JP5438896B2 - プレフィルドシリンジ用の包装袋 - Google Patents
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Description
プレフィルドシリンジは、薬剤がシリンジ中に充填されてから投与までに時間がかかるため、シリンジ容器には、薬剤の酸化分解を防ぐための高い酸素ガスバリア性が要求される。
<1>本発明のプレフィルドシリンジ用の包装袋を構成する積層フィルムの層構成
まず、本発明において用いられる積層フィルムの層構成について説明する。図1は、本発明のプレフィルドシリンジ用の包装袋を構成する積層フィルムの層構成の一例を示す断面図である。
本発明に係る積層フィルムは、図1に示すように、基材フィルムとしての二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルム1の一方の面に、無機酸化物蒸着膜2、及び酸素吸収性ヒートシール性樹脂フィルム3を順に積層した構成を基本構造とするものである。
また、本発明において、図2に示すように、無機酸化物蒸着膜2と酸素吸収性ヒートシール性樹脂フィルム3の間に、バリアコート4を設けてもよい。
本発明において、無機酸化物蒸着膜は、単層であっても、2層以上からなる多層であってもよい。
本発明において、無機酸化物蒸着膜を支持する基材フィルムとして、耐衝撃性、耐突刺性、耐屈曲性に優れる二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムが用いられる。
このような二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムとしては、後述の無機酸化物蒸着膜及びバリアコートの特性を損なうことなく良好に保持し得る二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムであればいずれのものでも使用することができ、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、その他の各種のポリアミド系樹脂のフィルムを使用することができる。これらの樹脂のフィルムは、二軸方向に延伸されているものが好ましく、また、その厚さとしては、10〜50μm位、好ましくは、10〜25μm位が望ましい。また、上記の樹脂のフィルムとしては、必要ならば、その表面に、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理等の表面活性処理を任意に施すことができる。また、本発明においては、無機酸化物蒸着膜との密着強度を高めるために、例えば、ポリエステル系、ウレタン系、エポキシ系、アミン系等のアンカーコート剤を、無機酸化物蒸着膜を形成する蒸着工程において、インライン又はオフラインで用いることもできる。更に、本発明においては、用途に応じて、例えば、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、充填剤等の所望の添加剤を、その透明性に影響しない範囲内で任意に添加し、それらを含有するポリアミド系樹脂フィルム等も使用することができる。
本発明において、無機酸化物蒸着膜としては、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の酸化物からなる蒸着膜を挙げることができる。
好ましいものとしては、ケイ素(Si)又はアルミニウム(Al)の金属の酸化物からなる蒸着膜を挙げることができる。
望ましくは、ケイ素(Si)は1.0〜2.0、アルミニウム(Al)は0.5〜1.5の範囲の値のものを使用することができる。
また、無機酸化物蒸着膜として、使用する金属、又は金属の酸化物は、1種又は2種以上の混合物で使用し、異種の材質で混合した無機酸化物蒸着膜を構成することもできる。
本発明において、所望のガスバリア性を得るために、上記無機酸化物蒸着膜は、化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)、好ましくはプラズマ化学気相成長法により形成される。
本発明においては、具体的には、基材フィルムの表面に、有機ケイ素化合物等の蒸着用モノマーガスを原料とし、キャリヤーガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを使用し、更に、酸素供給ガスとして、酸素ガス等を使用し、低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長法を用いて、酸化物からなる蒸着膜を形成することができる。
