JP4017135B2 - 電磁加熱調理容器およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高出力の電磁加熱調理器に対応できる陶磁器またはガラス製の電磁加熱調理容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電磁発熱用に利用される鍋やフライパン等の調理容器としては、低熱膨張のリチウム珪酸塩を含むリチアセララミックスや結晶化ガラス製の鍋やフライパンの底部外側面に、金属銀粉末を主成分としたペーストを塗布し、さらにその上に保護のためのガラス粉末を主成分としたペーストを塗布し、800℃前後の温度で焼成して製作されるものが知られている。
しかしながら、このような電磁調理容器は、長時間使用すると底部の銀を含む発熱層が変色したり、さらには剥離することもあり、耐久性に問題を有するため家庭用、業務用として普及しにくい面があった。
【0003】
また、この欠点は電磁加熱調理器の出力が高出力でなる程顕著であり、近年我が国でも電力の200V化が進む中、200V対応の高出力タイプ調理器への適応は不可能であり、また住宅の高層化が進み電磁調理容器の需要が高まるにもかかわらず、無害で美しい陶磁器質の調理容器への応用が制限されるという好ましくない事情があった。
【0004】
この原因には、使用する銀の融点が960℃と比較的低いのにもかかわらず、調理加熱時に発熱層が300℃以上の温度になり、銀の燒結が進みすぎて容器母体やコートとの接触面積が減少し、かつ銀の熱膨張率が大きいため熱膨張歪も大きく、銀と容器母体あるいはコートとに剥離が起こりやすいものと考えられる。 また、銀自体は、材料費が高くコストアップになり、資源的にも豊富ではなく、大量に消費される民生用調理容器への使用は、資源保護の点からも好ましくなかった。
【0005】
また、近年、住宅や食堂の高層化が進みガスや石油による加熱調理が安全上好ましくなく、電気エネネルギーによる効率の良い電磁加熱調理容器が歓迎されつつある状況から、高出力の電磁加熱調理容器に適応する陶磁器あるいはガラス製の調理容器の開発が要請されるに至っている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、こような背景のもと、上記の問題点を解決するためになされたものであり、高出力の電磁加熱調理器で長時間の使用が可能で、かつ高価で資源の少ない銀を使用しない安価な電磁加熱調理容器およびその製造方法を提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決した本発明の第1の電磁加熱調理容器は、リチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とし、熱膨張係数が4×10 −6 /℃以下の低熱膨張性セラミックスであるセラミック質調理容器の底部外面に、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、タングステン、およびこれら金属の合金のうちより選ばれた1種以上の金属粒子と、その金属粒子分100重量部に対して10〜50重量部のリチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とするセラミックス質の無機質バインダとからなる導電性を有する発熱層と、その発熱層の外面を被覆する、リチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とし、熱膨張係数が4×10 −6 /℃以下の低熱膨張性セラミックスであるセラミック質保護層とを一体に具備していることを特徴とするものである。
【0008】
さらに、上記問題を解決した本発明の第2の電磁加熱調理容器は、リチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とし、熱膨張係数が4×10 −6 /℃以下の低熱膨張性セラミックスであるセラミック質調理容器の底部外面に、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、タングステン、およびこれら金属の合金のうちより選ばれた1種以上の金属粒子と、その金属粒子分100重量部に対して10〜50重量部のリチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とするセラミックス質の無機質バインダとからなる導電性を有する発熱層が形成され、かつ前記セラミック質調理容器と熱膨張率が同等のセラミック質プレートを接合して備え、かつそのセラミック質プレートの前記発熱層の外面を被覆するところの、リチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とし、熱膨張係数が4×10 −6 /℃以下の低熱膨張性セラミックスであるセラミック質保護層を一体に具備していることを特徴とするものである。
【0009】
また、上記問題を解決した本発明の第1の電磁加熱調理容器の製造方法は、リチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とし、熱膨張係数が4×10 −6 /℃以下の低熱膨張性セラミックスであるセラミック質調理容器の底部外面に、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、タングステン、およびこれら金属の合金のうちより選ばれた1種以上の金属粒子と、その金属粒子分100重量部に対して10〜50重量部のリチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とするセラミックス質の無機質バインダを主成分とする金属・無機質組成物からなる金属質層を付着させる金属質層形成工程、その外面をリチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とし、熱膨張係数が4×10 −6 /℃以下の低熱膨張性セラミックスを形成するセラミック質組成物保護層で被覆する保護層形成工程、および非酸化性雰囲気中において1000℃〜1400℃の範囲の最高温度で前記金属質層と保護層とを前記調理容器の底部外面に一体に焼結させる焼成工程を含むことを特徴とするものである。
【0010】
