JP4013460B2 - 固体電解コンデンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は二酸化マンガン、テトラシアノキノジメタン錯塩、ポリスチレンスルホン酸およびその誘導体からなる導電性高分子、ポリエチレンジオキシチオフェンおよびその誘導体、ポリピロールおよびその誘導体等の固体電解質を用いた固体電解コンデンサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子機器の高周波化に伴って、電子部品である電解コンデンサにも従来よりも高周波領域でのインピーダンス特性に優れた電解コンデンサが求められてきている。最近では、この高周波領域のインピーダンス低減のために、電気伝導度の高いテトラシアノキノジメタン錯塩(以下、TCNQと呼ぶ)や導電性高分子等の固体電解質を用いた電解コンデンサが検討されてきている。一方、コンデンサの大容量化の要求に対しては、電極箔を積層させる場合と比較して構造的に大容量化が容易な巻回形(陽極箔と陰極箔をセパレータを介して巻回した構造のもの)の電解コンデンサへのTCNQや導電性高分子電解質の応用が成されてきているが、面実装化の検討は電解液を用いるタイプの電解コンデンサと比較して遅れており、これまで固体電解質を用いたコンデンサにおいて面実装化が困難な理由が技術的に明確にはなっていないものであった。
【0003】
これはTCNQや導電性高分子を固体電解質とする固体電解コンデンサは蒸気圧を有する液状の電解質(すなわち電解液)を用いるタイプのコンデンサと比較して、電子部品をプリント基板に面実装で半田付けする時の高温雰囲気(具体的には200℃以上)下で蒸気化する成分をコンデンサ素子が有していないため、面実装時の外装ケースの内部の圧力上昇は少なく、外装ケースの膨れや封口部材の損傷等の問題が少なくなり、面実装化し易いと一般には考えられている。しかしながら、実際には固体電解質自身が空気中の水分を吸着し易いために多量の水分が製造工程中でコンデンサ素子自身に保有され、この吸着水分が面実装時の高温条件下において気化するため、電解液を用いるタイプのものと比較して同等以上に面実装化は困難であるということを本発明者らは見いだし、今回の発明に至った。
【0004】
また、上記巻回形の構造を取るためには陽極箔と陰極箔との接触を避けるためにセパレータを介在させることが必須であるが、従来の電解液を電解質とする電解コンデンサでは、電解液との濡れ易さを重視する観点より、水との親和性の高いセルロース成分からなるマニラ麻やクラフト紙からなるいわゆる電解紙をセパレータとして用いることが知られている。また、導電性高分子を電解質とする巻回形の電解コンデンサ用のセパレータとしては、ガラス繊維不織布、メルトブロー法による調整された樹脂不織布、上記電解紙を用いてコンデンサ素子を巻回した後に加熱等の方法によりこの電解紙を炭化処理した炭化状態の電解紙等をセパレータとして用いることが知られていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来の構成では、セパレータとして用いるガラス繊維不織布は、もともとが水との親和性の高いシリカが主原材料であるため、樹脂製のセパレータと比較して空気中の水分を吸着する能力が大きく、固体電解質を構成した後においてもコンデンサ素子の保有する含水率が高くなり、面実装化に適さないと言う問題点を有していた。更には、このガラス繊維不織布は裁断や巻回の際に針状ガラス繊維が周囲に飛散することより作業環境上の問題が大きく、また巻回に伴う屈曲時の強度も脆く製品がショートしやすいという欠点を有していた。
【0006】
また、炭化状態の電解紙は、もともとが水との親和性の高いセルロースが原材料であるため、樹脂製のセパレータと比較して空気中の水分を吸着する能力が大きく、固体電解質を形成した後においてもコンデンサ素子の保有する含水率が高くなり、面実装化に適さないと言う問題点を有していた。
【0007】
