を開いて下水路等に廃水する。
【0057】
【発明の効果】
本発明の処理方法及び処理システムは叙上の如く構成してなることから、下記の作用効果を奏する。
薬液流体Mを用いた基板の薬液処理から水洗い流体Nを用いた水洗処理、そして、被処理媒体の予備加熱、その後の有機溶剤Xの有機蒸気を用いた置換乾燥、最後の真空引きによる被処理媒体の完全乾燥処理までの一連の表面処理が密閉された処理チャンバー内で可能となる。
つまり、乾燥(液蒸発)によるウォーターマークの発生を完全に抑制する被処理媒体の表面処理が可能となることで、汚染されないクリーンな製品を作製することができる。
又、薬液処理時には処理チャンバー内の減圧により、被処理媒体の表面に多数存在するパターンが0.12μm以下、0.2〜0.3μmという線巾が小さいトレンチ内の空気を膨張させて破壊することが可能であることから、該トレンチ内に薬液流体を確実に入り込ませて同トレンチ内の酸化物や汚染物をも除去する高性能化、高集積化等の高品質の半導体材料の製作プロセスにおいて要求される薬液処理が可能となる。
【0058】
従って、本発明によれば、表面に存在しているトレンチ内に薬液流体や水洗い流体を確実に入り込ませて該トレンチ内を完全に薬液処理、そして水洗処理することができ、しかも、薬液処理から水洗処理、そして乾燥処理までの一連の表面処理を空気中に曝すことがない密閉された処理チャンバー内において可能にした画期的な処理方法とその処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明処理システムの実施形態の一例を示す概略図
【図2】 一部を拡大して示す縦断面図
【図3】 本発明処理方法における基板の製作プロセスの一例を示した工程概略図で、(a)は内槽の底部から同槽内に薬液流体を循環方式にて送り込んで薬液処理を行っている状態、(b)は同薬液処理中に処理チャンバー内を減圧せしめてトレンチ内の空気を膨張破壊している状態、(c)は処理チャンバー内にクリーンガスを送り込んで同チャンバーを大気圧に戻している状態、(d)は薬液処理後、薬液流体に換えて水洗い流体をない槽内に送り込んで水洗処理を行っている状態、
【図4】 同工程概略図で、(a)は水洗処理後の温水を用いた基板の予備加熱後において該温水を内槽底部から強制排水し、処理チャンバー内の真空化により有機溶剤がチャンバー内の導入されている状態、(b)は温水が全て強制排水された後に、処理チャンバー内に残る有機蒸気や湿気等を強制排気している状態、(c)は処理チャンバーにクリーンガスを送り込んで同チャンバー内を大気圧に戻している状態、(d)は密閉蓋を開けて完全に乾燥処理された基板を処理チャンバー内から搬出している状態
【図5】 本発明処理方法における基板の製作プロセスの一例を示した動作フローチャート
【図6】 同動作フローチャート
【図7】 同動作フローチャート
【符号の説明】
1:処理チャンバー 1-1:内槽
1-2:中間槽 1-3:外槽
2:薬液供給・温調ユニット 3:純水供給ユニット
4:排水・真空吸引ユニット 5:蒸気発生ユニット
6:ガス供給ユニット 7:密閉蓋
9:循環経路 10:給水経路
11:連絡経路 12:ヘッダ
13:排水・吸引経路 15:蒸気導入口
16:蒸気導入経路 18:ガス供給口
35:真空ポンプ 36 :溶剤回収ユニット
51,52,53 :保温空間 M:薬液流体
N:水洗い流体 K:混合液
X:有機溶剤 W:基板(被処理媒体)
Claims (3)
- 被処理媒体を没入垂直状に収容する上部開口の内槽(1−1)と、この内槽(1−1)を遊嵌状に内設する上部開口の中間槽(1−2)と、この中間槽(1−2)を遊嵌没入状に内設するとともに上部開口には密閉蓋(7)を装備する外槽(1−3)とを備えている処理チャンバー(1)の前記内槽(1−1)に貯溜される薬液流体(M)を、前記内槽(1−1)の上部開口から前記中間槽(1−2)内にオーバーフローさせながら、該中間槽(1−2)から槽外に取り出し、循環途中において濾過、再温調して前記内槽(1−1)の底部から、該内槽(1−1)内に戻す圧送循環を所定の流量にて繰り返しながら、尚且つ、前記処理チャンバー(1)内の減圧または加圧、その後に大気圧に戻すことを1乃至数回繰り返して被処理媒体上から酸化物や汚染物を除去する薬液処理工程と、