また、上記問題を解決した本発明の第2の電磁加熱調理容器の製造方法は、リチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とし、熱膨張係数が4×10 −6 /℃以下の低熱膨張性セラミックスであるセラミック質調理容器の底部外面に、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデンおよびこれら金属の合金のうちより選ばれた1種以上の金属粒子と、その金属粒子分100重量部に対して10〜50重量部のリチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とするセラミックス質の無機質バインダを主成分とする金属・無機質組成物からなる金属質層を付着させる金属質層形成工程、その外面をリチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とし、熱膨張係数が4×10 −6 /℃以下の低熱膨張性セラミックスであるガラス粉末を主成分とする保護層で被覆する保護層形成工程、および非酸化性雰囲気中において800℃〜1200℃の範囲の最高温度で前記金属質層と保護層とを前記調理容器の底部外面に一体に焼結させる焼成工程を含むことを特徴とするものである。
【0011】
さらに、上記問題を解決した本発明の第3の電磁加熱調理容器の製造方法は、予め準備した、リチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とし、熱膨張係数が4×10 −6 /℃以下の低熱膨張性セラミックスであるセラミック質調理容器の底部外面形状に対応させて、そのセラミック質調理容器と熱膨張率が同等のセラミック質プレートを準備するプレート製作工程、このセラミック質プレートの表面に、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、タングステン、およびこれら金属の合金のうちより選ばれた1種以上の金属粒子と、その金属粒子分100重量部に対して10〜50重量部のリチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とするセラミックス質の無機質バインダを主成分とする金属・無機質組成物からなる金属質層を付着させる金属質層形成工程、その外面を、リチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とし、熱膨張係数が4×10 −6 /℃以下の低熱膨張性セラミックスを形成するセラミック質組成物を主成分とする保護層で被覆する保護層形成工程、非酸化性雰囲気中において1000℃〜1400℃の範囲の最高温度で前記金属質層と保護層とを前記セラミック質プレートに一体に焼結させる焼成工程、および得られたセラミック質プレートを前記セラミック質調理容器の底部外面に接合する接合工程を含むことを特徴とするものである。
【0012】
さらに、上記問題を解決した本発明の第4の電磁加熱調理容器の製造方法は、予め準備した、リチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とし、熱膨張係数が4×10 −6 /℃以下の低熱膨張性セラミックスであるセラミック質調理容器の底部外面形状に対応させて、そのセラミック質調理容器と熱膨張率が同等のセラミック質プレートを準備するプレート製作工程、このセラミック質プレートの表面に、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデンおよびこれら金属の合金のうちより選ばれた1種以上の金属粒子と、その金属粒子分100重量部に対して10〜50重量部のリチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とするセラミックス質の無機質バインダを主成分とする金属・無機質組成物からなる金属質層を付着させる金属質層形成工程、その外面を、リチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とし、熱膨張係数が4×10 −6 /℃以下の低熱膨張性セラミックスからなるガラス粉末を主成分とする保護層で被覆する保護層形成工程、非酸化性雰囲気中において800℃〜1200℃の範囲の最高温度で前記金属質層と保護層とを前記セラミック質プレートに一体に焼結させる焼成工程、および得られたセラミック質プレートを前記セラミック質調理容器の底部外面に接合する接合工程を含むことを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の、第1発明の電磁加熱調理容器の実施形態について、第1、第2発明であるその製造方法の実施形態とともに説明する。
第1発明の電磁加熱調理容器の要点は、リチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とし、熱膨張係数が4×10 −6 /℃以下の低熱膨張性セラミックスであるセラミック質調理容器と、その加熱面である底部外面に焼き付けられた、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、タングステン、およびこれら金属の合金のうちより選ばれた1種以上の金属粒子と、その金属粒子分100重量部に対して10〜50重量部のリチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とするセラミックス質の無機質バインダとからなる導電性を有する発熱層と、それを被覆するリチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とし、熱膨張係数が4×10 −6 /℃以下の低熱膨張性セラミックスであるセラミック質保護層との組合せからなる。
【0014】
そして、本発明の第1、第2の電磁加熱調理容器の製造方法は、次の工程を含むものである。
1)金属質層形成工程:前記材質のセラミック質調理容器の底部外面に、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、タングステン、およびこれら金属の合金のうちより選ばれた1種以上の金属粒子と前記材質の無機質バインダを主成分とする金属・無機質組成物からなる金属質層を付着させる工程。(第2の製造方法ではタングステンを含まない。)
