JP6610444B2 - 単結晶の製造方法及びその装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ガーネット等の単結晶の製造方法に係り、特に、回転引上げ法にて製造されるガーネット等の単結晶の冷却工程を改善した単結晶の製造方法及びその装置に関する。
光通信に利用されている半導体レーザやレーザ加工等に利用されている固体レーザ等は、レーザ共振器外部の光学面や加工面で反射された光がレーザ素子に戻ってくると、レーザ発振が不安定になる。発振が不安定になると、光通信の場合には信号ノイズとなり、加工用レーザの場合はレーザ素子が破壊されてしまうことがある。
このため、このような反射戻り光がレーザ素子に戻らないように遮断するため光アイソレータが使用される。
上記光アイソレータに使用されるファラデー回転子の材料として、従来、置換型ガドリニウム・ガリウム・ガーネット単結晶(SGGG)を基板とし、この基板上に液相エピタキシャル成長させたガーネット単結晶膜が知られている。
尚、上記SGGGとは、その組成が(GdCa)(GaMgZr)12で表される単結晶を意味する。
ところで、上記置換型ガドリニウム・ガリウム・ガーネット単結晶を製造する際、従来より回転引上げ法としてのCZ法(チョクラルスキー法)を用いた製法が一般的である。
図5は従来のCZ法における単結晶の製造装置を示したものである。
同図において、単結晶の製造装置は、金属ルツボ101内に単結晶原料102を収容し、金属ルツボ101の外周及び上部を保温・断熱材103で取り囲み、更に、保温・断熱材103の周囲に高周波誘導加熱コイル104を設置したものであり、この高周波誘導加熱コイル104へ高周波加熱電源105から高周波電流を印加することで、金属ルツボ101及び単結晶原料102を加熱し、単結晶原料102を高温状態に保持して融液とし、図示外の引上げ機構にて昇降可能な引上げ軸109に保持された種結晶107を液面に接触させてから、引上げ軸109で徐々に引上げることで単結晶108を成長させるものである。
このとき、引上げ軸109には重量変化を計測するためのロードセル110が取り付けられており、重量の変化分を計測して、設定値との差分がゼロになるように高周波加熱電源105の出力電力を調整するための出力調整器111が、ロードセル110及び高周波加熱電源105に接続されていることで、成長する単結晶108の直径を調節できるようになっている。また、炉内温度観察用として、金属ルツボ101の下部に温度センサとしての熱電対112が設置されていることが多い。
ちなみに、従来の単結晶製造装置におけるSGGGの製造順序として、原料融液面への種結晶への接触から始まり、指定有効径となるまで単結晶直径を広げる工程、指定有効径に到達してからの同径による直胴部育成工程、指定直胴部長に到達してからの原料融液からの単結晶の切り離し及び単結晶冷却工程を得て、完成したSGGGを製造装置から取り出しウエハー化等の加工工程へと繋がっていく。
また、従来における単結晶の製造方法や製造装置としては例えば特許文献1〜4に記載のものが既に知られている。
特許文献1には、坩堝内に装填した原料粒塊をヒータにて溶解し、原料溶解時に坩堝の温度を、チャンバの外に設けた放射温度計により直接測定し、測定温度が目標温度に一致するようにヒータの出力を補正する単結晶引上げ装置が開示されている。
特許文献2には、チョクラルスキー法による半導体単結晶の育成において、るつぼ内に貯留した融液の表面温度を2箇所について非接触式温度測定手段により測定し、2箇所の温度測定値から算出した融液温度の温度勾配が所定の温度が所定の範囲を維持するように単結晶の引き上げ条件を制御する半導体単結晶の育成方法が開示されている。
特許文献3には、チョクラルスキー法による酸化物単結晶の製造方法において、育成単結晶からの熱放射の強度変動を温度センサとしての放射温度計を用いて覗き穴から測定し、熱放射の強度変動が小さくなるように単結晶育成環境をフィードバック制御する酸化物単結晶の製造方法が開示されている。
特許文献4には、単結晶原料が充填される坩堝と、坩堝の周囲に配置された誘導コイルと、誘導コイルに高周波電流を流すことで坩堝を発熱させるための電源と、種結晶を保持して上下動し、坩堝内の単結晶原料融液に種結晶を接触させた後に上昇させることで、種結晶に連続した単結晶体を引き上げるための引き上げ機構と、引き上げ機構によって引き上げられている最中の単結晶体の温度を計測する為の温度計測手段と、少なくとも電源および温度計測手段と接続した制御手段とを備え、制御手段は、温度計測手段によって計測した単結晶体の温度情報に基づき、誘導コイルに流す高周波電流の大きさを調整する単結晶育成装置が開示されている。
特開平9−227277号公報(発明の実施の形態,図2) 特開平7−133187号公報(実施例,図1) 特開2000−63196号公報(発明の実施の形態,図1) 特開2015−189598号公報(発明を実施するための形態,図1)
ここで、単結晶冷却工程において、単結晶冷却中にSGGG本体にクラック(割れ)が入ることがある。SGGGは通常、結晶方位<111>で引き上げるが、結晶方位<111>でSGGG育成を行う場合、単結晶中央部にはコアと称する部分ができる。しかし、コアはコア周辺部分と格子定数が僅かに異なっており、格子定数差が生じると、その境界上で弾性歪が生じる。弾性歪が生じることで単結晶本体は外力に対して脆い状態となり、クラックが発生する要因になっていると推測される。つまり、単結晶冷却時の温度変化による熱歪の影響を受けることで単結晶本体が破断強度を超えてしまい、クラックが発生するものと推測される。
尚、この種のクラックはSGGGに限られるものではなく、他の単結晶、例えばガドリニウム・スカンジウム・ガリウム・ガーネット(GSGG)、テルビウム・ガリウム・ガーネット(TGG)、テルビウム・スカンジウム・アルミニウム・ガーネット(TSAG)、ニオブ酸リチウム(LN)、タンタル酸リチウム(LT)についても同様に生ずることは勿論である。
