JP4017136B2 - 発泡成形方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、発泡ポリスチレン樹脂製の断熱性に優れた生鮮食品保存用または運搬用容器あるいは建設用型材、または断熱床下地材などを製造するための発泡成形方法に関するものであって、特に発泡性原料ビーズ相互を融着させる工程の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明の背景となる発泡成形方法の概要を説明すると、この発泡成形に用いられる金型装置の配置は、図2の断面略図に示すように、発泡製品が充填成形されるキャビティ1を形成するよう、雄型となる凸型インサイド31と雌型となる凹型インサイド21が対向配置されるとともに、凹型インサイド21は固定され移動できないが、凸型インサイド31は、図2のように凹型インサイド21内にキャビティ1を形成した状態から水平に移動(図2では右方向へ)し、成形された発泡体を取り出すことができるよう移動可能に配置されている。このインサイド21、31には、後記の加熱用スチームが通過できるよう無数のベントホール(図示せず)が透設されている。
【0003】
また、これらインサイド21、31の各裏面側には、ケーシング22、32が設けられ、スチームなどの用役が供給される固定側チャンバ2と移動側チャンバ3が形成されている。なお、この事例では、ケーシング22、32の上部には、上部用役口24、34が、下部には、下部用役口25、35が配設されていて、上部用役口24、34には、加熱用スチームや圧縮空気などの供給配管が配設され、また下部用役口25、35には、減圧タンク、減圧ポンプに連なる吸引弁、あるいはドレン弁などの用役配管が接続されている。
【0004】
この図2では、キャビテイ1の下方に、さらに凸型インサイド31a、凹型インサイド21aで形成されるキャビテイ1aが設けられ、キャビテイとしては上下2段に配置されているが、得られる発泡成形体のサイズによって、上下方向に2段あるいはそれ以上の複数段に、また横方向にも複数列になるよう、多数個のキャビテイが配列され、1サイクルの成形操作で効率よく製造できるよう構成されているのが普通である。なお、原料ビーズの充填用フィーダ4、4aもキャビテイ個々に配備されている。
【0005】
このような発泡成形用金型装置において、金型装置の閉盤、予備発泡させた発泡性原料ビーズのキャビティ1内への充填、発泡性原料ビーズの加熱、金型装置の冷却、金型装置の開盤、発泡成形体の取り出し等の工程、手順で操作され、所定の発泡ポリスチレン樹脂などからなる発泡成形製品が生産される。
本発明は、このような発泡性原料ビーズの加熱処理の工程の改良に係るものであり、この工程についてさらに説明を加える。
【0006】
先ず、(a)キャビティ1内に発泡性原料ビーズを充填した後、ごく短時間、上部用役口24、34からスチームをチャンバ2、3に供給するとともに、下部用役口25、35から金型内の、特にチャンバ2、3内の空気を吸引排出する。
(b)次に、上部用役口24、34を閉じて、吸引減圧操作を継続し、金型内を減圧状態にして、原料ビーズ間の空間に存在していた空気も両側のインサイドに設けられているベントホールを経由して吸引、排出する。
この場合、必要があれば、金型内をマイナス圧の減圧状態としたところで下部用役口25、35を閉じて、一方のチャンバ3側の上部用役口34を開いてタイマーにより短時間、スチームを供給し、原料ビーズ間に僅かに残留していた空気もスチームと置換する。必要に応じてこの操作は、チャンバ2側からも行う。
【0007】
(c)次いで、双方の上部用役口24、34から加熱用スチームを双方のチャンバ2、3に供給して原料ビーズを融着温度まで加熱し、発泡を十分に行わせるとともに相互に融着させ、発泡成形体を形成させる。この融着加熱工程では、前段の原料ビーズを融着温度まで加熱するための昇圧融着工程と、それに続く仕上げ加熱工程に分けることができる。そして、その仕上げ加熱工程として、例えば0.7〜1.0kg/cm2 の飽和スチーム圧(温度114℃〜120℃相当)をタイマーで定めた所定の時間、例えば6〜15秒間、継続するよう設定している。
