JP4017450B2 - 多層化回路基板およびその製造方法 - Google Patents

多層化回路基板およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、多層化回路基板およびその製造方法に関し、特に、インターステシヤルバイアホール(IVH)構造を有する多層化回路基板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の多層化回路基板は、銅張積層板とプリプレグを交互に積み重ねて一体化してなる積層体によって構成され、その積層体の表面には表層配線パターンを有し、層間絶縁層間には内層配線パターンを有している。これらの配線パターンは、積層体の厚さ方向に穿孔形成したスルーホールを介して、内層配線パターン相互間あるいは内層配線パターンと表層配線パターンとの間で電気的に接続されている。
【0003】
従来技術としては、特開平6−283866号、特開平10−13028号などがある。特開平6−283866号には、低線膨張性ポリイミド樹脂層の片面に回路を設けて、貫通孔に金属物質を充填させているプリント配線板が開示されている。特開平10−13028号には、絶縁性硬質基板に導電性ペーストが充填されたバイアホールの形成された回路基板について開示されている。それらの従来技術の多層プリント配線板は、絶縁性樹脂基材の一面に導体回路を形成し、その絶縁性樹脂基材の他方の表面から導体回路に達する通孔に導電性物質を充填してバイアホールを形成してなる片面回路基板を複数枚積層し、または、そのような片面回路基板の複数枚と両面回路基板とを積層して、加熱プレスによって一体化する方法で製造される。
【0004】
ところが、上述した全ての積層板を貫通するスルーホール構造の多層化回路基板は、スルーホールを形成するための領域を確保する必要があるために、部品実装の高密度化が困難であり、携帯用電子機器の超小型化や狭ピッチパッケージおよびMCMの実用化の要請に十分に対処できないという欠点があった。
【0005】
そのため、最近では、上述のようなスルーホール構造の多層プリント基板に代えて、高密度化に対応し易い全層インターステシヤルバイアホール(IVH)構造を有する多層プリント基板が注目されている。
【0006】
この全層IVH構造を有する多層プリント基板は、積層体を構成する各層間絶縁層に、導体層間を電気的に接続するバイアホールが設けられている構造のプリント基板である。即ち、この基板は、内層配線パターン相互間あるいは内層配線パターンと表層配線パターン間が、基板を貫通しないバイアホール(べリードバイアホールあるいはブラインドバイアホール)によって電気的に接続されてなる。
【0007】
それ故に、IVH構造の多層プリント基板は、スルーホールを形成するための領域を特別に設ける必要がなく、任意の層間を微細なバイアホールで自由に接続できるため、電子機器の小型化、高密度化、信号の高速伝搬を容易に実現することができる。
【0008】
こうしたIVH構造の多層プリント基板は片面回路基板を積層して成る。片面回路基板は、たとえば、絶縁性基材の一方の面に導体回路を形成し、該絶縁性基材に導体回路へ至るバイアホール形成用開口を穿設し、そのバイアホール形成用開口内に銅めっき等の導電物質を充填してバイアホールを形成し、該バイアホール上に半田等からなる導電性バンプを配設してなる。
【0009】
片面回路基板の積層は、片面回路基板間に接着剤を塗布して貼り付けることにより行う。ここで、片面回路基板間の電気接続は、1の片面回路基板の導電性バンプを、他の片面回路基板の導体回路に当接させることにより行う。ここで、導電性バンプとしては、Sn−Pb、Sn−Ag、Sn−Sbなどの半田やスズなどの250℃以下で溶融する低融点金属が形成されている。それらの低融点金属によって、片面回路基板を積層して多層化回路基板を製造したとき、電気的な接続を得ると共に機械的な接続をより確実に行わしめている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、片面回路基板を積層してなる多層化回路基板は、厚みを薄くするという要求を満たすために片面回路基板を構成する絶縁性基材の厚みを薄くすることを検討した。基材を薄くすると、機械的強度が低下し、製造工程及び製造後、例えば、めっき後の乾燥工程やプレス工程など主に熱を加える工程で応力が加わると断線が生じ易いという問題点があった。
【0011】
更に、上記多層化回路基板は、電気的な信頼性も低かった。この原因を本発明者が研究したところ、上記導電性バンプと接続している部分で導体回路に空隙が形成され、その空隙によって、電気接の信頼性が低下してしまうことが判明した。これは、導電回路側の金属が、半田からなる導電性バンプ側へ局部電池溶解し、流出してしまうためと考えられる。即ち、図15(A)に示すような、表面に導体回路128の形成された絶縁性基材110の開口116に、銅めっき117を充填してなるバイアホール118を、半田から成る導電性バンプ124を介して導体回路132に接続すると、図15(B)に示すように導体回路132側に導電性バンプ124が流出していた。
【0012】
また、導電性バンプを形成する金属が、拡散してしまうことがあった。そのために、積層した際のバンプ金属層の薄くなってしまい、接合強度が低下する。もしくは、導電性バンプ金属を介して隣合う回路と短絡を引き起こしてしまうこともあることが明らかになった。特に、この傾向は、ヒートサイクル条件や高温高湿条件などの信頼性試験において顕著に現れる。
【0013】
本願発明の目的は、片面回路基板の機械的強度を改善し、信頼性に優れる多層化回路基板及びその製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本願発明の請求項1に係る発明では、絶縁性基材と、その一方の面に形成された導体回路と、前記絶縁性基材の他方の面から前記導体回路に達し、側壁にレーザの入射光と反射光とを干渉させることで形成された複数段のくびれ形状を有する開口内に充填された導電性物質を含んでなるバイアホールと、該バイアホール上に形成された導電性バンプとを備える片面回路基板を積層してなる多層化回路基板であって、
1の片面回路基板の前記導電性バンプと他の片面回路基板の前記導体回路とを接触させることで片面回路基板の相互接続を行う多層化回路基板において、
前記導体回路の表層には、合金層を介して被覆層が形成され、
前記合金層は、被覆層を形成する金属の比率が25〜80%で、前記導体回路を形成する金属が残比率であることを技術的特徴とする。
【0015】
請求項1の多層化回路基板では、導体回路の表層に合金層を介して被覆層を形成することで、導体回路を、導体回路を構成する銅等の金属層と、合金層と、被覆層との3層構造にして強度を高める。これにより、多層化回路基板の機械的強度を改善し、信頼性を向上させることが可能になる。
【0016】
また、合金層及び被覆層によって、導電性バンプと接触する導体回路が完全に保護され、変質、変形を防止し得るので、導体回路の強度が低下しない。更に、導電性バンプと導体回路間で発生する局部電池溶解を防止し得る。そのために、導電性バンプ金属と接合する部分の溶解することがなくなり、窪みや空隙などが形成されない。これにより、導電性バンプと導体回路との間の接続信頼性が低下することなく確保される。
【0017】
さらに、被覆層によって、導電性バンプ金属が拡散することがなくなる。局部電池溶解などの化学的な反応が防止されることと被覆金属自体が導体層の変形を防止し得るので、導体層の伸縮運動が小さくなって、バンプ金属が流動することが無くなり、導電性バンプ間の短絡を防ぐことができる。
【0018】
合金層は、被覆層を形成する金属の比率が25〜80%で、導体回路を形成する金属が残であることが望ましい。これにより、導体回路を構成する銅等の金属層と、合金層と、被覆層との3層構造にして強度を高めることができるからである。更に望ましいのは、35〜70%である。25%未満では引張強度が低下する。また、80%を越えても同様である。35%〜70%であれば、引張強度がより向上されるからである。
【0019】
また、導体回路は、主として銅で形成され、被覆層は、Sn、Niのいずれかで形成されることが望ましい。被覆層を構成するSn、Niは、導体回路を構成する銅との間で合金層を形成し、これにより、導体回路を構成する銅等の金属層と、合金層と、被覆層との3層構造にして強度を高めることができるからである。なお、貴金属層(Au、Ag、Pd、Pt)も、導体回路を構成する銅との間で合金層を形成し、これにより、3層構造にして強度を高めることができ、また、表面の貴金属層(被覆層)がバンプ金属に対して耐食性を有するため、高い信頼性を得ることができる。
【0020】
形成方法としてはスパッタ、化学蒸着、物理蒸着、無電解めっき、置換めっきのいずれかで形成することができる。厚みは、0.01〜3μmの間で形成するのが望ましい。厚みが0.01μm未満では、導体層を完全に被覆することができないし、厚みが3μmを超えたものでは、それ以下のものと効果が変わらないからである。より望ましい厚みとしては、0.1〜2μmの間で形成されるのが良い。局所的な厚みのバラツキを生じたとしても問題が起き難く、また、形成する導体層の種類による影響を受けにくいからである。
