JP4014082B2 - 包装袋用逆止弁 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気や液体などの流体を包装袋内に充填あるいは包装袋内から排出するための流路として使用し、流体の逆止機能を有する包装袋用逆止弁に関する。
【0002】
【従来の技術】
包装袋用逆止弁は、プラスチックフィルムを使用した包装袋に取り付けられて、例えば、被包装物を包装後、ノズルを挿入することにより、内部の空気または液体を袋外へ排出、また袋内へ充填したり、二重袋の内袋に被包装物を挿入後、外袋と内袋の間に空気または液体を充填するための流路として使用される。目的の流体を排出した場合は、被包装物や包装袋の形状復元力が発生することにより包装袋内部が減圧状態になり、また、目的の流体を充填した場合は包装袋内部が加圧状態となる。いずれも流路を構成する部分が密着して流路を塞ぎ、気密性を出すことができる。一般的には布団等の圧縮、減圧袋や、気体や液体を充填して使用するクッション材用包装袋に対して使用されている。
【0003】
従来、逆止弁の流路を構成する部分側にはポリエチレンが使用されているが、従来のポリエチレンフィルムは加工適性を向上させるためアンチブロッキング剤が添加されており、このアンチブロッキング剤が流路の密着を阻害するため、逆止弁の密封性が低く、流体が経時的に透過して、気密性を長時間維持することができなかった。この問題を解決する策として流路側に使用するフィルムにブロッキング剤を塗布する方法がある(特開平10−236533)。しかしながら、2枚のフィルムの両端部を熱溶着して流路を形成する場合に、溶着部の溶着強度が十分に得られず、包装袋に流体を充填して使用する場合、包装袋に衝撃が加わわるなど内圧が高まると簡単に溶着部が剥離して逆止弁が破損し、流体が漏出する問題があった。また、ブロッキング強度を高くすると、流体を排出もしくは注入するためのノズルが挿入できない問題があった。また、逆止弁の流路面にシリコンオイル等の低粘度不活性液体を噴霧、塗布する方法があるが(特開平09−112721)、この場合、低粘度不活性液体により被包装物を汚染される可能性があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、密封性が高く、流体の経時的な透過を防止して、気密性を長時間維持できる包装袋用逆止弁の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、流体流路を形成するフィルム片の流体流路側となる側同士の剥離強度を特定範囲とすることにより、包装袋の密封性を十分に高めることが可能であることを見いだし、本発明を得るに至った。
【0006】
本発明は、密着可能な2枚のフィルム片からなり、該フィルム片が剥離した状態で流体流路を形成する逆止弁であって、該フィルム片を構成するフィルムの流体流路側となる側を互いに向かい合せて密着させ、500mN/cm2の荷重を負荷した状態で40℃の温度条件下、24時間保存後、15mm幅にカットした状態で、フィルム同士の90°剥離による剥離強度が、1mN以上であることを特徴とする包装袋用逆止弁である。
【0007】
上記剥離強度が、1mN未満であると、フィルム片の流体流路側同士の密着が不完全になり、包装袋の密封性を長時間維持することができなくなる。なお、上記の剥離強度は、好ましくは10mN以上であるのがよい。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の包装袋用逆止弁の構成は、包装袋用逆止弁を形成する密着可能な2枚のフィルム片のフィルムの流体流路側となる側を互いに向かい合せて密着させ、500mN/cm2の荷重を負荷した状態で40℃の温度条件下、24時間保存後、15mm幅にカットした状態で、フィルム同士の90°剥離による剥離強度が、1mN以上であれば、特に限定されない。本発明の作用を現出するための方法として、フィルム片が流体流路側となる側に少なくとも密着層を有する構成が考えられる。図1は、本発明の実施形態の一例である包装袋用逆止弁の構成を示す断面図である。図1の逆止弁は、主にA,B,Cの3層構成のフィルムから形成されるフィルム片2枚からなる。2枚のフィルム片は、密着層であるC層側を向かい合わせて重ね、図2に示すように両端部を熱溶着によりサイドシール(図2中3で示される)して、フィルム片の中央部に剥離した状態で流体流路となる筒状部分Eを形成している。流体の充填あるいは排出時には、矢印方向よりEにノズルを挿入することもある。
【0009】