また、前述したように、単結晶の製造方法や製造装置としては特許文献1〜4に示すように多くの手法が既に提供されているが、いずれの手法においても、単結晶冷却時のクラックの発生を技術的課題としてこの解決手段を開示するものではない。
本発明が解決しようとする技術的課題は、回転引上げ法にて単結晶を製造するに当たり、単結晶冷却過程における冷却時間を不必要に増大させず、育成された単結晶の割れを抑えることにある。
本発明者は、前述した技術的課題を解決するために、単結晶冷却過程における単結晶の温度変化とクラックの発生要因との関係を検討した。
先ず、図5に示す単結晶の製造装置において単結晶の冷却過程での温度変化について検討する。
図6は、図5に示すSGGG製造装置における単結晶108冷却時の金属ルツボ101底に設置した温度センサとしての熱電対112の温度変化を2例示した図である。
同図において、単結晶108冷却は高周波誘導加熱コイル104への出力値を下げ、炉内温度低下を行うことで実施するが、単結晶108冷却開始から数時間経過した段階で、熱電対112温度が下降から上昇へ切り替わる部分がある。これは、金属ルツボ101内に残留している融液状態の単結晶原料が液相から固相への相変化により、炉内への熱放出が行われることで生じていると推測される。
このように、相変化による炉内への熱放出は、原料融液の固相への変化の進み具合により、固化熱による熱放出量が変動する。そして、融液状態の単結晶原料が液相から固相へ完全に変化し終わると、固化熱の放出がなくなり、再び炉内温度が下降していくことになる。
図7は、図5に示すSGGG製造装置における単結晶108冷却時にクラックが発生した場合の金属ルツボ101底に設置した温度センサとしての熱電対112の温度変化を2例示した図である。
同図において、融液状態の単結晶原料が固相に完全変化し、炉内温度が急激に下がっている箇所において、再び熱電対112の温度変化が上昇を示している箇所(図中の矢印部)がある。ここで単結晶本体にクラックが入ったことを示しており、単結晶108へのクラックの発生時期は、単結晶原料の液相から固相への変化が完了した後であることがわかる。これは単結晶原料が液相から固相へ完全に変化したことで、原料融液からの熱放出が終わり、急激に炉内温度が下降し、その影響により単結晶本体内の温度勾配が急峻化し、単結晶本体の熱歪が増大することが原因と推察される。
以上のことから、単結晶原料が液相から固相に完全に変化した後の単結晶108の温度降下を抑え、単結晶本体における熱歪を低減することがクラックを抑えることに繋がると推測される。このとき、単結晶108の温度降下を抑える為には高周波誘導加熱コイル104への出力値を少量ずつ減少させ、時間を掛けて炉内温度を下げていくことが有効である。しかし、単結晶原料の液相から固相への変化は、単結晶原料の量や金属ルツボ101周り等に存在する保温・断熱材103の構成により変動する。よって、単結晶原料の液相から固相への変化が開始されることによる炉内温度の上昇の開始時間、及び、単結晶原料の液相から固相への変化が完了する時間がわからないことから、高周波誘導加熱コイル104への出力値減少量を抑える時間を長く取る必要があり、冷却時間が不必要に増大するという懸念がある。
このような懸念を解消するために、本発明者は、製造対象となる単結晶にクラック(割れ)が発生する可能性が高い温度域(割れ温度域)が存在することを見出し、本発明を案出するに至ったものである。
本発明の第1の技術的特徴は、原料融液が収容されるルツボと、前記ルツボを加熱する加熱手段と、前記ルツボ内の原料融液に浸漬した種結晶を引き上げて単結晶を育成する引上げ機構と、前記ルツボ内の原料融液の温度を検出する第1の温度検出器と、前記引上げ機構にて引き上げられて育成された単結晶の温度を検出する第2の温度検出器と、を用い、前記ルツボ内に収容された原料融液から回転引上げ法により単結晶を製造するに際し、前記単結晶を育成する育成工程と、前記育成工程を経て育成された単結晶を、前記原料融液から切り離した後に冷却する冷却工程と、を備え、前記単結晶はガーネット単結晶又はリチウム化合酸化物単結晶であり、前記冷却工程は、前記加熱手段の出力低下を開始することで前記単結晶の冷却を開始する冷却開始工程と、前記冷却開始工程後に、前記第1の温度検出器の検出信号に基づいて前記原料融液の固化が完了することを検出した後、前記第2の温度検出器にて前記育成された単結晶の温度が当該単結晶に割れが生成される可能性が高い割れ温度域の上限値に至ったことを検出した条件では、前記加熱手段の出力の下げ幅を初期の下げ幅よりも小さくすることで前記単結晶の冷却速度を減速させる冷却減速工程と、前記冷却減速工程を経た後に、前記第2の温度検出器にて前記育成された単結晶の温度が前記割れ温度域の下限値に至ったことを検出した条件では、前記冷却減速工程よりも前記加熱手段の出力の下げ幅を大きくすることで前記単結晶の冷却速度を加速させる冷却加速工程と、を含むことを特徴とする単結晶の製造方法である。
本発明の第2の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えた単結晶の製造方法において、前記冷却減速工程は、前記第1の温度検出器による温度変化が温度下降から温度上昇に転じた時点の検出値をAとしたときに、前記第1の温度検出器による検出値が再びAになった条件で前記原料融液の固化が完了したものと検出し、この検出後に前記単結晶の冷却速度を減速させることを特徴とする単結晶の製造方法である。
本発明の第3の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えた単結晶の製造方法において、前記冷却開始工程、前記冷却減速工程及び前記冷却加速工程は以下の手順(1)〜(3)に従って実施されることを特徴とする単結晶の製造方法である。
(1)冷却開始工程では、以下の<式1>に従って加熱手段の出力調整を実施する。
P(h)=P(1−k・h)……<式1>
但し、Pは前記加熱手段の冷却開始時点の出力値、hは冷却開始からの経過時間(単位:時間)、kは冷却速度を決める初期係数、P(h)は経過時間hにおける加熱手段の出力値である。
(2)冷却減速工程では、以下の<式2>に従って加熱手段の出力調整を実施する。