【0021】
導電性バンプは、Pb−Sn系半田、Ag−Sn系半田、インジウム半田のいずれか1種類以上で形成されることが望ましい。これら金属を用いることで、リフローを行うことなく導電性バンプと導体回路との電気接続を実現できる。
【0022】
導体回路の導体層は、平均粗度(Ra)0.5〜5μmで形成することが望ましい。当該範囲の粗度に形成することで、導電性バンプとの接合面積が大きくなり、接合強度が増す。そのためより強固になった多層の片面回路基板を得ることができるのである。
0.5μm未満では接合面積が変わらず、5μmを越えると被覆層を形成させると厚みに関わらず、強度が増すことがない。
【0023】
なお、絶縁性基材は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、芯材入りの絶縁樹脂であることが望ましい。
【0024】
本発明にかかる多層化回路基板を構成する基本単位としての片面回路基板は、絶縁性基材として、完全に硬化した樹脂材料から形成される硬質の樹脂基材を用いることが望ましく、このような樹脂材料の採用によって、樹脂基材上に導体回路を形成するための銅箔を加熱プレスによって圧着させる際に、プレス圧による絶縁性基材の最終的な厚みの変動がなくなるので、バイアホールの位置ずれを最小限度に抑えて、バイアホールランド径を小さくできる。したがって配線ピッチを小さくして配線密度を向上させることができる。また、基材の厚みを実質的に一定に保つことができるので、後述するような充填バイアホール形成用の開口をレーザ加工によって形成する場合には、そのレーザ照射条件の設定が容易となる。
【0025】
このような絶縁性樹脂基材としては、ガラス布エポキシ樹脂基材、ガラス布ビスマレイミドトリアジン樹脂基材、ガラス布ポリフェニレンエーテル樹脂基材、アラミド不織布−エポキシ樹脂基材、アラミド不織布−ポリイミド樹脂基材から選ばれる硬質基材が使用されることが好ましく、ガラス布エポキシ樹脂基材が最も好ましい。また、液晶ポリマー、フェノキシ樹脂、ポリエーテルステホン、エポキシ樹脂、ポリイミドなどの樹脂フィルムでもよい。
【0026】
また、上記絶縁性基材の厚さは、20〜600μmが望ましい。その理由は、20μm未満の厚さでは、強度が低下して取扱いが難しくなるとともに、電気的絶縁性に対する信頼性が低くなるからであり、600μmを超えると、微細なバイアホール形成用開口が難くなると共に、基板そのものが厚くなるためである。
【0027】
上記絶縁性基材の片面に形成される導体層あるいは導体回路は、絶縁性基材上に適切な樹脂接着剤を介して銅箔を貼付すること、あるいはその銅箔をエッチング処理することによってそれぞれ形成される。
【0028】
すなわち、上記導体層は、厚さが5〜40μmの銅箔を、半硬化状態を保持された樹脂接着剤層を介して絶縁性基材上に加熱プレスすることによって形成し、また導体回路は、銅箔を加熱プレスした後、銅箔面に感光性ドライフィルムを貼付するか、液状感光性レジストを塗布した後、所定の配線パターンを有するマスクを載置し、露光・現像処理することによってめっきレジスト層を形成し、その後、エッチングレジスト非形成部分の銅箔をエッチング処理することによって形成されるのが望ましい。
【0029】
上記銅箔の絶縁性基材上への加熱プレスは、適切な温度および加圧力のもとで行なわれ、より好ましくは、減圧下もしくは真空下において行なわれ、半硬化状態の樹脂接着剤層のみを硬化することによって、銅箔を絶縁性基材に対してしっかりと接着され得るので、従来のプリプレグを用いた回路基板に比べて製造時間が短縮される。
なお、このような絶縁性基材上への銅箔の貼付に代えて、絶縁性基材上に予め銅箔が貼付された片面銅張積層板を採用し、その片面銅張積層板をエッチング処理して導体回路を形成することもできる。
【0030】
上記導体回路の各バイアホールに対応した表面には、導体回路の一部としてのランド(パッド)が、その口径が50〜250μmの範囲に形成されるのが好ましい。
上記パターン形成のためのエッチングは、硫酸−過酸化水素、過硫酸塩、塩化第二銅、塩化第二鉄の水溶液から選ばれる少なくとも1種により行われる。
【0031】
上記導体回路の配線パターン表面には粗化層が形成され、回路基板相互を接合する接着剤層との密着性を改善し、剥離(デラミネーション)の発生を防止することが好ましい。
粗化処理方法としては、例えば、ソフトエッチング処理や、黒化(酸化)一還元処理、銅−ニッケルーリンからなる針状合金めっき(荏原ユージライト製:商品名インタープレート)の形成、メック社製の商品名「メックエッチボンド」なるエッチング液による表面粗化がある。
【0032】
このような導体回路が形成された絶縁性樹脂基材の表面と反対側の表面から、導体回路に達するように形成されるバイアホール形成用開口は、パルスエネルギーが0.5〜100mJ、パルス幅が1〜100μs、パルス間隔が0.5ms以上、ショット数が3〜50の条件で照射される炭酸ガスレーザによって形成されることが好ましい。炭酸ガスレーザの入射波と反射波とを干渉させることで、開口の側壁に複数段のくびれ形状を形成することができる。さらに、炭酸ガスレーザを用いることで、表層(入射側)に裾広がりに形成することができる。
その開口径は、50〜250μmの範囲であることが望ましい。その理由は、50μm未満では開口に導電性物質を充填し難くなると共に、接続信頼性が低くなるからであり、250μmを超えると、高密度化が困難になるからである。
【0033】
このような炭酸ガスレーザによる開口形成の前に、絶縁性基材の導体回路形成面と反対側の面に樹脂フィルムを粘着させ、その樹脂フィルム上からレーザ照射を行うのが望ましい。
【0034】
この樹脂フィルムは、バイアホール形成用の開口内をデスミア処理し、そのデスミア処理した後の開口内に電解めっき処理によって金属めっきを充填する際の保護マスクとして機能し、またバイアホールの金属めっき層の直上に突起状導体(導電性バンプ)を形成するための印刷用マスクとして機能する。
【0035】
上記樹脂フィルムは、たとえば、粘着剤層の厚みが1〜20μmであり、フィルム自体の厚みが10〜50μmであるPETフィルムから形成されるのが好ましい。
その理由は、PETフィルムの厚さに依存して後述する突起状導体の高さが決まるので、10μm未満の厚さでは突起状導体が低すぎて接続不良になりやすく、逆に50μmを超えた厚さでは、接続界面で突起状導体が拡がりすぎるので、ファインパターンの形成ができないからである。
【0036】
上記バイアホール形成用開口内に導電性物質を充填してバイアホールを形成するには、めっき充填や導電性ペースト充填が望ましい。
充填工程をシンプルにして、製造コストを低減させ、歩留まりを向上させるためには、導電性ペーストの充填が適しているが、接続信頼性や膜の均一性という点ではめっき充填が望ましい。
【0037】
上記めっき充填は、電解めっき処理または無電解めっき処理のいずれによっても行うことができるが、電解めっき処理によって形成される金属めっき、たとえば、すず、銀、半田、銅/すず、銅/銀等の金属めっきが好ましく、とくに、電解銅めっきが最適である。
【0038】
電解めっき処理により充填する場合は、上記絶縁性基材の銅箔貼付面(導体回路形成面)に予め保護フィルムを粘着させた状態で、絶縁性基材に形成された銅箔をめっきリードとして電解めっきを行う。この銅箔(金属層)は、絶縁性基材の一方の表面の全域に亘って形成されているため、電流密度が均一となり、バイアホール形成用開口を電解めっきにて均一な高さで充填することができる。
ここで、電解めっき処理の前に、非貫通孔内の金属層の表面を酸などで活性化処理しておくとよい。
【0039】
また、電解めっきした後、開口縁から盛り上がった電解めっき(金属)を、ベルトサンダー研磨やバフ研磨等により除去して、平坦化することが望ましい。
【0040】
さらに、めっき処理による導電性物質の充填の代わりに、導電性ペーストを充填する方法、あるいは電解めっき処理又は無電解めっき処理によって開口の一部を充填し、残存部分に導電ペーストを充填して行うこともできる。
上記導電性ペーストとしては、銅、スズ、金、銀、ニッケル、各種半田から選ばれる少なくとも1種以上の金属粒子からなる導電性ペーストを使用できる。
【0041】
また、上記金属粒子としては、金属粒子の表面に異種金属をコーティングしたものも使用できる。具体的には銅粒子の表面に金、銀から選ばれる貴金属を被覆した金属粒子を使用することができる。
なお、導電性ペーストとしては、金属粒子に、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂を加えた有機系導電性ペーストが望ましい。
【0042】
上記レーザ加工によって形成された開口は、その孔径が20〜150μmの微細径であり、更に側壁に多段式のくびれ部が形成されているため、導電ペーストを充填する場合には、気泡が残り易いので、電解めっきによる充填が実用的である。
【0043】
