JP4016695B2 - 圧電振動デバイスの製造方法及びその製造方法により製造された圧電振動デバイス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、音叉型水晶振動子や厚みすべり型水晶振動子等に代表される圧電振動デバイスの製造方法及びその製造方法により製造された圧電振動デバイスに係る。特に、圧電振動デバイスの生産性の向上を図るための対策に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、圧電振動デバイスの一種類として、小型化を図ることが容易な音叉型水晶振動子が知られている。この種の振動子は、例えば特開平10−294631号公報に開示されているように、エッチング加工等により音叉型に形成された水晶ウェハに対してフォトリソグラフィー技術を利用して表面に所定の電極が形成されて成る音叉型水晶振動片を備えている。以下、この電極の形成工程について説明する。
【0003】
図1は、一般的な音叉型水晶振動片1の正面図であって、電極形成部分に斜線を付している。図2はフォトリソグラフィー技術によって水晶ウェハ1Aの表面に電極13,14を形成する工程を示す図であって、図1のII-II線に沿った断面部分を示している。
【0004】
電極13,14の形成工程では、先ず、上記音叉型に形成された水晶ウェハ1A(図2(a)参照)に対し、その全面にクロム及び金等の材料で成る電極膜15を真空蒸着法等により形成する(図2(b)参照)。その後、ポジティブタイプのフォトレジスト液より成るレジスト膜3によって水晶ウェハ1Aの全面をコーティングする(図2(c)参照)。このレジスト膜3に対して所定の露光、現像処理を行って、電極膜15をエッチングすべき領域のレジスト膜3に開口部31を形成する(図2(d)参照)。そして、この開口部31に露出した電極膜15をエッチング処理して部分的に電極膜15を除去した後に(図2(e)参照)、上記レジスト膜3を除去する(図2(f)参照)。これにより、水晶ウェハ1Aの所定領域のみに電極13,14が形成され、音叉型水晶振動片1が得られる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このようにして製造された音叉型水晶振動片1の電極形成領域としては、図1及び図2(f)に示すように、水晶ウェハ1Aの各エッジ部を介して隣り合う(直交する)面同士に亘って連続した領域となっている。これは、それぞれの脚部11,(12)における主面11a,(12a)の電極13,(14)と、他方の脚部12,(11)における側面12b,(11b)の電極13,(14)とを接続して互いに導通させるためである。このため、この種の圧電振動デバイスにあっては、各エッジ部での電極13,13、(14,14)の連続性を確保することは極めて重要である。
【0006】
ところが、上述した電極の形成工程では以下に述べるような課題があった。図12は、この課題を説明するための図2に相当する図である。一般に、図12(c)に示すように水晶ウェハ1Aの全面をレジスト膜3によってコーティングする場合には、水晶ウェハ1Aをレジスト液槽に浸漬したり、レジスト液を水晶ウェハ1Aにスプレーにより塗布することが行われている。この場合、水晶ウェハ1Aの各面に塗布されたレジスト液には表面張力が発生し、図12(c)に破線の矢印で示す方向にレジスト液が引き寄せられる。つまり、レジスト液はエッジ部から離れる方向に流動しやすいものである。このため、エッジ部ではレジスト液の塗布量が十分に得られず、場合によってはエッジ部周辺には全くレジスト液が存在しなくなってしまうといった状況が発生する。図13は、この表面張力の影響によってエッジ部にレジスト液(図中の仮想線参照)が存在していない状態にある水晶ウェハ1Aの正面図である。
【0007】
このようにエッジ部周辺にレジスト液が存在しない状態で上記の露光、現像処理や電極膜15のエッチング処理を行うと、図12(e),(f)に示すように、上記開口部31に露出した電極膜15ばかりでなくエッジ部周辺の電極膜15も除去され、このエッジ部での電極13,14の連続性を確保することができなくなってしまい、完成した水晶振動片1は不良品となる。
【0008】
この不具合を解消するための手段として、水晶ウェハ1Aに対するレジスト液の塗布量を多く設定することが考えられる。
【0009】
