JP4012425B2 - アルミニウム系めっき鋼板のレーザー重ね溶接方法およびレーザー重ね溶接用アルミニウム系めっき鋼板 - Google Patents

アルミニウム系めっき鋼板のレーザー重ね溶接方法およびレーザー重ね溶接用アルミニウム系めっき鋼板 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム系めっき鋼板のレーザー重ね溶接方法およびレーザー重ね溶接用アルミニウム系めっき鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム系めっき鋼板は各種の建材、自動車部品、容器、幅広い分野で使用されているが、長期間の防錆効果を確保する目的からは厚目付けのめっきが有効である。例えば、腐食環境が厳しい自動車燃料タンク用のめっき鋼板としては、めっき付着量が30g/m2以上の厚目付けアルミニウム系めっき鋼板が使用されはじめている。アルミニウム系めっき鋼板としては、実質的にAlおよび不可避不純物からなる溶融アルミニウムめっき鋼板、Al中にSiを5〜10%程度含有する溶融アルミニウム合金めっき鋼板、あるいはさらにAl中にSi、Mg、Ca、Znなどを含有する溶融アルミニウム合金めっき鋼板、Al中にZnを40〜45%程度とSiを0.5〜3%程度含有する溶融アルミニウム合金めっき鋼板などがある。
【0003】
これらのアルミニウム系めっき鋼板は、総じて溶接性に優れており、各種の溶接法が適用されてきた。溶接性としては溶接方法と密接な関係があるが、めっき付着量の多いアルミニウム系めっき鋼板をレーザーで重ね溶接した場合には、アルミニウム系めっき鋼板でも溶接性が劣る場合がある。ここでレーザー重ね溶接とは、2枚あるいはそれ以上の鋼板を重ね、鋼板表面にほぼ垂直な方向からレーザービームを照射してキーホール溶接する方法をいう。アルミニウム系めっき鋼板では、2枚の鋼板の間に存在するめっき金属がレーザービームで加熱され、アルミニウムが溶融・気化して蒸発し、このアルミニウム蒸気の圧力によって溶融池の溶鋼が吹き飛ばされて溶接欠陥(ピット)を生じたり、アルミニウム蒸気が溶鋼中に閉じ込められて凝固することによるブローホール、あるいはアルミニウムが溶接金属内部で偏在することによるFe−Al金属間化合物の生成、といった欠陥が発生する場合がある。
【0004】
かかるレーザー重ね溶接における課題を解決する手段として、アルミニウム系めっき鋼板に対して提案された例はほとんど見当たらないが、Zn系めっき鋼板のレーザー重ね溶接の場合には、例えば以下の技術が提案されている。
特開平4−231190号公報には、前処理工程で予め亜鉛系めっきを加熱して除去した後にレーザー重ね溶接する方法が開示されている。しかし、この方法では、工程が2つ以上必要である上に、合わせ部の耐食性に課題が生ずる、という難点がある。
【0005】
特開平3−165994号公報には、予めめっき鋼板の重ね面にレーザーを吸収する材料を塗布しておく方法が開示されている。しかし、この方法においても工程が2つ以上必要であり、生産性およびコストの点で課題がある。
特許第3139325号の特許掲載公報には、Zn−Ni系合金めっき鋼板のめっき付着量と鋼板板厚との関係を限定することで、レーザー溶接における溶接欠陥が少なく、かつ溶接部外観の優れたZn−Ni系合金めっき鋼板が開示されている。しかし、この技術では例えば板厚が0.6mmではめっき付着量を15g/m2 以下としなければならず、亜鉛系めっき鋼板の最大の機能である耐食性が犠牲となり、厳しい腐食環境で長期間使用される自動車の耐久性が確保できない、という難点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、生産性や防錆性能を犠牲にすることなく、溶接欠陥が少なく、かつ溶接部外観の優れたアルミニウム系めっき鋼板のレーザー重ね溶接方法およびレーザー重ね溶接に適したアルミニウム系めっき鋼板を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、レーザー重ね溶接によるアルミニウム系めっき鋼板の溶接継ぎ手部について、溶接欠陥を低減し、優れた溶接部外観と継ぎ手強度を確保するための溶接方法およびそれに適した鋼板について、種々の検討と実験を続けた結果、ついに2枚の鋼板の間の間隔を制御し、この隙間と鋼板板厚と鋼板間に存在するアルミニウムの量との関係を特定の範囲に限定することで、溶接欠陥を低減し、優れた溶接部外観と継ぎ手強度を確保できる溶接方法を見出した。
