JP4014369B2 - 反応性高分子化合物の製造に供せられるモノマー化合物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、分子構造中に二種類以上の重合性不飽和結合基を有するモノマーとそれを重合させて得られる反応性を有する高分子化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体の製造技術は急速な進歩を遂げており。電子機器の小型化、計量化を強く押し進めている。これに伴って、携帯電話に代表される小型通信機器などは従来と比べて格段に扱いやすくなり、また安価に量産されることから広く一般に普及してきている。このような技術の進歩は半導体素子の小型化や高集積化に基づいている。すなわち、半導体チップ上に形成される回路自身の高集積化、パッケージサイズの小型化による回路の微細化、チップを保護するパッケージ封止材の薄膜化などが進められた結果である。これに伴って、半導体の信頼性を確保するためにチップ表面の回路上に保護膜を使用する技術や、層間絶縁膜を介して回路を多段化する技術も精力的に開発が進められ、ここで使用に耐え得る材料も強く望まれるようになってきている。
【0003】
一方で、半導体チップを封止する半導体パッケージにも新しい技術が導入されてきており、マルチチップ・モジュール、ボール・グリッド・アレイ、チップ・スケール・パッケージなどの技術が高密度実装を可能にしつつある。これらの半導体パッケージは、プラスチックやセラミックスなどの材料を使って構成されるサブストレートを使用して、半導体チップの電極とプリント配線板とを接続している。このサブストレート上の回路は、小型化した半導体内に導入され、従来のプリント配線板よりも高密度化が可能となる。そこで、この微細配線を保護する必要がある。さらに、プリント回路配線板においても、ビルドアップ工法などの新しい技術が開発され、配線の高密度化が計られている。
【0004】
これらの保護樹脂あるいは層間絶縁樹脂には、実装時の耐熱性、孔加工性が要求される。従来は、主にポリイミド樹脂が使用されてきたが、特に低温加工性が必要な場合には、エポキシ樹脂が使用されてきた。さらに、高密度化した回路配線に対応した孔などのパターン加工を行うためには、感光性樹脂が有利である。感光性ポリイミドがその代表例である(特公昭55−30207号公報、特開昭54−145794号公報など)。感光性ポリイミドは、ポリアミック酸のカルボキシル基に導入したメタクリレートの光ラジカル重合で架橋構造を形成し、パターン加工を行っている。後にポリイミドに変換する際には、メタクリレートの脱離が必要で、通常よりも強い加熱が必要になる。しかも、脱離したメタクリレートが残存すると材料特性を低下させるため、本来の性能を発現させるためには脱離したメタクリレートを高温で分解揮散させる必要がある。そのために、このような感光性ポリイミドは、高温処理が必要となる。これとは別の方法として、予め閉環させたポリイミドの側鎖にアクリレート構造を導入し低温加工性を実現した樹脂も提案されている(特開昭59−108031号公報など)が、耐熱性などの特性が満足し得るものではなかった。エポキシ樹脂については、耐熱性や基材の変形に追随する柔軟性が充分ではなかった。
【0005】
上述のとおり、半導体の製造技術が著しい発展を遂げる一方で、光通信あるいは光情報処理の技術も急速に進歩してきている。従来は電子技術に頼ってきた分野でも、遠距離から短距離へ、超高速から超高密度へと、光技術が浸透してきており、主に電子技術で演算し、光技術で伝送する形態が広まりつつある。この様な光伝送技術を支えている光ファイバーや光導波路などの光部品には、透明性、耐熱性、光学等方性、加工性など様々な要求特性を備えた光学材料が求められている。透明性に関しては、非晶性の高分子材料の多くが可視域では透明であるものの、通信波長域である近赤外領域では炭素−水素結合あるいは酸素−水素結合の振動吸収の倍音が透明性を低下させる要因となっている。これを改善しようとする試みとして、ハイドロカーボン骨格のフルオロカーボン化やシロキサン骨格の導入などが検討されている。耐熱性に関しては、剛直な骨格のポリイミドや結合の強いシロキサン骨格、あるいは架橋構造などが検討されている。また、光学等方性に関しては、芳香環など光学異方性のある成分が配向しないことが望ましく、前述の耐熱性向上のための剛直な骨格は分子の配向を促進させるため、通常は耐熱性と光学等方性とは相反する傾向にある。加工性に関しては、例えば光導波路の場合には主にコア・クラッド構造の形成性を指すが、高分子量の高分子材料を溶液からスピンコートする場合はインターミキシングが起こりやすく、導波路加工性に問題が多い。一方、低分子量のオリゴマーを成膜した後、それを光や熱で架橋するタイプは、架橋後の成膜した反応性高分子化合物は溶媒に不溶化するので、インターミキシングを防ぐことができ、その結果、加工性に優れるものが多いという傾向がある。
