JP2006273628A - 多結晶シリコンインゴットの製造方法 - Google Patents

多結晶シリコンインゴットの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高品質な多結晶シリコンインゴットを低コストで提供することを目的とする。
【解決手段】鋳型内に保持した、ドーパントを含有するシリコンの融液に温度勾配を与え、低温部から高温部に向けて一方向凝固させてシリコンのインゴットを形成する工程を有し、インゴットの凝固開始位置から固化率50%の位置までの融液の凝固速度をV1としたとき、0.8≦V1≦1.8(単位:mm/min)を満たすようにシリコンの融液を凝固させる多結晶シリコンインゴットの製造方法である。
【選択図】図1

Description

本発明は、太陽電池用シリコン基板等として好適に用いることのできる多結晶シリコンインゴットの製造方法に関するものである。
アメリカのPV NEWS紙によれば2003年の全世界の太陽電池生産量は744MWであり、過去10年間で12倍に増加した。この生産量の急激な伸びを牽引するのは、その90%近くを占めている結晶シリコン型太陽電池、中でもキャスト(鋳込み)法で製造された多結晶シリコンインゴットを使用する多結晶シリコン太陽電池である。多結晶シリコン太陽電池は、今日全世界の太陽電池生産量に占める割合が60%を超え、現在、最も多く製造されている太陽電池である。
近年、環境問題への関心の高まりとともに太陽電池市場が急速に拡大する中、より低コストで高い変換効率の太陽電池が求められているが、多結晶シリコン太陽電池の変換効率や生産コストは使用する多結晶シリコンインゴットに大きく依存することから、多結晶シリコンインゴットの更なる高品質化と低コスト化が重要な課題となっている。
キャスト(鋳込み)法による多結晶シリコンインゴットの製造方法は、加熱機構と冷却機構を備えた不活性雰囲気下の鋳造装置内において、シリコン原料とドーパントを加熱融解した融液を鋳型内に注ぎ、鋳型上部を加熱してシリコン表面を融液状態に保ちながら鋳型底面部から抜熱してシリコン融液を底部から頭部へ一方向凝固させたり、あるいはシリコン原料とドーパントを鋳型内で加熱融解してからシリコン融液を鋳型底面部より抜熱して一方向凝固させたりして、その後に高温の鋳型内のシリコンインゴットを徐冷し冷却する手法が一般的である。こうして得られた多結晶シリコンインゴットから、結晶欠陥や異物、不純物の多いインゴット側面部や底面部、および上面部を通常数mm以上切断除去した後、マルチワイヤーソー等でシリコンインゴットをスライスして太陽電池用多結晶シリコン基板が得られる。
多結晶シリコンインゴットの品質は、マイクロ波を利用した光導電減衰法(μ-PCD法)等を用いて測定される少数キャリア寿命で特徴付けられる。太陽電池の変換効率向上のためにはこの多結晶シリコンインゴットの少数キャリア寿命の向上が必要であり、従来から多結晶シリコンインゴットの少数キャリア寿命を向上させるため、多結晶シリコンインゴットの結晶品質向上が試みられてきた。
高品質な多結晶シリコンインゴットを得るためには、鋳型底部から頭部へかけシリコン融液を一様な凝固速度、一様な成長方向で凝固させることが理想と考えられている。そのためシリコンの結晶を鋳型底面部から上方へ向けて一方向に成長させ、鋳型側面方向から成長する結晶を抑制した一方向凝固組織を有するシリコンインゴットを鋳造するために、様々な鋳造装置や鋳造方法が公開されている。例えば従来技術では、鋳型内での凝固速度、
即ちシリコンの融液と凝固組織の境界である固液界面の進行速度を抑制あるいは一定に制御したり、または凝固工程中の鋳型下部において鋳型底面より抜熱しながら側面下部を逆にヒータ等で加熱することによって、多結晶シリコンインゴット中の結晶粒径を大きくすることで品質の劣る結晶粒界の量を相対的に小さくしたり、結晶粒内の欠陥を低減したりすることが試みられてきた(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。また、鋳型側面部を断熱あるいは加熱して鋳型側面部からの結晶成長を抑制し、抜熱を鋳型底面のみから実施することによって、鋳型底部から頭部へ向けて成長する結晶粒に側面方向から応力が加わって生じる結晶欠陥を低減することが試みられてきた(例えば、特許文献5参照)。
従来におけるシリコン鋳造装置を図3に示す。
この鋳造装置は、加熱機能を有する上部室101と、冷却機能を有する下部室102とは断熱材による隔壁103で仕切られ、この隔壁103の中央部に上部室101と下部室102の間を鋳型108が通過するための連通経路105が配置されている。また、鋳型108は、断熱材110と熱伝導性が良い材質から成る置台106を介して昇降機107に置載されている。また、連通経路105の周囲を囲む位置に冷却板111が設置されている(例えば、特許文献6参照)。
図3において、上部室101で鋳型108内のシリコン109を融解し、凝固の進行に伴って、置台106の上に置載された鋳型108が、昇降機107により、冷却板111に囲まれた連通経路105に下降されて、熱伝導率が良い置台106を冷却域に露出することによって、鋳型底部からシリコン融液の冷却を可能としている。