2)保護層形成工程:その外面を前記材質を形成するセラミック質組成物を主成分とする保護層で被覆する工程。(第2の製造方法ではガラス質を用いる。)
3)焼成工程:非酸化性雰囲気中において1000℃〜1400℃の範囲の最高温度で前記金属粒子含有層と保護層とを前記調理容器の底部外面に一体に焼結させる焼成工程。(第2の製造方法では800〜1200℃)
【0015】
まず、セラミック質調理容器に使用され得る材質としては、一般の陶磁器または結晶化ガラスが応用可能であるが、特に電磁加熱調理容器では、調理時には底部に焼き付けられた発熱層の急激な温度上昇に伴い、調理容器の部位によっては急激な温度差が生じるので、熱膨張係数が大きいと割れてしまう。このため、本発明に使用する調理容器は、熱膨張係数が4×10−6/℃以下であることが必要である。
【0016】
また、同時に調理容器の材質としては安価で緻密であることが重要であり、このためにペタライト等のリチウム珪酸塩とコージライトの少なくともどちらかを主成分とするセラミック質が最も適しており、特にペタライト等のリチウム珪酸塩とコージライトの両方を含むセラミック質としては、本発明者が先に出願した特願平8−206066号、特願平8−238844号、特願平9−4825号に提案したセラミック質を利用するのが好適である。
【0017】
次に発熱層について説明する。発熱層は、次に述べるような金属粒子によって実質的に構成することにより導電性を有する層として前記調理容器の底部外面に焼き付けられ密着している。
そして、この発熱層に含有させる金属としては、銀よりも高い融点の金属であって、上記調理容器のセラミック質の焼成温度として想定される最高温度1400℃以下で適度に燒結し、かつ水素ガスあるいは窒素ガスからなる非酸化性雰囲気中において金属の状態で存在しうることが重要であり、発熱金属材料として鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、タングステンまたはこれらの合金から選ばれる1種または2種以上の金属の組合せが適当である。
【0018】
この発熱層は、金属質層形成工程において前記調理容器本体に形成され後記の焼成工程を経て完成する。そして、製作時および電磁調理器として使用時に、発熱層とこれらが焼き付けられる容器本体との熱膨張歪による発熱層の剥離現象を防ぐことが大切であり、そのためにはこれら金属の粉末に、上記容器本体と同材質のセラミック質生地または熱膨張率の小さいセラミック質を形成する陶磁器生地またはガラスなどの無機質バインダ粉末を添加した金属・無機質組成物を適用するのが好ましい。従って、容器本体にペタライト等のリチウム珪酸塩とコージライトの少なくともどちらかを主成分とするセラミック質が用いられる場合には、この無機質バインダとしてもこれに同一かまたは類似したセラミック質を適用するのが最適である。
【0019】
なお、金属粉末に対する前記無機質バインダの添加量は、金属粒子100重量部に対して10〜50重量部が適当であり、無機質バインダが少ないと上記の剥離が生じるおそれがあり、多すぎると電気抵抗が大きくなり発熱効率が著しく低下する。
【0020】
これら金属と無機質バインダとは、電気抵抗、塗布厚さ、焼成温度、焼成雰囲気、熱膨張率、陶磁器あるいはガラスとの濡れ性などを考慮してブレンドする。塗布の方法としては、金属・無機質組成物をペーストにしてスクリーン印刷、および転写手法が応用でき、あるいはスラリーとなしこれをシート成形して貼り合わせるなどの方法が、適宜応用可能である。そして、電気抵抗とコストを考慮し最終的に得られる発熱層の厚さは0.03〜0.5mmの範囲に設定するのが適当である。また,その形状パターンは、調理容器底部の形状の対応させればよく、円形底面に対しては通常、円形パターンまたは中心を空白に抜いた幅広い環状パターンに塗布形成する。
【0021】
また、前記金属質層を形成するためのペーストやスラリー状の金属・無機質組成物には適量の有機バインダーを加えることは有効であり、焼成前の金属質層の強度を高め密度を上げる他、焼成中に金属粉末の酸化を防ぐ効果があり、焼成雰囲気ガスの使用量を節約できる利点も期待できる。
【0022】
この金属質層は、電磁調理容器の加熱面となる底部外側面に形成され、後記の焼成工程を経て発熱層となるのであるが、調理容器本体が陶磁器製の場合には、本体の調理容器自体は、焼成済であっても未焼成であっても構わないが、未焼成の調理容器本体を対象に金属質層を形成して、金属質層と調理容器本体とを同時に焼成するようにすると、コストにおいて有利となる。
【0023】
また、金属材料としては、発熱への影響が少なければ後記の焼結後に金属に変化する金属化合物の使用も可能であり、炭化物とか、水素雰囲気中で還元される場合はこれらの酸化物に置き換えても適用することもできる。
特に、本発明の電磁加熱調理容器の製造方法においては、金属・無機質組成物に使用する金属の一部または全部を金属酸化物の形態で、例えばニッケルについては酸化ニッケルの形態で供給するとともに、焼成工程を還元性雰囲気中、例えば水素ガスを利用した雰囲気中、で行うものとした方法に好ましく具体化することができる。
【0024】
さらに、金属材料の種類は、最終的な焼結温度に応じて選択するが、焼成済の陶磁器あるいは結晶化ガラスからなる調理容器本体を用い、後記保護層としてガラス質を同時に焼きつける場合には、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデンおよびそれら金属の合金から選択した1種またはそれ以上を主成分にするのが良く、適度な金属の燒結性とガラスの反応などを考慮し、焼結温度を最高温度800〜1200℃として焼結する、本発明の第2の製造法が適用できる。
【0025】
また、後記の保護層として、先のガラス質に代えて、陶磁器質の保護層とする場合には、金属材料として鉄、ニッケル、コバルト、モリブテンの他、タングステンなどが適用可能となり、また焼結温度は、陶磁器質保護層の適正な焼結温度に合わせて、1000〜1400℃の範囲とするのがよい。
【0026】
次に、前記発熱層を被覆する保護層について説明する。
本発明に使用する発熱金属は、卑金属であるため空気に触れた状態では、空気中の酸素と反応してある程度酸化するのは避けられない。本発明では、この酸化を防止でき、調理容器の寿命を大幅に伸ばすことを可能とする保護層は必須とするものである。
【0027】