更には、電解紙を炭化するに際して、コンデンサ素子に250℃を超えるほどの熱を長時間加えなければ固体電解質を保持させて高周波領域でのインピーダンスを低減させるに十分な炭化状態を作ることが難しく、この加熱により誘電体酸化皮膜が損傷して漏れ電流が大きくなりやすい上、この加熱により電解コンデンサの引き出しリード線のメッキ層(例えばスズ/鉛層)が酸化を受けるため、通常のメッキ線では完成後の製品のリード線部での半田濡れ性が著しく低下してしまい、そのために耐酸化性の強い高価な銀メッキリード線を使用しなければならない等の問題を有していた。
【0008】
また、メルトブロー法により調整した樹脂製不織布は、空気中の水分を吸着する能力は小さいため、固体電解質を形成した後におけるコンデンサ素子の保有する含水率は比較的低く、面実装化に向きやすいものの、電解紙と比較して引っ張り強度が弱いためにコンデンサ素子の巻き取り時にセパレータ切れが発生しやすい上、樹脂繊維どうしを接着してシート化する際に用いられる接着剤成分の影響により固体電解質(特に導電性高分子電解質)をセパレータに保持させ難く、高周波領域でのインピーダンスの低い固体電解コンデンサを製造することが困難であった。
【0009】
また、電解質に用いられる導電性高分子としては、エチレンジオキシチオフェンを適当な酸化剤により化学酸化重合して形成するポリエチレンジオキシチオフェンやポリピロールが知られているが、これらをポリエチレンやポリプロピレンからなる樹脂製のセパレータに保持させることは困難であり、熱ストレス等によりセパレータと導電性高分子との剥離によるインピーダンスの増加や容量の引き出し率が悪いために、電解液を電解質とした場合のコンデンサに比べて容量当たりのサイズが大きくなる等の欠点を有したものであった。
【0010】
本発明は従来のこのような課題を解決し、インピーダンス特性に優れ、かつ安定した高温面実装性能を有する面実装型の固体電解コンデンサを提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、誘電体酸化皮膜層を形成した陽極箔と陰極箔とをポリアルキレンテレフタレート樹脂およびその誘導体樹脂を含有するスパンボンド法または湿式法により作製された不織布であるセパレータを介して巻回すると共に上記陽極箔と陰極箔の間に固体電解質層を形成し、かつ水分量を重量基準で1重量%以下にしたコンデンサ素子と、このコンデンサ素子を収納した有底筒状の金属製の外装ケースと、この外装ケースの開口部を封止した高分子成分を含有する封止部材からなる固体電解コンデンサとしたものである。
【0012】
この本発明により、インピーダンス特性に優れ、かつ安定した高温面実装性能を有する面実装型の固体電解コンデンサを得ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、誘電体酸化皮膜層を形成した陽極箔と陰極箔とをポリアルキレンテレフタレート樹脂およびその誘導体樹脂を含有するスパンボンド法または湿式法により作製された不織布であるセパレータを介して巻回すると共に上記陽極箔と陰極箔の間に固体電解質層を形成し、かつ水分量を重量基準で1重量%以下にしたコンデンサ素子と、このコンデンサ素子を収納した有底筒状の金属製の外装ケースと、この外装ケースの開口部を封止した高分子成分を含有する封止部材からなる固体電解コンデンサとしたものであり、この構成によれば、製造工程において、固体電解質が形成され巻回したコンデンサ素子が金属製の外装ケース内へ挿入され、更には、金属製の外装ケースの開口部が封止されることで構成される密閉された金属製の外装ケースの内部(内部には巻回したコンデンサ素子がある)においては、巻回したコンデンサ素子が保有する水分(具体的には、固体電解質以上に空気中の水分を吸着しやすいセパレータが保有する水分の寄与率が大きい)のみが蒸気化し、密閉された金属製の外装ケースの内部の圧力を上昇させる成分であるため、この原因となる巻回したコンデンサ素子が保有する水分の量を規制することで面実装時の高温条件下においても外装ケースの内部の圧力上昇が生じ難く、安定した面実装性能を発揮することができるものである。また、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属製の外装ケースは、内部圧力の上昇による塑性変形が少ないので、前述の効果と併せて、面実装時の高温条件下においても外装ケースの変形が生じ難く、より安定した面実装性能を発揮することができるものである。