このように、置台106の下降量や下降速度、また断熱材110厚みや上部室101内の温度、冷却板111の温度をコントロールすることにより、凝固速度や固液界面の温度勾配を制御している。
特開2000−327487号公報 特開2002−308616号公報 特開平11−21120号公報 特開昭63−166711号公報 特開2000−135545号公報 特開2002−293526号公報
上述した従来技術による多結晶シリコンインゴットは、結晶の凝固速度や結晶の成長方向を制御するために、鋳型を必要以上に加熱または断熱することでシリコンからの抜熱量を抑制したり、抜熱方向を制御したりする方法で製造されている。また、シリコン融液を冷却するための冷却機構による鋳型からの抜熱を鋳型底面部からに制限しつつインゴットの底部から頭部にわたって凝固速度を一定に保つため、凝固工程前半におけるインゴット下部に位置するシリコン融液が凝固する際の冷却機構の抜熱能力を抑制し、その結果、凝固工程前半におけるインゴット下部に位置するシリコン融液の凝固速度を抑制してきた。抜熱能力を抑制するとは、例えば鋳型底部を加熱するための機構を用いて鋳型側面部の下部や鋳型底部を加熱したり(例えば、特許文献1参照)、鋳型底面部を載置する置台を冷却するために冷却機構に露出する置台の面積が小さくなるよう制御したり(例えば、特許文献2参照)、さらには鋳型底面部を冷却するために冷却機構の内部に循環させている冷却水や気体等の冷却流体の流量を低減したりすることによって(例えば、特許文献3参照)、鋳型からの抜熱量を抑制することを指す。
しかしながら、シリコン融液の凝固速度を一定に制御することは難しく、シリコンの凝固初期において鋳造装置の冷却機構が本来有する抜熱能力を抑制したり、凝固が進行するに連れて非常に大きな冷却能力を有する大規模な冷却機構が必要となったりしていた。
このように、従来技術ではシリコン融液の凝固速度を抑制することによってシリコンの凝固に時間がかかるため生産性が低下して多結晶シリコンインゴットの製造コストが高くなったり、鋳造装置に複雑な制御機構が必要なため設備価格が高額となったり、鋳造装置に大規模な冷却機構が必要なため設備価格が高額となったりして多結晶シリコンインゴットの製造コストが高くなるという問題があった。
さらに、結晶粒を大きくしたり、鋳型側面の断熱を強化することによって鋳型側面部からの結晶成長を抑制したりすることも行われているが、これらだけでは、結晶粒内の品質が十分改善されず、少数キャリア寿命の長い高品質な結晶粒にまぎれて発生する少数キャリア寿命が短く品質の悪い結晶粒を十分低減できなかったり、凝固工程後半で品質の悪い結晶粒が発生してしまうという問題があった。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、高品質な多結晶シリコンインゴットを低コストで提供する多結晶シリコンインゴットの製造方法を提供することを目的とする。
発明者は、上記の目的を達成すべく研究を重ねた結果、従来技術に比べインゴット内部の少数キャリア寿命が長く、インゴットの底部から頭部にかけての比抵抗や品質のばらつきが低減された多結晶シリコンインゴットを、従来よりも簡易な方法を用いて短時間に得る方法を見出すに至った。この方法は以下の通りである。
本発明の多結晶シリコンインゴットの製造方法は、鋳型内に保持した、ドーパントを含有するシリコンの融液に温度勾配を与え、低温部から高温部に向けて一方向凝固させてシリコンのインゴットを形成する工程を有し、インゴットの凝固開始位置から固化率50%の位置までの融液の凝固速度をV1としたとき、0.8≦V1≦1.8(単位:mm/min)を満たすようにシリコンの融液を凝固させる。
本発明の多結晶シリコンインゴットの製造方法は、上記方法において、、インゴットの固化率50%の位置から固化率80%の位置までの融液の凝固速度をV2としたとき、さらに次の式を満たすような条件でシリコンの融液を凝固させる。
V1>V2、かつ、0.6≦V2≦1.4(単位:mm/min)
本発明の多結晶シリコンインゴットの製造方法は、上記方法において、前記鋳型は、底面部と側面部とを備えた上方開放型の鋳型であって、前記一方向凝固の工程は、前記底面部と前記側面部とから同時に抜熱することによって行われる。
本発明の多結晶シリコンインゴットの製造方法は、上記方法において、前記一方向凝固の工程は、前記側面部からの抜熱能力が異なる2段階以上のステップを含む。
本発明の多結晶シリコンインゴットの製造方法は、上記方法において、前記2段階以上のステップは、シリコンの融液の固液界面の上昇に連動して、前記側面部からの抜熱能力を上昇させる。
なお、本明細書中で用いる固化率とは、鋳造した多結晶シリコンインゴットの高さ位置を表す。即ち固化率0%の位置とはインゴット底面の高さ位置を意味し、固化率100%の位置とはインゴット頭部の高さ位置を表す。
