JP4012107B2 - 釣竿 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えばへら鮒竿等の釣竿に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、釣竿は、竿管の後端部に発泡ウレタンやコルク等で形成されたグリップと称する握り部が設けられ、この握り部を手に持って竿の振り込み動作が行われる。このような握り部は、竿管の後端部の周囲に嵌着されて被着され、竿管の後端に尻栓が取付けられて竿管に固定される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、握り部としては、竿管に、発泡ウレタンやコルク等を嵌着して被着し、その外周に滑り止め用糸が巻き込まれ、さらに、糸の上から合成樹脂が塗布されて形成されたものがある(例えば、特許文献2参照)。そして、この握り部は、竿管の後端にABS樹脂等の合成樹脂製や木製の尻栓が取り付けられて竿管に固定される。
【0004】
【特許文献1】
実開昭63―201466号公報 (第1図)
【0005】
【特許文献2】
特開平9―107851号公報 (図1,図2)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の釣竿では、握り部を構成する発泡ウレタンやコルクに、材質上、密な部分と疎な部分が存在することがある。この握り部は、釣り人が強く握り、振り込み動作を繰り返し実行するために、前者の釣竿のグリップ構造だと、強い力を直接的に受ける部位が、疎な部分に当たると、繰り返し強い力を受けた場合、陥没したり割れたりする虞を有する。
【0007】
また、後者の釣竿にあっては、前者に比して耐久性が向上されるものの、やはり、発泡ウレタンやコルクに疎の部位があると、略同様に陥没したり、割れたりする虞を有する。
【0008】
係る事情は、特に発泡ウレタンを使用した握り部の場合、その材質上、疎な、いわゆる巣が発生し易いために、重大な課題となる。
【0009】
この発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、構成簡易にして、耐久性の向上を図り得、且つ、長期間に亘る高感触な握持を実現し得るようにした釣竿を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の釣竿は、中空竿管の外周にこの竿管よりも軟質で紡錘形状の握り部を設け、この竿管の後端を前記竿管よりも軟質でかつ握り部よりも硬質の尻栓で閉塞する釣竿であって、前記握り部の後端側の内面に、後端方向に径大となる切り欠き部を設け、前記尻栓の一方面に、前記切り欠き部に対応する傾斜面を有する筒状の補強部を形成し、この尻栓の補強部を、前記切り欠き部と竿管との間に形成される空隙内に押し込み、握り部の素材を凝縮させて密度を高め、この握り部の後端の切り欠き部を閉塞することを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、竿管よりも軟質で紡錘形状の握り部が、その竿管の後端側の切り欠き部と竿管との間に介在される尻栓の補強部で素材が凝縮されて素材の密度が高められることにより、握持されて振り込み動作が行われて、竿管と釣り人の手より強い力が握り部の後端部に付与されても、その力が、補強部で分散されて減少される。これにより、握り部自体に直接的に大きな力が付与されることがなくなり、長期間に亘り、陥没や割れ等の防止が可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、この発明の第1の実施の形態に係る釣竿の握り領域を構成する元竿管10を取り出して示すもので、この元竿管10は、例えば中空状に形成される。この元竿管10の内部には、例えば図1中において示していないが、振出式の釣竿を構成する穂先竿、径の異なる複数の小径竿管が順に収容される。
【0014】
即ち、元竿管10には、その後端部の外周にグリップと称する筒状の握り部11が嵌着される。この握り部11は、例えば発泡ウレタンやコルク等で略紡錘形状に形成され(図2参照)、その内面の後端側に、例えば先端側から後端方向に径大となるように傾斜(後端方向に肉厚が暫減)したテーパー状の切り欠き部111が設けられる。そして、この握り部11上には、糸材12が、例えば棒巻やあや巻等の手法により巻き付けられ、この糸材12は、例えばエポキシやウレタン樹脂が塗布されて糸止めされる(図2参照)。