【0006】
以上のとおり、従来の技術として個別には解決されている課題もあるが、光学部品として要求される特性を総合的に満足するような優れた光学材料は開発されていないのが現状である。
【0007】
分子中に二個の重合性不飽和結合基を有する化合物としては、ジオールの二個のヒドロキシルがアクリロイル基、メタクリロイル基、α−トリフルオロメチルアクリロイル基などで停止された化合物が知られており、例えば重合して軟質コンタクトレンズに用いられることが特開平7−191286号公報に記載されている。しかしながら、分子中の二個の重合性不飽和結合基の反応性をコントロールして反応性の高分子化合物とすること、及びその利用については何らの記載もない。
【0008】
また、2〜6個のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を有し、且つ含フッ素の二重結合含有基を有する化合物が特開平8−319257号公報に開示されているが、α−トリフルオロアルキルアクリロイルオキシ基に関する記載はない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、薄膜などに成形した後に熱や光、または重合開始剤の存在によって硬化反応やパターン形成が可能な高分子化合物及びその原料となるモノマーを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述の如き課題について、鋭意、検討を重ねた結果、分子構造中にラジカル重合が可能な部分とイオン重合が可能な部分を有するモノマーを、アニオン重合させて成る反応性高分子化合物は、汎用溶媒に溶解できるためコーティングなどにより薄膜を形成することができ、形成された薄膜は熱や光、または重合開始剤の存在によって硬化させつことができるため透明性の高い強靱な膜とすることができ、また、パターン形成させることも可能であって、光学用途に顕著な有用性を有することを見いだし、本発明を完成するに到った。
【0011】
本発明は、分子構造中に二種類以上の重合性不飽和結合基を有するモノマー、及び該モノマーを単独でまたは共重合可能なモノマーと共に重合させて得られる重合性不飽和結合基を有する反応性高分子化合物である。本発明の反応性高分子化合物は、半導体素子や回路配線板などの電子材料、光導波路、光集積回路、光ファイバー、あるいは反射防止膜などの光学材料、さらには印刷用版の材料として非常に有用である。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明に係る分子構造中に二種類以上の重合性不飽和結合基を有するモノマーは、少なくともラジカル重合性基とアニオン重合性基を有するモノマーである。これらの重合性不飽和基としては下記に述べる基から選ばれた二種類以上の基を有していてもよい。ラジカル重合が可能なラジカル重合性基としては、下記一般式(6)または(7)で表される炭素−炭素不飽和結合を少なくとも一つ含んだ有機基をあげることができる。
【0014】
【化10】
【0015】
式中、R9、R10、R11、R12は水素原子または有機基を表す。R9とR10、またはR9とR11、またはR10とR11、またはR9とR10とR11はつながって環状構造をとることもできる。
【0016】
ラジカル重合性基として好ましくは、アクリロイル基もしくはメタクリロイル基またはそれらを含んだ基があげられる。
【0017】
アニオン重合性基が有するアニオン重合が可能な部分構造としては、一般式(6)で表され、式中、R9、R10、R11の少なくとも1つが電子吸引性の置換基である構造が好ましく、また炭素−炭素不飽和結合と共役する置換基であることも好ましい。ここで言うところの電子吸引性の置換基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、R−C(=O)−(Rは有機基を表す)基、シアノ基、ベンゼン環などの芳香族基、ハロゲン置換芳香族基、ハロゲン化アルキル置換芳香族基、シアノ基置換芳香族基、あるいはR−CH=CH2−(Rは有機基を表す)基などが好ましい。また、R12を水素原子または有機基とした一般式(7)で表される置換基も好ましい。また、アニオン重合が可能な部分構造としては電子吸引性の原子または置換基を有する環構造を含む部分構造も好ましく採用される。アニオン重合性基としてα−トリフルオロメチルアクリロイル基を部分構造として含むモノマーが特に好ましく用いられる。
【0018】
本発明の分子構造中に二種類以上の重合性不飽和結合基を有するモノマーとしては、分子構造中の二種類以上の重合性不飽和結合基が少なくともラジカル重合性基とアニオン重合性基であるモノマーが好ましい。
【0019】