その材質は、空気を遮断し剥離しにくい点を考慮すると、容器本体との熱膨張差が小さく熱歪みの小さいこと、前記発熱層の焼付け温度で緻密な構造が得られるものであることが必要であり、陶磁器質またはガラス質が適宜適用可能である。しかし、焼成中の発熱層や調理容器との好ましい反応を考慮すると、容器本体のセラミック質と同一、または類似の材質が好ましい。
なお、陶磁器質保護層としては、ペタライトなどのリチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とし、熱膨張係数が4×10−6/℃以下の低熱膨張性セラミックスであるか、またはそれら低熱膨張性セラミックスを形成する組成物から形成するのが特に好適である。
【0028】
この保護層を形成するには、前記材料をペーストやスラリー状にして前記発熱層を被覆した状態にスクリーン印刷する、あるいはシート状に成形してから、それを貼り付ける方法が利用できる。またその厚さも特に限定されることがないが、少なくとも0.05mm以上に設定すれば目的を達することができる。
【0029】
次に、前記金属質層と保護層とを調理容器本体に焼結して一体化する焼成工程について説明する。
この焼成工程は、前記金属質層と保護層のそれぞれを調理容器本体とともに加熱して、強固な組織に変化させるとともにそれぞれを調理容器本体に結合させて一体化させる他、その金属質層を所定の導電性を備えた発熱層に形成するにある。
【0030】
従って、この焼成工程では、焼成中に金属質層内の金属粒子が酸化されない配慮が不可欠である。このため、加熱装置内の雰囲気が重要な要素であり、雰囲気としては水素を含む還元性ガス雰囲気、または窒素等の不活性ガス等からなる非酸化性雰囲気が必要となる。なお、本発明では、非酸化性雰囲気には、水素を含む還元性ガス雰囲気をも含む用語として用いている。
【0031】
ここで、不活性ガスの場合には、少量の酸素が混入しても金属が酸化し易くなるため、酸素濃度をごく微量に抑えなければならず、結果高価な不活性ガスを多く必要とするので、コスト面においては水素を含む還元性ガスが優れている。特に、金属粒子が、ニッケル、コバルト、モリブテン、タングステンの場合には、焼結以前に酸化された部分があっても、水素ガスにより容易に還元されて金属状態に復帰する性質があるので、品質に大きく影響しない程度の酸素の混入許容量が認められるという利点がある。
【0032】
また,この焼成工程の最高温度は、金属・無機質組成物の構成金属に鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、タングステン、およびこれら金属の合金のうちより選ばれた1種以上としたときには、保護層を構成するセラミック質組成物の好適な焼成温度に合わせて1000℃〜1400℃の広い範囲から選ぶことができる。そして、使用金属を鉄、ニッケル、コバルト、モリブデンおよびこれら金属の合金のうちより選ばれた1種以上とし、保護層をガラス粉末から構成するときには、その温度を比較的低温域の800℃〜1200℃の範囲にすることもできる。
【0033】
このようにして、第1および第2の発明の電磁加熱調理容器の製造方法に記載の金属質層形成工程、保護層形成工程、および焼成工程を経て、第1の発明の電磁加熱調理容器を得ることができる。かくして得られた本発明の電磁加熱調理容器は、発熱層の金属が高温度耐久性に優れているので、従来の銀を使用した場合に比較して、電磁加熱調理器の高出力の電磁加熱を受けても品質の劣化が少なく長期の使用に耐えるものとなる。
【0034】
しかし、前記の第1および第2の発明によって得られる電磁加熱調理容器の場合、発熱層の金属材料が銀と比較してその材料費が安価になるものの、一方では、水素や窒素等の焼結操作時の雰囲気ガスにかかるコストが増加し、体積の大きい鍋等の品物の場合にはそのコストが全体のコストを押し上げるという問題が予測される。
このような問題は、次に説明する第2の発明の電磁加熱調理容器、ならびに第3および第4の発明の電磁加熱調理容器の製造方法により解決することができるのである。
【0035】
本発明の第3、第4の電磁加熱調理容器の製造方法は、次の工程を含む。
1)プレート製作工程:予めセラミック質調理容器の底部外面形状に対応させてセラミック質プレートを準備する工程。(使用材料、材質は、第1発明、第2発明を準用する。以下、同様)
2)金属質層形成工程:これに鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、タングステン、およびこれら金属の合金のうちより選ばれた1種以上の金属粒子と無機質バインダを主成分とする金属・無機質組成物からなる金属質層を付着させる工程。(第4の製造方法はタングステンを含まない。)
3)保護層形成工程:その外面をセラミック質組成物を主成分とする保護層で被覆する工程。(第4の製造方法はガラス質保護層とする)
4)焼成工程:非酸化性雰囲気中において1000℃〜1400℃に範囲の最高温度で前記金属質層と保護層とを前記セラミック質プレートに一体に焼結させる焼成工程。(第4の製造方法は800〜1200℃)
5)接合工程:得られたセラミック質プレートを前記セラミック質調理容器の底部外面に接合する工程。
【0036】
まず、熱膨張率の低い耐熱性陶磁器或いは結晶化ガラス等を用いて、鍋等のセラミック質調理容器の本体を製作する。陶磁器質の場合は予め焼成しておく。
次に、上記本体とほぼ熱膨張率が等しい耐熱性陶磁器質または結晶化ガラス質の薄いセラミック質プレートを作る。耐熱性陶磁器質の場合は焼成前の段階でも良い。プレートの厚さは特に指定しないが、作業性や焼成時の反り歪みを考慮し1.0mm以上が好ましい。その外形形状は、セラミック質調理容器の底部外面形状に対応させておけばよく、容器底形状が円形であれば円形のプレートとすればよい。
【0037】
次に、このセラミック質プレートの表面に金属質層と保護層を形成するのであるが、ここに採用する方法は、先に第1または第2の発明として説明した金属質層形成工程、保護層形成工程の方法における調理容器本体に代えてこのセラミック質プレートを対象とする方法がそのまま適用可能である。
【0038】
さらに、第1または第2の発明における焼成工程を、同様に調理容器本体に代えてこのセラミック質プレートを対象として適用すれば、セラミック質プレートの表面に発熱層とそれを被覆する保護層を一体化した発熱層付セラミック質プレートを得ることができる。
