JP2012106886A - 金属シリコンの凝固精製方法及び装置 - Google Patents

金属シリコンの凝固精製方法及び装置 Download PDF

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Abstract

【解決課題】結晶の生産性を高い状態に維持しながら、従来よりも不純物元素の除去を効率良くかつ確実に行うことができる金属シリコンの凝固精製方法及びその装置を提供する。
【解決手段】凝固精製装置の鋳型内にある金属シリコンの融液を一方向凝固させて金属シリコン中の不純物元素を除去する金属シリコンの凝固精製法であり、凝固界面での融液側温度勾配Gと、凝固途中の融液中不純物元素濃度Cmと、凝固速度Vとを用いて表される組成的過冷却指数{VOGC=(V/G)×Cm}が、金属シリコンにおけるシリコン−不純物元素の状態図から読み取れる液相線の勾配mと不純物元素の拡散係数Dにより表される組成的過冷却の臨界値{0.59(D/m)}に対して、1/10{0.59(D/m)}≦VOGC<0.59(D/m)の関係を維持するように、融液の加熱及び/又は冷却を行う金属シリコンの凝固精製法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、金属シリコンの凝固精製方法及び凝固精製装置に関し、特に、出発原料の金属シリコンを粗精製して得られた溶融状態にあるシリコンから不純物元素を除去し、最終的に太陽電池用シリコン基板の製造に有用な高純度のシリコン結晶を得るために好適な金属シリコンの凝固精製方法及びその装置に関する。
金属シリコンの純度を上げる技術の1つに凝固精製法があり、例えば図1に示すような構造を持った炉において、以下のような凝固精製の原理に基づいて行われている。
この凝固精製の原理は、精製対象の元素と除去対象の不純物元素が凝固界面において成立している熱力学的な平衡状態に起因する偏析現象を利用するものである(非特許文献1、2、3参照)。具体的には、鋳型内に保持した精製対象となる融液原料を、その凝固界面を平坦に保ちながら、一方向に(例えば底部から上方へ)向けてゆっくりと凝固させると、この凝固の過程で、不純物元素は、上記の偏析現象によって固体側にほとんど取り込まれることなく、融液側に残る。この結果、凝固により生成した結晶内の不純物元素の分布は、初期に凝固した下方部で低く、上方に向かって級数的に増加し、上端に至って著しく濃縮したものとなる。そこで、この凝固精製後に得られた結晶の上部(濃縮部)を切断し破棄することにより、純度の高い結晶が得られる。
このような凝固精製を実際に行うに当っては、生産性と精製歩留りの二つの観点から、凝固速度(凝固界面の移動速度)を適切な値に制御することが極めて重要である。そして、この凝固速度は、凝固界面での一次元の熱バランス、即ち、融液側から凝固界面に加わる熱量と、凝固によって発生する熱量(凝固潜熱)及び凝固界面から結晶側へ抜き取られる熱量とのバランスによって変わるため(非特許文献1参照)、適切な温度制御がなされない場合には、凝固が下方から上方に向かって順次進行せずに、凝固した部位が再び融解する等して、長時間経過しても融液から結晶が得られないという問題が起きる。
また、上記の適切な温度制御がなされない場合には、これだけではなく、凝固界面の成長が不安定になり、平坦な面を保ちながらの凝固が進まなくなって、凝固精製の基となる不純物元素の偏析原理がうまく働かず、凝固の進行中に不純物元素が融液部に十分に濃化することなく凝固が完了し、凝固精製が十分になされていない結晶が生成するという問題が起きる。
ここで、前者の問題は、加熱及び/又は冷却に基づく熱環境のみの問題であるが、後者の問題は、融液内の不純物元素の濃縮による組成的過冷却により、凝固界面から離れた融液中に等軸晶が析出し、その結果として、凝固が柱状晶組織を保って平坦な面を保ちながら順次進行できなくなるために発生する問題である。そして、この組成的過冷却による等軸晶の発生については、「凝固界面融液側の温度勾配Gと凝固速度Vの比であるV/Gに、濃化した融液中の不純物元素濃度Cmをかけて得られた組成的過冷却の値〔(V/G)C〕(以後、「組成的過冷却指数(VOGC)」と呼ぶ。)が、その臨界値を越えた時に起きる。」という理論的なモデルがある(非特許文献1、2、3参照)が、組成的過冷却臨界値を用いて現実の金属シリコンを精製する工業プロセスでの歩留りを説明した記述がなく、組成的過冷却の臨界値に関しても、その値は明確ではない。
このように、凝固精製において生産性を稼ぐために凝固速度を大きくすることは、常に凝固精製の失敗の危険性を増長するものとなる。また、凝固の進行の後半では、偏析現象により吐き出された不純物元素濃度が急激に増加するため、凝固速度の上限値が次第にあるいは急速に小さくなっていく。このような状況の中で、結晶の生産性と精製歩留りを最大限に保つには、凝固の進行状況に応じて凝縮する鋳型内の原料融液中の不純物元素濃度に応じて、凝固速度、翻っては、鋳型内の温度環境を精密に制御する必要がある。しかしながら、これを制御することは容易ではなく、従来においては試行錯誤的な方法が採られていたに過ぎない。
例えば、特許文献1で述べられている方法では、凝固精製する原料中の不純物元素濃度の初期分析値と、その凝固精製が成功した時の凝固開始から完了までの平均的な凝固速度の関係との相関をとることにより、経験的に最適な凝固速度を決定するものであり、この最適な凝固速度の調整は、鋳型底部に配置した冷却手段の冷却水量や温度、上方に配置したヒーターの熱量や温度を調整することで実現する。しかし、この方法では、凝固の進行による凝固層の熱抵抗の増大や、凝固速度に比例する凝固潜熱の発生、結晶や炉内断熱部材の経年劣化による熱伝導度及び熱容量の変化等の要素に起因する、複雑な実際の操業における凝固速度の変化に十分に対応できない。
また、この問題点を克服するために、特許文献2では、鋳型内に設けた複数の温度計や超音波距離計によって、凝固の進行に応じて凝固面高さ(凝固界面の位置)を逐次求めることにより凝固速度を推定し、鋳型内の熱環境を調整する方法が提案されている。しかしながら、この方法においても、狙いとする凝固速度は、種々の原料初期の不純物元素濃度と凝固精製が適切に行われた時の凝固速度との関係を予め多数の操業データから求める試行錯誤的な手法により求めることになるが、これは極めて煩雑であって、時間のかかる作業である。そして、このような従来の方法においては、温度計や超音波距離計等の計測装置を高温の炉内に設置するという設備的な難しさがある上に、操業毎の冷却手段と鋳型下面との間の接触度合い(鋳型下面からの熱流量に影響)等の操業上のばらつきに対して、迅速に対応できないという問題もあった。
特開平10-120493号公報 特開平10-182137号公報
中江秀雄著「結晶成長と凝固」アグネ承風社1998年 W. Kurz, D.J. Fisher,「Fundamental of Solidification」, Trans Tech Publication, (1998) M.C. Flemings,「Solidification Processing」, McGraw Hill, (1974)