この薬液処理が終了し、前記薬液流体(M)の循環を止めて前記内槽(1−1)内の該薬液流体(M)を排水した後にまたはその排水中において、該薬液流体(M)に換えて水洗い流体(N)を、前記内槽(1−1)の底部から該内槽(1−1)内に所定の流量にて送り込むとともに、該内槽(1−1)の上部開口から前記中間槽(1−2)内および前記外槽(1−3)内にオーバーフローさせながら、前記被処理媒体上から付着物を洗い落とす水洗処理工程と、
この水洗処理が終了し、前記水洗い流体(N)の供給を止めて前記内槽(1−1)内の前記水洗い流体(N)を該内槽(1−1)の底部から吸引排水しながら、前記外槽(1−3)の上部側から前記処理チャンバー(1)内に有機蒸気を導入させて該有機蒸気との蒸気置換が行われた時点で、該有機蒸気の供給を止めて前記処理チャンバー(1)内を真空引きせしめて被処理媒体を蒸気乾燥する乾燥処理工程と、
この乾燥処理中において、前記内槽(1−1)の底部から吸引排水される前記水洗い流体(N)と前記有機蒸気の有機溶剤(X)との混合液(K)から、前記有機溶剤(X)を分離回収する溶剤回収工程と、を包含し、
前記薬液流体(M)による薬液処理から前記水洗い流体(N)による水洗処理、前記有機蒸気との蒸気置換、真空引きによる乾燥処理までの一連の表面処理が密閉された前記処理チャンバー(1)内にて行なわれるようにしたことを特徴とする処理方法。 - 被処理媒体を没入垂直状に収容する上部開口の内槽(1−1)と、この内槽(1−1)を遊嵌状に内設する中間槽(1−2)と、この中間槽(1−2)を遊嵌没入状に内設すると共に上部開口には密閉蓋(7)を装備する外槽(1−3)とを備えている処理チャンバー(1)と、
前記内槽(1−3)の底部と前記中間槽(1−2)の底部とに亘り循環経路(9)を介して接続され、前記内槽(1−1)の上部開口から前記中間槽(1−2)にオーバーフローされる薬液流体(M)を、前記循環経路(9)を通して前記中間槽(1−2)内から前記内槽(1−1)内に所定の流量にて圧送循環する循環ポンプ(2−2)、前記薬液流体(M)中の不純物を除去するラインフィルター(2−1)、同薬液流体(M)の温度を再温調するライン温調器(2−3)を備えている薬液供給・温調ユニット(2)と、
前記内槽(1−1)の底部に給水経路(10)を介して接続され、該内槽(1−1)の底部から同内槽(1−1)内に所定の流量にて水洗い流体(N)を送り込むための純水供給ユニット(3)と、
前記外槽(1−3)の上部側に吸引経路(22)を、前記内槽(1−1)の底部に排水・吸引経路(13)を介してそれぞれ接続され、少なくとも薬液処理中に前記処理チャンバー(1)内を吸引減圧し、且つ、水洗処理が終了した時点で前記内槽(1−1)内の前記水洗い流体(N)を吸引排水すると共に該内槽(1−1)を含めた前記処理チャンバー(1)内を真空引きせしめて該処理チャンバー(1)内の湿気を排除する乾燥処理を行うための排水・真空吸引ユニット(4)と、
前記外槽(1−3)の上部側に蒸気導入経路(16)を介して接続され、被処理媒体の水洗処理が終了した後に、前記処理チャンバー(1)前記有機蒸気を導入するための蒸気発生ユニット(5)と、
前記外槽(1−3)の上部側にガス供給経路(19)を介して接続され、前記処理チャンバー(1)内にクリーンガスを送り込んで、該処理チャンバー(1)内を大気圧に戻すためのガス供給ユニット(6)と、
前記内槽(1−1)の底部に接続され、該内槽(1−1)から吸引排水される前記水洗い流体(N)と前記有機蒸気の有機溶剤(X)との混合液(K)から有機溶剤(X)を分離回収するための溶剤回収ユニット(36)と、
を備えていることを特徴とする処理システム。 - 前記処理チャンバー(1)の前記外槽(1−3)の外側、前記蒸気発生ユニット(5)の蒸気タンク(5−1)の外側、およびこの蒸気タンク(5−1)と前記外槽(1−3)とを連絡する前記蒸気導入経路(16)の外側に保温隙間(51,52,53)をそれぞれ備え、この各保温隙間(51,52,53)に保温媒体を循環送り込むための媒体発生ユニット(54)を備えていることを特徴とする請求項2に記載の処理システム。
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