上記において、低温プラズマ発生装置としては、例えば、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマ等の発生装置を使用することができるが、本発明においては、高活性の安定したプラズマを得るために、高周波プラズマ方式による発生装置を使用することが望ましい。
本発明においては、上記無機酸化物蒸着膜上に、さらに、アルコキシドと水溶性高分子とをゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物を塗布してなるバリアコートを設けることができる。これにより、酸素ガスバリア性をさらに向上させることができる。
また、水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール系樹脂若しくはエチレン・ビニルアルコール共重合体のいずれか又はその両方を好ましく用いることができる。
尚、本発明において、同一分子中において、これらのアルキル基は同一であっても、異なってもよい。
本発明において用いられるガスバリア性組成物は、アルコキシドと水溶性高分子とを、ゾル−ゲル法触媒、酸、水及び有機溶剤の存在下で、ゾルゲル法によって重縮合することにより調製することができ、これを、基材フィルムとしての二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルム上に設けた無機酸化物蒸着膜の上に塗布し、20℃〜200℃、好ましくは140℃以上、且つ基材フィルムの融点以下の温度で10秒〜10分間加熱処理することにより、バリアコートを形成することができる。必要ならば、無機酸化物蒸着膜の表面を、酸素ガスによりプラズマ処理してもよい。
なお、バリアコートは、2層以上重層して複合ポリマー層を形成してもよい。
上記のガスバリア性組成物を、無機酸化物蒸着膜の上に塗布し、加熱して溶媒及び重縮合反応により生成したアルコールを除去すると、重縮合反応が完結し、透明なバリアコートが形成される。
本発明において、酸素吸収性ヒートシール性樹脂フィルムは、酸化性樹脂と遷移金属触媒とを含む樹脂組成物による酸素吸収性樹脂層、及びヒートシール性樹脂層を有する。
上記の本発明に係る酸素吸収性樹脂層とヒートシール性樹脂層とを含む共押出多層積層フィルムについて説明すると、まず、酸化性樹脂と遷移金属触媒とを含み、更に、要すれば、結合剤としての熱可塑性樹脂、あるいは、ラジカル発生剤または光増感剤等の添加物を任意に添加し、溶剤、希釈剤等を添加し、十分に混練して、本発明に係る酸素吸収性樹脂層を形成する樹脂組成物を調製する。
本発明において、酸素吸収性ヒートシール性樹脂フィルムは、無機酸化物蒸着膜上に、又はバリアコートを設ける場合は、バリアコート上に、ラミネート用接着剤を介して、通常のラミネート方法、例えばウエットラミネーション法、ドライラミネーション法、押し出しラミネーション法等で行うことができる。
次に、本発明の包装袋を構成する積層フィルムに要求されるガスバリア性を設定する際の要因について説明する。
プラスチック製シリンジ容器中の薬剤の品質低下を抑止するために、本発明の包装袋を構成する積層フィルムは、酸素透過度に関して、JIS K 7126に準拠した手法で得られる数値として5ml/m2・24時間・MPa以下という優れた酸素バリア性を示すことができる。
次に、本発明において、上記のような本発明に係る積層フィルムを製袋して、本発明に係るプレフィルドシリンジ用の包装袋を製造する方法について説明すると、例えば、上記のような方法で製造した本発明に係る積層フィルムを使用し、その酸素吸収性ヒートシール性樹脂フィルムの側の面を対向させて、それを折り重ねるか、或いはその二枚を重ね合わせ、更にその周辺端部をヒートシールしてシール部を設けて、種々の形態からなる包装袋を製造することができる。
次に本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。
厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルムの一方の面に、プラズマ化学気相成長法を用いて、厚さ10nmの酸化ケイ素蒸着層を形成した。次いで、その酸化ケイ素蒸着層上に下記のバリアコート形成用組成物をグラビアコート法により塗工し、150℃で1分間乾燥して厚さ0.3μmの複合ポリマー層からなるバリアコートを形成した。
上記得られたガスバリア性透明蒸着ナイロンフィルムのバリアコート上に、ドライラミネート用接着剤を介して、予め製造した後述の酸素吸収性ヒートシール性樹脂フィルム(厚さ50μm)をドライラミネートすることにより、二軸延伸ナイロンフィルム15μm/酸化ケイ素蒸着層10nm/バリアコート0.3μm/酸素吸収性ヒートシール性樹脂フィルム50μmの積層フィルムを作成した。