本発明は、かかる事情に鑑みて創案されたものであり、その目的とするところは、結晶の生産性を高い状態に維持しながら、従来よりも不純物元素の除去を効率良くかつ確実に行うことができる金属シリコンの凝固精製方法及びその装置を提供することにあり、特に、冷却手段と融液を保持する鋳型下部との接触度合いのばらつきや、炉内断熱部材の経年劣化の影響にも迅速に対応することができる金属シリコンの凝固精製方法及びそのための凝固精製装置を提供することにあり、これによって、太陽電池用シリコン基板の製造に有用な高純度のシリコン結晶を得るのに好適な金属シリコンの凝固精製方法及びその装置を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するための方策について鋭意研究した結果、目的達成のためには、凝固精製の際の凝固速度を、不純物元素の初期濃度との関係で初期設定するのではなく、凝固の進行と共に経時的に調整しなければならないとの結論に達し、そして、この考えを具現化するため、凝固の進行中に組成的過冷却の程度(組成的過冷却指数;VOGC)を推定し、この推定された組成的過冷却指数(VOGC)を基に加熱の程度を調整することについて鋭意検討し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、以下のように構成される。
(1) 凝固精製装置の鋳型内にある金属シリコンの融液を一方向凝固させて前記金属シリコン中の不純物元素を除去する金属シリコンの凝固精製法であり、凝固界面での融液側温度勾配Gと、凝固途中の融液中不純物元素濃度Cmと、凝固速度Vとを用いて表される組成的過冷却指数{VOGC=(V/G)×Cm}が、金属シリコンにおけるシリコン−不純物元素の状態図から読み取れる液相線の勾配mと不純物元素の拡散係数Dとを用いて表される組成的過冷却の臨界値{0.59(D/m)}に対して、下記の関係
1/10{0.59(D/m)}≦VOGC<0.59(D/m)
を維持するように、前記融液の加熱及び/又は冷却を行うことを特徴とする金属シリコンの凝固精製法。
(2) 鋳型内での融液の一方向凝固が、前記鋳型の側面を断熱しながら融液の液面上方から輻射により加熱すると共に鋳型の底部からは抜熱により冷却して行われることを特徴とする上記(1)に記載の金属シリコンの凝固精製法。
(3) 組成的過冷却指数(VOGC)は、金属シリコンの物性値情報(凝固潜熱、凝固点、密度、熱伝導度)、凝固前の融液関連初期情報(初期不純物濃度、初期融液深さ)と、凝固過程の時系列情報(結晶から外部へ抜熱される熱流量、凝固面高さ)とを基にして、凝固界面を挟んだ凝固進行方向に対する定常の一次元熱移動収支によって凝固界面での融液側温度勾配Gと凝固速度Vの積を求め、これに融液中不純物元素濃度の値Cmを乗じで求めることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の金属シリコンの凝固精製方法。
(4) 組成的過冷却指数(VOGC)は、金属シリコンの物性値情報(L:凝固潜熱、Tmp:シリコンの凝固点、ρ:凝固点における結晶の密度、Kmo:静止した融液の熱伝導度)と、事前に求めた融液内実効熱伝導度情報(Km:融液内実効熱伝導度)と、凝固前の融液関連初期情報(Co:初期不純物元素濃度、H:初期融液深さ)と、凝固過程の時系列情報(Jb:容器底部から外部へ抜熱される熱流量、x:凝固面高さ)とを基にして、下記の(1)式
Figure 2012106886
〔但し、上記式中、Taはヒーターの輻射温度、εは融液表面とヒーターとの間の実効輻射率、σはステファンボルツマン定数、及びkeffは実効分配係数をそれぞれ意味する。〕
により、凝固界面を挟んだ凝固進行方向に対する定常の一次元熱移動収支を計算することによって求めることを特徴とする上記(3)に記載の金属シリコンの凝固精製方法。
(5) 凝固精製装置の鋳型内にある金属シリコンの融液を、その液面上方から輻射により加熱すると共に前記鋳型底部からは抜熱により冷却し、前記鋳型内で前記融液を一方向凝固させて前記金属シリコン中の不純物元素を除去する金属シリコンの凝固精製装置であり、前記融液の液面上方に設置されて前記液面を加熱するヒーターからなる加熱手段と、前記鋳型の底部を冷却する冷却手段と、前記鋳型の側面に設置されてこの鋳型側面を断熱する断熱手段とを有し、下記の(0)式で表される凝固速度Vを凝固初期から時系列で算出し、
Figure 2012106886
この算出された時系列の凝固速度から時系列の凝固面高さxを累積計算によって求める凝固面高さ計算手段と、前記ヒーターの輻射温度Taを時系列で測定する温度測定手段と、前記冷却手段における冷却水の入口温度、出口温度、及び流量を時系列で測定し、当該測定値から前記容器の底部から外部へ抜熱される熱流量Jbを時系列で算出する底部抜熱量算出手段とを有し、また、前記金属シリコンの物性値情報(L:凝固潜熱、Tmp:シリコンの凝固点、ρ:凝固点における密度、Kmo:静止した融液の熱伝導度)と、事前に求めた融液内実効熱伝導度情報(Km:融液内実効熱伝導度)と、凝固前の融液関連初期情報(Co:初期不純物元素濃度、H:初期融液深さ)とが入力されると共に、前記凝固面高さ計算手段で求められた凝固面高さxの時系列情報と、前記底部抜熱量算出手段で算出された前記容器底部から外部へ抜熱される熱流量Jbの時系列情報とが入力され、これらの入力情報を基にして、下記の(1)式
Figure 2012106886
により組成的過冷却指数(VOGC)を算出する組成的過冷却指数演算手段と、前記組成的過冷却指数演算手段で算出される組成的過冷却指数(VOGC)の値が金属シリコンにおけるシリコン−不純物元素の状態図から読み取れる液相線の勾配mと不純物元素の拡散係数Dとを用いて表わされる組成的過冷却の臨界値{0.59(D/m)}に対して、下記の関係
1/10{0.59(D/m)}≦VOGC<0.59(D/m)
を維持するように、前記ヒーターの輻射温度を前記融液の凝固の進行に応じて調整するヒーターの輻射温度制御手段とを有することを特徴とする金属シリコンの凝固精製装置。
(6) 前記凝固面高さ計算手段に替えて、凝固面高さを時系列で測定する凝固面高さ測定手段を有し、当該凝固面高さ測定手段で求められた凝固面高さの時系列情報を、前記凝固面高さ計算手段で求められた凝固面高さの時系列情報に替えて、前記組成的過冷却指数演算手段へ入力することを特徴とする上記(5)に記載の金属シリコンの凝固精製装置。
本願発明において、金属シリコンの融液の組成的過冷却指数(VOGC)を制御する上でその指標となる組成的過冷却の臨界値は、融液の組成的過冷却が発生する条件を凝固界面での融液側温度勾配G、凝固途中の融液中不純物元素濃度Cm、凝固速度V、金属シリコンにおけるシリコン−不純物元素の状態図から読み取れる液相線の勾配m、及び不純物元素の拡散係数Dを用いて数式化された下記の関係式
(V/G)Cm>0.59(D/m)
(非特許文献3の第3章及びAppendix第2章と、非特許文献2の第2章を参照)に基づいて規定される。
即ち、融液の組成的過冷却の発生条件は、凝固界面から離れる方向xに対する凝固点の勾配Gmp(=dTmp/dx)と実際の温度の勾配G(=dT/dx)とを用いると、単純に、G<Gmpと表すことができ、上記の凝固点の勾配Gmpは融液中の不純物元素濃度の勾配Gcと液相線の傾きmとの積(mGc)で表すことができ、また、この融液中の不純物元素濃度の勾配Gcは融液中の不純物元素の拡散係数Dと凝固速度V、凝固界面での融液中の不純物元素濃度Cm *と、凝固界面から十分離れた大部分の融液中の不純物元素濃度Cmの差を基に、下記の(2)式
c=(V/D)×(Cm *−Cm) ……(2)
で計算できるので、凝固界面の固体側の不純物元素濃度をCs、平衡分配係数をk、実効分配係数をkeffとすると、
c=(V/D)×{(keff/k)−1}Cm
と書き換えられる。