P(h)=P(1−k・T)−P(k(h−T))……<式2>
但し、Tは第2の温度検出器による検出値が前記割れ温度域の上限値に至ったときの冷却開始からの経過時間、kは冷却減速工程で実施される冷却速度の減速変化を決める減速係数である。
(3)冷却加速工程では、以下の<式3>に従って加熱手段の出力調整を実施する。
P(h)=P(1−k・T−k・T)−P(k(h−T))……<式3>
但し、Tは第2の温度検出器による検出値が前記割れ温度域の下限値に至ったときの冷却開始からの経過時間、kはk−k、kは冷却加速工程で実施される冷却速度の加速変化を決める加速係数である。
本発明の第4の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えた単結晶の製造方法において、前記冷却加速工程は、前記加熱手段の出力の下げ幅を前記冷却開始工程の初期の下げ幅より大きくすることを特徴とする単結晶の製造方法である。
本発明の第5の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えた単結晶の製造方法において、前記単結晶がガーネット単結晶であり、前記割れ温度域の上限値が1300℃、同下限値が1200℃であることを特徴とする単結晶の製造方法である。
本発明の第6の技術的特徴は、原料融液が収容されるルツボと、前記ルツボを加熱する加熱手段と、前記ルツボ内の原料融液に浸漬した種結晶を引き上げて単結晶を育成する引上げ機構と、前記ルツボ内の原料融液の温度を検出する第1の温度検出器と、前記引上げ機構にて引き上げられて育成された単結晶の温度を検出する第2の温度検出器と、前記第1及び第2の温度検出器の検出信号に基づいて前記加熱手段を制御する制御手段と、を備え、前記単結晶はガーネット単結晶又はリチウム化合酸化物単結晶であり、前記制御手段は、前記引上げ機構にて引き上げられて育成され且つ前記原料融液から切り離された単結晶を冷却する冷却制御部を有し、前記冷却制御部は、前記加熱手段の出力を低下することで前記育成された単結晶の冷却を開始し、前記第1の温度検出器にて前記原料融液の固化が完了するのを検出した後、前記第2の温度検出器にて前記育成された単結晶の温度が当該単結晶に割れが生成される可能性が高い温度域として予め選定された割れ温度域の範囲内であることを検出した条件では、前記加熱手段の出力の下げ幅を初期の下げ幅よりも一時的に減少させることで前記単結晶の冷却速度を減速させることを特徴とする単結晶の製造装置である。
本発明の第7の技術的特徴は、第6の技術的特徴を備えた単結晶の製造装置において、前記冷却制御部は、前記第2の温度検出器にて前記育成された単結晶の温度が前記割れ温度域の上限値以下であることを検出した条件では、前記加熱手段の出力の下げ幅を初期の下げ幅よりも小さく設定し、前記第2の温度検出器にて前記育成された単結晶の温度が前記割れ温度域の下限値以下である条件では、前記加熱手段の出力の下げ幅を前記初期の下げ幅より大きく設定することを特徴とする単結晶の製造装置である。
本発明の第1の技術的特徴によれば、回転引上げ法にてガーネット単結晶又はリチウム化合酸化物単結晶を製造するに当たり、単結晶冷却過程で冷却時間を不必要に増大させず、育成された単結晶の割れを抑えることができる。
本発明の第2の技術的特徴によれば、本構成を有さない態様に比べて、原料融液の固化が完了したことを正確に判別でき、固化熱発生前や固化熱発生中に冷却速度を緩和する懸念を回避することができる。
本発明の第3の技術的特徴によれば、回転引上げ法にて単結晶を製造するに当たり、単結晶の冷却工程を数式を用いて簡単に具現化することができる。
本発明の第4の技術的特徴によれば、本構成を有さない態様に比べて、単結晶の冷却工程全体の冷却時間を短縮することができる。
本発明の第5の技術的特徴によれば、回転引上げ法にてガーネット単結晶を製造するに当たり、単結晶冷却過程で冷却時間を不必要に増大させず、育成された単結晶の割れを抑えることができる。
本発明の第6の技術的特徴によれば、回転引上げ法にてガーネット単結晶又はリチウム化合酸化物単結晶を製造するに当たり、単結晶冷却過程で冷却時間を不必要に増大させず、育成された単結晶の割れを抑えることが可能な単結晶の製造装置を構築することができる。
本発明の第7の技術的特徴によれば、回転引上げ法にて単結晶を製造するに当たり、単結晶冷却過程で冷却時間全体の短縮化を図り、かつ、育成された単結晶の割れを抑えることが可能な単結晶の製造装置を構築することができる。
(a)は本発明が適用された単結晶の製造装置の実施の形態の概要を示す説明図、(b)は(a)に示す単結晶の製造装置を用いた単結晶冷却時の温度変化を示す説明図である。 実施の形態1に係る単結晶の製造装置を示す説明図である。 実施の形態1に係る単結晶の製造装置を用いた単結晶の製造処理過程を示すフローチャートである。 (a)は実施例1に係る単結晶の製造装置を用いた単結晶冷却時の温度変化を示す説明図、(b)は単結晶の冷却工程の内訳を示す説明図である。 従来における単結晶の製造装置の一例を示す説明図である。 図5に示す単結晶の製造装置を用いた単結晶冷却時の温度変化2例を示す説明図である。 図5に示す単結晶の製造装置を用いた単結晶冷却時にクラックが発生した場合の温度変化2例を示す説明図である。
◎実施の形態の概要
図1(a)は本発明が適用された単結晶の製造方法を具現化した製造装置の実施の形態の概要を示す説明図、(b)は単結晶冷却時の温度変化を示す説明図である。