【0008】
このように融着加熱工程の後、冷却工程を経て発泡成形体が取り出されるのであるが、このような発泡成形方法においては、キャビティの形状、構造によりスチームの伝熱状態に差が生じることから、一個の成形体でも部位によって融着むらが発生するうえ、一つの金型装置に多数のキャビティを配置して、成形体の取り数を6個〜12個と多くした場合には、それぞれが上段下段または縦横まちまちになり、スチーム供給口から遠距離になるキャビティにはスチームの流れが悪くなったりする配置上の相異から、配置場所により成形体の間でも融着程度にバラツキが生じるのは避けられなかった。
【0009】
このような融着むらを改善するには、ゆるやかな温度条件で時間をかけて融着操作を行うのが効果的であるが、その場合は、成形サイクル時間が延長するので生産性が低下するという重大な問題があった。この生産性を向上させようとする要望に対して、成形サイクル時間を短縮するには、やや温度が高めのスチームを短時間送入して、融着反応の促進を図るのが極めて有効であるが、この場合には、加熱条件のバランスが崩れ易く、融着むらが顕著になってくるという、二律背反的な問題があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、融着加熱工程において、前記したような成形体を多数個取りできる金型装置における、発泡成形体間の融着程度のバラツキや、発泡成形体個々の部位による融着むらを極力低減し、サイクルタイムを短縮しても品質を維持できる発泡成形方法を提供する。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の問題は、凸型および凹型のインサイドに包囲形成されたキャビティに充填した発泡性原料ビーズを、前記インサイドの裏面側に形成したチャンバに送入したスチームにより加熱して発泡させ融着させる発泡成形方法であって、前記チャンバの排気口を閉じてスチームを送入してチャンバ内を昇圧して前記発泡性原料ビーズ相互の融着を開始させる昇圧融着工程に続いてチャンバ内の圧力を予め設定された設定値に制御しながら一体化した発泡成形体を得る仕上げ加熱工程の後半において、チャンバ内圧力を上昇させる昇圧仕上げ工程を設けたうえに、この昇圧仕上げ工程において、温度の変動を抑制しながら圧力を上昇させるようにしたことを特徴とする発泡成形方法により解決することができる。
【0012】
また、本発明は、前記昇圧仕上げ工程において、圧縮空気または圧縮空気を混合したスチームを送入して昇圧させる手段を講じることにより具体化することができる。さらに、前記昇圧仕上げ工程において、チャンバ内の温度の変動を+3℃以下に抑制しつつ、チャンバ内圧力をプラス0.1〜0.5kg/cm 2 の範囲で昇圧させる昇圧仕上げ工程を設けた形態の発泡成形方法に具体化することができる。
【0013】
本発明が対象とする発泡成形方法においては、スチーム加熱の段階で、キャビティ内の発泡成形品が、その表皮、内容部分ともに均質な融着程度を示すことが望ましいのは勿論であるが、本発明によれば、キャビティ内の部位によって溶融程度のバラツキが大きく解消されるのみならず、複数のキャビティが上下複数段、あるいは左右に複数列に配置されている場合において、それぞれのキャビティ間においても、融着程度の差が極く小さくなるなど顕著な改善が認められた。
【0014】
そのような効果が得られる理由は、本発明においては、昇圧融着工程、仕上げ加熱工程と進む場合、融着の遅延した部分では原料ビーズ間の融着が不十分でより隙間が多い緩んだ状態であるので、前記仕上げ加熱工程の後半部分に設けられた昇圧仕上げ工程によって、その融着の遅延した部分に加熱スチームがより多く送入され、融着のための熱エネルギが供給されるので、融着が加速されて、その部分の融着の遅延が改善されるものと推定される。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の発泡成形方法の1実施形態について、図1の融着加熱工程の時間−チャンバ内圧力の関係を示すグラフを参照して、説明する。この場合、使用される金型装置としては、先に説明した図2に示す装置が十分適用できる。