【0008】
本発明はこうした知見に基づいてなされたもので、その要旨とするところは以下の通りである。
(1)アルミニウム系めっき鋼板のレーザー重ね溶接において、重ね溶接部の隙間:X(mm)、鋼板板厚:Y(mm)、重ね面の合計めっき付着量:Z(g/m2)とするとき、
X≧Z/(10000×Y)
X≦0.35×Y
を満足する部分を有し、
X≧Z/(10000×Y)
を満足しない部分の最大長さが3×Y(mm)以下であるよう重ね溶接部に隙間空間を設けることを特徴とするアルミニウム系めっき鋼板のレーザー重ね溶接方法。
【0009】
(2)アルミニウム系めっき鋼板のレーザー重ね溶接において、重ね溶接部の隙間:X(mm)、鋼板板厚:Y(mm)、重ね面の合計めっき付着量:Z(g/m2)とするとき、
X≧Z/(10000×Y)
X≦0.35×Y
を満足する部分を有し、
X≧Z/(10000×Y)
を満足しない部分の最大長さが3×Y(mm)以下であり、
X≧Z/(10000×Y)
X≦0.35×Y
を満足する部分の長さの合計L(mm)が、レーザー溶接線長:A(mm)に対して、
L≧A×0.3/Y
を満足するよう重ね溶接部に隙間空間を設けることを特徴とするアルミニウム系めっき鋼板のレーザー重ね溶接方法である
0010
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
発明者らは、種々のめっき鋼板、具体的には、めっき種としては溶融アルミニウムめっき鋼板、溶融アルミニウム合金めっき鋼板等のめっき鋼板で、めっき付着量としては片面あたり10〜100g/m2、板厚としては0.3〜2.3mmの鋼板を用い、種々の溶接条件でレーザー重ね溶接実験を行ない、溶接部外観を調べた。
0011
数多くの実験結果について整理した結果、健全な溶接部を得るための条件は、2枚の鋼板の隙間と鋼板板厚と重ね面のめっきの合計付着量の3者と非常に密接な関係があること、2枚の鋼板の隙間をX(mm)、鋼板板厚をY(mm)、重ね面のめっきの合計付着量をZ(g/m2 )とした時、図1に示すように
X≧Z/(10000×Y)
を満足すると、鋼板の隙間X、鋼板板厚Y、重ね面のめっきの合計付着量Zにかかわらず、溶接部外観が顕著に向上することを見出した。この結果に基づいて、本発明では2枚の鋼板の隙間をX(mm)、鋼板板厚をY(mm)、重ね面のめっきの合計付着量をZ(g/m2 )との関係を、X≧Z/(10000×Y)と規定した。
0012
ここで、2枚の鋼板の隙間Xは相対する鋼板のめっきの表面同士の間隔を意味し、めっきの表面に他の材料、例えば有機フィルムを介在させることによって、片側の鋼板のめっき表面ともう一方の鋼板のめっき表面との間に隙間を設けた場合にも、あくまでもめっき同士の表面の間隔を意味する。
鋼板板厚Yは、2枚の鋼板の板厚が同一である場合には片側の鋼板の板厚を意味し、2枚の鋼板の板厚が異なる場合には薄い方の鋼板の板厚を意味する。これは板厚の薄い鋼板の方がめっきが自由表面に到達しやすいからである。
0013
重ね面のめっきの合計付着量Zは2枚の鋼板の間に存在するめっきの量であって、片側の鋼板の内面側表面にあるめっきの量ともう一方の鋼板の内面側表面にあるめっきの量との合計量である。一方の鋼板がアルミニウム系めっき鋼板であり、もう一方の鋼板がめっきされていない鋼板である場合、一方あるいは両方の鋼板が片面だけアルミニウム系めっきされた鋼板である場合、一方あるいは両方の鋼板が差厚めっき鋼板(両面のめっき付着量が同一ではない鋼板)では、重ね溶接で内面側になる面のめっき付着量の合計が重要であり、これら鋼板の組み合わせである場合も本発明に含まれることは言うまでも無い。