上述した片面回路基板に形成されるバイアホールは、その配置密度が、LSIチップ等を搭載すべく最も外側に積層された片面回路基板については最も大きく、マザーボードに接続されるべく最も外側の他の片面回路基板については最も小さくなるように形成される、すなわち、積層される各回路基板に形成されるバイアホール間の距離は、LSIチップ等を搭載する側の回路基板からマザーボードに接続される側の回路基板に向かうにつれて大きくなるように形成されることが好ましく、このような構成によれば、配線の引き回し性が向上する。
【0044】
本発明による多層化回路基板を製造する上で、積層される基本単位となる片面回路基板には、バイアホール上に突起状導体、すなわち導電性バンプを設けて、他の片面回路基板との電気的接続を確保するように構成することが望ましい。
この導電性バンプは、レーザ照射によって形成された保護フィルムの開口内に、めっき充填または導電性ペーストを充填することによって形成されることが望ましい。
【0045】
上記めっき充填は、電解めっき処理または無電解めっき処理のいずれによっても行うことができるが、電解めっき処理が望ましい。
電解めっきとしては、銅、金、ニッケル、スズ、各種半田等の低融点金属を使用できるが、スズめっき又は半田めっきを用いることもできる。
【0046】
上記導電性バンプの高さとしては、3〜60μmの範囲が望ましい。この理由は、3μm未満では、バンプの変形により、バンプの高さのばらつきを許容することができず、また、60μmを越えると抵抗値が高くなる上、バンプを形成した際に横方向に拡がってショートの原因となるからである。
【0047】
上記導電性バンプを導電性ペーストの充填によって形成する場合には、バイアホールを形成する電解めっきの高さのばらつきは、充填される導電性ペースト量を調整することにより是正され、多数の導電性バンプの高さを揃えることができる。
【0048】
この導電性ペーストからなるバンプは、半硬化状態であることが望ましい。導電性ペーストは、半硬化状態でも硬く、熱プレス時に軟化した有機接着剤層を貫通させることができるからである。また、熱プレス時に変形して接触面積が増大し、導通抵抗を低くすることができるだけでなく、バンプの高さのばらつきを是正することができるからである。
【0049】
この他に、例えば、導電性ペーストを所定位置に開口の設けられたメタルマスクを用いてスクリーン印刷する方法、低融点金属である半田ペーストを印刷する方法の他、半田溶融液に浸漬する方法によって導電性バンプを形成することができる。
上記低融点金属としては、Pb−Sn系半田、Ag−Sn系半田、インジウム半田、スズ等を使用することができる。
【0050】
本発明にかかる多層化回路基板は、上述したような、絶縁性基材の片面に導体回路が形成されてなる片面回路基板の複数枚が、所定の方向に積層されてなり、それらの片面回路基板のうちのいずれか一の片面回路基板の導電性バンプ側の表面に対して、一面がマット処理されてなる銅箔が、そのマット面を対向させた状態で圧着され、かつエッチング処理によって所定の配線パターンを有する導体回路に形成されている。
【0051】
上記銅箔のマット面は、それ自体公知であるエッチング処理や、無電解めっき処理、酸化還元処理等によって形成することが望ましく、特に、エッチング処理によって形成することが望ましい。
【0052】
上記エッチング処理としては、硫化第二銅、塩化第二鉄、過硫酸塩類、過酸化水素/硫酸、第二銅錯体と有機酸塩、アルカリエッチングがあり、
上記無電解めっき処理としては、Cu、Ni、Zn、貴金属などの金属もしくはそれら合金からなる電解めっきがあり、
酸化還元無電解めっき処理もがある。
【0053】
上記マット処理された銅箔と絶縁性樹脂基材との間の密着性は、樹脂粘度や、銅箔の厚さ、加熱プレス圧等によっても異なるが、絶縁性樹脂基材が硬質の樹脂基材であり、銅箔の厚さが、3〜40μmの範囲である場合には、銅箔のマット面の粗面度は、0.1〜10の範囲であり、加熱プレス圧は、1Mpa〜10Mpaの範囲であり、その結果としてのピール強度は、0.5〜2.0Kg/cmの範囲であることが望ましい。
【0054】
上記銅箔のマット面は、▲1▼積層された複数の片面回路基板のうちの最も外側に位置する片面回路基板の導電性バンプ側の面に対して対向した状態で圧着され、または、▲2▼積層された複数の片面回路基板のうちの、より内側に位置する片面回路基板の導電性バンプ側の面に対して対向した状態で圧着されても良く、そのように圧着された後に、エッチング処理によって所定の配線パターンを有する導体回路に形成される。
【0055】
上記銅箔のマット面は、片面回路基板の導電性バンプ側の面だけでなく、その面から突出する導電性バンプに対しても圧着されるので、その銅箔をエッチング処理して形成される導体回路と導電性バンプ側の面との間およびその導体回路と導電性バンプとの間の接合性が向上する。
【0056】
特に、上記▲1▼の場合には、同一方向に積層された複数の片面回路基板と銅箔とを一回の加熱プレスによって一体化することができ、その後に、銅箔をエッチング処理してなる導体回路は、半田バンプ等の半田体を実装するための導体パッドを少なくとも有する所望の配線パターンに形成することができる。
【0057】
一般的に、片面回路基板を同一方向に多層に積層する場合には、めっき液や洗浄液などに浸漬した後、乾燥やアニールなどの加熱工程を繰り返すため、金属層である導体回路が存在しない部分に加わる応力が緩衝されないために、基板自体が反ってしまい、そのために、導体回路の破断、断線、バイアホール部分での接続不良や充填金属の剥離などが発生してしまい、電気接続性と信頼性に低下を引き起こしてしまうことがある。
【0058】
しかしながら、本願発明のように、同一方向に積層された複数の片面回路基板の導電性バンプ側の面に、マット面を有する銅箔を積層し、その積層体を一回の加熱プレスによって一体化した後に、その圧着した銅箔をエッチング処理して導体回路を形成した場合には、その積層方向への強度が増して、応力が緩衝される。
【0059】
したがって、基板の導電性バンプ側の面に対する導体回路のピール強度やプル強度が十分に確保されるので、加熱プレスによるバイアホールに対する導体パッドの位置ずれを防止することができる。また、半田バンプ等の半田体やICチップ等の電子部品の導体パッド上への実装時もしくは実装後の強度も十分に確保され、しかも実装の許容範囲が広がるので確実な電気的接続を行うことができる。
【0060】
また、上記▲2▼の場合には、同一方向に積層された複数の片面回路基板と銅箔とを上記▲1▼の場合と同様に加熱プレスによって一体化した後に、銅箔をエッチング処理して導体回路を形成し、その導体回路形成面に対して、上記方向とは反対方向に他の複数の片面回路基板を積層して加熱プレスによって一体化される。
【0061】
この場合には、より内側に位置する片面回路基板の導電性バンプ側の面に対して銅箔のマット面が圧着され、その銅箔をエッチング処理して形成した導体回路は、それに対して積層される他の片面回路基板の導電性バンプに接合されるべき導体パッドを少なくとも有する所望の配線パターンに形成することができる。
【0062】
したがって、上記▲1▼の場合と同様に、基板の導電性バンプ側の面に対する導体回路のピール強度やプル強度が十分に確保され、加熱プレスによるバイアホールに対する導体パッドの位置ずれを防止することができる。
【0063】
また、この場合には、加熱プレスを2回行う必要があるので、正確なスケールファクターを必要とするが、上記▲1▼の場合に比して、高いピール強度やプル強度を得ることができる。
【0064】
上記導体回路を形成する銅箔のマット面に対して、スズ、亜鉛、ニッケル、チタン、クロム、リンから選ばれる少なくとも1種類の保護膜または金や白金等の貴金属からなる保護膜を被覆形成することが好ましい実施の形態である。
【0065】
このような保護膜の膜厚は、0.01〜3μmの範囲が望ましい。その理由は、0.01μm未満では、マット面の微細な凹凸を完全に被覆できないことがあり、3μmを越えると、形成したマット面の凹部に保護膜が充填されて、マット処理効果が相殺されてしまうことがあるからである。特に好ましい膜厚は、0.03〜1μmの範囲である。また、粗化層を設けることも望ましい。
【0066】
上記保護膜のうち、スズ、亜鉛からなる保護膜は、無電解置換めっきによって析出する薄膜層として形成でき、マット面との密着性にも優れることから、最も有利に適用することができる。
【0067】
このような含スズめっき膜を形成するための無電解めっき浴は、ほうふっ化スズ−チオ尿素液または塩化スズ−チオ尿素液を使用し、そのめっき処理条件は、20℃前後の室温において約5分とし、40℃〜60℃程度の高温において約1分とすることが望ましい。
【0068】
このような無電解めっき処理によれば、銅パターンの表面にチオ尿素の金属錯体形成に基づく銅−スズ置換反応が起き、スズ薄膜層が形成される。銅-スズ置換反応であるため、凹凸形状を破壊することなくマット面を被覆できる。
【0069】