【0014】
また、ポリアルキレンテレフタレート樹脂(更に好ましくはポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂)は樹脂の吸水率がとりわけ小さいので、コンデンサ素子の有する水分量を比較的容易な方法(例えば、導電性高分子電解質などの高温酸素劣化しやすい固体電解質においても、これらの導電性を低下させない程度の85〜125℃の温度範囲でのコンデンサ素子の乾燥処理)により1重量%以下に規制しやすく、このセパレータを用いて構成したコンデンサ素子を用いることで面実装時の高温雰囲気下でも非常に安定した実装性能を有する固体電解コンデンサを構成することができる。
【0015】
また、ポリアルキレンテレフタレート樹脂およびその誘導体樹脂(更に好ましくはポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂)は導電性高分子(例えば、ポリエチレンジオキシチオフェンやポリピロール)との密着性・接着性が極めて良いため、他のポリプロピレン等の合成樹脂からなるセパレータ材質を使用した場合と比較して高周波領域でのインピーダンスをより一層低くすることができる。
【0016】
また、スパンボンド法および湿式法により作製された不織布はその他の合成樹脂不織布と異なり、シート化の際に繊維どうしを接着するための接着剤を用いることなく熱接着法や機械的交絡法によりシート化することができるので、接着剤成分の影響による固体電解質の剥離が生じ難いために固体電解質をセパレータに保持させ易く、高周波領域でのインピーダンスの低い固体電解コンデンサを構成することができるという作用をも有する。
【0017】
また、スパンボンド法および湿式法により作製された不織布は、メルトブロー法により作製された不織布と比較して1本の繊維長が長いため、同じ厚み、秤量で比較した場合、引っ張り強度が強くなり、コンデンサ素子の巻回時にセパレータ切れの頻度が少なくなるので好ましいという作用を有する。
【0018】
更には、金属製の外装ケースの開口部を封止する際の手段に、外装ケースの開口部分にカーリング加工を用いる場合には、弾性体である高分子成分を含有する封止部材を用いることで安定した封止性能が得られるので、前述の効果と併せて、面実装時の高温条件下においても封口面の変形が生じ難く、より安定した面実装性能を発揮することができるという作用を有する。
【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、高分子成分を含有する封止部材として過酸化物加硫および/または樹脂加硫され250℃における弾性率が450N/cm2以上であるブチルゴムを用いた構成としたものであり、この構成により、過酸化物加硫および/または樹脂加硫されたブチルゴムは耐熱性が高いため、実装時の過酷な熱ストレスが加わった後においても封止性能の低下を助長することが少なく、固体電解コンデンサの内部への経時的な水分の浸入による固体電解質の劣化を起こし難く、信頼性の高い固体電解コンデンサを構成することができる。また、固体電解コンデンサの実装時の温度は通常200〜250℃の範囲にあるため、固体電解コンデンサの封口ゴムの250℃付近における弾性率を450N/cm2以上に設定することで、実装時にコンデンサ素子の保有水分が蒸気化し、外装ケースの内部圧力が上昇した際にもその温度における機械的強度が強いので内部圧力の影響による変形率が少なく、その結果、実装時の固体電解コンデンサの外観変形が抑制でき、安定した面実装性能を発揮することができるという作用を有する。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、セパレータが厚み80μm以下のものであり、かつ秤量が10〜60g/m2の範囲である構成としたもので、この構成によれば、このセパレータを用いて構成したコンデンサ素子を用いることで面実装時の高温雰囲気下でも安定した実装性能を有する固体電解コンデンサを構成することができるという作用を有する。