しかし、この場合にあっても、上記表面張力の発生を避けることはできない。このため、エッジ部周辺にはある程度の膜厚のレジスト膜3を存在させることができたとしても、それ以外の部分ではレジスト膜3の膜厚が必要以上に大きくなってしまう。これでは、この膜厚の大きい部分に対する露光エネルギ量が不足し、露光、現像処理を十分に行うことができない。その結果、レジスト膜3を除去すべき領域(上記開口31を形成すべき領域)において部分的にレジスト膜3が残ってしまい、電極膜15の必要箇所のエッチングが行えなくなってしまう可能性がある。
【0010】
また、このレジスト膜3の膜厚の大きい部分に対する露光量を大きく設定して不要なレジスト膜3が残らないようにすることも考えられるが、これでは、パターンニングの精度の悪化を招いてしまい、振動子の小型化を阻害する要因となってしまう。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、水晶ウェハ(圧電振動基板)の各面に塗布されたレジスト液に発生する表面張力による不具合を解消し、不良品の発生率を削減して圧電振動デバイスの生産性の向上を図ることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
−発明の概要−
上記の目的を達成するために、本発明は、圧電振動基板表面の主面とエッジ部の周辺を不連続面とすることにより、この部分で発生する表面張力を低減させ、エッジ部におけるレジスト液の塗布量を十分に確保できるようにしている。
【0013】
−解決手段−
具体的には、圧電振動基板上のエッジ部を介して隣り合う面同士に亘って連続する電極をフォトリソグラフィー技術によって形成する圧電振動デバイスの製造方法を対象とする。この製造方法に対し、圧電振動基板にレジスト液を塗布する工程に先立って、上記互いに隣り合う面の少なくとも一方のエッジ部近傍位置に、レジスト液に生じる表面張力を低減する張力低減手段を形成する基板表面前処理工程を行う。そして、この基板表面前処理工程において、張力低減手段を、エッジ部近傍位置における圧電振動基板の表面を部分的に不連続面とする凹陥部として形成する。
【0015】
この特定事項により、圧電振動基板上のエッジ部周辺における面の連続性がなくなり、圧電振動基板に塗布されたレジスト液に発生する表面張力は低減される。このため、エッジ部におけるレジスト液の塗布量を十分に得ることができて、電極の形成位置を正確に得ることができ、不良品の発生率を大幅に削減することができる。
【0016】
基板表面前処理工程の実行タイミングとして具体的には以下のものが掲げられる。つまり、圧電振動基板をエッチング加工により所定形状に形成した後に、この圧電振動基板に電極を形成するものに対し、上記基板表面前処理工程を、この圧電振動基板のエッチング加工と同時に行って張力低減手段を形成するようにしている。例えば、圧電振動素板に対して所定形状(例えば音叉型水晶振動片にあっては音叉形状)のメタルパターンを成形する際、張力低減手段を形成すべき位置にレジストを設けないことにより、圧電振動素板のエッチング加工時、所定形状の圧電振動基板が形成されると同時にこの圧電振動基板の所定領域に張力低減手段が形成されることになる。このため、張力低減手段を形成するための特別な工程を必要とすることがなく、作業効率の向上を図ることができる。
【0017】
更に、基板表面前処理工程における張力低減手段の形成位置は、フォトリソグラフィー工法において使用されるフォトレジスト液のタイプによって選択される。具体的に、ネガティブタイプのフォトレジスト液より成るレジスト膜を使用したフォトリソグラフィー工法によって電極を形成する場合、圧電振動基板上の電極非形成部に対応した位置に張力低減手段を形成することになる。
【0018】
つまり、ネガティブタイプのフォトレジスト液より成るレジスト膜を使用する場合、電極材料が蒸着される前の圧電振動基板の表面にレジスト膜を塗布し、所定の露光箇所のみにレジスト膜を残し、その他の箇所に電極材料を蒸着することになる。このため、圧電振動基板上の電極非形成部に対応した位置に張力低減手段を形成しておき、電極材料の蒸着が不要な箇所においてレジスト膜を十分に確保し、必要以外の箇所に電極材料が蒸着されてしまうことを回避できるようにしておく。これはリフトオフ法によって不要な電極材料を除去する場合に特に有効であり、必要以外の箇所に電極材料が残ってしまって電極間がショート(特に、音叉型水晶振動片にあっては各脚部の基端接続部でショート)してしまうといった不具合を確実に回避することが可能になる。