【0015】
また、上記元竿管10の後端には、尻栓13が、上記握り部の後端を閉塞するように取り付けられる。この尻栓13には、図3に示すように取付け面となる一方面には、補強部131が上記元竿管10の外周と握り部11の切り欠き部111で構成される空隙14(図2参照)に対応して所望の傾斜面を有した略筒状に突出して形成される。この尻栓13は、例えば上記元竿管10よりも軟質で、上記握り部11より硬質なABS樹脂、ナイロン、木等で形成される。
【0016】
上記構成において、握り部11及び尻栓13を元竿管10に取り付ける場合には、先ず、元竿管10の外周及び握り部11の内面にエポキシ樹脂等の接着剤を塗布し、握り部11を元竿管10の後端より所定の位置に挿入して相互間を両面接着させる。この際、握り部11は、その切り欠き部111の作用により、接着剤が、いわゆるしごかれて塗布量が少なくなる部位が発生することなく、略均一な塗布状態が保たれて高精度な接着が行われる。
【0017】
次に、尻栓13の一方面及び補強部131に接着剤を塗布し、図4に示すように該尻栓13の補強部131を元竿管10と握り部11の切り欠き部111で構成される空隙14に押し込み接着させる。ここで、尻栓13の補強部131は、元竿管10と握り部11との間に介在され、握り部11の後端部側の材質を凝縮させて密に高める。このような尻栓13の押し込み接着により、握り部11の後端部側を凝縮させて密に高める効果の他に、相互間に接着剤が確実に充填されて元竿管10、尻栓13及び握り部11が強固に接着される。
【0018】
上記握り部11は、上記釣り人が、該握り部11を握持して竿の振り込み動作が行われると、元竿管10と釣り人の手により、握り部11の後端近傍に大きな力が加わるが、この大きな力が尻栓13の補強部131により分散される。これにより、握り部11は、竿の振り込み動作に伴う陥没や割れ等の破損を効果的に防止することが可能となる。同時に、握り部11は、尻栓13の補強部131により、凝縮されて密度が高められていることにより、この点からも破損の防止が促進される。
【0019】
このように、上記釣竿は、元竿管10の後端部に柔軟性を有し、該元竿管10の外周部に対向される内面の元竿管10の後端側に、切り欠き部111を設けた握り部11を取り付けて、この切欠き部111と元竿管10の外周部との間に尻栓13に設けた補強部131を介在させるように構成した。
【0020】
これによれば、握り部11は、元竿管10に接着させた状態で、その後端に尻栓13が、取り付けられると、その切り欠き部111が尻栓13の補強部131で押圧されて素材が凝縮されていることにより、握持されて振り込み動作が行われて、元竿管10と釣り人の手より強い力が握り部11の後端部に付与されても、その力が、補強部131で分散されて減少される。このように、握り部11自体に直接的に集中した大きな力が付与されることがないことで、陥没や割れ等の破損の防止が図れて耐久性が高められ、長期間に亘る使用が可能となる。
【0021】
また、この発明は、上記実施の形態に限ることなく、その他、握り部構造として、図5乃至図8あるいは図9乃至図12に示すように構成しても、略同様の効果を期待することができる。但し、図5乃至図8、図9乃至図12においては、便宜上、上記図1乃至図4と同一部分について、同一符号を付してその説明を省略する。
【0022】
図5乃至図8は、この発明の第2の実施の形態を示すもので、上記元竿管10には、その後端部に例えば上記第1の実施の形態と同様の材質を有する握り部21が嵌着されて配される。この握り部21には、その内面の後端側に、例えば先端側から後端方向に径大となる、すなわち、後端方向に肉厚が暫減する略階段状の切り欠き部211が設けられる(図6参照)。
【0023】
また、上記元竿管10の後端には、上記握り部21の後端を閉塞するように尻栓22が取り付けられる。この尻栓22は、図7に示すように、取付け面となる一方面に、補強部221が上記元竿管10の外周と握り部21の切り欠き部211で構成される略階段状の空隙23(図6参照)に対応して周面が略階段状をした略筒状に突出して形成される。この尻栓22は、同様に例えば上記元竿管10よりも軟質で、上記握り部21より硬質なABS樹脂、ナイロン、木等で形成される。