【0021】
また、厚みを80μmを超える範囲に設定すると、樹脂の吸水率自身は少ないものの、吸水有効面積(固体電解コンデンサ一つ当たりに使用されるセパレータの真の表面積)が大きくなるために絶対吸水量が多くなり、前述の効果を十分に発揮することが難しくなる。更には、厚みを80μmを超える範囲に設定すると、同じ面積の電極箔を巻回した場合においてもセパレータの厚みが嵩高くなる分、直径の小さな固体電解コンデンサを構成することが難しくなるので、単位体積当たりの容量の大きな固体電解コンデンサを構成することも困難となる。
【0022】
また、秤量を10〜60g/m2の範囲に限定することで、合成繊維を主体とするセパレータにおいてもコンデンサ素子の巻回時にセパレータ切れの頻度を少なくするに十分な引っ張り強度が確保でき、かつセパレータの絶対吸水量を少ない範囲に規制できるので、面実装時の高温雰囲気下でも安定した実装性能を有する固体電解コンデンサを構成することができるという作用を有する。
【0023】
なお、セパレータの秤量が10g/m2未満では巻回時のセパレータ切れが多発するので好ましくなく、秤量が60g/m2を超える範囲では単位面積当たりの吸水有効面積が大きくなるために絶対吸水量が多くなり、前述の効果を十分に発揮することが難しくなる。
【0024】
請求項4に記載の発明は、請求項1または3に記載の発明において、ポリアルキレンテレフタレート樹脂がポリエチレンテレフタレート樹脂および/またはポリブチレンテレフタレート樹脂を含有するものであり、かつ濡れ性改善のための表面処理を施したものである構成としたものであり、この構成によれば、セパレータの濡れ性改善処理によりセパレータの吸水率を調整することが可能となるため、請求項1または3に記載の発明による作用をより一層高めることができるものである。
【0025】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一つに記載の発明において、固体電解質が少なくとも陽極箔、陰極箔、セパレータの群より選ばれる少なくとも一つ以上の吸水性を低減させるためのバインダー成分を含有するものである構成としたものであり、また請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、吸水性を低減させるためのバインダー成分がポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、ビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールF型エポキシ、脂環式エポキシおよびこれらの誘導体よりなる群より選ばれる一つ以上を成分とする高分子または共重合体である構成としたものであり、この構成によれば、これらの高分子またはそれらから成る共重合体は疎水性であるために水分を吸収し難く、少なくとも陽極箔、陰極箔、セパレータの群より選ばれる少なくとも一つ以上にこれらのバインダー成分を含有させることでコンデンサ素子の吸水性を低減させることができるので、コンデンサ素子の有する水分量を比較的容易な方法(例えば、導電性高分子電解質などの高温酸素劣化しやすい固体電解質においても、これらの導電性を低下させない程度の85〜125℃の範囲の温度でのコンデンサ素子の乾燥処理)により1重量%以下に規制し易くする上、乾燥後の棚置き状態における空気中の水分のコンデンサ素子への再吸着をも抑制できるので、面実装時の高温雰囲気下でも非常に安定した実装性能を有する固体電解コンデンサを構成することができるという作用を有する。
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図1を用いて詳細に説明する。
【0027】
