JP4014758B2 - 結晶シリコン製造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコン融液を冷却して一方向に徐々に凝固する結晶シリコン製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
多結晶シリコン太陽電池は、今日最も多く製造されている太陽電池である。
多結晶シリコン太陽電池の発電素子(ソーラー・セル)では、多結晶シリコンの品質がその性能を大きく左右する。
【0003】
多結晶シリコンの製造工程は、金属シリコンから高純度シリコンを製造する第一のプロセスとその高純度シリコンの融液を一方向凝固法により固化する第二のプロセスの2段階に分けられるが、それぞれのプロセスにおいて、多結晶シリコンの品質を向上させるべく、様々な改良がなされてきた。
【0004】
今日、多結晶シリコンの製造における最大の課題は、結晶中の不純物元素の低減および結晶性の向上である。
従来、前者の課題である不純物元素を低減するためには、第一のプロセスにおいて、金属シリコンを塩酸と反応させてトリクロロ・シランとしてガス化し、そのガスを精留し、水素ガスと反応させながら、ガスから高純度シリコンを析出している。
【0005】
一方、不純物の低減および結晶性の向上のために、後者のプロセスにおいて、一方向凝固時に、シリコン融液を攪拌しながら行うことが行われている。
攪拌の方法としては、例えば、特開昭61ー141612号公報に鋳型を回転する方法が、特開平5ー254817号公報に磁界の作用でシリコン融液内に攪拌力を発生させる方法が、特開平10ー182135号公報にシリコン融液内の固液界面より上部にランスを差し込んで不活性ガスを吹き込む方法が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、第一の方法は、設備コストやメンテナンス方法に問題があり、製造コストが高くなるという問題がある。第二の方法も、設備コストが高いという問題がある。第三の方法は、ランスが溶融してシリコン融液内で不純物となり純度を低減させるという問題がある。
【0007】
また、凝固速度が速く、攪拌が自然熱対流のみによる場合、固液界面の液相側に濃縮した不純物を十分に液相側に吐き出さずに凝固が進行することとなり、一方向凝固法による精製効果が弱くなるという問題がある。
【0008】
また、いずれの方法も、原料シリコンを融解した後についての技術であるが、融解前の原料シリコンに対しても不純物の混入は問題である。通常、原料シリコンは、チップ状シリコンであるが、チップ間の空隙には容易にCOガス、SiOガス等の不純物ガスが侵入してしまうからである。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、融解前の原料シリコンおよび融解後のシリコン融液に不純物が混入することが抑制され、不純物濃度が低く、結晶性が高い高品質の多結晶シリコンが安価で容易に製造できる結晶シリコン製造装置を提供する事を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、以下の構成を採用した。請求項1に記載の結晶シリコン製造装置は、チャンバー内のルツボに収容した原料シリコンを溶融したシリコン融液に該ルツボの内側底面から上方に正の温度勾配を付与して、前記ルツボの内側底面から上方に前記シリコン融液を結晶化する結晶シリコン製造装置において、前記ルツボの上方に配置したサセプターと、該サセプターを支持する支持部材と、該支持部材を介して前記サセプターを昇降させる昇降装置とを備えており、前記支持部材は、前記チャンバー外から不活性ガスを流入するガス流入管を備え、前記サセプターは、前記ガス流入管から流入された不活性ガスを前記原料シリコンまたは前記シリコン融液の表面に吹き出す吹出口を備え、該吹出口が前記ルツボの中心軸上に形成されていることを特徴とする。
【0011】