また、スズ等の金属に代えて使用することができる貴金属は、金あるいは白金であることが望ましい。これらの貴金属は、銀などに比べて粗化処理液である酸や酸化剤に冒されにくく、またマット面を容易に被覆できるからである。ただし、貴金属は、コストが嵩むために、高付加価値製品にのみ使用されることが多い。このような金や白金の被膜は、スパッタ、電解あるいは無電解めっきにより形成することができる。
【0070】
このような被覆層を設けることによって、マット面の濡れ性が均一となり、バイアホールに対応して形成された導電性バンプとの接合性が向上させるだけでなく、樹脂絶縁層を構成する芯材に含浸されている樹脂との接合性も向上させることができるため、電気的接続性と接続信頼性が大幅に改善される。
【0071】
上記積層・加熱プレスにより形成された多層化回路基板は、最も外側の回路基板、すなわち、最上層および最下層に位置する回路基板の表面を覆ってソルダーレジスト層を設けることができる。
【0072】
そのソルダーレジスト層は、主として熱硬化性樹脂や感光性樹脂から形成され、回路基板上のバイアホール位置に対応した個所に開口が形成され、その開口から露出する導体回路(導体パッド)上に半田バンプや、半田ボール、T形の導電性ピン等の半田体が形成される。
【0073】
たとえば、最も外側に位置する回路基板のうち、LSI等の半導体素子が実装される側にある最上層の回路基板については、導体パッド上にスズ/銀やスズ/鉛のような導電性ペーストを印刷することによって半田バンプを形成し、その後、リフロー処理することによって固定される。
【0074】
また、最も外側に位置する回路基板のうち、マザーボードに接続される側にある最下層にある他の回路基板については、バイアホールの直上に位置して、たとえば、42アロイやリン青銅等の金属材料から形成されたT形の導電性ピンや、たとえば、金、銀、半田等の金属材料から形成された導電性ボールを設けることができる。
【0075】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の実施形態に係る片面回路基板を積層してなる多層化回路基板の構成について図1及び図2を参照して説明する。
図1は、パッケージ基板を構成する多層化回路基板100の構成を示し、図2は該多層化回路基板100にICチップ70を取り付けた状態を示している。
【0076】
多層化回路基板100は、5層の片面回路基板A、片面回路基板B1、B2、B3、B4、B5を積層して成る。最上層の片面回路基板Aの上面には、導体回路36が形成されており、該導体回路36上にICチップ接続用の半田バンプ56が配置されている。また、該導体回路36下に、絶縁性基材10を貫通する開口16にバイアホール18が形成されている。バイアホール18の下端には、下層の片面回路基板B1の導体回路28と接続するための半田バンプ24が配置されている。該片面回路基板Aと、下層の片面回路基板B1とは、接着剤層26を介して接続されている。最下層の片面回路基板B4の半田バンプ24には、導体回路38が接続され、該導体回路38には、導電性接続ピン60が取り付けられている。なお、片面回路基板Aの上面には、ソルダーレジスト層40が被覆され、片面回路基板B4の下面には、ソルダーレジスト層42が被覆されている。
【0077】
本実施形態では、片面回路基板A、片面回路基板B1、B2、B3、B4のバイアホール18の側壁に複数段のくびれ部18aが設けられる。これにより、絶縁性基材10と導電性物質からなるバイアホール18との接触面積が増えるので、密着性が向上する。本実施形態では、バイアホール18の表層側に裾広がりとなった裾広がり部18aが形成されている。このため、バイアホール18と半田バンプ24との接触面積と増やすことで、異種金属であるバイアホール18と導電性バンプ24との接触抵抗を低減することができる。
【0078】
各片面回路基板A、片面回路基板B1、B2、B3、B4は、1の片面回路基板に設けられた半田バンプ24と、他方の片面回路基板の導体回路28とを接触させることで電気接続が取られている。ここで、図1中にサークルCで囲んだ、半田バンプ24と接触する導体回路28の表面を図9(A)に示す。導体回路28は、主として銅からなり、銅−スズ合金層27を介してスズ薄膜層(被覆層)29が設けられている。スズ薄膜層(被覆層)29の厚みは、0.1〜1μmが望ましく、また、銅−スズ合金層27の厚みは、0.01〜0.1μmが望ましい。0.01μm未満では、強度向上が望めないのに対し、0.1μmを越えても、厚みに対する強度向上率が低下するためである。
【0079】
導体回路28の表層に銅−スズ合金層27を介してスズ薄膜層(被覆層)29を形成することで、導体回路28を、導体回路を構成する銅等の金属層と、銅−スズ合金層27と、スズ薄膜層(被覆層)29との3層構造にして強度を高める。これにより、多層化回路基板の機械的強度を改善し、信頼性を向上させることが可能になる。
【0080】
また、スズ薄膜層29によって、半田バンプ24と接触する導体回路28が完全に保護され、変質、変形を防止し得るので、導体回路28の強度が低下することがない。更に、半田バンプ24と導体回路28間で発生する局部電池溶解を防止し得る。そのために、半田バンプ(半田)と接合する部分の溶解することがなくなり、導体回路28に窪みや空隙などが形成されない。これにより、半田バンプ24と導体回路28との間の接続信頼性が低下することなく確保される。
【0081】
さらに、スズ薄膜層29によって、半田バンプ(半田)が拡散することがなくなる。局部電池溶解などの化学的な反応が防止されることと被覆金属(スズ薄膜層29)自体が導体回路の変形を防止し得るので、導体回路の伸縮運動が小さくなって、半田バンプ(半田)が流動することが無くなり、半田バンプ24間の短絡を防ぐことができる。
【0082】
銅−スズ合金層27は、被覆層(スズ薄膜層29)を形成する金属(スズ)の比率が35〜70%で、導体回路28を形成する金属(銅)が残り65%〜30%であることが望ましい。これにより、導体回路28を構成する銅等の金属層と、銅−スズ合金層27と、被覆層(スズ薄膜層29)との3層構造にして強度を高めることができるからである。
【0083】
なお、導体回路28は、主として銅で形成され、被覆層29は、Sn、Niのいずれかで形成されることが望ましい。被覆層29を構成するSn、Niは、導体回路28を構成する銅との間で合金層(銅−スズ合金層、銅−ニッケル合金層)を形成し、これにより、導体回路を構成する銅等の金属層と、合金層と、被覆層との3層構造にして強度を高めることができるからである。なお、貴金属層(Au、Ag、Pd、Pt)も、導体回路を構成する銅との間で合金層を形成し、これにより、3層構造にして強度を高めることができ、また、表面の貴金属層(被覆層)がバンプ金属に対して耐食性を有するため、高い信頼性を得ることができる。
【0084】
導体回路28の表面は、平均粗度(Ra)0.5〜5μmで形成されている。当該範囲の粗度に形成することで、半田バンプ24との接合面積が大きくなり、接合強度が増す。そのためより強固になった多層化回路基板を得ることができる。
【0085】
以下、本発明にかかる多層化回路基板を製造する方法の一例について、添付図面を参照にして具体的に説明する。
(1) 本発明にかかる多層化回路基板を製造するに当たって、それを構成する基本単位としての片面回路基板は、絶縁性基材10の片面に銅箔12が貼付けられたものを出発材料として用いる(図3(A)参照)。
【0086】
この絶縁性基材10は、たとえば、ガラス布エポキシ樹脂基材、ガラス布ビスマレイミドトリアジン樹脂基材、ガラス布ポリフェニレンエーテル樹脂基材、アラミド不織布−エポキシ樹脂基材、アラミド不織布−ポリイミド樹脂基材から選ばれる硬質な積層基材が使用され得るが、ガラス布エポキシ樹脂基材が最も好ましい。
【0087】
上記絶縁性基材10の厚さは、20〜600μmが望ましい。その理由は、20μm未満の厚さでは、強度が低下して取扱が難しくなるとともに、電気的絶縁性に対する信頼性が低くなり、600μmを超える厚さでは微細なバイアホールの形成および導電性ペーストの充填が難しくなるとともに、基板そのものが厚くなるためである。
【0088】
また銅箔12の厚さは、5〜18μmが望ましい。その理由は、後述するようなレーザ加工を用いて、絶縁性基材にバイアホール形成用の開口を形成する際に、薄すぎると貫通してしまうからであり、逆に厚すぎるとエッチングにより、微細な線幅の導体回路パターンを形成し難いからである。
【0089】
上記絶縁性基材10および銅箔12としては、特に、エポキシ樹脂をガラスクロスに含潰させてBステージとしたプリプレグと、銅箔とを積層して加熱プレスすることにより得られる片面銅張積層板を用いることが好ましい。その理由は、銅箔12がエッチングされた後の取扱中に、配線パターンやバイアホールの位置がずれることがなく、位置精度に優れるからである。
【0090】
(2) 次に、絶縁性基材10の銅箔12が貼付けられた表面と反対側の表面に、透明な保護フィルム14を貼付ける(図3(B))。
この保護フィルム14は、粘着剤層の厚みが1〜20μm、フィルム自体の厚みが10〜50μmであるようなポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが使用される。