図1は本発明の一実施の形態による面実装型の固体電解コンデンサを示した部分断面斜視図であり、同図に示すように、エッチング処理により表面を粗面化した後に酸化処理により誘電体酸化皮膜層を形成したアルミニウム箔からなる陽極箔1と、アルミニウム箔をエッチング処理した陰極箔2とをセパレータ3を介して巻き取ることによりコンデンサ素子10を形成している。また、上記陽極箔1と陰極箔2との間に(陽極箔1と陰極箔2に接するようにして)TCNQや導電性高分子などからなる固体電解質層4を形成してコンデンサ素子10が構成されている。
【0028】
このコンデンサ素子10を有底筒状の外装ケース8に収納すると共に、外装ケース8の解放端を封口部材7により陽極箔1及び陰極箔2のそれぞれから導出した外部導出用の陽極リード5と陰極リード6を封口部材7を貫通するように封止して構成し、更に陽極リード5と陰極リード6とが座板9を貫通するように座板9を配置し、陽極リード5と陰極リード6の外部導出部の少なくとも一部を扁平に折り曲げ加工することにより面実装型の固体電解コンデンサを構成している。
【0029】
次に、本発明の具体的な実施の形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、部はすべて重量部を示す。
【0030】
(実施の形態1)
陽極箔と陰極箔との間にポリエチレンテレフタレート製スパンボンドのセパレータ(厚さ50μm、秤量25g/m2)を介在させて巻回し、巻回したコンデンサ素子の外周長の1.5倍の長さのポリフェニレンサルファイド基材粘着テープを用いて巻き止めすることにより巻回形のコンデンサ素子を構成した(このコンデンサ素子にアジピン酸アンモニウムの10重量%エチレングリコール溶液を含浸させた際の周波数120Hzにおける静電容量は670μFであった。)。
【0031】
続いて、このコンデンサ素子を複素環式モノマーであるエチレンジオキシチオフェン1部と酸化剤であるp−トルエンスルホン酸第二鉄2部と重合溶剤であるn−ブタノール4部を含む溶液に浸漬して引き上げた後、85℃で60分間放置することにより化学重合性導電性高分子であるポリエチレンジオキシチオフェンを電極箔間に形成した。
【0032】
続いて、このコンデンサ素子を水洗−乾燥した後、重合溶剤であるn−ブタノールおよび水の沸点以上の温度である120℃で30分間の乾燥処理を行った。この作業に続いて、直ちにこのコンデンサ素子を乾燥空気グローブボックス中に移行させ、乾燥空気雰囲気中で、予め120℃で1時間の乾燥処理を行って水分率を減少させた樹脂加硫ブチルゴムの封口部材(ブチルゴムポリマー30部、カーボン20部、無機充填剤50部から構成、硬度:70IRHD[国際ゴム硬さ単位]、250℃における弾性率450N/cm2)と共にアルミニウム合金製の外装ケースに封入した後、カーリング処理により開口部を封止し、更に陽極箔、陰極箔から夫々導出された両リードをポリフェニレンサルファイド製の座板に通し、リード部を扁平に折り曲げ加工することにより面実装型の固体電解コンデンサを作製した(サイズ:直径10mm×高さ10.2mm)。
【0033】
このようにして作製した上記固体電解コンデンサを上記組み立て時に用いた乾燥空気グローブボックス中で空気中の水分を吸着しないように分解してコンデンサ素子を取り出し、このコンデンサ素子の保有する水分率を水分気化加熱装置を具備したN2ガス導入カールフィッシャー法により測定した結果、コンデンサ素子の陽極箔部分、陰極箔部分、セパレータ、固体電解質、巻き止めテープの重量の合計(すなわち陽極リードおよび陰極リードの重量を含まないコンデンサ素子の重量)基準で0.80%(以下、この測定法により導出した水分率をW1と記す)であった。
【0034】
また、このようにして求めた水分率の測定精度を検証する目的で、上記の取り出したコンデンサ素子より陽極、陰極両リードを取り除いたものについて、これを120℃で1時間乾燥させた後の重量を乾燥させる前の重量より減じ、この値を乾燥させる前の重量で除して求めた重量変化百分率(コンデンサ素子の水分吸着量に該当する重量百分率と推定できる、以下この測定法により導出した水分率をW2と記す)は、重量基準で0.81%であった。この結果から、極めて高い精度で水分率が把握できたことがわかる。