【0019】
また、上記各圧電振動デバイスの製造方法によって製造された圧電振動デバイスも本発明の技術的思想の範疇である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
(第1実施形態)
先ず、第1実施形態について説明する。本実施形態では、音叉型水晶振動子に本発明を適用した場合について説明する。
【0022】
図1は本形態に係る音叉型水晶振動子に備えられる音叉型水晶振動片1を示す図である。この音叉型水晶振動片1は、2本の脚部11,12を備えており、各脚部11,12に第1及び第2の励振電極13,14が形成されている。図1では、これら励振電極13,14の形成部分に斜線を付している。
【0023】
第1の励振電極13は、一方の脚部11の表裏面(主面)11aと他方の脚部12の側面12bとに設けられ、それぞれが接続されている。同様に、第2の励振電極14は、他方の脚部12の表裏面(主面)12aと一方の脚部11の側面11bとに設けられ、それぞれが接続されている(各側面11b,12bの電極については図示省略)。これら励振電極13,14は、クロム(Cr)及び金(Au)の金属蒸着によって形成された薄膜であって、その膜厚は例えば2000Åに設定されている。尚、これら励振電極13,14の形成動作については後述する。
【0024】
また、図示しないが、この音叉型水晶振動片1はベースに支持され、このベースの外周部に音叉型水晶振動片1を覆うようにキャップが取り付けられて音叉型水晶振動子が構成される。
【0025】
本形態に係る音叉型水晶振動片1の特徴は、図3に示すように、水晶ウェハ1Aの主面11a,12aの表裏両側の所定領域に張力低減手段としてのピンホール2,2,…が形成されていることにある。具体的には、各脚部11,12の幅方向両側のエッジ部A及び水晶ウェハ1Aの基部16の幅方向両側のエッジ部Aに沿って多数のピンホール2,2,…が形成されている。図3(b)は図3(a)のIII-III線に沿った断面図である。
【0026】
このピンホール2,2,…を設けたことにより、各脚部11,12及び基部16のエッジ部Aにあっては、表裏の各面11a,12aにおいて連続性がなくなり、水晶ウェハ1Aに対する電極13,14の形成工程において、水晶ウェハ1Aの表裏面11a,12aに塗布されたレジスト液に発生する表面張力が低減されるようになっている。つまり、各エッジ部Aにおけるレジスト液の塗布量を十分に確保することができるようになっている。
【0027】
このピンホール2,2,…の形成動作(本発明でいう基板表面前処理工程)は、エッチング加工等により水晶素板を音叉型に形成する際に同時に行われる。つまり、水晶素板に対して音叉型のメタルパターンを成形する際、このピンホール2,2,…を形成すべき位置にレジストを設けないことにより、水晶素板のエッチング加工時に、音叉型の水晶ウェハ1Aが形成されると同時にこの水晶ウェハ1Aの所定領域にピンホール2,2,…が形成されることになる。
【0028】
また、このピンホール2,2,…は、水晶素板をエッチング加工により音叉型に形成して水晶ウェハ1Aを得た後、この水晶ウェハ1Aの所定位置にレーザを照射することによって形成してもよい。
【0029】
以下、上記ピンホール2,2,…を備えた水晶ウェハ1Aに対する電極13,14の形成工程について図2(図1のII-II線に沿った断面部分を示す図)を用いて説明する。
【0030】
先ず、従来の電極の形成工程と同様に、上記音叉型に形成された水晶ウェハ1A(図2(a)参照)に対し、その全面にクロム及び金等の材料で成る電極膜15を真空蒸着法等により形成する(図2(b)参照)。その後、ポジティブタイプのフォトレジスト液より成るレジスト膜3によって水晶ウェハ1Aの全面をコーティングする(図2(c)参照)。このレジスト膜3によるコーティング作業は、水晶ウェハ1Aをレジスト液槽に浸漬したり、レジスト液を水晶ウェハ1Aにスプレーにより塗布することにより行われる。この場合、従来の水晶ウェハ1Aでは主面11a,12aに塗布されたレジスト液には表面張力が大きく発生し、エッジ部ではレジスト液の塗布量が十分に得られず、場合によってはエッジ部周辺には全くレジスト液が存在しなくなってしまう場合があった。これに対し、本形態のものでは、エッジ部Aに上記ピンホール2,2,…(図2では図示省略)が形成されているため、水晶ウェハ1Aの主面11a,12aの連続性がなくなっており、水晶ウェハ1Aの主面11a,12aに塗布されたレジスト液に発生する表面張力は低減される。このため、エッジ部Aにおけるレジスト液の塗布量を十分に得ることができている。