図1(a)(b)において、単結晶の製造方法は、原料融液10が収容されるルツボ1と、ルツボ1を加熱する加熱手段2と、ルツボ1内の原料融液10に浸漬した種結晶11を引き上げて単結晶12を育成する引上げ機構3と、ルツボ1内の原料融液10の温度を検出する第1の温度検出器4と、引上げ機構3にて引き上げられて育成された単結晶12の温度を検出する第2の温度検出器5と、を用い、ルツボ1内に収容された原料融液10から回転引上げ法により単結晶12を製造するに際し、単結晶12を育成する育成工程と、育成工程を経て育成された単結晶12を、原料融液10から切り離した後にて冷却する冷却工程と、を備え、冷却工程は、加熱手段2の出力低下を開始することで単結晶12の冷却を開始する冷却開始工程STと、冷却開始工程ST後に、第1の温度検出器4の検出信号に基づいて原料融液10の固化が完了することを検出した後、第2の温度検出器5にて育成された単結晶12の温度が当該単結晶12に割れが生成される可能性が高い割れ温度域Mの上限値Cに至ったことを検出した条件では、加熱手段2の出力の下げ幅を初期の下げ幅よりも小さくすることで単結晶12の冷却速度を減速させる冷却減速工程STと、冷却減速工程STを経た後に、第2の温度検出器5にて育成された単結晶12の温度が割れ温度域Mの下限値Cに至ったことを検出した条件では、冷却減速工程STよりも加熱手段2の出力の下げ幅を大きくすることで単結晶12の冷却速度を加速させる冷却加速工程STと、を含むものである。尚、本例では、ルツボ1はその周囲及び上部が保温・断熱材で覆われた製造炉13内に設置されている。
このような技術的手段において、本実施の形態の製造対象としてはガーネット単結晶を始め、ガーネット以外のリチウム化合酸化物単結晶をも広く含む。
また、本例では、単結晶の製造装置の基本構成要素として、ルツボ1、加熱手段2、引上げ機構3、第1、第2の温度検出器4,5を備えていればよい。
更に、製造工程は、回転引上げ法にて単結晶12を育成する育成工程を前提とし、育成された単結晶12の冷却工程について特別な技術的特徴を施したものである。尚、育成工程については従前からのものを広く採用して差し支えない。
ここで、冷却工程は、図1(b)に示すように、冷却開始工程ST、冷却減速工程ST、冷却加速工程STを含むものであればよい。
冷却開始工程STは、原料融液10を加熱する加熱手段2(例えば高周波誘導加熱コイルを使用)の出力を低下させることにより、ルツボ1周囲の炉内温度低下を実施し、これにより、単結晶12の冷却を開始するようにすればよい。
冷却減速工程STは、単結晶本体に割れが生成される可能性が高い温度域である割れ温度域Mが原料融液10の完全固化後で単結晶材料によって大凡決まってくることに着目し、単結晶12の冷却を開始した後、原料融液10の固化を検出した後、単結晶本体の温度が割れ温度域Mの上限値Cを下回った条件(第2の温度検出器5にて検出可能)では加熱手段2の出力の下げ幅を初期よりも小さくすることで、時間をかけて炉内温度を下げていくようにし、単結晶本体内の急峻な温度変化を抑えて単結晶本体内の熱歪を低減するようにすればよい。
冷却加速工程STは、単結晶本体が割れ温度域Mの下限値Cに至った条件(第2の温度検出器5にて検出可能)では、単結晶本体に割れが生成される可能性は少なくなるため、加熱手段2の出力の下げ幅を大きくすることで単結晶本体の冷却を加速し、冷却工程に要する時間が不必要に増大することを回避するようにすればよい。
次に、本実施の形態に係る単結晶の製造方法の代表的態様又は好ましい態様について説明する。
本実施の形態において、冷却減速工程STの好ましい態様としては、図1(a)(b)に示すように、第1の温度検出器4による温度変化が温度下降から温度上昇に転じた時点の検出値をAとしたときに、第1の温度検出器4による検出値が再びAになった条件で原料融液10の固化が完了したものと検出し、この検出後に単結晶12の冷却速度を減速させるものが挙げられる。
本例は、原料融液10の固化が完了したことを正確に判別する上で有効である。
第1の温度検出器4による検出値Aは、ルツボ1内に残留している原料融液10が液相から固相へと相変化している箇所を示すもので、第1の温度検出器4が再びAを検出するときには、原料融液10が完全に固化しているものとして扱うことが可能である。
本例の検出原理は以下の通りである。第1の温度検出器4による温度変化が温度下降から温度上昇に転じる要因は、ルツボ1内に残留している原料融液10が液相から固相への相変化により固化熱が発生し、製造炉13内への熱放出が行われることによると推測される。そして、相変化による製造炉13内への熱放出は原料融液10の固相への変化の進み具体により変動するが、原料融液10が液相から固相へ完全変化が終わると、固化熱の発生がなくなることから、再び炉内温度が下降し、本例のように、第1の温度検出器4による検出値が再びAになった時点(図1(b)中、Pcで示す)では原料融液10の固化は完了した後であると推測される。尚、Pcの箇所までの冷却開始からの時間をT、当該Tの時点における第2の温度検出器5の温度をBとする。
また、本実施の形態において、単結晶の製造方法の好ましい冷却工程としては、冷却開始工程ST、冷却減速工程ST及び冷却加速工程STは以下の手順(1)〜(3)に従って実施される態様が挙げられる。
(1)冷却開始工程STでは、以下の<式1>に従って加熱手段2の出力調整を実施する。
P(h)=P(1−k・h)……<式1>
但し、Pは加熱手段2の冷却開始時点の出力値、hは冷却開始からの経過時間(単位:時間)、kは冷却速度を決める初期係数、P(h)は経過時間hにおける加熱手段2の出力値である。
(2)冷却減速工程STでは、以下の<式2>に従って加熱手段2の出力調整を実施する。
P(h)=P(1−k・T)−P(k(h−T))……<式2>
但し、Tは第2の温度検出器5による検出値が割れ温度域Mの上限値Cに至ったときの冷却開始からの経過時間、kは冷却減速工程STで実施される冷却速度の減速変化を決める減速係数である。
(3)冷却加速工程STでは、以下の<式3>に従って加熱手段2の出力調整を実施する。
P(h)=P(1−k・T−k・T)−P(k(h−T))……<式3>
但し、Tは第2の温度検出器5による検出値が割れ温度域Mの下限値Cに至ったときの冷却開始からの経過時間、kはk−k、kは冷却加速工程STで実施される冷却速度の加速変化を決める加速係数である。
本例において、<式1>は冷却開始時の加熱手段2の出力値の設定条件を示す。
<式2>は原料融液10が完全に固化した後に加熱手段2の出力値の設定条件を変更するものであり、割れ温度域Mの範囲内では単結晶12の冷却速度が初期条件よりも緩やかになるように、加熱手段2の出力の下げ幅を小さくし、育成された単結晶12の冷却速度を減速させる。