【0091】
(3) 次いで、絶縁性基材10上に貼付けられたPETフィルム14上から炭酸ガスレーザ照射を行って、PETフィルム14を貫通して、絶縁性基材10の表面から銅箔12(あるいは導体回路パターン)に達する開口16を形成する(図3(C)参照)。
【0092】
このレーザ加工は、パルス発振型炭酸ガスレーザ加工装置によって行われ、その加工条件は、パルスエネルギーが0.5〜100mJ、パルス幅が1〜100μs、パルス間隔が0.5ms以上、ショット数が3〜50の範囲内であることが望ましい。このような加工条件のもとで形成され得るバイアホール形成用開口16の口径は、50〜250μmであることが望ましい。ここで、炭酸ガスレーザの入射波と反射波とを干渉させることで、開口16の側壁にくびれ部16bを形成する。また、炭酸ガスレーザの入射波により、表面側に裾広がり部16aを形成する。これにより、図1を参照して上述したバイアホール18のくびれ部18b及び裾広がり部18aを形成できるようにする。
なお、上記保護フィルム14は、後述するような半田バンプを導電性ペーストの印刷によって形成する場合には、その印刷用マスクとして使用され得る。
【0093】
(4) 前記(3)の工程で形成された開口16の側面および底面に残留する樹脂残滓を除去するために、デスミア処理を行う。
このデスミア処理は、酸素プラズマ放電処理、コロナ放電処理、紫外線レーザ処理またはエキシマレーザ処理等の乾式処理によって行われることが望ましい。
【0094】
(5) 次に、デスミア処理した基板の銅箔面に対して、めっき保護フィルムとしてのPETフィルム15を貼付する(図3(D))。その後、銅箔12をめっきリードとする電解銅めっき処理を施して、開口16内に電解銅めっき17を充填して、充填バイアホール18を形成する(図4(A)参照)。この際に、開口16の側壁にくびれ部16bに対応するくびれ部18aを、また、開口16の裾広がり部16aに対応する裾広がり部18aを形成する。
なお、電解銅めっき処理の後、基板に貼付したPETフィルム14を剥離させ、開口16の上部に盛り上がった電解銅めっき17を、ベルトサンダー研磨やバフ研磨等によって除去して平坦化してもよい(図4(B))。
【0095】
(6) 上記(5)の電解銅めっき処理を施した後、銅めっき17をめっきリードとする電解半田(Sn/Pb)めっき処理を施して、電解半田めっきからなる突起状導体、すなわち、半田バンプ24を電解銅めっき表面から僅かに突出するように形成する(図4(C)参照)。
【0096】
(7) 次いで、絶縁性基材10の半田バンプ24を含んだ表面に樹脂接着剤を塗布して接着剤層26を形成した後、絶縁性基材10の銅箔12上に貼付したPETフィルム15を剥離させる(図4(D)参照)。
【0097】
このような樹脂接着剤は、例えば、絶縁性基材10の半田バンプ24を含んだ表面全体または半田バンプ24を含まない表面に塗布され、乾燥化された状態の未硬化樹脂からなる接着剤層として形成される。この接着剤層は、取扱が容易になるため、プレキュアしておくことが好ましく、その厚さは、5〜50μmの範囲が望ましい。
【0098】
前記接着剤層26は、有機系接着剤からなることが望ましく、有機系接着剤としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、熱硬化型ポリフェノレンエーテル(PPE)、エポキシ樹脂と熱可塑性樹脂との複合樹脂、エポキシ樹脂とシリコーン掛脂との複合樹脂、BTレジンから選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが望ましい。
有機系接着剤である未硬化樹脂の塗布方法は、カーテンコータ、スピンコータ、ロールコータ、スプレーコート、スクリーン印刷などを使用できる。また、接着剤層の形成は、接着剤シートをラミネートすることによってもできる。
【0099】
上記(1)〜(7)の工程にしたがって作製された片面回路基板Aは、絶縁性基材10の一方の表面に導体層としての銅箔12を有し、他方の表面から銅箔に達する開口に充填バイアホール18を有するとともに、その充填バイアホール上に半田めっきからなる半田バンプ24を有し、さらに半田バンプ24を含んだ絶縁性基材10の表面に接着剤層26を有して形成され、本実施形態に係る多層化回路基板を作製する際に、最上層に位置して積層される回路基板となる。
【0100】
次に、上記片面回路基板Aの下層に積層される他の片面回路基板Bを作製する。
(8) まず、上記(1)〜(6)の工程と同様に処理した後(図5(A)〜(G)参照)、絶縁性基材10の半田バンプ24形成面に、エッチング保護フィルム25を貼付け(図6(A))、銅箔12を所定の回路パターンのマスクで披覆した後、エッチング処理を施して、導体回路28(バイアホールランドを含む)を形成する(図6(B)参照)。
【0101】
この処理工程においては、先ず、銅箔12の表面に感光性ドライフィルムレジストを貼付した後、所定の回路パターンに沿って露光、現像処理してエッチングレジストを形成し、エッチングレジスト非形成部分の金属層をエッチングして、バイアホールランドを含んだ導体回路パターン28を形成する。
このエッチング液としては、硫酸一過酸化水素、過硫酸塩、塩化第二銅、塩化第二鉄の水溶液から選ばれる少なくとも1種の水溶液が望ましい。
【0102】
上記銅箔12をエッチングして導体回路28を形成する前処理として、ファインパターンを形成しやすくするため、あらかじめ、銅箔の表面全面をエッチングして厚さを1〜10μm、より好ましくは2〜8μm程度まで薄くしてもよい。
導体回路の一部としてのバイアホールランドは、その内径がバイアホール口径とほぼ同様であるが、その外径は、50〜250μmの範囲に形成されることが好ましい。
【0103】
(9) 上記(8)で形成した導体回路28の表面に対して、無電解めっき処理によって、銅−スズ合金層27及びスズ薄膜層29を形成する(図6(C))。図6(C)中のサークルC部分を拡大して図9(B)に示す。
このような含スズめっき膜を形成するための無電解めっき浴は、ほうふっ化スズ−チオ尿素液または塩化スズ−チオ尿素液を使用し、そのめっき処理条件は、20℃前後の室温において約5分とし、50℃〜60℃程度の高温において約1分とすることが望ましい。
【0104】
このような無電解めっき処理によれば、銅パターンの表面にチオ尿素の金属錯体形成に基づく銅−スズ置換反応が起き、厚さ0.01〜1μmのスズ薄膜層が形成される。
【0105】
スズ薄膜層29の形成方法としては置換めっき以外にも、スパッタ、化学蒸着、物理蒸着、無電解めっきのいずれかで形成することができる。厚みは、0.01〜3μmの間で形成するのが望ましい。厚みが0.01μm未満では、導体層を完全に被覆することができないし、厚みが3μmを超えたものでは、それ以下のものと効果が変わらないからである。より望ましい厚みとしては、0.1〜2μmの間で形成されることが望ましい。局所的な厚みのバラツキを生じたとしても問題が起き難く、また、形成する導体層の種類による影響を受けにくいからである。
また、スズ層に代えて、ニッケル、更には、亜鉛、リンから選ばれる少なくとも1種類からなる保護膜または金や白金等の貴金属からなる保護膜で被覆するのができる。
【0106】
なお、上記(7)の工程で形成した導体回路28の表面に対して必要に応じて粗化処理を施し、その粗化層上に上記(8)の工程で形成したスズ層を形成することもできる。
導体回路の導体層は、平均粗度(Ra)0.5〜5μmで形成することが望ましい。当該範囲の粗度に形成することで、半田バンプ24との接合面積が大きくなり、接合強度が増す。そのためより強固になった多層化回路基板を得ることができる。
0.5μm未満では接合面積が変わらないであり、5μmを越えると被覆層を形成させると厚みに関わらず、強度が増すことがない。
【0107】
上記粗化処理は、多層化する際に、接着剤層との密着性を改善し、剥離(デラミネーション)を防止するためである。
粗化処理方法としては、例えば、ソフトエッチング処理や、黒化(酸化)一還元処理、銅−ニッケルーリンからなる針状合金めっき(荏原ユージライト製:商品名インタープレート)の形成、メック社製の商品名「メックエッチボンド」なるエッチング液による表面粗化がある。
【0108】
上記粗化層の形成は、エッチング液を用いて形成されるのが好ましく、たとえば、導体回路の表面を第二銅錯体と有機酸の混合水溶液からエッチング液を用いてエッチング処理することによって形成することができる。かかるエッチング液は、スプレーやバブリングなどの酸素共存条件下で、銅導体回路パターンを溶解させることができ、反応は、次のように進行するものと推定される。
Cu+Cu(II)An →2Cu(I)An/2
2Cu(I)An/2 +n/4O2 +nAH (エアレーション)
→2Cu(II)An +n/2H2
式中、Aは錯化剤(キレート剤として作用)、nは配位数を示す。
【0109】