次いで、上記で製造した包装袋の内面に紫外線照射装置〔アイグラフィックス株式会社製ECS−401GX〕を使用し、紫外光1000mJ/cm2を照射した。
次いで、水50L中にグリチルリチンアンモニウム塩100g、グリシン800g、L−システイン30gを溶解し、これをろ過して得られた溶液をシリンジ容器に充填・密封したプレフィルドシリンジを得、これを上記包装袋内に挿入し、密封して、プレフィルドシリンジ入り包装袋を得た。
エチルシリケート34.13g、エタノール25g、2N塩酸1.15g及び水4.58gを混合し、常温で約1時間攪拌し、次いでエポキシシランSH6040(東レダウコーニング製)3.41g、ソアノール30L(日本合成化学社製)31.56g及びN,N−ジメチルベンジルアミン0.17gを加えて30分攪拌し、バリアコート形成用組成物を得た。
まず、下記の(イ)〜(ハ)の樹脂組成物を調製した。
(イ).(第一層)に高圧法低密度ポリエチレン[HPLDPE、密度、0.923g/m3 、メルトフローレート(MFR)、3.5g/10分〕100.0重量部と、合成シリカ0.5重量部と、エルカ酸アミド0.05重量部と、エチレンビスオレイン酸アミド0.05重量部とを充分に混練して、第一層を形成する樹脂組成物を調製した。
(ロ).(第二層)に酸化性樹脂として、[エチレン/メチルアクリレート/メチルシクロヘキセンメチルアクリレートのコポリマー]100.0重量部と、遷移金属触媒として、[コバルト2−エチルヘキサノエート]0.01重量部と、ラジカル系光重合開始剤として、[1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−エェニル−ケトン]0.001重量部とを十分に混練して、第二層を形成する樹脂組成物を調製した。
(ハ).(第三層)に高圧法低密度ポリエチレン[HPLDPE、密度、0.923g/m3 、メルトフローレート(MFR)、3.5g/10分〕100.0重量部と、合成シリカ0.5重量部とを充分に混練して、第三層を形成する樹脂組成物を調製した。
次に、上記で調製した(イ)〜(ハ)の樹脂組成物を使用し、これらを、上吹き空冷インフレーション共押出製膜機を用いて、(イ)の樹脂組成物による第一層を20μm、(ロ)の樹脂組成物による第二層を10μm、(ハ)の樹脂組成物による第三層を20μmにそれぞれ共押出して、3層からなる総厚50μmの酸素吸収性ヒートシール性樹脂フイルムを製造した。上記で製造した共押出多層積層フィルムへ250nm〜320nmのUV光を積算光量で1000mJ/cm2照射した。
酸素吸収性ヒートシール性樹脂フィルムの代わりに、厚さ50μmの低密度ポリエチレンフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、プレフィルドシリンジ入り包装袋を作成した。
基材フィルムとして、二軸延伸ナイロンフィルムの代わりに、厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、プレフィルドシリンジ入り包装袋を作成した。
厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルムの一方の面に、実施例1と同様にして、酸化ケイ素蒸着層を形成した。次いで、その酸化ケイ素蒸着層上に、ドライラミネート法により、厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルム、及び実施例1に記載される厚さ50μmの酸素吸収性ヒートシール性樹脂フィルムを順に貼り合せた積層フィルムを作製し、これを実施例1と同様にして製袋した。
次いで、水50L中にグリチルリチンアンモニウム塩100g、グリシン800g、L−システイン30gを溶解し、これをろ過して得られた溶液をシリンジ容器に充填・密封したプレフィルドシリンジを得、これを上記包装袋内に挿入し、密封して、プレフィルドシリンジ入り包装袋を得た。
1.実施例及び比較例において得られた包装袋の酸素及び水蒸気透過度をMOCON法(JIS K7126、JIS K7129)を用いて実施した。
2.実施例及び比較例において得られた包装袋のシール部に切り込みを入れ、その部分を手で引き裂き、包装袋のカット性評価を実施した。評価は、○:きれいに直線的に引き裂けた、△:わずかにカット部が蛇行した、×:カット部が大きく蛇行した、の3段階で行った。
3.実施例及び比較例において得られたプレフィルドシリンジ入り包装袋を、40℃、80%RHの恒温恒湿槽に1ヶ月間保管し、袋内部の外観確認を行った。
4.溶液中のL−システインは、酸素の存在下で分解が促進されることから、プレフィルドシリンジ内の溶液中のL−システインの含有量を、保存試験時の包装袋に対する酸素透過量の指標とした。評価は、実施例及び比較例において得られたプレフィルドシリンジ入り包装袋を1ヶ月間室温で放置し、その後、10袋を紙箱に詰め、振動試験機で1000回振動させた後、室温又は40℃の環境下で保管し、L−システイン含有量の経時変化により実施した。