この場合、プレートの材質が耐熱性陶磁器質の場合、プレート自体の焼成と発熱体を得るための焼成とを同時に行うようにすれば、焼成工程が1回で済むので焼成コストは極めて有利となるが、反面、焼成時に大きな反り変形が生じることもあるので、そのような場合には、個別の焼成を行うのが適当となる。
【0039】
また、セラミック質プレートを予め個別に焼成しておくと、プレートの焼成温度をより高く、発熱層や保護層の焼成温度をより低くするように差を設けることができ、この差が大きい程発熱層や保護層の焼成時の反り変形が小さくなる傾向にある。
そこで、反り変形を少なく止めるためには、本発明の第4の発明である電磁加熱調理容器の製造方法にあるような金属質層形成工程と保護層形成工程に従って、予め焼成したセラミック質プレートに所定の金属粒子を含有する金属・無機質組成物で金属質層を形成し、その上にガラス質の保護層で被覆してから、最高温度800〜1200℃の範囲で比較的低い温度で焼成する方法が良い。
【0040】
しかし、熱膨張の調整やコートの厚さを重要に考える場合は、保護層は陶磁器質、例えばペタライトなどを用いたリチウム磁器質生地を用いた方が好ましい。その場合には、発熱層と保護層に対する焼成工程の最高焼成温度は、セラミック質プレートの焼成温度より100℃程度低い温度に設定し、それに合わせた材料構成を採用することで、反り変形を低減させることができる。
【0041】
この第3、第4の発明の焼成工程では、雰囲気ガスのコストが高い非酸化性雰囲気での焼成ではあるものの、被焼成物は、単なる板状プレートに過ぎないで体積が小さく、一度に大量に焼成でき、雰囲気ガスコストの占める割合は小さいものとなり、第1または第2の発明の製造方法に比べて大幅なコストダウンが可能となる。
【0042】
更に、耐熱性陶磁器質で保護層を構成した場合には、仮に反りが大きくても平滑なセラミック板でこの発熱層付プレートを挟み、荷重を載せ、好ましくは非酸化性雰囲気中で先の焼成温度よりも低いが荷重で反りが直る程度に軟化するものの相互のプレートが融着しない適度な温度で焼成すれば、反り変形を修正することができる。この場合でも、プレート板を複数枚重ね合わせればよいので、体積が小さく、雰囲気ガスコストは低いものとなる。
【0043】
つぎに、接合工程について述べると、先ず、容器本体の発熱面となる底部外面または得られた発熱層付プレートの接合面に耐熱性の無機接着材を塗布する。この無機接着材は、熱膨張係数が容器本体と同様に小さいことが重要で、その構成成分である骨材成分と接着成分のうち、骨材成分としては、ペタライト等のリチウム珪酸塩粉末かコージライト等の熱膨張率の小さい結晶粉末が好ましい。
【0044】
また、熱膨張率はこれらよりもやや大きいが炭化珪素や窒化珪素や窒化アルミ等の粉末も使用も可能であり、これらの方が熱伝導も良く応力歪に対しても抵抗力が強いが、接合工程の高温での熱処理や調理時のヒータの過熱時などに徐々に酸化する可能性があるので配合量などを考慮する必要がある。
【0045】
また、接着成分は、珪酸と酸化ナトリウムを主成分とする水ガラス、あるいはコロイダルシリカなどの水溶液のいずれも適用できる。これらは、セメントのように高温で脆くならず、少量でも接着力が強く、接着部分が高密度に構成され、低温で接着できるため安価で熱歪を小さくできる等の特長が多い。特に水ガラスは接着力が強力で強固な接着に適しており、無機接着材として保存性に優れていて、コロイダルシリカより実用的である。また、低融点ガラスも利用できなくはないが、酸化鉛を含む場合が多いので本発明のような食器としても用途には適当ではない。
【0046】
次に、この接着材を介して容器本体と発熱層付プレートを貼り合わせる。このとき、接着材の内部に大きな気泡を巻き込むと熱伝導率が低下し加熱エネルギー伝達の効率が悪くなるうえ、水分が滲み込んだようなときには加熱時に沸騰して破損のおそれもあるため、大きな気泡を巻き込まないように接着することが重要であり、このために、プレートを押圧しながら緩やかに回転させたり、あるいは対象物を真空下に配置して接合するなどの操作を行うのが好ましい。
【0047】
次に、この接合強度を強固なものにするため、接着した対象物を加熱し接着剤を硬化、あるいは溶融、固化させる。水ガラスまたはコロイダルシリカを用いた場合の最高加熱温度は、その種類によって200〜800℃の範囲で選択できるが、温度が低く硬化が不充分であると、強度不足となったり気孔が多くなったりし、水ガラスの場合には水に溶けやすくなるなどの不都合が生ずる。また、温度が高すぎると骨材との反応が進みすぎ、接着剤の熱膨張率が大きくなり、剥離などの原因になる。
【0048】
かくして、本発明の第2の発明の電磁加熱調理容器である、リチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とし、熱膨張係数が4×10 −6 /℃以下の低熱膨張性セラミックスであるセラミック質調理容器の底部外面に、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、タングステン、およびこれら金属の合金のうちより選ばれた1種以上の金属粒子と、その金属粒子分100重量部に対して10〜50重量部のリチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とするセラミックス質の無機質バインダとからなる導電性を有する発熱層が形成されたセラミック質プレートと、そのセラミック質プレートの外面を被覆するリチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とし、熱膨張係数が4×10 −6 /℃以下の低熱膨張性セラミックスであるセラミック質保護層とを一体に具備している電磁加熱調理容器を得ることができるのである。
【0049】
【実施例】
(実施例1)
カオリン、ペタライト等を主原料とする耐熱陶磁器原料生地を準備する。この生地は、特願平9−4825号出願の明細書記載のものに準拠するもので、1150℃で吸水率がほぼ0となり、熱膨張係数は2.5×10−6である。この生地を材料厚さ8mm、平らな面の底面が直径25cmの鍋の形状に成形し、1190℃で焼成した。
【0050】