上式に示されるように、発生した第一銅錯体は、酸の作用で溶解し、酸素と結合して第二銅錯体となって、再び銅の酸化に寄与する。本発明において使用される第二銅錯体は、アゾール類の第二銅錯体がよい。この有機酸−第二銅錯体からなるエッチング液は、アゾール類の第二銅錯体および有機酸(必要に応じてハロゲンイオン)を、水に溶解して調製することができる。
このようなエッチング液は、たとえば、イミダゾール銅(II)錯体 10重量部、グリコール酸 7重量部、塩化カリウム 5重量部を混合した水溶液から形成される。
【0110】
(10) 次いで、半田バンプ24を含んだ絶縁性基材10の表面から保護フィルム25を剥離させた後、その絶縁性基材10の表面に樹脂接着剤26を塗布する(図6(D)参照)。
【0111】
このような樹脂接着剤は、例えば、絶縁性基材10の半田バンプ24を含んだ表面全体または半田バンプ24を含まない表面に塗布され、乾燥化された状態の未硬化樹脂からなる接着剤層として形成される。この接着剤層は、取扱が容易になるため、プレキュアしておくことが好ましく、その厚さは、5〜50μmの範囲が望ましい。
【0112】
前記接着剤層26は、有機系接着剤からなることが望ましく、有機系接着剤としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、熱硬化型ポリフェノレンエーテル(PPE)、エポキシ樹脂と熱可塑性樹脂との複合樹脂、エポキシ樹脂とシリコーン掛脂との複合樹脂、BTレジンから選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが望ましい。
有機系接着剤である未硬化樹脂の塗布方法は、カーテンコータ、スピンコータ、ロールコータ、スプレーコート、スクリーン印刷などを使用できる。また、接着剤層の形成は、接着剤シートをラミネートすることによってもできる。
【0113】
上記(8)〜(10)の工程にしたがって作製された片面回路基板B1は、絶縁性基材10の一方の表面に導体回路を有し、他方の表面には半田めっきからなる半田バンプ24を有し、さらに半田バンプ24を含んだ絶縁性基材10の表面に接着剤層26を有して形成される。
【0114】
(11) 上記片面回路基板Bの複数枚、例えばB1、B2、B3、B4の4枚を上記片面回路基板Aの半田バンプ側の表面に対して同一方向に積層すると共に、最下層に位置する片面回路基板B4の半田バンプ側の表面に対して、表面粗さが μmのマット面を有する厚さが5〜18μmの銅箔30を、そのマット面を対向させた状態で積層し(図7(A))、加熱温度80〜200℃、加圧力1〜20Paの条件のもとで、一回の加熱プレスによって、片面回路基板Aと、複数枚の片面回路基板B1、B2、B3、B4と、銅箔30とを一体化する(図7(B))。
この場合には、最下層に位置する片面回路基板B4の半田バンプ側の表面には、接着剤層26に代えて、半硬化状態を保持された他の樹脂接着剤層32が形成され、この樹脂接着剤層32を介して銅箔30が加熱プレスされることが望ましい。なお、銅箔30には、スズ薄膜層が設けられているのが望ましい。
【0115】
このような加熱プレスは、適切な温度および加圧力のもとで行なわれ、より好ましくは、減圧下において行なわれ、未硬化状態の樹脂接着剤層26および樹脂接着剤層32を硬化することによって、片面回路基板Aと片面回路基板Bとの間が接着されると共に、最下層の片面回路基板B1、B2、B3、B4と銅箔30とが接着される。
その際、銅箔30は硬化した接着剤層32を介して片面回路基板B4の絶縁性基材10に接着されると共に、銅箔30と半田バンプ24とが電気的に接続される。
【0116】
(12) 上記(11)において一体化された回路基板の最上層の銅箔12と最下層の銅箔30を、エッチング処理することによって、多層化回路基板の上層および下層に導体回路36および導体回路38(共にバイアホールランドを含む)を形成する(図7(C)参照)。
【0117】
この処理工程においては、先ず、銅箔12および銅箔30の表面に感光性ドライフィルムレジストを貼付した後、所定の回路パターンに沿って露光、現像処理してエッチングレジストを形成し、エッチングレジスト非形成部分の金属層をエッチングして、バイアホールランドを含んだ導体回路36および導体回路38を形成する。
【0118】
(13) 次に、最も外側の回路基板AおよびB4の表面にソルダーレジスト層40および42をそれぞれ形成する(図8(A))。この場合、回路基板AおよびB4の外表面全体にソルダーレジスト組成物を塗布し、その塗膜を乾燥した後、この塗膜に、開口部を描画したフォトマスクフィルムを載置して露光、現像処理することにより、導体回路36および38のうち、バイアホール直上の半田パッド部分を露出させた開口44および46をそれぞれ形成する。
【0119】
(14) 上記(12)の処理で得られたソルダーレジスト層40および42の開口44および46からバイアホール直上に露出した半田パッド部分に、導電性バンプ、導電性ボールあるいは導電性ピンを配設する前に、各半田パッド部上に「ニッケル−金」からなる金属層を形成する(図8(B))。
このニッケル層52の厚みは1〜7μmが望ましく、金層54の厚みは0.01〜0.06μmが望ましい。この理由は、ニッケル層52は、厚すぎると抵抗値の増大を招き、薄すぎると剥離しやすいからである。一方金層54は、厚すぎるとコスト増になり、薄すぎると半田体との密着効果が低下するからである。
【0120】
(15) 上記半田パッド部上に設けたニッケル−金からなる金属層上に、半田体を供給し、この半田体の溶融・固化によって導電性バンプ56を形成し、あるいは導電性ボールまたは導電性ピン60を半田パッド部に半田体58を介して接合して、多層化回路基板100が形成される(図1)。
上記半田体の供給方法としては、半田転写法や印刷法を用いることができる。
【0121】
ここで、半田転写法は、プリプレグに半田箔を貼合し、この半田箔を開口部分に相当する箇所のみを残してエッチングすることにより、半田パターンを形成して半田キャリアフィルムとし、この半田キャリアフィルムを、基板のソルダーレジスト開口部分にフラックスを塗布した後、半田パターンがパッドに接触するように積層し、これを加熱して転写する方法である。
【0122】
一方、印刷法は、パッドに相当する箇所に開口を設けた印刷マスク(メタルマスク) を基板に載置し、半田ペーストを印刷して加熱処理する方法である。半田としては、スズ−銀、スズ−インジウム、スズ−亜鉛、スズ−ビスマスなどが使用できる。
【0123】
すなわち、ソルダーレジスト層40、42の開口44、46から露出するそれぞれの半田パッド上に適切な半田体を供給して導電性バンプ56を形成したり、導電性ボールまたは導電性接続ピンを接続するように構成する。
【0124】
なお、導電性バンプ56を形成する半田材料としては、融点が比較的に低いスズ/鉛半田(融点183℃)やスズ/銀半田(融点220℃)を用い、導電性ボールや導電性接続ピン60を接続する半田材料としては、融点が230℃〜270℃と比較的融点の高いスズ/アンチモン半田、スズ/銀半田、スズ/銀/銅半田を用いることが好ましい。
【0125】
その後、図2に示すように、導電性バンプ56へパッド72が対応するようにICチップ70を載置し、リフローを行うことでICチップ70を実装する。
【0126】
上記(1)〜(15)の工程にしたがう実施形態によれば、本発明にかかる多層化回路基板100は、片面回路基板Aと複数枚の片面回路基板B1、B2、B3、B4とを同一方向に積層すると共に、最下層に位置する片面回路基板B4の半田バンプ側の表面に対して、マット処理された面を有する銅箔30を、そのマット面を対向配置させた状態で配置させて、1回の加熱プレスによって、片面回路基板同士を接着すると共に銅箔30を最下層の片面回路基板B4に圧着して多層化した後、最上層の片面回路基板Aおよび最下層の片面回路基板B4にそれぞれ導体回路36および38を形成した。このような実施形態の他に、以下の▲1▼〜▲4▼に記載したような改変例を採用することもできる。
【0127】
▲1▼ 第1改変例
同一材料で形成された5枚の片面回路基板B1〜B5を、同一方向に向けて順次積層すると共に、最下層に位置する片面回路基板B5の半田バンプ側の表面に対して、マット面を有する銅箔30を対向配置させた状態で(図10(A))、1回の真空加熱プレスにより片面回路基板同士を接着すると共に銅箔30を最下層の片面回路基板B5に圧着して多層化する。そのような多層化の後、最上層の片面回路基板B1にエッチング保護フィルムを貼付した状態で、エッチング処理を施して、最下層の片面回路基板B5に圧着された銅箔30を選択的にエッチングして所定パターンを有する導体回路38を形成する(図10(B))。
【0128】
▲2▼ 第2改変例