<式3>は育成された単結晶12の温度(第2の温度検出器5による検出値)が割れ温度域Mの下限値C以下に至ったときの加熱手段2の出力値の下げ幅を大きくし、育成された単結晶12の冷却速度を加速させる。このとき、単結晶12の温度は割れ温度域Mから外れているため、仮に冷却速度を加速したとしても、単結晶12に割れが生成される懸念はない。
更に、冷却加速工程STの好ましい態様としては、加熱手段2の出力の下げ幅を冷却開始工程STの初期の下げ幅より大きくする態様が挙げられる。本例は、冷却加速工程STの冷却速度の加速の程度を冷却開始工程STよりも大きくし、冷却工程全体の冷却時間を短縮する点で好ましい。
また、本実施の形態において、ガーネット単結晶を製造対象とする場合には、割れ温度域Mとして1200〜1300℃を選定し、これに基づいて、冷却工程を実施すればよい。
また、本実施の形態において、単結晶の製造方法を具現化する単結晶の製造装置としては、図1(a)に示すように、原料融液10が収容されるルツボ1と、ルツボ1を加熱する加熱手段2と、ルツボ1内の原料融液10に浸漬した種結晶11を引き上げて単結晶12を育成する引上げ機構3と、ルツボ1内の原料融液10の温度を検出する第1の温度検出器4と、引上げ機構3にて引き上げられて育成された単結晶12の温度を検出する第2の温度検出器5と、第1及び第2の温度検出器4,5の検出信号に基づいて加熱手段2を制御する制御手段6と、を備え、制御手段6は、引上げ機構3にて引き上げられて育成され且つ原料融液10から切り離された単結晶12を冷却する冷却制御部7を有し、冷却制御部7は、加熱手段2の出力を低下することで育成された単結晶12の冷却を開始し、第1の温度検出器4にて原料融液10の固化が完了するのを検出した後、第2の温度検出器5にて育成された単結晶12の温度が当該単結晶12に割れが生成される可能性が高い温度域として予め選定された割れ温度域M(図1(b)参照)の範囲内であることを検出した条件では、加熱手段2の出力の下げ幅を初期の下げ幅よりも一時的に減少させることで単結晶12の冷却速度を減速させる態様が挙げられる。
本製造装置において、ルツボ1は原料融液10を収容可能であれば適宜選定して差し支えないが、高融点酸化物単結晶を製造するには白金やイリジウム等の貴金属製のルツボ1を使用することが好ましい。
また、加熱手段2の代表的態様としては、ルツボ1の周囲に設けられ、ルツボ1を高周波誘導加熱する加熱コイルが挙げられるが、ルツボ1全体を加熱可能であれば適宜選定して差し支えない。
更に、引上げ機構3としては原料融液10から単結晶12を回転しながら引き上げて育成するものであれば公知のものを広く含み、適宜選定して差し支えない。
また、第1の温度検出器4はルツボ1内の原料融液10の温度を検出するものであればよく、例えばルツボ1の底部中央や側壁の一部の温度を計測して原料融液10の温度を間接的に検出してもよいし、ルツボ1内の原料融液10の温度を直接的に検出してもよい。
一方、第2の温度検出器5は育成された単結晶12の温度を検出するものであればよく、例えば赤外線非接触温度検出器等の非接触式温度検出器が用いられる。
更に、制御手段6は、第1、第2の温度検出器4,5の検出信号に基づいて、単結晶12の冷却工程として、単結晶12の割れ温度域Mの範囲内では冷却減速工程STが実施可能な制御プログラムを実行する冷却制御部7を有していればよい。
また、本製造装置において、冷却制御部7の好ましい態様としては、図1(a)(b)に示すように、第2の温度検出器5にて育成された単結晶12の温度が割れ温度域Mの上限値C以下であることを検出した条件では、加熱手段2の出力の下げ幅を初期の下げ幅よりも小さく設定し、第2の温度検出器5にて育成された単結晶12の温度が割れ温度域Mの下限値C以下である条件では、加熱手段2の出力の下げ幅を初期の下げ幅より大きく設定する態様が挙げられる。
本例は、冷却開始時、冷却減速時、冷却加速時について、加熱手段2の出力の下げ幅について、冷却加速時が冷却開始時よりも大きく、冷却減速時が冷却開始時よりも小さい態様を示す。
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。
◎実施の形態1
図2は実施の形態1に係る単結晶の製造装置の全体構成を示す説明図である。
本実施の形態において、単結晶の製造装置は、SGGGを製造対象とするものであって、SGGG原料22を収容するイリジウム等からなる金属ルツボ21と、金属ルツボ21の外周及び上部を取り囲んで保温、断熱可能な製造炉とする保温・断熱材23と、金属ルツボ21の保温・断熱材23の周囲を取り囲むように設置され、金属ルツボ21を高周波誘導加熱する加熱手段としての高周波誘導加熱コイル24と、この高周波誘導加熱コイル24へ高周波電流を印加することで、金属ルツボ21及びSGGG原料22を加熱し、SGGG原料22を高温状態に保持して融液とする高周波加熱電源25と、昇降可能な引上げ軸29を有し、引上げ軸29の先端に保持された種結晶27を融液状態のSGGG原料22の液面に接触させてから、引上げ軸29を回転させながら徐々に引き上げて単結晶28を成長させる引上げ機構30と、を備えている。
本例においては、金属ルツボ21の底部中央には金属ルツボ21の温度を検出するための第1の温度センサ51が設けられ、また、引上げ機構30にて引き上げられて育成された単結晶28の温度を検出するための第2の温度センサ52が設けられている。
また、本例においては、引上げ機構30には駆動調整器40が接続されており、この駆動調整器40は引上げ軸29の昇降位置及び第1の温度センサ51の検出値に基づいて単結晶28の育成状態を判断し、予め決められた育成駆動プログラムに従って引上げ機構30による引上げ軸29の駆動(回転及び昇降動作に対する駆動)を調整するようになっている。
更に、高周波加熱電源25には温度調整器50が接続されており、この温度調整器50には第1及び第2の温度センサ51,52の検出信号が入力されている。
本例において、温度調整器50は、第1の温度センサ51及び第2の温度センサ52双方の検出信号に基づいて金属ルツボ21及びSGGG原料22に対する加熱の程度を制御する制御手段である。