次に、この底部外面上に外径20cm、内径10cmの環状パターンで、ニッケル粉末80重量%、ガラス粉末20重量%のペーストを作成して塗布厚70ミクロンになるようにスクリーン印刷して金属質層を形成し、その上にガラス粉末のペーストを塗布厚100ミクロンになるようにスクリーン印刷して保護層で被覆した。次に、窒素100%のガス中で、最高温度1000℃で2時間焼成して、発熱層を設けた電磁加熱調理容器を製作した。
この調理容器に一定量の水を入れ、200v、2kwの電磁調理容器で加熱して昇温速度を調べ、かつ1時間加熱と1時間冷却を20回繰り返して外観変化(破損と色調の変化)を調べたところいずれも問題がなかった。
【0051】
(実施例2)
カオリン、ペタライト等を主原料とする耐熱陶磁器原料生地を準備する。この生地は、特願平8−206066号出願の明細書記載のものに準拠するもので、1260℃で吸水率がほぼ0となり、熱膨張係数は1.2×10−6である。この生地を、厚さ8mm、平らな面の底部が直径25cmの鍋の形に成形した。
【0052】
次に、この調理容器の底部外面に、表1に示す金属・無機質組成物のペーストを、外径23cm内径12cmの環状形状にスクリーン印刷して、表1に示す塗布厚の金属質層を形成した。次に、この金属質層を覆うように上記耐熱陶磁器原料をペースト化したものをスクリーン印刷と乾燥を繰り返し被覆し、厚さ0.3mmの保護層を形成した。次に、30℃の水中を通過させた水素25%と窒素75%の混合ガス中で、最高温度1290℃で2時間焼成し、発熱層を設けた電磁加熱調理容器を製作した。
【0053】
次に、この調理容器の中に一定量の水を入れ、200v、2kwの電磁調理器で加熱して昇温速度を調べ、かつ1時間加熱と1時間冷却を20回繰り返して外観変化(破損と色調の変化)を調べたところ、表1に示す結果を得た。
この結果によれば、試料 NO.1-1 、NO.1-5に若干の不具合が認められたが、実用上支障が生じるものではなかった。
【0054】
【表1】
Figure 0004017135
Mo W NiO 欄:各金属 (NiO は酸化物)の粉末の重量%を示す。
BID.欄:無機質バインダの重量%を示す。この実施例では、容器に用いたリチウム磁器生地と同じ生地の乾燥物を用いた。
ATM 欄:混合は、水素25%と窒素75%の混合ガスを示す。
昇温速度、外観変化の欄:○は異常なし、△はやや遅い、またはやや変色ありを意味する。
【0055】
(実施例3)
カオリン、ペタライト等を主原料とする耐熱陶磁器原料生地を準備する。この生地は、特願平9−4825号出願の明細書記載のものに準拠するもので、1150℃で吸水率がほぼ0となり、熱膨張係数は2.3×10−6である。この生地を用いて、厚さ8mmで底面が直径25cmの平らな面の調理容器を成形した。次に、この容器の底部外面に、表2に示す金属・無機質組成物のペーストを外径23cm、内径12cmの環状形状にスクリーン印刷して、塗布厚100μmの金属質層を形成した。
【0056】
次に、この金属質層を覆うように上記耐熱陶磁器原料生地をペースト化したものをスクリーン印刷と乾燥とを繰り返し行い、厚さ0.3mmの保護層を形成した。次いでこれらを、30℃の水中を通過させた水素25%と窒素75%の混合ガス、または窒素100%のガスのいずれかの雰囲気中で、最高温度1190℃で2時間焼成し、発熱層を設けた電磁加熱調理容器を製作した。
【0057】
このようにして得た調理容器の中に一定量の水を入れ、200v、2kwの電磁調理器で加熱して昇温速度を調べ、かつ1時間加熱と1時間冷却を20回繰り返して外観変化(破損と色調の変化)を調べたところ、表2に示すように、すべての試料において何等の不具合も生じるものではなかった。
【0058】
【表2】
Figure 0004017135
Ni Fe Co Mo の欄:各金属の粉末の重量%を示す。
BID.欄:無機質バインダの重量%を示す。この実施例では、容器に用いたリチウム磁器生地と同じ生地の乾燥物を用いた。
ATM 欄:窒素は、窒素100%の雰囲気ガスを示す。
昇温速度、外観変化の欄:○は異常なしを意味する。
【0059】
(実施例4)
カオリン、ペタライト等を主原料とする耐熱陶磁器原料生地を準備する。この生地は、1150℃で吸水率がほぼ0となり、熱膨張係数は2.5×10−6である。この生地を成形して厚さ2.4mmのセラミック質シートを作成し、外径を直径24cm、内径を直径10cmの環状に切り取り、これを空気中1180℃で2時間焼成し、更に、平らなアルミナ板で挟みつけながら1100℃で1時間焼成して反り変形を小さく修正した焼成済みセラミック質シートを得た。
【0060】
次にこのセラミック質シート上に外径20cm、内径10cmのパターンで、ニッケル粉末80重量%、ガラス粉末20重量%のペーストを作成して、塗布厚70μmになるようにスクリーン印刷して金属質層を形成した。そして、その上にガラス粉末のペーストを塗布厚100μmになるようにスクリーン印刷して金属質層を被覆してから、次に、窒素100%の雰囲気中で、最高温度1000℃で2時間焼成して発熱層付きのセラミック質シートを製作した。
【0061】
そして、このセラミック質シートと同じ原料生地を用いて成形、焼成して実施例3の場合に同形状の容器を予め用意しておき、この底部外面に、骨材成分としてペタライトとコージライトあるいは窒化珪素などの粉末を、接着成分として珪酸ナトリウム30%水溶液である水ガラス3号とコロイダルシリカを40%含むシリカゾルとを、表3に示す比率で混合して得た無機接着材を塗布した。次いで、先に製作した発熱層付きのセラミック質シートを、シート面を接着材側にして重ね合わせ、真空中でシート部分を緩やかに回転させ空気を抜き取り、乾燥後、400℃の温度で1時間加熱して、接着材を十分に硬化させた。
【0062】
このようにして得た調理容器の中に一定量の水を入れ、200v、2kwの電磁調理器で加熱して昇温速度を調べ、かつ1時間加熱と1時間冷却を20回繰り返して外観変化(破損と色調の変化)を調べたところ、表2に示すように、すべての試料において何等の不具合も生じるものではなかった。
【0063】
【表3】
Figure 0004017135
【0064】
(実施例5)
カオリン、ペタライト等を主原料とする耐熱陶磁器原料生地を準備する。この生地は、1150℃で吸水率がほぼ0となり、熱膨張係数は2.5×10−6である。この生地を、平らな面の底部が直径25cmで厚さ8mmの鍋状容器に成形した後、空気中1180℃で2時間焼成し陶磁器質調理容器を製作した。