また、keff/kについては、凝固界面の拡散層厚みをδとすると下記の(3)式
eff/k=1/{k+(1−k)exp(−Vδ/D) ……(3)
で表される。本願発明の金属シリコンの凝固精製においては、融液流動の影響が小さくて、(すなわち、不純物の拡散係数Dが融液の動粘性係数より小さいことにより)凝固界面での濃度分布が拡散により形成されると考えられ、拡散層厚みδは、ほぼδ=D/Vで近似される。更に、原料として用いられる金属シリコン中の不純物元素の平衡分配係数kが1より極めて小さな値であることから、keff/kの値は、1/exp(-1)≒2.7と近似される。
従って、本願発明の金属シリコンの凝固精製においては、融液の濃度勾配は、
c=1.7(VCm/D)
の式で表すことができ、上記の組成的過冷却の条件式G<Gmpは、液相線の勾配m、融液中不純物元素の濃度Cm、不純物元素の拡散係数D、及び凝固速度Vを用いて、下記の式
G<Gmp=mGc=1.7(mVCm/D)
で表すことができ、この式を組成的過冷却指数(VOGC)の式に変形すると、
(V/G)Cm>0.59(D/m)
が得られる。
それ故、組成的過冷却が発生しない、すなわち凝固精製が可能となる条件は、上式の不等号を逆にした以下の式になる。
(V/G)Cm<0.59(D/m)
そして、この式の右辺「0.59(D/m)」が、制御の指標となる組成的過冷却の臨界値である。
そして、本願発明の金属シリコンの凝固精製において、組成的過冷却指数(VOGC)を用いた制御の指標となる組成的過冷却の臨界値を規定する液相線の勾配mは、原料として用いる金属シリコンのシリコン−不純物元素の状態図から読み取ることができ、また、不純物元素の拡散係数Dは、例えばTan et al., JOM vol.61 no.1 p49 (2009)等の文献に記載された文献値を用いることができるほか、Liu et al., Scripta Materialia vol.55 p367,(2006)等の数値モデルによる方法で推定することもできる。また、鉄の場合の様に、拡散係数Dが実験データとして報告されておらず、信頼できる値がない場合には、実際の操業において、結晶が組成的過冷却を起こした位置と、その位置においての操業データを基に(1)式により計算されるVOGC値の対応を統計的にとることで、VOGCの臨界値を直接求めることができる。
融液中に複数の不純物元素が含まれている場合には、融液の凝固点の降下は、各不純物による寄与の総和となるから、各不純物について各物性値に添字iを付けて示すと、以下の(4)式で表される。
Figure 2012106886
ここで、各不純物濃度の合計値をCm-all、全不純物濃度に対する各不純物濃度の比をαiとすると、以下の(5)式となる。
Figure 2012106886
従って、凝固精製が可能となる条件、Gmp>Gは、以下の様に書ける。
(V/G)Cm-all<0.59<D/m>
ここで、<D/m>は、各不純物成分の(mi/Di)値について、重みとしてαiを取った加重調和平均値の逆数で、以下の(6)式で定義される。
Figure 2012106886
本発明においては、上記の組成的過冷却指数{VOGC=(V/G)×Cm}が組成的過冷却の臨界値{0.59(D/m)}に対して、下記の関係
1/10{0.59(D/m)}≦VOGC<0.59(D/m)
好ましくは
1/3{0.59(D/m)}≦VOGC<0.59(D/m)
の関係を維持するように、融液の加熱及び/又は冷却を行うものであり、これによって、凝固速度Vを可及的に高い値に保ちながら、金属シリコンの凝固精製過程で融液内の不純物元素の濃縮による組成的過冷却が発生し、凝固界面から離れた融液中に等軸晶が析出し、凝固が柱状晶組織を保って平坦な面を保ちながら順次進行できなくなるという問題の発生を防止するものである。ここで、組成的過冷却指数(VOGC)が、組成的過冷却の臨界値{0.59(D/m)}以上になると、上記組成的過冷却の発生を防止できなくなって平坦な面を保ちながら凝固精製を行うのが難しくなり、反対に、組成的過冷却の臨界値{0.59(D/m)}の1/10より小さくなると、凝固速度Vが小さくなりすぎて生産性が低下する。
本発明において、金属シリコンの凝固精製に用いる凝固精製装置については、金属シリコンの融液を一方向凝固させて金属シリコン中の不純物元素を除去するものであれば、例えば鋳型内の融液をその底部側から上方に向けて一方向凝固させる方式のものであっても、また反対に、その上方から底部側に向けて一方向凝固させる方式のものであってもよいが、例えば太陽電池用シリコン基板の製造に有用な高純度のシリコン結晶を工業的に製造する場合には、好ましくは、鋳型内での融液の一方向凝固が、前記鋳型の側面を断熱しながら融液の液面上方から輻射により加熱すると共に鋳型の底部からは抜熱により冷却して行われる方式のものであるのがよい。
また、本発明において、前記融液の加熱及び/又は冷却を制御する方法については、特に制限されるものではなく、例えば鋳型内での融液の一方向凝固が、前記鋳型の側面を断熱しながら融液の液面上方から輻射により加熱すると共に鋳型の底部からは抜熱により冷却して行われる場合、融液の液面上方に配置されるヒーター温度を制御してもよく、また、鋳型底部に抜熱のために設けられる水冷ジャケット等の冷却手段を制御してもよく、更には、これらヒーター温度と冷却手段の両者を制御してもよい。
本発明によれば、金属シリコンの凝固精製において、凝固精製過程にある金属シリコンの融液について、組成的過冷却の臨界値{0.59(D/m)}を指標に、組成的過冷却指数{VOGC=(V/G)×Cm}がこの臨界値の1/10以上臨界値以下の範囲となるように維持しながら、融液の過熱及び/又は冷却を行うので、凝固の進行と共に経時的に凝固速度を制御することができ、これによって、不純物元素の精製度を低下させることなく可及的に高い凝固速度で凝固精製を行うことができ、高純度のシリコン結晶の生産性が顕著に向上する。しかも、本発明によれば、鋳型の側面を断熱しながら融液の液面上方から輻射により加熱すると共に鋳型の底部からは抜熱により冷却して行われる方式を採用して金属シリコンの凝固精製を行う際に、冷却手段と溶融原料を保持する鋳型下面との接触度合いが操業毎に変化してばらつき、鋳型下面から流れ出る熱流量が変化しても、その変化に合わせた制御が可能になって凝固速度の最適化を図ることができ、その結果として、シリコン歩留の向上、コストの低減を達成することができ、安価な太陽電池用シリコン基板の製造が可能になる。
図1は、太陽電池用シリコン基板の製造に好適な高純度のシリコン結晶を製造するために用いる、本発明に係る金属シリコンの凝固精製装置の一例を示す縦断面説明図である。
図2は、図1に係る凝固精製装置の凝固精製制御モデルを示す概念図である。
図3は、本発明の実施例1において、組成的過冷却指数(VOGC)の値を計算し、このVOGC値が組成的過冷却の臨界値以下となるようにヒーターの輻射温度を計算して設定した一例を示すグラフ図であり、凝固時間(min.)に対するヒーターの輻射温度(℃)、融液表面の推定温度(℃)、及びVOGC値の変化が示されている。併せて、VOGC値の算出に必要な融液中の不純物濃度(ppmw)、融液中の温度勾配(K/m)、及び固体中の温度勾配(K/m)が示されている。
図4は、本発明の実施例1において、得られた結晶の固化率に対し、計算されたVOGC値、及び成分分析装置で測定された結晶中の鉄の濃度の値の関係を示したものである。