図11(A)示すように、片面回路基板Aの半田バンプ側の表面に塗布すべき接着剤層26に代えて、銅箔接着用の樹脂接着剤32を塗布し、半硬化状態を保持した片面回路基板に対して、マット面を有する銅箔30を対向配置させる。その後、加熱プレスによって、片面回路基板Aに銅箔30を圧着する(図11(B)参照)。最後に、エッチング処理を施して、片面回路基板Aの表裏両面にそれぞれ所定パターンを有する導体回路62および64を形成して、導体回路62,64の表面にスズ薄膜層29を被覆し、両面回路基板Cを形成する(図11(C)参照)。その後、4枚の片面回路基板B1〜B4を、同一方向に向けて順次積層すると共に、最下層に位置する片面回路基板B4の半田バンプ24側の表面に対して、両面回路基板Cをそのマット面を外側に向けた状態で配置し(図11(D))、真空加熱プレスによって4枚の片面回路基板B1〜B4と1枚の両面回路基板Cとを一体化する(図11(E))。
【0129】
▲3▼ 第3改変例
片面回路基板Bの半田バンプ側の表面に対して、マット面を有する銅箔30を対向配置させる(図12(A))。銅箔30には、予めスズ薄膜層を設けるのが望ましい。そして、加熱プレスによって、片面回路基板Bに銅箔30を圧着する(図12(B))。最後に、片面回路基板Bの導体回路形成面にエッチング保護フィルムを貼付した状態で、エッチング処理を施して、片面回路基板Bの裏面に所定パターンを有する導体回路64を形成して、両面回路基板Cを形成する(図12(C))。その後、4枚の片面回路基板B1〜B4を、同一方向に向けて順次積層すると共に、最下層の片面回路基板B4の半田バンプ24側の表面に対して、両面回路基板Cをそのマット面を外側に向けた状態で積層し(図12(D))、真空加熱プレスによって、4枚の片面回路基板B1〜B4と両面回路基板Cとを一体化する(図12(E))。
【0130】
▲4▼ 第4改変例
上記▲2▼の実施形態と同様な方法で、両面回路基板Cを形成する(図13(A))。その後、図13(B)に示すように、両面回路基板Cの表裏面の導体回路62および64のそれぞれに対して、片面回路基板B1およびB2の半田バンプ24側の面をそれぞれ対向させる共に、それら片面回路基板B1およびB2の導体回路側の面に対して、片面回路基板A1およびA2の半田バンプ24側の面をそれぞれ対向させた状態で順次積層し、それらの積層体を真空加熱プレスにより一体化する(図13(C))。
【0131】
このような多層化の後、エッチング処理を施して、図13(D)に示すように、最上層および最下層の片面回路基板A1およびA2の銅箔12面をエッチング処理して、所定パターンを有する導体回路36および38をそれぞれ形成する。
【0132】
上述した実施の形態では、5枚の片面回路基板とマット面を有する銅箔とを積層一体化し、または4枚の片面回路基板と1枚の両面回路基板とを積層一体化して、5層に多層化したが、4層以下でも、6層以上でも必要に応じた多層化が可能である。
【0133】
【実施例】
(実施例1)
(1) まず、多層化回路基板を構成する片面回路基板を製作する。この回路基板は、エポキシ樹脂をガラスクロスに含潰させてBステージとしたプリプレグと、銅箔とを積層して加熱プレスすることにより得られる片面銅張積層板を出発材料として用いる。
【0134】
この絶縁性基材10の厚さは75μm、銅箔12の厚さは12μmであり、この積層板の銅箔形成面と反対側の表面に、厚みが10μmの粘着剤層を有し、かつフィルム自体の厚みが12μmであるようなPETフィルム14をラミネートする。
【0135】
(2) ついで、PETフィルム14上から炭酸ガスレーザ照射を行って、PETフィルム14および絶縁性基材10を貫通して銅箔12に至るバイアホール形成用開口16を形成し、さらにその開口16内を酸素プラズマ放電によってデスミア処理した。
【0136】
この実施例においては、バイアホール形成用の開口の形成には、三菱電機製の高ピーク短パルス発振型炭酸ガスレーザ加工機を使用し、全体として厚さ22μmのPETフィルムを樹脂面にラミネートした、基材厚75μmのガラス布エポキシ樹脂基材に、マスクイメージ法でPETフィルム側からレーザビーム照射して100穴/秒のスピードで、150μmφのバイアホール形成用の開口を形成した。ここで、炭酸ガスレーザの入射波と反射波とを干渉させることで、開口16の側壁にくびれ部16bを形成する。また、炭酸ガスレーザの入射波により、表面側に裾広がり部16aを形成する。
【0137】
(3) デスミア処理を終えた絶縁性基材10の銅箔貼付面にPETフィルム15を貼り付け、以下のような条件で、銅箔12をめっきリードとする電解銅めっき処理を施して、開口16内に電解銅めっき17を充填してバイアホール18を形成した。この際に、開口16の側壁にくびれ部16bに対応するくびれ部18aを、また、開口16の裾広がり部16aに対応する裾広がり部18aを形成する。その際、電解銅めっきは開口16の上部にわずかに露出したので、サンダーベルト研磨およびバフ研磨によって露出部分を除去して平坦化した。
【0138】
〔電解銅めっき水溶液〕
硫酸 :180 g/l
硫酸銅 :80 g/l
添加剤(アトテックジャパン製、商品名:カパラシドGL)
:1 ml/l
〔電解めっき条件〕
電流密度 :2 A/dm2
時間 :30 分
温度 :25 ℃
【0139】
(4) さらに、以下のような条件で、電解半田めっき処理を施して、開口16に充填された銅めっき17上に半田めっき層を形成して、絶縁性基材10の表面から μm突出する半田バンプ24を形成する。
〔電解半田めっき溶液〕
Sn(BF42 :25g/l
Pb(BF42 :12g/l
添加剤 :5ml/l
(電解半田めっき条件)
温度 :20℃
電流密度 :0.4A/dm2
【0140】
(5) 次に、上記(3)で絶縁性基材10に貼付したPETフィルム15を剥離させた後、絶縁性基材10の半田バンプ24側の全面にエポキシ樹脂接着剤を塗布し、プレキュアして、多層化のための接着剤層26を形成した。
上記(1)〜(5)にしたがって作製した片面回路基板Aは、多層化の際に、最も上層に配置されるべき回路基板である。
【0141】
(6) 上記(1)〜(4)の工程と同様の処理をした後(図5(A)〜(G)参照)、絶縁性基材10の銅箔貼付面からPETフィルム15を剥離させ、絶縁性基材10の半田バンプ側の表面にエッチング保護フィルム25を貼付した状態で、銅箔12に適切なエッチング処理を施し、所定パターンを有する導体回路28を形成した(図6(B)参照)。
【0142】
(7) 次いで、上記(6)で得た導体回路28の表面を粗化処理した後に、無電解めっき浴として、ほうふっ化スズ−チオ尿素液を用い、20℃前後で約5分のめっき条件にて、無電解めっき処理を施して、厚さ0.01μmの銅−スズ合金層27、及び、厚さ0.1μmのスズ薄膜層29を形成した(図6(C)及び図9(B))。
【0143】
(8) 上記(6)で絶縁性基材10に貼付したエッチング保護フィルム25を剥離させた後、絶縁性基材10の半田バンプ24側の全面にエポキシ樹脂接着剤を塗布し、プレキュアして、各回路基板を接着して多層化するための接着剤層26を形成した(図6(D)参照)。
上記(6)〜(8)にしたがって作製された片面回路基板Bは、上記片面回路基板Aの半田バンプ側の面に積層されるべき回路基板であり、この実施例においては、3枚の片面回路基板Bを作製した。
【0144】
(9) さらに、これら3枚の片面回路基板Bの下方に位置して、最も下方に積層される回路基板として、上記(6)の工程と同様の処理をした後、上記(7)のような接着剤に代えて、後述するようなマット面を有する銅箔30を絶縁性基材10上に効果的に接着するためのエポキシ樹脂接着剤を塗布し、100℃で30分間の乾燥を行って厚さ20μmの樹脂接着剤層32を形成して、他の1枚の片面回路基板Bを作製した。
【0145】
(10) 上記(1)〜(5)にしたがって作製した片面回路基板Aと、上記(6)〜(8)にしたがって作製した3枚の片面回路基板B1〜B3と、上記(9)にしたがって作製した1枚の片面回路基板B4とを、同一方向に、しかも所定位置に順次積層した後、最も下方に位置する片面回路基板B4の半田バンプ側の面に対して、片面がマット処理されて、その表面粗度が3μmであり、厚さが12μmの銅箔30を、そのマット面を対向させた状態で、加熱温度180℃、加熱時間60分、圧力5MPa、真空度2.5×103Paの条件のもとで、一括して加熱プレスすることによって、各片面回路基板間を接着すると共に、銅箔30を片面回路基板B4の半田バンプ側の面に接着して多層化した。
【0146】
(11) その後、多層化された基板の最上層および最下層に位置する片面回路基板Aおよび片面回路基板B4上の銅箔12および30に、適切なエッチング処理により導体回路36および38(バイアホールランドを含む)を形成して、全層がIVH構造を有する多層化回路基板100を作製した。
【0147】
(12) 上記(1)〜(11)の工程にしたがって作製した多層化回路基板100の最上層および最下層に位置する回路基板AおよびB4の表面に、ソルダーレジスト層40および42を形成する前に、必要に応じて、銅−ニッケル−リンからなる粗化層を設ける。
【0148】