この結晶シリコン製造装置では、サセプターが昇降可能な構成にしたので、原料シリコンあるいはシリコン融液の表面位置の変化に合わせてサセプターを昇降し、サセプターとその表面とが適切な距離を維持しながら表面からの不純物ガスの混入を抑制できる。また、吹出口から表面に不活性ガスを吹き付けてその表面をアルゴンガスで覆うことができるので、サセプターとその表面とが適切な距離を維持しながら表面からの不純物ガスの混入を抑制できる。さらに、吹出口が、ルツボの中心軸上に形成されているので、吹出口から吹き出した不活性ガスは、原料シリコンあるいはシリコン融液の表面の中心から外周方向へと流れ、その表面を均一に覆うことができ、不活性ガスの混入をむらなく抑制できる。
【0012】
請求項2に記載の結晶シリコン製造装置は、チャンバー内のルツボに収容した原料シリコンを溶融したシリコン融液に該ルツボの内側底面から上方に正の温度勾配を付与して、前記ルツボの内側底面から上方に前記シリコン融液を結晶化する結晶シリコン製造装置において、前記ルツボの上方に配置したサセプターと、該サセプターを支持する支持部材と、該支持部材を介して前記サセプターを昇降させる昇降装置とを備えており、前記支持部材は、前記チャンバー外から不活性ガスを流入するガス流入管を備え、前記サセプターは、前記ガス流入管から流入された不活性ガスを前記原料シリコンまたは前記シリコン融液の表面に吹き出す複数の吹出口を備え、これら複数の吹出口が前記ルツボの中心軸上に対して対称に形成されていることを特徴とする。
【0013】
この結晶シリコン製造装置では、原料シリコンあるいはシリコン融液の表面位置の変化に合わせてサセプターを昇降させて、吹出口からその表面に不活性ガスを吹き付けてその表面をアルゴンガスで覆うことができるので、サセプターとその表面とが適切な距離を維持しながら表面からの不純物ガスの混入を抑制できる。さらに、複数の吹出口が、ルツボの中心軸上に対して対称に形成されているので、吹出口から吹き出した不活性ガスは、原料シリコンあるいはシリコン融液の表面の中心から外周方向へと流れ、その表面を均一に覆うことができ、不活性ガスの混入をむらなく抑制できる。
【0014】
請求項3に記載の結晶シリコン製造装置は、請求項1または請求項2に記載の結晶シリコン製造装置において、前記ルツボの水平断面形状が非円形状とされ、前記昇降装置が、前記チャンバーに固定されるとともに前記支持部材を前記ルツボの方向に接近及び離間可能に支持する支持部と、前記サセプターを前記支持部材を介して該支持部材の昇降方向を軸としてその軸回りに回動するサセプター位相調整部とを備えたことを特徴とする。
【0015】
この結晶シリコン製造装置では、サセプターを支持部材を介して支持部材の軸回りに回動する位相調整部を備えたので、原料シリコンあるいはシリコン融液の表面から不純物ガスが混入することをむらなく抑制するために適切なサセプターの位相を設定できる。これは、特に、ルツボおよびサセプターの水平断面形状が非円形状のときに効果的である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る結晶シリコン製造装置の好適な実施形態を図を参照して説明する。
結晶シリコン製造装置1は、チャンバー2内にシリコン融液3を収容するルツボ4と、そのルツボ4が載置されるとともにチャンバー2外から冷媒が流入されてルツボ4内のシリコン融液3を冷却する冷却板5と、ルツボ4および冷却板5を包囲する複数の断熱部材で形成された包囲部6と、ルツボ4の周囲を囲むルツボ断熱部材7と、包囲部6内でルツボ4の上方に配置された上部ヒーター8aと、下方に配置された下部ヒーター8bと、チャンバー2内に不活性ガスを流入するためのガス流入口(図示せず)と、複数の断熱部材の一部である可動断熱部材6aを移動する断熱部材移動装置(図示せず)と、チャンバー2の壁部2aには二重構造をなして冷却水を循環させる壁中空部(壁部冷却手段)2bと、ルツボ4の上方に配置したサセプター9と、そのサセプター9を支持する棒状の支持部材10と、その支持部材10を介してサセプター9を昇降させる昇降装置11とを備えている。また、ルツボ4の周囲や冷却板5の下方には、温度計14、14、…により温度がモニターされる。この結晶シリコン製造装置1では、ルツボ4に収容した原料シリコン3aを融解したシリコン融液3にそのルツボ4の内側底面4aから上方に正の温度勾配を付与して、内側底面4aから上方へシリコン融液3を徐々に凝固結晶化していく。
【0017】