本発明の多結晶シリコンインゴットの製造方法は、鋳型内に保持した、ドーパントを含有するシリコンの融液に温度勾配を与え、低温部から高温部に向けて一方向凝固させてシリコンのインゴットを形成する工程を有し、前記インゴットの凝固開始位置から固化率50%の位置までの融液の凝固速度をV1としたとき、0.8≦V1≦1.8(単位:mm/min)を満たすようにシリコンの融液を凝固させるようにしている。このように、本発明は、凝固工程初期から中間付近までの間の凝固速度V1を十分大きくし、上述の範囲とすることによって、凝固初期に鋳型の内面等から混入する不純物に十分な拡散の時間を与えることなくシリコン融液を凝固させるため、インゴット底部から中央部にかけて、少数キャリア寿命が長い高品質な多結晶シリコンインゴットを成長させることができる。そして、凝固後半にも、高品質な多結晶シリコンインゴットを引き継いで成長させることが可能となるから、インゴット全体にわたり少数キャリア寿命が長く高品質な多結晶シリコンインゴットを製造することが可能となる。
したがって、本発明の製造方法に係る多結晶シリコンインゴットはインゴット全体にわたって高品質なものとなるので、このインゴットをスライスして得られた多結晶シリコン基板は、高品質で均一な特性を有し、太陽電池用の基板として適するものとなる。さらに、インゴットを無駄なく利用することができるので、低コスト化にも寄与するものとなる。
また、上述した本発明の多結晶シリコンインゴットの製造方法において、前記インゴットの固化率50%の位置から固化率80%の位置までの融液の凝固速度をV2としたとき、V1>V2、かつ、0.6≦V2≦1.4(単位:mm/min)の式を満たすような条件でシリコンの融液を凝固させるようにすれば、従来の方法に比べて多結晶シリコンインゴットの製造に要する時間を大幅に短縮することが可能となり、製造コストの大幅な削減を実現できる。また、インゴットの全体に渡って高速に凝固させるため、ドーパントが不純物としてシリコンに取り込まれる際に、ドーパントが排斥されずにシリコンの凝固組織中へ取り込まれる割合を示す実効偏析係数も大きくなるため、従来のように低速でシリコン融液を凝固させる場合に比べて、インゴットの底部と頭部での比抵抗分布の不均一性を低減した多結晶シリコンインゴットを製造することが可能となる。
さらに、上述した本発明の多結晶シリコンインゴットの製造方法において、前記鋳型は、底面部と側面部とを備えた上方開放型の鋳型であって、前記一方向凝固の工程は、前記底面部と前記側面部とから同時に抜熱することによって行われるようにする。凝固したインゴットは熱を伝えにくくなり、鋳型の底面部からの抜熱だけでは、十分に冷却できなくなるため、側面部からも抜熱することによって、シリコンインゴット全体にわたって、凝固中の冷却状態をより均一にするとともに高速に凝固させ続けることができるから、高品質の多結晶シリコンインゴットの製造に寄与するものとなる。
また、上述した本発明の多結晶シリコンインゴットの製造方法において、前記一方向凝固の工程は、前記側面部からの抜熱能力が異なる2段階以上のステップを含むようにしたので、インゴットの凝固状態に合わせて、抜熱能力を制御することができる。そのため、高品質の多結晶シリコンインゴットを得ることができる。
また、上述した本発明の多結晶シリコンインゴットの製造方法において、前記2段階以上のステップは、シリコンの融液の固液界面の上昇に連動して、前記側面部からの抜熱能力を上昇させるようにした。凝固したインゴットは熱を伝えにくくなり、鋳型底面からの抜熱だけでは凝固が進行している固液界面の冷却状態が凝固とともに低下する。シリコンの融液の固液界面の上昇に連動して、鋳型の側面部からの抜熱能力を上昇させるようにしたことにより、凝固が進行している固液界面の温度状態をより一定に保つことができるから、インゴット全体の品質をより一定にすることができる。
以上のような本発明の多結晶シリコンインゴットの製造方法によれば、少数キャリア寿命の長い高品質な結晶粒に紛れて、少数キャリア寿命が短く品質の悪い結晶粒が発生したり、凝固工程後半で品質の悪い結晶粒が発生したりする問題を低減できる。その結果、インゴットの比抵抗分布や品質のばらつきを従来技術より改善し、高品質で均一な多結晶シリコンインゴットを製造することができる。
以下、本発明の多結晶シリコンインゴットの製造方法について詳細に説明する。なお、以下に説明する図面において同様の箇所には同じ符号を付すものとする。また、図示する鋳型や鋳造装置の構造や大きさ等については、説明のために模式的に図示したものであり、これらに限定されるものではない。
図1に本発明の多結晶シリコンインゴットの製造方法に用いられる、鋳型とその内部で凝固した多結晶シリコンインゴットの模式的な断面図を示す。
図1は、鋳型1とその中で凝固させた本発明の方法に係る多結晶のシリコンインゴット10である。この多結晶シリコンインゴット10を得るには、以下の工程を経て行うようにする。
まず、鋳型1内に保持した、ドーパントを含有するシリコンの融液に上方から下方に向かって温度が低くなるような温度勾配を与える。鋳型1の上方から加熱したり、鋳型1の下方から冷却したりすることによって、温度勾配を与えることができる。加熱や冷却を行うための具体的な鋳造装置の構成については後述する。このように温度勾配を与えられたシリコンの融液を、低温部から高温部に向かって一方向凝固させて、多結晶シリコンインゴット10を得る。なお、鋳型1は二酸化珪素や黒鉛等を用いて形成された上方開放型の鋳型を用いることが望ましい。このような鋳型1は、例えば、底面部1bとその周囲に立設した側面部1a等から成る分割式鋳型として構成しても良い。鋳型1の内表面には窒化珪素、二酸化珪素、炭化珪素等からなる離型材層2を設けることが望ましい。離型材層2を設けることにより、鋳型1の内部に保持されたシリコン融液が凝固した際に、鋳型1の内壁と多結晶シリコンインゴット10とが融着することを抑制できる。