詳しくは、温度調整器50は、単結晶28を育成するときに用いられる育成温度調整プログラムと、単結晶28を冷却するときに用いられる冷却温度調整プログラムとを実行し、例えば図3に示す単結晶の製造処理を実施するようになっている。
ここで、育成温度調整プログラムについては、第1の温度センサ51により金属ルツボ21及びSGGG原料22の温度変化を検出し、温度調整器50の設定値からの差分を勘案して高周波加熱電源25の出力を調整し、金属ルツボ21及びSGGG原料22の温度調整を行うものである。尚、このときの「設定値」とは、予め設定された単結晶成長過程での経過時間と金属ルツボ21の制御温度との関係における原料融液の過飽和度を一定に保つためのプロファイル曲線あるいはデータテーブルから読み取られる値である。
また、冷却温度調整プログラムについては、第1の温度センサ51により原料融液の固化が完了したことを検出した後に高周波加熱電源25の出力を低下させ、単結晶28の冷却を開始し、第2の温度センサ52により原料融液から切り離された単結晶28の温度変化を検出し、単結晶本体にクラックを生じさせないように高周波加熱電源25の出力調整を行うものである。
次に、本実施の形態に係る単結晶の製造装置では、図3に示すように、以下の手順で単結晶の製造処理が行われる。
(a)製造炉内の窒素と酸素の混合雰囲気下において、金属ルツボ21を高周波誘導加熱コイル24によって加熱し、金属ルツボ21内のSGGG原料22を融解させ、融点近傍の温度で保持する。
(b)引上げ機構30による引上げ軸29を降下させ、引上げ軸29の先端に保持された種結晶27を融液状態のSGGG原料22の液面に接触させる。
(c)種結晶27がSGGG原料22の液面に接触したら高周波加熱電源25の出力を下げ、原料融液表面の温度を降下させる。このとき、第1の温度センサ51から得られた検出信号を元に高周波加熱電源25の出力を調整する。
(d)単結晶28の析出が開始し、引上げ機構30により種結晶27及び単結晶28を回転させながら、一定速度で鉛直方向へ引き上げていき、単結晶28を成長させる。
(e)その後、指定有効径及び指定有効長まで単結晶28の成長が進んだら、引上げ機構30により引上げ軸29を更に上昇させて原料融液から単結晶28を切り離し、所定高さまで単結晶28を移動させる。
(f)この後、高周波加熱電源25の出力低下を開始し、単結晶28の冷却を開始する。
(g)単結晶28の冷却開始時より第2の温度センサ52による単結晶本体の温度の計測を開始し、また、第1の温度センサ51により原料融液の温度変化を計測し、原料融液の固化が完了したか否かを検出する。
(h)第1の温度センサ51による検出値から原料融液の固化が完了したことを検出し、かつ、第2の温度センサ52による検出値(単結晶28の温度に相当)が予め選定されたSGGGの割れ温度域(SGGG冷却時にクラック(割れ)が生ずる可能性が高い温度域)の上限値としての閾値C(本例では1300℃)に到達した段階から、温度変化が指定量以内の温度変化となるように高周波加熱電源25の出力の低下幅(下げ幅)を初期の低下幅よりも小さくし、単結晶28の冷却速度を減速する。
(i)第2の温度センサ52による検出値がSGGGの割れ温度域の下限値としての閾値C(本例では1200℃)に到達した段階で、高周波加熱電源25の出力の低下幅を初期の低下幅よりも大きくし、単結晶28の冷却速度を加速させる。
(j)第2の温度センサ52による検出値が室温下(予め決められた閾値C)に到達した段階で、製造炉から単結晶28を取り出す。
本実施の形態によれば、単結晶としてのSGGG冷却時における金属ルツボ21の温度を検出する第1の温度センサ51と、単結晶本体の温度を検出する第2の温度センサ52とを用いた温度制御を実施することで、SGGGの割れ温度域Mでの急激な炉内温度変化を抑制することができた。従って、単結晶本体のクラック低減を図ることが可能となる。
また、SGGGの割れ温度域Mでの冷却速度を減速させたが、クラックが発生しない温度域では冷却速度を加速させるようにしたことで、冷却工程全体の時間を短縮することができた。このため、効率的な単結晶冷却を行い、収率改善及び作業効率向上を図ることが可能となる。
尚、本実施の形態では、単結晶としてSGGGの製造装置を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、割れ温度域Mが選定可能な単結晶については広く製造対象にすることができ、本発明の基本構成要素を含み、本発明の技術的効果を奏するものであれば適宜設計変更して差し支えない。
◎実施例1
次に、実施の形態1に係る単結晶の製造装置を更に具現化した実施例にて実際にSGGGを製造した例を説明する。
図2に示す単結晶の製造装置を用いて、以下の条件で単結晶材料を製造した。
先ず、金属ルツボ21として、融点約2400℃である直径約φ60mm、高さ約60mmのイリジウムルツボを使用し、その中にはSGGG原料(融点約1750℃)をセットした。高周波加熱電源25としては、十分な電力容量を持たせてSGGG原料を融解させるために、周波数6kHz、最大出力30キロワットのものを使用した。
第1の温度センサ51は白金ロジウム熱電対を使用し、他部品への接触を避けるため、アルミナ製パイプで保護した。本実施例では、金属ルツボ21の底面から5mm程度離れた位置に第1の温度センサ51を配置した。
第2の温度センサ52は赤外線非接触式温度計を使用した。本実施例では、単結晶の製造装置の製造炉の外周部の1カ所に炉内観察用窓部を設け、当該窓部の傍に第2の温度センサ52を設置した。
このようにして熱的、電気的に保護された第1の温度センサ51及び第2の温度センサ52の出力電圧を、PID制御機能を具えた温度調整器50の制御入力端子に接続し、温度調整器50からは電流出力4〜20mAの制御出力で、高周波加熱電源25の出力を0〜100%の範囲で調整できるようにした。