図5は、本発明の比較例において、設定したヒーターの輻射温度パターンによる組成的過冷却指数(VOGC)を示したグラフ図であり、凝固時間(min.)に対するヒーターの輻射温度(℃)、融液表面の推定温度(℃)、及びVOGC値の変化が示されている。併せて、VOGC値の算出に必要な融液中の不純物濃度(ppmw)、融液中の温度勾配(K/m)、及び固体中の温度勾配(K/m)が示されている。
図6は、本発明の比較例において、得られた結晶の固化率に対し、計算されたVOGC値および、成分分析装置で測定されたインゴット中の鉄の濃度の値の関係を示したものである。
図7は、本発明の実施例2において、設定したヒーターの輻射温度パターンによる組成的過冷却指数(VOGC)を示したグラフ図であり、凝固時間(min.)に対するヒーターの輻射温度(℃)、融液表面の推定温度(℃)、及びVOGC値の変化が示されている。併せて、VOGC値の算出に必要な融液中の不純物濃度(ppmw)、融液中の温度勾配(K/m)、及び固体中の温度勾配(K/m)が示されている。
図8は、本発明の実施例2において、得られた結晶の固化率に対し、計算されたVOGC値と、成分分析装置で測定されたインゴット中の鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、及びニッケル(Ni)の濃度の値との関係を示したものである。
以下、鋳型内での融液の一方向凝固が、鋳型の側面を断熱材で断熱しながら融液の液面上方からヒーターにより輻射加熱すると共に鋳型の底部からは冷却水で冷却する水冷ジャケット等の冷却手段により抜熱冷却して凝固精製を行う凝固精製装置であって、太陽電池用シリコン基板の製造に好適な高純度のシリコン結晶を製造するための金属シリコンの凝固精製装置を例にして、本発明の実施の形態を説明する。
図1に本発明の実施例に係る金属シリコンの凝固精製装置が示されており、この図1において、1は凝固精製原料である金属シリコンの液相(融液)、2は凝固精製されたシリコンの固相、3はシリコンの液相と固相との間の凝固界面、4は金属シリコンの液相(融液)の融液表面、5は凝固精製原料の金属シリコンを収容する鋳型、5bは鋳型5の底部、6は鋳型5の上方に配置され、鋳型5内の融液1の液面上方からこの融液1を輻射加熱するための電熱ヒーター(加熱手段)、7は鋳型5の底部5bに接触した状態で配置された水冷ジャケット(冷却手段)、8は冷却手段の水冷ジャケット7内を流れる冷媒の冷却水、9は鋳型5の側面を断熱する断熱材からなる断熱手段、10は例えば炭素棒や超音波凝固面高さ測定装置[M. Azizi, et al, "Ultrasound Measurement of the Position of the Growing Interface During Directional Solidification of Silicone" 25th EU-PVSEC proceedings, 2CV.1.13 (2010)参照]等からなる凝固面高さ測定手段、11は熱電対等の加熱手段6の輻射温度を測定するための温度測定手段、12は水冷ジャケットの冷却水の入口温度、出口温度及び流量の情報から底部抜熱量を算出する底部抜熱量算出手段と組成的過冷却指数(VOGC)を計算する組成的過冷却演算手段とを含む凝固速度制御手段、13は加熱手段である電熱ヒーター6の電源、14はヒーターの輻射温度の情報を凝固速度制御手段の組成的過冷却演算手段に伝達する伝達手段、15は冷却水の入口温度、出口温度及び流量の情報を凝固速度制御手段の組成的過冷却演算手段に伝達する伝達手段、16は凝固速度制御手段の底部抜熱量算出手段から電熱ヒーター6の電源13にそのパワー制御情報を伝達する伝達手段をそれぞれ示している。
本発明の凝固精製方法において、鋳型5に注入された溶融状態にある金属シリコンの融液(液相)1は、当初は鋳型5の底部5bの下面から離して置かれた水冷ジャケット(冷却手段)7を、一定の融液安定化保持後の凝固精製操作開始時に上昇させ、鋳型5の底部5b下面に接触させ、更にヒーターの輻射温度を下げて行くことにより、鋳型5の底部5b側から徐々に上方へと凝固が進行していく。
本発明の凝固精製装置において、鋳型5内にある金属シリコンの融液1は、その横方向に対しては鋳型5の側面にある断熱材(断熱手段)9により断熱され、また、その液面上方に配置された電熱ヒーター(加熱手段)6により上方から輻射加熱され、更に、鋳型5の底部5bに配置された水冷ジャケット(冷却手段)7により抜熱され、結果として、この鋳型5内の融液1おいては、その上方から下方に抜ける熱流量が大きくなり、凝固精製原料である金属シリコンの液相(融液)1から固相2内を流れる熱の流れはほぼ上下方向一次元となり、液相(融液)1の凝固は鋳型5の底部5b側から上方に向けて、平坦で一面の凝固界面を保って、進行する。そして、この際のシリコン内部の熱の移動は、凝固速度に対して十分大きいために、定常であると考えることができる。
本発明方法においては、凝固精製の開始から、冷却手段7を流れる冷却水8の入口温度、出口温度及び流量を測定し、入口温度と出口温度との水温差と流量とから求められる鋳型5の底部5b側から下部へ抜ける熱流量Jbと、ヒーターの輻射温度Taとを経時的に記録する。そして、これらの値と、本プロセスに入る前に予め測定しておいた金属シリコンの融液1の初期不純物元素濃度から、図2に示す計算モデルを用いて、定常一次元熱移動収支を計算することにより、凝固界面3における融液1側の温度勾配G及び融液1中の不純物元素濃度を経時的にあるいは間欠的に求め、この求められた融液1側の温度勾配G及び融液1中の不純物元素濃度の情報を用いて組成的過冷却指数(VOGC)のVC/G値を算出し、このVC/G値が凝固精製原料の金属シリコンにおけるシリコン−不純物元素の状態図から読み取れる液相線の勾配mと不純物元素の拡散係数Dとを用いて表される組成的過冷却の臨界値{0.59(D/m)}に対して、下記の関係
1/10{0.59(D/m)}≦VOGC<0.59(D/m)
を維持するように、ヒーター温度Ta及び/又は熱流量Jbを制御し、これによって最適な融液1の加熱及び/又は冷却を行い、組成的過冷却の臨界値{0.59(D/m)}を超えない最大凝固速度Vを達成することができる。
即ち、図2において、ヒーターから融液表面への放射熱流量をJa、融液内の熱流量をJm、凝固に伴う凝固界面における凝固潜熱量をJg、固体内の熱流量をJs、冷却水8の入口温度、出口温度及び流量から計算された鋳型5の底部5bを経て水冷ジャケット7等の鋳型下部構造体から逃げていく熱流量をJbとすると、熱流量が保存されるため、系の一次元熱バランスは以下のように表される。
a=Jm ……(7)
m+Jg=Js ……(8)
s=Jb ……(9)
ここで、各熱流量は各部位の温度と次の関係にある。
a=εσ(Ta 4−Ts 4)≒4εσ(Ta 4−Ta 3Ts) ……(10)
m=Km(Ts−Ti)/(H−x) ……(11)
g=ρLV ……(12)
s=Ks(Ti−Tb)/x ……(13)
ここで、Taはヒーターの輻射温度、Tsは融液表面温度、Tiは凝固界面温度、Tbは結晶下端の温度、εは融液表面とヒーターとの間の実効輻射率、σはステファンボルツマン定数、Kmは融液内実効熱伝導度、Ksは物性により決まる結晶内熱伝導度、Hは初期融液深さ、xは凝固面高さ、ρは凝固温度におけるシリコンの密度、Lは物性により決まる凝固潜熱、Vは凝固速度である。なお、融液内実効熱伝導度は、融液を何らかの手段で攪拌する場合等はその攪拌度合いにより異なる値をとるため、使っている装置に依存する。従って、この値Kmは実測又は経験式により決める必要がある。(7)〜(12)式から融液表面温度Tsを消去して、凝固速度Vを求めると次のようになる。