本発明の多結晶シリコンインゴットの製造方法では、図1に示すように一方向凝固させる際に、インゴットの凝固開始位置から固化率50%の位置までの融液の凝固速度V1において、V1(mm/min)は、0.8mm/min以上1.8mm/min以下とすることを要する。これは即ち、凝固工程初期から中間付近までの間の凝固速度V1を大きくし、従来に比べて高速に成長させることを意味する。
これによって、凝固初期に鋳型1の内面等から混入する不純物に十分な拡散の時間を与えることなくシリコン融液を凝固させることができる。インゴット底部から中央部にかけて、少数キャリア寿命が長い高品質な多結晶シリコンインゴットを成長させることができる。そして、凝固後半にも、高品質な多結晶シリコンインゴットを引き継いで成長させることが可能となるから、インゴット全体にわたり少数キャリア寿命が長く高品質な多結晶シリコンインゴット10を製造することが可能となる。
なお、インゴットの中部付近(固化率50%位置)までの融液の凝固速度V1が0.8mm/min以下の凝固速度では、少数キャリア寿命の長い高品質な結晶粒にまぎれて、少数キャリア寿命が短く品質の悪い結晶粒の発生を十分低減できず、また1.8mm/minより大きい凝固速度で凝固させると、凝固後のシリコン組織に微細なクラックが入る可能性が強いからである。
また、さらに、インゴットの中部付近(固化率50%位置)から頭部付近(固化率80%位置)までの融液の凝固速度V2は、0.6mm/min以上1.4mm/min以下とし、上述したV1よりも小さくすることが望ましい。上述した凝固速度V1およびV2は、いずれも従来の方法と比べて速いため、多結晶シリコンインゴットの製造に要する時間を大幅に短縮することが可能となり、製造コストの大幅な削減を実現することができる。凝固後の多結晶シリコンインゴットは、上方に存在する凝固前のシリコン融液によって高温に加熱され、鋳型内表面等に存在する不純物が凝固後のインゴット中を固相拡散して、品質が悪化する恐れがあるが、上述のような範囲で素早く凝固させれば、不純物に十分な拡散の時間を与えないので、凝固後の多結晶シリコンインゴットの特性の悪化を回避できるものと思われる。
また、ドーパントが不純物としてシリコンに取り込まれる際に、ドーパントが排斥されずにシリコンの凝固組織中へ取り込まれる割合を示す実効偏析係数も大きくなるため、従来のように低速でシリコン融液を凝固させる場合に比べて、インゴットの底部と頭部での比抵抗分布の不均一性を低減した多結晶シリコンインゴットを製造することが可能となる。その理由として次のように推測する。通常、所望の濃度のドーパントを含むシリコン融液が凝固する際に、偏析現象によってシリコン融液中のドーパントはシリコンの相変化に伴ってある一定の割合で固相中に取り込まれる。液相中のドーパント濃度をC、固相中のドーパント濃度をCとすると、固相中のドーパント濃度は、C=kCの関係で表される。kは偏析係数と呼ばれ、不純物元素の種類に固有の定数である。通常、太陽電池の用途に用いられる半導体の多結晶シリコンは、ドーパントとしてB(ホウ素)が用いられるが、これはシリコンに対する偏析係数kが0.8程度であり1より小さい。したがって、キャスト(鋳込み)法によって製造される多結晶シリコンインゴットは、凝固の進行に伴って融液中のドーパント濃度は増加し、結果として一方向凝固させたシリコンインゴットの上部の比抵抗は底部の比抵抗に比べて小さくなってしまうという問題があった。これに対して、本発明の多結晶シリコンの製造方法によれば、凝固速度、即ち固液界面の進行速度を従来より高速に制御する結果、シリコン融液中のドーパントが凝固組織に取り込まれずに排斥される反応が低減され、見かけ上の偏析係数(実効偏析係数)が大きくなるため、従来に比べてインゴットの底部と頭部での比抵抗分布の不均一性を低減した多結晶シリコンインゴットを製造することが可能となると推測される。
さらに、中部付近(固化率50%位置)から頭部付近(固化率80%位置)までの融液の凝固速度V2(mm/min)が0.6mm/min以下の凝固速度では、少数キャリア寿命の長い高品質な結晶粒にまぎれて、少数キャリア寿命が短く品質の悪い結晶粒の発生を十分低減できず、また1.4mm/minより大きい凝固速度で凝固させると、凝固後のシリコン組織に微細なクラックが入り品質が低下する可能性がある。
また、多結晶シリコンインゴットは、凝固すると熱抵抗が大きくなるため、通常は後半の凝固速度V2は必然的に前半の凝固速度V1より小さくなる。これを無理にV2をV1以上で凝固させるようとすると、鋳造装置に大きな冷却能力を要したり、インゴットの下方を過大に冷却することになり、歪みが蓄積したりするため、好ましくない。
なお、インゴットの凝固速度の測定は、シリコンを凝固させている鋳型内の上方から石英製の測定棒を挿入し、凝固開始からの経過時間とその時の固液界面高さより算出できる。あるいは、シリコンを凝固させている鋳型内部に鋳型底面部から上部にかけ複数の温度計(熱電対等)を挿入して測温する。するとシリコンの融液が凝固するまでの間、測温部分の温度はシリコン融点付近を示すが、シリコン融液の凝固後はシリコンの固体が抜熱機構によって冷却されるため、測温部分の温度は降下を始める。従って、シリコン融液の凝固開始から測温部分の温度の降下が始まるまでの時間と、測温部分のブロック内高さから、測温部分までの凝固速度を算出することができる。