本発明で使用されるモノマーは、分子構造中にラジカル重合性基とアニオン重合性基を有するが、これらの基をつなぐ部分は、反応性高分子化合物の性質を著しく阻害しなければ特に限定されるものではない。例示するならば、2価の有機基や、2価の原子、2価の無機基などをあげることができる。2価の有機基としては炭素数1〜40程度の炭化水素基であって1〜20程度の酸素を含んだものが好ましい。その中で、−O−(CH2m−O−で表される基(mは1〜20の整数を表す。)、−O−R4−で表される2価の有機基が好ましく、具体的には、R4としては炭素数1〜20程度の分岐を有することもあるオキシアルキレン基、炭素数1〜6のアルキレンオキサイドが開環した繰り返し数1〜20のポリオキシアルキレン基などが好ましく、さらに具体的にはエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドまたはテトラヒドロフランが開環した繰り返し数1〜20のポリオキシアルキレン基がモノマーの合成のし易さから好適に採用される。
【0020】
分子構造中に二種類以上の重合性不飽和結合基を有するモノマーとしては、一般式(1)
【0021】
【化11】
【0022】
(式中、R1はラジカル重合性基、R4は有機基を表す。)で表されるα-トリフルオロメチルアクリル酸エステルである
【0023】
また、分子構造中に二種類以上の重合性不飽和結合基を有するモノマーとしては、一般式(3)、
【0024】
【化13】
【0025】
(式中、R4は有機基を表す。R5は水素原子又はメチル基を表す。)で表される化合物が好ましく、R4としては、前記したオキシアルキレン基、ポリオキシアルキレン基などが好ましく、一般式(4)
【0026】
【化14】
【0027】
(式中、R6は水素原子又はメチル基を表す。mは1〜20の整数を表す。)または
【0028】
【化15】
【0029】
(式中、nは1〜20の整数を表す。R6、R7、R8は水素原子又はメチル基を表し、R7、R8の何れかは水素原子を表す。)で表される化合物がより好ましい。
【0030】
この様な化合物を非制限的に下に示す。
【0031】
【化16】
【0032】
一般式(1)で表されるα-トリフルオロメチルアクリル酸エステルは、α-トリフルオロメチルアクリル酸ハライド(クロライド、ブロマイド、フルオライド)またはα-トリフルオロメチルアクリル酸無水物とR1−R4−OHで表されるラジカル重合性基と結合基とからなるアルコールをエステル化することで得られる。エステル化の方法はアクリル酸またはメタアクリル酸について行われている公知の方法をとればよい。
【0033】
本発明の反応性高分子化合物は、アニオン重合させて得られるが、この時の重合反応は単独重合でも、他のモノマーとの共重合であってもよい。
【0034】
また、本発明の反応性高分子化合物がアニオン重合で合成される場合にはアニオン重合性を有するモノマーを共重合成分として用いることができる。共重合モノマーとして一般式(8)で表され、式中、R13、R14、R15、R16の少なくとも1つが電子吸引性の置換基である構造のモノマーが好ましく、炭素−炭素不飽和結合と共役する置換基であることも好ましい。
【0035】
【化17】
【0036】
ここで言うところの電子吸引性の置換基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、あるいはR−C(=O)−(Rは有機基を表す)基、シアノ基、ベンゼン環などの芳香族基、ハロゲン置換芳香族基、ハロゲン化アルキル置換芳香族基、シアノ基置換芳香族基、あるいはR−CH=CH2−(Rは有機基を表す)基などが好ましい。また、R17、R18を水素原子または有機基とした一般式(9)で表される構造のモノマーも好ましい。また、電子吸引性の原子または置換基を有する環構造を含むモノマーも好ましく採用される。さらにはα−トリフルオロメチルアクリロイル基を含むモノマーがより好ましく用いられる。その具体例として、α−トリフルオロメチルアクリレートのメチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル、イソブチルエステル、sec−ブチルエステル、tert−ブチルエステル、ペンチルエステル、シクロヘキシルエステル、ヒドロキシメチルエステル、2−ヒドロキシエチルエステル、3−ヒドロキシプロピルエステル、4−ヒドロキシブチルエステル、5−ヒドロキシペンチルエステル、6−ヒドロキシヘキシルエステルなどが挙げられ、また、3,3,3−トリフルオロエチル−α−トリフルオロメチルアクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル−α−トリフルオロメチルアクリレートなどを例示することができる。含フッ素基をエステル部にもつモノマーは光学材料として用いる場合に、特定波長域の透明性を向上させることや、屈折率を低下させることが可能である。さらに、共重合するモノマーの種類や量を変えることによって、物性の調整を行うことも可能である。