次に、1250℃で吸水率がほぼ0となり、熱膨張係数は2.2×10−6となる生地を成形して厚さ2.4mmのシートを作成し、空気中1280℃で2時間焼成し、更に平らなアルミナ板に挟みつけながら1180℃で1時間焼成して反りを小さく修正した焼成済みセラミック質シートを得た。
【0065】
このシート上に、表−2、NO.2-6の粉末組成のペーストを外径20cm、内径10cmの形状でスクリーン印刷して厚さ80μmの金属質層を形成した。次に、この金属質層上に、この容器生地と同じ成分の陶磁器原料生地のペーストを0.3mmの厚さに塗布し保護層とした。次に、30℃の水中を通過した水素25%と窒素75%の混合ガス中で、最高温度1190℃で2時間焼成した後、更にこれを平らなアルミナ磁器板で挟みながら、窒素ガス中で荷重をかけて1120℃で1時間焼成し、反りを小さく修正して、発熱層付きセラミック質シートを得た。
【0066】
次に、先に製作した容器の底部外面に、表3のNO.3-1の成分の無機接着材を塗布し、その上に先の発熱層付きセラミック質シートを重ね合わせ、真空中で回転して挟みこまれた空気を抜き取った後、乾燥し、400℃の温度で1時間加熱して、接着材を十分に硬化させて、電磁加熱調理容器を得た。
【0067】
このようにして得た調理容器の中に一定量の水を入れ、200v、2kwの電磁調理器で加熱して昇温速度を調べ、かつ1時間加熱と1時間冷却を20回繰り返して外観変化(破損と色調の変化)を調べたところ、表2に示すように、すべての試料において何等の不具合も生じるものではなかった。
【0068】
(実施例6)
カオリン、ペタライト等を主原料とする耐熱陶磁器原料生地を準備する。
この生地は、1260℃で吸水率がほぼ0となり、熱膨張係数は1.2×10−6である。この生地を成形し、平らな面の底面が直径25cm、厚さ8mmの鍋形状の容器を形成し、空気中1290℃で2時間焼成し陶磁器質容器を製作した。次に、この生地に成形助剤バインダー加えたものを押し出して平板に成形し、更にロールで引き伸ばして厚さ2.0mm、0.6mmのシートを作成した。
【0069】
そして、モリブテン粉末85重量%、上記生地を乾燥したものを15重量%の割合で混合したペーストを準備し、これを、先の厚さが2.0mmのシートに外径23cm、内径12cmの環状形状でスクリーン印刷して塗布厚80μmの金属質層を形成した。
次に、この金属質層を覆うように上記耐熱陶磁器原料生地をペースト化したものをスクリーン印刷して被覆した後、この上に先に準備した他の厚さ0.6mmのシートを重ね合わせて一体化して金属質層を内在した複合シートを作成した。
【0070】
次に、これらを、30℃の水中を通過した水素25%と窒素75%の混合ガス中で、最高温度1290℃で2時間焼成し、更にこれを平らなアルミナ磁器板で挟みながら、荷重をかけて前記に同じ混合ガス中で1180℃で1時間焼成し、反りを小さく修正して、発熱層付きセラミック質シートを製作した。
【0071】
次に、先に準備した鍋状容器の底部外面上に表3、NO.3-3の成分の無機接着材を塗布し、その上に先の発熱層付きセラミック質シートを重ね合わせ、真空中で回転して挟みこまれた空気を抜き取った後、乾燥してから500℃で1時間加熱して接着材を十分に硬化させ、電磁加熱調理容器を製作した。
【0072】
このようにして得た調理容器の中に一定量の水を入れ、200v、2kwの電磁調理器で加熱して昇温速度を調べ、かつ1時間加熱と1時間冷却を20回繰り返して外観変化(破損と色調の変化)を調べたところ、表2に示すように、すべての試料において何等の不具合も生じるものではなかった。
【0073】
【発明の効果】
本発明の陶磁器質またはガラス質の電磁加熱調理容器およびその製造方法は、詳記したように、発熱金属体に融点が低く高価な銀を使用しないでニッケル等の比較的融点が高く、かつ安価な卑金属を使用するので、銀の場合よりも高出力の電磁調理器に適合可能で安価なものとなる。本発明により従来の陶磁器やガラス製の電磁調理容器の高出力化が可能になりかつ耐久性も向上し、高層ビル内の厨房用に限らず一般業務用あるいは家庭用としても普及させ得るセラミック質電磁加熱調理容器を提供するもにとして、本発明はその技術的価値は大なるものがある。

Claims (8)

  1. リチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とし、熱膨張係数が4×10 −6 /℃以下の低熱膨張性セラミックスであるセラミック質調理容器の底部外面に、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、タングステン、およびこれら金属の合金のうちより選ばれた1種以上の金属粒子と、その金属粒子分100重量部に対して10〜50重量部のリチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とするセラミックス質の無機質バインダとからなる導電性を有する発熱層と、その発熱層の外面を被覆する、リチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とし、熱膨張係数が4×10 −6 /℃以下の低熱膨張性セラミックスであるセラミック質保護層とを一体に具備していることを特徴とする電磁加熱調理容器。
  2. リチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とし、熱膨張係数が4×10 −6 /℃以下の低熱膨張性セラミックスであるセラミック質調理容器の底部外面に、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、タングステン、およびこれら金属の合金のうちより選ばれた1種以上の金属粒子と、その金属粒子分100重量部に対して10〜50重量部のリチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とするセラミックス質の無機質バインダを主成分とする金属・無機質組成物からなる金属質層を付着させる金属質層形成工程、その外面をリチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とし、熱膨張係数が4×10 −6 /℃以下の低熱膨張性セラミックスを形成するセラミック質組成物保護層で被覆する保護層形成工程、および非酸化性雰囲気中において1000℃〜1400℃の範囲の最高温度で前記金属質層と保護層とを前記調理容器の底部外面に一体に焼結させる焼成工程を含むことを特徴とする電磁加熱調理容器の製造方法。