先ず、本発明は、凸型インサイド31、31aおよび凹型のインサイド21、21aに包囲形成されたキャビティ1、1aに充填したポリスチレンまたはポリエチレン系発泡性原料ビーズを、前記インサイドの裏面側に形成したチャンバ2、3に送入したスチームにより加熱して発泡させ融着させる融着加熱工程の改良である。
【0016】
本発明の特徴とするところは、前記チャンバ2、3の下部用役口25、36を閉じた状態で、上部用役口24、34からスチームを送入してチャンバ内の圧力を融着開始圧Paに昇圧し、前記発泡性原料ビーズ相互の融着を開始させる昇圧融着工程aと、この昇圧融着工程aに続いて仕上げ圧Pbに制御しながら発泡成形体の表皮の形成を完成させる仕上げ加熱工程bが設けられ、かつこの仕上げ加熱工程bの後半部分に、チャンバ内圧力を昇圧させ、昇圧仕上げ圧Pcとする昇圧仕上げ工程cを設けた点にある。この図1では、融着開始圧Pa>仕上げ圧Pbである場合を示しているが、本発明では、これに限定されるものではなく、融着開始圧Pa≦仕上げ圧Pbであって、図1のようにPaのようなピークを設けることなく、昇圧融着工程aからなだらかに仕上げ加熱工程bに移行する場合も含むものである。
【0017】
なお、ポリスチレン系またはポリエチレン系発泡性原料ビーズを対象とした場合には、前記融着開始圧Pa=0.6〜1.5kg/cm2 の範囲内の設定値に昇圧し、続く仕上げ加熱工程bでは、仕上げ圧Pb=0.3〜1.3kg/cm2 の範囲内の設定値に制御しながら発泡成形体の表皮の形成を完成させるようにするのが好ましい。そして、図1のように融着開始圧Pa>仕上げ圧Pbである場合には、仕上げ加熱工程bでは、チャンバ2、3内の圧力を低下させるよう制御すればよい。
【0018】
さらに、本発明では、仕上げ加熱工程bの後半部分に設けられる昇圧仕上げ工程における昇圧仕上げ圧Pcとしては、Pc=仕上げ圧Pb+0.1〜0.5kg/cm2 になるよう昇圧させるのが好適である。さらに、この場合、チャンバ2、3内の温度の変動を+3℃以内に抑制するのが融着むらの発生を抑制するには効果的である。このように昇圧仕上げ工程cにおいて、温度の変動を+3℃以内に抑制するのは、それまでの最適融着温度に維持されてきた金型、キャビティ内発泡体の温度平衡状態を部分的に崩すのを防止するためである。
【0019】
さらに、本発明では、キャビティ内の温度の変動を極力抑制しながら圧力を0.1〜0.5kg/cm2 分だけ上昇させる手段として、調圧した圧縮空気を単独で送入するか、または圧縮空気を混合して調圧したスチームを送入して昇圧させるのが特に好ましい方法として採用される。
【0020】
このように、本発明では昇圧仕上げ圧Pcを得るには、スチームを単独で使用しないことが重要である。これは、仕上げ圧Pb=0.5kg/cm2 とすると、その温度は110℃であるが、これに+0.1〜0.5kg/cm2 として、昇圧仕上げ圧Pc=0.6〜1.0kg/cm2 に昇圧すると、その温度は112℃〜120℃に相当するので、その温度差は2℃〜10℃に達する。
【0021】
このように、好適な昇圧仕上げ圧Pcを得るために、スチームを単独に送入して昇圧すると、2℃以上の温度上昇が付随的に生じ易いため、金型および発泡成形体に部分的な過熱状態を惹起し、均質な発泡品質や融着状態が得られないという結果になる。そこで本発明のように、昇圧仕上げ圧Pc=0.6〜1.0kg/cm2 が得られるよう、あらかじめ調圧した圧縮空気を単独で送入する場合には、スチームのように温度上昇を伴わないので、チャンバ内の温度変動をごく小さいものとすることができる。
【0022】
なお、このようにスチーム単独で操作するには、スチームの供給弁を閉じる必要があるが、スチームに圧縮空気を混合して、昇圧可能な圧力とチャンバの温度を変動させないような温度をもった混合ガスを準備し、この混合ガスをチャンバ内に送入するようにしてもよい。
【0023】
また、以上の説明では、昇圧仕上げ工程cの昇圧ガスは、両側のチャンバ2、3を同一圧力に制御した場合について説明したが、昇圧仕上げ圧Pcをチャンバ2、3の間で差を設けて、キャビテイ1、1a内に気流を生じさせて、融着促進のための熱エネルギの伝達を積極的に援助するよう具体化することもできる。この場合、融着が遅延し易い側、あるいは融着むらを少なく仕上げたい発泡体面の側のチャンバの圧力が高くなるようにして、圧力差を設定するのが、融着むらを解消する目的から好ましい。