Figure 2012106886
また(7)、(10)、(11)式から融液表面の温度Tsは次のようになる。
Figure 2012106886
融液中の熱流束Jmは(15)式を(11)式に代入して次のようになる。
Figure 2012106886
凝固界面での融液側の温度勾配Gは静止した融液中の熱伝導度Km0を用いて次のようになる。
Figure 2012106886
上記のVとGの式中でxとTa以外は物性値と実測値なので、VとGは凝固面高さxとヒーターの輻射温度Taのみの関数となる。従って、次式で定義される組成的過冷却指数(VOGC)は、xとTa以外は物性値と実測値なので、凝固面高さxとヒーター温度Taのみ関数となる。
また、一般的にSiの一方向凝固精製の凝固速度は、1.0mm/minに満たないため、凝固界面での結晶成長の駆動力として必要な過冷却度は小さく、凝固界面の温度Tiは原料Siの凝固点Tmpである考えてよい。
従って、VOGCは、
Figure 2012106886
ただし、本発明で用いる凝固精製原料の金属シリコンは、通常その不純物元素の濃度が0.01〜0.5質量%程度であるため、低純度の原料の精製においては、凝固の固化率gが90%にまで達したときの、融液中に濃縮された不純物元素濃度Cmが5質量%程度となり、不純物による凝固点の降下が数℃と見積もられるため、無視できなくなる。
不純物による凝固点Tmpの降下は、状態図の液相線から読み取ることができるが、不純物濃度が数%程度であれば、その勾配はほぼ一定である。従って、凝固点Tmpは、融液中の不純物元素濃度Cm、液相線勾配m、純シリコンの凝固温度Tmp0(1685K)として、以下の関係式で表わされる。
Figure 2012106886
ここで、凝固途中における融液中の不純物元素濃度Cmは、初期不純物元素濃度C0と、凝固面高さxから求めた固化率gと、実効分配係数keffを用いて次の式で表されることが知られている。即ち、融液中の不純物元素濃度Cmは凝固と共に濃縮されていく。
Figure 2012106886
これよりTmpは、以下の式で記述される。
Figure 2012106886
従って、不純物濃度が高く、凝固点の変化を考慮する必要がある場合には、Tmpを(19)式に置き換えた、次の修正式を使うことが望ましい。
Figure 2012106886
以上より、本発明において、組成的過冷却指数(VOGC)を求める式は、実質的に下記の(23)式の通りになる。
Figure 2012106886
この式中の、凝固高さxは、凝固開始時刻を0として、凝固速度Vの時間に対する積分値で求められる。
Figure 2012106886
また、実際の炉の制御は、いわゆるPLC(programmable logic controller)装置によって自動で行われるが、PLC装置では、指定された時間間隔で実行される制御ステップ毎に、この値から(24)式を離散化した(25)式によりVOGC値が計算できる。すなわち、ここで、ステップの順番をiとすると、制御開始から(i+1)ステップ後の凝固面高さxは、iステップ後の凝固面高さ及び凝固速度と、(i+1)とiステップ間の時間間隔とから次のように求められる。
Figure 2012106886
ここで、xの値を求めるには、(14)式によって表現される凝固速度Vを使用してもよいが、凝固面高さ測定手段10により直接計測することもできる。
以上のことから、数値計算による方法(方法1)若しくは、凝固高さの計測による方法(方法2)によって、最終的に、各時刻ti毎のヒーターの輻射温度、即ち、ヒーターパターンTa(ti)を決めると、各時刻tiにおいて、VOGCの値が求まる。
ところで、方法1では、凝固面高さを測定する必要が無いため、設備が簡易ではあるが、新造炉の操業であったり、炉内部材の変更等により凝固条件がまだ安定化していない場合や、設備トラブルにより冷却水流量が低下する等、何らかの原因で、計算による凝固面高さxと凝固速度Vが、凝固面高さ測定手段10で測定した実際の凝固面高さxやそれから計算された凝固速度Vと異なる場合も考えられる。そこで、そのような場合には、方法2によって、凝固面高さxの実測値を正として、その実際の速度が組成的過冷却の臨界値を超えないように、ヒーター温度をリアルタイムに修正し、歩留り低下を最小限に抑えることも可能である。
以下に、方法1と方法2のそれぞれについてVOGCを求める手順を述べる。
(方法1)
[Step 1] 式(20)から求まる不純物元素濃度Cmを式(21)に代入して凝固界面温 度Ti(=Tmp)を求める。
[Step 2] Tiを式(14)、(17)に代入して、凝固速度V、凝固界面での融液側温 度勾配Gを求める。
[Step 3] Step 1及びStep 2で求められたV、G、Cmを用いてVOGCを求める。
[Step 4] 凝固速度Vから式(25)により、次の時間ステップの凝固面高さxを求める

[Step 5] 以後、Step 1からStep 4を繰り返すことで、各時間tiにおけるVOGCを求 める。
(方法2)
[Step 1] 式(20)から求まる不純物元素濃度Cmを式(21)に代入して凝固界面温 度Ti(=Tmp)求める
[Step 2] 凝固面高さ測定手段10から凝固面高さx、及びその時間変化から凝固速度V を求める。
[Step 3] Tiとxを式(17)に代入して凝固界面での融液側温度勾配Gを求める。
[Step 4] Step 1からStep 3で求められたV、G、Cmを用いてVOGCを求める。
[Step 5] 以後、Step1からStep4を繰り返すことで、各時間tiにおけるVOGCを求 める。
ここで、各凝固精製プロセス毎に異なる可能性のある条件としては、原料の初期不純物元素濃度C0と、冷却手段7と鋳型5の底部5bとの接触度合いのばらつきによるJbがある。これまでの制御技術では初期不純物元素濃度C0のばらつきにのみ注目されていたが、定常一次元熱移動解析式から、Jbが熱移動現象に影響を与えることが分かる。Jbは冷却手段7と鋳型5の底部5bとの接触度合いに大きく影響され、得られる結晶の品質や生産性に大きな影響を及ぼす。従って、C0とJbの幾つかの組み合わせパターンに対して、組成的過冷却指数{VOGC=(V/G)×Cm}が組成的過冷却の臨界値の1/10以上臨界値以下の範囲を満たすヒーターパターンを予め計算しておけば、実際のC0の値と、Jbの情報から、凝固プロセスの最適なヒーターパターンを、凝固開始直後に選択することができ、組成的過冷却の発生しない最大値に近い凝固速度で凝固精製プロセスを制御することができる。尚、Jbは、鋳型底部を冷却する冷却水に設置したカロリーメータによって測定される熱流量を結晶の底面積で割った値として容易に測定できる。また、Jbは、凝固高さの増加に伴う固体シリコンの熱抵抗により、ほぼ固化率に比例して減少する傾向を持つ。
最近のPLCの演算能力は、本発明に使用する計算を数秒以内に完了できるものであるが、凝固速度は数mm/分以下と比較的遅いので、初期に測定したJbに対応するヒーターパターンが無い場合でも、操業中に得られたJbからヒーターパターンを計算し直しても制御には十分に間に合う。また、同様に、鋳型の側面方向の断熱がきちんと保持されていれば、加熱手段6や、鋳型5の底部5bや冷却手段7の経時変化等が生じても、加熱手段温度Taと冷却水8の入口温度、出口温度及び流量から計算される鋳型下部構造体17から逃げていく熱流量Jbをモニタリングしてさえいれば、全く同じようにプロセスを正常に制御することができる。
(実施例1)