上記フィルムにおけるA層は、包装袋に取り付ける際に、包装袋本体と熱溶着などにより接着させるために設けられており、その材質や厚みは、包装袋の材質やサイズ、必要な接着強度等によって適宜設定されるが、熱溶着によって接着される場合は、主に、取り付け対象である包装袋本体のシーラント層に多く使用されるポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂や、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン系樹脂などの無延伸のプラスチックフィルム層が使用される。
【0010】
上記フィルムにおけるB層は、A層およびC層に対する支持基材であり、その材質や厚みは本発明の作用を阻害しない範囲で得に限定されず、ポリアミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、セルロイド、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンビニルアルコール系樹脂などの主に延伸されたプラスチックフィルム層やアルミニウムなどの金属箔、これらの積層体などが使用される。なお、B層は、後述のD層形成部分など、密着層が密着しない箇所を通じて、包装袋外部より空気の透過が生じるのを防止するため、ガスバリアー性が温度20℃で1,000fmol/(m2・s・Pa)以下である層としてもよい。
【0011】
図1では、後述のC層の、包装袋への取り付け時に包装袋外への開口部となる側の端部およびフィルム片の中央相当部分(図2中4で示される)に、A層と包装袋本体を熱溶着する際にC層同士が溶着しないように阻害するD層が設けられている。D層もその材質や厚みは特に限定されず、一般的には、硝化綿系、ウレタン系、ポリアミド系、塩素化ポリオレフィン系、アクリル系、これらの混合物などのインキもしくはバインダーに、シリカ等のアンチブロッキング剤を配合したものなどが使用される。
【0012】
本発明の作用を現出するためには、フィルム片が流体流路側となる側に少なくとも密着層(図1におけるC層)を有すればよく、上記A,B,Dの各層は必須の構成要件ではなく、後述のC層もしくは互いにその作用を兼用できるのであれば、設けなくても良く、他の構成とすることもできる。特にD層は、A層と包装袋本体を熱溶着する際にC層同士が溶着しないように、溶着時に溶着防止用の紙などを挟み、熱溶着工程終了後にこれを除くのであれば、設けなくでも良い。また、流体流路の形成も、包装袋内部の圧力が高まったときなどの密封性保持の点などから、上述のようにサイドシールを施すことが好ましいが、サイドシールを施さない構造も考えられる。
【0013】
本発明の作用を現出するためには、密着層(図1におけるC層)の同士の密着性を高め、かつ剥離可能とする必要がある。そのための方法としては、例えば、密着層を構成する材料を調整することが挙げられる。また、図2に示すように逆止弁の両端部を熱溶着によりサイドシールする場合は、密着層は熱溶着が可能である必要もある。このような材料としてはポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等があげられる。好ましくは、密着層を構成する樹脂組成物に、ウレタン系樹脂、および/またはエチレン酢酸ビニル共重合体を含有するのがよい。ウレタン系樹脂を含有する場合、その含有量は、密着層を構成する樹脂組成物全体に対し3〜100重量%となる範囲であるのが好ましく、さらに好ましくは10〜90重量%となる範囲であるのがよい。ウレタン系樹脂の含有量を上記範囲とすることにより、剥離強度を高くし、あわせて流体流路へのノズルの挿入あるいは抜き取りを行いやすくなる。また、エチレン酢酸ビニル共重合体を使用する場合、エチレン酢酸ビニル共重合体全体に対する酢酸ビニルの共重合比が2重量%以上となるものを使用するのが好ましい。
【0014】
本発明において、密着層を構成する樹脂組成物は、主として、ウレタン系樹脂3重量%以上100重量%以下、エチレン酢酸ビニル共重合体とスチレン系樹脂の合計で97重量%以下からなるのが好ましい。
【0015】