【0031】
その後、このフォトレジスト液により形成されたレジスト膜3に対して所定の露光、現像処理を行って、電極膜15をエッチングすべき領域のレジスト膜3に開口部31を形成する(図2(d)参照)。そして、この開口部31に露出した電極膜15をエッチング処理して部分的に電極膜15を除去した後に(図2(e)参照)、上記レジスト膜3を除去する(図2(f)参照)。これにより、水晶ウェハ1Aの所定領域のみに電極13,14が形成された音叉型水晶振動片1が得られる。
【0032】
以上説明したように、本形態では、水晶ウェハ1A上のエッジ部A周辺にピンホール2,2,…を設けたことにより、その周辺部における主面11a,12aの連続性がなくなり、水晶ウェハ1Aに塗布されたレジスト液に発生する表面張力を低減できる。このため、エッジ部Aにおけるレジスト液の塗布量を十分に得ることができて、電極13,14の形成位置を正確に得ることができ、不良品の発生率を大幅に削減することができる。
【0033】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本形態も音叉型水晶振動子に本発明を適用した場合について説明する。
【0034】
図4(a)は本形態に係る音叉型水晶振動片1を示す図である。この図に示すように、本音叉型水晶振動片1では、各脚部11,12の基端接続部のエッジ部Bの円弧形状に沿うように3個のピンホール2,2,2が小間隙を存した位置に形成されている。図4(b)は、このピンホール2の形成部分の断面図であって、図4(a)におけるIV-IV線に沿った断面図である。このように、表裏面11a,11aで互いに対向する位置にピンホール2,2が形成されている。
【0035】
このような位置にピンホール2,2,2を設けたことにより、各脚部11,12の基端接続部のエッジ部B周辺での面の連続性がなくなり、水晶ウェハ1Aの主面11a,12aに塗布されたレジスト液に発生する表面張力は低減される。このため、エッジ部Bにおけるレジスト液の塗布量を十分に得ることができる。特に、この各脚部11,12の基端接続部のエッジ部Bにピンホール2,2,2を設ける構成は、ネガティブタイプのフォトレジスト液より成るレジスト膜によって水晶ウェハ1Aをレジストする場合に使用される。つまり、このエッジ部Bにおけるレジスト液の塗布量を十分に得ることによって、露光、現像処理に伴って形成されるレジスト(保護膜)を各脚部11,12の基端接続部で十分に確保し、この部分に不要な蒸着膜が付着しないようにすることができる。
【0036】
仮に、上記表面張力の影響によって各脚部11,12の基端接続部においてレジスト膜が存在しない場合、電極の蒸着時、この部分にレジスト膜を存在させることができず、第1の励振電極13と第2の励振電極14とがショートした形状で形成されてしまう。本形態では、このような状況の発生を回避することができる。
【0038】
(参考例1)
図5(a)は参考例1における水晶ウェハ1Aの平面図である。この図5(a)に示すように、本参考例1の水晶ウェハ1Aでは、上記第2実施形態のピンホールに代えて、エッジ部Bに開放する矩形状の複数(図5のものでは3個)の溝4,4,4が各脚部11,12の基端接続部のエッジ部Bに形成されている。図5(b)は図5(a)のV−V線に沿った断面図である。
【0039】
−第2実施形態の変形例−
以下、第2実施形態に係る張力低減手段の変形例について説明する。
図6(a)は第1の変形例における水晶ウェハ1Aの平面図である。この図6(a)に示すように、本変形例の水晶ウェハ1Aでは、エッジ部Bに沿って延びる円弧形状の凹部5が各脚部11,12の基端接続部のエッジ部Bの近傍に形成されている。図6(b)は図6(a)のVI-VI線に沿った断面図である。
【0040】
図7は第2の変形例における水晶ウェハ1Aの平面図である。この図7に示すように、本変形例の水晶ウェハ1Aは、ピンホール2の形成位置を変更したものである。つまり、エッジ部Bに沿う円弧形状にピンホール2,2,…を千鳥配置したものである。
【0041】
図8は第3の変形例における水晶ウェハ1Aの平面図である。この図8に示すように、本変形例の水晶ウェハ1Aは、上記図5で示した溝4,4,4と、図7で示した千鳥配置されたピンホール2,2,…とを併用したものである。