本実施例においては、高周波誘導加熱コイル24によって加熱された金属ルツボ21の近傍に第1の温度センサ51を設置することで金属ルツボ21及びSGGG原料22の温度変化を検出し、温度調整器50の設定値に対する差分から高周波加熱電源25の出力を調整することで、金属ルツボ21及びSGGG原料22の温度調整を行うようにした。この構成で実測したところ、第1の温度センサ51である熱電対の制御設定温度を1750℃としたときに、温度のふらつきは1750℃±0.2℃以内であった。
また、本実施例の単結晶の製造装置により単結晶28を育成した結果を示す。毎分約5回転の回転速度で種結晶27を回転させながら、これを融液状態のSGGG原料22の液面に着下した後、毎時約3mmの一定速度で引き上げを行なった。単結晶28の育成が進み、直径が70mm程度まで単結晶28が成長した段階で、単結晶28の回転速度を毎分20回転に変更、引き上げ速度を毎時約2.5mmにして直胴部を育成した。
図4(a)に本実施例における単結晶冷却時の第1の温度センサ51及び第2の温度センサ52の経過時間による変化を示す。
本実施例では、単結晶本体の直胴部が長さ90mmに到達した段階で、単結晶本体を原料融液より切り離し、単結晶28の冷却を行った。単結晶本体を原料融液から切り離し、原料融液表面より20mm上まで単結晶28を引き上げた後、高周波加熱電源25の出力低下開始、第1の温度センサ51及び第2の温度センサ52の出力確認を開始した。ここで、単結晶28の冷却開始時と同時に高周波加熱電源25の出力を0とした場合、急激な温度降下が生じ、結果、単結晶本体へのクラックが懸念される。逆に、単結晶28の冷却開始時と同時に高周波加熱電源25の出力の低下幅を小さく設定したとすると、冷却工程の経過時間が嵩み過ぎる懸念がある。
そこで、本実施例では、単結晶の冷却工程として、以下のような冷却温度制御プログラムを実行し、図4(b)に示すように、冷却開始工程ST、冷却減速工程ST、冷却加速工程STを実施することにした。
(1)冷却開始工程ST
冷却開始工程STでは、以下の<式1>に従って高周波加熱電源25の出力調整を実施する。
P(h)=P(1−k・h)……<式1>
但し、Pは高周波加熱電源25の冷却開始時点の出力値、hは冷却開始からの経過時間(単位:時間)、kは冷却速度を決める初期係数(本例では0.02)、P(h)は経過時間hにおける高周波加熱電源25の出力値である。
本例では、上記<式1>によって、高周波加熱電源25の出力値を少量ずつ低下させることで、製造炉の炉内温度の緩やかな温度降下が開始される。
(2)原料融液の固化の完了検出
炉内温度が下がり、原料融液の固化が開始されると、原料融液の液相から固相への変化によって、原料融液からの熱放出(固化熱の発生)が起こり、結果、第1の温度センサ51による検出値Aが減少する方向から増加する方向に変化する。
ここで、図4(a)に示すように、第1の温度センサ51が温度上昇に転じた時点の検出値をAとすると、第1の温度センサ51の温度変化は最初の検出値Aを境に増加し、原料融液の液相から固相への変化が完了した場合、つまり原料融液の固化が完了した場合に原料融液からの熱放出がなくなるため、<式1>に従って再び炉内温度が下降することになる。このような温度変化において、第1の温度センサ51は原料融液の固化が完了した後に必ず検出値Aに至ることから、第1の温度センサ51が再びAの検出値に至った箇所(図4(a)中、Pcで示す)を原料融液の固化が完了した時点として検出することが可能である。尚、図4(a)において、Pcの箇所までの冷却開始からの時間をT、当該Tの時点における第2の温度センサ52の温度をBとする。
(3)冷却減速工程ST
冷却減速工程STでは、以下の<式2>に従って高周波加熱電源25の出力調整を実施する。
P(h)=P(1−k・T)−P(k(h−T))……<式2>
但し、Tは第2の温度センサ52による検出値が割れ温度域Mの上限値C(本例では1300℃)に至ったときの冷却開始からの経過時間、kは冷却減速工程STで実施される冷却速度の減速変化を決める減速係数(本例では0.002)である。
本例では、<式2>は第1の温度センサ51が原料融液の固化完了箇所Pcにおける2回目の検出値Aを検出した後に使用されるものであり、例えば第2の温度センサ52の検出値Bが割れ温度域Mの上限値C(本例では1300℃)に至っていない条件では、第2の温度センサ52の検出値Bが割れ温度域Mの上限値C(本例では1300℃)に至るまでは<式1>が実施され、当該上限値Cに至った後は<式2>が実施される。
(4)冷却加速工程ST
冷却加速工程STでは、以下の<式3>に従って高周波加熱電源25の出力調整を実施する。
P(h)=P(1−k・T−k・T)−P(k(h−T))……<式3>
但し、Tは第2の温度センサ52による検出値Bが割れ温度域Mの下限値C(本例では1200℃)に至ったときの冷却開始からの経過時間、kはk−k(本例では0.018)、kは冷却加速工程STで実施される冷却速度の加速変化を決める加速係数(本例では0.1)である。
このような制御手法を取り入れることで、原料融液の液相から固相への変化による熱放出完了後の急激な温度低下を緩和することができ、単結晶本体のクラック発生を抑制することができる。また、単結晶の冷却過程において、単結晶本体にクラックが発生する可能性が高い割れ温度域M(本例では1200〜1300℃)のみ冷却速度を緩和し、それ以外の温度域においては緩和した冷却速度よりも加速させることで単結晶の冷却時間を効率化することもできる。また、原料融液の液相から固相への変化による熱放出の開始時間及び終了時間のバラつき等も考慮されるため、製造炉の炉内構成の変化等に左右されることなく、単結晶冷却を行うことが可能となる。
1 ルツボ
2 加熱手段
3 引上げ機構
4 第1の温度検出器
5 第2の温度検出器
6 制御手段
7 冷却制御部
10 原料融液
11 種結晶
12 単結晶
13 製造炉
M 割れ温度域
割れ温度域の上限値
割れ温度域の下限値
ST 冷却開始工程
ST 冷却減速工程
ST 冷却加速工程
21 金属ルツボ
22 単結晶(SGGG)原料
23 保温・断熱材
24 高周波誘導加熱コイル
25 高周波加熱電源
27 種結晶
28 単結晶
29 引上げ軸
30 引上げ機構
40 駆動調整器