支持部材10は、チャンバー2外部から不活性ガスを流入するガス流入管12を備え、サセプター9は、ガス流入管12から流入された不活性ガスを原料シリコン3aまたはシリコン融液3の表面に吹き出す吹出口13を備えている。この吹出口13は、ルツボ4の中心軸上に形成されている。
【0018】
また、昇降装置11は、図2に示されたように、チャンバー2の上部の取付フランジ2cに固定され、支持部材10を外嵌する筒部(支持部)15と、支持部材10の上端に固定された連結部材16と、その連結部材16に支持部材10から離間して平行に固定されたラック17と、そのラック17を外嵌する孔部を有し、筒部15に回動可能に支持された位相調整部18と、ラック17が有する歯部に噛み合うピニオン(図示せず)とそれを回転する回転部(図示せず)とを備え、筒部15に回転可能に支持されたピニオン部19を備えている。ピニオン部19は、図3に示されたように、ハンドル20を備え、矢印で示すように時計回りの回転によりサセプター9を上昇させ、反時計回りの回転により下降させる。
【0019】
位相調整部18は、図4に示されたように、支持部材10に垂直に延びたレバー21と回転ロック22を備え、回転ロック22によるロックを解除して回転することにより、サセプター9の位相を変化させることができる。
【0020】
次に、上記構成の結晶シリコン製造装置の作用および効果について説明する。
サセプターは、ルツボ内の原料シリコンまたはシリコン融液の表面の上方に配置して、雰囲気中のCOガスやSiOガス等の不純物が原料シリコンまたはシリコン融液表面から混入されることを抑制する。
特に、本発明では、サセプター9に設けた吹出口13から原料シリコン3aまたはシリコン融液表面3へ不活性ガス、通常、アルゴンガスを吹き付けることができる。そのため、原料シリコン3aまたはシリコン融液3表面をアルゴンガスで覆っているので、不純物ガスの混入抑制効果が向上している。
【0021】
チップ状の原料シリコン3aは、融解によって体積が大きく変化する。すなわち、チップ状の原料シリコン3aの見かけの体積は、通常融解後には70%程度に小さくなる。また、シリコン融液の凝固結晶化中にも体積は変化する。その体積の変化によって、原料シリコン3aあるいはシリコン融液3の表面の位置が変化するので、原料シリコン3aの融解前に適切な位置に配置したサセプター9は、融解後には表面から離間した位置に配置される。サセプターが原料シリコンまたはシリコン融液表面から離間すると、不活性ガスが漂い得る空間が増加するので、不純物ガスの混入抑制には不都合である。
そこで、本発明では、サセプター9を昇降する昇降装置11を設けて、原料シリコン3aあるいはシリコン融液3の表面位置に合わせてサセプター9を昇降し、サセプター9とその表面とが適切な距離を維持できる構成とした。
【0022】
この吹出口13は、ルツボ4の中心軸上に形成されているので、図5で矢印に示されたように、吹出口13から吹き出したアルゴンガスは、原料シリコン3aあるいはシリコン融液3の表面の中心から外周方向へと流れ、その表面を均等に覆うことができ、不純物ガスの混入をむらなく抑制できる。吹出口がルツボ4の中心軸上に対して対称に複数形成された場合にも同様な効果が得られる。
【0023】
また、サセプター9は、位相調整部18で支持部材10を介して回転することができるので、原料シリコン3aやシリコン融液3の表面の傾きや形状等に合わせて、不純物ガスの混入をむらなく抑制するために適切な位相に設定できる。
【0024】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明に係る結晶シリコン製造装置によれば、以下のような効果を奏する。
【0025】
請求項1に記載の結晶シリコン製造装置によれば、サセプターが昇降可能な構成にしたので、原料シリコンあるいはシリコン融液の表面位置の変化に合わせてサセプターを昇降し、サセプターとその表面とが適切な距離を維持しながら表面からの不純物ガスの混入を抑制できるという効果が得られる。また、吹出口から表面に不活性ガスを吹き付けてその表面をアルゴンガスで覆うことができるので、サセプターとその表面とが適切な距離を維持しながら表面からの不純物ガスの混入を抑制できるという効果が得られる。さらに、吹出口が、ルツボの中心軸上に形成されているので、吹出口から吹き出した不活性ガスは、原料シリコンあるいはシリコン融液の表面の中心から外周方向へと流れ、その表面を均一に覆うことができ、不活性ガスの混入をむらなく抑制できるという効果が得られる。