【0042】
図9は第4の変形例における水晶ウェハ1Aの平面図である。この図9に示すように、本変形例の水晶ウェハ1Aは、上記図5で示した溝4,4,4と、図6で示した凹部5とを併用したものである。
【0043】
以上のような図6〜図9に示す張力低減手段によっても、水晶ウェハ1Aの主面11a,12aの連続性をなくすことができ、水晶ウェハ1Aの主面11a,12aに塗布されたレジスト液に発生する表面張力を低減することができる。このため、エッジ部Bにおけるレジスト液の塗布量を十分に得ることができて、電極13,14の形成位置を正確に得ることができ、不良品の発生率を大幅に削減することができる。
【0044】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。本形態は厚みすべり型水晶振動子に本発明を適用した場合について説明する。
【0045】
図10(a)は本形態に係る水晶振動片8の平面図である。図10(b)は図10(a)におけるX-X線に沿った断面図である。これら図に示すように、本形態の水晶振動片8は逆メサ構造のものであって、その表面側は、底面部81、上面部82、これら底面部81と上面部82との間に亘る壁部83を備えている。
【0046】
そして、本水晶振動片8にあっては上面部82の内側縁部近傍位置に、その全周囲に亘ってピンホール2,2,…が形成されている。
【0047】
このピンホール2,2,…を設けたことにより、上面部82の内側縁部近傍にあっては、面の連続性がなくなり、塗布されたレジスト液に発生する表面張力が低減されるようになっている。その結果、壁部83から上面部82に亘って形成される電極を正確な位置に形成することができる。尚、このピンホール2,2,…は、必ずしも上面部82の内側縁部近傍位置の全周囲に亘って形成する必要はない。例えば壁部83から上面部82に亘って引出電極が形成されるものにあってはその引出電極の形成領域のみにピンホール2,2,…を形成すればよい。
【0048】
(参考例2)
次に、参考例2について説明する。
【0049】
図11(a)は本参考例2に係る水晶振動片の平面図である。図11(b)は図11(a)におけるXI-XI線に沿った断面図である。これら図に示すように、本参考例2の水晶振動片8にあっては上面部82の内側縁部に、壁部83に向かって開放する溝4が形成されている。この溝4は平面視が三角形状のものである。本参考例2によっても、上面部82の内側縁部近傍にあっては、面の連続性がなくなり、塗布されたレジスト液に発生する表面張力が低減され、その結果、壁部83から上面部82に亘って形成される電極を正確な位置に形成することができる。
【0050】
−その他の実施形態−
上記第1実施形態では、水晶ウェハ1Aの主面11a,12aのみにピンホール2,2,…を形成していた。本発明はこれに限らず、水晶ウェハ1Aの側面11b,12bにピンホール2,2,…を形成してもよい。また、上記ピンホール2,2,…の大きさ及び深さは、水晶ウェハ1Aの強度が大幅に低下したり電気的特性が劣化したりしない範囲内で大きく設定しておくことが好ましい。これは、水晶ウェハ1Aに対するレジスト液の塗布量が多すぎた場合に、余分なレジスト液をピンホール2,2,…によって回収して、レジスト液に発生する表面張力を小さくするためである。
【0051】
また、この第1実施形態の構成においても、上記第2実施形態の変形例(図8,図9)の場合と同様に複数種類の凹陥部を併用するようにしてもよい。
【0052】
更に、第1実施形態にあっては、ポジティブタイプのフォトレジスト液を使用したフォトリソグラフィー工法によって電極を形成する場合であって、電極形成部に対応した位置に張力低減手段(ピンホール)を形成していた。本発明はこれに限らず、ポジティブタイプのフォトレジスト液を使用したフォトリソグラフィー工法によって電極を形成する場合であって、非電極形成部に対応した位置に張力低減手段を形成してもよい。これによれば電極形成部にはピンホール等の加工が行われないので、張力低減手段を形成したことによる悪影響が電極形成部に及ぶことがなくなる。
【0053】
上記第2実施形態では、張力低減手段としてエッジ部Bの円弧形状に沿うように3個のピンホール2,2,2を形成していた。このピンホール2の形状及び個数はこれに限るものではない。
【0054】