【0037】
また、本発明の反応性高分子化合物は、例えば成形後の硬化反応性を高める目的で、複数の種類のラジカル重合性基、または複数のイオン重合性基をもつことも可能である。
【0038】
本発明の反応性高分子化合物としては、分子構造中に二種類以上の重合性不飽和結合基を有するモノマーとして一般式(1)、
【0039】
【化18】
【0040】
(式中、R1はラジカル重合性基、R4は有機基を表す。)
で表されるα-トリフルオロメチルアクリル酸エステル、または
【0041】
メタクリル酸エステルと、任意に該モノマーと共重合可能なモノマーと共に重合されて得られる反応性高分子化合物であるのが好ましい。
【0042】
また、本発明の反応性高分子化合物としては、一般式(10)
【0043】
【化20】
【0044】
(式中、R1はラジカル重合性基、R4は有機基を表す。)で表される繰り返し単位を含む反応性高分子化合物が好ましい。
【0045】
以下本発明の反応性高分子化合物を製造する方法に関して詳細に説明する。
【0046】
本発明の反応性高分子化合物はアニオン重合によって合成される。その重合形態としてはバルク重合、溶液重合、けん濁重合、乳化重合など公知の形態により、回分式、半連続式または連続式のいずれかの操作でおこなえばよく、重合の形態や開始剤の種類によって適宜変更される。また、重合反応に用いる容器は特に限定されない。
【0047】
本発明の反応性高分子化合物をアニオン重合によって製造する方法としては、重合反応温度として通常−200〜100℃が好ましく、特に−100〜50℃が好ましい。また、重合溶媒を用いてもよい。重合溶媒としては、特に限定されるものではないが、重合を著しく阻害しないものが好ましく、使用するモノマーの溶解性と生成する反応性高分子化合物の溶解性を考慮して選択され、重合方法や重合の形態によっても適宜変更される。
【0048】
アニオン重合で用いられる重合溶媒の例としては、非プロトン性溶媒が好ましく、また極性溶媒が好ましく採用される。例えばテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサンなどのエーテル類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどの非プロトン性の極性溶媒が好ましく用いられる。アニオン重合反応性が高いモノマーの場合には、水やアルコール類を開始剤として使用することもあり得、この限りではない。また、非極性溶媒とクラウンエーテルなどの相関移動触媒を組み合わせて用いる方法も好ましい。アニオン重合の開始剤としては、一般的に使用されているものが使用でき、特に限定されるものではないが、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウムなど市販されている有機リチウム化合物、またはジフェニルヘキシルリチウムなどの安定性の高いリチウム化合物などを用いることが可能である。また、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムイソプロポキシド、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシド等の金属アルコキシド類が好適に用いられる。また、ピリジン、ピコリン、ルチジン、ピペリジンなどの含窒素複素環状化合物、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類も好適に用いられる。
【0049】
このようにして得られる本発明の反応性高分子化合物の溶液または分散液から、媒質である有機溶媒または水を除去する方法としては、公知の方法のいずれも利用できるが、例をあげれば再沈殿した後に濾過する方法、または常圧または減圧下での加熱または非加熱による留去等の方法を採用できる。
【0050】
本発明の反応性高分子化合物の数平均分子量としては、通常1,000〜1,000,000、であり、10,000〜500,000の範囲が好ましい。分子量が1,000よりも小さい場合には高分子化合物としての強度が低くなり、分子量が1,000,000を越える場合には溶剤溶解性が小さくなる。しかしながら、使用する目的によっては分子構造の一部が架橋した構造を含んでいてもよく、例えばゲル状または水や有機溶媒中に分散した形で成形し、後に硬化等の反応を行わせることで完全に安定化させることも可能である。
【0051】