本発明では、鋳型1として、図1に示す底面部1bと側面部1aとを備えた上方開放型の鋳型1を用いてその内部でシリコン融液を一方向凝固させる際、鋳型1の底面部1bと側面部1aから同時に抜熱することが望ましい。通常、凝固したインゴットは熱を伝えにくくなり、鋳型1の底面部1bからの加熱だけでは、十分に冷却できなくなる。ここで本発明のように、側面部1aからも抜熱することによって、シリコンインゴット全体にわたって、凝固中の冷却状態をより均一にするとともに、高速に凝固させ続けることができるから、高品質の多結晶シリコンインゴットの製造に寄与するものとなる。
このように、本発明の多結晶シリコンの製造方法は、シリコン融液を冷却するための抜熱を鋳型1の底面部1bのみに限定することなく側面部1aからも実施するという、従来とは全く異なる視点に立っているが、これによって、少数キャリア寿命が長く、高品質な多結晶シリコンインゴットを製造できる。
さらに、本発明ではシリコンの凝固初期から鋳型底部を冷却する機構が持つ冷却能力を抑制することなく発揮させることから、鋳型底部の冷却能力を制御する機構を必要としないか、あるいはその機構が非常に簡略で良いため、装置のコストが大幅に低減できる。
また、このように鋳型1の側面部1aからの抜熱を行う場合には、一方向凝固の工程において、側面部1aからの抜熱能力が異なる2段階以上のステップを含むようにすることが望ましい。インゴットの凝固状態に合わせて、抜熱能力を制御することができるので、高品質の多結晶シリコンインゴットを得ることができる。また、インゴット底部から頭部にわたる凝固速度を前述の値に制御することも可能となる。さらに、この2段階以上のステップは、シリコン融液の固液界面の上昇に連動して、鋳型1の側面部1aからの抜熱能力を上昇させるようにすることが望ましい。凝固したインゴットは熱抵抗が高く熱を伝えにくくなり、鋳型1の底面部1aからの抜熱だけでは、冷却能力が不足し、凝固が進行している固液界面の冷却状態が凝固とともに低下してしまい、先に述べた好ましい凝固速度が得られなくなる恐れがある。これに対して、本発明では、シリコンの融液の固液界面の上昇に連動して、鋳型1の側面部1aからの抜熱能力を上昇させるようにしたことにより、凝固が進行している固液界面の温度状態をより一定に保ち、冷却能力の調整マージンを広く保つことができるから、インゴット全体の品質をより一定にすることが可能となる。また、インゴットの凝固の進行に合わせて、側面部1aからの冷却能力を上昇させるようにすれば、鋳型1の側面部1aからの結晶粒成長を防止しながら、全体の凝固速度を向上させることができる。
次に、上述した本発明の多結晶シリコンインゴットの製造方法において好適に用いることができるシリコン鋳造装置について図2を用いて説明する。図2は、シリコン鋳造装置の縦断面に係る模式図である。
この例のシリコン鋳造装置4は、内部にシリコン融液9を保持するための鋳型1と、鋳型1の上方に配設されるヒータ5と、鋳型1の、底面部を冷却するための底面冷却機構6と、鋳型1の側面部を冷却するための側面冷却機構8とを含む冷却機構と、これらの部材を収容して密閉可能で、その内部を、0.65〜40kPaに減圧したAr等の不活性ガス雰囲気とした状態で、一方向凝固による多結晶シリコンインゴットの製造が可能な殻体4aを備えている。殻体4aは、例えばステンレス鋼等によって形成され、その内部には炉内断熱材7が配設されている。ヒータ5としては、例えば抵抗加熱式のヒータや誘導加熱式のコイル等を用いることができ、底面冷却機構6としては、例えばステンレス(SUS)等の金属板の内部に水や気体等の冷却流体を循環させた冷却板等を用いることができる。なお、冷却流体の流入量は独立に制御可能とすれば、鋳型1の底面部の抜熱能力を自在に制御できるので望ましい。
シリコン鋳造装置4には鋳型1の側面部分を冷却するための側面冷却機構8が、また多結晶シリコン鋳造用鋳型1には鋳型側面を断熱する鋳型断熱材3が備えられている。
ここで鋳型1の側面部分を冷却するための側面冷却機構8は、例えばアルゴン(Ar)等の冷却流体を鋳型側面に流入する方法が用いられる。この側面冷却機構8は、鋳型1の側面下部を冷却する下部冷却流体流入口8aと鋳型1の側面中部を冷却する中部冷却流体流入口8bとを備える。さらに冷却流体の流入量は独立に制御可能とすれば、鋳型1の側面部の各部位において抜熱能力を自在に制御できるので望ましい。
このような側面冷却機構8の構成とした場合、鋳型断熱材3は、図示したように、上部鋳型断熱材3a、中部鋳型断熱材3b、および下部鋳型断熱材3cのように鋳型の上下方向に少なくとも3つ以上の部分に分けられた構造であることが好ましい。これらの鋳型断熱材3によって、鋳型上部のヒータ5による輻射熱等の影響が、本来冷却したい鋳型側面までおよび、鋳型側面の冷却が阻害されることを防ぐことができる。また、鋳型側面部の下方を冷却するために下部冷却流体流入口8aから流入させた冷却流体の影響が鋳型中部まで及ぶことも抑制できる。このような鋳型断熱材3としては、例えばグラファイトフェルト等の主成分をカーボンとする材質が望ましい。