【0024】
上記構成において、握り部21及び尻栓22を元竿管10に取り付ける場合には、上記第1の実施の形態と略同様に元竿管10の外周及び握り部21の内面にエポキシ樹脂等の接着剤を塗布し、握り部21を元竿管10の後端より所定の位置に挿入して相互間を両面接着させる。この際、握り部21は、その切り欠き部211の作用により、接着剤が、いわゆるしごかれて塗布量が少なくなる部位が発生することなく、略同様に略均一な塗布状態が保たれて高精度な接着が行われる。
【0025】
次に、尻栓22の一方面及び補強部221に接着剤を塗布し、図8に示すように尻栓22の補強部221を元竿管10と握り部21の切り欠き部211で構成される空隙23に押し込み接着させる。ここで、尻栓22の補強部221は、元竿管10と握り部21との間に介在され、握り部21の後端部側の材質を凝縮させて密に高める。
【0026】
上記構成により、第2の実施の形態においても、上記第1の実施の形態と略同様に上記釣り人が元竿管10の握り部21を握持して竿の振り込み動作が行われると、元竿管10と釣り人の手により、握り部21の後端近傍に大きな力が加わるが、この大きな力が尻栓22の補強部221により分散される。これにより、握り部21は、竿の振り込み動作に伴う陥没や割れ等の破損を効果的に防止することが可能となる。同時に、握り部21は、尻栓22の補強部221により、凝縮されて密度が高められていることにより、この点からも破損の防止が促進される。
【0027】
また、図9乃至図12は、この発明の第3の実施の形態を示すもので、上記元竿管10には、その後端部に例えば上記第1の実施の形態と同様の材質を有する握り部31が嵌着されて配される。この握り部31には、その後端側の上記元竿管10の外周に対向する内面に、径大に切り欠いた切り欠き部311が設けられ(図10参照)、その後端にリング状の嵌合突部312が設けられる。
【0028】
また、上記元竿管10の後端に、上記握り部31の後端を閉塞するように尻栓32が取付けられる。この尻栓32には、図11に示すようにの取付け面となる一方面に、補強部321が上記元竿管10の外周と握り部31の切り欠き部311で構成される空隙33(図10参照)に対応して略筒状に突出して形成されると共に、嵌合凹部322が握り部21の嵌合突部312に対応して設けられる。この尻栓32は、同様に例えば上記元竿管10よりも軟質で、上記握り部31より硬質なABS樹脂、ナイロン、木等で形成される。
【0029】
上記構成において、握り部31及び尻栓32を元竿管10に取り付ける場合には、上記第1の実施の形態と略同様に元竿管10の外周及び握り部31の内面にエポキシ樹脂等の接着剤を塗布し、握り部31を元竿管10の後端より所定の位置に挿入して相互間を両面接着させる。この際、握り部31は、その切り欠き部311の作用により、接着剤が、いわゆるしごかれて塗布量が少なくなる部位が発生することなく、略同様に略均一な塗布状態が保たれて高精度な接着が行われる。
【0030】
次に、尻栓32の一方面、嵌合凹部322及び補強部321に接着剤を塗布し、図12に示すように、その嵌合凹部322に握り部31の嵌合突部312を押し込む如く挿入すると共に、その補強部321を元竿管10と握り部31の切り欠き部311で構成される空隙33に押し込み接着させる。ここで、尻栓32の補強部321は、元竿管10と握り部31との間に介在され、握り部31の後端部側の材質を凝縮させて密に高める。
【0031】
上記構成により、第3の実施の形態においては、釣り人が元竿管10の握り部31を握持して竿の振り込み動作が行われると、元竿管10と釣り人の手により、握り部31の後端近傍に大きな力が加わるが、この大きな力が尻栓32の補強部321で受けて該補強部321全体に分散される。これにより、握り部31は、竿の振り込み動作に伴う陥没や割れ等の破損を効果的に防止することが可能となる。同時に、握り部31は、尻栓32の補強部321により、凝縮されて密が高められていることにより、この点からも破損の防止が促進される。