本発明の反応性高分子化合物は、種々の硬化方法が可能であって、特に限定されるものではない。反応性高分子化合物がアニオン重合によって得られる。そして、ラジカル反応性基の全部または一部が残っている場合には、ラジカル重合開始剤を加えて架橋反応をおこなわせることが可能である。このときに過酸化物などを加えて加熱によって発生したラジカル種によって架橋反応をおこなわせてもよいし、ベンゾフェノンなどの光重合開始剤を加え、光照射して架橋反応をおこなわせてもよい。ラジカル重合開始剤の例としては、本反応性高分子化合物をラジカル重合で合成するときに使用するものとして例示したものと同様のものが使用可能である。また、光重合開始剤の例としては、ベンゾフェノン、Micheler's ketone、キサントン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、アントラキノン、2−エチルアントラキノンなどの芳香族ケトン類、アセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−4’−イソプロピルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどのアセトフェノン類、ベンジル、メチルベンゾイルフォルメートなどのジケトン類、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−ベンゾイル)オキシムなどのアシルオキシムエステル類、チオール類、ジスルフィド類、過酸化ベンゾイルなどの有機過酸化物、アゾ化合物、四臭化炭素などのハロゲン化物、その他、キノキサリン、1,3−ジオキソランなどがあげられる。また、ラジカル重合開始剤を加えずに反応性高分子化合物自身を光または熱で部分的にラジカル開裂させることによっても架橋反応させることが可能である。また、光反応を効率よくおこなわせるために、増感剤を用いることも好ましい。
【0052】
さらに、硬化(架橋)反応時に別のラジカル反応性のモノマーやオリゴマー、別の反応性高分子化合物などを加えて共重合させることも可能である。ここで共重合可能なモノマー等としては、本反応性高分子化合物を合成する際に共重合可能なモノマーとしてあげたラジカル重合性のモノマーを採用することができる。また、その他でもラジカル重合性を有した化合物であれば、必要に応じて適宜使用し得る。
【0053】
反応性高分子化合物と共重合する場合の組成は特に限定されず、反応性高分子化合物の性質を著しく損なうことがない限りにおいては任意に設定できる。
【0054】
フィルムなどに成形した反応性高分子化合物に、フォトマスクを用いてこれを触媒の存在下または非存在下に光照射することによって部分的に硬化パターンを形成させることが可能である。硬化後パターンを現像するためには、未硬化部分のみを溶解し得る溶剤を用いて洗浄するなどの方法が採用される。このような方法によって、半導体の配線の一部に保護膜を形成したり、光導波路を形成すること、あるいは光ファイバーのクラッド層や被覆層を形成させることなどが可能である。
【0055】
【実施例】
以下、参考例及び実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限られない。
【0056】
<実施例1>
下式で示されるモノマー(以下、αCF3-HEMAと略すことがある)の合成
【0057】
【化22】
【0058】
攪拌機、滴下ロート、温度計を備えた硝子製反応器にヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)18.4g、脱水したテトラヒドロフラン100ml、2,6−ルチジン15.2gを仕込み、反応器内を窒素で置換した。反応器の底部を氷浴で冷却した。次に、α−トリフルオロメチルアクリル酸クロリドを、脱水したテトラヒドロフラン53mlで希釈して滴下ロートに仕込み、ゆっくりと滴下した。約45分間で滴下を終了した後、反応器から氷浴をはずして徐々に室温まで昇温し、2時間攪拌を続けた。反応終了後、反応溶液を500mlの氷水に投入し、攪拌した。水で3回洗浄した後に無水硫酸ナトリウムで脱水し、減圧蒸留によってαCF3−HEMAを得た。沸点85〜88℃/3mmHg。収量19.2g(収率69%)。αCF3-HEMA(重クロロホルム溶媒、内部標準テトラメチルシラン)の1H−NMRを図1に示す。
【0059】
<実施例2>
αCF3-HEMAのアニオン重合によるラジカル反応性高分子化合物の合成(αCF3-HEMAのアニオン単独重合) 攪拌機を備えた硝子製反応器にαCF3−HEMA9.6g、ピリジン0.05gを仕込み、室温で攪拌を開始した。反応溶液は徐々に粘度が上がって攪拌が困難になり、そのまま静置した。反応開始から16時間後、テトラヒドロフランを加えて重合体を溶解した後、n−ヘキサン500mlに投入して再沈殿させた。得られた白色沈殿を濾過して取り出し、40℃で真空乾燥することによって、白色固体の重合体を得た。収量6.0g(収率63%)。得られた樹脂の一部はテトラヒドロフランに溶解し、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって、ポリスチレンを標準物質とした分子量を測定した。この結果、分子量およびその分布は、数平均分子量(Mn)=10,000、重量平均分子量(Mw)=19,000、分子量分散(Mw/Mn)=1.9であった。溶媒に対する溶解性は、アセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、テトラヒドロフランに可溶であって、n−ヘキサンには不溶であった。