0014
鋼板間の隙間Xが、X≦0.35×Yを満足すれば、溶接部外観の良好な溶接部が得られるが、X>0.35×Yでは、溶接条件をいかように制御しても健全な溶接部を得ることは困難である。さらに、2枚の鋼板間の隙間は、レーザー溶接の溶接線の全長にわたって確保されていてももちろん良いが、実用上は必ずしもその必要は無く、2枚の鋼板の隙間をX(mm)、鋼板板厚をY(mm)、重ね面のめっきの合計付着量をZ(g/m2 )とした時、
X≧Z/(10000×Y)
X≦0.35×Y
を満足する部分の長さの合計L(mm)がレーザー溶接線長A(mm)に対して、L≧A×0.3 /Yを満足すると、全長で隙間が確保されているのと実質的に同等の効果が得られる。
0015
LがA×0.3/Yよりも小さい場合にはビード形状が悪くなったり、スパッタ量が多くなる場合があり、Lが小さくなるほど溶接部の外観が劣化する。なお、重要なことはX≧Z/(10000×Y)を満足する部分の長さの合計Lを確保することであって、Xがさらに大きい部分があるからといって、隙間が必要以上に大きくなる効果は小さく、ましてや大きな隙間がある場合でも、LがA×0.3/Yよりも小さくできるということではない。2枚の鋼板間に隙間を設ける方法としては、前述の条件を満足する方法であれば適用可能であり、具体的には、下記の方法が有効である。
0016
2枚の鋼板の間に少なくとも溶接線上に固体有機物をスペーサーとして介在せしめ、溶接線に隙間を確保することは有効である。この場合、必ずしも全長にわたって配置することは絶対条件ではなく、
X≧Z/(10000×Y)
X≦0.35×Y
あるいは、X≧Z/(10000×Y)
X≦0.35×Y
を満足する部分の長さの合計L(mm)が、レーザー溶接線長:A(mm)に対して、
L≧A×0.3/Y
を満足するように配置すれば良い。
0017
この場合、固体有機物が少なくとも溶接線に存在していれば良く、そのままレーザー溶接することで顕著な溶接性向上防止効果が得られる。固体有機物の種類は特に限定されるものではなく、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリスチレン、などが代表的であり、これらの混合物であっても良い。2枚の鋼板の間に固体有機物を介在せしめる方法は特に限定されるものではなく、固体有機物のフィルムを貼付する方法、固体有機物を液体に分散して塗装する方法、など、対象物の形状や構造、コストに応じて選定することができる。
0018
鋼板表面の構造を空間変調することも、レーザー重ね溶接時の隙間を付与する有効な手段である。ここで、鋼板表面の構造を空間変調するとは、例えば鋼板表面のテクスチャーを微視的および/または巨視的に制御して所望のテクスチャーを得ることを意味する。この場合にも
X≧Z/(10000×Y)
X≦0.35×Y
あるいは、さらに
L≧A×0.3 /Y
を満足させることが必要であるのはもちろんである。
0019
鋼板表面の構造を空間変調するのは、鋼板段階であっても良いし、鋼板を部品形状に成形する途中の工程であっても良く、あるいは部品形状に成形した後でレーザー重ね溶接する前であっても良く、いずれにしろレーザー重ね溶接するまでに行えばいずれも効果が発揮される。鋼板の表面の全部または大部分を空間変調しても良く、あるいはレーザー重ね溶接する部分のみを空間変調してもいずれでも良く、部品形状や鋼板の外観、空間変調の方法に応じて選択すれば良い。
0020
鋼板表面の構造を空間変調する手段としては、例えば、鋼板に付与したい表面構造を有する金型やロールを鋼板表面に押し付けて転写する手段、高エネルギー密度ビームで鋼板表面の金属を局部的に蒸発・除去する手段、鋼板表面の金属を鋼板の幅および長手方向に分布を持たせ、かつ板厚方向にも分布を持たせて機械的に除去する手段、鋼板表面の金属をエッチングや電解などの化学的方法によって鋼板の幅および長手方向に分布を持たせ、かつ板厚方向にも分布を持たせて除去する手段、など、空間変調後のテクスチャーとコスト、生産性に応じて種々の手段を用いることができる。