また、本発明において、逆止弁を構成するフィルム片は、界面活性剤を含有する層を有しても良い。界面活性剤の含有により、逆止弁を構成するフィルム片の帯電防止性が向上する。界面活性剤の種類は特に限定しないが、含有量は、界面活性剤を含有する層を構成する樹脂組成物全体に対し0.005〜1重量%であるのが好ましく、さらに好ましくは0.03〜0.5重量%以上である。界面活性剤は、プラスチックとの相溶性が低いため、経時的に層表面に析出する。密着層に界面活性剤を含有する場合、密着層の流体流路側となる側に析出し、界面活性剤が空気中の水分と結合したり、界面活性剤同士の相互作用により濡れ性が向上して、フィルム片同士の密着性が向上する。しかし、フィルム片が、密着層以外の層を有する多層構成であり、ラミネートによって積層されている場合は、ラミネート面への界面活性剤の析出により、ラミネート強度が低下し、耐衝撃性など逆止弁の強度が低下する可能性があり、フィルム片が密着層単層で構成されている場合は、包装袋本体との溶着などによる接着部分の強度が低下して、耐衝撃性など包装袋の強度が低下する可能性がある。従って、界面活性剤を含有する層を有するのは、フィルム片が、密着層以外の層を有する多層構成であり、共押出法によって積層されている場合に、支持基材など界面活性剤を含有する層を中間層として有するのが好ましい。
【0016】
逆止弁の流体流路(図1中E)に、流体の充填あるいは排出時に(図1中、矢印方向より)ノズルを挿入する場合、密着層とノズル間の密着性が強ければノズルを挿入または抜取りが行いにくくなる。特に、流体の包装袋内への充填後は、袋内部圧力により逆止弁が閉じるので、密着層とノズルとの密着力が高くなり、ノズルの抜取りが困難になりやすい。また逆止弁が初期の形状を保つ事が困難となるため繰返し使用できなくなる。そこで、密着層には、アンチブロッキング剤を含有させることが好ましい。アンチブロッキング剤としては特に限定されないが、市販され、安価な材料であるシリカ、ポリメチルメタアクリレート、タルク、ウレタン粒子等が使用できる。アンチブロッキング剤の含有量は、ノズルの挿入および抜取り操作時にノズルと密着層が密着しないように、密着層のおよびノズルの材質等により適宜設定するが、好ましくは密着層を構成する樹脂組成物100重量部に対し0.01〜2.5重量部であるのが好ましく、さらに好ましくは0.2〜2.0重量部であるのが好ましい。アンチブロッキング剤の含有量が、0.1重量部未満であると、密着層とノズル間の密着性を低下させて、ノズルを挿入または抜取りが困難となるのを防止するなどの配合効果が得られにくくなる。一方、アンチブロッキング剤の含有量が2.5重量部を超えると、ノズルの挿入および抜取りは容易に行えるが、密着層どうしの密着性が低下して、流体の逆流防止効果が低下しやすい。
【0017】
密着層の厚みは特に限定されない。また、上記実施形態における、A〜D層以外にも、本発明の作用を阻害しない範囲で接着層等を有していても良い。包装袋用逆止弁の全体形状や、幅、長さなどのサイズも取り付ける包装袋のサイズや形状などにより適宜設定できる。
【0018】
本発明の包装袋用逆止弁が上記のような積層フィルムから形成される場合、フィルムの積層方法は特に限定されず、個別に成形したフィルムをラミネート法などにより積層する方法や、共押出などによりフィルム形成と同時に積層する方法など従来一般に使用されている方法を使用できる。また、2枚のフィルム片をサイドシールするなどして逆止弁とし、さらに包装袋に取り付ける方法も特に限定されず、熱溶着や接着剤を用いて接着する方法などが挙げられる。さらに、本発明の作用を阻害しない範囲で、着色などの他の構成を有していても良い。
【0019】
本発明の包装袋用逆止弁を、密着層とは別に、逆止弁を構成するフィルム片が流体流路側と反対側に、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂や、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン系樹脂などの、取り付け対象である包装袋のシーラント層と同種の材料からなる層を有する構成とし、共押出法によりフィルム成形すれば、ラミネートの工程が省略でき、製造工程を簡略化できる。
【0020】
【実施例】
実施例1
図1におけるA層としてポリエチレンフィルム、B層として延伸ポリアミドフィルム、C層としてウレタン系樹脂フィルムを用い、各フィルムをドライラミネート法により積層し、さらにインキによりD層を形成して積層フィルムを形成した。さらに該積層フィルムより、図1と同様の構成の2枚のフィルム片からなる包装袋用逆止弁を作成した。なお、包装袋用逆止弁の両端部は図2に示すようにヒートシールにより溶着した。この包装袋用逆止弁を包装袋本体にヒートシールにより溶着して、図2に示すような包装袋を作成した。この包装袋においてポリプロピレン系樹脂からなるノズルを逆止弁に挿入し、包装袋内部が50,000Paになるまで空気を注入後、ノズルを抜き取った。その包装袋を常温で1ヶ月間保管し、1ヶ月後の包装袋内部圧力を測定したところ、48,300Paであった。また、包装袋用逆止弁を形成する積層フィルムから2枚のフィルム片を作成し、C層を互いに向かい合せて密着させ、500mN/cm2の荷重を負荷した状態で40℃の温度条件下、24時間保存後、15mm幅にカットした状態で、フィルム同士の90°剥離による剥離強度は、150mNであった。