更に、第3実施形態の構成においても、上記第2実施形態の変形例(図6〜図9)の場合と同様に、溝を形成したり、千鳥配置したピンホールを形成したり、複数種類の凹陥部を併用するようにしてもよい。
【0055】
また、本発明は、水晶振動子に限らず、ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウムなどを使用した圧電振動子や、その他種々の電子部品の製造に適用することも可能である。
【0056】
【発明の効果】
以上のように、本発明では、圧電振動基板の表面を部分的に不連続面とすることにより、この部分で発生する表面張力を低減させ、エッジ部におけるレジスト液の塗布量を十分に確保できるようにしている。このため、エッジ部におけるレジスト液の塗布量を十分に得ることができて、電極の形成位置を正確に得ることができ、不良品の発生率を大幅に削減できて、圧電振動デバイスの生産性の向上を図ることができる。
【0057】
また、基板表面前処理工程を、圧電振動基板のエッチング加工と同時に行うようにした場合には、張力低減手段を形成するための特別な工程を必要とすることがなく、作業効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】音叉型水晶振動片の正面図である。
【図2】水晶ウェハに対する電極の形成工程を示す図である。
【図3】(a)は第1実施形態に係る水晶ウェハを示す図であり、(b)は(a)におけるIII-III線に沿った断面図である。
【図4】(a)は第2実施形態に係る音叉型水晶振動片を示す図であり、(b)は(a)におけるIV-IV線に沿った断面図である。
【図5】参考例1における水晶ウェハを示す図である。
【図6】第2実施形態の第1変形例における水晶ウェハを示す図である。
【図7】第2実施形態の第2変形例における水晶ウェハを示す図である。
【図8】第2実施形態の第3変形例における水晶ウェハを示す図である。
【図9】第2実施形態の第4変形例における水晶ウェハを示す図である。
【図10】(a)は第3実施形態に係る水晶振動片の平面図であり、(b)は(a)におけるX-X線に沿った断面図である。
【図11】(a)は参考例2に係る水晶振動片の平面図であり、(b)は(a)におけるXI-XI線に沿った断面図である。
【図12】従来例における図2相当図である。
【図13】従来例における水晶ウェハ上のレジスト液の塗布状態を示す図である。
【符号の説明】
1,8 水晶振動片
1A 水晶ウェハ(圧電振動基板)
11a,12a 主面
11b,12b 側面
13,14 励振電極
2 ピンホール(張力低減手段、凹陥部)
3 レジスト膜
5 凹部(張力低減手段、凹陥部)
A,B エッジ部
Claims (4)
- 圧電振動基板上のエッジ部を介して隣り合う面同士に亘って連続する電極をフォトリソグラフィー技術によって形成する圧電振動デバイスの製造方法であって、
上記圧電振動基板にレジスト液を塗布する工程に先立って、上記互いに隣り合う面の少なくとも一方のエッジ部近傍位置に、レジスト液に生じる表面張力を低減する張力低減手段を形成する基板表面前処理工程を行い、
この基板表面前処理工程において、張力低減手段を、エッジ部近傍位置における圧電振動基板の表面を部分的に不連続面とする凹陥部として形成することを特徴とする圧電振動デバイスの製造方法。 - 請求項1記載の圧電振動デバイスの製造方法において、
圧電振動基板は、エッチング加工により所定形状に形成された後に電極が形成されるようになっており、
基板表面前処理工程は、この圧電振動基板のエッチング加工と同時に行われて張力低減手段を形成することを特徴とする圧電振動デバイスの製造方法。 - 請求項1または2記載の圧電振動デバイスの製造方法において、
ネガティブタイプのフォトレジスト液より成るレジスト膜を使用したフォトリソグラフィー工法によって電極を形成する場合、圧電振動基板上の電極非形成部に対応した位置に張力低減手段を形成することを特徴とする圧電振動デバイスの製造方法。 - 上記請求項1〜3のうち何れか一つに記載の圧電振動デバイスの製造方法によって製造された圧電振動デバイス。
Priority Applications (4)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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