炉内断熱材7の内部の寸法は、図2に図示したように、鋳型の高さ中央近傍から上下で内寸が異なるようにすることが好ましい。即ち、鋳型中央部より上の部分においてはヒータ5の輻射等の影響を遮蔽するために内寸を小さくすることにより、炉内断熱材内周部と鋳型断熱材外周部との間の間隙を小さくする。鋳型中央部より下の部分においては炉内断熱材内周部と鋳型断熱材外周部との間の間隙を大きくし、鋳型側面部の冷却をより促進することができる。
上述のような機構を有する鋳造装置を用いれば、図1に示した鋳型1の底面部1bと側面部1aから同時に抜熱することができ、本発明の多結晶シリコンインゴットの製造方法を実施することが可能となる。
次に、図2に示したシリコン鋳造装置を用いて、本発明の多結晶シリコンインゴットの製造方法を実施する手順の一例を示す。
図のシリコン鋳造装置4を用いて、一方向凝固の手法によって多結晶シリコンインゴットを製造するためには、まず、鋳型1内にシリコン原料を充てんし、殻体4aを密閉して、減圧された不活性ガス雰囲気(例えば、5〜300Torrに減圧したアルゴン(Ar)雰囲気)とする。この際、ドーパントとして原料に添加する例えば、ボロン(ホウ素)、ガリウム等は、所望の比抵抗値になるよう計量しシリコン原料に添加する。
次いで、ヒータ5に通電して、鋳型1内に充てんしたシリコン原料を溶融させて、シリコン融液9を生成させる。なお、図2に示した例では、鋳型1は、底面冷却機構6上に保持されているが、底面冷却機構6を鋳型1の底面部から離間可能な構成とすることが望ましい。例えば、鋳型1の底面部の周辺部のみを支持し、他を露出させた支持部材によって、殻体4a内の所定の位置に保持し、ヒータ5への通電時に底面冷却機構6を鋳型1から所定距離離間させることによって、ヒータ5からの輻射熱がロスされることを防いで、効率的に、より短時間で、シリコン原料を溶融させることができる。
次に、底面冷却機構6の内部に冷媒を流通させるか、底面冷却機構6を鋳型1から離間させていた場合は、鋳型1の底面に当接させることによって、鋳型1の底面部から抜熱が起こり、鋳型1内のシリコン融液9に、ヒータ5によって加熱されている上方との間で温度勾配を生じて一方向凝固が開始される。そして、シリコンの固層(凝固組織)とシリコン融液9との境界である固液界面が徐々に上昇を開始する。
固液界面が上昇して、鋳型1の底面部からの距離が離れるほど、熱抵抗が増加して、温度勾配が小さくなる傾向があるので、一方向凝固の進行による固液界面の上昇に合わせて、底面冷却機構6の内部に流通させる冷却流体の流量を増加させて、冷却能力を上昇させることが望ましい。さらに、本発明に係る装置構成では、上述したように、鋳型1の側面部の抜熱能力を制御可能な側面冷却機構8を備えているので、一方向凝固の進行による固液界面の上昇に連動させて、鋳型1の側面下部を冷却する下部冷却流体流入口8aと鋳型1の側面中部を冷却する中部冷却流体流入口8bに流入させる冷却流体の流入量を増大させれば、冷却流体の鋳型1の側面部からの抜熱能力が上昇する。
なお、最初は、鋳型1の側面下部を冷却する下部冷却流体流入口8aに冷却流体を流して、鋳型1の側面下方を冷却し、一方向凝固の進行による固液界面の上昇に合わせて、鋳型1の側面中部を冷却する中部冷却流体流入口8bに冷却流体を流すことによって、鋳型1の側面部の下方から上方に向かって抜熱能力を増大させるようにすれば、より精確にインゴットの凝固速度を制御できることからより望ましい。
以上のように高温の鋳型1内のシリコンインゴットは徐冷した後、鋳型1からシリコンインゴットを取り出して切断し、マルチワイヤーソー等を用いてスライスして多結晶シリコン基板を得る。
なお、鋳型断熱材3a、3b、3cや炉内断熱材7等の厚み、大きさ等の設計や、側面冷却機構8から流入させる冷却流体の流量とその制御、さらには底面冷却機構6による冷却能力の制御等は、使用する鋳型サイズ、炉体構造、炉内サイズ、炉内圧力等によって異なるが、鋳造中のシリコンインゴット内部の測温によって鋳型内の凝固速度を計測し、所望の凝固速度を実現するような鋳造条件に調整することができることは言うまでもない。
以上説明した装置構成によれば、本発明の多結晶シリコンの製造方法を容易に実現することができ、鋳型1からの抜熱量を、より精密に制御して、凝固初期から完全凝固に至るまでの間、温度勾配を安定に維持することができ、より高品質な多結晶シリコンインゴットを再現性よくできるだけコスト安価に製造することが可能となる。
本発明を実施するための鋳造装置は、上述した構造に限るものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることはもちろんである。
例えば上述の説明では、側面冷却機構8として、冷却流体流入口から気体を流入させることによって、鋳型1の側面から抜熱する方法について説明したが、これに限るものではなく、鋳型1の側面に直接、冷却部材を当接させることによって抜熱するようにしても構わない。このような冷却部材としては、ステンレス鋼等によって形成し、その内部に水等の冷却液体を循環させて冷却するとよい。
さらに、上述の説明では、鋳型の内部において、シリコン原料を溶解して凝固させる方法について説明したが、これに限るものでなく、他の坩堝等でシリコン原料を融解してシリコン融液を形成し、鋳型1をシリコン融液と同程度か若干低い温度まで予熱して、鋳型内部にシリコン融液を注湯するようにしても良い。