【0035】
(実施の形態2)
上記実施の形態1において、酸化剤にナフタレンスルホン酸第二鉄1部とトリイソプロピルナフタレンスルホン酸第二鉄1部とを用い、重合溶剤にエタノール4部を用いた以外は実施の形態1と同様に作製した。本実施の形態2による水分率W1は0.89%、W2は0.89%であった。
【0036】
(実施の形態3)
上記実施の形態1において、複素環式モノマーにピロール1部、酸化剤に過硫酸アンモニウム2部、重合溶剤にメタノール1部と水3部との混合溶剤を用いた以外は実施の形態1と同様に作製した。本実施の形態3による水分率W1は0.88%、W2は0.88%であった。
【0037】
(実施の形態4)
上記実施の形態1において、セパレータにポリプロピレン製スパンボンドのセパレータ(厚さ50μm、秤量25g/m2)を用いた以外は実施の形態1と同様に作製した。本実施の形態4による水分率W1は0.94%、W2は0.94%であった。
【0038】
(実施の形態5)
上記実施の形態1において、セパレータにマニラ麻電解紙に硝酸化処理をした硝酸化セルロース繊維紙を用いた以外は実施の形態1と同様に作製した。本実施の形態5による水分率W1は0.97%、W2は0.96%であった。
【0039】
(実施の形態6)
上記実施の形態1において、セパレータにガラス繊維不織布(厚み80μm、秤量10g/m2)を用いた以外は実施の形態1と同様に作製した。本実施の形態6による水分率W1は0.97%、W2は0.97%であった。
【0040】
(実施の形態7)
上記実施の形態1において、陽極箔と陰極箔との間にマニラ麻からなる電解紙(厚さ50μm)を介在させて巻回し、このコンデンサ素子を窒素雰囲気中、275℃で2時間加熱することで電極箔間に介在する電解紙を炭化させてコンデンサ素子を構成した後、このコンデンサ素子をポリスチレンスルホン酸の誘導体であるポリエチレンジオキシチオフェンポリスチレンスルホン酸の固形分1.3%水溶液(バイエル社製バイトロンP[商品名])と吸水性を低減させるためのバインダー成分としてスルホン酸変性ポリエチレンテレフタレートの懸濁溶液(固形分濃度5.0%の水溶液)との1:1混合溶液中に浸漬して引き上げ、これを150℃で10分間乾燥処理する工程を追加した後に、複素環式モノマーであるエチレンジオキシチオフェン1部と酸化剤であるp−トルエンスルホン酸第二鉄2部と重合溶剤であるn−ブタノール4部を含む溶液に浸漬して引き上げた後、85℃で60分間放置することにより化学重合性導電性高分子であるポリエチレンジオキシチオフェンを電極箔間に形成した以外は実施の形態1と同様に作製した。本実施の形態7による水分率W1は0.78%、W2は0.77%であった。
【0041】
(実施の形態8)
上記実施の形態1において、封口部材に、加硫剤にジクミルパーオキサイドを用いた過酸化物加硫ブチルゴムからなる封口部材(ブチルゴムポリマー32部、カーボン20部、無機充填剤48部から構成、硬度:68IRHD[国際ゴム硬さ単位]、250℃における弾性率400N/cm2)を用いた以外は実施の形態1と同様に作製した。本実施の形態8による水分率W1は0.79%、W2は0.78%であった。
【0042】
(実施の形態9)
上記実施の形態1において、乾燥空気グローブボックス中に移行させずに、温度30℃−相対湿度60%RHの環境下で組み立てを行った(コンデンサ素子の乾燥直後から組み立てまでに要した時間は1.0時間)以外は実施の形態1と同様に作製した。本実施の形態9による水分率W1は1.2%、W2は1.1%であった。
【0043】
(実施の形態10)
上記実施の形態1において、複素環式モノマーであるエチレンジオキシチオフェン1部と酸化剤であるp−トルエンスルホン酸第二鉄2部と重合溶剤であるn−ブタノール4部とを含む溶液に、吸水性を低減させるためのバインダー成分としてカルボン酸変性ポリエチレンテレフタレートの懸濁液(固形分濃度30%の水溶液)1部を追加した以外は実施の形態1と同様に作製した。本実施の形態10による水分率W1は0.75%、W2は0.73%であった。