(13) 一方、DMDGに溶解させた60重量%のクレゾールノポラック型エポキシ樹脂(日本化薬製)のエポキシ基50%をアクリル化した感光性付与のオリゴマー(分子量4000)を46.67重量部、メチルエチルケトンに溶解させた80重量%のビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル製、エピコート1001)14.121重量部、イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ−CN)1.6重量部、感光性モノマーである多価アクリルモノマー(日本化薬製、R604)1.5重量部、同じく多価アクリルモノマー(共栄社化学製、DPE6A)30重量部、アクリル酸エステル重合物からなるレベリング剤(共栄社製、ポリフローNo.75)0.36重量部を混合し、この混合物に対して光開始剤としてのペンゾフェノン(関東化学製)20重量部、光増感剤としてのEAB(保土ヶ谷化学製)0.2重量部を加え、さらにDMDG(ジエチレングリコールジメチルエーテル)10重量部を加えて、粘度を25℃で1.4±0.3Pa・Sに調整したソルダーレジスト組成物を得た。
なお、粘度測定は、B型粘度計(東京計器、DVL‐B型)で60rpmの場合はローターNo.4、6rpmの場合はローターNo.3によった。
【0149】
(14) 上記(11)で得られた多層化回路基板の最上層および最下層の回路基板の表面に、前記(13)で得られたソルダーレジスト組成物を20μmの厚さで塗布した。次いで、70℃で20分間、100℃で30分間の乾燥処理を行った後、クロム層によってソルダーレジスト開口部の円パターン(マスクパターン)が描画された厚さ5mmのソーダライムガラス基坂を、クロム層が形成された側をソルダーレジスト層に密着させて1000mJ/cm2の紫外線で露光し、DMTG現像処理した。さらに、80℃で1時間、100℃で1時間、120℃で1時間、150℃で3時間の条件で加熱処理し、パッド部分に対応した開口44および46を有する(開口径200μm)ソルダーレジスト層40および42(厚み20μm)を形成した。
【0150】
(15) 次に、ソルダーレジスト層40および42を形成した基板を、塩化ニッケル30g/1、次亜リン酸ナトリウム10g/1、クエン酸ナトリウム10g/1からなるpH=5の無電解ニッケルめっき液に20分間浸漬して、開口部に厚さ5μmのニッケルめっき層52を形成した。
【0151】
さらに、その基板を、シアン化金力リウム2g/1、塩化アンモニウム75g/1、クエン酸ナトリウム50g/1、次亜リン酸ナトリウム10g/1からなる無電解金めっき液に93℃の条件で23秒間浸漬して、ニッケルめっき層上に厚さ0.03μmの金めっき層54を形成し、ニッケルめっき層52と金めっき層54とからなる被覆金属層を形成した。
【0152】
(16) そして、最上層の片面回路基板Aを覆うソルダーレジスト層40の開口44から露出する半田パッドに対して、融点が約183℃のスズ/鉛半田からなる半田ペーストを印刷して183℃でリフローすることにより、半田バンプ56を形成し、最下層の片面回路基板B4を覆うソルダーレジスト層42の開口46から露出する半田パッドに対して、融点が約230℃のスズ/アンチモン半田を供給して230℃近傍の雰囲気内でリフローすることによって、導電性接続ピン(または半田ボール)60を接続させて、多層化回路基板100を製作した。
【0153】
蛍光X線で多層化回路基板の合金層のSnの含有率を測定し、その都度引張強度を測定した結果の含有率−引張強度のグラフを図14に示す。引張強度が0.8Kg/cmを越えると、接合強度的に問題が無く、信頼性試験を行っても、バンプ金属が流動していないことが確認されている。
Figure 0004017450
この結果から、合金層は、被覆層を形成する金属の比率が25〜80%で、導体回路を形成する金属が残であることが望ましい。更に望ましいのは、35〜70%である。その他の合金層でもほぼ同じ結果が得られた。
【0154】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、導体回路の表層に合金層を介して被覆層を形成することで、導体回路を、導体回路を構成する銅等の金属層と、合金層と、被覆層との3層構造にして強度を高める。これにより、多層化回路基板の機械的強度を改善し、信頼性を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る多層化回路基板の断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る多層化回路基板の断面図である。
【図3】図1に示す多層化回路基板を構成する片面回路基板の製造工程図である。
【図4】図1に示す多層化回路基板を構成する片面回路基板の製造工程図である。
【図5】図1に示す多層化回路基板を構成する片面回路基板の製造工程図である。
【図6】図1に示す多層化回路基板を構成する片面回路基板の製造工程図である。
【図7】図1に示す多層化回路基板の製造工程図である。
【図8】図1に示す多層化回路基板の製造工程図である。
【図9】(A)は、図1中にCで示す多層化回路基板の導体回路表面の拡大図であり、(B)は、図6(C)中にCで示す片面回路基板の導体回路表面の拡大図である。
【図10】第1実施形態の第1改変例に係る多層化回路基板の製造工程図である。
【図11】第1実施形態の第2改変例に係る多層化回路基板の製造工程図である。
【図12】第1実施形態の第3改変例に係る多層化回路基板の製造工程図である。
【図13】第1実施形態の第4改変例に係る多層化回路基板の製造工程図である。
【図14】第1実施形態に係る多層化回路基板の含有率−引張強度のグラフである。
【図15】従来技術の問題点を示す説明図である。
【符号の説明】
10 絶縁性基材
12 銅箔
16 開口
17 銅めっき
18 バイアホール
18a 裾広がり部
18b くびれ部
24 半田バンプ
26 接着剤層
28 導体回路
27 銅−スズ合金層
29 スズ薄膜層
30 銅箔
32 接着剤層
36、38 導体回路
40、42 ソルダーレジスト層
44,46 開口
52 ニッケル層
54 金層
56 半田バンプ
60 導電性接続ピン
A1 片面回路基板
B1、B2、B3、B4 片面回路基板
C 片面回路基板

Claims (6)

  1. 絶縁性基材と、その一方の面に形成された導体回路と、前記絶縁性基材の他方の面から前記導体回路に達し、側壁にレーザの入射光と反射光とを干渉させることで形成された複数段のくびれ形状を有する開口内に充填された導電性物質を含んでなるバイアホールと、該バイアホール上に形成された導電性バンプとを備える片面回路基板を積層してなる多層化回路基板であって、
    1の片面回路基板の前記導電性バンプと他の片面回路基板の前記導体回路とを接触させることで片面回路基板の相互接続を行う多層化回路基板において、
    前記導体回路の表層には、合金層を介して被覆層が形成され、
    前記合金層は、被覆層を形成する金属の比率が25〜80%で、前記導体回路を形成する金属が残比率であることを特徴とする多層化回路基板。
  2. 前記導体回路は、主として銅で形成され、前記被覆層は、Sn、Ni、貴金属層のいずれか1種類以上で形成されることを特徴とする請求項1に記載の多層化回路基板。
  3. 前記導電性バンプは、Pb−Sn系半田、Ag−Sn系半田、インジウム半田、スズのいずれか1種類以上で形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多層化回路基板。
  4. 前記導体回路は、平均粗度(Ra)で0.5〜5μmであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1に記載の多層化回路基板。
  5. 少なくとも以下(a)〜(d)の工程を経ることを特徴とす多層化回路基板の製造方法:
    (a)一方の面に導体回路の形成された絶縁性基材の他方の面から前記導体回路に達する開口を、レーザの入射光と反射光とを干渉させることで、側壁に複数段のくびれ部を形成して穿設する工程;
    (b)前記開口内に導電性物質を充填しバイアホールを形成し、該バイアホール上に導電性バンプを設け片面回路基板を形成する工程;
    (c)前記片面回路基板の導体回路上に合金層を介して被覆層を設ける工程;
    (d)1の片面回路基板の前記導電性バンプと他の片面回路基板の前記被覆層を設けた前記導体回路とを接触させて片面回路基板を積層する工程。
  6. 少なくとも以下(a)〜()の工程を経ることを特徴とす多層化回路基板の製造方法:
    (a)一方の面に導体回路の形成された絶縁性基材の他方の面から前記導体回路に達する開口を、レーザの入射光と反射光とを干渉させることで、側壁に複数段のくびれ部を形成して穿設する工程;
    (b)前記開口内に導電性物質を充填しバイアホールを形成し、該バイアホール上に導電性バンプを設け片面回路基板を形成する工程;
    (c)前記片面回路基板の導体回路に粗化層を形成した後に、合金層を介して被覆層を設ける工程;
    (d)1の片面回路基板の前記導電性バンプと他の片面回路基板の前記被覆層を設けた前記導体回路とを接触させて片面回路基板を積層する工程。
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