以上、説明した本発明の多結晶シリコンインゴットの製造方法に係る多結晶シリコンインゴットは、少数キャリア寿命の長い高品質な結晶粒に紛れて、少数キャリア寿命が短く品質の悪い結晶粒が発生したり、凝固工程後半で品質の悪い結晶粒が発生したりする問題を低減できる。その結果、インゴットの比抵抗分布や品質のばらつきを従来技術より改善し、高品質で均一な多結晶シリコンインゴットを製造することができる。
なお、発明者は、本発明の多結晶シリコン製造方法に係る多結晶シリコンインゴットにおいては、インゴット底部付近(固化率10%位置)の比抵抗(ρ1)が0.3(Ω・cm)<ρ1<3.0(Ω・cm)の一般的な太陽電池用途に適した比抵抗を有する場合、インゴット底部付近(固化率10%位置)の比抵抗(ρ1)とインゴット中部付近(固化率50%位置)の比抵抗(ρ2)の関係が(ρ1−ρ2)/ρ1<0.1となっていれば、少数キャリア寿命が長く、高品質な多結晶シリコンインゴットとなることを見出した。また、インゴット底部付近(固化率10%位置)の比抵抗(ρ1)とインゴット頭部付近(固化率80%位置)の比抵抗(ρ3)の関係が(ρ1−ρ3)/ρ1<0.25であれば、さらに少数キャリア寿命が長く、高品質な多結晶シリコンインゴットとなる事実も知見した。すなわち、本発明の方法による多結晶シリコンインゴットは、インゴット内部の比抵抗分布と少数キャリア寿命に相関があったが、これは、従来の製造方法によってドーパント量を制御してこの比抵抗範囲に収めるだけでは得られない効果である。
ここでインゴット底部付近の比抵抗(ρ1)とインゴット頭部付近の比抵抗(ρ3)を、インゴットの最下部や最上部の比抵抗では無く、固化率10%位置および固化率80%位置の比抵抗とした理由は、鋳造後のシリコンインゴットは結晶欠陥や異物、不純物の多いインゴット側面部や底面部および上面部を通常数mm以上切断除去するため、インゴットの最下部や最上部は用いられないためである。また度重なる検討の結果、インゴット最下部付近および最上部付近の組織も不純物や結晶欠陥等の影響のために再現性の良い比抵抗測定がやや難しいため、上記の高さ位置が好ましい。
なお、本明細書中で実施した各固化率の位置における比抵抗、および少数キャリア寿命の測定は、多結晶シリコンインゴットの水平断面における中心位置について実施した。即ち、固化率50%位置の測定とは、多結晶シリコンインゴットの高さ方向にも水平断面内でも中心にあたる部分を測定したことを意味する。
また、シリコンインゴットの比抵抗の測定方法には、例えば一直線に並んだ電流端子と電圧端子を直接サンプル表面に接触させ、電流を流した際に発生する電圧値から比抵抗を算出する四探針法等様々な方法を用いることができる。しかしこうした接触式の測定法で多結晶シリコンインゴットを測定すると、インゴット内に存在する多数の結晶粒界の影響によって測定値にばらつきが生じる場合がある。このため多結晶シリコンインゴットの比抵抗測定には、渦電流法等のように非接触で、かつ接触法による測定部分近傍の情報だけでは無く、より広い範囲の情報が得られる、即ち結晶粒界のような局所的なばらつき要因に影響されず測定が行える測定方法がより好ましい。
以上のように、本発明の多結晶シリコンインゴットの製造方法に係る多結晶シリコンインゴットは高品質でありながら比抵抗分布のばらつきも少なくなるので、インゴットから切り出された多結晶シリコン基板は、従来に比べインゴットの底部付近から切り出された基板と頭部付近から切り出された基板との比抵抗分布のばらつきが少なく品質の揃った多結晶シリコン基板となり、比抵抗値が目的とする規格範囲から逸脱して生産歩留まりを低下させ、多結晶シリコン基板がコストアップするといった問題を抑制することができる。
この高品質な多結晶シリコンインゴットから得られた多結晶シリコン基板も同様に高品質なものとなるから、例えば、これを用いて太陽電池素子を形成すれば、従来技術による多結晶シリコンインゴットから得た多結晶シリコン基板を用いて形成した太陽電池素子に比べ、変換効率が高くなる。
なお、ドーパントをホウ素とした理由は、キャスト法による多結晶シリコンの製造方法においては、原料シリコンとドーパントを同時に融解し凝固させるため、シリコンに対するドーパント元素の偏析係数がシリコンインゴットのドーパント濃度、即ち比抵抗値の均一性を大きく左右する。このため均一かつ高品質なシリコンインゴットを得ることを目的とする本発明においては、通常3族や5族の元素が使用されるシリコンのドーパントの中でも特に偏析係数が大きく、キャスト法によっても均一な比抵抗分布のインゴットが得られ易く、かつ経済性にもすぐれたホウ素をドーパントとして用いることが望ましい。
以下、本発明の多結晶シリコンインゴットの製造方法の実施例について説明する。
図2に示すシリコン鋳造装置4により多結晶シリコンインゴットを製造した。ここで鋳型1には内面に離型材層を施した黒鉛製鋳型で、平面視の内寸が25.0×25.0cmのものを用い、シリコン原料約30kgとBドーパントを投入して、Ar雰囲気下でそれらを加熱融解したのち一方向凝固し、その後徐冷して、高さ約20cmのシリコンインゴットを得た。一方向凝固の工程において、固液界面の上昇に合わせて、鋳型1の側面下部を冷却する下部冷却流体流入口8a、鋳型1の側面中部を冷却する中部冷却流体流入口8bに順次、冷却流体としてArガスを流すことによって、鋳型1の側面部の下方から上方に向かって抜熱能力を増大させた。これによって、インゴットの底部から中部付近(固化率50%位置)までの融液の凝固速度をV1(mm/min)、中部付近(固化率50%位置)から頭部付近(固化率80%位置)までの融液の凝固速度V2(mm/min)を変動させて、各条件につき5個のインゴットの試料を作製した。