上記の表2から明らかなように、実施例1で得られた本発明に係る包装袋は、優れた易カット性を有し、プレフィルドシリンジを包装するのに好適な水蒸気バリア性を有し、包装袋内に水滴を生じることなく、美麗な外観を維持していた。また、表3から明らかなように、優れた耐屈曲性を有し、プレフィルドシリンジのバレルやプランジャーの突起部と接触しても、ガスバリア層が破断することなく、高い酸素ガスバリア性を維持することができた。さらに、優れた耐衝撃性も兼ね備え、外部からの衝撃を受け続けても、ガスバリア性の低下は見られなかった。さらに、包装袋内部の酸素を吸収することによって、プレフィルドシリンジ内の溶液中のL−システインの酸化分解を、長期間にわたり防ぐことができた。
これに対し、比較例1で得られた包装袋は、酸素吸収性ヒートシール性樹脂層を有しないため、包装袋内部の酸素を吸収することができず、プレフィルドシリンジ内の溶液中のL−システインは、包装袋内部の酸素と反応し、経時的に含有量が減少した。
Claims (10)
- 二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムの一方の面に、無機酸化物蒸着膜を1層又は2層以上蒸着することにより積層し、さらに該無機酸化物蒸着膜の上に、酸素吸収性ヒートシール性樹脂フィルムを積層した積層フィルム、を製袋して得られるプレフィルドシリンジ用の包装袋であって、該酸素吸収性ヒートシール性樹脂フィルムが、酸化性樹脂と遷移金属触媒とを含む樹脂組成物による酸素吸収性樹脂層、及びヒートシール性樹脂層を有し、該ヒートシール性樹脂層が上記積層フィルムの表面側に位置し、且つ、水蒸気透過度が、JIS K 7129に準拠した手法で得られる数値が2.0g/m 2 ・day以上、10.0g/m 2 ・day以下であることを特徴とする上記プレフィルドシリンジ用の包装袋。
- 二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムが、二軸延伸ナイロンフィルムである、請求項1に記載の包装袋。
- 無機酸化物蒸着膜が、プラズマ化学気相成長法により積層された、請求項1又は2に記載の包装袋。
- 無機酸化物蒸着膜を構成する無機酸化物が、酸化ケイ素又は酸化アルミニウムである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の包装袋。
- 酸素吸収性ヒートシール性樹脂フィルムが、酸化性樹脂と遷移金属触媒とを含む樹脂組成物と、熱可塑性樹脂をビヒクルの主成分とする樹脂組成物とを用いて、2層共押出により製造された2層共押出多層積層フィルムである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の包装袋。
- 酸素吸収性ヒートシール性樹脂フィルムが、酸化性樹脂と遷移金属触媒とを含む樹脂組成物と、熱可塑性樹脂をビヒクルの主成分とする樹脂組成物とを用いて、3層共押出により、ヒートシール性樹脂層、酸素吸収性樹脂層、ヒートシール性樹脂層の順に並ぶように製造された3層共押出多層積層フィルムである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の包装袋。
- 無機酸化物蒸着膜と酸素吸収性ヒートシール性樹脂フィルムの間に、アルコキシドと水溶性高分子とをゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物を塗布してなるバリアコートを設けた、請求項1〜6のいずれか1項に記載の包装袋。
- アルコキシドが、一般式R1 nM(OR2)m(式中、R1、R2は炭素数1〜8の有機基であり、Mは金属原子であり、nは0以上の整数であり、mは1以上の整数であり、n+mはMの原子価である)で表される1種又はそれ以上のアルコキシドであり、そして、水溶性高分子が、ポリビニルアルコール系樹脂若しくはエチレン・ビニルアルコール共重合体のいずれか又はその両方である、請求項7に記載の包装袋。
- 酸素吸収性ヒートシール性樹脂フィルムが、ラミネート用接着剤層を介して積層される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の包装袋。
- 酸素透過度が、JIS K 7126に準拠した手法で得られる数値が5ml/m2・24時間・MPa以下である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の包装袋。
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