【0026】
請求項2に記載の結晶シリコン製造装置によれば、原料シリコンあるいはシリコン融液の表面位置の変化に合わせてサセプターを昇降させて、吹出口からその表面に不活性ガスを吹き付けてその表面をアルゴンガスで覆うことができるので、サセプターとその表面とが適切な距離を維持しながら表面からの不純物ガスの混入を抑制できるという効果が得られる。さらに、複数の吹出口が、ルツボの中心軸上に対して対称に形成されているので、吹出口から吹き出した不活性ガスは、原料シリコンあるいはシリコン融液の表面の中心から外周方向へと流れ、その表面を均一に覆うことができ、不活性ガスの混入をむらなく抑制できるという効果が得られる。
【0027】
請求項3に記載の結晶シリコン製造装置では、サセプターを支持部材を介して支持部材の軸回りに回動する位相調整部を備えたので、原料シリコンあるいはシリコン融液の表面から不純物ガスが混入することをむらなく抑制するために適切なサセプターの位相を設定できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第一の実施形態である結晶シリコン製造装置の概略構成図である。
【図2】 図1の結晶シリコン製造装置における昇降装置の概略構成図である。
【図3】 図1の結晶シリコン製造装置におけるピニオン部が備えるハンドルによる支持部材の昇降を説明するための図である。
【図4】 図1の結晶シリコン製造装置における位相調整部が備えるレバーによるサセプターの位相の調整を説明するための図である。
【図5】 図1の結晶シリコン製造装置のサセプターの吹出口からの不活性ガスの流れを説明するための図である。
【符号の説明】
1 結晶シリコン製造装置
2 チャンバー
2c 取付フランジ
3 シリコン融液
3a 原料シリコン
4 ルツボ
4a 内側底面
5 冷却板
6 包囲部
9 サセプター
10 支持部材
11 昇降装置
12 ガス流入管
13 吹出口
15 支持部
18 位相調整部
Claims (3)
- チャンバー内のルツボに収容した原料シリコンを溶融したシリコン融液に該ルツボの内側底面から上方に正の温度勾配を付与して、前記ルツボの内側底面から上方に前記シリコン融液を結晶化する結晶シリコン製造装置において、前記ルツボの上方に配置したサセプターと、該サセプターを支持する支持部材と、該支持部材を介して前記サセプターを昇降させる昇降装置とを備えており、前記支持部材は、前記チャンバー外から不活性ガスを流入するガス流入管を備え、前記サセプターは、前記ガス流入管から流入された不活性ガスを前記原料シリコンまたは前記シリコン融液の表面に吹き出す吹出口を備え、該吹出口が前記ルツボの中心軸上に形成されていることを特徴とする結晶シリコン製造装置。
- チャンバー内のルツボに収容した原料シリコンを溶融したシリコン融液に該ルツボの内側底面から上方に正の温度勾配を付与して、前記ルツボの内側底面から上方に前記シリコン融液を結晶化する結晶シリコン製造装置において、前記ルツボの上方に配置したサセプターと、該サセプターを支持する支持部材と、該支持部材を介して前記サセプターを昇降させる昇降装置とを備えており、前記支持部材は、前記チャンバー外から不活性ガスを流入するガス流入管を備え、前記サセプターは、前記ガス流入管から流入された不活性ガスを前記原料シリコンまたは前記シリコン融液の表面に吹き出す複数の吹出口を備え、これら複数の吹出口が前記ルツボの中心軸上に対して対称に形成されていることを特徴とする結晶シリコン製造装置。
- 請求項1または請求項2に記載の結晶シリコン製造装置において、前記ルツボの水平断面形状が非円形状とされ、前記昇降装置が、前記チャンバーに固定されるとともに前記支持部材を前記ルツボの方向に接近及び離間可能に支持する支持部と、前記サセプターを前記支持部材を介して該支持部材の昇降方向を軸としてその軸回りに回動するサセプター位相調整部とを備えたことを特徴とする結晶シリコン製造装置。
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