その後、このインゴットを切断し、インゴット縦断面についてマイクロ波を利用した光導電減衰法(μ−PCD法)によって、少数キャリア寿命を測定した。少数キャリア寿命はインゴット底部付近(固化率10%位置)からインゴット頭部付近(固化率80%位置)までの多結晶シリコンインゴットの水平断面における中心位置について測定値を平均した。そして、5個の多結晶シリコンインゴットにおける少数キャリア寿命が全て20μsec以上であるときを合格として、下記の基準で、結晶品質の再現性を評価した。
◎:5個全ての多結晶シリコンインゴットの少数キャリア寿命が30μsec以上。非常に良好。
○:5個全ての多結晶シリコンインゴットの少数キャリア寿命が25μsec以上、30μsec未満。良好。
△:少なくとも1個の多結晶シリコンインゴットの少数キャリア寿命が20μsec以上、25μsec未満(他は25μsec超)。許容範囲内。
×:少なくとも1個の多結晶シリコンインゴットの少数キャリア寿命が20μsec未満。不可。
また製造した多結晶シリコンインゴットについて、目視による割れ、欠け、クラックの有無と、製造に要した時間を比較した。評価項目のクラックが「×」とは、鋳造後の多結晶シリコンインゴットにクラックが見られたことを意味し、「△」とは、シリコン基板を切り出すことは可能だが一部にクラックまたは欠けによる欠損が生じたことを意味する。また、評価項目の製造時間が「×」とは従来例同様の製造時間を要したことを意味し、「△」とは製造時間がやや短縮されたことを意味する。
また、従来例として、図3に示す鋳造装置を用いて、鋳型底面からの抜熱能力だけを制御して作製したインゴットも同様な評価を行った。
製造した多結晶シリコンインゴットの比較結果を表1にまとめる。
Figure 2006273628
表1のNo.1は、従来装置を用いた従来例であるが、凝固速度を十分に向上させることができず、凝固速度V1は、本発明の範囲外である0.5mm/minであった。少数キャリア寿命も低く、製造時間もかなりの時間を要した。
また、凝固速度V1が、本発明の範囲から外れたNo.2、6においては、少数キャリア寿命が従来例に比べて充分に改善されなかったり、多結晶シリコンインゴットにクラックが確認されたりして、従来例に比べ充分な改善が見られなかった。
これに対して、本発明の範囲を満たすNo.3〜5、7〜12においては、良好な結果が得られた。
本発明の実施の一形態である多結晶シリコンインゴットおよびその製造方法において用いられるシリコン鋳造用鋳型の一例を示す図である。 本発明の実施の一形態である多結晶シリコンインゴットおよびその製造方法において用いられるシリコン鋳造装置の一例を示す断面模式図である。 従来のシリコン鋳造装置を示す断面模式図である。
符号の説明
1:鋳型
2:離型材層
3:鋳型断熱材
3a:上部鋳型断熱材
3b:中部鋳型断熱材
3c:下部鋳型断熱材
4:シリコン鋳造装置
5:加熱機構
6:冷却機構
7:炉内断熱材
7a:炉内断熱材寸法変更部
8:側面冷却機構
8a:下部冷却流体流入口
8b:中部冷却流体流入口
101:上部室
102:下部室
103:隔壁
104:ヒータ
105:連通口
10ヒータ
107:昇降機
108:鋳型
109:シリコン
110:断熱材
111:冷却板

Claims (5)

  1. 鋳型内に保持した、ドーパントを含有するシリコンの融液に温度勾配を与え、低温部から高温部に向けて一方向凝固させてシリコンのインゴットを形成する工程を有する多結晶シリコンインゴットの製造方法であって、
    インゴットの凝固開始位置から固化率50%の位置までの融液の凝固速度をV1としたとき、0.8≦V1≦1.8(単位:mm/min)を満たすようにシリコンの融液を凝固させる多結晶シリコンインゴットの製造方法。
  2. インゴットの固化率50%の位置から固化率80%の位置までの融液の凝固速度をV2としたとき、V1>V2、かつ、0.6≦V2≦1.4(単位:mm/min)を満たす条件でシリコンの融液を凝固させる請求項1に記載の多結晶シリコンインゴットの製造方法。
  3. 前記鋳型は、底面部と側面部とを備えた上方開放型の鋳型であって、
    前記一方向凝固の工程は、前記底面部と前記側面部とから同時に抜熱することによって行われる請求項1又は請求項2に記載の多結晶シリコンインゴットの製造方法。
  4. 前記一方向凝固の工程は、前記側面部からの抜熱能力が異なる2段階以上のステップを含む請求項3記載の多結晶シリコンインゴットの製造方法。
  5. 前記2段階以上のステップは、前記シリコンの融液の固液界面の上昇に連動して、前記側面部からの抜熱能力を上昇させる請求項4記載の多結晶シリコンインゴットの製造方法。
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