50 温度調整器
51 第1の温度センサ
52 第2の温度センサ
101 金属ルツボ
102 単結晶原料
103 保温・断熱材
104 高周波誘導加熱コイル
105 高周波加熱電源
107 種結晶
108 単結晶
109 引上げ軸
110 ロードセル
111 出力調整器
112 熱電対

Claims (7)

  1. 原料融液が収容されるルツボと、
    前記ルツボを加熱する加熱手段と、
    前記ルツボ内の原料融液に浸漬した種結晶を引き上げて単結晶を育成する引上げ機構と、
    前記ルツボ内の原料融液の温度を検出する第1の温度検出器と、
    前記引上げ機構にて引き上げられて育成された単結晶の温度を検出する第2の温度検出器と、を用い、
    前記ルツボ内に収容された原料融液から回転引上げ法により単結晶を製造するに際し、
    前記単結晶を育成する育成工程と、
    前記育成工程を経て育成された単結晶を、前記原料融液から切り離した後に冷却する冷却工程と、を備え、
    前記単結晶はガーネット単結晶又はリチウム化合酸化物単結晶であり、
    前記冷却工程は、前記加熱手段の出力低下を開始することで前記単結晶の冷却を開始する冷却開始工程と、
    前記冷却開始工程後に、前記第1の温度検出器の検出信号に基づいて前記原料融液の固化が完了することを検出した後、前記第2の温度検出器にて前記育成された単結晶の温度が当該単結晶に割れが生成される可能性が高い割れ温度域の上限値に至ったことを検出した条件では、前記加熱手段の出力の下げ幅を初期の下げ幅よりも小さくすることで前記単結晶の冷却速度を減速させる冷却減速工程と、
    前記冷却減速工程を経た後に、前記第2の温度検出器にて前記育成された単結晶の温度が前記割れ温度域の下限値に至ったことを検出した条件では、前記冷却減速工程よりも前記加熱手段の出力の下げ幅を大きくすることで前記単結晶の冷却速度を加速させる冷却加速工程と、を含むことを特徴とする単結晶の製造方法。
  2. 請求項1に記載の単結晶の製造方法において、
    前記冷却減速工程は、前記第1の温度検出器による温度変化が温度下降から温度上昇に転じた時点の検出値をAとしたときに、前記第1の温度検出器による検出値が再びAになった条件で前記原料融液の固化が完了したものと検出し、この検出後に前記単結晶の冷却速度を減速させることを特徴とする単結晶の製造方法。
  3. 請求項1に記載の単結晶の製造方法において、
    前記冷却開始工程、前記冷却減速工程及び前記冷却加速工程は以下の手順(1)〜(3)に従って実施されることを特徴とする単結晶の製造方法。
    (1)冷却開始工程では、以下の<式1>に従って加熱手段の出力調整を実施する。
    P(h)=P(1−k・h)……<式1>
    但し、Pは前記加熱手段の冷却開始時点の出力値、hは冷却開始からの経過時間(単位:時間)、kは冷却速度を決める初期係数、P(h)は経過時間hにおける加熱手段の出力値である。
    (2)冷却減速工程では、以下の<式2>に従って加熱手段の出力調整を実施する。
    P(h)=P(1−k・T)−P(k(h−T))……<式2>
    但し、Tは第2の温度検出器による検出値が前記割れ温度域の上限値に至ったときの冷却開始からの経過時間、kは冷却減速工程で実施される冷却速度の減速変化を決める減速係数である。
    (3)冷却加速工程では、以下の<式3>に従って加熱手段の出力調整を実施する。
    P(h)=P(1−k・T−k・T)−P(k(h−T))……<式3>
    但し、Tは第2の温度検出器による検出値が前記割れ温度域の下限値に至ったときの冷却開始からの経過時間、kはk−k、kは冷却加速工程で実施される冷却速度の加速変化を決める加速係数である。
  4. 請求項1に記載の単結晶の製造方法において、
    前記冷却加速工程は、前記加熱手段の出力の下げ幅を前記冷却開始工程の初期の下げ幅より大きくすることを特徴とする単結晶の製造方法。
  5. 請求項1に記載の単結晶の製造方法において、
    前記単結晶がガーネット単結晶であり、
    前記割れ温度域の上限値が1300℃、同下限値が1200℃であることを特徴とする単結晶の製造方法。
  6. 原料融液が収容されるルツボと、
    前記ルツボを加熱する加熱手段と、
    前記ルツボ内の原料融液に浸漬した種結晶を引き上げて単結晶を育成する引上げ機構と、
    前記ルツボ内の原料融液の温度を検出する第1の温度検出器と、
    前記引上げ機構にて引き上げられて育成された単結晶の温度を検出する第2の温度検出器と、
    前記第1及び第2の温度検出器の検出信号に基づいて前記加熱手段を制御する制御手段と、を備え、
    前記単結晶はガーネット単結晶又はリチウム化合酸化物単結晶であり、
    前記制御手段は、前記引上げ機構にて引き上げられて育成され且つ前記原料融液から切り離された単結晶を冷却する冷却制御部を有し、
    前記冷却制御部は、前記加熱手段の出力を低下することで前記育成された単結晶の冷却を開始し、前記第1の温度検出器にて前記原料融液の固化が完了するのを検出した後、前記第2の温度検出器にて前記育成された単結晶の温度が当該単結晶に割れが生成される可能性が高い温度域として予め選定された割れ温度域の範囲内であることを検出した条件では、前記加熱手段の出力の下げ幅を初期の下げ幅よりも一時的に減少させることで前記単結晶の冷却速度を減速させることを特徴とする単結晶の製造装置。
  7. 請求項6に記載の単結晶の製造装置において、
    前記冷却制御部は、前記第2の温度検出器にて前記育成された単結晶の温度が前記割れ温度域の上限値以下であることを検出した条件では、前記加熱手段の出力の下げ幅を初期の下げ幅よりも小さく設定し、前記第2の温度検出器にて前記育成された単結晶の温度が前記割れ温度域の下限値以下である条件では、前記加熱手段の出力の下げ幅を前記初期の下げ幅より大きく設定することを特徴とする単結晶の製造装置。
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