0021
本発明が対象とするアルミニウム系めっき鋼板は、アルミニウムまたはアルミニウムを主体とする合金を鋼板表面(両面または片面)にめっきしたものであり、製法は工業的には溶融めっき、電気めっきが主流であるが、蒸着めっきなど他の製造方法であってももちろん構わない。また、めっき密着性や加工性などを向上する目的で、アルミニウムめっきに先行して他の金属をプレ処理すること、めっき後に有機、無機、あるいは有機+無機複合皮膜を付与すること、などは、用途に応じて適用することができ、これら前処理あるいは後処理を施したアルミニウム系めっき鋼板も本発明が対象とするものである。鋼板は通常自動車その他の製品に使われる鋼板であればすべて本発明の対象であり、特に鋼板の組成・組織・強度・延性等を限定するものではない。
0022
【実施例】
表1に示す鋼板を表1に示す条件でレーザー重ね溶接に供した。溶接はYAGレーザーで行い、出力は3kWであった。隙間の付与方法として、は両側の鋼板のそれぞれ片面に、幅0.1mm、深さ0.03mmで溶接線と80゜の角度を成して交わる溝を溶接線方向の間隔0.2mmで付与した鋼板とし、前記鋼板の溝が合わせ面に位置するようにして2枚の鋼板を重ねることで隙間を付与した。このとき、隙間の長さの合計は溶接線長の50%である。は、片側の鋼板を、幅0.15mm、深さ0.025mmで溶接線とほぼ直角を成して交わる溝を、溶接線方向の間隔1.0mmで付与した鋼板とし、もう一方の鋼板は通常の鋼板として、前記鋼板の溝が合わせ面に位置するようにして2枚の鋼板を重ねることで隙間を付与した。このとき、隙間の長さの合計は溶接線長の15%である。
0023
【表1】
Figure 0004012425
0024
溶接部外観は目視で評価し、結果は
○:外観が良好
△:一部ビード形状が悪い部分がある
×:大部分でビード形状が悪い
で表示した。
表1から、本発明例はいずれも溶接部外観が良好であることがわかる。これに対して本発明の要件を満足しない比較例では溶接部外観が不良である。
0025
【発明の効果】
以上述べた通り、本発明のレーザー重ね溶接方法およびアルミニウム系めっき鋼板は、健全で信頼性の高いレーザー重ね溶接部を提供するものであり、自動車、建築・住宅、等に広く適用することが可能で、産業の発展に大きく寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】2枚の鋼板の間の隙間XおよびZ/(10000×Y)値(ここでZは合わせ面に存在するめっき量の合計付着量、Yは薄い方の鋼板の板厚)と溶接部外観の関係を示す図である。

Claims (2)

  1. アルミニウム系めっき鋼板のレーザー重ね溶接において、重ね溶接部の隙間:X(mm)、鋼板板厚:Y(mm)、重ね面の合計めっき付着量:Z(g/m2)とするとき、
    X≧Z/(10000×Y)
    X≦0.35×Y
    を満足する部分を有し、
    X≧Z/(10000×Y)
    を満足しない部分の最大長さが3×Y(mm)以下であるよう重ね溶接部に隙間空間を設けることを特徴とするアルミニウム系めっき鋼板のレーザー重ね溶接方法。
  2. アルミニウム系めっき鋼板のレーザー重ね溶接において、重ね溶接部の隙間:X(mm)、鋼板板厚:Y(mm)、重ね面の合計めっき付着量:Z(g/m2)とするとき、
    X≧Z/(10000×Y)
    X≦0.35×Y
    を満足する部分を有し、
    X≧Z/(10000×Y)
    を満足しない部分の最大長さが3×Y(mm)以下であり、
    X≧Z/(10000×Y)
    X≦0.35×Y
    を満足する部分の長さの合計L(mm)が、レーザー溶接線長:A(mm)に対して、
    L≧A×0.3/Y
    を満足するよう重ね溶接部に隙間空間を設けることを特徴とするアルミニウム系めっき鋼板のレーザー重ね溶接方法。
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