[使用材料]
A層:ポリエチレンフィルム(メタロセン触媒系LLDPE、厚み50μm)
ダイセル化学工業(株)製「セネシLL DL12」
B層:延伸ポリアミドフィルム(両面コロナ処理タイプ、厚み15μm)
ユニチカ(株)製「エンブレムONBC」
C層:ウレタン系樹脂フィルム
D層:硝化綿/ポリウレタン系インキ(東洋インキ製造(株)製、LAPS)
にシリカを3重量%となるよう配合したインキ
【0021】
比較例1
図1におけるC層として下記のポリエチレンフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを形成し、さらに該積層フィルムより、実施例1と同様にして、包装袋用逆止弁および包装袋を作成した。この包装袋においてポリプロピレン系樹脂からなるノズルを逆止弁に挿入し、包装袋内部が50,000Paになるまで空気を注入後、ノズルを抜き取った。その包装袋を常温で1ヶ月間保管し、1ヶ月後の包装袋内部圧力を測定したところ、12,000Paであった。また、包装袋用逆止弁を形成する積層フィルムから2枚のフィルム片を作成し、C層を互いに向かい合せて密着させ、500mN/cm2の荷重を負荷した状態で40℃の温度条件下、24時間保存後、15mm幅にカットした状態で、フィルム同士の90°剥離による剥離強度は、0.05mNであった。
[使用材料]
A層:ポリエチレンフィルム(メタロセン触媒系LLDPE、厚み50μm)ダイセル化学工業(株)製「セネシLL DL12」
B層:延伸ポリアミドフィルム(両面コロナ処理タイプ、厚み15μm)ユニチカ(株)製「エンブレムONBC」
C層:ポリエチレンフィルム
(メタロセン触媒系LLDPE100重量部に対しシリカを1重量部となるよう配合したもの、厚み30μm)
D層:硝化綿/ポリウレタン系インキ(東洋インキ製造(株)製、LAPS)
にシリカを3重量%となるよう配合したインキ
【0022】
【発明の効果】
本発明の包装袋用逆止弁は、密封性が高く、流体の経時的な透過を防止して、気密性を長時間維持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の一例である包装袋用逆止弁の構成を示す断面図である。
【図2】図1における包装袋用逆止弁を包装袋に取り付けた状態を示す図である。
【符号の説明】
1 包装袋用逆止弁
2 包装袋
3 サイドシール部
4 D層形成部分
5 熱溶着部
Claims (8)
- 密着可能な2枚のフィルム片からなり、該フィルム片が剥離した状態で流体流路を形成する逆止弁であって、該フィルム片を構成するフィルムの流体流路側となる側を互いに向かい合せて密着させ、500mN/cm2の荷重を負荷した状態で40℃の温度条件下、24時間保存後、15mm幅にカットした状態で、フィルム同士の90°剥離による剥離強度が、1mN以上であることを特徴とする包装袋用逆止弁。
- 前記フィルム片が流体流路側となる側に少なくとも密着層を有し、該密着層がウレタン系樹脂を含有することを特徴とする請求項1記載の包装袋用逆止弁。
- 前記ウレタン系樹脂の含有量が、密着層を構成する樹脂組成物全体に対し3〜100重量%となる範囲であることを特徴とする請求項2記載の包装袋用逆止弁。
- 前記フィルム片が流体流路側となる側に少なくとも密着層を有し、該密着層がエチレン酢酸ビニル共重合体を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の包装袋用逆止弁。
- 前記フィルム片が流体流路側となる側に少なくとも密着層を有し、該密着層を構成する樹脂組成物が、主として、ウレタン系樹脂3重量%以上100重量%以下、エチレン酢酸ビニル共重合体とスチレン系樹脂の合計で97重量%以下からなることを特徴とする請求項1記載の包装袋用逆止弁。
- 前記エチレン酢酸ビニル共重合体が、エチレン酢酸ビニル共重合体全体に対する酢酸ビニルの共重合比が2重量%以上であることを特徴とする請求項4または5記載の包装袋用逆止弁。
- 前記フィルム片が、界面活性剤を含有する層を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の包装袋用逆止弁。
- 前記フィルム片が前記フィルム片が流体流路側となる側に少なくとも密着層を有し、流体流路側と反対側に、取り付け対象である包装袋のシーラント層と同種の材料からなる層を有し、共押出法によりフィルム成形されてなることを特徴とする請求項1乃至7記載の包装袋用逆止弁。
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