【0060】
<実施例3>
ラジカル反応性高分子化合物の熱ラジカル架橋 実施例2で得られた反応性高分子化合物2.0gをメチルイソブチルケトンに溶解して10wt%溶液を調製した。この溶液にt−ブチルパーオキシピバレート0.01gを加えて混合し、アプリケーターで硝子板上にキャストした。5分間室温で自然乾燥した後、80℃のオーブンで1時間加熱した。硝子板上に生成したフィルムは透明で、アセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、テトラヒドロフラン、n−ヘキサンに不溶であった。
【0061】
<実施例4>
αCF3-HEMAのアニオン重合によるラジカル反応性高分子化合物の合成(αCF3-HEMAとαCF3-3Fのアニオン共重合) 攪拌機を備えた硝子製反応器に2,2,2−トリフルオロエチル−α−トリフルオロメチルアクリレート(αCF3-3Fと略す)7.0g、αCF3−HEMA2.0g、ピリジン0.025gを仕込み、室温で攪拌を開始した。反応溶液は徐々に粘度が上がって攪拌が困難になり、そのまま静置した。反応開始から16時間後、テトラヒドロフランを加えて重合体を溶解した後、n−ヘキサン500mlに投入して再沈殿させた。得られた白色沈殿を濾過して取り出し、40℃で真空乾燥することによって、白色固体の重合体を得た。収量6.8g(収率76%)。得られた樹脂の一部はテトラヒドロフランに溶解し、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって、ポリスチレンを標準物質とした分子量を測定した。この結果、分子量およびその分布は、数平均分子量(Mn)=45,000、重量平均分子量(Mw)=64,000、分子量分散(Mw/Mn)=1.4であった。また、核磁気共鳴(NMR)スペクトルの測定からもとめた共重合体の構造単位の組成比はαCF3-3F/αCF3−HEMA=約85/15であった。溶媒に対する溶解性は、アセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、テトラヒドロフランに可溶であって、n−ヘキサンには不溶であった。
【0062】
<実施例5>
ラジカル反応性高分子化合物の光ラジカル架橋 実施例4で得られた反応性高分子化合物2.0g、ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート(HFIPA)2.0g、メチルイソブチルケトン36.0gを混合して溶液を調製した。この溶液にベンゾフェノン0.1gを加えて溶解し、アプリケーターで硝子板上にキャストした。この上にマスクパターンを置き、高圧水銀灯で30分間光を照射した。光照射後、硝子板ごとアセトン溶媒中に入れ、未露光部分を溶解除去した。露光部分に生成したフィルムは透明で、アセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、テトラヒドロフラン、n−ヘキサンに不溶であった。
【0063】
【発明の効果】
本発明の分子構造中に二種類以上の重合性不飽和結合基を有するモノマーを使用すると、重合方法を選択することで全く異なった構造、物性、架橋特性を有する反応性高分子化合物を得ることができ、反応性高分子化合物は光、熱、ラジカル開始剤またはイオン重合開始剤を用いて架橋できるため薄膜のパターン形成などに用いることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた生成物の1H−NMRスペクトルである。

Claims (4)

  1. 下記一般式(1)で表されるα-トリフルオロメチルアクリル酸エステル。
    (式中、R1はラジカル重合性基、R4は有機基を表す。)
  2. 下記一般式(3)で表される化合物。
    (式中、R4は有機基を表す。R5は水素原子又はメチル基を表す。)
  3. 下記一般式(4)で表される化合物。
    (式中、R6は水素原子又はメチル基を表す。mは1〜20の整数を表す。)
  4. 下記一般式(5)で表される化合物。
    (式中、nは1〜20の整数を表す。R6、R7、R8は水素原子又はメチル基を表し、R7、R8の何れかは水素原子を表す。)
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