【0044】
(実施の形態11)
上記実施の形態1において、セパレータにポリエチレンテレフタレート繊維およびその誘導体繊維を用いて湿式法により作製した不織布セパレータ(厚さ50μm、秤量22.5g/m2)を用いた以外は実施の形態1と同様に作製した。
【0045】
本実施の形態11による水分率W1は0.90%、W2は0.91%であった。
【0046】
(比較例1)
陽極箔と陰極箔との間にポリエチレンテレフタレート製スパンボンドのセパレータ(厚さ50μm、秤量25g/m2)を介在させて巻回することにより巻回形のコンデンサ素子を構成した(このコンデンサ素子にアジピン酸アンモニウムの10重量%エチレングリコール溶液を含浸させた際の周波数120Hzにおける静電容量は670μFであった。)。
【0047】
続いて、このコンデンサ素子を複素環式モノマーであるエチレンジオキシチオフェン1部と酸化剤であるp−トルエンスルホン酸第二鉄2部と重合溶剤であるn−ブタノール4部を含む溶液に浸漬して引き上げた後、85℃で60分間放置することにより化学重合性導電性高分子であるポリエチレンジオキシチオフェンを電極箔間に形成した。
【0048】
続いて、このコンデンサ素子を水洗−乾燥した後、重合溶剤であるn−ブタノールの沸点以上の温度である120℃で30分間の乾燥処理を行った。この作業に続いて、このコンデンサ素子を温度30℃相対湿度60%RHの雰囲気中で、樹脂加硫ブチルゴム封口部材(ブチルゴムポリマー32部、カーボン20部、無機充填剤48部から構成、硬度:68IRHD[国際ゴム硬さ単位]、250℃における弾性率400N/cm2)と共にアルミニウム合金製の外装ケースに封入した後、カーリング処理により開口部を封止し、更に陽極箔、陰極箔から夫々導出された両リード端子をポリフェニレンサルファイド製の座板に通し、リード部を扁平に折り曲げ加工することにより面実装型の固体電解コンデンサを作製した(サイズ:直径10mm×高さ10.2mm)。本比較例1による水分率W1は1.2%、W2は1.1%であった。
【0049】
以上のように作製した本発明の実施の形態1〜11と比較例1の固体電解コンデンサについて、その静電容量(測定周波数120Hz)、インピーダンス(測定周波数100kHz)、および面実装半田付けのためのリフロー処理(ピーク温度250℃、200℃以上に曝される時間45秒の条件)を行った後の固体電解コンデンサの封口面の膨れ量と封口面の膨れによる実装時のリード浮きによる半田付け不良が発生した個数を比較した結果を(表1)に示す。
【0050】
なお、試験個数はいずれも50個であり、静電容量、インピーダンス、固体電解コンデンサの封口面の膨れ量は50個の平均値で示した。
【0051】
【表1】
【0052】
(表1)より明らかなように、本発明の実施の形態1〜8および実施の形態10〜11の固体電解コンデンサは、コンデンサ素子の有する水分量をコンデンサ素子の重量基準で1重量%以下に規定し、このコンデンサ素子を外装ケースに収容し、外装ケースの開口部を封止する構成としているため、面実装時の高温条件下においても外装ケースの内部の圧力上昇が生じ難いので、その結果、比較例1と比較して固体電解コンデンサの封口面の膨れ量(内圧上昇による封口面の塑性変形)は小さく、いずれも実装の際の不具合が発生し始める膨れ量(=0.20mm)以下に制御されていることがわかる。また、この効果により、封口面の膨れによる実装時のリード浮き等による半田付け不良が発生せず、安定した高温実装性能を有する固体電解コンデンサを構成することができた。
【0053】
また、本発明の実施の形態1〜7および実施の形態9〜11の固体電解コンデンサは、外装ケースの開口部を250℃における弾性率が450N/cm2以上である過酸化物加硫されたブチルゴム封口部材を用いて封止する構成としているため、実装時の温度(245℃)でも十分な封口面の機械的強度が確保できるので、その結果、比較例1と比較して固体電解コンデンサの封口面の膨れ量(内圧上昇による封口面の塑性変形)は小さく、実装の際の不具合が発生し始める膨れ量(=0.20mm)以下に制御されていることがわかる。また、この効果により、封口面の膨れによる実装時のリード浮き等による半田付け不良が発生せず、安定した高温実装性能を有する固体電解コンデンサを構成することができた。