本発明の実施例に係る図1の金属シリコンの凝固精製装置を用いて、凝固精製原料である金属シリコン(不純物として鉄を濃度2000ppmw含有)350kgの一方向凝固精製を実施した。この実施例1で用いた鋳型5は、その側壁と底部5bを合わせて、高さ0.4mの正方型の容器であり、一辺が0.8mで、高さ0.22mの正方形断面を持つ結晶が製造される。
また、VOGC値を求めるための融液内実効熱伝導度Kmとしては予め基礎データとして実測したシリコン融液の実効熱伝導度200(W/m/K)を用い、また、静止した融液中の熱伝導度Km0については物性により決まる値67(W/m/K)を用い、更に、インゴットの熱伝導度として21(W/m/K)を、また、シリコン融液とヒーター間の実効輻射率として0.3を用いた。また、凝固開始から完了までの所要時間については15時間(900分)を目安とした。
この実施例1において、本発明の方法でVOGC値(予測VOGC値)を計算し、この予測VOGC値が臨界値以下となるようにヒーターの輻射温度を計算して設定した際の例(予測ヒーター温度制御パターン)を、図3のグラフの上段に実線で示す。
この実施例1で精製すべき不純物元素の鉄については、そのシリコン融液中の拡散係数Dを実験的に求めた報告が無く、信頼できる値が知られていないため、組成的過冷却の臨界値を見積もることができなかった。そこで、発明者らが実施した凝固精製の試験においては、精製した結晶の凝固組織及び不純物濃度と操業プロセスデータとの対応を取ることにより、組成的過冷却の臨界値として1.0×10-10m2/K/sec.の値が得られたので、この値を用いた。この臨界値は図3のグラフの中段に太い点線で示している。
ここで設定されたヒーター輻射温度パターンから凝固中でのVOGC値を予測するに当り、先ず、鋳型底からの伐熱流量Jbが必要であるが、これは該当炉での操業実績から得ることができる。すなわち、この実施例1の炉の操業においては、鋳型底の冷却盤に流している冷却水の流量が150L/minであり、冷却水の入口温度と出口温度の温度差が、凝固の初期には6.1℃であって、固化率に比例して減少し、凝固完了時には4.3℃になることと、冷却盤冷却水での熱流量の測定においては10%の検出ロスがあることがそれぞれ判っている。これは、熱量計算により、鋳型底部からの伐熱量が固化率と共に71KWから50KWへと減少することを意味している。また、結晶の底面積は0.64m2であるので、Jbは凝固開始時で111W/m2であって凝固完了時で79W/m2である。Jbを結晶の熱伝導度で除した値が結晶中の温度勾Gsであるが、この値は図3の下段のグラフにおいて、密な点線で示されている。
融液中の温度勾配Gの推移は、(17)式により計算されて、これは図3の下段のグラフにおいて、疎な点線で示されている。また、凝固速度Vの推移は、(14)式により計算されて、これは図3の下段のグラフにおいて、実線で示されている。更に、融液中の不純物の濃度Cmの推移は、初期の不純物濃度C0(=2000ppmw)を基に式(20)により計算されて、これは図3の中段のグラフにおいて、点線で示されている。
VOGC値の推移は、(1)式により計算されるが、上記の融液中の温度勾配G、凝固速度V、融液中の不純物の濃度Cmから、各時刻においてのV値とCm値を乗じてG値で除しても求められ、これは図3の中段のグラフにおいて、実線で示されている。尚、ここでの計算では融液中の凝固点の変化を(19)式に基づいて考慮しており、図3の上段のグラフにおいて、下側(1410℃付近)の実線で示されている。また、融液表面の温度Tsが(15)式に基づいて計算され、これは図3の上段のグラフにおいて、点線で示されている。
以上より、本実施例1で設定されるヒーターの輻射温度制御パターンに対してVOGCが計算されたが、得られたVOGC値は、凝固開始時点で1.3×10-11m2/K/sec.であるが、これは臨界値であるVOGC値1.0×10-10m2/K/sec.の1/10より大きな値である。また、VOGCは時間と共に漸次増加するが、凝固完了時刻に近い時刻830分において初めて臨界値の1.0×10-10m2/K/secを超え、その後は臨界値を超えた状態で凝固が完了する。また、VOCGの臨界値到達時の結晶の固化率は90%であることも、(23)式を基に計算される。
なお、凝固の終盤830分以降において温度の下げ勾配を大きくしているため、凝固速度が増加し、VOGC値が臨界値を超えて急激に増加しているが、これは、凝固終了時近傍では固化率が90%に近い値になっており、この部分での歩留りを低下させても、凝固速度を上げた方が全体的にみて生産性が上がるためである。
従って、本実施例1で設定されるヒーターの輻射温度制御パターンに基づき、凝固炉の操業を実施すれば、凝固開始から固化率90%まで、融液の組成的過冷却が起きず、90%が凝固精製されて品質の良好なインゴットを得ることができる。
実際に、この図3上段のヒーター温度制御パターンに従って、金属シリコンの凝固精製を行い、得られたシリコン結晶の中央部を縦(凝固)方向に切断し、その断面の高さ(凝固進行)方向に対する不純物分析濃度の変化を、携帯型の簡易蛍光X線装置により測定した。測定箇所については、結晶の高さ方向(凝固進行方向)に10mm間隔で、また、水平方向(同一固化率については結晶の外周位置から50mm離れた場所を起点として水平方向に100mm間隔で8箇所測定した。測定点の数は合計168点であった。
この測定結果を図4に示す。
この図4のグラフでは、横軸に結晶の高さ(固化率g)をとり、これに対して予想されたVOCG値を実線で、VOCGの臨界値を一点鎖線で、切断面の高さ方向に、同一高さ(同一固化率)8箇所で平均したFe濃度を黒丸印で示してある。
シリコン結晶中のFe濃度は結晶高さ180mm(固化率81%)まで検出されず、分析装置の検出下限値の5ppmwであるが、高さ190mm(固化率85%)以降から検出され始め、190mmで14ppmw、200mm(固化率89%)で16400ppmw、210m(固化率93%)で18200ppmw、220mm(固化率98%)で20700ppmwとなっていた。また、目視による組織観察でも、柱状晶が高さ205mm(固化率90%)位置まで成長し、205mm以降から等軸晶化していた。以上より、この実施例1に示した制御方法により、90%以上が凝固精製された結晶が得られた。
(比較例1)
また、比較例1として、従来のヒーターの輻射温度制御パターンを用い、また、上記の実施例1の場合と同じ装置及び同じ凝固精製原料の金属シリコンを用いて、実施例1と同じ条件での凝固精製を行った。このヒーターの輻射制御の制御パターンは、凝固開始から完了までの所要時間は15時間(900分)を目安とし、凝固初期の急速な凝固を避けるために、凝固開始から中盤に向かって温度の下げ勾配をほぼ一定とし、凝固後半は凝固精製のためにヒーター輻射温度を高温に維持することを狙ったものである。また、この比較例1の条件においてもVOGC値を求めるが、使用する物性値、及びJbの凝固進行に伴う変化も、実施例1の場合と同じである。
この比較例1において、ヒーターの輻射温度の設定例(予測ヒーター温度制御パターン)を、図5のグラフ上段の上側の実線で示す。
ここで、融液中の温度勾配Gの推移は、図5の下段のグラフにおいて疎な点線で示されており、また、凝固速度Vの推移は、図5の下段のグラフにおいて実線で示されており、更に、融液中の不純物の濃度Cmの推移は、図5の中段のグラフにおいて点線で示されており、更にまた、VOGC値の推移は、図5の中段のグラフにおいて実線で示されている。また、凝固点の変化は、図5の上段のグラフにおいて、下側の実線で示されており、また、融液表面の温度Tsは、図5の上段のグラフにおいて、点線で示されている。