【0024】
また、図1に例示した態様によれば、前記昇圧融着工程aでは、、スチームを送入してチャンバ内の圧力を、前記原料ビーズ相互の融着を急速に開始させる温度を持った蒸気圧として予め設定された融着開始圧Paに昇圧させ、ごく短時間暴露する。この場合、前記原料ビーズは、熱伝導のよい金属であるインサイドに接している部分より内部の方が先に急速に融着温度に到達して、相互に融着して発泡成形体として一体化が進むことになる。
【0025】
次に、この態様の仕上げ加熱工程bでは、前工程の昇圧融着工程aで到達したチャンバ内の圧力を若干低下させる。すなわち、原料ビーズの融着温度以上の蒸気圧ではあるが先の圧Paより低く予め設定された圧Pbに保持するのであるが、この段階ではインサイドの温度も適温に達するので、部分的な過熱現象のおそれがなく、発泡成形体のインサイドに接した表皮の形成に寄与する。
【0026】
そして、仕上げ加熱工程bにおいては、チャンバ内部はスチームの流れが停滞した状態であったところ、その後半において、温度変動を抑制しながらチャンバ内の圧力を上昇させる昇圧仕上げ工程が設けてあるので、この昇圧によって成形体の融着が遅延していて、表面および内部組織の比較的ルーズな部位に熱エネルギが供給され、融着が加速されることになる。したがって、本発明によれば、ゆるやかな温度条件で長時間の融着操作を行う必要がなく、サイクルタイムの短縮化を阻害することがない。
なお、この仕上げ加熱工程bの所要時間は、目的とする融着程度によって調節され得るが、約5秒程度から15秒間の範囲に設定され、昇圧仕上げ工程cは、長い場合でも、その20%は超えない時間に設定される。
【0027】
【発明の効果】
本発明の発泡成形方法は、以上に説明したように構成されているので、成形サイクルタイムを延長させることなく、融着加熱工程において発生する融着の遅れている部分の融着を加速できるので、成形体を多数個取りできる金型装置における発泡成形体間の融着程度のバラツキや、発泡成形体自体の部位による融着むらを極力低減させ、発泡状態の均質性を向上させることが可能となり、品質の向上とサイクルタイムの短縮化の両方を達成できるという優れた効果がある。よって本発明は従来の問題点を解消した発泡成形方法として、その工業的価値は極めて大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の融着加熱工程の時間−チャンバ内圧力の関係を示すグラフ
【図2】発泡成形装置の要部断面略図。
【符号の説明】
1、1a キャビティ、2、3 チャンバ、21、21a 凹型インサイド、31、31a 凸型インサイド、24、34 上部用役口、25、35 下部用役口、Pa 融着開始圧、a 昇圧融着工程、Pb 仕上げ圧、b 仕上げ加熱工程、Pc 昇圧仕上げ圧、c 昇圧仕上げ工程
Claims (3)
- 凸型および凹型のインサイドに包囲形成されたキャビティに充填した発泡性原料ビーズを、前記インサイドの裏面側に形成したチャンバに送入したスチームにより加熱して発泡させ融着させる発泡成形方法であって、前記チャンバの排気口を閉じてスチームを送入してチャンバ内を昇圧して前記発泡性原料ビーズ相互の融着を開始させる昇圧融着工程に続いてチャンバ内の圧力を予め設定された設定値に制御しながら一体化した発泡成形体を得る仕上げ加熱工程の後半において、チャンバ内圧力を上昇させる昇圧仕上げ工程を設けたうえに、この昇圧仕上げ工程において、温度の変動を抑制しながら圧力を上昇させるようにしたことを特徴とする発泡成形方法。
- 前記昇圧仕上げ工程において、圧縮空気または圧縮空気を混合したスチームを送入して昇圧させる請求項1に記載の発泡成形方法。
- 前記昇圧仕上げ工程において、チャンバ内の温度の変動を+3℃以下に抑制しつつ、チャンバ内圧力をプラス0.1〜0.5kg/cm 2 の範囲で昇圧させる請求項1または2に記載の発泡成形方法。
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