【0054】
また、本発明の実施の形態7および10の固体電解コンデンサは、前述の効果に加えて、固体電解質中に吸水性を低減させるためのバインダー成分としてポリエステルの一種である変性ポリエチレンテレフタレート樹脂を含有するため、コンデンサ素子の保有する水分率を最も少なく制御することができ、その結果、実装時の封口面の膨れ量が最も少なくなり、一層安定した高温実装性能を有する固体電解コンデンサを構成することができた。
【0055】
これらの本発明により、インピーダンス特性に優れ、かつ安定した高温面実装性能を有する面実装型の固体電解コンデンサを得ることができた。
【0056】
【発明の効果】
以上のように本発明の固体電解コンデンサは、誘電体酸化皮膜層を形成した陽極箔と陰極箔とをポリアルキレンテレフタレート樹脂およびその誘導体樹脂を含有するスパンボンド法または湿式法により作製された不織布であるセパレータを介して巻回すると共に上記陽極箔と陰極箔の間に固体電解質層を形成し、かつ水分量を重量基準で1重量%以下にし たコンデンサ素子と、このコンデンサ素子を収納した有底筒状の金属製の外装ケースと、この外装ケースの開口部を封止した高分子成分を含有する封止部材からなる構成とすることにより、インピーダンス特性に優れ、かつ安定した高温面実装性能を有する面実装型の固体電解コンデンサを得ることができ、その工業的価値は大なるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態による固体電解コンデンサの構成を示した部分断面斜視図
【符号の説明】
1 陽極箔
2 陰極箔
3 セパレータ
4 固体電解質層
5 陽極リード
6 陰極リード
7 封口部材
8 外装ケース
9 座板
10 コンデンサ素子
Claims (6)
- 誘電体酸化皮膜層を形成した陽極箔と陰極箔とをポリアルキレンテレフタレート樹脂およびその誘導体樹脂を含有するスパンボンド法または湿式法により作製された不織布であるセパレータを介して巻回すると共に上記陽極箔と陰極箔の間に固体電解質層を形成し、かつ水分量を重量基準で1重量%以下にしたコンデンサ素子と、このコンデンサ素子を収納した有底筒状の金属製の外装ケースと、この外装ケースの開口部を封止した高分子成分を含有する封止部材からなる固体電解コンデンサ。
- 高分子成分を含有する封止部材として過酸化物加硫および/または樹脂加硫され、250℃における弾性率が450N/cm2以上であるブチルゴムを用いた請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
- セパレータが厚み80μm以下のものであり、かつ秤量が10〜60g/m2の範囲である請求項1または2に記載の固体電解コンデンサ。
- ポリアルキレンテレフタレート樹脂およびその誘導体樹脂がポリエチレンテレフタレート樹脂および/またはポリブチレンテレフタレート樹脂を含有するものであり、かつ濡れ性改善のための表面処理を施したものである請求項1または3に記載の固体電解コンデンサ。
- 固体電解質が少なくとも陽極箔、陰極箔、セパレータの群より選ばれる少なくとも一つ以上に吸水性を低減させるためのバインダー成分を含有するものである請求項1〜4のいずれか一つに記載の固体電解コンデンサ。
- 吸水性を低減させるためのバインダー成分がポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、ビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールF型エポキシ、脂環式エポキシおよびこれらの誘導体よりなる群より選ばれる一つ以上を成分とする高分子または共重合体である請求項5に記載の固体電解コンデンサ。
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