以上より、本比較例1で設定されるヒーターの輻射温度制御パターンに対してVOGCが計算されたが、得られたVOGC値は、凝固開始時点で7.2×10-12m2/K/sec.であるが、これは臨界値であるVOGC値1.0×10-10m2/K/sec.の1/10より小さい値であり、凝固速度に十分余裕があることがわかる。また、VOGCは、時間と共に漸次増加し、凝固開始からの時刻570分において臨界値の1.0×10-10m2/K/secを超え、その後は臨界値を超えた状態で凝固が完了する。また、VOCGの臨界値到達時の結晶の固化率は60%であることも、(23)式を基に計算される。
従って、この比較例1で設定されるヒーターの輻射温度制御パターンに基づき、凝固炉の操業を実施すれば、凝固開始から固化率60%で融液の組成的過冷却が起こってしまい、インゴトの60%程度しか凝固精製されないことになる。
実際に、この図5上段のヒーター温度制御パターンに従って、金属シリコンの凝固精製を行い、実施例1と同様にして、シリコン結晶の中央部を縦(凝固)方向に切断し、その断面の高さ(凝固進行)方向に対する不純物分析濃度の変化を、同様に携帯型の簡易蛍光X線分析装置により測定した。測定箇所については、実施例1の場合と同様にした。
この測定結果を図6に示す。
このグラフでは、横軸に結晶の高さ(固化率g)をとり、これに対して予想されたVOCG値を実線で、切断面の高さ方向に、同一高さ(同一固化率)8箇所で平均したFe濃度の値を黒丸印で示してある。
インゴット中のFe濃度は結晶高さ120mm(固化率54%)まで検出されず、分析装置の検出下限値の5ppmwであるが、高さ130mm(固化率58%)以降から検出され始め、140mm(固化率63%)以上では3000ppmwを超える高い値を示していた。また、目視による組織観察でも、柱状晶は高さ140mm位置までしか成長しておらず140mm以降から等軸晶化していた。以上より、この比較例に示した制御方法では、原料の60%程度しか凝固精製できないことが判明した。
従って、従来の方法では、鋳型下部構造体からの熱流量の変化に十分な対応がとれず、また、凝固途中に得られる凝固位置の情報を利用した精密な凝固速度制御ができなくて、凝固途中の後半で組成的過冷却の臨界値を超えた部分が発生し、歩留りが低下したものと考えられる。
(実施例2)
実施例2として、上記の実施例1の場合と同じ凝固精製装置と鋳型を用いて、凝固精製原料の不純物濃度が2500ppmwで、その組成の内訳が、鉄1200ppmw、アルミニウム800ppmw、ニッケル400ppmwである金属シリコン350kgの凝固精製を行った。ここで、凝固開始から完了までの所要時間は15時間(900分)を目安とした。
この実施例2において、本発明の方法でVOGC値(予測VOGC値)を計算し、この予測VOGC値が臨界値以下となるようにヒーターの輻射温度を計算して設定した際の例(予測ヒーター温度制御パターン)を、図7のグラフの上段に実線で示す。
この実施例2で精製すべき不純物元素は鉄、アルミニウム、ニッケルの3種であるので、VOGC値の臨界値は、先に示したように、全不純物の重量密度をCm-allとして、以下の式で与えられる。
(V/G)Cm-all<0.59<D/m>
ここで、<D/m>は、各不純物成分の(mi/Di)値について、重みとしてαiを取った加重調和平均値の逆数であるため、各成分の(mi/Di)の値が必要である。ここでは、鉄については、実施例1で採用したVOGC臨界値1.0×10-10m2/K/secから、これを0.59で除した値の逆数である5.85×109Ksec/m2を採用した。また、アルミニウムについては、状態図より読み取った液相線勾配のm=544℃/100w%と、文献値の拡散係数D=3.80×10-7m2/sより求めた値の、1.43×109Ksec/mを採用した。更に、ニッケルについては状態図より読み取った液相線勾配のm=214℃/100w%と、文献値の拡散係数D=1.05×10-7m2/sより求めた値の2.04×109Ksec/mを採用した。また、不純物の重量比率αiは、鉄が0.5、アルミニウムが0.33、ニッケルが0.17である。これらの値を用いると<D/m>の値は、1.6×10-10m2/K/secとなり、VOGC臨界値は9.3×10-10m2/K/secとなる。この臨界値は図7のグラフの中段に太い点線で示されている。
ここで、設定されたヒーター輻射温度パターンから凝固中でのVOGC値を予測するに当り、先ず、鋳型底からの伐熱流量Jbが必要であるが、この実施例2の操業時においては、炉の経時劣化により、鋳型の底部と水冷ジャケットの間の接触熱抵抗が増加したため、水冷ジャケットに流している冷却水量は実施例1と同じ150L/min.で、冷却水の入り口温度と出口温度の差が、凝固初期には5.7℃であって凝固完了時には4.3℃になっていた。これは、鋳型底部での伐熱が固化率と共に66KWから47KWへと減少し、Jbは凝固開始時で104W/m2であって凝固完了時で74W/m2となっていると計算される。Jbを結晶の熱伝導度で除した値がインゴット中の温度勾Gsであるが、この値は図7の下段のグラフにおいて、密な点線で示されている。
この実施例2において、ヒーターの輻射温度の設定例(予測ヒーター温度制御パターン)を、図7のグラフの上段に実線で示す。この実施例2では、全不純物濃度が高く、かつ、鋳型底部の経時劣化によりJbが減少しており、実施例1より凝固精製が難しい条件となっていることから、この設定は、比較例1よりも凝固初期の温度を下げて勾配を大きくすることで、凝固初期段階での凝固速度を大きくし、凝固の終盤でヒーターの輻射温度を高めに取ることで、凝固速度を抑制することを狙っている。
ここで、融液中の温度勾配Gの推移は、図7の下段のグラフにおいて疎な点線で示されており、また、凝固速度Vの推移は、図7の下段のグラフにおいて実線で示されており、更に、融液中の不純物の濃度Cmの推移は、図7の中段のグラフにおいて点線で示されており、更にまた、VOGC値の推移は、図7の中段のグラフにおいて点線で示されている。また、融液中の凝固点の変化は、図7の上段のグラフにおいて、下側の実線で示されており、また、融液表面の温度Tsは、図7の上段のグラフにおいて、点線で示されている。
本実施例2で設定されるヒーターの輻射温度制御パターンに対して得られたVOGC値は、凝固開始時点で2.2×10-11m2/K/sec.であって、その後に時間の経過と共に漸次増加し、凝固開始からの時刻830分において臨界値の9.3×10-11m2/K/secを超え、その後は臨界値を超えた状態で凝固が完了する。また、VOCGの臨界値到達時の結晶の固化率は89%であることも、(23)式を基に計算される。
従って、本実施例2で設定されるヒーターの輻射温度制御パターンに基づいて凝固炉の操業を実施すれば、凝固開始から固化率約90%までが凝固精製されて品質の良好な結晶として得られることになる。
実際に、この図7上段のヒーター温度制御パターンに従って、金属シリコンの凝固精製を行い、実施例1と同様にして、シリコン結晶の中央部を縦(凝固)方向に切断し、その断面の高さ(凝固進行)方向に対する不純物分析濃度の変化を、同様に携帯型の簡易蛍光X線分析装置により測定した。測定箇所については、実施例1の場合と同様にした。
この測定結果を図8に示す。