  3. リチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とし、熱膨張係数が4×10 −6 /℃以下の低熱膨張性セラミックスであるセラミック質調理容器の底部外面に、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデンおよびこれら金属の合金のうちより選ばれた1種以上の金属粒子と、その金属粒子分100重量部に対して10〜50重量部のリチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とするセラミックス質の無機質バインダを主成分とする金属・無機質組成物からなる金属質層を付着させる金属質層形成工程、その外面をリチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とし、熱膨張係数が4×10 −6 /℃以下の低熱膨張性セラミックスであるガラス粉末を主成分とする保護層で被覆する保護層形成工程、および非酸化性雰囲気中において800℃〜1200℃の範囲の最高温度で前記金属質層と保護層とを前記調理容器の底部外面に一体に焼結させる焼成工程を含むことを特徴とする電磁加熱調理容器の製造方法。
  4. リチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とし、熱膨張係数が4×10 −6 /℃以下の低熱膨張性セラミックスであるセラミック質調理容器の底部外面に、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、タングステン、およびこれら金属の合金のうちより選ばれた1種以上の金属粒子と、その金属粒子分100重量部に対して10〜50重量部のリチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とするセラミックス質の無機質バインダとからなる導電性を有する発熱層が形成され、かつ前記セラミック質調理容器と熱膨張率が同等のセラミック質プレートを接合して備え、かつそのセラミック質プレートの前記発熱層の外面を被覆するところの、リチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とし、熱膨張係数が4×10 −6 /℃以下の低熱膨張性セラミックスであるセラミック質保護層を一体に具備していることを特徴とする電磁加熱調理容器。
  5. 予め準備した、リチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とし、熱膨張係数が4×10 −6 /℃以下の低熱膨張性セラミックスであるセラミック質調理容器の底部外面形状に対応させて、そのセラミック質調理容器と熱膨張率が同等のセラミック質プレートを準備するプレート製作工程、このセラミック質プレートの表面に、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、タングステン、およびこれら金属の合金のうちより選ばれた1種以上の金属粒子と、その金属粒子分100重量部に対して10〜50重量 部のリチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とするセラミックス質の無機質バインダを主成分とする金属・無機質組成物からなる金属質層を付着させる金属質層形成工程、その外面を、リチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とし、熱膨張係数が4×10 −6 /℃以下の低熱膨張性セラミックスを形成するセラミック質組成物を主成分とする保護層で被覆する保護層形成工程、非酸化性雰囲気中において1000℃〜1400℃の範囲の最高温度で前記金属質層と保護層とを前記セラミック質プレートに一体に焼結させる焼成工程、および得られたセラミック質プレートを前記セラミック質調理容器の底部外面に接合する接合工程を含むことを特徴とする電磁加熱調理容器の製造方法。
  6. 予め準備した、リチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とし、熱膨張係数が4×10 −6 /℃以下の低熱膨張性セラミックスであるセラミック質調理容器の底部外面形状に対応させて、そのセラミック質調理容器と熱膨張率が同等のセラミック質プレートを準備するプレート製作工程、このセラミック質プレートの表面に、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデンおよびこれら金属の合金のうちより選ばれた1種以上の金属粒子と、その金属粒子分100重量部に対して10〜50重量部のリチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とするセラミックス質の無機質バインダを主成分とする金属・無機質組成物からなる金属質層を付着させる金属質層形成工程、その外面を、リチウム珪酸塩およびまたはコージライトを主成分とし、熱膨張係数が4×10 −6 /℃以下の低熱膨張性セラミックスからなるガラス粉末を主成分とする保護層で被覆する保護層形成工程、非酸化性雰囲気中において800℃〜1200℃の範囲の最高温度で前記金属質層と保護層とを前記セラミック質プレートに一体に焼結させる焼成工程、および得られたセラミック質プレートを前記セラミック質調理容器の底部外面に接合する接合工程を含むことを特徴とする電磁加熱調理容器の製造方法。
  7. 請求項5、6に記載のセラミック質プレートの接合工程において、ペタライトなどのリチウム珪酸塩、コージライトおよび窒化珪素の1種以上の低熱膨張質粉末と珪酸ナトリウムおよびまたはコロイダルシリカとを主成分とする無機質接着材を介在させて接合する電磁加熱調理容器の製造方法。
  8. 請求項2、3、5、6、7のいずれかに記載の電磁加熱調理容器の製造方法において、金属・無機質組成物に使用する金属の一部または全部を金属酸化物の形態で供給するとともに、焼成工程を還元性雰囲気中で行うものとした電磁加熱調理容器の製造方法。
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