【0032】
また、この尻栓32は、元竿管10及び握り部31に対する接着面積を広くとることが可能となることにより、この点からも堅牢な取り付けが実現される。
【0033】
なお、上記第1乃至第3の実施の形態においては、補強部131,221,321を尻栓13,22,32に形成するように構成した場合で説明したが、これに限ることなく、その他、補強部131,221,321を尻栓13,22,32から分離して形成して、握り部11,21,31の切り欠き部111,211,311と元竿管10との間に介在するように構成することも可能で、略同様の効果が期待される。
【0034】
また、上記第1乃至第3の実施の形態では、尻栓13,22,32を元竿管10の管内に嵌合させることなく、元竿管10に取付け配置するように構成した場合で説明したが、これに限ることなく、尻栓13,22,32の一部を元竿管10の内部に嵌合されて元竿管10の後端に取付け配置するように構成することも可能である。
【0035】
さらに、上記第1乃至第3の実施の形態では、元竿管として、中空形状の竿構造に適用した場合で説明したが、これに限ることなく、その他、充実形状の竿構造に適用することも可能である。
【0036】
よって、この発明は、上記実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得る。
【0037】
例えば実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0038】
【発明の効果】
以上明らかなように、この発明によれば、竿管の後端を閉じる尻栓が、その補強部を軟質の握り部と竿管との間に形成される空隙内に押し込み、竿管よりも軟質の握り部の素材を凝縮させて密度を高めることにより、簡易でありながら、耐久性の向上を図り得、且つ、長期間に亘る高感触な握持を実現し得るようにした釣竿を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施の形態に係る釣竿の要部を取り出して示した断面図である。
【図2】図1の握り部を取り出して示した断面図である。
【図3】図1の尻栓を取り出して示した断面図である。
【図4】図1の要部を拡大して示した断面図である。
【図5】この発明の第2の実施の形態に係る釣竿の要部を取り出して示した断面図である。
【図6】図5の握り部を取り出して示した断面図である。
【図7】図5の尻栓を取り出して示した断面図である。
【図8】図1の要部を拡大して示した断面図である。
【図9】この発明の第3の実施の形態に係る釣竿の要部を取り出して示した断面図である。
【図10】図9の握り部を取り出して示した断面図である。
【図11】図9の尻栓を取り出して示した断面図である。
【図12】図1の要部を拡大して示した断面図である。
【符号の説明】
10…元釣竿、11,21,31…握り部、111,211,311…切り欠き部、321…嵌合突部、12…糸材、13,22,32…尻栓、131,221,321…補強部、322…嵌合凹部、14,23,33…空隙。
Claims (4)
- 中空竿管の外周にこの竿管よりも軟質で紡錘形状の握り部を設け、この竿管の後端を前記竿管よりも軟質でかつ握り部よりも硬質の尻栓で閉塞する釣竿であって、
前記握り部の後端側の内面に、後端方向に径大となる切り欠き部を設け、
前記尻栓の一方面に、前記切り欠き部に対応する傾斜面を有する筒状の補強部を形成し、
この尻栓の補強部を、前記切り欠き部と竿管との間に形成される空隙内に押し込み、握り部の素材を凝縮させて密度を高め、この握り部の後端の切り欠き部を閉塞することを特徴とする釣竿。 - 前記切り欠き部は、後端方向に向かって径大となるテーパー状に形成され、前記握り部は、この切り欠き部を形成した部位で肉厚が暫減されることを特徴とする請求項1記載の釣竿。
- 前記切り欠き部は、後端方向に向かって径大となる階段状に形成され、前記握り部は、この切り欠き部を形成した部位で肉厚が暫減されることを特徴とする請求項1記載の釣竿。
- 前記補強部は、前記尻栓と別体に形成されることを特徴とする請求項2又は3記載の釣竿。
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