この図8のグラフでは、横軸に結晶の高さ(固化率g)をとり、これに対して予想されたVOCG値を実線で、切断面の高さ方向に、同一高さ(同一固化率)8箇所で平均したFe濃度を黒丸印、アルミニウム濃度を三角印、ニッケル濃度を×印で示してある。
シリコン結晶中のFe濃度は、結晶高さ190mm(固化率85%)まで、分析装置の検出下限値の5ppmwであるが、高さ200mm(固化率89%)以降から検出され始め、200mmで2200ppmw、210mm(固化率93%)で12500ppmw、220mm(固化率98%)で15100ppmwとなっていた。
また、アルミニウムの濃度は、結晶高さ190mm(固化率85%)まで、分析装置の検出下限値の10ppmwであるが、高さ200mm(固化率89%)以降から検出され始め、200mmで5400ppmw、210mm(固化率93%)で7900ppmw、220mm(固化率98%)で8500ppmwとなっていた。
更に、ニッケルの濃度は、結晶高さ180mm(固化率81%)まで分析装置の検出下限値の5ppmwであるが、高さ190mm(固化率85%)以降から検出され始め、190mmで45ppmw、200mm(固化率89%)で4300ppmw、210m(固化率93%)で4600ppmw、220mm(固化率98%)で5700ppmwとなっていた。
また、目視による組織観察でも、柱状晶が高さ205mm(固化率90%)位置まで成長し、205mm以降から等軸晶化していた。以上より、この実施例2に示した制御方法により、ほぼ90%以上の割合で凝固精製された結晶が得られた。
1…金属シリコンの液相(融液)、2…金属シリコンの固相、3…金属シリコンの液相と固相との間の凝固界面、4…金属シリコンの液相(融液)の融液表面、5…鋳型、5b…鋳型5の底部、6…電熱ヒーター(加熱手段)、7…水冷ジャケット(冷却手段)、8…冷却水、9…断熱手段、10…凝固面高さ測定手段、11…温度測定手段、12…底部抜熱量算出手段と組成的過冷却演算手段とを含む凝固速度制御手段、13…電熱ヒーターの電源、14…ヒーター温度の情報を伝達する伝達手段、15…冷却水の情報を伝達する伝達手段、16…電熱ヒーターの電源にパワー制御情報を伝達する伝達手段、17…鋳型の底部や水冷ジャケット7等の鋳型下部構造体。

Claims (6)

  1. 凝固精製装置の鋳型内にある金属シリコンの融液を一方向凝固させて前記金属シリコン中の不純物元素を除去する金属シリコンの凝固精製法であり、
    凝固界面での融液側温度勾配Gと、凝固途中の融液中不純物元素濃度Cmと、凝固速度Vとを用いて表される組成的過冷却指数{VOGC=(V/G)×Cm}が、金属シリコンにおけるシリコン−不純物元素の状態図から読み取れる液相線の勾配mと不純物元素の拡散係数Dとを用いて表される組成的過冷却の臨界値{0.59(D/m)}に対して、下記の関係
    1/10{0.59(D/m)}≦VOGC<0.59(D/m)
    を維持するように、前記融液の加熱及び/又は冷却を行うことを特徴とする金属シリコンの凝固精製法。
  2. 鋳型内での融液の一方向凝固が、前記鋳型の側面を断熱しながら融液の液面上方から輻射により加熱すると共に鋳型の底部からは抜熱により冷却して行われることを特徴とする請求項1に記載の金属シリコンの凝固精製法。
  3. 組成的過冷却指数(VOGC)は、金属シリコンの物性値情報(凝固潜熱、凝固点、密度、熱伝導度)、凝固前の融液関連初期情報(初期不純物濃度、初期融液深さ)と、凝固過程の時系列情報(結晶から外部へ抜熱される熱流量、凝固面高さ)とを基にして、凝固界面を挟んだ凝固進行方向に対する定常の一次元熱移動収支によって凝固界面での融液側温度勾配Gと凝固速度Vの積を求め、これに融液中不純物元素濃度の値Cmを乗じで求めることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属シリコンの凝固精製方法。
  4. 組成的過冷却指数(VOGC)は、金属シリコンの物性値情報(L:凝固潜熱、Tmp:シリコンの凝固点、ρ:凝固点における結晶の密度、Kmo:静止した融液の熱伝導度)と、事前に求めた融液内実効熱伝導度情報(Km:融液内実効熱伝導度)と、凝固前の融液関連初期情報(Co:初期不純物濃度、H:初期融液深さ)と、凝固過程の時系列情報(Jb:容器底部から外部へ抜熱される熱流量、x:凝固面高さ)とを基にして、下記の(1)式
    Figure 2012106886
    〔但し、上記式中、Taはヒーターの輻射温度、εは融液表面とヒーターとの間の実効輻射率、σはステファンボルツマン定数、及びkeffは実効分配係数をそれぞれ意味する。〕
    により、凝固界面を挟んだ凝固進行方向に対する定常の一次元熱移動収支を計算することによって求めることを特徴とする請求項3に記載の金属シリコンの凝固精製方法。
  5. 凝固精製装置の鋳型内にある金属シリコンの融液を、その液面上方から輻射により加熱すると共に前記鋳型底部からは抜熱により冷却し、前記鋳型内で前記融液を一方向凝固させて前記金属シリコン中の不純物元素を除去する金属シリコンの凝固精製装置であり、
    前記融液の液面上方に設置されて前記液面を加熱するヒーターからなる加熱手段と、前記鋳型の底部を冷却する冷却手段と、前記鋳型の側面に設置されてこの鋳型側面を断熱する断熱手段とを有し、
    下記の(0)式で表される凝固速度Vを凝固初期から時系列で算出し、
    Figure 2012106886
    この算出された時系列の凝固速度から時系列の凝固面高さxを累積計算によって求める凝固面高さ計算手段と、前記ヒーターの温度Taを時系列で測定する温度測定手段と、前記水冷ジャケットにおける冷却水の入口温度、出口温度、及び流量を時系列で測定し、当該測定値から前記容器の底部から外部へ抜熱される熱流量Jbを時系列で算出する底部抜熱量算出手段とを有し、また、
    前記金属シリコンの物性値情報(L:凝固潜熱、Tmp:純シリコンの凝固点、ρ:凝固点における密度、Kmo:静止した融液の熱伝導度)と、事前に求めた融液内実効熱伝導度情報(Km:融液内実効熱伝導度)と、凝固前の融液関連初期情報(Co:初期不純物濃度、H:初期融液深さ)とが入力されると共に、前記凝固面高さ計算手段で求められた凝固面高さxの時系列情報と、前記底部抜熱量算出手段で算出された前記容器底部から外部へ抜熱される熱流量Jbの時系列情報とが入力され、これらの入力情報を基にして、下記の(1)式
    Figure 2012106886
    により組成的過冷却指数(VOGC)を算出する組成的過冷却指数演算手段と、前記組成的過冷却指数演算手段で算出される組成的過冷却指数(VOGC)の値が金属シリコンにおけるシリコン−不純物元素の状態図から読み取れる液相線の勾配mと不純物元素の拡散係数Dとを用いて表わされる組成的過冷却の臨界値{0.59(D/m)}に対して、下記の関係
    1/10{0.59(D/m)}≦VOGC<0.59(D/m)
    を維持するように、前記ヒーターの温度を前記融液の凝固の進行に応じて調整するヒーター温度制御手段とを有する
    ことを特徴とする金属シリコンの凝固精製装置。
  6. 前記凝固面高さ計算手段に替えて、凝固面高さを時系列で測定する凝固面高さ測定手段を有し、
    当該凝固面高さ測定手段で求められた凝固面高さの時系列情報を、前記凝固面高さ計算手段で求められた凝固面高さの時系列情報に替えて、前記組成的過冷却指数演算手段へ入力することを特徴とする請求項5に記載の金属シリコンの凝固精製装置。
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